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郭店楚簡 『老子』 校注 (上)

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(1)

郭店楚簡 『老子』 校注 (上)

著者 小池 一郎

雑誌名 言語文化

巻 5

号 3

ページ 487‑515

発行年 2003‑01‑15

権利 同志社大学言語文化学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004394

(2)

郭 店 楚 簡

﹃ 老 子

﹄ 校 注

︵ 上

小   池   一   郎

︻凡 例

︼ 一

︑ 荊門 市 博物 館 編

﹃郭 店 楚 墓竹 簡

﹄︵ 文 物出 版 社

︑一 九 九 八年

︶ の 図版

︵ 写 真版

︶﹁ 老 子

﹂甲 本

︑ 乙本

︑ 丙 本を 底 本 とす る

︒ 釈 文 に つい て は

︑こ の 書 に依 ら な かっ た 所 があ る

︒ 二

︑﹁ 老 子

﹂ の 編 名 と組 分 け

︑ 組 順 は 崔 仁義 著

﹃ 荊 門 郭 店 楚簡

︽ 老 子

︾ 研 究

﹄︵ 科 学 出 版 社︑ 一 九 九 八 年

︶ に よる

︒ た だ し

︑ C 本

︵ 底本 甲 本

︶一 組 と 二組 の 順 序を 入 れ 替え た

︒ 三

︑底 本 の 竹 簡番 号 を

︑各 竹 簡 の冒 頭 に 数 字で 記 し た︒ ま た

︑底 本 に 記 され て い る各 種 記 号を 文 中 に 加え た

︒ 更に 参 考 のた め に

︑ 相当 す る 現 行本 の 章 名を 各 節 の末 尾 に 示し た

︒ 節の 区 分 は︑ 現 行 各本 の 章 分け を 参 考に し て 決め た の で︑ 必 ず しも 底本 の 区切 り と は同 じ で ない

︒ 四

︑ 押 韻 につ い て は

︑ 基 本 的に 王 力 著 の

﹃ 詩 経 韻読

﹄︑

﹃ 楚 辞 韻 読

﹄︵ 共 に 上 海 古 籍出 版 社

︑ 一 九 八

〇 年刊

︶ お よ び 王 力 主編

﹃ 王 力古 漢 語 字典

﹄︵ 中 華 書 局︑ 二

〇〇 年

︶ に依 り つ つ︑ 校 定 本文 の 右 に△

■等 の 記 号を 記 し た︒ ま た

︑声 母 の 発声

﹁言 語 文化

﹂ 5︱

3.

487

515

ペ ージ   二〇

〇三 年. 同 志社 大 学言 語 文化 学 会

©

小池 一郎

(3)

部位 に つい て は 王力 著

﹃ 漢語 語 音 史﹄

︵ 中国 社 会科 学 出 版社

︑ 一 九八 五 年

︶に 従 っ た︒ 五

︑研 究 諸 家の 間 で 異説 の な い文 字 の 釈文 に 関 して は

︑ 特に 説 明 を施 さ なか っ た

︒ 六

︑ 馬王 堆 帛 書﹃ 老 子

﹄甲 本

・ 乙 本︑ 現 行

﹃老 子

﹄ 各本 と の 文字 の 異 同 は︑ 特 に 必要 と 考 えら れ る 場 合に の み 指摘 す る

︒本 文の 対 照 に 当 た って は

︑ 帛 書 は

﹃ 老子 甲 本 及 巻 後 古 佚書

﹄﹃ 老 子乙 本 及 巻 前 古 佚 書﹄

︵ 文 物 出版 社

︑ 一 九 七 四年

︶ に 依 り

︑ 現行 各 本は 島 邦 男著

﹃ 老 子校 正

﹄︵ 汲 古書 院

︑ 一九 七 三 年︶ に 多 くを 負 っ てい る

︒ 七

︑底 本 の 本文 が 不 明の 箇 所 は︵

︶ で括 り

︑ 帛書 お よ び現 行 各本 に よ って 文 字 を補 っ た

︒ 八

︑ 各節 毎 に

︑校 定 本 文︑ 訓 読 文︑ 校 注

︑ 現代 語 訳 を記 し た

︒本 稿

︵ 上

︶で は C

︵甲

︶ 本 の第 五 組 ま でを

︑ 本 稿︵ 下

︶ では C

︵ 甲

︶本 第 六 組︑ B

︵ 乙︶ 本 お よび A

︵ 丙︶ 本 を 扱う

︒ 九

︑ 参考 に し た文 献 は

︑文 末 に 一括 し て 記 す︒ な お

︑拙 稿

﹁ 郭店 楚 簡

﹃ 老子

﹄ と

﹁老 子

﹂ の祖 型

﹂︵

﹃ 言語 文 化

﹄同 志 社 大学 言 語 文 化学 会

︑ 二〇

〇 年︶ を 参 照さ れ た い︒ 老子

  C

︵甲

︶ 本

○ C本 第 二 組︵ 甲

24

24

致 虚

︑極

︒ 守

︑ 篤

也︒ 万 物 併

︑ 居 以 須 復△

︒ 夫 道 員 員▲

︑各 復 其 根

︵ 第 十 六章 前 半

︻ 訓

︼ 虚 を 致す こ と

︑ 極 ま る なり

︒ 中 を 守 る こ と︑ 篤 き な り

︒ 万 物併

び 作

れ ば

︑ 居 りて 以 て 復

る を 須 つな り

︒ 夫 の 道 は 員

員 と して

︑ 各々 そ の 根 に 復 る

(4)

