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脳血管障害後の音声障害に対するベッドサイドでの訓練

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Academic year: 2021

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脳血管障害後の音声障害に対するベッドサイドでの訓練

:CD 教材を用いたウエイトノイズ法の試み

高橋 信雄1) 久永 欣哉2) 佐々木 結花3) 高野 智恵子3)

1) 東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科言語聴覚学専攻 2) 独立行政法人国立病院機構宮城病院神経内科

3) 独立行政法人国立病院機構宮城病院リハビリテーション科 要旨

脳血管障害後に重度の声量低下,気息性・無力性嗄声を呈する症例に対し,ベッドサイドにて筆者ら の提案によるウエイトノイズ法(ロンバール効果を利用した発声訓練法)を適用した.症例は 60 歳男 性.座位不安定,眩暈,座位時の腰痛から,ベッド上仰臥位,またはベッド上で上半身を約 30 度ギャ ジアップした半臥位にて訓練を実施した.筆者らは患者が発話中に負荷するノイズをオージオメータか ら得ていたが,本症例はオージオメータを設置した訓練室への移動が困難なため,訓練ではCD教材(復 唱課題)を作成した.CDプレーヤーおよびヘッドホンにてCDを再生し,課題音声を患者に聞かせ復 唱させた.1 か月の訓練により,声質,声量,最大発声持続時間の改善が認められた.CD 教材を用い ることにより,ベッドサイドでの訓練,退院後の自主訓練が可能になったと考えられた.本症例の音声 改善について検討し,CD教材を用いた訓練の有効性について考察した.

【キーワード】 脳血管障害,音声障害,ウエイトノイズ法,ロンバール効果

Ⅰ.はじめに

脳血管障害による音声障害例のうち,聴覚印 象的に無力性,気息性声質を呈する症例に対し ては,一般的に声帯の内転を促進する訓練法で あるプッシング法や硬起発声,努力発声を要求 するアプローチの採用が適切とされている.し かし,臨床においてこれらの訓練方法を用いよ うとすると,実際には適用が困難な場合が多か った.いずれの訓練方法においても,脳血管障 害に随伴することの多い運動機能障害や高次脳 機能障害,易疲労性などが適用の阻害因子とな っていると考えられた.

筆者らはこうした症例にも適用可能な新しい 音声訓練法,ウエイトノイズ法を提案し,臨床 適用ならびに訓練効果の検討を行ってきた1~4) ウエイトノイズ法とはロンバール効果5,6)(健聴

者が発話している最中に突然ノイズを聴覚的に 負荷すると,声量が増大する現象)を利用した 音声訓練法である.訓練場面の様子を図1に示 した.ヘッドホンレシーバーを用いて患者の両

図1 訓練の様子

(2)

耳にノイズを負荷しながら,単語の復唱や文章 朗読などの課題を行わせる.音声障害の改善に つれて,ノイズの音量を徐々に下げてゆき,最 終的にはノイズのない状態で良好な音声が得ら れることを目標とする.ウエイトノイズ法の手 続きを図2に示した.筆者らは55dB程度を上

限とするウエイトノイズを主として用いている が,125Hzもしくは 250Hzの狭帯域雑音,ス ピーチノイズなどを用いることも可能である.

従来の訓練方法の適用が困難であった症例に,

音声訓練の機会を提供することができたと考え られた.しかし,筆者らはウエイトノイズをオ ージオメータから出力していたため,訓練を実 施できる場所はオージオメータを設置している 防音室に限定されていた.そのため,訓練場所 への移動が困難な症例には音声訓練の機会を提 供できないことがあった.

この問題点を解決する試みとして,CD

compact disk)教材の作成を試みた.

本研究では,脳血管障害のため運動機能障害,

認知機能の低下,眩暈を呈し,訓練室への移動 が困難な音声障害例に対し,CD教材を用いた ウエイトノイズ法による音声訓練をベッド上で

実施した.CD教材作成方法を提案し,CD教材 を用いた訓練の有効性について考察する.

Ⅱ.方法

1.症例のプロフィール

患者:60歳,男性.右利き.会社員.

診断:左基底核部および右前大脳動脈領域の 脳梗塞.訓練開始時のMRI画像(フレア強調 画像)を図3に示す.

既往歴:高血圧症,高脂血症.糖尿病にて加 療中であった.4年前の交通事故の後遺症によ る腰痛が認められた.

現病歴:右上肢脱力にて発症,他院脳神経外 科に入院した.左基底核部に小梗塞を認めた.

発症から2日後,M病院脳外科に転院.この時 点では右片麻痺はごく軽度で言語症状は認めら れず,保存的治療を行った.発症から3日後に 右片麻痺の増悪(病巣不明)および構音障害,

左上下肢の違和感を訴えた.精査の結果,新た に右前大脳動脈領域の梗塞巣出現を認めた.発 症から13日後に言語聴覚療法を開始した.

