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*Faculty of Science and Engineering Department of Mechanical and Systems Engineering, Doshisha University, Kyoto Telephone: +81-80-5111-7355, FAX: +81-80-5111-7355 E-mail: [email protected] .
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Consideration and Practice of an Effective Promotion System for Multi-Industry-Academia Collaboration in the Automobile Industry
Akihiro AOYAMA*, Kiyotaka OBUNAI **, Kazuya OKUBO ***
(Received October 2, 2019)
The purpose of this study is to propose an effective framework for industry-academia collaboration and to investigate its effectiveness at actual collaboration. In this study, an effective framework to promote smooth collaborative research between industry and academia was proposed, and its effectiveness was validated. In particular, the power transmission field for automobiles was discussed in this paper, because of its wide range of attribution of participants. At first, the survey results of the collaborative research and the proposed framework were explained. Then, an actual example of collaborative research for fundamental research based on the proposed framework was introduced. According to the interview results of the participants, the effectiveness of the proposed framework was discussed and validated. The effectiveness of the proposed framework was evaluated based on the interview results of participants of the actual collaborative research done by authors. The evaluations were performed based on the following viewpoints: a) necessity of the framework, b) how effective is the framework in terms of cooperation, c) effectiveness of research theme finding activity, and how effective is the framework on, d) facility preparation, e) utilization of findings to industrial result, f) R&D providing function of collaboration. Interview results showed that the positive evaluation was obtained by all items, regardless of participants attributes.
Key words:Industry-Academia collaboration, German and Japanese activity comparison, R & D circulation process model, Engineering function, German and Japanese activity comparison
キーワード:産学連携,ドイツと日本の活動比較,研究開発循環プロセスモデル,エンジニアリング機能,ドイツと 日本の活動比較
自動車産業における複数産学連携の効果的推進システムの考察および実践
青山 明宏,小武内 清貴,大窪 和也
1. はじめに
昨今,世界の自動車産業界において,環境性能や 安全性能に重点を置いた投資が徐々に増加している.
また,電気自動車や自動運転といった次世代技術へ の投資も増加している 1).一方,前述の次世代技術 の開発だけでなく,走る,曲がる,止まるといった
基本的性能を向上させることは,自動車開発の基本 要件である 2).これらの基本性能は,自動車の信頼 性と安全性を保証しており,基本性能を担保する基 盤技術を高めるために継続的な研究開発が求められ ている 3).また,自動車メーカ間において共通とな る基盤技術の向上のため,自動車メーカを超えたコ ラボレーションでの基礎研究の実施も期待されてい る.このような状況から,基礎研究のための複数メ ーカと複数の学界との多対多の連携研究が期待され ている 4).しかし,日本では,参加者の権限や利益 の調整が難しいため,各企業と個別大学との間での 一対一の産学連携が最も多い状況である.また,実 際の産業に活用できる共通した基礎研究テーマを選 択する適切な方法論はない.そのため,前述のコラ ボレーションのためには,多対多の産学連携を円滑 に遂行する枠組みが求められる.
本研究では,産学間の円滑な共同研究を推進する ための効果的な枠組みを提案し,その有効性を検証 した.まず,本論文の前半において,共同研究事例 の調査結果と,提案する枠組みについて説明する.
次に,提案する枠組みに基づく基礎研究の共同研究 の実例を紹介すると共に,基礎研究参画者への聞き 取り調査結果に基づき,提案する枠組みの有効性を 議論し,検証した.
2.先行事例と提案する枠組み 2.1 先行事例の検討
ジェトロの報告によると,2017 年の乗用車販売台 数は約 8,400 万台5).また,売上面では,フォルク スワーゲン,トヨタ,ダイムラー,ゼネラルモータ ーズ,フォードら 5 社が世界最大の自動車メーカ・
製造グループであった.つまり,5 大自動車メーカ はドイツ企業 2 社,アメリカ企業 2 社,日本企業 1 社で構成されていることを示している.また,自動 車に関する国際会議での研究発表件数を国別に比較 すると,ドイツ,日本,米国の順であった6).特に,
工学・機械工学分野に限定すると,ドイツの論文件 数は,米国や日本7)のそれらよりも多かった.