︻ 注

︼ 1

﹁ 極﹂

︑ 簡 本︵ 以 下 底 本 を

﹁ 簡本

﹂ と 略 記 す る

︶﹁ 恒

﹂︒

﹁ 恒

﹂を

﹁ 極

﹂ の 誤 写と み る

︒ 楚 簡

︵ 戦国 時 代 楚 国 竹 簡

︶ で は

︑﹁ 極

﹂ を

﹁ 恒﹂ と 記 す こ と が 多 い

︒ 2

﹁ 守

﹂︑ 簡 本

﹁ 獣

﹂ に 作 る の は

︑﹁ 守

﹂ の 仮 借 字

︒ 共 に 審 母 幽 部 で 音 通 ず

︒ 3

﹁ 中﹂

︑帛 書 甲 本﹁ 情

﹂︵ 静 の仮 借 字

︶︑ 帛書 乙 本 及び 現 行 各本

︵ 以 下﹁ 各 本

﹂と 略 記 する

︶ は﹁ 静

﹂ に作 る

︒ 4﹁ 篤

﹂︑ 簡 本

﹂︒

﹃ 説 文

﹄に

︑ 也

︑ 从

<

竹 声

<

に 从

う︒ 竹 の 声

︒︶

︑ 読 若 篤﹂ と あ る

︒﹁

﹂ は﹁ 篤

﹂ の 仮 借 字

︒ 5

﹁ 併﹂

︑ 簡 本﹁ 方

﹂ は

﹁ 併

﹂の 仮 借 字

︒﹃ 説 文

﹄ に

﹁ 方︑ 併 船 也

﹂︑

﹃ 爾雅

﹄ 釈 水 に

﹁ 併船 曰 方 舟

﹂ と みえ る

︒ 趙 帆 聲

﹃古 史 音 釈﹄

︵河 南 大 学出 版 社

︑一 九 九 五年

︶ 一〇 八

︑ 一〇 九 頁 参照 の こ と︒ 6

﹁ 居﹂

︑帛 書 甲 乙本

﹁ 吾

﹂に 作 る

︒7

﹁ 須

﹂︑ 帛 書

︑ 各 本

﹁ 観 其

﹂ に 作 る

︒﹃ 楚 辞

﹄ 九 歌

・ 少 司 命 に

﹁ 君 誰 須 兮 雲 之 際

﹂︵ 君 誰 を か 雲 の 際

に 須

︶ と あ り

︑ 王 逸 注 に

﹁ 誰待、

於 雲 之 際 乎

﹂︑

︵ 文 選

︶ 五 臣 注に

﹁ 須

︑ 待 也

﹂と す る

︒ 8

﹁ 夫道

﹂︑ 簡 本は

﹁ 天 道

﹂ に 作る

︒ 今

︑﹁ 夫

﹂ を

﹁ 天

﹂に 誤 っ た もの と 見 な す

︒ 私は

︑ こ の 文 脈 で は﹁ 天 道

﹂ の 思 想は 現 れ な い と 考え る

︒ 帛 書 甲 乙 本で は

﹁ 天 物

﹂ と読 め る が

︑ こ れ も

﹁ 夫 物

﹂ を 誤 っ た 可 能 性 が あ る

︒ 池 田 知 久 は

︑ 簡 本 の

﹁ 天 道

﹂ は

﹁ 夫 物

﹂ の 誤 写 か も 知 れ な い と 述 べ て い る

︒ 9

﹁ 員員

﹂︑ は 擬 態語

︑﹁ 云 云

﹂に 通 じ る︵

﹁ 員﹂

﹁云

﹂ 共 に匣 母 文 部︶

︒﹃ 説 文﹄

﹁員

﹂ 字 の段 玉 裁 注に

﹁ 古 音云

﹂ と あり

﹃ 釈 名﹄ 釈 天 に

﹁ 雲 猶 云 云

︑ 衆 盛 意也

﹂ と あ る

10

﹁ 根

﹂︑ 簡 本

﹂ は

﹁ 根

﹂ の 仮 借 字︒ 古 音 と も に 見 母 文 部

◎ 押 韻

﹁ 極

︑ 篤

︑ 復

﹂︵ 職 覚 合 韻

︶︑

﹁ 員

︑ 根

﹂︵ 文 部

︶︒

︵ 補

︶ 簡 本 は ほ ぼ 完 全 な 韻 文 か ら 成 っ て い る

︒ 武 内 義 雄 は

﹁ 老 子

﹂ の 古 い 部 分 は 韻 文 で 記 さ れ て い た と 推 測 し た

︵﹁ 老 子 の 研 究

﹂︶ が

︑ そ の 正 し さ が 簡 本 の 出 土 で 改 め て 確 認 さ れ た わ け で あ る︒

︻ 訳

︼ 空 虚 さを で き る 限 り 招 き寄 せ て

︑ 内 部 を しっ か り と 守 る

︒ する と

︑ あ ら ゆ る 物が 並 び 起 こ っ て くる

︒ じ っ と し て そ れ ら が元 の 状 態に 戻 っ てゆ く のを 待 つ

︒そ れ ら は多 く の うね う ね とし た 道 を︑ そ れ ぞれ そ の 根

に 戻っ て ゆ く︒

(5)

〇 C 本第 一 組︵ 甲

21

23

21

有 状

︑ 先 天 地 生

︒ 悦 穆 独 立 不 改

︑ 可 以 為 天 下 母

︒ 未 知 其 名

︑ 字 之 曰 道

︒ 吾

22

強 為 之 名 曰 大

︑ 大 曰 逝

︑ 逝 曰 遠

︑ 遠 曰 反

︒ 天 大

︑ 地 大

︑道 大

︑ 王亦 大

︒ 国中 有 四 大

︑ 案 王 居一 焉

︒ 人

23

法 地

︑ 地 法天

︑ 天 法道

︑ 道 法自 然

︵ ■ 第 二十 五 章

︻ 訓

︼ 状 の 混成 す る 有 り

︒ 天 地に 先 ん じ て 生 ず

︒悦 穆

えつ ぼく

と し て 独 り 立ち て 改 め ず

︒ 以 て天 下 の 母 と 為 す 可し

︒ 未 だ 其 の 名 を 知 ら ず

︒ こ れ に 字 し て

﹁ 道

﹂ と 曰 う

︒ 吾 強 い て こ れ が 為 に 名 づ け て

﹁ 大

﹂ と 曰 う

︒﹁ 大

﹂ は

﹁ 逝

﹂ と 曰 い

︑﹁ 逝

﹂ は

﹁ 遠

﹂ と 曰 い

︑﹁ 遠

﹂ は

﹁ 反

﹂ と 曰 う

︒ 天 は 大

︑ 地 は 大

︑ 道 は 大 に し て

︑ 王 も 亦 大 な り

︒ 国 中 に 四 大 有 り

︒ 案 ち 王 は 一 に 居 れり

︒ 人は 地 に 法

と り

︑ 地は 天 に 法と り

︑ 天は 道 に 法と り

︑ 道は 自 然 に法 と る

︻ 注

︼ 1

﹁ 状﹂

︑ 簡 本

﹂︒

﹁ 状

﹂︵

︶ の 仮 借 字 と 取る

︒﹃ 説 文﹄ に

︑ 醢 也

⁝ 爿 声

︑ 古 文

︑ 如此

﹂ と あ り

︑ ま た

﹁ 爿︑ 読 若 牆

﹂︑

︑ 犬 形也

︑ 从 犬 爿 声﹂ と あ る

︒ 即ち

︑﹁

﹂ と

﹂ は古 音

﹁ 牆

﹂︵ 従 母 陽 部︶ で 通 じ る

︒ 帛 書

︑ 各本 は

﹁ 物﹂ に 作 る︒ 2

﹁ 混

﹂︑ 簡本

﹁ 蟲

﹂︑ 帛 書﹁ 昆

﹂︑ 各 本

﹁混

﹂︒

﹃ 説 文﹄ に

︑ 蟲之 総 名 也︑

⁝ 皆 読 昆﹂

﹁蟲

﹂ を

﹂ の 仮借 字 と み る

︒﹁

﹂ は 音﹁ 昆

﹂︵ 見 母 文 部

︶で

︑﹁ 混﹂ に 通 じ る︵ 見 母 文 部

︶︒ 3

﹁悦 穆

﹂︑ 簡 本

﹂︑ 帛 書 甲本

L

呵 呵

﹂︑ 帛 書 乙本

﹁ 蕭 呵

F

﹂︑ 各本

﹁ 寂 兮 寥 兮﹂ と す る も のが 多 い が

︑ 想爾 注 系 本 は

︑﹁ 兮

﹂ 二 字 を 欠 く

︒﹁

﹂ は

﹁ 悦

﹂ の 仮 借字

︵ 楚 簡 に は そ の 例が 多 い

︶︑

﹂ は

﹁ 穆

﹂ の 仮 借字 と と る

︒﹃ 文 子

﹄ 精 誠 篇 に

﹁ 道 者

︑ 静 漠 恬 澹

︑ 悦 穆 胸 中

︑ 廓 然 無 形

︑ 寂 然 無 声

﹂ と あ る

︒ こ れ は

︑﹃ 淮 南 子

﹄ 地 形 篇 の

﹁ 建 木 在 都 廣

︑ 衆 帝 所 自 上 下

(6)