神経学的所見:軽度の右上下肢の麻痺による 運動機能障害が認められた.嚥下造影検査の結 果,嚥下障害は認められなかった.音声障害が 認められた.一般に核上性疾患においては喉頭 麻痺は生じにくいことが知られているが,核上 性疾患においても喉頭の筋群の運動調節機能に 異常をきたす可能性を示唆する未発表データに ついて記述した文献7)があり,また筆者らの先 行研究3)でも両側前頭葉を病巣とする音声障害

図 3 症例の MRI 画像

図 2 訓練の流れ

単音の発声

(短長)

単語の音読・復唱

(2音節長)

文の音読・復唱

(短長)

55dB

ノイズ除去して 文の音読など 45dBにて

35dBにて 文の音読・復唱 ノイズの音量を 徐々に下げる

訓練終了 ウエイトノイズを負荷して訓練

L R

例(当初機能性音声障害が疑われたが,4か月 の訓練で徐々に症状が改善し,訓練後に気息性 嗄声が残存したため,軽度の声門閉鎖があった と推測された)を報告しており,本症例の音声 症状も脳血管障害に起因する可能性があると推 察された.

神経心理学的所見:訓練開始時の

Mini-Mental State Examination22/30であ った.標準失語症検査(SLTA)とウェクスラ ー成人知能検査(WAIS-Ⅲ)を,座位の安定が えられた訓練開始1か月で実施した.SLTA は,軽度の成績低下が認められた.WAIS-Ⅲは VIQ62PIQ68IQ62であった.

言語症状:音声障害がみられ,生活場面では スムーズに意思伝達できない場面がみられた.

発話速度の軽度の低下がみられたが,構音の明 瞭性は保たれており,静粛性の確保された部屋 では発話明瞭度は1:すべてわかる.喉頭内視 鏡検査に同意が得られず,実施できなかった.

嚥下障害が認められないこと,随意的な発声が ある程度可能であること,病前に関する情報お よび前医からの情報などから,音声症状は今回 の脳血管疾患に起因する軽度の声門閉鎖不全と 推測され,主治医から音声訓練が処方された.

座位が安定していないこと,眩暈の訴えがある こと,座位時に腰痛の訴えがあることから,ベ ッドサイドで音声訓練を開始するよう主治医か ら指示があった.運動機能障害,眩暈のため,

プッシング法の適用は困難であった.努力発 声を要求しても,音声の明らかな改善は認め られなかったが,55dBのウエイトノイズを負 荷して短文復唱を行うと,声量の増大と気息性,

無力性声質の改善が認められた.

ADL:基本動作はおおむね中程度の介助を要 するレベルであった.移動は車いす介助レベル で,体幹が左に傾いていく傾向がみられた.食 事はセッティングを要するが,ベッド上座位で フォークを使用し自立していた.食形態は通常 の固形食で,糖尿病治療食をほぼ100%摂取し

ていた.整容・更衣は軽介助を要する状況であ った.日常生活場面の観察では,認知機能の低 下が疑われる行動がみられた.

2.訓練開始時の音声評価

声質の評価:3人の言語聴覚士がGRBAS 度を用いて評価を行った.GRBAS尺度は,聴 覚印象による声質の評価尺度である.声質の 異常(嗄声)の総合的な重症度をG,カラガ ラした印象を与える粗糙性の程度をR,息漏 れしてカサカサした印象を与える気息性の程 度をB,弱々しい印象を与える無力性の程度 A,力んで気張っている印象を与える努力 性の程度をS5つの尺度で表す.これら5 つの尺度のそれぞれについて,0(正常),1

(軽度)2(中等度)3(重度)の4段階評 価を行う.G(2)R(0)B(2)A(3)S(0)と評価された.

声量の評価:筆者らが先の研究報告で考案し 試用した「声量に関する 8 段階尺度」(表1) を用いた.段階4の「概ね有響成分含まれる」に

当たると評価された.図2のウエイトノイズ法 の手続きの諸段階に対応した評価の枠組みが有 用と考えられたため,本尺度を導入した. 音響分析による評価:図4に訓練開始時の音声 サンプル「木曜日の天気」のサウンドスペクトロ グラムを示す.有響成分が得られない音節が認 められた.oral diadochokinesis(パタカ)では,

表1 声量に関する8段階尺度

段階 声量に関する所見 0 正常

1 十分な声量・異常所見残存 2 常に有声発話・声量若干低下 3 常に有声発話・声量低下 4 概ね有響成分含まれる 5 しばしば有響成分含まれる 6 失声状態・咳は可能 7 失声状態・咳ができない

(3)

耳にノイズを負荷しながら,単語の復唱や文章 朗読などの課題を行わせる.音声障害の改善に つれて,ノイズの音量を徐々に下げてゆき,最 終的にはノイズのない状態で良好な音声が得ら れることを目標とする.ウエイトノイズ法の手 続きを図2に示した.筆者らは55dB程度を上

限とするウエイトノイズを主として用いている が,125Hzもしくは 250Hzの狭帯域雑音,ス ピーチノイズなどを用いることも可能である.

