• 検索結果がありません。

倉岡 正高

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "倉岡 正高"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

 我が国は,超高齢社会と少子化にともない,今後,生産年齢人口の大幅な減少が見込ま れている。2010 年から 2040 年の間に,若い世代の女性人口が5割以下に減少する 896 の 自治体は,消滅の可能性があると予測されている1)。また,少子高齢社会の問題は単なる 数の問題ではない。団塊の世代が 75 歳を迎える 2025 年問題が議論されて久しいが,健康 や福祉の世界では,介護保険料の上昇だけでなく,介護人材の確保が深刻な状況に陥って いる。こうした状況から,住民が主体となった社会参加や,住民同士の助け合いがあるま ちづくりの構築に専門職や住民は奔走している。しかし,専門職や地域住民の努力や思い が届かない住民や,経済的に困窮している住民が増える中,社会的な孤立や要介護に陥り やすい高齢者や,若い世代でもメンタルヘルスを含めた疾病を抱える人口が増えていると いう現実もある。辻は,こうした経済格差や健康格差がまさに 2025 年問題の本質である としており,新しい社会モデルの必要性を唱えている2)

 少子高齢化に伴う労働人口の減少は福祉分野だけにとどまらず,様々な職業で見られて おり,現在世界第3位であるGDPも,今後の労働人口の減少にともない低下していくこ とが予測される。そのため,今後はより一人当たりの生産性が求められる時代となると考 えられている。

 このような社会の変化に対し,中等教育においても近年様々な変化が見られる。小中学 校を中心に設置されてきた学校運営協議会は高校にも広がりをみせており,2018 年度には 382 校に設置されている。また,2018 年度,高等学校では,「総合的な学習の時間」が「総 合的な探究の時間」として改訂され,総合的な探究の時間の指導要領には「他者と協働し て課題を解決していくことや,様々な情報を見極め,知識の概念的な理解を実現し,情報

中高生と地域の大人による課外活動が 社会参画意識と学習意欲にもたらす効果

─地域との協働を基盤にした総合的な探究の時間の取り組みに向けた可能性─

倉岡 正高

(2)

を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中で目的を再構 築することができることが求められている(p.1)」3)と,他者との連携の重要性が記述さ れている。このように,社会やそこに住む地域住民が直面している様々な課題について,

高校教育においても地域と連携しながら,具体的に取り組む環境づくりが整ってきてい る。

 本研究では,社会課題の解決に,学校と地域の人材が連携しながら,生徒が主体的に学 ぶ取り組みの一つとして,自治体,高校,中学校,地域住民が協働して進めている「市ケ 尾ユースプロジェクト」に着目し,その事業に参加する中高生が1年間,地域の大人との 世代間交流を通したプロジェクトを進めた体験や,社会参画の意識が学習意欲や行動にど のように影響するかをアンケート調査により検証することを目的とする。

1.総合的な探究の時間と課外活動

(1)総合的な探究の時間

 高等学校では 2018 年に公示された「総合的な探究の時間」が本年度4月より移行措置 として一部の学校で先行して開始されている。先述の指導要領でも述べられているとおり,

「主体的・対話的で深い学び」の実現には新しい授業のあり方を模索する必要があると考 えられる。こうした授業の先行事例として,岐阜県立可児高校の「夏の!OPENエンリッ チプロジェクト」では,自治体,NPO,高校,地域が連携し,37 のプログラムから高校 生が自由に参加する。浦崎は,このプロジェクトの高校にとってのメリットとして,こう したプログラムを通して地域活動に参加することによって,学習意欲やキャリア意識の向 上と,それによる学習指導の負担軽減などを指摘している4)。また,プロジェクトの効果 として,学習意欲の向上,問題意識の深化,社会課題に対する当事者能力の向上をあげて いる5)。その他にも,島根県立大東高校,山形県立新庄北高校などによる取り組みも先行 事例として注目されている。

 これらの先行事例では,総合的な探究の時間が目的として掲げる地域連携について,生 徒のみならず地域への一定の成果を生んでいることが報告されており,地域との連携がも たらす効果は,高等学校の生徒のみならず地域にとっても同等に大きいことがうかがえる。