守本らによると,本論文において着目した,自動 車の動力伝達システム技術の開発において,クラッ
チ,トルクコンバータ,油圧制御,トランスミッシ ョンなどの動力伝達技術の起源はドイツで発明され た8)とされる.また,日本の自動車メーカの多くは,
IAV(Ingenieurgesellschaft Auto und Verkehr) , AVL(Anstalt für Verbrennungskraftmaschinen) , FEV(Forschungsgesellschaft für Energietechnik und Verbrennungsmotoren)などのドイツのエンジニ アリング企業に自動車開発の一部を委託している.
これらのエンジニアリング企業では,産学官コンソ ーシアムと密接に関連しており,ドイツの大学と産 学連携研究を頻繁に行っていることが知られている.
また,近年中国ではドイツ活動を手本に国家戦略と して産学連携研究に成功している9) .
以上より,本研究の比較対象として,ドイツにお ける産学共同研究活動を選択した.
2.2 ドイツおよび日本における産学連携活動の 比較
2.2.1 ドイツにおける産学連携活動
Fig.1 は,ドイツの自動車業界における産学官連 携の構造を示す.図中の VDMA(Verband Deutscher Maschinen- und Anlagenbau: Mechanical Engineering Industry Association:機械工学産業協 会 ) は , そ の 傘 下 に FVV(Forschungsvereinigung Verbrennungskraftmaschinen e.V.:燃焼エンジン研 究 協 会 ) , FVA(Forschungsvereinigung Antriebstechnik e.V.:動力伝達研究協会),といっ た研究協会を有し,その活動方針の策定や,資金の 供給を行っている.FVV と FVA は 40 年以上前に設立 され,それぞれ 165 社と 202 社で構成されている.
Fig. 1. Industry-academia-government collaboration in the powertrain field in the German automotive industry.
また,ドイツにおける産学官連携活動の特徴の一 つとして,協会を超えた連携活動が挙げられる.具 体的には,FVV とFVAの両グループに加盟する企業 24社(OEM9社,サプライヤ13社,エンジニアリング 2社)による「eモータ(モータ),ベアリング,ギア」
と呼ばれる活動がある.これは,後述するドイツの 水平統合型の産業構造を活かし,長年の活動の積み 重ねに基づく合理的なコラボレーションの一例とい える10,11).
また,ドイツにおける産学連携活動においては,
活動に携わる研究者の人材交流も活発である.この 様な産学連携のプラットフォームを継続的に強化す ることにより,基礎工学の継続的な推進だけでなく,
産学連携による人材移転の推進も行っている12) .
2.2.2 日本における産学連携活動
日本の自動車産業において,産学官が複数集まる 協働研究では,経済産業省傘下の技術研究組合とし ての活動が従来から推進されており,内燃機関分野 研究での燃焼研究(AICE,2015年開始)や材料分野 研究での構造材の協働研究(ISMA,2014年開始)は 従来からの成功事例として挙げられる 13).しかし,
これらの成功した連携活動より得られた知見を,本 論文で着目した動力伝達システム分野での連携に応 用することは,以下の理由より困難と考えられる.
まず,第一に,材料科学分野と熱力学分野は工学分 野の基礎であるため,学側は十分な知識と研究経験 を有している.一方,動力伝達システムは,機械要 素,トライボロジー,制御工学など,いくつかの学 術分野から構成され,加えるに学術分野を横断する 一つのシステムで性能や機能を成立させている特徴 を持つ.そのため,学側において,動力伝達分野を 専門的に扱う組織は日本では皆無といって良い.第 二に,内燃機関分野および材料分野においては,産 側のニーズと学側が有するシーズとが直接対応する 構造となっているのに対し,動力伝達システム分野 においては,両者の関係が複雑であるという特徴が ある.また動力伝達システムでは,最終製品を製造・
開発する車輌メーカ,ユニット開発を行うユニット メーカ,システムメーカ,部品メーカからなる多層 構造で開発が行われるという特徴もある.