従来の訓練方法の適用が困難であった症例に,

音声訓練の機会を提供することができたと考え られた.しかし,筆者らはウエイトノイズをオ ージオメータから出力していたため,訓練を実 施できる場所はオージオメータを設置している 防音室に限定されていた.そのため,訓練場所 への移動が困難な症例には音声訓練の機会を提 供できないことがあった.

この問題点を解決する試みとして,CD

compact disk)教材の作成を試みた.

本研究では,脳血管障害のため運動機能障害,

認知機能の低下,眩暈を呈し,訓練室への移動 が困難な音声障害例に対し,CD教材を用いた ウエイトノイズ法による音声訓練をベッド上で

実施した.CD教材作成方法を提案し,CD教材 を用いた訓練の有効性について考察する.

Ⅱ.方法

1.症例のプロフィール

患者:60歳,男性.右利き.会社員.

診断:左基底核部および右前大脳動脈領域の 脳梗塞.訓練開始時のMRI画像(フレア強調 画像)を図3に示す.

既往歴:高血圧症,高脂血症.糖尿病にて加 療中であった.4年前の交通事故の後遺症によ る腰痛が認められた.

現病歴:右上肢脱力にて発症,他院脳神経外 科に入院した.左基底核部に小梗塞を認めた.

発症から2日後,M病院脳外科に転院.この時 点では右片麻痺はごく軽度で言語症状は認めら れず,保存的治療を行った.発症から3日後に 右片麻痺の増悪(病巣不明)および構音障害,

左上下肢の違和感を訴えた.精査の結果,新た に右前大脳動脈領域の梗塞巣出現を認めた.発 症から13日後に言語聴覚療法を開始した.

神経学的所見:軽度の右上下肢の麻痺による 運動機能障害が認められた.嚥下造影検査の結 果,嚥下障害は認められなかった.音声障害が 認められた.一般に核上性疾患においては喉頭 麻痺は生じにくいことが知られているが,核上 性疾患においても喉頭の筋群の運動調節機能に 異常をきたす可能性を示唆する未発表データに ついて記述した文献7)があり,また筆者らの先 行研究3)でも両側前頭葉を病巣とする音声障害

図 3 症例の MRI 画像

図 2 訓練の流れ

単音の発声

(短長)

単語の音読・復唱

(2音節長)

文の音読・復唱

(短長)

55dB

ノイズ除去して 文の音読など 45dBにて

35dBにて 文の音読・復唱 ノイズの音量を 徐々に下げる

訓練終了 ウエイトノイズを負荷して訓練

L R

例(当初機能性音声障害が疑われたが,4か月 の訓練で徐々に症状が改善し,訓練後に気息性 嗄声が残存したため,軽度の声門閉鎖があった と推測された)を報告しており,本症例の音声 症状も脳血管障害に起因する可能性があると推 察された.

神経心理学的所見:訓練開始時の

Mini-Mental State Examination22/30であ った.標準失語症検査(SLTA)とウェクスラ ー成人知能検査(WAIS-Ⅲ)を,座位の安定が えられた訓練開始1か月で実施した.SLTA は,軽度の成績低下が認められた.WAIS-Ⅲは VIQ62PIQ68IQ62であった.

言語症状:音声障害がみられ,生活場面では スムーズに意思伝達できない場面がみられた.

発話速度の軽度の低下がみられたが,構音の明 瞭性は保たれており,静粛性の確保された部屋 では発話明瞭度は1:すべてわかる.喉頭内視 鏡検査に同意が得られず,実施できなかった.

嚥下障害が認められないこと,随意的な発声が ある程度可能であること,病前に関する情報お よび前医からの情報などから,音声症状は今回 の脳血管疾患に起因する軽度の声門閉鎖不全と 推測され,主治医から音声訓練が処方された.

座位が安定していないこと,眩暈の訴えがある こと,座位時に腰痛の訴えがあることから,ベ ッドサイドで音声訓練を開始するよう主治医か ら指示があった.運動機能障害,眩暈のため,

プッシング法の適用は困難であった.努力発 声を要求しても,音声の明らかな改善は認め られなかったが,55dBのウエイトノイズを負 荷して短文復唱を行うと,声量の増大と気息性,

無力性声質の改善が認められた.

ADL:基本動作はおおむね中程度の介助を要 するレベルであった.移動は車いす介助レベル で,体幹が左に傾いていく傾向がみられた.食 事はセッティングを要するが,ベッド上座位で フォークを使用し自立していた.食形態は通常 の固形食で,糖尿病治療食をほぼ100%摂取し

ていた.整容・更衣は軽介助を要する状況であ った.日常生活場面の観察では,認知機能の低 下が疑われる行動がみられた.

