実 践 報 告 ( 紀 要 原 稿 )
通 級指導教室 にお ける 書字 指導 の実 践
一小集団指導でのタブレット PC 活用を通してー
出 口 康 子 ( 長 崎 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 教 職 実 践 専 攻 ) 西川│ 崇 ( 長 崎 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 )
吉 田 ゆ り ( 長 崎 大 学 教 育 学 部 )
通級指導教室を利用する児童生徒は、さまざまな困難さが見られる。その中 で、書字を苦手とする児童生徒は多く、書字の困難さは学習意欲にも影響を する。文部科学省 (2011)は、「教育の情報化ビジョン」で発達障害のある子 どもたちに ICTを活用することの有用性を述べている。本研究は、通級指導 教室で漢字の書字に困難さを持つ小学校 5年生 4名に対し、書いた文字のE 誤が自分で確認できる即時フィードパックの機能を持つタブレット PCを活 用した小集団の指導方法について事例研究を通して検討をした。指導は 3か 月聞に 6回行い、タブレット PCでの書字指導の際、音声フィードパyクによ
る書字補正情報の目的とした覚え方プリントを併用したところ、漢字の習得 数が増加した。また、毎指導後の感想文や授業の様子から漢字の書字につい て楽しみながら学習できたことがうかがえた。終わりに、タブレット PCを活 用する利点と配慮事項、書字学習の意欲が喚起された要因、小集団における 個別の配慮について考察した。
キ ー ワ ー ド . 通 級 指 導 教 室 小 集 団 指 導 書 宇 指 導 タブレット PC
問 題 と 目 的
文 部 科 学 省 の 「 平 成 田 年 度 通 級 に よ る 指 導 実 施 状 況 調 査 結 呆J
*
1によると、全 国 で 通 級 に よ る 指 導 を 受 け て い る 児 童 生 徒 は 、 小 学 生 70,924人、中学生 6,958 人 の 合 計 77,882人であり、毎年1.1倍 程 度 増 加 し て い る 。 長 崎 県 で は 逓 級 指 導 教 室 利 用 者 数 は 特 別 支 援 学 級 在 籍 数 の 1
,
361人 を 超 え 1,
433人 と な り *2、最も多い 障 害 は 学 習 障 害 の 400人 で あ る 。 利 用 児 童 生 徒 数 が 増 加 す る に 従 い 通 級 指 導 教 室 が新設され、平成 25年 度 に は 平 成 18年 度 の 約2倍 の 115教 室 に な っ て い る .3。 平 成 18年 度 よ り 通 級 に よ る 指 導 の 対 象 に LD,ADHDの 児 童 生 徒 が 加 え ら れ た こ と か ら 逓 級 指 導 教 室 を 利 用 す る 児 童 生 徒 の 中 に は 、 漢 字 書 宇 に 困 難 さ を 持 っ て い る者の利用が増加傾向にある。書字の困難さは、学習意欲に大きく関係している。ま た 、 上 村 逸 子 ・ 森 山 貴 司 ・ 城 野 聖 一 ・ 井 上 敦 子 ・ 中 川 恵 美 子 (2004)• 4は、「文 字 が 「 読 め な いJ
r
書 け な い 」 た め に 、 知 的 に 遅 れ 、 努 力 不 足 、 低 学 力 な ど 捉 え ら れ が ち で 、 能 力 は あ る の に カ が 発 揮 さ れ な い ま ま 、 学 習 が 嫌 い に な り 、 離 席 行 動 や 不 登 校 、 反 社 会 的 行 動 に 陥 っ て し ま う 児 童 も 多 い 。 」 と 述 べ て い る 。 こ の よ う な習を意欲的に取り組ませる必要がある。
書宇の困難さの児童生徒に対して、「教育の情報化に関する手引きJ(平成 22年 文部科学省)の「第 9章 特 別 支 援 教 育 に お け る 教 育 の 情 報 化 第 3節 小・中・
高 等 学 校 に お け る 特 別 支 援 教 育 で の 情 報 教 育 と ICT活用J• 5において下記のよ うに記されている。
│書字のトレ}ニングに使用できる機器としては,タブレット型コンピュータ及び 帯 型 の ベ ン 入 力 型 ゲ ー ム 機 等 が あ る 。 こ れ ら は , 通 級 指 導 の 時 間 の 喜 字 ト レ ー エ ン グ 用 の 機 器 と し て 活 用 が 想 定 で き るn
