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StabilityoftheBodySway 身体動揺の安定性

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Academic year: 2021

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(1)

身体動揺 の安定性

‑ 朝 にお ける身体動揺‑

朝 長 昌 三

St a bi l i t yo ft heBo dySwa y

BodySwayi nt heMor ni ng

Shoz oTOMONAGA

ヒ トは,直 立 し,二足歩行 す る。 この ヒ トの直立 し,歩行 す る こ とは ヒ トのすべての動 作 の基本 で あ る とされ てい る。 ヒ トの場合 ,頭 が躯幹 よ りもわずか に前 に位 置 す るいわ ゆ る前屈 みの状 態 にあ るた め,重力 によって前方 に倒 れ よ う とす るの を躯幹 の背側 にある抗 重力筋 で反射 的 に後 ろに引 き戻 す ことに よって,直立 姿勢が維持 されてい る このた め, ヒ トの直立 姿勢 は不安定 で,前後 方 向 ばか りでな く左右 方向 に も常 に動揺 して い る この 身体 の動揺 は,身体 動揺 また は重 心動揺 とよばれ,平衡機能測定 の指標 となってい る。

ヒ トの直立姿勢 の制御 には,税覚 系,前庭 系,体 性感 覚系か らの情報 が関与 してい る。

そ して これ らの入力情報 を中枢神 経系 が統合 ・処理 し, それ らの出力が四肢 ,躯幹 の抗重 力筋 の筋運動調節 系 に送 られ る ことで身体 を安定化 させ てい る

直立 姿勢 の維持 のた めの情報 と身体 動揺 との関係 について,身体 動揺 の周波数 か らの分 析 が試 み られ て きた (Kapteyn&DeW it,1972) その ような情報 のなかで も,特 に視覚 情 報 の果たす役割 は重要 とされ, さまざ まな視 覚情 報 を呈示 させ た場合 の身体 動揺 につい て検 討 され て きた(Edwards,1946;河合他,1991;中 田,1983;朝長,1998)。身体動揺 を検討 す る場合 ,視覚 的条件 ,環境 照度条件 ,足位 条件 とい った条件 の下 で身体 動揺 の評 価 が行 われて きた。時間的条件 を考慮 した検討 は これ まで ほ とん ど行 われ ていない ようで

あ る。

ヒ トに限 らず, すべて の生物 は時間 の流 れ のなかで生 きてい る。 われわれ の身体 的 ・精 神 的機能 は 1日の なかで ア ップ ・ダ ウンを してい る 体 温 は夕方 に最 も高 く, 睡眠 中 に最 も低 くな る 感 覚機能 も鋭敏 な とき とそ うで ない とき とが あ る。学習や記憶 とい った精神 活動 に も最適 な時 間帯 が あ る この ような ことか ら,生体 の一機能 で あ る身体動揺 を検 討 す る場合,上記 の条件 に時間的条件 を加味 し, そ して生物 リズム との関係 で身体動揺 を測 定 す る必要が あ る と考 え られた。 そ こで,身体 動揺 を測定す る条件 として,以下 の ような 条件 が考 え られた。

1. 時間的条件

(∋ 朝 (9時〜 9時30分 )

② 昼 (11時〜12時30分 ) (診 夕 (17時〜17時30分 )

(2)

70 長崎大学教育学部紀要 一教育科学 一 第59

④ 夜 (20時〜20時30分 ) 2.足位条件

(9 45度 開足

② ロンベ ル グ足位

③ マ ン足位 3.照度条件

G) 視標 が明 らか に見 える明 るさ (参 視標 が ぼんや りと見 える明 るさ 4.視覚的条件

(∋ 開眼条件

② 開眼条件

本研究 は, ヒ トの身体動揺 の 日内変動 を検討 す るた めに,上記 の条件 の中か ら時間的条 件 として朝 (9時〜 9時30分 ),足位 条件 として45度開足,照度条件 として視標 が明 らか に 見 える明 るさ (

1 3 4 7 1 Ⅹ)

とし, これ らの条件 の下で開眼条件 にお ける身体動揺 と閉眼条件 にお ける身体動揺 を,重心動揺 の平均速度,平均加速度,移動距離 お よび動揺面積 か ら検 討 す る ことを目的 とした。