2.2.3 ドイツと日本における産学連携活動の違い
Fig.2 にドイツおよび日本の自動車産業における 基礎研究から製品に至る研究開発プロセスを例示す る.ドイツの自動車産業における開発プロセスはモ ジュラ統合型や水平統合型と呼ばれ,この開発プロ セスでは個々のコンポーネントは標準化されたイン ターフェースを介して結合される.そのため,個々 のコンポーネントを製造する企業は各開発プロセス において,役割や知識の共有を容易に行うことが出 来る.一方,日本の自動車産業における開発プロセ スは垂直統合型と呼ばれ,基礎研究から製品開発ま でを個々の企業や企業グループが一貫して実施して いるという特徴がある.そのため,基礎研究から製 品開発までに得られた知識が,他の企業や企業グル ープとは共有されていない.車輌性能に共通した基 盤技術領域では協働基礎研究による企業グループを 超えた効率的な研究開発が望まれる一方,企業間の 利害や企業間の文化(組織体制や運用体制等)をマ ネジメントし,参画企業が得られる研究価値を最大 化する様な枠組みが必要と考えられる.
Fig. 2. Difference between German and Japanese
industry-academia collaboration styles: Germany follows the integral type; Japan follows the modular type (combination).
また,ドイツにおいては,R&D サービスプロバイ ダと呼ばれるエンジニアリング会社が産学連携を推 進 さ せ る 役 割 を 担 っ て い る . 例 え ば FKFS(Forschungsinstitut fur Kraftfahrwesen und Fahrzeugmotoren Stuttgart:シュツットガルト自動 車・原動機研究所)はシュトゥットガルト工科大学の キャンパス内に拠点を持ち,協働研究のコーディネ ートや実験,計測の受託を行っている.こうしたエ ンジニアリング会社は産学との物理的な近さと,基 礎工学に視点を置く長年の活動からの知見と蓄積を 基に,その活動を活発化させている.さらに,大学 の教員や学生がエンジニアリング会社へと異動する 人材交流も行われている.一方,日本においては,
研究資源の多くが集中する大学に対して,産学官連 携の拡大が奨励され,協働基礎研究がおこなわれて いる一方,企業側はドイツの研究機関やエンジニア リング会社に研究委託を行う実態が見受けられる.
その理由として,ドイツにおける大学とエンジアリ ング会社との連携状況は,研究テーマが原理研究か ら基礎工学・要素技術領域のみならず応用工学・評 価技術領域にまで広がっていることにより,日本企 業からは開発の道具の一部としての研究に期待でき るからと言われる(経済産業省次世代自動車産業).
また,現代はグローバル化により地理的や時間的な 拘束が解かれ,日本の企業が日本の大学および公的 機関と協働する必要性が薄れている.
以上の検討より,日本の大学および公的機関が上 記のエンジニアリング会社と並び,企業との産学連 携を推進するためには,産学連携を円滑に実施する 枠組みおよび産学連携をコーディネートする機能や 組織の存在が必要であるとの考えに至った.
2.3 提案する産学連携活動の枠組み
以上の検討を踏まえ,日本における産学協働基 礎研究を推進するための枠組みを提案する.Fig.3 に提案する枠組みの概要を示す.本枠組みは5つの 独立した役割と,1 つの共有された役割から構成さ れる.まず第1の役割において,協働基礎研究の研 究テーマを選定する.具体的には,まず産学官より 研究ニーズおよびシーズの抽出を行い,産学官の活 動コンセプトや目標値,協働研究の必要性,必然性
Fig. 3. Framework of recycling and spiral up development process suitable for Japanese environment.