本 研 究 で は 、 通 級 指 導 教 室 で 漢 字 の 書 字 に 苦 手 さ を 持 つ 児 童 に 対 し 、 書 い た 文 字 の 正 誤 が 自 分 で 確 認 で き る タ ブ レ ッ ト PCの 即 時 フ ィ ー ド パ ッ ク を 利 用 し た 小
集団指導の有効性について事例研究を通して明らかにする。また、タブレット PC
で の 書 字 指 導 の 際 、 音 声 フ ィ ー ド パ ッ ク に よ る 書 字 補 正 情 報 の 目 的 と し た 覚 え 方 プ リ ン ト を 併 用 す る こ と で 書 字 の 定 着 を 図 る と と も に 、 個 々 に 合 っ た 小 集 団 指 導 の方法を探ることを目的とする。
学 校 教 育 実 践 実 習 1
5月から 7月 の 実 践 実 習 1で は 、 実 習 校 の 通 級 指 導 教 室 の 参 観 、 担 当 児 童 の 検 討 ・ 決 定 、 児 童 の 実 態 把 握 と 書 宇 に 関 す る 検 査 、 パ ソ コ ン ソ フ ト ・ タ ブ レ ッ ト ア
プ リ の 検 討 、 授 業 の 流 れ の 検 討 を 行 っ た 。 対 象 児 童 は 、 小 学 校 の LD・ADHD通 級 指 導 教 室 を 利 用 す る 5年 生 女 子 児 童4名 と し た 。 児 童 の 実 態 把 握 は 、 授 業 参 観 に よ る 観 察 、 担 任 ・ 通 級 ク ラ ス 担 当 へ の 質 問 、 小 学 生 の 読 み 書 き ス ク リ ー ニ ン グ 検査キ6 (以降
STRAW
と表記)、東京都教職員センターが作成した「自尊感情測 定 尺 度J(自己評価シート)を実施した。また、過年度に実施された WISC‑illの 結果も参考にした。実 態 把 握
A児 : (表1)学級では友人といる時は、楽しく会話できるが、通級指導教室では 発言する姿があまり見られない。自尊感情測定尺度によると、「関係の中での自己」
が 高 い タ イ プ で 、 自 分 に 自 信 が な く 、 人 の 視 線 を 気 に し て 自 分 の 考 え を 伝 え る こ と を 鴎 賭 す る 傾 向 が 見 ら れ る 。 書 宇 に つ い て は 、 板 書 事 項 を ノ ー ト に 写 す の に 時 聞がかかるがノートは丁寧に使っている。また、字が雑で形や大きさが揃わない。
STRAW
の 結 呆 は 、 音 読 に お い て ひ ら が な ・ カ タ カ ナ ・ 漢 字 と も 全 問 正 解 だ っ た が、 1文 字 の 書 取 で は 、 ひ ら が な は 19問、カタカナが 16聞 の 正 答 数 だ っ た 。 ま た 、 単 語 の 書 取 で は 、 ひ ら が な は 19問 、 カ タ カ ナ が 18問 、 漢 字 は 10聞 と 半 数 が書けなかった。B児 :(表 2)自分の思いや考えを友達や教師にはっきり発言することができる。
自尊感情測定尺度では、「自己主張・自己決定」が高いタイプで、自分の個性やベ ー ス を 守 る こ と が 出 来 る が 、 自 分 の 言 い 分 や 決 め た こ と が 最 善 の 方 法 と 考 え る 傾 向 が 見 ら れ る 。 書 宇 に つ い て は 、 宇 が 雑 に な り 、 似 た 漢 字 を 間 違 っ て し ま う 。 ま た、集中力が続かない。
STRAW
の 結 果 は 、 音 読 に お い て ひ ら が な ・ カ タ カ ナ は 全 問 正 解 だ っ た が 、 漢 字 は 1問不正解であった。 1文 字 の 書 取 で は 、 ひ ら が な は 20問、カタカナが 17聞のE答 数 だ っ た 。 ま た 、 単 語 の 書 取 で は 、 ひ ら が な は 19C児 :(表3)問題や活動の中でわからないことがあると、ヒントなどを表示して も 諦 め て し ま う 姿 が 見 ら れ る 。 ま た 、 図 形 を 書 く の が と て も 苦 手 で あ る 。 自 尊 感 情調
u
定 尺 度 に よ る と 、 各 観 点 が 平 均 的 に 低 い タ イ プ で 、 自 己 に 対 し て 自 信 が 持 て ず、学校生活や学習面の全般において消極的な態度が見られる。書字については、板書事項をノートに写すのに時聞がかかる。
STRAW