方 法

身体動揺 の測定 は,Fig.1に示 した システム を用 いて行 った。図の ように,身体動揺 は平 衡機能計 (6GO 1, 日本電気三栄社 ) を用 いて測定 した。検 出台か らの出力 は,オムニ

Fig.1 実験 装 置 の概 要

(3)

エー ス (RT3200, 日本電 気三栄社) とデー タ レコー ダ (R‑61,TEAK社 ) に入 力 され た。

被験者 は,視標 が明 らか に見 える明 るさ(1347 1Ⅹ)の実験室 に設置 された検 出台上 に45 度開足 (産 を接 し,足尖 を45度 に開いた足位)で直立 し,両上肢 を体側 に接 した姿勢 を と った。検 出台上 での被験者 の身体動揺が安定 した ことを, オムニュースが措 く動揺 のⅩ一 方向 (左右動揺) とY一方向 (前後動揺)の軌跡 によって確認 し,身体 動揺 の記録 を始 め

た 。

開眼 で,眼前約 2mに設置 された (+)印の視標 を凝視 して直立 した場合 を開眼条件, また閉眼 で直立 した場合 を開眼条件 とした 各被験者 に対 して, これ ら開眼条件 にお ける 身体動揺 の測定 を5試行, また開眼条件 にお ける身体動揺 の測定 を5試行 の,計10試行 の 測定 をランダム に行 った。

被験者 は,健常 な男子学生25人 と女子学生25人 の計50人 であった。

身体動揺 の解析 は, デー タレコーダか ら出力 された動揺 をA/D変換 した後

,

重心動揺

計解析 プログラム (日本電気三栄社)」によって動揺 を左右 方向 と前後 方向の時系列記録 と して計測 し,各方 向の平均速度,平均加速度,移動距離 お よび動揺 の範囲 を示 す動揺面積 を求 め る ことによって,身体 動揺 を分析 した。重心動揺計解析 プログラムのサ ンプ リング タイム は50msで,取 り込 み時間 は51.2Sで あった。

結 果

1.50人 におけ る開眼条件 と開眼条件 の比較

(1) 平均速度

Ⅹ一方向 :t‑8.829 (p<.01) Y一方向 :t‑ll.425 (p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も閉眼条件 にお ける動揺 の速度 の方が,開眼条件 の場合 よ りも速 か った。

(2)平均加速度

Ⅹ一方向 :t‑7.926 (p<.01) Y一方向 :t‑9.474 (p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も開眼条件 にお ける動揺 の加速度 の方が,開眼条件 の場合 よ りも 大で あった。

(3)移動距離

Ⅹ一方向 :t‑7.719 (p<.01) Y一方向 :t‑10.605(p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も開眼条件 にお ける動揺 の移動距離 の方が,開眼条件 の場合 よ り も大 であった。

(4) 動揺面棟

t‑6.336 (p<.01)

開眼条件 にお ける動揺面積 の方が,開眼条件 の場合 よ りも大 で あった。

(4)

72 長崎大学教育学部紀要 一教育科学 一 第59号

2.50人 におけ る左右動揺 と前後動揺の比較

(1) 開眼条件

平均速度 : t‑1.526(p

>

.05) 平均加速度 :t‑1.606(p

>

.05) 移動岸巨離 : t‑2.579(p<.05)

開眼条件 においては,平均速度 も平均加速度 も統計 的 には有意 な差 はなか ったが, ど ち らか とい えば前後動揺 の方が左右動揺 よ りも大であった。 しか し移動距離 に関 しては, 左右動揺 の方が前後動揺 よ りも大で あった。

(2)開眼条件

平均速度 : t‑4.966(p<.01) 平均加速度 :t‑3.738(p<.01) 移動距離 : t‑2.557(p<.05)

開眼条件 においては平均速度,平均加速度,移動距離 ともに前後動揺 の方が左右動揺 よ りも大で あった。

3.男性 における開眼条件 と開眼条件の比較 (1) 平均速度

Ⅹ一方向 :t‑6.046 (p<.01) Y一方向 :t‑7.938 (p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も閉眼条件 にお ける動揺 の速度 の方が,開眼条件 の場合 よ りも速 かった。