(2)課外活動と特別活動

(3)

 総合的な探究の時間が正課である一方,課外活動とは,学習指導要領が適用されない正 規の教育課程ではなく実施されている活動を指す。第3版学校教育辞典によると,課外活 動とは「学校で行われる教育課程の基準以外の活動のこと。ただし,その概念の規定は必 ずしも明確ではない」とある6)。具体的な例としては,部活動や学校行事などが該当するが,

1958 年に特別教育活動が教育課程化されたことによって,特別活動の内容は以降課外活 動には含まれないことになった。

 特別活動は,ホームルーム活動,生徒活動,学校行事とされている。長田は,こうした 特別活動は教科と往還的な関係にあるとし,教科で学んだことが特別活動で活かされ,ま た特別活動で学習したことが教科での基盤となるとしている7)。こうした特別活動と教科 との関係性や効果については,課外活動と教科の関係性においても同様のことが言えると 考えられるが,そうした課外活動に関する研究は,体育系大学の学生と一般女子大生を対 象にした高校時代の部活動についての実態調査8)や 18 の学校内外の課外活動の事例調査 についての報告など9)にとどまっている。

2.世代間交流と教育

(1)世代間交流の教育的意義

 学校との地域連携をとることの多い自治会や町内会,様々な地縁組織,あるいは学校支 援のボランティアは多様な世代から成り立っている。中でもシニア世代はそうした中核的 な存在として,学校の様々な活動に関わっている。学校行事の他,児童生徒の見守り活動,

あいさつ運動など様々な活動の多くは,世代間交流を通した取り組みとして日本の文化に 根差している。草野は,「世代間交流とは,子ども,青年,中年世代・高齢者がお互いに 自分達の持っている能力や技術を出し合って,自分自身の向上と,自分の周りの人々や社 会に役立つような健全な地域づくりを実践する活動で,一人一人が活動の主役となること である。」としている10)

 世代間交流の研究や実践は欧米で進んでいる。例えば米国における有名な世代間交流プ ログラムとして,Experience Corps©がある。Experience Corps© は,1996 年に5つの市 で始まったプロジェクトである。現在は現在AARP Foundation Experience Corpsとし て 21 の都市で展開され,2000 人を超える 50 歳以上のシニアボランティアが地域の学校に て 読 み 書 き や 宿 題 の 手 助 け, メ ン タ ー と し て 関 わ っ て い る11)。 我 が 国 に お い て は,

(4)

Experience Corps©をモデルに始まったシニアの絵本読み聞かせ活動「りぷりんと」がある。

「りぷりんと」で活動するシニアボランティアは小中学校,幼稚園や保育園にて絵本の読 み聞かせの活動をしている。この「りぷりんと」のボランティアが参加した学級では,そ うでない学級と比較して,児童のコミュニケーション力の向上が報告されている12)。また,

こうしたシニアボランティアとの交流体験は中学に入っても肯定的な高齢者イメージを維 持することが示されている13)

 高等学校でも少ないながらも世代間交流に関する研究報告が存在する。林は,課外活動 として小学生と長期的な交流活動世代間交流をしている高校生のキャリア意識について,

「良好な人間関係が大切であるとする意識」や「課題遂行と達成意欲」が高いことを指摘 している14)。また,学校の地域対応の負担感に着目した調査では,地域住民からのソーシャ ルサポート」が高いほど,地域住民との関わりに肯定的な意識を持つことが報告されてい る15)

(2)世代間交流とキャリア教育の関係

 開かれた学校を推進するため,小学校では様々な形で地域の大人,特にシニア世代が学 校行事に関わる機会が多いが,中学校,高校と進むにつれ,そうした地域との関係は希薄 化していく。世代間交流が必ずしも学校教育と結びつかないという意識や,コーディネー トする職員の不足などが背景にあると考えられるが,キャリア教育という点では,高校卒 業後就職する生徒が多い学校のみならず,進学校においても地域の大人と接する体験はそ の後の社会人としての能力に影響すると考えられる。