2.訓練開始時の音声評価

声質の評価:3人の言語聴覚士がGRBAS 度を用いて評価を行った.GRBAS尺度は,聴 覚印象による声質の評価尺度である.声質の 異常(嗄声)の総合的な重症度をG,カラガ ラした印象を与える粗糙性の程度をR,息漏 れしてカサカサした印象を与える気息性の程 度をB,弱々しい印象を与える無力性の程度 A,力んで気張っている印象を与える努力 性の程度をS5つの尺度で表す.これら5 つの尺度のそれぞれについて,0(正常),1

(軽度)2(中等度)3(重度)の4段階評 価を行う.G(2)R(0)B(2)A(3)S(0)と評価された.

声量の評価:筆者らが先の研究報告で考案し 試用した「声量に関する 8 段階尺度」(表1)

を用いた.段階4の「概ね有響成分含まれる」に

当たると評価された.図2のウエイトノイズ法 の手続きの諸段階に対応した評価の枠組みが有 用と考えられたため,本尺度を導入した.

音響分析による評価:図4に訓練開始時の音声 サンプル「木曜日の天気」のサウンドスペクトロ グラムを示す.有響成分が得られない音節が認 められた.oral diadochokinesis(パタカ)では,

表1 声量に関する8段階尺度

段階 声量に関する所見 0 正常

1 十分な声量・異常所見残存 2 常に有声発話・声量若干低下 3 常に有声発話・声量低下 4 概ね有響成分含まれる 5 しばしば有響成分含まれる 6 失声状態・咳は可能 7 失声状態・咳ができない

(4)

5秒間に2回の吸気が挿入され,産生された18 音節のうち 10 音節で声帯振動が得られなかっ た.最長発声持続時間(maximum phonation time:以下 MPT)は 1.5 秒であった.声域の 最高位は 196Hz,最低位は125Hzであった.

なお,本症例の課題への対応状況は概ね良好で あったと考えられたが,評価結果には認知機能 の低下が影響している可能性があると考えられ た.

3.音声訓練

1) CD教材の作成(図5

①テキストとなる単語や短文を選びリストを作 成する.

②リストを音読し,その音声をPCに取り込み,

wav.ファイルで保存する.ファイルの属性を 音楽CDの値,すなわち標本化周波数44.1 Hz,量子化ビット数16ビット,チャンネル

2(ステレオ)とする.

③音響分析ソフト(Arcadia Acoustic Core

version 8)を用い,音声ファイルのパワー適

正化を行う.ファイル中の絶対値最大の標本 値が,16 ビットで表現できる最大値である 32767(負なら-32768)となるように,各標 本値を一定倍する.(図5a参照)

④音響分析ソフトを用い,音声ファイルを各単 語や短文などの課題項目ごとに分割し,各々 保存する.(図5b参照)

⑤オージオメータ(Rion AA61B)から得ら れるノイズをPCに取り込み,wav.ファイル で保存する.ファイルの属性は音楽CDの値 とする.ファイル中の絶対値最大の標本値が テキストの 80%程度となるように各標本値 を一定倍し,ノイズのパワー適正化を行う(補 足参照).ノイズの持続時間は,対象患者がテ キストの復唱に要する時間より若干長くする.

ノイズの前後に 0.5秒程度のブランクを挿入 する.(図5c参照)

⑥音声ファイル編集ソフト(サウンドファイル 図 4 訓練開始時の音声サンプル「木曜日の天気」

のサウンドスペクトログラム

図 5 課題音声の編集

も く よ う び の てん き

8 周 波 数 [kHz]

0 時間

a) 3.の段階まで編集されたテキスト音声の音声包絡

b) 4.の段階まで編集されたテキスト音声の音声包絡

c) 5.の段階まで編集されたノイズ音声の音声包絡

d) 6.の段階まで編集された課題音声の音声包絡(部分)

操作ユーティリティ .WAV Tools)を用い,

テキストの音声ファイルとノイズの音声ファ イルを交互に接続し,一つの音声ファイルに 編集する.(図5d参照)

⑦編集された音声ファイルをCD-Rに焼き付け る.

(補足)

本方法で作成した教材CDを再生する際,ノ イズの音量を変化させようとすると,必然的に テキスト音声の音量も変化する.そのため,ウ エイトノイズを使用した場合を例にとると,ノ イズが最大値である55㏈で負荷される時にテ キスト音声のラウドネスが大きすぎず,一方最 小値である35㏈の時でもテキスト音声が十分 に聞き取れる音量で再生されなくてはならない.

試行錯誤の結果,正常聴力を持つ対象者の場合,

ノイズのパワー適正化で絶対値最大の標本値を テキストの80%程度とすると両条件が満たさ れた.

2) 訓練の手続き

ベッド上仰臥位,またはベッド上で上半身を 30度ギャジアップした体位にて訓練を開始 した.