日 中 無 景︑ 呼 而 無 響

︑ 蓋 天地 之 中 也

﹂ を 連想 さ せ る 表 現 であ る

︒﹁ 道﹂ は

﹁ 胸 中

﹂ にあ る 世 界 樹 的 な存 在 と い う こ と で あ ろ う か

︒私 は

︑ 簡 本 に もこ の よ う な 世 界樹 の イ メ ー ジ が影 を 落 と し て い るも の と 考 え る

︒4

﹁ 改

﹂︑ 簡 本

﹁ 亥

﹂ は 仮 借 字

︒﹁ 改

﹂ 見母 之 部

︑﹁ 亥

﹂ は

﹁該

﹂ の 簡 略字 と み る

︒﹁ 該

﹂ は古 音 見 母 之部 で

︑﹁ 改

﹂ に 通 じる

︒ 帛 書 乙本

﹂︑ 各 本

﹁ 改

﹂︒ 各 本

﹁ 改

﹂ の後 に

﹁ 周 行 而 不 殆

﹂ の 一 句 が 入 る

︒ 帛 書 に は こ の 句 が な い

︒ 5

﹁ 天 下

﹂︑ 帛 書 甲 乙 本

﹁ 天 地

﹂︒ 各 本 は

﹁ 天 下

﹂ で

︑ 簡 本 に 同 じ

︒ 6

﹁ 逝

﹂︑ 簡 本

﹂︒ 釈 文

︑ 諸 説 が 立 て ら れ て い る

︒ 帛 書 乙 本

﹁ 筮

﹂︑ 各 本

﹁ 逝

﹂︒ 今 ま ず

﹂ を

﹂ の 仮 借 字と と る

︒ 楚 簡 で は

﹁ 辛﹂ と

﹁ 欠

﹂ は 旁 り とな る 時 に は 極 め て 似 た字 形 に な る

︒ た と え ば

︑﹃ 郭店 楚 簡 文 字 編

﹄︵ 文 物出 版 社

︑ 二

〇 年

︶ 一 二 九 頁

﹁ 辟﹂ の

﹁ 辛

﹂ の 部 分 と 簡 本

﹂ の

﹁ 欠

﹂ の 部 分 を 比 較 さ れ よ

︒﹁

﹂ は 心 母 月 部

︒ 一 方

︑﹁ 筮

﹂﹁ 逝

﹂ 共 に 古 音 禅 母 月 部 で あ る

︵ 帛 書 甲 乙 本 の

﹁ 筮

﹂ は

﹁ 逝

﹂ の 仮 借 字

︶︒

﹁ 心

﹂ 母 は 舌 尖 前 清 擦 音

︑﹁ 禅

﹂ 母 は 舌 面 前 濁 擦 音 で

︑﹁

﹂ と

﹁ 筮

﹂﹁ 逝

﹂ は 音 が 極 め て 近 い

︒ し た が っ て

︑﹁

﹂ を

﹁ 筮

﹂ 即 ち

﹁ 逝

﹂の 仮 借 字 と 考 え た い

︒︵ ウ ェ ブ 版

﹃ 簡 帛研 究

﹄ 王 寧

﹁ 釈 郭 店 楚 簡 中 的

﹃ 噬

﹄ 与

^

﹄﹂

︵ 二

〇 二 年 八 月 二 十 三 日

︶ 参 照

︒︶

﹁ 逝

﹂ と

﹁ 遠

﹂ と を 続 け て 使 用 し た 例 と し て は

︑﹃ 楚 辞

﹄ 離 騒 に

︑﹁ 曰 勉 遠 逝 而 無 狐 疑 兮

﹂︑ ま た

﹁吾 将 遠 逝以 自 疏

﹂が あ る

︒7

﹁ 案

﹂︑ 簡本

﹁ 安

﹂は 簡 略 字︒ 清

・ 王引 之

﹃ 経伝 釈 詞

﹄に

︑﹁ 安

︑ 猶於 是 也

︒乃 也

︒ 則也

︒ 字

︑ 或 作 案

︑ 或 作 焉

︒ 其 義 一 也

﹂ と あ る

︒ 今

︑ 字 義 を 明 ら か に す る た め に

﹁ 案

﹂ の 字 を 取 る

︒ 帛 書 で は こ こ に

﹁ 而

﹂ 字 が 入 っ て い る

︒ こ の

﹁ 案

﹂︵ 簡 本

﹁ 安

﹂︶ を

﹁ 焉

﹂ の 仮 借 字 と 取 り

︑ 前 文 の 末 尾 に 付 け る 説 が 多 い が

︑ そ れ で は 文 の リ ズ ム が 狂 う

︒ 8

﹁ 焉

﹂︑ 簡 本

﹁ 安

﹂ は 仮 借 字

◎ 押 韻

﹁ 成

︑ 生

﹂︵ 耕 部

︶︑

﹁ 改

︑ 母︑ 道

﹂︵ 之 幽 合 韻

︶︑

﹁ 大

︑ 逝

﹂︵ 月 部

︶︑

﹁遠

︑ 反

﹂︵ 元部

︶︑

﹁ 焉︑ 天

︑ 然﹂

︵元 真 合 韻︶

︑﹁ 大

︑地

﹂︵ 月 歌 通韻

︶︒

︻ 訳

︼ あ る 混沌 と し た 状 態 が

︑天 地 に 先 立 っ て 生じ た

︒ 茫 漠 と し て形 も 見 え ず

︑ 音 も聞 こ え ず

︑ た っ た独 り 立 っ て 姿 を 改

(7)

め る こ と が な い

︒ こ れ を

﹁ こ の 世 の 母

﹂ と 見 な し て よ い で あ ろ う

︒ ま だ そ の 名 を 知 ら な い

︒ こ れ に 字

︵ 通 称

︶ を 付 け て

﹁ 道

﹂ と 呼 ぼ う

︒ 私 は 強 い て こ れ の た め に

﹁ 大

﹂ と い う 名 を 付 け る

︒﹁ 大

き︶

﹂ と は

﹁ 逝

く︶

﹂ こ と を 言 い

︑﹁ 逝 く

﹂ と は

﹁遠 い

﹂こ と を 言い

︑﹁ 遠

い︶

﹂ とは

﹁ 返

る︶

﹂ こ とを 言 う

︒天 は 大 きく

︑ 地 は大 き く

︑道 は 大 きく

︑ 王 もま た 大き い

︒ こ の 世 界 に は 四 つ の 大 き な も の が あ る

︒ そ し て

︑ 王 は そ の 一 つ を 占 め て い る

︒ 人

︵ 王 の こ と

︶ は 地 を 手 本 と し

︑地 は 天 を手 本 と し︑ 天 は 道を 手 本 とし

︑ 道 は自 然

︵ ある が ま ま︶ を 手 本と す る

︒ 天

地 之 間

︑ 其 猶

©

籥 與︒ 虚 而 不屈

︑ 動 而愈 出

︵ 第 五章 後 半

︻ 訓

︼天 地 の 間は

︑ 其 れ猶 お

©

のご と き 与

︒ 虚

ろ にし て 屈 きず

︒ 動 けば 愈 々

い よい よ

出 ず

︻ 注

︼ 1

﹁ 間

﹂︑ 簡 本

﹂︒

﹃ 説 文

﹄ に

︑ 隙 也

︒ 从 門月

︑ 古文

﹂ と ある

︒﹁

﹂ は

﹂ の 仮 借 字 で

︑﹁

﹂ は

︵ 間

︶﹂ の 古 字 で あ る

︒ 2

﹁ 屈

﹂︑ 帛 書 は

Ô

﹂︑ 各 本

﹁ 屈

﹂︑ た だ し 傅 奕 本 は

ü

﹂ と し

︑﹃ 荀 子

﹄ 宥 坐 篇 に は

﹁ 其 洸 洸 乎 不

Ô

尽 似 道

﹂ とあ る

︒﹃ 経 典 釈 文

﹄ 音 義 に は

︑﹁ 掘

︑ 河 上 本 作 屈

︒ 屈

︑ 歇 也

﹂︒

﹁ 屈

﹂ は

﹁ 尽 き る

﹂ 意 で あ る

︒ 3

﹁ 出

﹂︑ 帛 書

︑ 各本 で は こ の 後 に

﹁多 聞 数 窮

︑ 不 若守 於 中

﹂ の 二 句が 続 く

︒ た だ し

︑各 本

﹁ 多 聞

﹂ を﹁ 多 言

﹂ に 作 っ て い る︒

◎ 押 韻﹁

︵前 節 末 の︶ 然

︑ 間﹂

︵元 部

︶︑

﹁屈

︑ 出

﹂︵ 物 部︶

︻ 訳

︼天 地 の 間は

︑ フ イゴ の よ うな も の だ︒ 中 は 空っ ぽ だ が︑ 尽 きる こ と はな く

︑ 動か せ ば

︑ま す ま す出 て く る︒

○ C 第三 組

︵ 甲

13

18

(8)