 ベネッセ教育研究センターによると,「ふだんの仕事のなかでできていること」と「子 ども時代の体験」の関係についての調査の結果,①将来の目標をもって仕事をすること,

②自分の考えをわかりやすく説明すること,③自分の適性や能力を把握すること,④自分 の感情を上手にコントロールすること,⑤自分から率先して行動することの全ての項目に おいて,出来ているという自己評価が高いグループは,出来ていないとするグループに対 して,子どものころ,「親や学校の先生以外の大人と話をすること」という体験に差がみ られることが示された16)。核家族化や少子化により,祖父母のみならず,親や先生以外 との関係はより一層希薄化しているが,子どもの頃の体験の多様性や,様々な大人と触れ 合うことが社会人になった時の仕事の態度や能力に強く関係していることがわかる。

 上述の通り,こうした体験は年々希薄化していると考えられるため,将来社会人として

(5)

発揮されるべき重要な能力が「地域や地域の大人との関係性」に起因しているとするなら ば,積極的な学校と地域の連携を小学校のみならず高等学校や大学でも戦略的に構築する 必要がある。

 総合的な探究の時間,課外活動,そして世代間交流という視点から,これまで先行事例 や先行研究などをふまえて述べてきた。ここから,具体的に神奈川県内で行われている自 治体,NPO,学校,地域が連携して 2017 年度に始まった事例の紹介と,そのプロジェク トを対象に実施した調査について報告する。

3.方法

(1)市ヶ尾ユースプロジェクトとは

 2017 年度より進められている「市ケ尾ユースプロジェクト(中高生と地域人材による まちの未来づくりプログラム)」(以降ユースプロ)は,横浜市青葉区,区内の県立高校A と近隣にある市立中学校B,そして地域在住の大人やシニアが協働して行われているプロ ジェクトであり,今年3年目を迎えている。

 A高校は,B中学校とユースプロを通して協働していること,また都市部の進学校が地 域協働を実践するモデルとして先駆的なモデルであり,社会の中核たる人材の育成を教育 目標の一つとして掲げている17)。ユースプロは,「豊かな経験を持つ大人と中高生が力を 合わせ,まちづくりの課題やまちの魅力アップに取り組むことで,多世代交流によるこど も・若者の育成支援を行う活動」としている18)

 具体的には,2017 年度には全 10 回のワークショップを中心に,中高生と地域の大人が 5つのチームに分かれて活動した。各チームの具体的なテーマとして,チーム「ICHIグ ルメ」は,地場食材や直売所・マルシェなどを広くアピール,チーム「わっしょい」は,

スタンプラリーを通して地域をアピール,チーム「まちに咲く花」は,グッズ制作を通し て区のキャラクターに愛着を持ってもらう,チーム「絆(きずな)」は,スマホ講習会と 通した世代間交流の促進,チーム「こんなのありかなしか」は,動画による区のキャラク ターと地域の紹介を実施した18, 19)。さらに,翌 2018 年度には,全 10 回のワークショップ を中心に,8つのチームが活動した20)。2019 年度も新たなメンバーのもと6つのチーム が活動を実施中である。

(6)

(2)調査対象者

 アンケート調査は 2018 年,A高校在校生でユースプロに参加した 12 名を介入群とし,

同校の 1 年生1学級の生徒を対照群とした。また,B中学在校生でも同様に,ユースプロ に参加した 28 名を介入群とし,同校の1年生1学級の生徒を対照群とした。

 A高校,B中学校いずれも,ユースプロ参加はあくまでも任意であり,学年も多様であっ た。対照群として設定した1学級については,各学校の管理職の判断にもとづき,ユース プロ参加者のいない第1学年における1つの学級を対象として調査を実施した。

(3)調査方法

 介入群であるユースプロ参加者には 2019 年1月に実施された第 10 回のワークショップ 時に,調査票を配布し回収した。対照群へは,介入群を対象に実施した調査日の前後1週 間以内に各学校の指定の学級内で調査票を配布し,その場で回収した。