2文節短文の復唱課題および55㏈程度のウ エイトノイズを録音したCD教材,市販のCD プレーヤーおよびヘッドホンを使用して復唱課 題を患者に呈示した.それ以外の手続きは,こ れまでのウエイトノイズ法の手続きに則って訓 練を行った.課題音声の再生音量は,オージオ メータから出力されるノイズとCDプレーヤー から出力されるノイズを聞き比べ,オージオメ ータの出力値にラウドネスが概ね対応するよう CDプレーヤーの音量つまみにマーキングを行 って対応した.

訓練は1日に1回から2回,1回につき15

20分程度行った.

3) 訓練経過(経過期間は発症日が基準) 13日:CD教材を使用してウエイトノイズ法 による2文節文の復唱課題を開始した.ベッド 上半坐位では多動傾向が認められ,課題に対応 が得られない場面が多くみられたが,臥床した 状態では課題にスムーズな対応が得られた.注 意の集中が妨げられないよう配慮する必要があ ると考えられた.負荷するウエイトノイズの音 量は概ね 55 ㏈程度.ノイズを負荷すると有声 発声が概ね一貫して得られた.努力性,粗糙性 声質の出現は見られなかった.呼吸状態の明ら かな変化は認められなかった.

3 週:初回と同条件で復唱課題を行った.午 前,午後各120分程度の訓練を実施した. 臥床した状態で訓練を行い,課題への対応状況 はおおむね良好であった.訓練場面,会話場面 とも,音声の明らかな変化はみられなかった. 4 週:同条件で復唱課題を継続.離床を促し ていくとの病棟の方針から,午後の訓練はしば しば車いす座位での訓練となった.課題への対 応状況,音声の状況に明らかな変化は認められ なかった.

1 カ月:同条件で訓練を継続した.課題への 対応状況が良好なときは一貫して有声発声が得 られるようになり,十分な声量が得られた.

1.5 か月:車いす座位が可能となり,ベッド 上での訓練は終了することとなった.訓練開始 1カ月を経過したので,評価を実施した.訓 練室で2語文の復唱訓練を継続した.ノイズの 音量は変化なし.課題への対応状況に改善がみ られ,無反応となる場面は認められなくなった. 課題場面では十分な声量が得られるようになっ た.会話場面では有声発声が維持されるように なり,聴覚印象的には声質,声量の改善が感じ られ,初回評価時に認められた発話速度低下は 消失した.

2.5 か月:課題への対応状況良好.課題場面 での音声には特に変化は見られなかった.会話 場面では,聴覚印象的に声質,声量のさらなる

(5)

5秒間に2回の吸気が挿入され,産生された18 音節のうち 10 音節で声帯振動が得られなかっ た.最長発声持続時間(maximum phonation time:以下 MPT)は 1.5 秒であった.声域の 最高位は 196Hz,最低位は125Hzであった.

なお,本症例の課題への対応状況は概ね良好で あったと考えられたが,評価結果には認知機能 の低下が影響している可能性があると考えられ た.

3.音声訓練

1) CD教材の作成(図5

①テキストとなる単語や短文を選びリストを作 成する.

②リストを音読し,その音声をPCに取り込み,

wav.ファイルで保存する.ファイルの属性を 音楽CDの値,すなわち標本化周波数44.1 Hz,量子化ビット数16ビット,チャンネル

2(ステレオ)とする.

③音響分析ソフト(Arcadia Acoustic Core

version 8)を用い,音声ファイルのパワー適

正化を行う.ファイル中の絶対値最大の標本 値が,16 ビットで表現できる最大値である 32767(負なら-32768)となるように,各標 本値を一定倍する.(図5a参照)

④音響分析ソフトを用い,音声ファイルを各単 語や短文などの課題項目ごとに分割し,各々 保存する.(図5b参照)

⑤オージオメータ(Rion AA61B)から得ら れるノイズをPCに取り込み,wav.ファイル で保存する.ファイルの属性は音楽CDの値 とする.ファイル中の絶対値最大の標本値が テキストの 80%程度となるように各標本値 を一定倍し,ノイズのパワー適正化を行う(補 足参照).ノイズの持続時間は,対象患者がテ キストの復唱に要する時間より若干長くする.

ノイズの前後に0.5秒程度のブランクを挿入 する.(図5c参照)

⑥音声ファイル編集ソフト(サウンドファイル 図 4 訓練開始時の音声サンプル「木曜日の天気」

のサウンドスペクトログラム

図 5 課題音声の編集

も く よ う び の てん き

8 周 波 数 [kHz]

0 時間

a) 3.の段階まで編集されたテキスト音声の音声包絡

b) 4.の段階まで編集されたテキスト音声の音声包絡

c) 5.の段階まで編集されたノイズ音声の音声包絡

d) 6.の段階まで編集された課題音声の音声包絡(部分)

操作ユーティリティ .WAV Tools)を用い,

テキストの音声ファイルとノイズの音声ファ イルを交互に接続し,一つの音声ファイルに 編集する.(図5d参照)

⑦編集された音声ファイルをCD-Rに焼き付け る.