13

為 道

︑ 恒 無

︒ 侯 王 能 守 之

︑ 而万 物 将 自 化

︒ 化 而 欲 作

︑ 将 鎮 之 以 無 名 之 樸

︒ 夫

14

亦 将 知

︒ 知 足 以 静

︑ 万 物 将 自 定

︒■

︵ 第 三十 七 章

︻ 訓

︼ 能 く 道を 為 す は

︑ 恒 に 為す 無 き な り

︒ 侯 王能 く こ れ を 守 れ ば︑ 万 物 将 に 自

ず から 化 せ ん と す

︒ 化し て 而 も 作

ら ん と 欲 す れ ば

︑ 将 に こ れ を 鎮

む る に 無 名 の 樸

を 以 て せ ん と す

︒ 夫 れ 亦 将 に 足 る を 知 ら ん と す

︒ 足 る を 知 れ ば 以 て 静 ま り

︑ 万 物将 に 自 ずか ら 定 まら ん と す︒

︻ 注

︼ 1

﹁ 能 為

﹂︑ 諸 家 こ の 二 字 を 竹 簡

12

号 の 後 に 接 続 さ せ て い る が

︑私 は 崔 仁 義 説 に 従 い

︑ こ の 二 字

︵ 即 ち 竹 簡

13

︶ か ら 新 た な 組 が 始 ま る も の と 見 な し た い

︒︵ 凡 例 末 に 挙 げ た 拙 論 を 参 照 さ れ た い

︒︶ 竹 簡

12

号 二 字 目 の

﹁ 為

﹂ と 三 字 目 の

﹁ 道

﹂ の 間 に は

︑ 終 止 の 記 号ら し き も の は 一 切 記 さ れ て お ら ず

︑ 二 字 は 自 然 に 続 い て い る

︒ 押 韻 か ら 見 て も

︑﹁ 道

﹂ と

﹁ 之﹂

︵ 幽 之合 韻

︶ が 韻 を 踏み

︑ 自 然 で あ る︒

﹁ 道

﹂ から 始 ま る と す れば

︑﹁ 侯王 能 守 之

﹂ の 句が 押 韻 し な い こと に な る

︒ 2

﹁ 無

﹂︑ 簡 本

﹁ 亡

﹂︒ 簡 本 で は

﹁ 無

﹂ は 大 部 分

﹁ 亡

﹂ で 表 記 さ れ て い る が

︑ 本 稿 で は こ れ を 帛 書

︑ 各 本 に な ら っ て

﹁ 無

﹂ 字 に 改 め る

︒﹁ 無 為

﹂ を 帛 書 は

﹁ 无

︵ 無

︶ 名

﹂︑ 各 本

﹁ 無 為 而 無 不 為

﹂ と す る

︒ 3

﹁ 化

﹂︑ 簡 本

﹂ は 仮 借 字

﹂ は疑 母 歌 部

︑﹁ 化

﹂は 暁 母 歌 部

︒﹁ 疑

﹂母

﹁ 暁

﹂ 母共 に 舌 根 音

︑音 通 ず

︒ 4﹁ 作

﹂︑

﹃ 爾 雅﹄ 釈 言 に

﹁作

︑ 為 也

︒ 又 為 変

﹂ とあ る

︒ 5

﹁ 将 鎮

﹂の 前 に

︑ 帛 書 乙本

︑ 各 本 で は

﹁吾

﹂ の 字 が 入 る

︒帛 書 甲 本 は 不 明︒ 6

﹁ 足

﹂︑ 簡 本 欠

︒ 繰 り 返 し 記 号﹁

﹂ を 記 し 落 とし た と 考 え ら れる の で

︑ こ こ にこ の 一 字 を 補 う︒

﹁ 知 足

﹂を 帛 書 は

﹁ 不 辱﹂

︑ 各 本は

﹁ 不 欲

﹂ ま た は

﹁無 欲

﹂ に 作 る

︒7

﹁ 静

﹂︑ 簡 本

﹁ 朿

﹂︒ こ れ を

﹁ 静﹂ の 仮 借 字 と みる

︵ 魏 啓 鵬 説 参照

︶︒

﹁ 朿

﹂ は 古 音清 母 錫 部

﹁ 静

﹂ は 従 母 耕 部︒ 清 母

︑ 従 母 は 共 に 舌 尖 前 塞 擦 音 で あ り

︑ 錫 部

︑ 耕 部 は 対 転 通 韻 す る の で

︑﹁ 朿

﹂﹁ 静

﹂ 古 音 通 じ る

(9)

﹁ 万 物

﹂︑ 帛 書 は﹁ 天 地

﹂︑ 各 本 は

﹁ 天 下

﹂ と す る

︒ 9

﹁ 定

﹂︑ 帛 書

﹁ 正

﹂︒ 各 本 は

﹁ 定

﹂ と

﹁ 正

﹂ に 分 か れ る

◎ 押 韻

﹁ 道

︑ 之

﹂︵ 幽 之合 韻

︶︒ 簡 本 で は

﹁ 也

﹂ の 上 の 字 は 押 韻 す る

︵ 例

﹁ 為×

﹂︶ が

︑﹁ 之

﹂ の 上 で は 押 韻 し な い

︵ 例

﹁ 守×

﹂︶

︒こ の 点で

︑﹃ 楚 辞

﹄ の押 韻 法 と同 じ で ある

︒﹁ 為

︑ 化﹂

︵歌 部

︶︑

﹁樸

︑ 足

﹂︵ 覚屋 合 韻

︶︑

﹁ 静

﹂﹁ 定

﹂︵ 耕 部︶

︻ 訳

︼ 道 を 行う こ と が で き る もの は

︑ い つ も 何 も為 さ な い

︒ 侯 王

︵統 治 者

︶ が こ れ を守 る こ と が で き れば

︑ 万 物

︵ 被 統 治 者

︶ は お の ず か ら 教 化 さ れ る で あ ろ う

︒ 教 化 さ れ て

︑ そ の 上 さ ら に 変 を 起 こ そ う と す れ ば

︑ こ れ を

﹁ 無 名 の 樸

︵ あ ら き

︶﹂ を 用 い て 鎮 める で あ ろ う

︒ する と

︑ 彼 ら は ま た︑ 足 る こ と を 知る で あ ろ う

︒ 足る こ と を 知 っ て 静ま れ ば

︑ 万 物 は 自 ず と落 ち 着 いて ゆ く であ ろ う︒ 為

無 為

︑事 無 事

︒ 味 無 味

︑ 大 小 之

多 易 必多 難

︒ 是以 聖 人

15

猶 難 之

︒ 故 終3

無難△

︵ 第 六十 三 章

︻ 訓

︼ 為 す こと 無 き を 為 し

︑ 事と す る 無 き を 事 とす

︒ 味 無 き を 味 わい

︑ 大 は こ れ を 小と す

︒ 易

き こ と 多き は

︑ 必 ず 難

き こ と 多 し︒ 是

を以 て 聖 人は 猶 お これ を 難 しと す

︒ 故に 終 に 難き こ と 無し

︻ 注

︼ 1

﹁ 大小 之

﹂︑ 簡本

﹁ 小

﹂ を

﹁ 少

﹂に 作 る の は

︑﹁ 小

﹂ の 仮 借字 と み る

︒ 誤 写 の可 能 性 も あ る

︒ 帛書 甲 本 は

﹁ 大 小 多 少

﹂ に 作 る

︒ 各 本 同 じ

︒ 帛 書 乙 本 は 不 明

︒ 2 帛 書 甲 本

︑ 各 本 は

﹁ 多 易 必 多 難

﹂ の 上 に

﹁ 報 徳 以 徳

︑ 図 難 於 其 易

︑ 為 大 於 其 細 也︑ 天 下 之 難

︑ 作 於為

︑ 天 下 之 大

︑作 於 細

︑ 是 以 聖人 終 不 為 大

︑ 故 能成 其 大

︑ 夫 軽 諾必 寡 信

﹂︵ 傍 線 部 は 帛 書 甲 乙 本 と も不 明

︶ が 入 る

︒ 簡本

︑﹁ 大少

︵ 小

︶ 之 多 易

︑必 多 難

﹂ と い う読 み 方 が 提 出 され て い る が

︑ この よ う な 切 り 方 を す れ ば︑ 文 章 のリ ズ ムが 狂 っ てし ま う

︒帛 書 甲 本を 見 て も分 か る よう に

︑﹁ 多 易必 多 難

﹂は こ れ でま と ま った 句 で ある

(10)