の 結 果 は 、 音 読 に お い て ひ ら が な ・ カ タ カ ナ ・ 全 問 正 解 だ っ た が 、 漢 字 は 1問不正解であった。 1文 字 の 書 取では、ひらがなは 20問、カタカナが 18聞 の 正 答 数 だ っ た 。 ま た 、 単 語 の 書 取D児 :(表 4)学 級 の 代 表 委 員 会 に 出 席 し 活 動 す る な ど 活 発 で あ る 。 授 業 に お い て は 、 挙 手 を し よ く 発 表 を 行 う 。 自 尊 感 情 測 定 尺 度 に よ る と 、 各 観 点 が 平 均 的 に 高 い タ イ プ で あ り 、 学 校 生 活 の 適 応 は 良 好 で 、 学 習 面 や 学 校 生 活 で 意 欲 的 に 取 り 組 む 態 度 が 見 ら れ る 。 書 宇 に つ い て は 、 画 数 の 多 い 漢 字 の 誤 り が 多 く 、 筆 順 を 気 に し な い 。 意 味 が 似 て い る 漢 字 の 読 み 間 違 い 書 き 間 違 い が あ り 、 発 音 が 不 明 瞭 な と ころがある。
STRAW
の 結 果 は 、 音 読 に お い て ひ ら が な ・ カ タ カ ナ は 全 問 正 解 だ ったが、漢字は 4問読めなかった。 1文字の書取では、ひらがなは 20問、カタカ ナが 17聞の正答数で、単語の書取においては、ひらがなは 18問、カタカナが 20学校教育英践実習
2
実践実習 1の課題であった 2点について対応を考え授業を実施した。 1点目の 45分の授業の中で、時間や活動の工夫が必要だったことに対して、授業の展開を 時 間 で 区 切 り 活 動 を テ ン ポ ょ く す る 。 そ し て 、 漢 字 の 構 成 を 理 解 さ せ る た め の ゲ ームなど動きを伴う活動を取り組むようにした。 2点 目 の 聴 覚 的 手 が か り の 提 供 に つ い て は 、 漢 字 の 構 成 を 言 葉 に し た 覚 え 方 プ リ ン ト を 併 用 し 、 机 間 巡 視 で の 指 示で児童にあった覚え方を意識させることとした。
授業展開
(1)挨拶など...3分 間
(2)前 時 に 復 冒 し た 漫 字 の 確 認 ・ 解 答‑5分間
・復習産後に行う確認テストと同じ問題で実施する。その解答は、個人でタ ブレット PCの画面を見て行う。
(3)タブレツトでの演宇練習 10宇...10分 間 (園 1・図 2)
・アプリは、「小学 3年生 漢 字 ド リ ルJ(ミライ子ども教育プロジェクト) を使用する。これは、 1日分の練習として 10字ずつに分けており、この 1
日分を授業で復習する 1回分として実施する。 1宇に 5回練習するマスが あるが、漢字の知識から練習回数は自由とする。
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/JI事1年生農宇ドリルl 園2; 1
レ?トで融自をしている骨子‑毎回復習する漢字の部首や構成などによる覚え方を書いているプリントを 配布する。
園 3IH1~ ~ト (-1)
1プリントは、 1文 字 3種 類 の 覚 え 方 を 表 記 し た 。 図 中 の ① は 漢 字 の 構 成 を 色 分 け し 、 ② は 漢 字 の 構 成 を 足 し 算 の 形 に 、 ③ は筆順に従って言葉でそれぞれ表記した。目的としては、① は 偏 や 冠 な ど の 部 首 を 印 象 付 け る と と で あ り 、 ② と ③ は 簡 単
な言葉で漢字の構成を覚えやすくするためである。(~ドラえ
もんの学習シリーズ ドラえもんの国語おもしろ攻略 歌っ
て書ける小学漢字 1006~ 小学館を参考に作成)
表 5 復 習 漢 字 一 覧 復習日
直 後 の 確 認 次時の確認、 復 習 漢 字
テスト テスト
1回目 9月 25日 10月 7日 安 ・ 全 ・ 意 ・ 味 ・ 医 ・ 院 ・ 委 ・ 員 ・ 駅 ・ 暑 2回目 10月 7日 10月 14日 寒 ・ 温 ・ 度 ・ 氷 ・ 幸 ・ 福 ・ 豆 ・ 畑 ・ 仕 ・ 事 3回目 10月 14日 10月 21日 写 ・ 真 ・ 始 ・ 終 ・ 軽 ・ 重 ・ 短 ・ 秒 ・ 鼻 ・ 指 4回目 10月 21日 10月 28日 歯 ・ 身 ・ 皮 ・ 勝 ・ 負 ・ 世 ・ 界 ・ 整 ・ 列 ・ 相 5回目 10月 28日 11月 11日 談 ・ 球 ・ 拾 ・ 打 ・ 投 ・ 練 ・ 習 ・ 研 ・ 究 ・ 客 6回目 11月 11日 11月 25日 宮 ・ 実 ・ 守 ・ 宿 ・ 都 ・ 部 ・ 横 ・ 橋 ・ 根 ・ 植