(補足)

本方法で作成した教材CDを再生する際,ノ イズの音量を変化させようとすると,必然的に テキスト音声の音量も変化する.そのため,ウ エイトノイズを使用した場合を例にとると,ノ イズが最大値である55㏈で負荷される時にテ キスト音声のラウドネスが大きすぎず,一方最 小値である35㏈の時でもテキスト音声が十分 に聞き取れる音量で再生されなくてはならない.

試行錯誤の結果,正常聴力を持つ対象者の場合,

ノイズのパワー適正化で絶対値最大の標本値を テキストの80%程度とすると両条件が満たさ れた.

2) 訓練の手続き

ベッド上仰臥位,またはベッド上で上半身を 30度ギャジアップした体位にて訓練を開始 した.

2文節短文の復唱課題および55㏈程度のウ エイトノイズを録音したCD教材,市販のCD プレーヤーおよびヘッドホンを使用して復唱課 題を患者に呈示した.それ以外の手続きは,こ れまでのウエイトノイズ法の手続きに則って訓 練を行った.課題音声の再生音量は,オージオ メータから出力されるノイズとCDプレーヤー から出力されるノイズを聞き比べ,オージオメ ータの出力値にラウドネスが概ね対応するよう CDプレーヤーの音量つまみにマーキングを行 って対応した.

訓練は1日に1回から2回,1回につき15

20分程度行った.

3) 訓練経過(経過期間は発症日が基準)

13日:CD教材を使用してウエイトノイズ法 による2文節文の復唱課題を開始した.ベッド 上半坐位では多動傾向が認められ,課題に対応 が得られない場面が多くみられたが,臥床した 状態では課題にスムーズな対応が得られた.注 意の集中が妨げられないよう配慮する必要があ ると考えられた.負荷するウエイトノイズの音 量は概ね 55 ㏈程度.ノイズを負荷すると有声 発声が概ね一貫して得られた.努力性,粗糙性 声質の出現は見られなかった.呼吸状態の明ら かな変化は認められなかった.

3 週:初回と同条件で復唱課題を行った.午 前,午後各120分程度の訓練を実施した.

臥床した状態で訓練を行い,課題への対応状況 はおおむね良好であった.訓練場面,会話場面 とも,音声の明らかな変化はみられなかった.

4 週:同条件で復唱課題を継続.離床を促し ていくとの病棟の方針から,午後の訓練はしば しば車いす座位での訓練となった.課題への対 応状況,音声の状況に明らかな変化は認められ なかった.

1 カ月:同条件で訓練を継続した.課題への 対応状況が良好なときは一貫して有声発声が得 られるようになり,十分な声量が得られた.

1.5 か月:車いす座位が可能となり,ベッド 上での訓練は終了することとなった.訓練開始 1カ月を経過したので,評価を実施した.訓 練室で2語文の復唱訓練を継続した.ノイズの 音量は変化なし.課題への対応状況に改善がみ られ,無反応となる場面は認められなくなった.

課題場面では十分な声量が得られるようになっ た.会話場面では有声発声が維持されるように なり,聴覚印象的には声質,声量の改善が感じ られ,初回評価時に認められた発話速度低下は 消失した.

2.5 か月:課題への対応状況良好.課題場面 での音声には特に変化は見られなかった.会話 場面では,聴覚印象的に声質,声量のさらなる

(6)

改善がみられ,軽度の無力性声質,軽度の声量 低下が残存している状況と考えられた.音声訓 練の頻度を1日に1回とした.

4カ月:復唱課題の文を3文節文とした.ノ イズの音量は変化なし.会話場面での音声に明 らかな変化は見られなかった.

5 か月:訓練終了となった.会話場面では意 思伝達に支障のない音声が聞かれているが,聴 覚印象的には軽度の無力性声質,軽度の声量低 下が感じられる状況であった.

Ⅲ.結果

1.ベッド上の訓練終了時の評価

声質の評価: 図6GRBAS尺度による評 価結果を示した.G(1)R(0)B(0)A(2)S(0)と評価 された.初回時に比して改善が認められたが,

異常所見は残存していた.

声量の評価:図7に声量の8段階尺度による評 価結果を示した.段階3の「常に有声発話・声 量低下」に当たると評価され,改善が認められた.

音響分析による評価:図8にベッド上訓練終 了時の音声サンプル「木曜日の天気」のサウンド スペクトログラムを示す.すべての音節で有響 成分が得られた.oral diadochokinesis(パタカ)

では,吸気挿入がみられなくなり,産生された 27音節すべてで声帯振動が得られた.MPT 8.3秒で,改善が認められた.声域の最高位は 283Hz,最低位は125Hzであった.

2.訓練終了時の評価

声質の評価:図6GRBAS尺度による評価 結果を示した.G(1)R(0)B(0)A(1)S(0)と評価さ れた.1か月時に比して改善が認められたが,

異常所見は残存した.