﹁ 終 無

﹂︑ 帛 書 甲 本 は

﹁ 終

﹂ と

﹁ 無

﹂ の 間 に

﹁ 於

﹂ 字 が 入 る

︒ 各 本 は 簡 本 に 同 じ

◎ 押 韻

﹁ 為

︑ 味

︑ 難

﹂︵ 歌

︑ 月

︑ 元 通 韻︶

︑﹁ 事︑ 之

﹂︵ 之 部

︶︒

︻ 訳

︼ 何 も しな い よ う に す る

︒何 事 も 起 こ さ な いで い る

︒ 味 の な いも の を 味 わ う

︒ 何事 も 大 げ さ に し ない

︒ し や す い こ と は

︑ き っ と し に く く な る

︒ そ れ で 聖 人 は

︑ や さ し い こ と で も

︑ 難 し い こ と と し て 扱 う

︒ だ か ら

︑ 最 後 ま で 困 難 に 出 会 う こ とが な い

︒ 天

下 皆 知 美 之 為 美

︑ 悪 已

︒ 皆 知 善1

︑ 此 其 不 善 已

︒ 有 無 之 相 生

16

難 易 之 相 成

︒ 長 短 之 相 形

︒ 高 下 之 相 盈

︒ 音 声 之 相 和

︒ 先 後 之 相 随

17

以 聖 人 居 無 為 之 事

︑ 行 不 言 之 教

︒ 万 物 作 而 弗 始

︒ 為 而 弗 恃

︒ 成6

而 弗 居

︒ 夫

18

弗居

︒是 以 弗 去

︵第 二 章

︻ 訓

︼ 天 下 皆︑ 美 の 美 為 る を 知る や

︑ 悪

き の み

︒皆 善 を 知 る や

︑ 此れ 不 善 な る の み

︒有 無 は こ れ 相

生 ずる な り

︒ 難 易 は こ れ 相 成 る な り

︒ 長短 は こ れ 相 形 づ く る な り

︒ 高 下 は これ 相 盈 た す な り

︒ 音 声 は こ れ 相和 す る な り

︒ 先 後 は こ れ 相 随 う な り

︒ 是

を 以 て 聖 人 は

︑ 無 為 の 事 に 居 り て

︑ 不 言 の 教 え を 行 う

︒ 万 物 作

り て 而

も 始 め ず

︒ 成 し て 而 も 居 ら ず

︒ 夫 れ 居 ら ざ るな り

︒是 を 以 て去 ら ざ るな り

︻ 注

︼ 1

﹁ 善

﹂︑ 各 本 こ の 後 に

﹁ 之 為 善

﹂ が 入 る

︒ 帛 書 甲 乙 本 は

﹁ 之 為 善

﹂ が な く

︑ 簡 本 に 同 じ

︒ 2

﹁ 盈

﹂︑ 簡 本

À

﹂︑ 帛 書

﹁ 盈﹂

︑ 各 本﹁ 傾

﹂︒

À

﹂は

﹁ 盈

﹂ の 仮借 字

︒ 古 音 共 に喩 四 耕 部

︒ 3﹁ 随 也

﹂ と

﹁是 以

﹂ の 間 に

︑帛 書 甲 乙 本

﹁恒 也

﹂ の 二 字 が 入 る

︒ 各 本 こ の 二 字 な し

︒ 4

﹁ 始

﹂︑ 簡 本

﹁ 怡

﹂︒ 帛 書

︑ 各 本

﹁ 始

﹂︒

﹃ 説 文

﹄ に

﹁ 怡

︑ 从 心 台 声

﹂︑

﹁ 始

(11)

从 女 台 声

﹂と あ る

︒﹁ 怡﹂ は

﹁ 始

﹂ の 仮 借字

︒ 5

﹁ 恃

﹂︑ 簡 本

﹂︑ 帛 書乙 本

﹁ 侍

﹂︑ 各 本

﹁ 恃

﹂︒

﹂ を

﹁ 恃

﹂ の 簡 略 字 と と る

︒ 上 海 博物 館 蔵

︵ 以 下

﹁ 上 博

﹂ と 略 す

︶ 楚 簡

﹁孔 子 詩 論

﹂ に

﹁ 詩

﹂ を

﹂ と 表 記 し て い る

︒ 即 ち︑

﹁ 止

﹂ は

﹁ 寺

﹂︵ 古 字は 止

+ 寸

︶の 簡 略 体 と して 使 わ れ てい る

︒ こ れに よ り

︑ 簡 本﹁

﹂︵ 止

+心

︶ を

﹁ 恃﹂

︵ 寺+ 心

︶ の 簡 略 字 と 取る

︒﹃ 説 文

﹄に

﹁ 恃

︑頼 也

︒ 从心 寺 声

﹂と あ る

︒6

﹁ 成而

﹂︑ 帛 書

︑ 各本

﹁ 成 功、而

﹂︒ 簡 本 には

﹁ 功

﹂の 字 が ない

︒ 7

﹁ 夫

﹂︑ 簡 本

﹁ 天﹂ と す る の は

﹁夫

﹂ の 誤 写

︒ 帛書

︑ 各 本 は

﹁ 夫﹂ に 作 る

◎ 押韻

﹁ 美

︑ 已

﹂︵ 脂 之 合 韻︶

︑﹁ 生

︑ 成

︑ 形

︑ 盈﹂

︵耕 部

︶︑

﹁和

︑ 随

﹂︵ 歌部

︶︑

﹁ 事︑ 始

︑ 恃﹂

︵之 部

︶︑

﹁居

︑ 去

﹂︵ 魚部

︶︒

︻ 訳

︼ 天 下 の人 々 が 皆

︑ 美 し いも の を 美 し い と 見な す か ら こ そ

︑ 醜い も の が あ る の だ︒ 皆

︑ 善 い と 認 める こ と こ そ が

︑ 善 く な い の だ

︒ 有 と 無 と は お 互 い に 生 じ あ い

︑ 難 と 易 と は お 互 い に 成 り 立 た せ

︑ 長 と 短 と は お 互 い に 形 づ く り

︑ 高 と 下 は お 互 い に 満 た し あ い

︑ 音 楽 と 肉 声 と は お 互 い に 調 和 し あ い

︑ 先 と 後 と は お 互 い に 順 序 づ け あ う

︒ そ れ で 聖 人 は

︑ 無 為 の ま ま に 身 を 保 っ て

︑ 言 葉 に は 表 さ な い で 教 化 を 行 う

︒ 万 物 が 動 き 出 し て も

︑ 自 分 か ら 始 め よ う と は せ ず

︑ 何 事 か を 成 し て も

︑ 頼 ろ う と は せ ず

︑ 成 し 遂 げ て も

︑ そ の 結 果 に 安 住 し よ う と は し な い

︒ そ も そ も 安 住 し よ う と は し な い

︒ そ れ で去 ろ う とも し な い︒ 道

恒 無名

︑ 樸 雖 稚

︑天 地 弗 敢 臣

︒ 侯 王 如 能

19

守 之

︑ 万物 将 自 賓

︒■ 天 地 相 合 也︑ 以 輸 甘 露︒ 民 莫 之 命

︑而 自 均 焉

︒ 始 制 有名

︑ 名

20

亦 既有

︑ 夫 亦将 知 止

︒知 止 所 以不 殆

︒ 譬道 之 在 天下

︑ 猶小 谷 之与 江 海

︒■

︵ 第 三十 二 章

︻ 訓

︼道 は 恒 に名 無 し

︒樸 は 稚 なり と 雖 も︑ 天 地 敢え て 臣 と せず

︒ 侯 王如 し 能 くこ れ を 守れ ば

︑ 万物 将 に 自ら 賓

せ んと す

(12)

