九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Implication of Landscape Characterization Integrating Spatial Knowledge and Socio- economic Valuation in Teknaf Peninsula, Bangladesh
マリアム, スルタナ, マリー
http://hdl.handle.net/2324/2236248
出版情報:九州大学, 2018, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式6-2)
氏 名 Mariym Sultana Marry
論 文 名 Implication of Landscape Characterization Integrating Spatial Knowledge and Socio-economic Valuation in Teknaf Peninsula, Bangladesh
(バングラデシュ・テクナフ半島における空間情報と社会経済的価値を用 いた景観特徴分析に関する研究)
論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 朝廣 和夫 副 査 九州大学 教授 谷 正和 副 査 九州大学 准教授 藤田 直子
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、バングラデシュのテクナフ半島を対象とし、貧困による国有林の荒廃などの景観保全 に関する課題に対し、英国を中心に各国で実施されている 景観特徴評価手法(Landscape
Character Assessment)に着目し、空間情報による景観特徴区分と住民の景観に対する社会経済的
価値を明らかにすることを目的とした研究である。
全体は、5章構成からなり、第1章は研究の背景、バングラデシュにおける景観管理の概要、既 往研究の紹介と目的、論文構成の説明を行い、第2章は調査対象地と共に方法論と利用データの諸 元、分析方法について述べ、第3章は空間情報の分析と景観特徴区分の提示、第4章は区分毎の地 域住民の社会経済データの特徴を景観特徴サービス値と景観嗜好の差異を示し、最後の第5章の結 論で構成されている。結論としては、景観特徴として4つの地域区分、Plain grass land area, High land forest area, Plain relief homestead garden area, そして、Mixed land mosaic areaに分類す ることができた。それぞれの住民の社会経済的価値として、屋敷林が共通して最もサービス値、嗜 好性が高く重要であり、薪、果樹、換金作物の生産などに利用されている。農地、森林、檳榔樹、
分収林、溜池については、区分ごとに差異があることを明らかにした。
第1章では、各国における景観管理における動向や景観特徴評価手法の実施、景観認識やサービ スに関する既往研究状況を紹介し、本研究の目的と枠組みを提示した。景観特徴評価は主に英国を 中心とした先進国で適応が多く、一方で発展途上国ではデータ入手の困難性があり保全の目的も生 活・生存と密着している差異があり、バングラデシュのテクナフ半島という貧困地域における調査 の意義が説明された。
第2章では、調査分析方法として、空間情報は分水界および地形をALOSの標高データから作成 し、後者はHammond methodを用い、植生データはLandsat 8のNDVI値と現地調査等より作 成し、主成分分析で区分を行ったこと。社会経済調査は区分毎に集落を選定し、全世帯の10%であ る合計1322世帯に対し訪問インタビュー形式で実施したと示された。
第3章では、テクナフ半島における分水界、地形、植生の特徴が示され、特に自然林は調査対象
地域 6287haのうち28%しか残存せず、モザイク林が26%と森林破壊の状況が明らかにされた。
空間情報により景観特徴は4つに区分され、それぞれの他の区分より優占する特徴として、Plain
grass landは農地が67%を占めること。Plain relief homestead gardenは屋敷林が20%、檳榔樹 植林が13%を占めること、High land forestは自然林が32%を占めること、そして、Mixed land
mosaicはそれぞれの土地利用が混在することを明らかにした。
第4章では、Plain grass land区分において居住年数が60年以上の割合が66%と他より高く、
一方、Mixed land mosaicでは、同6%で30年未満77%と区分毎で世帯の居住年数に大きな差が あることが示された。また、植生区分に対し収入や果物などサービスを得ている世帯割合を分析し たところ、4つの全ての地域で屋敷林が、薪、果物の採取について依存率が高く、その他、野菜の 収穫、建築材の採取、換金物の生産、収入源として依存していた。景観の嗜好性についても屋敷林 の重要性が最も高く、一方、Plain grass landは農地を、High land forestは水場を、Mixed land
mosaicは檳榔樹人工林の重要性が他の区分よりも高いことが明らかにされた。
第5章では、結論として、先進国を中心に実施されている景観特徴評価手法について、発展途上 国であるバングラデシュでも、空間情報を絞り、社会経済的な情報を加え地域レベルで実施するこ とが可能であること。また、地域住民の景観に対する社会経済的価値について、景観特徴区分によ り居住年数や景観への依存性、嗜好性に差異があり、いずれも屋敷林への依存が高いことなどを明 らかにした。
以上、本論文は、先進国で用いられている景観特徴評価手法を発展途上国の文脈に合わせ改良し、
空間情報による景観特徴区分の実施と、社会経済的価値の抽出に成功している。今後の研究展開に ついても屋敷林の保全、デザインの必要性に端緒を示したとともに、他地域の地勢や特徴に応じた 方法論の検討、事例研究の積み重ねの重要性など多様な研究課題への糸口を開いた点において意義 ある研究であり、評価できた。博士論文として確かな学力が示された労作と言える。
著者の博士論文研究指導に当たっては、進捗状況を適宜把握し、議論を通して発表能力や討論能 力を養う指導を行った。よって、学位審査を厳正に実施した上で本論文が博士(芸術工学)の学位 に値するものであることを本審査委員会は認めた。