声量の評価:図7に声量の8段階尺度による 評価結果を示した.段階2の「常に有声発話・

声量若干低下」に当たると評価され,改善が認め られた.

図 6 GRBAS 尺度による声質の評価

図 7 声量の 8 段階尺度による評価

も く よ う び の て ん き

8 周 波 数 [kHz]

0 時間

図 8 ベッド上訓練終了時の音声サンプル「木 曜日の天気」のサウンドスペクトログラム

G R

B

A S

G RB

A S

訓練開始時 ベッド上訓練終了時

G:総合的な重症度 R:粗糙性 B:気息性 A:無力性 S:努力性

0~3の4段階 正常は 0

訓練終了時 G

RB

A S

0:正常

1:十分な声量・異常所見残存 2:常に有声発話・声量若干低下 3:常に有声発話・声量低下 4:概ね有響成分含まれる 5:しばしば有響成分含まれる 6:失声状態・咳は可能 7:失声状態・咳ができない

訓練開始時 ベッド上訓練終了時

0:正常

1:十分な声量・異常所見残存 2:常に有声発話・声量若干低下 3:常に有声発話・声量低下 4:概ね有響成分含まれる 5:しばしば有響成分含まれる 6:失声状態・咳は可能 7:失声状態・咳ができない 訓練終了時

音響分析による評価:図9に本症例の音声サ ンプル「木曜日の天気」のサウンドスペクトログ ラムを示す.前回評価時同様すべての音節で有 響成分が得られた.oral diadochokinesis(パタ カ)では,吸気挿入はなく,産生された30 節すべてで声帯振動が得られた.MPT19.8 秒で,正常範囲となった.声域の最高位は 352Hz,最低位は125Hzであった.

3.訓練終了時のADLについて

基本動作はおおむね自立レベルとなった.座 位保持が可能となり,移動は車いすにて自立と なった.食事動作も車いす座位にて自立となっ た.食形態は通常の糖尿病治療食で,問題なく 摂取可能であった.

4.その他

訓練終了時にも喉頭内視鏡検査の実施には同 意が得られなかった.

Ⅳ.考察

訓練後に音声症状の改善が認められたが,発 症後13日で音声訓練を開始しており自然回復 の要因を除外することは困難で,また喉頭所見 の欠如により音声改善の生理学的裏付けが困難 であるため,改善が訓練効果によるものと断定 することはできないと考えられた.

本症例に関しては,早期からベッド上で訓練 の機会を提供することができた点が重要と考え られた.本症例では,ロンバール効果により即 座に良好な音声が得られ,驚きと喜びを感じ, その後の訓練に対する意欲の向上がみられたと 考察された.このことは,その後のリハビリテ ーション全体に対する意欲にも影響し,加えて 早期に言語聴覚士に対する信頼感が得られたと の印象を受けた.

CD教材を作成することにより,小型のCD プレーヤーとヘッドホンを持参できれば,どの ような場所でも訓練実施が可能となった.さら に,退院後の自主訓練や外来患者の自宅での訓 練にウエイトノイズ法を採用することができる ようになったと考えられた.

言語聴覚士が直接関与できない条件で訓練を 実施するには,CDを再生する際の音量を前も って的確に設定する必要がある.そのためには, 可能であれば患者が自宅で使用するCDプレー ヤーとヘッドホンを持参させ,出力つまみにマ ーキングをして,常に適切な出力音量が得られ るよう配慮すべきと考えられた.それが困難な 場合には,患者が適切な再生音量の設定が独力 で行えるよう,訓練場面で練習を行う必要があ ろう.また,患者が退院後にウエイトノイズ法 による音声訓練を長期間継続する場合には,音 声障害の評価と訓練条件の再検討,設定した訓 練条件が順守されているかの確認を定期的に行 う必要があると考えられた.加えて,上肢の運 動機能障害のある症例では独力でのヘッドホン 装着が困難と考えられるため,イヤホンの使用 等を検討する必要があると推察された.

も くよう び の て ん き

8 周 波 数 [kHz]

0 時間

図 9 訓練終了時の音声サンプル「木曜日の天 気」のサウンドスペクトログラム

(7)

改善がみられ,軽度の無力性声質,軽度の声量 低下が残存している状況と考えられた.音声訓 練の頻度を1日に1回とした.

4カ月:復唱課題の文を3文節文とした.ノ イズの音量は変化なし.会話場面での音声に明 らかな変化は見られなかった.

5 か月:訓練終了となった.会話場面では意 思伝達に支障のない音声が聞かれているが,聴 覚印象的には軽度の無力性声質,軽度の声量低 下が感じられる状況であった.

Ⅲ.結果

1.ベッド上の訓練終了時の評価

声質の評価: 図6GRBAS尺度による評 価結果を示した.G(1)R(0)B(0)A(2)S(0)と評価 された.初回時に比して改善が認められたが,

異常所見は残存していた.