(4)調査項目

① 基本属性

 基本属性として,学年,性別,所属する部活動名を調査した。

② 社会参画に対する意識

 社会参画に対する意識の調査には,石島の社会参画意識尺度を用いた21)。この尺度は,

「社会参画への意欲」と「社会参画への効力感」の2つの下位因子から成り立っている。

社会参画への意欲因子は,1.社会とかかわりたい,2.社会参画に興味がある,3.授業 で社会参画を体験したい,4.社会参画について教えてもらいたい,5.将来,積極的に社 会参画したい,6.自分は,未来の社会をかたちづくる責任を強く感じる,の6項目から 成り立っている。社会参画への効力感因子は,7.人の役に立ちたい,8.高校生や中学生 でも社会をよくしていけると思う,9.地域住民の意識が地域をよくしていけると思う,

の3項目から成り立っている。本調査では,学校教職員との協議の上,石島の尺度に1項 目(社会のできごとに関心がある)を下位因子「社会参画への意欲」に加え,全 10 項目 にて回答を求めた。

 各質問項目は4件法(「そう思う」,「どちらかというとそう思う」,「どちらかというと そう思わない」,「そう思わない」)で回答を求め,「そう思う」から「そう思わない」まで

(7)

4点から1点を配点し,「社会参画への意欲」の合計得点は7点から 28 点,「社会参画へ の効力感」は3点から 12 点,合計得点は 10 点から 40 点とした。なお,社会参画という言葉 が理解できない場合のため,アンケート用紙の質問文に,「社会参画とは,より良い社会を 作るために企画・計画する段階から主体的に社会に参加すること」という一文を添えた。

③ 学習意欲と行動

 アンケート調査の項目には,学習意欲と行動に関する質問項目を,学校教職員と協議の 上設定し,質問した。1.何事にも意欲的に取り組んでいる,2.何のために勉強するの か,自分なりに考えている,3.話し合いの場面では,積極的に参加している,4.意見 を述べる時,相手にわかりやすく伝えようとしている,5.わからないことはそのままに せず,誰かに聞くことができる,6.将来,社会のリーダーとして活躍したいと思う,7.

皆と力を合わせて行動することができる,の7項目から構成した。社会参画意識尺度と同 様に,各質問項目は4件法(「そう思う」,「どちらかというとそう思う」,「どちらかとい うとそう思わない」,「そう思わない」)で回答を求め,「そう思う」から「そう思わない」

まで4点から1点を配点し,合計得点は7点から 28 点とした。

④ 地域への愛着

 学習意欲と行動の調査項目と同様,学校教職員と協議の上,地域への愛着に関する項目 を設定した。調査項目は,1.自分の住んでいる地域は,私にとって居心地がいい,2.こ の地域の人たちは,互いを思いやったり気にかけ合ったりしている,3.いま住んでいる 地域に愛着を感じる,の3項目から構成し,各質問項目は,4件法(「そう思う」,「どち らかというとそう思う」,「どちらかというとそう思わない」,「そう思わない」)で回答を 求め,「そう思う」から「そう思わない」まで4点から1点を配点し,合計得点は3点か ら 12 点とした。

(5)分析方法

 学習意欲と行動尺度の合計得点を従属変数とし,性別(男/女),学校(中学/高校), ユースプロへの参加(有/無),地域への愛着の尺度,社会参画への意欲,社会参画への 効力感得点を独立変数として用い,重回帰分析(強制投入法)で関連を調べた。

(8)

4. 結果

(1)基本属性

 介入群であるユースプロに参加しているA高校生徒 12 名(うち1年生 9 名,2年生1名,

3年生1名)およびB中学校生徒 28 名(1年生6名,2年生 17 名,3年生5名),及び対 照群として各校1クラスの生徒から回答を得た(表 1)。回答者における男女の割合は,

介入群と対照群を合わせて男性 39%,女性 61%であった。

表1 対象者の学校・学年属性

(2)社会参加に対する意識

 「社会参画への意欲」と「社会参画への効力感」の2つの下位因子,計9項目に1項目 を足した 10 項目に関する回答の結果は表2のとおりであった。各項目について,群差を 検討するため独立サンプルのt検定を行った。その結果「社会参画に興味がある」及び「社 会参画について教えてもらいたい」の項目でp<.01,「将来,積極的に社会参画したい」