天 地 の 相 合 う や

︑ 以 て 甘 露 を 輸

︒ 民 こ れ に 命 ず る こ と 莫 く し て

︑ 而 も 自 ず か ら 均

︒ 始 め は 名 を 有 す る を 制 し

︑ 名 亦 既 に 有 れ ば

︑ 夫 れ 亦 将 に 止 む る こ と を 知 ら ん と す

︒ 止 む る こ と を 知 る は

︑ 殆

う か ら ざ る 所 以

ゆ え ん

な り

︒ 譬

え ば 道 の 天 下 に 在 ける や

︑猶 お 小 谷の 江 海 に与 け る がご と し

︻ 注

︼ 1

﹁ 稚﹂

︑ 簡 本﹁ 妻

﹂ に 作 る

︒ 帛書 乙 本

︑ 各 本

﹁小

﹂︒

﹃ 方 言

﹄ 巻 二 に﹁ 穉

︑ 小 也

﹂︑ 郭 璞 注 に

﹁古 稚 字

﹂︒

﹁ 穉

﹂ は古 音 澄 母 脂 部

︒﹁ 妻

﹂ は清 母 脂 部

︒ 澄 母 は 舌 尖 中 音

︑ 清 母 は 舌 尖 前 音 で

︑ 音 近 し

︒﹁ 妻

﹂ を

﹁ 穉

﹂ 即 ち

﹁ 稚

﹂ の 仮借 字 と 取 る

︒﹃ 説 文﹄ で は

¼

﹂ の 字 であ る

︒ 2

﹁天 地

﹂︑ 帛 書 乙 本︑ 各 本

﹁ 天下

﹂ に 作 る︒ 3

﹁ 賓

﹂︑

﹃ 爾 雅

﹄ 釈詁 に

﹁ 賓

︑服 也

﹂︒ 4

﹁ 輸

﹂︑ 簡 本

﹁ 逾

﹂ は 仮 借 字

︒ 帛 書 甲 乙 本

﹁ 兪

﹂ も 同 じ く

﹁ 輸

﹂ の 仮 借 字 で あ ろ う

︒ 各 本

﹁ 降

﹂︒

﹃ 説 文

﹄ に

﹁輸

︑ 委 輸也

﹂︒

﹁ 運ぶ

︑ も たら す

﹂の 意

Paulos Huang

﹁ 輸

︑委 輸

﹂ を︿

to transport, to convey

﹀ と 解し て い る︒

﹃広 韻

﹄ の﹁ 輸

︑ 写

︑堕

﹂ の 意を 採 る 説 が多 い が

︑ この 場 合

︑ 字義 が 適 当 でな い と 考 える

︒ 5

﹁ 而﹂

︑ 簡本

﹁ 天

﹂ とす る の は 誤 写

︒ 帛 書 乙 本

︑ 各 本

﹁ 而

﹂︒ 6

﹁ 制

﹂︑ 簡 本

﹁ 折

﹂︑ 帛 書 乙 本 は

﹁ 制

﹂ に つ く る

︒ 今

︑﹁ 折

﹂ を

﹁ 制

﹂ の 仮 借字 と と る

︒﹁ 制

﹂﹁ 折

﹂ 古 音 共に 照 母 月 部

︒ 各本

﹁ 折

﹂︒ 7

﹁ 小

﹂︑ 帛 書 乙 本 同

︒各 本

﹁ 川

﹂ に 作る

︒︵ 補︶ こ の 章

︑ 冒 頭に 二 字 分 の 空 白 が あ る

︒ 第 三 組 冒 頭 と 比 較 し て み る と

︑ こ の 空 白 部 分 に

﹁ 能 為

﹂ 二 字 が 入 っ て い た 可 能 性 が ある

︒ 私 は

﹁道

﹂ は 下 出 の

﹁ 臣︵ 臣 下 と す る

︶﹂ と い う動 作 の 主 体 と して は な じ ま な いの で は な い か と 考え る

︒﹁ 樸

﹂ と

﹁ 臣

﹂ の関 係 で は

︑﹃ 春 秋 左 氏伝

﹄ 昭 公 七 年 の︑

﹁ 故 王臣 公

︑ 公 臣 大

︑⁝ 僚 臣 僕

︑ 僕 臣台

﹂︑ 孔 穎達 疏

﹁ 服 虔 曰

︑台

︑ 給 台 下

︑ 微名 也

﹂ と の 関 連 が 考 え ら れ る

︒ 簡 本 が

﹁ 樸

﹂ の 代 わ り に 仮 借 字

﹁ 僕

﹂ を 用 い て い る の に は

︑ か け こ と ば

、 の 意 識 が働 い て い た か もし れ な い

︒﹁ 妻

﹂ に つ い ても

︑ 単 な る 仮 借字 に し て は

︑ 意 が重 い よ う に 思 われ る

︒ や は り 本来 の 意 味 が 懸 けら れ て い る の で は な い だ ろ う か

︒﹁ 僕

﹂ は

﹁ 妻

﹂ を 娶 る の が 精 一 杯 で

︑ 誰 か ら も 相 手 に さ れ な い 微 小 な 存 在 な の で あ る

(13)

◎ 押 韻

﹁ 名

︑ 臣

︑ 賓

﹂︵ 耕 真 合 韻

︶︑

﹁ 稚

︑ 之

﹂︵ 脂 之 合 韻

︶︑

﹁ 命

︑ 名

﹂︵ 耕 部

︶︑

﹁ 有

︑ 止

︑ 殆

︑ 下

︑ 海

﹂︵ 之 魚 合 韻

︶︒

︵ 追 補

︶﹁ 自 賓

﹂ と

﹁ 天 地 相 合

﹂ の 間 に

■ 印 が 付 さ れ て い る が

︑ 各 本 に 従 っ て

︑ こ こ で は 文 章 を 切 ら ず に

︑ 以 下 に続 け た

︒な お

︑﹁ 天 地 相合 也

︑ 以輸 甘 露﹂ の 押 韻関 係 が 明ら か で ない

︒﹁ 合

﹂ は緝 部

︑﹁ 露

﹂ は鐸 部

︒ 緝鐸 合 韻の 例 を 見な い

︒ 前 後の 句 と も押 韻 し ない よ う であ る

︻ 訳

︼ 道 はい つ も 無 名 で あ る︒

︵ そ れ は無 名 の 樸 に 喩 え られ る

︒︶ 樸は 小 さ い け れ ど も︑ こ の 世 界 の 誰 も進 ん で こ れ を 臣下 に し よ う と は し な い

︒ 侯 王 が も し こ の 樸 の 在 り 方 を 守 る こ と が で き れ ば

︑ 万 物 は 自 ず か ら 帰 順 し て 来 る で あ ろ う

︒天 地 が 相 合 わ さ り

︑ そ し て 甘 露 が も た ら さ れ る

︒ 民 衆 は 命 令 さ れ な く て も

︑ 自 分 た ち で 平 和 に な る

︒ 始 め は 名 が 出 来る こ と を 抑 え

︑ 名 が 既 に も う 出 来 て し ま う と

︑ 今 度 は 限 度 を 知 る で あ ろ う

︒ 限 度 を 知 れ ば

︑ 危 う い こ と が な く な る

︒道 の こ の世 と の関 係 は

︑例 え ば

︑小 谷 の 江海 と の 関係 と 同 じよ う な もの だ

〇 C 第四 組

︵甲

25

32

25

其 安 也

︑ 易 持

︒ 其 未 兆 也

︑ 易 謀

︒ 其 脆

︑ 易 判

︒ 其 幾

︑ 易 残

︒ 為 之 於 其

26

無 有

︑ 治 之 於 其 未 乱

︒ 合

︵抱 之 本

︑生 於 毫

︶末

︑ 九 成 之 台

︑ 作

︵ 於

9

︑ 百 仞之 高

︑始 於

27

足 下

︵第 六 十 四章 前 半

︻ 訓

︼ 其 の 安 き や

︑ 持 ち 易

き な り

︒ 其 の 未 だ 兆

さ ざ る や

︑ 謀

り 易 き な り

︒ 其 の 脆

き や

︑ 判

ち 難 き な り

︒ 其 の 幾

か な る や

︑ 残 い 易 き な り

︒ こ れ を其 の 有 る こ と 無 き に 為 す な り

︒こ れ を 其 の 未 だ 乱 れ ざ る に 治 む︒ 合

︵ 抱 の 木 は

︑ 毫

︶ 末

︵ よ り 生 ま れ︶

︑九 成 の 台は

9

土 よ り︶ 作 こ る︒

︵ 百仞 の 高 きは

︑︶ 足 下

︵よ り 始 まる

︒︶

(14)