声量の評価:図7に声量の8段階尺度による評 価結果を示した.段階3の「常に有声発話・声 量低下」に当たると評価され,改善が認められた.

音響分析による評価:図8にベッド上訓練終 了時の音声サンプル「木曜日の天気」のサウンド スペクトログラムを示す.すべての音節で有響 成分が得られた.oral diadochokinesis(パタカ)

では,吸気挿入がみられなくなり,産生された 27音節すべてで声帯振動が得られた.MPT 8.3秒で,改善が認められた.声域の最高位は 283Hz,最低位は125Hzであった.

2.訓練終了時の評価

声質の評価:図6GRBAS尺度による評価 結果を示した.G(1)R(0)B(0)A(1)S(0)と評価さ れた.1か月時に比して改善が認められたが,

異常所見は残存した.

声量の評価:図7に声量の8段階尺度による 評価結果を示した.段階2の「常に有声発話・

声量若干低下」に当たると評価され,改善が認め られた.

図 6 GRBAS 尺度による声質の評価

図 7 声量の 8 段階尺度による評価

も く よ う び の て ん き

8 周 波 数 [kHz]

0 時間

図 8 ベッド上訓練終了時の音声サンプル「木 曜日の天気」のサウンドスペクトログラム

G R

B

A S

G RB

A S

訓練開始時 ベッド上訓練終了時

G:総合的な重症度 R:粗糙性 B:気息性 A:無力性 S:努力性

0~3の4段階 正常は 0

訓練終了時 G

RB

A S

0:正常

1:十分な声量・異常所見残存 2:常に有声発話・声量若干低下 3:常に有声発話・声量低下 4:概ね有響成分含まれる 5:しばしば有響成分含まれる 6:失声状態・咳は可能 7:失声状態・咳ができない

訓練開始時 ベッド上訓練終了時

0:正常

1:十分な声量・異常所見残存 2:常に有声発話・声量若干低下 3:常に有声発話・声量低下 4:概ね有響成分含まれる 5:しばしば有響成分含まれる 6:失声状態・咳は可能 7:失声状態・咳ができない 訓練終了時

音響分析による評価:図9に本症例の音声サ ンプル「木曜日の天気」のサウンドスペクトログ ラムを示す.前回評価時同様すべての音節で有 響成分が得られた.oral diadochokinesis(パタ カ)では,吸気挿入はなく,産生された30 節すべてで声帯振動が得られた.MPT19.8 秒で,正常範囲となった.声域の最高位は 352Hz,最低位は125Hzであった.

3.訓練終了時のADLについて

基本動作はおおむね自立レベルとなった.座 位保持が可能となり,移動は車いすにて自立と なった.食事動作も車いす座位にて自立となっ た.食形態は通常の糖尿病治療食で,問題なく 摂取可能であった.

4.その他

訓練終了時にも喉頭内視鏡検査の実施には同 意が得られなかった.

Ⅳ.考察

訓練後に音声症状の改善が認められたが,発 症後13日で音声訓練を開始しており自然回復 の要因を除外することは困難で,また喉頭所見 の欠如により音声改善の生理学的裏付けが困難 であるため,改善が訓練効果によるものと断定 することはできないと考えられた.

本症例に関しては,早期からベッド上で訓練 の機会を提供することができた点が重要と考え られた.本症例では,ロンバール効果により即 座に良好な音声が得られ,驚きと喜びを感じ,

その後の訓練に対する意欲の向上がみられたと 考察された.このことは,その後のリハビリテ ーション全体に対する意欲にも影響し,加えて 早期に言語聴覚士に対する信頼感が得られたと の印象を受けた.

CD教材を作成することにより,小型のCD プレーヤーとヘッドホンを持参できれば,どの ような場所でも訓練実施が可能となった.さら に,退院後の自主訓練や外来患者の自宅での訓 練にウエイトノイズ法を採用することができる ようになったと考えられた.

言語聴覚士が直接関与できない条件で訓練を 実施するには,CDを再生する際の音量を前も って的確に設定する必要がある.そのためには,

可能であれば患者が自宅で使用するCDプレー ヤーとヘッドホンを持参させ,出力つまみにマ ーキングをして,常に適切な出力音量が得られ るよう配慮すべきと考えられた.それが困難な 場合には,患者が適切な再生音量の設定が独力 で行えるよう,訓練場面で練習を行う必要があ ろう.また,患者が退院後にウエイトノイズ法 による音声訓練を長期間継続する場合には,音 声障害の評価と訓練条件の再検討,設定した訓 練条件が順守されているかの確認を定期的に行 う必要があると考えられた.加えて,上肢の運 動機能障害のある症例では独力でのヘッドホン 装着が困難と考えられるため,イヤホンの使用 等を検討する必要があると推察された.

も くよう び の て ん き

8 周 波 数 [kHz]

0 時間

図 9 訓練終了時の音声サンプル「木曜日の天 気」のサウンドスペクトログラム

参照

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