を共有することを行う.第2の役割として,すべて の参加者が研究テーマの実現可能性および期待され る成果についてインパクトの観点から議論し,これ らを視覚化する.また,加えて,協働研究に必要な 設備や予算についても議論する.第3の役割は,協 働研究による成果を実際の製品の研究開発への適用 など,研究成果の価値創出を行う.第4の役割は,
研究成果を基にした新たな研究費獲得や助成申請等 を行う.第5の役割では,協働研究によって得られ た人材や資金を再分配し,協働活動の強化を行う.
これら5つの役割を段階的に循環して実施すること によって,持続可能かつ発展的な協働が実現される と考えた.また,本枠組みには前述の5つの役割の 中心に,協働研究の管理および各段階を有機的につ なぐ研究開発の役割が存在する.
3.提案した枠組みに基づく協働研究事例 3.1 本研究で取り扱う協働研究事例
本研究ではオイルポンプメーカ,油脂メーカ,油 圧デバイスメーカの協力および大学の参画により実 施した,公益社団法人自動車技術会共同研究センタ ーのプロジェクト活動「動力伝達システム技術の協 働基礎研究(2014年-2017年) 」14)における油中気泡
の発生原理解明(Science)という産学協働基礎研究 を取り上げる.この産学協働基礎研究において,提 案する枠組みによる実践結果を紹介する.具体的に は,研究テーマの選定(第1の役割),協働研究から 得られる成果の可視化(第2の役割),および研究成 果の実製品への応用(第3の役割)について,実践結 果を紹介したい.
3.2 協働基礎研究テーマの選定事例
Table 1 に提案する枠組みに基づいて行われた 協働基礎研究テーマの選定手順を示す.
まずSTEP1で示す事前準備段階において,参加各 社の課題及び研究テーマを無記名集約した.中立者
(学術団体幹事など)によって,各社にて専門用語 の意味が異なるケースの抽出と統一化を行い,研究 テーマの内容を客観化した.その後,テーマ案件が 開発案件か基礎研究に当たるかの判断と集約を行っ た.次にSTEP2で示す改善要求段階では,STEP1に て集約した研究テーマの類似性・客観性を評価し,
各テーマにて改善する項目の抽出を行った.STEP3 で示す重要性の把握段階では,STEP2 で抽出した改 善項目の重要性および成果における位置づけを明確 化した.これによって研究を進める順序を決めるだ けでなく,研究課題間の繋がりや貢献度を明確化し た.STEP4 で示す成果の指標の明確化段階では,研 究テーマ毎に成果を評価する指標の明確化を行った.
最後にSTEP5で示す目標値設定段階では,研究成 果の定量的および定性的目標値の設定である.ここ
で,定量的目標とは,研究成果に対する数値目標と した.これらの各段階を実施することによって,協 働基礎研究に参加する,部品メーカからデバイスメ ーカという多層構造において,階層を越えて協働研 究成果の価値を共有することが可能である.
以上の手順に基づき参加者間で協議した結果,動 力伝達装置の油圧回路内に生じる気泡発生現象の把 握とその制御が研究テーマとして選定された.近年 の油圧システムの高圧化の要求により油中気泡やキ ャビテーションの発生,熱負荷に対する耐久性とい った課題が浮上しており,本テーマは,非競争領域 の技術課題として適していると考えられる.また,
油圧システム高圧化に起因して発生する油中気泡の 制御という課題は,自動車用無段変速機(CVT)をは じめ変速機に関わる開発を行う企業にとって共通し た基礎研究課題となっている反面,この原理現象は 参画各社の開発に直接結びつきにくいという特徴が あることから,協働基礎研究テーマとして適当であ ると考えられる.
3.3 期待される成果の可視化事例
協働基礎研究によって期待される研究成果の可視 化事例を紹介する.先に述べた様に,油圧回路内に 生じる気泡発生現象の把握とその制御をテーマとし た協働基礎研究によって得られる気泡の集積,脱泡 消泡,気液分離安定性メカニズムといった基礎原理
や制御技術といった“研究結果”は有用であるもの の,それら単体では油圧システムのみの技術資料に
過ぎない.これらを実製品に応用し活用するために は,“研究成果”へと昇華させることが必要である.
