皿.技術革新を支えるハイテク新素材 土井秀和(三菱金属株式会社技師長〉
技術革新を支えるハイチク新素材に関連して、①超塑性を示す軽量強靱微粒合金、②メ ガビット時代におけるリードフレmム材料、◎光磁気記録用スパッタリングターゲットが 注目されている。ここでは時間の都合上、①と◎を取り上げた。
軽量強靱微粒合金の超塑性鍛造
材料が、ある温度条件、ある歪速度で微細構造を作り、非常に大きな伸び率を示すこと がある。これを超塑性という。超塑性は結晶粒子が小さいほど起り易い。超塑性の起って いる組織を顕微鏡で観察すると、大きな変形をしているにも拘らず結晶粒子は同じ形をし ている。大きな変形を起す過程で、塑性流動、拡散流動、転位クリープ、拡散クリープが 起って超塑性現象が現われるのである。
ここでは、超塑性を示す軽量強靱チタン微粒合金の開発、超塑性現象を利用した複雑形 状品の鍛造技術の開発の状況を紹介する。軽量強靱チタン微粒合金は、航空機、宇宙機器、
回転タービンなどの部品材料として要求の高いものであるが、化学的活性の高いこと、原 料の溶解、鋳造、加工に特別の配慮が必要であること、加工歩留りが低いこと,製造コス トが高いことなどの問題がある。
超塑性チタン合金製造にあったっての出発点は高純度で酸素の少ないチタンの緻密な球 状粉末を作ることである。チタンは活性であるので、溶融させるのに増堀を使うことがで きない。そこで高真空で回転電極法、またはプラズマアーク回転電極法が使われる。
この方法によって作られた球形のチタン合金粉末を金属のカプセルに封入し、熱間静水 圧プレス(田p)処理を施し緻密化することによって微細な結晶のプTJフォームができる。
これを遅い変形速度でゆっくり変形させると複雑な形に一段階で鍛造できる。据え込み鍛 造すると、HIP処理した材料は、溶解材料に比べて低い圧力で変形し、流動が起る際の粘 度が低い。田P処理し、据え込み鍛造したものは超塑性が大きく、均一な微細組織になっ ている。据え込み鍛造の過程で動的な再結晶が起っていることが分かる。
微結晶粒プリフォー・ムを超塑性鍛造する場合には、プリフォームの形状の選択が重要で ある。実例として、Ti‑6A1‑4Vのミニディスクを作る場合を選んで、超塑性鍛造のメタル フローの状況について説明した。
光磁気記録用スパッタリングターゲット
現在利用されているスパッタリンゲターゲットには半導体用、超f.Slメモリー電極用、
磁気記録用などがあるが、ここではアモルファスの希土類を含む磁性薄膜を使った光磁気 ディスク用のスパッタリングターゲットを取り上げた。光磁気ディスクは磁気ディスクに 比べて記憶容量が大きくY急速に実用化が進められている。
光磁気記録に用いられる磁性薄膜は垂直記録が可能であることが要求される。記録の原 理は次ぎの通りである。先ず、磁化が反転しない程度の弱い磁場をかけておき、これに 1ノーザー光をあてる。これによって1μ以下の狭い領域の温度が上がるので、その領域の 保持力が弱まり、弱い磁場の作用で磁化が反転するので記録ができる。再生に際しては記 録の完了している薄膜に偏光子を通したレーザー光をあてると、局所的に磁化の反転した 領域では偏光面が回転するので、検光子を回転した直線偏光のみを受ける位置に置くこと によって記録を読み取ることができる。
このような光磁気記録媒体開発の問題点の…つは均一な組成をもつ薄膜の成膜法の確立 であり、マグネトロンスパッタリング法が検討され、ターゲットとして単体金属ターゲッ ト、複合ターゲット、化合物ターゲットが用いられた。この目的を達成するためには、
ターゲットからスパッターされた原子によって基板の上に均一な膜を作らせる技術の開発 が不可欠である。
詳細な検討の結果、スパッターされた原子の跳び方はターゲットの構成により異なるこ とが分かった。例えば、複合タ.̲ゲットとして鉄にテルビウムをチップとして埋め込んだ ものを用いると、デルビウムは直上に跳び易いが、横向きには跳び難い。鉄は60度の方向