(2)平均加速度

Ⅹ一方向 :t‑5.571 (p

<

.01) Y一方向 :t‑6.871 (p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も閉眼条件 にお ける動稀 の加速度 の方が,開眼条件 の場合 よ りも 大であった。

(3)移動距離

Ⅹ一方向 :t‑5.598 (p<.01) Y一方向 :t‑7.712 (p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も開眼条件 にお ける動揺 の移動距離 の方が, 開眼条件 の場合 よ り も大 であった。

(4) 動揺面積

t‑4.391 (p

<

.01)

閉眼条件 にお ける動揺面積 の方が開眼条件 の場合 よ りも大 であった0

4.男性 におけ る左右動揺 と前後動揺の比較 (1) 開眼条件

平均速度 : t‑2.887 (p<.01) 平均加速度 :t‑3.333 (p<.01) 移動距離 : t‑.296 (

p>

.05)

(5)

開眼条件 において は,平均速度 も平均加速度 も前後動揺 の方が左右動揺 よ りも大 で あ った。 また移動距離 に関 して も,統計 的 には有意 な差 はなか ったが, どち らか とい えば 前後動揺 の方が左右動揺 よ りも大 で あった。

(2) 開 眼条件

平均速度 : t‑4.299 (p<.01) 平均加速度 :t‑3.845 (p<.01) 移動距離 : t‑2.901 (p<.01)

開眼条件 において は平均速度,平均加速度,移動距離 ともに前後動揺 の方が左右動揺 よ りも大で あった。

5.女性 におけ る開 眼条件 と開 眼条件の比較 (1) 平均速度

Ⅹ一方向 :t‑5.646 (p<.01) Y一方向 :t‑8.056 (p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も閉眼条件 にお ける動揺 の速度 の方が, 開眼条件 の場合 よ りも速

た 。

(2)平均加速度

Ⅹ‑方向 :t‑5.612 (p<.01) Y一方向 :t‑6.403 (

p<.

01)

左右動揺 も前後動揺 も閉眼条件 にお ける動揺 の加速度 の方が, 開眼条件 の場合 よ りも 大 で あった。

(3)移動距離

Ⅹ一方向 :t‑5.256 (p

<

.01) Y一方向 :t‑7.156 (p<.01)

左右動揺 も前後動揺 も開眼条件 にお ける動揺 の移動距離 の方が,開眼条件 の場合 よ り も大 で あった。

(4)動揺面積

t‑4.483 (p<.01)

開眼条件 にお ける動揺面積 の方が開眼条件 の場合 よ りも大 であった0 6.女性 におけ る左右動揺 と前後動揺の比較

(1) 開眼条件

平均速度 : t‑1.102 (

p>

.05) 平均加速度 :t‑1.134 (

p>

.05) 移動距離 : t‑4.956 (p<.01)

開眼条件 において は,平均速度 も平均加速度 も統計 的 には有意 な差 はなか ったが, ど ち らか とい えば左右動揺 の方が前後動揺 よ りも大 で あった。 それ に対 して移動距離 は, 左右動揺 の方が前後動揺 よ りも大 で,統計 的 に も有意 な差 が あった。

(2)開眼条件

平均速度 : t‑2.713 (p<.05)

(6)

74 長崎大学教育学部紀 要 ‑教育科学 一 第59号

平均加速度 :t‑1.479 (p>.05)

@#RE# : t‑.753 (P>.05)

開眼条件 においては,前後動揺の平均速度 の方が左右動揺 よ りも大であった。 また平 均加速度 と移動距離 ともに統計的 には有意 な差 はなかったが, どち らか といえば前後動 揺の方が左右動拝 よ りも大であった。

7.性 差 (1) 開眼条件

平均速度

Ⅹ一方向 : Y一方向 : 平均加速度

Ⅹ一方向 : Y一方向 .' 移動距離

Ⅹ一方向 : Y一方向 : 動揺面積

t‑.056

t‑.325 t‑1.692 t‑.292 t‑1.928 t‑.102 t‑1.89 (p>.05)

(p>.05) (p>.05) (p>.05) (

p>

.05) (p>.05) (

p>

.05)