( 4)復 習 漢 字 の 確 認 テ ス ト ・ 解 答‑6分 間
・ テ レ ビ 画 面 を 使 っ て 一 斉 に 覚 え 方 を 確 認 し な が ら 解 答 を 行 う 。
・ パ ワ ー ポ イ ン ト の ス ラ イ ド で 問 題 文 、 漢 字 の 順 で 提 示 。 問 題 文 に は 、 そ の 問 題 に 関 す る イ ラ ス ト を 添 付 す る 。 漢 字 は マ イ ク ロ ソ フ ト の 「 書 き 順 付 き 文 字 ス ラ イ ド 」 を 配 布 し た 覚 え 方 プ リ ン ト と 同 じ 色 に 加 工 し 、 漢 字 の 構 成
を印象つける。(例:談=今言 赤色・炎 青) (図 4)
ざ つ 列 刈
す る
OA ‑
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内 ︑
①
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図 4 パ ワ ー ポ イ ン ト で 作 成 し た 解 答
(5) ビ ジ ョ ン ト レ ー ニ ン グ ( 一 斉 )PC・TV画 面 使 用‑3分 間
使 用 ソ フ ト 「 視 空 間 認 知 ト レ ー ニ ン グ ソ フ ト み る 力J
DD
サ ポ ー ト ひ ら か た「 子 ど も の 視 覚 認 知 ト レ ー ニ ン グ ソ フ ト 」 学 研 教 育 出 版 ( 6)動 き を 伴 う 活 動 (一斉)‑15分 間 ( 図 5)
使 用 教 材 「新版 あ わ せ 漢 字 ビ ン ゴ ゲ ー ム 1 <へん・っくり・かんむり・
あ し あ そ び > 小学 2~3 年生 の 漢 字J~漢字がたのしくなる本』
教 具 シ リ ー ズ 図 5 あわせ漢字ビンゴゲーム
(7)ふり返り(個人)
取 り 組 ん だ 活 動 や 学 習 の 内 容 を チ ェ ッ ク し 、 活 動 の 感 想 を 書 く 。
結果
(1) 6回 の 授 業 実 践 に お け る 漢 字 の 習 得 数
6
回 の 授 業 で 復 習 し た 漢 字 の 習 得 を 見 る た め に 、 タ ブ レ ッ トPC
で 復 習 し た 直 後と次時で確認テスト (10宇)を実施した。 4名 の 直 後 の テ ス ト の 正 解 率 は 96.7%と高い正答率である。 A児と B児 は 6回全て全問正解、 C児 は 平 均 9.6、D児 は 平 均 9.0であった。(表 6)
表 6 確 認 テ ス ト 点 数 一 覧
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 合 計 平 均
A 10 10 10 10 10
児 10 10 10 10 10 9 59 9.8
B 10 10 10 10 10 10 60 10
児
ト 一 一 一 一 一 一 ← 一 一 一 一 一 一
10 9 9 10 10 6 54 9.1 C 10 10 10 10 9.7
児 4 8 10 10 10 7 49 8.1
D 10 9 9 10 9 7 54 9.0
児
ト 一 一 一
5一 一 一
8 7 9ト 一 一 一
4一 一 一 六 二 : : :
33 6.6次 時 の テ ス ト で は 、 正 答 率 が 85.2%と11.5%低くなっている。 A児は「橋」だ け が 「 木 偏 」 で は な く 「 禾 偏 」 と な り 不 正 解 に な っ た が 、 復 習 直 後 の 記 憶 を 大 部 分持続している。 B児 は 、 平 均 9.1であった(表 6)05固 ま で 高 い 正 答 数 で あ っ た が、 6回目の正答数が 6に 減 少 し て い る 。 こ の 原 因 の 1っ と し て 、 前 時 の 取 り 組 み 方 が 考 え ら れ る ロ 座 る 姿 勢 が 崩 れ が ち で 練 習 中 も 思 い つ い た こ と を 話 し て し ま う 様 子 が あ っ た 。 当 日 に 本 人 も 「 今 日 は 集 中 で き な く て 楽 し く な か っ た の で 、 楽 し い と 思 う よ う に が ん ば り し ゅ う ち ゅ う し た い と 思 い ま す 。 」 と 振 り 返 り の 記 録 に書いていた。 5回 固 ま で は 違 う 話 を す る こ と な く 取 り 組 み 、 練 習 画 面 が 終 了 す ると自分でタブレット