の項目で,p<.05,「社会参画への意欲」の合計得点でp<.01,尺度全体の合計得点で

p<.01,その他の項目で有意差は認められなかった。

 下位因子である「社会参画への意欲」の合計得点の平均(M)は,介入群において 22.00(SD=4.69),対照群では 19.23(SD=4.62)であった。下位因子である「社会参画 への効力感」の合計得点の平均(M)は,介入群において 10.82(SD=1.78),対照群で

(9)

は 10.21(SD=1.71)であった。

表2 各群における社会参画尺度の得点比較

(3)地域への愛着

 地域への愛着に関する項目の結果は表3のとおりであった。各項目について,群差を検 討するため独立サンプルのt検定を行った。その結果「自分の住んでいる地域は,私にとっ て居心地がいい」の項目でp<.05,その他の項目では有意差は認められなかった。地域へ の愛着の合計得点の平均(M)は,介入群において 9.42(SD=2.11),対照群では 9.97

SD=1.50)であった。

(10)

表3 各群における地域への愛着尺度の得点比較

(4)学習意欲と行動

 学習意欲と行動に関する質問項目の結果は,表4の通りであった。各項目について,群 差を検討するため独立サンプルの検定でt検定を行った。その結果「話し合いの場面では,

積極的に参加している」の項目でp<.01,その他の項目では有意差は認められなかった。

7項目の合計得点の平均(M)は,介入群において 21.74(SD=4.11),対照群では 20.99

SD=3.21)であった。

(5)学習意欲と行動に関連する要因の検証

 表5のとおり,学習意欲と行動尺度の得点を従属変数とし,性別,学校(中学/高校), ユースプロ参加の有無,地域への愛着の尺度得点,社会参画尺度の下位尺度(意欲・効力 感)得点を独立変数として重回帰分析(強制投入法)を行った結果,有意なモデルが得ら れた(F(6,93)=14.64, p<.001, Adj. R2= .45)。このモデルにおいて,社会参画への意欲 得点の寄与率はβ= .59(p<0.001)と最も高く,地域への愛着得点の寄与率は次に高いβ

= .25(p<0.01)であった。

(11)

表4 各群における学習意欲と行動尺度の得点比較

表5 学習意欲と行動を従属変数とする重回帰分析の結果

(12)

5.考察

 社会参画への意欲の高さは,性別,学校,ユースプロ参加を統制しても,学習意欲と行 動の高さとの関連が見られた。この結果は,社会参画の意欲や効力感を高めることが学習 意欲や行動にも影響を与える可能性を示唆するものであると考えられる。先述した浦崎の 指摘にあるように,地域との連携による取り組みが学習意欲の向上に影響を与えること が,本調査においても示されたと考える。社会参画の意欲や効力感は,総合的な探究の時 間を地域との協働によって進めることで醸成することで可能であると考えられる。

 一方本調査では,地域協働の取り組みが,社会参画の意欲や効果に直接影響を与えるか についての解明は不十分である。今後,縦断的な調査により,地域連携の取り組みが社会 参画の意識にどのような影響を与えるかどうかを精査する必要がある。意識の変容は,単 に地域住民や多世代と交流をすれば向上するものではない。多くの世代間交流が成果を上 げられずにいる現状からも,明確な目的設定と目的の共有,および熟慮されたプログラム のデザインが要求される。地域との協働による総合的な探究の時間を計画する場合におい ても,取り組みが学習目標の到達につながるよう精査していく必要があると考えられる。

 ユースプロ参加者は,プロジェクト参加を通して多様な見方を学んでいることや,活動 によって地域の役に立っている有用感が醸成されていることも示されている22)。こうし た変化は,地域との協働によって育成される力であり,まさに総合的な探究の時間に求め られるものであると言える。一つ一つの世代の力では足りないが,多世代が関わることに よって生まれる知恵や力が地域や社会の課題解決につながっていくこと,そして中高生が 地域と連携する取り組みが日本の新しいモデルとして発展していくことを期待したい。

(13)

[参考文献]

1) 増田寬也. 地方消滅. 東京: 中央公論新社. 2014.

2) 辻一郎. 健康長寿社会を実現する:「2025年問題」と新しい公衆衛生戦略の展望. 東京: 大修館書店. 2015.

3) 文部科学省. 高等学校学習指導要領解説 総合的な探究の時間編. 高等学校学習指導要 領解説総合的な探究の時間編. 2018.