左右動揺 の平均速度,平均加速度 お よび移動距離 に関 しては,統計的 には有意 な差 は なかったが, どち らか とい えば女性 の方が男性 よ りも大であった。 それ に対 して前後動 揺 の平均速度,平均加速度,移動距離お よび動揺面積 に関 しては,統計的 には有意 な差

はなか ったが, どち らか といえば男性 の方が女性 よ りも大であった。

(2)開眼条件 平均速度

Ⅹ一方向 :

Y

一方向 : 平均加速度

Ⅹ一方向 : Y一方向 : 移動距離

Ⅹ一方向 : Y一方向 : 動揺面積

t‑.097

t‑.051 t‑.876 t‑.116 t‑1.099 t‑.254 t‑1.042 (p>.05)

(p>.05) (

p>

.05) (

p>

.05) (p>.05) (p>.05) (p>.05)

平均速度,平均加速度 お よび移動距離 に関 しては,統計的 には有意 な差 はなか ったが, どち らか といえば男性 の方が女性 よ りも大であった。動揺面積 に関 しては, どち らか と いえば女性 の方が大 であった。

(7)

8.左右動揺の移動距離が前後動揺 の移動距離 よ りも大であ る場合 の試行数 (1) 開眼条件

男性 :64/125 女性 :104/125

開眼条件 において は,左右動揺 の移動距離 が前後動揺 の移動距離 よ りも長 い試行数 は, 男性 の場合,125試行 中64試行 で あった。 それ に対 して女性 の場合 は104試行 であった。

(2) 開眼条件 男性 :38/125 女性 :61/125

開眼条件 において は,左右動揺 の移動距離 が前後動揺 の移動距離 よ りも長 い試行数 は, 男性 の場合,125試行 中38試行 で あった。 それ に対 して女性 の場合 は61試行 で あった。

考 察

本研究 は,時間的条件 として朝 (9時′‑9時30分),足位条件 として45度 開足,照度条件 として視標 が明 らか に見 える明 るさ (1347 1Ⅹ)とし, これ らの条件 の下 で開眼条件 にお け る身体動揺 と閉眼条件 にお ける身体 動揺 を,重心動揺 の平均速度,平均加速度,移動距離 お よび動揺面積 か ら検討 す ることを目的 とした。

本研究 にお ける実験 条件 で,特 に重要視 した条件 は時間的条件 で ある。 すなわ ち ヒ トの 概 日 リズム と身体動揺 との関係 を検 討す るために,本 実験 で は,時間的条件 を朝9時か ら

9時30分 まで と限定 し, その時間帯 にお ける身体動揺 を測定 した。

被験者50人 の開眼条件 にお ける身体動揺 と閉眼条件 にお ける身体 動揺 の比較 に関 して は, 左右動揺 お よび前後動揺 の平均速度,平均加速度,移動距離 ともに, また動揺面積 も開眼 条件 の方が大で あった。す なわ ち開眼条件 にお ける動揺 の方が よ り速 い速度 で, よ り大 き な加速度 で, よ り長 い距離 で, そ して よ り広 い範 囲で動揺 した といえる また男性 におい て も女性 において も, 同 じ傾 向で あった。 これ らの結果 は,朝長が これ まで得 た結果 と同 じ傾 向 を示す もので あった (1993,1994) す なわ ち,視覚情報 を呈示 させた場合 の方が, 視覚情報 を遮断 させた場合 よ りも身体動揺 は小 さい とい うこれ までの研究結果 と同 じであ

った (田 口,1976;五 島,1988;河合 ら,1989)0

性差 に関 しては,開眼条件 において も開眼条件 において も,平均速度,平均加速度,移 動距離 お よび動揺面積 には,統計 的 には有意 な差 はなか った。す なわ ち開眼条件 において

も開眼条件 において も,男女 は ともに同 じような動揺 であった とい える。 田近 (1979)は, 移動距離 においで 性差 な しとい う結果 を得 てい る。動揺面積 については,小島 と竹森 (1980)

は性差 な しとい う結果 を得 てい るのに対 し,菅野 と武谷 (1971)は男性 の方が女性 よ りも 大 とい う結果 を得 てい る。 また中林 ら (1987)は閉眼条件 で は男性 の方が女性 よ りも大 で

