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漢字音データベースの構築とその適用

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Academic year: 2021

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漢字音データベースの構築とその適用

専 攻 : 教 科 ・ 領 域 教 育 専 攻

コース:生活・健康系コース(技術・工業・情報) 氏 名 : 船 井 健 三

1. はじめに

漢字という code体系は日本人が毎日使ってい るにもかかわらず、その音読みの成立過程が不明 確である。『学研漢和大字典~ 1)には上古からの一 連の復元音が記述されており、その解読により日 本漢字音や現在の中国語音への変遷が理解される。

しかし、書籍媒体のままでは検索しにくいので、

これをdatabase(DB)化し、一連の情報をDBか ら読みとる試みをおこなった。

2.  DBの構築

Exce12013sheetに手入力により入力を実施 した。項目は、漢字ID、新字体の漢字、上古音、

中古音、近古音、現代音、呉音、漢音、唐宋音、

慣習音などがあり、項目数は54である。 DBには 主に当用漢字よりなる 2167字を登録した。

このDBの検索により、自分なりに中国語の音 韻学について問題意識の短時間極養が可能であっ た。これは紙媒体の活用では不可能である。

3.  しかし、構築した DBを活用しても、

中国語の音韻学を理解できなかった

一般に音韻学の教科書は対象が初学者であって も説明を尽くそうとしづ姿勢にて編纂されていな い。例えば、唐突に未定義用語が用いられ、それ を系統的に探索しても、結局は判らない場面に出 あう。著者にとって既知の内容の説明を省略する のである。この傾向は中国語の音韻学ではさらに

指 導 教 員 : 菊 地 章

顕著であり、難解な内容を、さらに難解な無定義 用語にて説明する。そこで初心者用の論文1)と成 書2)の解読にあたり、そこに例示されている内容 の傍証を得る目的にてこのDBの活用可能性に期 待した。しかし、結局は未定義用語の壁により文 献の読了には至らなかった。かかる解読に必要な DBはシthesaurusであり、当該のfactDBは無 効である。

4.弥生音の探索

弥生音とは有史以前に漢字を媒体とせず日本に 伝わった漢字音である。これが日本語の音韻構造 に適合するようにcustomIZeされて語葉中に紛れ ているので、中国語に由来するとは気づき難い。

その例として馬、梅、鬼などがある。伝来時期の 弥生時代では、中国において上古音や中古音が用 いられていた。

そこでDB内の該当する項目より、その候補と して意味と音との2面にて漢字と日本語語葉とが 類似する事例を直感的に54件選び出した。さら

に先行研究3一ゅにて弥生音とされていた例も再評 価した。この作業にあたり古語辞典中の語源記事

も参照した。その結果、先行研究と選ばれた弥生 音候補の中から合計85件の弥生音を得た。候補 音中にて可能性がある事例は以下の 17字で、ある。

やみ(闇)、かく(画)、((か)ぐら(楽)、きぬ(繭)、い (つ)(五)、すわ(る)座、すぐ(る)(秀)、しこ(醜)、そ(十)、

さ(小)、しむ(侵入ち(千)、つぐ(注)、つく(漬)、と (同)、に(る)(二)、も(も)(百)

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− 394 − このようにして得た弥生音を精査すると、先進 国で、あった中国の制度や事物に関する音は「くに」

(郡)と「さかJ(尺)の2例に過ぎず、残りの

83件は積極的に借入する必要もない語葉である。

そのため、こうした語葉は言語接触により、中国 語より日本語に自然拡散した結果であると想定さ れる。他の借入機序としては、漢字音に由来する 古代朝鮮語からの流入もあり得る。いずれにせよ、

これらの証明は困難である。

弥生音と上古音・中古音との比較から弥生音構 成のための規則を24件抽出した。

5. 

ピンインより日本漢字音推定の

a l g o r i t h m 考案

中国の現代音と日本漢字音とは、ともにその源 流を中古音に求めることができる。しかし、現状 は、同じ漢字でありながらも、その音韻は大きく 異なる。その原因は、日本漢字音が中古音を保存

しながらも、巧妙にcustomizeされてきたことと、

中国北方の音韻そのものの激しい変異にある。そ こで中国人の日本語学習者としては中国語のロー マ字つづりであるピンインから日本漢字音を推定 できる方法が望まれてきた。そのalgorithmを那 振雷6)は考案し、阜見表を作成したが、詳細は不 明である。こうした背景から、このDBを活用し てピンインから日本漢字音を統計的に推定する 2 法を考案した。

macro接近法では405種類のピンイン綴りごと に複数の日本漢字音の対応を求め、それぞれの出 現頻度を得る。その中の最大値を与える読みを

defaultの推定音とする。

micro接近法では、ピンインの全綴りをいった ん声母と韻母に分解し、これを検索語とする。ま た、日本漢字音(ローマ宇綴り)も声母と韻母に 分解して、 DBに収納しておく。次にピンインの

声母・韻母ごとにこれに対応する日本漢字音の複 数の声母・韻母の出現頻度を求める。こうして得 た最大頻度の日本漢字音の声母・韻母読みを

defaultの推定音とする。これによりピンインの声 母と日本漢字音の推定声母の対、またピンインの 韻母と日本漢字音の推定韻母の対を得るので、こ れを早見表として活用してもよいし、ここから合 成によりピンインそのものと日本漢字音の推定よ みを早見表として活用してもよい。

これらの2法の効力と feasibilityを検討するた めには、実際のcodingが必要である。中国人とし ては小学校にて声母と韻母の分解を習うので、

micro接近法のほうが使いやすいだろう。ただし、

電子辞書が現在では普及しているので、これらの 早見表を参照する機会は少ないだろう。その結果、

中国語音韻学の理解補足への非有効性と新規の弥 生音17件を見出し、ピンインより日本漢字音推 定の algorithmを2件考案した。

6.

まとめ

『学研漢和大字典』の中国語音韻変遷と日本漢 字音をDB化し、 3種の活用効果を検討した。

参考文献

1)藤堂明保、編集、学研漢和大字典、学習研究 社、 1986

2)大島正二、唐代の人は漢詩をどう詠んだか 中国語音韻学への誘い、岩波書庖, 2009  3)小林昭美、大正大皐研究紀要人間皐部・文撃

部 (92),172‑151,2007

4)  山中嚢太、月間言語 9(3):106‑112,1980  5)大出あや子、日本語音声考一有史以前の外来

語を探る、教育出版センタ一、 1985  6)那振雷、ほか、教育情報システム情報学会誌,

52, 4, pp.295‑302, 2010 

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