そのため,協働研究に参画したメンバ間で協議し,
Fig.4 に示す様な,産業ニーズと研究結果および研 究成果との関係を明確化した.
また研究成果を実製品の開発に応用することを目 的に,“研究結果”を“研究成果”へと昇華させる方 法論について検討した.
具体的には,Fig.5 に示す様に,協働研究によっ て得られた,気泡の集積,脱泡消泡,気液分離安定 性メカニズムといった基礎原理や制御技術をモデル 化することとした.これによって,研究テーマと産 業ニーズとの関連性および研究成果の活用方法も明 確化されることとなる.
Fig. 4. Connecting process corporate needs and joint basic research seeds.
Fig. 5. Acquisition modeling of technical knowledge (Technology seeds) by modeling for oil pressure control from basic experiment of air bubble generation in oil.
3.4 研究成果の実製品への応用事例
協働基礎研究より得られた油中気泡の発生モデル を,自動車用変速機の開発に応用した事例を紹介す る.具体的には,研究成果に基づきCVT駆動用の油 圧ポンプをギア式ポンプからベーン式ポンプに変更 した開発事例を示す.一般に油圧システムの適切な 制御には,作動流体中の気泡体積の制御が必要不可 欠である. 従来のCVT駆動用の油圧システムにおい ては,油圧ポンプとしてギア式ポンプを用い,気泡 対策のためフローコントロールバルブが用いられて きた.協働基礎研究の成果を用いることによって,
ギア式ポンプより小型なベーン式ポンプの採用およ びフローコントロールバルブの廃止の検討を行った.
Fig.6にCVTの開発世代とCVTの変速特性評価結果 との関係を示す.図中,第1世代から第2世代にお いて先の協働研究成果を基に小型ベーンポンプの採 用および油圧デバイス全般の再配置を行っている.
また第2世代から第3世代においては制御アルゴリ ズムの見直しを行っている.図より,協働研究成果 が実製品の開発に有効に活用できることがわかった.
Fig. 6. Applied research to analyze the technical data of basic research and investment of knowledge in vehicle development by the creation of technology seeds.
4.結果および考察 4.1 提案する枠組みの有効性検証
協働研究の参加者に対し,アンケートを用いて提 案する枠組みの有効性を検証した.具体的には,a) 協働の必要性, b) 協働の面で枠組みがどの程度効 果的であったか, c) 研究テーマ選定活動が有効で あったか, d) 枠組みが研究環境の整備,準備に有効 であったか, e) 枠組みが成果の実製品への応用に 対して有効であったか, f) R&Dプロバイディング機 能は有効であったか,の6項目について聞き取り調 査を行った.参加者の属性は,自動車メーカ,サプ ライヤ(ユニットメーカ,システムメーカ,部品メー カ),および学界の技術者および研究者である.評価 方法は5段階評価(5:非常に良い.4 :良い.3:変 わらず.2:悪い.1:非常に悪い)とし,活動の前 後において比較調査した.
Fig.7 に聞き取り調査結果を示す.図より参加 者の属性毎の各項目の評価結果を示す.図より全て の項目において,参加者の属性によらず肯定的な評 価が得られた.以降各項目について考察を行う.
Fig. 7. Evaluation score of interviews.
4.2 連携を推進する上での枠組みの有効性 産学連携活動を推進していく上で重要と考えられ る,a)およびb)の項目に着目した.先に述べた様に,
本研究で提案する枠組みでは,協働研究の参加者間 で協働研究の価値と目標の共有を重点的に推進した ため,評価結果が高かったと考えられる.また枠組 みによって協働の仕方を共有したため,枠組みの有 効性についても良好な評価が得られた.次に,参加 者の属性の違いによる評価結果の違いに着目すると,
サプライヤおよび学界からの参加者による評価は同 様の傾向を示した.一方,自動車メーカからの参加 者による評価は,サプライヤおよび学界からの参加 者によるそれに比べ,やや低かった.これは,今回 の聞き取り調査が,1 回の協働研究を対象に行われ たため,協働を推進する持続性が十分に評価されて いないためと考えられる.