PC
の確認画面に進み学習成果を試していた。 6回目にな り、活動に飽きがきたことも一因と考えられる。 C児 は 、 平 均 8.1で あ っ た ( 表 6) 0 1回目では正答数が 5だったが、それ以降は高い正答数であった。本児は、左 利 き で 横 画 を 右 か ら 左 に 書 き 運 筆 も 速 い た め 、 タ ブ レ ッ ト
PC
で の 練 習 で は 書 き 直 し を す る こ と が 他 の 児 童 よ り 多 か っ た 。 机 間 巡 視 の 際 、 書 き 方 を 言 葉 に 出 し な が ら 練 習 を す る よ う に と 指 示 を 出 し た が 、 あ ま り 声 に 出 す こ と は な か っ た 。 し か し 、 一 斉 に テ レ ピ 画 面 で 解 答 す る 時 は 、 覚 え 方 プ リ ン ト を 見 な い で 漢 字 の 構 成 を 素 早 く 答 え て い た の で 、 声 に は 出 さ な か っ た が 覚 え 方 プ リ ン ト に 書 い て い る 漢 字の構成を意識して練習していたことが理解できる。 D児 は 、 平 均 6.6であった (表 6)0 4人 の 中 で 最 も 書 字 に 関 し て 困 難 さ を 持 っ て い る 。 し か し 、 タ ブ レ ッ トPC
で の 練 習 は 、 漢 字 の 構 成 を 声 に 出 し な が ら 真 剣 に 取 り 組 ん で い た 。 全 て の 問 題 50字 の 中 で 次 時 の 確 認 で は 17字 が 不 正 解 で あ る 。 そ の 中 の 10字 が 全 く 書 け ていなかった。( 2)小 学 生 読 み 書 き ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 結 果 の 比 較
11月の結果では、 3児 と も 平 均 値 と 標 準 偏 差 の 関 係 で は 標 準 に 入 る こ と が で き た。 A児の 6月の STRAWは、 E解 数 は 10で あ り パ ー セ ン タ イ ル は 10く25、結 果・1.5SD未 満 で あ っ た 。 実 習 後 は 、 正 答 数 が 5問 増 え パ } セ ン タ イ ル は 25<50 になり一 1SDを上回った(表 7)。同様にB児 も 正 答 数 が 4問増え 15聞になり A 児 と 同 様 の 数 値 と な っ た ( 表 8)
,
C児が 3児 の 中 で 最 も 正 答 数 が 6聞から 13聞 に増えている。それに伴ってパーセンタイルが 5く10から 25になり ISDも0.1 だが上回ることができた(表的。表
7
STRAW結 果 の 比 較 (A児)く 単 語 書 取 ・ 漢 字 > 6月実施 11月 実 施
正 答 数 10/20問 15/20問
ノ号ーセンタイル 10く25 25く50
平均と標準偏差の関係 ‑1.5SD未 満 ‑l.OSDを上回る 表 8 STRAW結 果 の 比 較 (8児)
< 単 語 書 取 ・ 漢 字 > 6月実施 11月実施
正 答 数 11/20問 15/20問
ノfー セ ン タ イ ル 10く25 25く50
平均と標準偏差の関係 ‑1.5SD未 満 ‑l.OSDを上回る 表 9 STRAW結 果 の 比 較 (C児)
< 単 語 書 取 ・ 漢 字 > 6月実施 11月実施
正 答 数 6/20問 13/20問
ノfー セ ン タ イ ル 5< 10 25
平均と標準偏差の関係 ‑2.0SD未 満 ‑l.OSDを上回る 表 10 STRAW結 果 の 比 較 (0児)
< 単 語 書 取 ・ 漢 字 > 6月実施 11月実施
正 答 数 3/20問
ノf セ ン タ イ ル 5
平均と標準偏差の関係 ‑2.0SD未 満
D児は、 11月の STRAWは欠席のため実施できなかった。(表 10)
(3) STRAWの 漢 字 書 取 課 題 の 漢 字 32文 字 の 正 答 数 と 書 宇 の 変 化
STRAWの漢字書取課題は、漢字 1文 字 ま た は 2字熟語の 20聞であるが、ここ で は 問 題 に 使 用 さ れ て い る 漢 字 32文字の正誤と書字の変化について考察する。