4) 浦崎太郎. 高校生の地域参画が「学校×生徒×地域」に相補性と相乗効果をもたらす. 地域人2016; 14: 32-37.

5) 浦崎太郎. 高校生と地域活動:「社会を創り出す」人材は学校教育だけで育成できるか?

(総力特集未来をつくる青年・若者)--(高校生編). 社会教育2017; 72: 36-41.

6) 今野喜清,新井郁男,児島邦宏. 学校教育辞典. 第 3 版. 教育出版. 2014.

7) 長田徹,堀水潤一. Interview これからの高校教育のなかで,特別活動が果たす役割. キャリアガイダンス2019; 51.

8) 八尾泰寛,小野田桂子. 高校時代における課外活動の実態調査. 東京女子体育大学女 子体育研究所所報2017; 11: 49-51.

9) 菅沼彩桃. 課外活動への取り組みが高校生の充実感に及ぼす影響: 学校内における対 人関係に焦点を当てて. 中央大学大学院研究年報= Bulletin of graduate studies 2014; 25-37.

10) 草野篤子. 世代間交流理論構築のための序説とその歴史. 草野篤子,金田利子,間野 百子, 他, 編. 世代間交流効果~人間発達と共生社会づくりの視点から. 三学出版. 2009; 1-17.

11) AARP Foundation. AARP Foundation Experience Corps. 2019.

 http://www.aarp.org/experience-corps/about-us/ (2019 年 8 月 30 日アクセス可能).

12) 鈴木宏幸,大場宏美,安永正史. 高齢者ボランティアとの交流授業が高学年児童の コミュニケーションスキルに及ぼす影響. 日本世代間交流学会誌2015; 5: 21-28.

13) 安永正史,村山陽,竹内瑠美, 他. 中学生の高齢者イメージに与える高齢者ボランティ ア活動の影響: SD法による測定と横断分析. 日本世代間交流学会誌2012; 2: 79-87.

14) 林幸克. 高校生の市民性の諸相 : キャリア意識・規範意識・社会参画意識を育む実践 の検証. 東京: 学文社. 2017.

(14)

15) 村山陽,竹内瑠美,山口淳, 他. 高等学校教師の地域住民への関わり意識に及ぼす要 因について. 日本世代間交流学会誌2018; 8: 3-9.

16) 岡部悟志. 若者の仕事生活実態調査報告書:25 ~ 35 歳の男女を対象に. 東京: ベネッ セコーポレーション. 2006.

17) 妹尾昌俊. ちょっと拝見学校訪問神奈川県立市ケ尾高等学校地域協働で授業改善 : 地域協働の中で学び続ける力を本気で育む高校. 東京学事出版. 2018; 10-15.

18) NPO法人まちと学校のみらい. 市ケ尾ユースプロジェクト. 市ケ尾ユースプロジェ クト. 2018.

19) 浦崎太郎. 高校連携で始まる人材循環:市ケ尾ユースプロジェクト. 地域人2018; 33: 74-77.

20) NPO法人まちと学校のみらい. 市ヶ尾ユースプロジェクト. 市ヶ尾ユースプロジェ クト. 2019.

21) 石島恵美子. 高校生の社会参画意識と家庭科の教育要因との関連について. 日本家庭 科教育学会誌2012; 55: 75-82.

22) 特集 地域住民と「未来のまちづくり」 : 第 34 回時事通信社「教育奨励賞」推薦校の 実践(18)神奈川県立市ケ尾高等学校. 内外教育2019; 16-17.

参照

関連したドキュメント

タップします。 6通知設定が「ON」になっ ているのを確認して「た めしに実行する」ボタン をタップします。.

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、今後利用の増大が見込まれる配食の選択・活用を通じて、地域高

ウェブサイトは、常に新しくて魅力的な情報を発信する必要があります。今回制作した「maru 

観察を通じて、 NSOO

 本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出通関又は輸入通関された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したもので

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出通関又は輸入通関された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したもので

 貿易統計は、我が国の輸出入貨物に関する貿易取引を正確に表すデータとして、品目別・地域(国)別に数量・金額等を集計して作成しています。こ

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出通関又は輸入通関された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したもので