4.3 協働研究成果の応用に対する枠組みの有効性 協働研究成果を実製品へと応用する観点から,項 目c)~e)について考察した.まず項目c)に着目する と,本研究で提案する枠組みによる協働研究テーマ の選定は,サプライヤおよび学界からの参加者から は肯定的に評価された.同様に,項目d)においても,
枠組みによって研究環境を整備する動機を共有する ことによって,サプライヤおよび学界から肯定的な 評価を得た.一方,これら項目c)およびd)の自動車
メーカからの評価は,サプライヤおよび学界からの それに比べ低かった.これは,自動車メーカはテー マの選定や研究環境の整備といった研究実施に係る やり取りよりも,研究結果がどの様に実製品への開 発に応用できるか,との観点を重視しているためだ と考えられる.項目e)の評価に着目すると,自動車 メーカからの評価がもっとも高いことからもわかる.
一方,サプライヤや学界からの評価が高かった理由 として,本研究で提案する枠組みを用いて,研究結 果から研究成果,実製品への応用までの繋がりを可 視化することが,有効であるとの評価を得たためと 考えられる.
4.4 協働のためのエンジニアリング機能の有効性 本研究で提案する枠組みにおいて,エンジニアリ ング機能は,協働研究の管理および各段階を有機的 につなぐ役割を有する.協働研究の参加者による評 価から,本機能の有効性は以下の2つの項目に分類 できる.第1の項目は,エンジニアリング機能によ って提供される,協働研究の実施を円滑に推進する コーディネータとしての役割の有効性である.協働 研究の参加者は,各参加者が自社の利益を代表して 参加しているため,競合企業間で人材や設備,資金 を均等に管理するためには中立の立場で推進する役 割が必要である.学界からの参加者は中立であるも のの,基本的には研究者であるため,協働研究をマ ネジメントする立場で参加することは困難である.
以上の様な状況から,中立的に協働を推進するエン ジニアリング機能の有効性が評価されたと考えられ る.第2の項目は,研究結果・研究成果と産業ニー ズとの関係を可視化する役割の有効性である.先に 述べた様に,協働基礎研究を円滑に実施するために は,研究結果・研究成果と産業ニーズとの関係を可 視化し,参加者間で共有することが必要である.こ のような役割を果たすには,関連分野に関する基礎 から応用まで,幅広い知識が必要なだけでなく,実 際の研究や開発などの経験も必要である.現在日本 にこの様な機能を有する中立機関は存在せず,今後 の協働研究の継続的な実施には,この様な機能を有 する中立機関の設置が望まれる.
5.まとめ
本研究では,基礎研究領域の協働研究における活 動を持続的かつ円滑に推進する枠組みを提案し,そ の有効性に基づいて実際の協働活動において参加者 から聞き取り調査を行った.その結果,本研究で提 案する枠組みは,協働研究を進める方法として有効 であることが確認できた.以下に結論を示す.
(1)本研究で提案した協働研究のための枠組みの 有効性を聞き取り調査したところ,参加者の属 性によらず肯定的な評価が得られた.
(2)本研究で提案した枠組みを用いることによっ て,協働研究の必要性を参加者間で共有するこ とが可能であった.
(3)本研究で提案する枠組みを用いて,研究結果か ら研究成果,実製品への応用までの繋がりを可 視化することは,協働研究の実施に有効であっ た.
本報の執筆にあたって,公益社団法人自動車技術 会共同研究センターにおける産学連携共同研究会,
横浜国立大学大学院教授の佐藤恭一氏,同志社大学 名誉教授の藤井透氏から多くの知見と助言,協力を いただいたことに感謝する.また,協働基礎研究に 協力された諸氏に,記して謝意を表する.
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