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によく跳ふ。これに対し鉄とテルビウムが完全に混合した化合物ターゲ・ソトでは、テルビ ウムが60度の方向に跳び易く、鉄は横向きには跳び難い。鉄、テルビウム、鉄一テルビウ ム金属間化合物の占める割合をいろいろ変えると、それらの複合効果によって、組成率の 変動巾が5%以内の均一な組成をもつ大面積の膜を作るターゲットが得られた。更に、独自 の製造プロセスを開発することによって、このターゲットの量産が可能になった。
IV.ステンレス鋼の現状と将来 安保英雄(新日鉄第二技術研究所・研究センター長)
ステンレス鋼について以下の各項目について展望を行なった。
歴史:1912年の誕生以来今日まで特に製造法の進歩が著しい。戦前にはその使用は殆ど 軍用に限られていたが、戦後一般用が急速に進展し、しかもその75%は化学工業用である。
その間昭和32年にゼンジミアミルが導入され、昭和35年には連続鋳造機による生産が開始 された。
生産量:わが国における生産量は過去25年間に10倍近く増加し、1970年には米国を抜い て世界一・となった。その7割は国内消費に充てられている。
耐食性原理:クロムの含量が12〜13%に達すると大気中では錆び難くなる。これは表面 に約30オングストロームの不動態皮膜を形成するからであり、その特長は自己補修機能を もつことにある。
製品展開:新しいステンレスの改良、開発と相侯って、用途は年を追って拡がってきた。
昭和30年代には主として化学プラント、石油化学コンビナートに使用が限られていたが、
40年代になって薄板価格が低減したのに伴い、厨房器具,食品工業,原子力発電所に用途 は拡がり、50年代には公害問題に関連して、排煙脱硫および廃液処理、さらには自動車の 排気部分に用いられるようになった。現在では海水淡水化プラント、石油生産設備、電車 等への応用が実用化されつつあり、水道管への利用も考えられている。
精錬法の進歩:真空を用いる炉外精錬法VOD及びAODが昭和70年代に普及し、VODは製品 中のC、Nの含有量を下げるのに、またAODは脱硫に威力を発揮した。また、連続鋳造時に おける工程に種々の改良が加えられ、不純物の混入防止に寄与している。
高耐食ステンレス鋼:ステンレスの欠点である局部腐食、即ち応力腐食割れ、孔食・隙 間腐食性を克服し、また冷間加工性、耐熱耐酸化性といった機能の向上、或は表面の高機 能化を達成するために、種々の新しいステンレス鋼が開発された。高純度フェライト系ス テンレス、オーステナイト系ステンレス、2相ステンレス等があり、Nb或は高Cr高Mod添 加した新製品の研究が目下進められている。
研究開発の現状:極薄材(10μ程度の箔)、極細線材(径8μ)の製造技術が開発中である。
表面の意匠化(色、模様、光沢)、プラスチックとの複合化が進められている。耐熱性の向 上は超々臨界圧ボイラー材、耐高温蝕ステンレス(石炭液化用)への応用を約束するもので ある。
製造技術に関する今後の課題:不純物の低減(例えば10〜201の介在物の除去、安価な 脱燐法)、溶融状の鉄から2〜3mmの薄板を作る技術、表面の奇麗な製品を作る圧延精製技 術が当面の課題である。また、すべての鉄材の先頭に立った製造技術の研究が要望されて いる。
新製品開発に関する今後の課題:自動車のエンジン周辺材料の見通し等市場ニーズの変 化に対応した低廉型、或は高機能型製品の開発、消費材、プラント材料等に新規用途を開 拓することが必要である。
V.金属とセラミックスの強度と靱性 木村宏(東北大学金属材料研究所教授)
高温構造用材料として、最近セレミックスが注目を浴びているが、金属材料でも、最高 使用温度を上げるための努力が続けられている。単純に割り切っていうと、金属の欠点は