︻ 注

︼ 1﹁ 持

﹂︑ 簡 本

﹂ に 作 る︒ 帛 書 不 明

︑各 本

﹁ 持

﹂︒ 上 述 した よ う に

︑ 上博 楚 簡

﹁ 孔 子詩 論

﹂ で は

﹁止

﹂ は

﹁ 寺﹂ の 簡 略体 と し て 使 われ て い る

︒こ こ も

︑﹁

﹂ を

﹁ 持

﹂の 仮 借 字 と みる

︒ 部 首 の﹁ 手

﹂ は

﹁ 木﹂ と 混 同 され る こ と があ る

︒ 2﹁ 謀

﹂︑ 簡 本﹁

﹂︒ 帛 書 不 明︑ 各 本

﹁謀

﹂︒ 今

︑﹃ 集 韻﹄ 侯 韻 の部 に

﹁ 謀︑ 或 作

﹂ とす る の に従 う

︒﹁ 謀

﹂﹁ 母﹂ 共 に 明 母 之 部

︒ 3

﹁ 判

﹂︑ 簡 本

﹁ 畔

﹂︑ 帛 書 不 明

︑ 各 本

﹁ 破

﹂﹁ 判

﹂﹁

¦

﹂ の い づ れ か に 作 る

︒﹃ 説 文

﹄ に

﹁ 判

︑ 分 也

︒ 从 刀半 声

﹂ とあ る

︒﹁ 畔

﹂ を﹁ 判

﹂の 仮 借 字と み る

︒4

﹁ 幾

﹂︑ 帛書 不 明

︑各 本

﹁ 微﹂

︒﹃ 説 文﹄ に

﹁ 幾︑ 微 也

﹂︒ 5﹁ 残

﹂ 簡 本

﹂︒ 帛 書 不 明︑ 各 本

﹁ 散

﹂に 作 る

︒﹃ 説 文

﹄ に﹁ 殘

︑ 賊 也

︒从

戔 声

﹂ と ある

︒ 今

︑ 簡 本﹁

﹂ を

﹁ 殘

﹂ の仮 借 字 と み る

︒ 6

﹁ 其 無 有

﹂︑ 帛 書 不 明

︑ 各 本

﹁ 未 有

﹂ に 作 る

︒ 7

﹁ 成

﹂︑ 簡 本

﹁ 城

﹂ は 仮 借 字

︒ 帛 書 乙 本

﹁ 成﹂ と 推 定 さ れ る

︒ 各 本

﹁ 成

﹂﹁ 層

﹂﹁ 重

﹂ に 分 か れ る

︒ 8

﹁ 作

﹂︑ 簡 本

﹁ 甲

﹂﹁ 作

﹂﹁ 起

﹂ の 釈 文 が 提 出 さ れ て い る が

︑﹁ 乍

﹂と 読 み

︑﹁ 作

﹂ の 簡 略字 と み な す

︒ 帛書 甲 本

﹁ 作

﹂︑ 各 本

﹁ 起﹂

◎ 押 韻﹁ 持

︑ 謀

︑ 幾

︑有

﹂︵ 之部

︶︑

﹁ 脆

︑ 判

︑ 残︑ 乱

︑ 末

︵月

︑ 元 通韻

︶︑

﹁︵ 土

︶︑ 下

﹂︵ 魚部

︶︒

︻ 訳

︼ 安 ら か で あ れ ば

︑ 持 ち や す い

︒ ま だ 兆 し て い な け れ ば

︑ 手 を 加 え や す い

︒ 脆 け れ ば

︑ 分 け や す い

︒ 微 か で あ れ ば

︑ 壊 し や す い

︒ だ か ら

︑ そ れ が 無 い う ち に 手 を 下 し

︑ そ れ が ま だ 乱 れ て い な い う ち に

︑ 治 め て し ま う

︒ ひ と 抱 か え の木 も

︑ 小さ な 芽か ら 生 じ︑ 九 層 の台 も 一 盛り の 土 から 起 こ り︑ 百 仞 の高 さ も 足下 か ら始 ま る

︒ 知之 者 弗 言

︑ 言 之 者 弗 知

︒ 閉 其 兌

︑ 塞 其 門

︒ 和 其 光

︑ 同 其 塵

︒ 留 其 穎

︑ 解 其紛

28

是 謂 玄 同

︒ 故 不 可 得 而 親

︑ 亦 不 可 得 而 疏︒ 不 可得 而 利

︑亦 不 可 得而 害

29

不 可 得而 貴

︑ 亦不 可 得 而賎

︒ 故 為天 下 貴

︵ 第 五十 六 章

︶ 三

(15)

︻ 訓

︼ こ れ を知 る も の は 言 わ ず︒ こ れ を 言 う も のは 知 ら ず

︒ 其 の 兌

を 閉 じ

︑ 其 の 門 を塞 ぐ

︒ 其 の 光 を和

ら げ

︑ 其 の 塵 を 同 じ く す

︒ 其 の 穎 を 留 め

︑ 其 の 紛 れ を 解 く

︒ 是 れ を 玄 同 と 謂 う

︒ 故

よ り 得 て 親 し む 可 か ら ず

︑ 亦

得 て 疎 ん ず 可 か ら ず

︒ 得 て 利す 可 から ず

︑ 亦得 て 害 す可 か ら ず︒ 得 て 貴ぶ 可 か らず

︑ 亦 得て 賎 し む可 か ら ず︒ 故 に天 下 の 貴ぶ と こ ろと 為 る

︻ 注

︼ 1

﹁ 之

﹂︑ 帛 書

︑ 各 本 こ の 字 な し

︒ 2

﹁ 塵

﹂︑ 簡 本

﹂ は

﹁ 新

﹂︵ 心 母 真 部

︶ と 同 音 と 考 え ら れ

︑﹁ 塵

﹂︵ 定 母 真 部

︶ と音 が 近 い︵ 心 母は 舌 尖 前音

︑ 定 母は 舌 尖 中音

︶︒

﹂ を﹁ 塵

﹂ の仮 借 字 とみ る

︒3

﹁ 和 其光

︑ 同 其塵

﹂﹁ 留 其 穎︑ 解 其 紛

﹂︑ 各 本 順 逆

︒ 帛 書 は 簡 本 に 同 じ

︒ 4﹁ 留

﹂︑ 簡 本

﹂ と す る 釈 文 が 多 い が︑ な お 定 か で な い

︒ 私 は

︑ こ れ を

﹂と 読 み

︑﹁ 留

﹂の 仮 借 字 と考 え た い︒

﹂ は﹁ 劉

﹂ に通 じ

︑﹁ 殺 す

﹂の 意 を 持つ が

︑ 今

︑こ れ は

﹁和

﹂﹁ 同

﹂﹁ 解

﹂ と 比 べ て 意 が 強 す ぎ る の で 採 ら な い

︒ 各 本

﹁ 挫

﹂︑ 帛 書 甲 本

﹁ 坐

﹂︑ 帛 書 乙 本

N

﹂︒ 5

﹁ 穎

﹂︑ 簡 本

﹂ と 読 め る

︒ 二 人 称 代名 詞

﹁ 尓

﹂は

﹁ 女

︵ 汝︶

﹂ に 通じ る の で

︑﹁

﹂ に

﹁ 嬰﹂ を 当 て

︑こ れ を

﹁ 穎

﹂の 仮 借 字 とと る

︒﹁ 嬰

﹂ は 影 母 耕 部

︑﹁ 穎

﹂ は 喩 四 耕 部 で

︑ 古 音 近 し

︵ 影 母 は 喉 音

︑ 喩 四 は 舌 面 前 辺 音

︶︒

﹃ 史 記

﹄ 平 原 君 列 伝 に

︑﹁ 譬 若 錐 之 処 嚢 中

︑ 其 末 立 見

﹂︵ 譬 え ば 錐

嚢中 に 処 れ ば

︑ 其 の 末

立 ち ど こ ろ に 見

わ る る が 若 し

︶ に 続 け て

︑﹁ 使 遂

︵ 人 名

︶ 蚤 得 処 嚢 中

︑ 乃 穎 脱 而 出

﹂︵ 遂 を し て 蚤

に 嚢 中 に 処 る を 得 使 め ば

︑ 乃 ち 穎 脱 し て 出 で ん

︶ と あ る

︒﹁ 平 原 君 列 伝

﹂ で は

︑ こ の 場 面 で

﹁先 生 不 能︑ 先 生 留、﹂

︵先 生 能 わず

︒ 先 生留 ま れ

︒︶ とあ る の も︑ 今

︑﹁ 留

﹂ 字と の 関連 で 注 目さ れ る

︒﹁ 穎

﹂は 錐 の穂 先

︒ 各 本 は﹁ 穎

﹂ を

﹁ 鋭﹂ に 作 る

︒ 帛書 甲 本 不 明︒ 帛 書 乙 本 の時 に 既 に

﹁ 鋭﹂ と な っ てい る の は

︑ 秦始 皇 の 姓

3

﹂︵ 喩 四 耕 部

︶ を避 け た も の と 思わ れ る

︒ な お

︑﹁ 鋭

﹂ は 古音 喩 四 月 部 で

︑﹁ 嬰

﹂ と 音が 通 じ な い

︒ 6簡 本

︑﹁ 亦

﹂ と

﹁ 不

﹂ の 間 に

﹁ 可

﹂ 字 が 入 っ て い る の は

︑ 衍 字

︒ 7

﹁ 貴

﹂︵ 見 母 微 部

︶ は 古 音

﹁ 帰

﹂︵ 見 母 微 部

︶ に 通 じ る の で

︑ こ こ は

﹁ 帰

﹂と 懸 け 詞に な って い る 可能 性 が ある

◎ 押韻

﹁ 門

︑塵

︑ 紛

﹂︵ 文真 合 韻

︶︑

﹁ 親

︑ 利﹂

︵真

︑ 質 通韻

︶︑

﹁ 害︑ 賎

﹂︵ 月 元通 韻

(16)