書 字 エ ラ ー の 分 類 と し て 平 田 (1999)
*
7は、「添加J(正しい漢字に余分な部分が 加えられている字)、「鏡映J(正しい漢字の上下、左右が逆に書かれた宇)、脱落 (正しい漢字に似ている部分がある宇)、具宇(正しい漢字ではなく別の漢字を書い た も の ) と し て い る 。 こ の 分 類 を 使 っ て 、 本 研 究 も 書 字 エ ラ ー を 分 類 す る 。 A児 は 、 正 答 数 が 20文 字 か ら 27文 字 と 増 図 6 A児 の 書 字 の 変 化 加した。 6月 に 不 正 解 だ っ た 12文 字 の 中 で 11
月 で は 8文字は正答し、全く書けなかった「図・
出 」 と 異 字 「 湖 」 は 変 化 が な か っ た 。 「 箱 」 に つ い て は 、 実 習 前 で は 類 字 だ っ た が 、 実 習 後 で は ー 画 だ け 不 足 の 脱 落 に な っ た 。 脱 落 は 不 正 解 だ が 、 「 箱 」 が 以 前 よ り イ メ ー ジ が で き る よ う になったと考えられる。(図 6)しかし、「商」
は6月には正答だったが、 11月 は 上 の 部 分 に エ ラ ー が 見 ら れ た 。 文 字 の 形 や バ ラ ン ス に は 大 き な 変 化 は 見 ら れ な い が 、 小 さ な 部 分 で は 「 は ね 」 や 「 は ら し 、 」 ま で 書 け て い る 字 や 横 画 や 縦 画 を 付 け て 丁 寧 に 書 け て い る 字 が 増 加 し た 。
の 「 宿 」 は 「 戸 」 と な っ て お り 、 「 宿 」 を │ 橋 ( 木 偏 が 売(土が土 宿 熟 語 と し て 考 え 1文字分空けて書いてあっ│禾偏になつ になってい
~~)....J-ている) る)
た。(図 7)11月 に は 、 全 情 け な い ナ 数 は │ 固
園 圏
10文 字 か ら 6文 字 と 減 少 し た 。 不 正 解 の 字
も「指」と「図」は変化していないが、それ以外の漢字は正答している。しかし、
11月 の 全 く 書 け て い な か っ た 「 相JI湖JI強JI血」については、 6月 は 正 答 で あ っ た 。 文 字 の バ ラ ン ス や 細 部 に 関 し て 変 化 は 見 ら れ な か っ た 。
C児 は 、 正 答 数が 6月 は 14文 字 だ っ た が 11月 に は 24文 字 と 増 加 し て い る 。 全 く 書 け B児 の 正 答 数 は 19文 字 か ら 26文 字 に 増 加した。6月 に 全 く 書 け な い 字 数 が 10文字、
書 字 エ ラ ー が 3文字あった。添加は「橋」、
類 似 は 「 売 」 、 異 字 は 「 宿 」 で あ っ た 。 異 字
6月 =今 11月
S三
J ii
品 目
F箱 ( 竹 冠 と 箱 ( 目 の 部 目は書けて 分 の 横 画 が いる匿)
函
足匝り盟ない)図 7 B児 の 書 字 エ ラ ー 6月
一 時 一
一
図 8 C児 の 書 字 エ ラ ー な か っ た 宇 が 6月 に は 15文字もあったが、 11月
11月 は 「 指JI図」の 2文 字 に な っ た 。 他 の
月五
不正解は、「勝」が添加、「橋j と「歯」の 2
I .‑ ヲ ; 、
文字が脱落、「宿」は類似(図 8)、「血」と 勝 ( 穿 の 橋 ( 口 が 欠 歯 ( 三 画
「商」が異字である。異字以外は、不正解だ
横 画 が け て い る ) 目 が 欠 け 多医い
E )
て匪い盟る)が 6月 と 比 較 す る と 自 分 の 書 き た い 文 字 の 匪 盟 形はイメージができている。
総 合 的 考 察
(1)タブレット PCを 活 用 す る 利 点 と 配 慮 事 項
今 回 の 実 践 で 漢 字 書 宇 に 困 難 さ が あ る 児 童 の 書 字 指 導 に 対 し 、 タ ブ レ ッ ト PC を 活 用 す る こ と の 利 点 と 配 慮 の 必 要 な 点 が 見 ら れ た 。 利 点 と し て は 、 児 童 へ の 負 担 が 少 な い こ と で あ る 。 そ れ は 、 タ ブ レ ッ ト PCの 操 作 が 易 し く 短 時 間 で 操 作 方