あったが,開眼条件 で は有意 な差 はなか った とい う結果 を得 た。 それ に対 して朝長(1994) は平均速度,平均加速度,移動距離 お よび動揺面積 において女性 の方が男性 よ りも大 とい う結果 を得 てい る。 この ように性差 に関 して は定 まった結果 が得 られていない。

被験者50人 にお ける左右動揺 と前後動揺 を比較 した場合,閉眼条件 において は平均速度, 平均加速度,移動距離 ともに前後動揺 の方が左右動揺 よ りも大 で あった。 この結果 は,戟

(8)

76 長崎大学教育学部紀 要 一教育科学 一 59号

長 (1993)が これ まで得た結果 と同 じ傾 向であった。 また開眼条件 において も,平均速度 と平均加速度 で統計的 には有意 な差 はなか ったが, どち らか といえば前後動揺が大 であっ た。 それ に対 して移動距離 で は,左右動揺 の方が大 であった。

一般 的 に,前後動揺 の方が左右動揺 よ りも大 きい とされてい る そ こで,男女 それぞれ について開眼条件 にお ける左右動揺 と前後動揺 の移動距離 に関す る比較 を行 った。

男性 では開眼条件 において,統計 的 には有意 な差 はなか ったが, どち らか とい えば前後 動揺 の方が左右動揺 よ りも大 であった。 それ に対 して女性 においては,左右動揺 の方が前 後動揺 よ りも大 であった。

そ こで次 に,左右動揺 の移動距離が前後動揺 の移動距離 よ りも大 であった試行数 を検討 した結果,閉眼条件 においては男性 の場合125試行 中38試行,女性 の場合125試行 中61試行 であった。それ に対 して,開眼条件 において は男性 の場合125試行 中64試行,女性 の場合125 試行 中104試行 であった。この ことによって開眼条件 にお ける左右動揺 の移動展巨離が前後動 揺 の移動距離 よ りも大 となった と考 えられた。

以上 の ように,本研究 で得 た結果 は, これ まで朝長が得 た結果 と異 なる ものであった。

すなわち,本研究 の 目的 は時間的条件 として朝 (9時〜 9時30分),足位条件 として45度 開 足,照度条件 として視標が明 らか に見 える明 るさ(1347 1Ⅹ)とい う条件 の下 で,開眼条件 にお ける身体動揺 と開眼条件 にお ける身体動揺 を比較検討 す る ことであった。 その結果, これ まで得た結果 と明 らか に異 な る結果 は,開眼条件 にお ける動揺 の移動距離 に関 して, 左右動揺の方が前後動揺 よ りも大 であ り, しか もそれ は女性 によって生 じてい るとい うこ

とであった。 さ らにはまた性差 に関 して も,統計的 には有意 な差 はなか った ことは,朝 と い う時間的条件が女性 に特 に影響 した結果 なのか を検討す る必要があ る。

以上 の ように,女性 の身体動揺 は,朝 において は,左右動揺 の方が前後動揺 よ りもよ り 大 き く動揺す る とい えるのか どうか について, さ らに検討 を加 える必要が ある と考 え られ た。

要 約

本研究 は,時間的条件 として朝(9時〜 9時30分),足位条件 として45度開足,照度条件 として視標 が明 らか に見 える明 るさ(1347 1Ⅹ)とし, これ らの条件 の下で開眼条件 にお け る身体動揺 と開眼条件 にお ける身体動揺 を,垂心動揺 の平均速度,平均加速度,移動距離 お よび動揺面積 か ら検討す ることを目的 とした。結果 は以下 の通 りであった。

1.50人 にお ける開眼条件 と閉眼条件 の比較 (1) 平均速度

左右動揺 も前後動揺 も閉眼条件 における動揺 の速度 の方が,開眼条件 の場合 よ りも速 か った。

(2) 平均加速度

左右動揺 も前後動揺 も開眼条件 にお ける動揺 の加速度 の方が,開眼条件 の場合 よ りも 大 であった。

(3) 移動距離

左右動揺 も前後動揺 も開眼条件 にお ける動揺 の移動距離 の方が, 開眼条件 の場合 よ り

(9)