﹁貴 貴

﹂︵ 微 部︶

︻ 訳

︼ 知 っ てい る 者 は

︑ 口 に 出し て 言 お う と は しな い

︒ 口 に 出 し て言 う も の は

︑ 知 ろう と は し て い な い︒ 穴 を 閉 ざ し

︑ 門 を 塞 ぐ

︒ 光 を 和 ら げ

︑ 塵 を 清 め る

︒ 突 出 す る の を 抑 え

︑ も つ れ を 解 き ほ ぐ す

︒ こ れ を

﹁ 玄 妙 な る 同 一 化

﹂ と 言 う

︒ も と も と 親 し む こ と も で き ず

︑ 疎 ん じ る こ と も で き な い

︒ 利 益 を 与 え る こ と も で き ず

︑ 損 害 を 与 え る こ と も で き な い

︒ 貴 ぶ こと も で きず

︑ さ げす む こと も で きな い

︒ だか ら 天 下の 貴 き もの

︵ 帰 すべ き と ころ

︶ と なる

︒ 以

正 治

︑ 以 奇 用 兵

︑ 以 無 事

30

取 天 下

︒ 吾 何 以 知 其 然

︒ 夫 天 多 忌 諱

︑ 而 民 彌 叛

︑ 民 多 利 器

︑ 而 邦 滋 昏

︒ 人 多

31

︑ 而 奇 物 滋 起

︑ 法 物 滋 彰

︑ 盗 賊 多 有

︒ 是 以 聖 人 之 言 曰

︑ 我 無

︑ 而 民 自 富

32

我 無 為

︑ 而 民 自 化

︒ 我 好 静

︑ 而 民 自 正

︒ 我 欲 不欲

︑ 而民 自 樸

︒レ

︵ 第 五十 七 章

︻ 訓

︼ 正 を 以て 邦 を 治 め

︑ 奇 を以 て 兵 を 用 い

︑ 事無 き を 以 て 天 下 を取 る

︒ 吾 何 を 以 てか そ の 然 る を 知 るや

︒ 夫 れ 天 に 忌 多 く し て

︑ 民 彌 々

いよ いよ

叛 し

︑ 民 に 利 器 多 く し て

︑ 邦 滋 々 昏

いよ い よく ら

︒ 人 に 知 多 く し て

︑ 奇 物 滋 々 起 こ り

︑ 法 物 滋 々 彰 か な り て

︑ 盗 賊 有 るこ と 多 し

︒ 是 を 以て 聖 人 の 言 に 曰く

︑﹁ 我 為す こ と 無 く し て︑ 民 自

ず か ら 化

︒ 我 欲 せ ざ るを 欲 し て

︑ 民 自 ず か ら 樸た り

﹂と

︻ 注

︼ 1

﹁ 知

﹂︑ 簡 本

﹁ 之

﹂︒ 帛 書

︑ 河 上 公 本 同

︒ 各 本

﹁ 治

﹂︒

﹁ 之

﹂ は 照 母 之 部

︑﹁ 治

﹂ は 澄 母 之 部

︒ 照 母 は 舌 面 前 音

︑ 澄 母 は 舌尖 中 音 で音 近 し︒

﹁ 之﹂ を

﹁ 治﹂ の 仮 借字 と み る︒ 2

﹁叛

﹂︑ 簡 本

﹁ 畔﹂

︒﹃ 国 語﹄ 楚 語下 に

﹁ 民多 闕

︑ 則有 離 畔

﹂ と あ る

︒﹃ 説文

﹄ に は

﹁ 畔

︑ 田 界 也

︑ 从 田 半 声

﹂︒ 宋

・ 孫

ž

﹃ 孟 子 音 義

﹄ 公 孫 丑 下 に

︑﹁ 畔

︑ 張 云

︑ 与 叛 同

﹂︒

﹃ 広 雅

(17)

釈 詁 三 に﹁ 叛

︑ 乱 也

﹂︑

﹃ 広韻

﹄ 換 韻 に

︑﹁ 叛

︑ 奔 他国

﹂ と あ る の を勘 案 し

︑﹁ 畔

﹂ を

﹁ 叛

﹂ の仮 借 字 と し た が︑

﹁ 畔

﹂の ま ま でも 可

︒ 3﹁ 無

﹂︑ 簡 本 ここ は

﹁ 亡﹂ で は な く﹁

﹂ の 字 を当 て て いる

︒﹃ 説 文

﹄ に﹁ 無

︑ 亡 也︒ 从 亡 声

﹂︒ 簡本

﹂ は お そら く

﹂ の 簡 略 字 で

︑﹁ 無

﹂ の 意

︒ な ぜ﹁ 簡 本

﹂ で こ こ の み﹁ 亡

﹂ で な く

﹁ 無

﹂な の か

︑ 今 の 所

︑ 私に は 不 明 で あ る

︒ 4

﹁ レ

﹂︑ 簡 本 で は

﹁ 乙

﹂ の 字 形 の 崩 れ た 記 号

︒﹃ 説 文

﹄ に

︑﹁ レ

︑ 鉤 識 也

︒ 从 亅反

﹂ と あ る

◎ 押 韻

﹁然

︑ 叛

︑ 昏

﹂︵ 元 部

︶︑

﹁ 知︑ 起

︑ 有

﹂︵ 支 之 合 韻︶

︑﹁ 事

︑ 富

﹂︵ 之 職 通 韻

︶︑

﹁ 為

︑ 化

﹂︵ 歌 部

︶︑

﹁ 静

︑正

﹂︵ 耕部

︶︑

﹁ 欲

︑ 樸

﹂︵ 屋 覚 合 韻

︶︒ な お

︑ 冒 頭 の

﹁ 以 正 治 邦

︑ 以 奇 用 兵

︑ 以 無 事 取 天 下

﹂ 三 句 の み 押 韻 し て お ら ず

︑ 他 書 か ら の引 用 か も 知 れ な い

︒︵

﹁ 以

﹂ で 頭 韻 を 成 す と も 考 え う る

︒︶ ま た

︑﹁ 人 多 知

︑ 而 奇 物 滋 起

︑ 法 物 滋 彰

︑ 盗 賊 多 有

﹂ は

︑ 前 二 句

︑ 後 二句 で 区 切る の が 一般 で あ るが

︑ 押 韻か ら 考 えて

︑ こ の四 句 で ひと ま とま り と 見な す べ きで あ ろ う︒

︻ 訳

︼ 正 統 な手 段 で 国 家 を 治 め︑ 奇 計 を 用 い て 軍隊 を 動 か す

︒ 何 ら事 を 起 こ さ ず に 天下 を 取 る

︒ 私 は どう し て そ う だ と 知 る の か

︒ そ も そ も こ の 天 の 下

︑ 禁 忌

タ ブ ー

が 多 け れ ば

︑ 民 衆 は い よ い よ 離 反 し

︑ 民 衆 に 鋭 い 道 具 が 多 け れ ば

︑ 国 家 は ま す ま す 混 乱 す る

︒ 統 治 す る 人 に 智 慧 が 多 け れ ば

︑ 手 に 負 え ぬ 厄 介 な 物 が ま す ま す 動 き 始 め

︑ 法 令 の 類 が ま す ま す 隅 々 ま で 行 き わ た り

︑ 盗 賊 が 多 く な る

︒ そ れ で 聖 人 の 言 葉 に 言 う

︒﹁ 私 が 何 も 事 を 行 わ な け れ ば

︑ 民 衆 は 自 ず か ら 豊 か に な る

︒ 私 が 何 も し な け れ ば

︑ 民 衆 は 自 ず か ら 教 化 さ れ る

︒ 私 が 好 ん で 静 か に し て い れ ば

︑ 民 衆 は 自 ず か ら 正 し く な る︒ 私 が 何 も欲 し が らな け れ ば︑ 民 衆 は自 ず か ら素 朴 に なる

﹂︒

〇 C 第五 組

︵甲 1

12

︶ 1絶 智 棄 辨

︑ 民 利 百 倍

■ 絶 巧 棄 利

︑ 盗 賊 無 有

■ 絶 偽 棄 詐

︑ 民 復 孝

■ 三 言 以 2 為 辯 不 足

︑ 或 命 之 有 乎

10

■ 見 一

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