法 が 覚 え ら れ る こ と 、 書 字 を 間 違 っ た 時 、 消 し ゴ ム で 消 さ な く て よ い こ と が 挙 げ ら れ る 。 こ の 負 担 の 少 な さ は 、 苦 手 な こ と に 取 り 組 む た め に は と て も 大 切 な こ と だと考えられる。画己慮事項としては、児童の実態に応じたアプリの選択と飽きさ せ な い 工 夫 が 挙 げ ら れ る 。 学 習 内 容 の 難 易 度 は 、 児 童 の 学 習 意 欲 を 持 た せ る た め 重 要 な こ と で あ り 、 漢 字 の 書 字 カ の 実 態 把 握 が 必 要 と な る 。 ま た 、 書 字 の 学 習 の 意 欲 や 課 題 意 識 を 持 た せ る た め に は 、 タ ブ レ ッ ト PCを活用する時聞を決めるこ とや 45分 の 授 業 展 開 に 動 き を 伴 っ た 活 動 を 入 れ る な ど 飽 き さ せ な い 工 夫 も 阻 慮 し な け れ ば な ら な い 。 今 後 、 配 慮 事 項 に つ い て は 、 さ ら に 実 践 を 重 ね 効 果 的 な 使 い方や授業展開の検討が望まれる。
( 2)児 童 た ち の 書 字 学 習 の 意 欲 が 喚 起 さ れ た 要 因
学 習 意 欲 に つ い て は 、 児 童 の 様 子 や 毎 回 の 感 想 を 見 る と 、 漢 字 の 書 字 に つ い て 楽 し み な が ら 能 動 的 に 学 習 し た こ と が 読 み 取 れ る ロ こ の 大 き な 要 因 と し て 上 に 述 べたタブレツト PCの利点の他に 2点が挙げられる。 1点 目 は 、 ア プ リ の 画 面 や 確 認 テ ス ト で 達 成 感 を 味 わ え た こ と で あ る 。 ア プ リ の 画 面 で は 、 自 分 が 書 い た 文 字 が 記 録 に 残 り 学 習 の 積 み 上 げ や ど こ ま で 学 習 し た か を 自 分 自 身 で 確 認 で き 、 テ ス ト に お い て 自 分 の 練 習 の 結 果 を 評 価 で き た た め と 考 え ら れ る 。 ま た 、 今 回 は 達 成 感 に つ な が る よ う に 、 ス モ ー ル ス テ ッ プ の 考 え か ら 取 り 組 む ア プ リ を 下 学 年 の も の と し た 。 こ れ は 、 漢 字 の 復 習 の た め だ け で は な く 、 漢 字 の 苦 手 さ を 減 少 す る 目 的 も あ っ た 。 児 童 た ち が 確 認 テ ス ト に 自 分 で 大 き な 花 丸 を つ け る 姿 や 声 に 出 し て喜んでいる姿から、学習への意欲に繋がっていると推察される。 2 点目は、同 学 年 の 仲 間 が 一 緒 に 取 り 組 ん で い る こ と で あ る 。 自 分 だ け が 苦 手 な 漢 字 の 学 習 を していると思う場面はなく、「書けたJ
r
書 け な い 」 な ど 楽 し く 言 い 合 う こ と が で きた。吉田 (1988)*
8は、互いに友人の行動や成果から刺激を受けることは、目 標を達成しようとする意欲を持続させる大きな要因になることを指摘している。このことから、書字指導における小集団指導の有効性が考えられる。
(3)小 集 団 指 導 に お け る 個 別 へ の 指 導
小集団指導では、 1対 1の よ う な 手 厚 い 個 別 的 支 援 に は 限 界 が あ る た め 、 タ ブ レット PCと そ れ を 補 う プ リ ン ト を 作 成 し 、 そ れ ら の 有 効 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 実 践 し た 。 全 体 で の 指 導 、 机 間 巡 視 、 そ し て 毎 回 授 業 後 に 文 章 で も 各 自 にあった覚え方を伝えた。 4児中 3児 が 、 次 時 の 確 認 テ ス ト や 実 習 後 の 書 字 検 査 に お い て 漢 字 の 習 得 数 が 増 え た こ と か ら 3人 に は 小 集 団 で の 指 導 は 効 果 が あ っ た と考えられる。しかし、 1児 に つ い て は 次 時 の 確 認 テ ス ト の 結 果 に ば ら つ き が あ り 、 さ ら な る 指 導 の 工 夫 が 必 要 で あ っ た と 考 え ら れ る 。 こ の こ と か ら 、 タ ブ レ ッ トPCを 用 い た 小 集 団 指 導 の 結 呆 は 、 小 集 団 で 支 援 が 行 え る 児 童 と よ り 個 別 に 特 化 し た 1対 1での指導が必要な児童に分ける 1つ の 参 考 資 料 に な り 得 る こ と を 示 唆している。