も大 で あ った。

(4) 動揺 面積

閉眼条件 にお け る面積 の方 が, 開眼条件 の場 合 よ りも大 で あ った。

2.性 差

開眼条件 にお い て も開眼条件 におい て も,平均速 度,平均 加速 度,移 動距 離 お よび動 揺面積 に関 して統計 的 に有意 な差 はなか った。

3.50人 にお ける左右 動揺 と前後 動揺 の比 較

(1)開眼条件

平均速 度 と平均加 速 度 に関 して は,統 計 的 に有 意 な差 はなか ったが,移 動距 離 に関 し て は左右 動揺 の方 が前後 動揺 よ りも大 で あ った。

(2) 開眼 条件

平均速 度 ,平均 加速 度,移 動距 離 ともに前後動 揺 の方が左 右動揺 よ りも大 で あ った。

4.男性 にお け る左 右動揺 と前 後動揺 の比 較 (1) 開眼条件

平均速 度 と平均 加速 度 に関 して は前後 動揺 の方 が大 で あ ったが,移 動距 離 に関 して は 統計 的 に有意 な差 はなか った。

(2)開 眼条件

平均速 度,平均加速 度 ,移 動距離 ともに前後 動 揺 の方が大 で あ った。

5.女性 にお ける左 右動揺 と前後動 揺 の比較 (1) 開眼条件

平均 速度 と平均 加速 度 に関 して は統計 的 に有意 な差 はなか ったが,移動距 離 に関 して は左 右 動揺 の方 が前後動揺 よ りも大 で あ った。

(2)閉 眼条件

平均速 度 に関 して は前後 動揺 の方が大 で あ ったが,平均加速 度 と移 動距 離 に関 して は 統計 的 に有意 な差 はなか った。

以上 の結果 か ら, これ まで得 られ た結果 と異 な る点 は, 女性 に関 して, 開眼条件 にお ける左右 動揺 の移 動距 離 の方 が前後 動揺 の移 動距 離 よ りも大 で あ る とい う こ とで あった。

引 用 文 献

Edwards,A.S.1946Bodyswayandvision.JournalofExperimentalPsychology,36,526536. 五島桂子 1988 重心動揺検査 の検討 一検査条件 について‑ Equilibrium Res.,Vol.47(2),174186. Kaptayn,T.S.&DeWit,G.1972Posturographyasanauxilialyinvestibularinvestigation.Acta

Otolaryngology,73,104111,

河合学 ・稲村欣作 ・野間忠明 1989 立位姿勢 にお ける身体動揺 と環境照度 姿勢研究,9(1),2532.

河合学 ・野間忠明 ・古賀一男 1991視標追跡刺激 と身体動揺 姿勢研究,ll(1),3ト38.

小林祥泰 ・藤原茂芳 ・下手公一 ・小 出巳 ・鈴木知子 ・山口修平 ・恒松徳五郎 ・桧学 ・高木明 1987 正常 高齢者 にお ける重心動揺 と脳循環,知的精神機能 との関連 について 姿勢研究,7(1),1‑6.

小島幸江 ・竹森節子 1980 小児の身体平衡 の発達 について一 正常小児,起立位 を中心 に‑ 耳鼻臨床, 73(5),865871.

宮田洋 1997 新生理心理学 1, 2,3 北大路書房

(10)

78 長崎大学教育学部紀要 一教育科学 一 第59

中田英雄 1983視覚障害者の直立姿勢保持能力 姿勢研究, 3(1), 1‑7.

菅野久信 ・武谷力 1971平衡計 とその臨床応用 Equilibrium Res.,Vol.28.,38‑39.

田近 由美子 1979 重心動揺移動距離 と重心動揺図 (Ⅹ軸長,Y軸長) についての研究 金沢大学十全医 学会雑誌,88(1),122‑137.

田口喜一郎,他 1976重心動揺軌跡距離測定法 日耳鼻,79,835‑843.

朝長 昌三 1993視覚情報 の部分呈示 による姿勢制御 の練習効果 長崎大学教養部紀要,第34 1号, 45‑53.

朝長 昌三 1994視覚情報 による重心動揺 の安定性 長崎大学教養部紀要,第35 1号,1‑20. 朝長 昌三 1998 重心動揺 に関す る傾 向分析 長崎大学教育学部教育科学研究報告,第55,69‑73.

参照

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