結 論
1 漢 字 書 宇 に 困 難 さ が あ る 小 学 校 5年 生 児 童4名 に 対 し 、 通 級 指 導 教 室 に お い てタブレット PCの 即 時 フ ィ ー ド パ ッ ク 機 能 と 文 字 構 成 の 音 声 フ ィ ー ド パ ッ クによる書字補正機能を併用した結果、 4児 と も 指 導 直 後 の 確 認 テ ス ト で 高 い正答率が得られたことから、本指導の有効性が示された。
2 3か月後に再度「小学生読み書きスクリーニング検査を実施したところ、 3児 が.1.5SD、.2.0SDから.1.0SDと 上 昇 し た 。 ま た 、 全 く 書 け な か っ た 漢 字 が 正 答 で な い も の の ー 画 足 り な い 「 脱 落 」 や 一 酉 多 い 「 添 加 」 ま で 近 づ き 、 漢 字 の 細 か い 部 分 に も 意 識 し た 書 字 の 変 化 が 見 ら れ た 。 こ の こ と か ら 、 漢 字 の 構 成 を 意 識 さ せ る 覚 え 方 を 取 り 入 れ る こ と は 、 部 首 や 芳 な ど か ら 漢 字 を 想 起
させる有効な手がかりとなり得ることが示唆された。
3 対 象 児 童 の 毎 回 の 指 導 後 に 書 く 「 振 り 返 り 」 の 感 想 に お い て 、 漢 字 書 字 へ の
文献
興 味 の 高 ま り や 書 宇 に 対 し て の 苦 手 さ が 減 少 さ れ て い る こ と が 読 み 取 れ る 記 述 が あ っ た 。 漢 字 書 字 に 困 難 さ が あ る 小 集 団 指 導 に お い て 、 タ ブ レ ッ ト PC
を 取 り 入 れ る こ と に よ り 児 童 生 徒 た ち が 達 成 感 を 味 わ い 、 そ の こ と に よ り 学 習 に 対 し 意 欲 を 持 つ 手 立 て の 1つになると考えられる。
*1 文 部 科 学 省 ・ 平 成 25年 度 通 級 に よ る 指 導 実 施 状 況 調 査 結 果
*2 長 崎 県 教 育 委 員 会 ・ 長 崎 県 特 別 支 援 教 育 推 進 基 本 計 画 第 2次 実 施 計 画
*
3r
特 別 支 援 教 育 の 現 状 と 課 題 」 資 料 長 崎 県 教 育 委 員 会 作 成*4 上村逸子・森山貴司・城野聖一・井上敦子・中川│恵美子 (2004) :
「読み書き」につまずきのある児童への指導に関する一考察 こ と ば の 教 室 に お け る 個 々 の 認 知 特 性 に 応 じ た 指 導 ー : 大 阪 教 育 大 学 障 害 児 教 育 研 究紀要,27,29.44
*5 文 部 科 学 省 (2010):第 9章 第 3節 小 ・ 中 ・ 高 等 学 校 等 に お け る 特 別 支 援 教 育 で の 情 報 教 育 と ICT活 用 . 教 育 の 情 報 化 に 関 す る 手 引
*6 宇野彰・春原則子・金子真人・ Taeko N.Wydell(2006):小 学 生 の 読 み 書 き ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 一 発 達 性 読 み 書 き ( 発 達 性 dys1exia)検 出 の た め に イ ン テ ル ナ 出 版
*7 平 田 永 哲 (1999)・通常学級における LD児 理 解 の 個 別 指 導 の 必 要 性(1) 漢 字 書 字 に 困 難 を 示 す LDサ ス ベ ク ト 児 の 指 導 事 例 を 通 し て ー : 琉 球 大 学 教 育学部障害児教育実践センター紀要,1,17.40
*8 吉 田 道 雄 (1988):総合学習と児童・生徒の学習意欲:教科学習と総合学習 の 設 定 に よ る 授 業 創 造 に 関 す る 理 論 的 ・ 実 践 的 研 究 昭和 62年 度 文 部 省 特定研究報告書, 117・124