イソベンゾヘテロール骨格を有する新しい色素材料 の開発
著者 片岡 裕貴
URL http://hdl.handle.net/10236/00026662
2016 年度 修士論文要旨
イソベンゾヘテロール骨格を有する新しい色素材料の開発
関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻 羽村研究室 片岡裕貴
イソベンゾヘテロールは,キノジメタンの
2
つのエキソ二重結 合をヘテロ原子で架橋した構造を持つ10π共役系の芳香族分子
である。この分子は,キノイド構造に由来する特徴的な反応性や 物性を潜在している。中でも, イソベンゾヘテロールの1
位お よび3
位にπ電子系を導入した分子は,キノイド構造B
の寄与によってπ共役系を有効に拡張できるため,新たな機能性分子創製への展開が期待できる。
このような背景の下,本修士課程研究では,先に当研究室で開発したイソベンゾフランのワンポッ ト合成法を基盤とする新しい色素分子の合成と機能性材料の創製を目指した。具体的には,イソベン ゾヘテロールをπスペーサーとしてドナー基とアクセプター基を導入した
D-‐
π-‐A 型のイソベンゾヘ テロールを合成するとともに,それを色素材料とする色素増感太陽電池の作成と性能評価を行った。1. D-π-A 型イソベンゾヘテロールの合成
オルトホルミル安息香酸エステル
1
に対してジフェニルアミノフェニル基を有するGrignard
反応剤 とシアノフェニル基を有するアリールリチウムを順次作用させてヒドロキシケトン2
を得た。続い て,化合物2
に酸を作用させると環化,脱水・芳香族化が連続的に進行し,D-‐
π-‐A
型のイソベンゾ フラン3
を合成することができた。このようにして合成したイソベンゾフラン3
にLawesson
試薬(6)
を作用させると,イソベンゾチオフェン4
に変換することができた。また,この反応ではLawesson
試薬の代わりにWoollins
試薬(7)
を作用させることによって,イソベンゾセレノフェン5
を合成する こともできた。なお,ヒドロキシケトン2
や酸化度の異なるジケトン8
を同様の条件に付すことに より,対応するイソベンゾチオフェン4
やイソベンゾセレノフェン5
を得ることができた。さらに,このようにして合成したイソベンゾフラン
3
のシアノ基を足掛かりとして,各種D-‐
π-‐A
型のイソベンゾヘテロールに変換することができた。すなわち,イソベンゾフラン3
に,DIBAL
を 作用させてホルミル体10
へと誘導した後,脱水縮合によってシアノアクリル基を導入し,D-‐π-‐A型 のイソベンゾフラン11a
を得た。同様に,イソベンゾチオフェン11b
やイソベンゾセレノフェン11c
も合成することができた。CHO CO2Me
O 1 )Ar1MgBr
THF –40 → 0 ºC 2) Ar2Li THF –78 → 0 ºC
TFAA
NPh2
CN 3
6, O2, CH2Cl2, r.t.
X NPh2
CN 4 (X=S) 5 (X=Se) or
7, CH2Cl2, r.t.
1 2
Ar1 = Ar2 =
NPh2 CN
O OH NPh2
CN
8 O O Ar1
Ar2
P S
P S Ar
Ar S S
(Ar= p-OMeC6H4) Lawesson's Reagent (6)
P Se
P Se Ph
Ph Se Se
Woollins' Reagent (7) X
X = O, S, Se
X
イソベンゾヘテロール π
π π
π
A B
2. 色素増感太陽電池
このようにして合成した
D-‐
π-‐A
型のイソベンゾヘテロールを用いてデバイスを作製し,色素増感 太陽電池の性能評価を行ったところ,アクセプター基にシアノ基やホルミル基を有する色素より作製 したデバイスは太陽電池特性を示さなかった。一方,シアノアクリル基を有する色素は優れた太陽電 池特性を示した。例えば,イソベンゾチオフェン11b
より作製した太陽電池の光電変換効率は5.61%
(
短絡電流密度12.21 mA/cm
2,解放電圧0.66 V,曲線因子 0.70)
であった。さらに検討の結果,ドナー 基とπスペーサーにアルキル基を導入した色素分子12a, 12b
の場合,より優れた太陽電池特性を示 した。これは,アルキル基の導入によって電荷再結合が抑制されたためであると考えている 。DIBAL
CH2Cl2, 0 ºC O
NPh2
COOH NC MS 4A
piperidine CH3Cl, reflux NC COOH
O NPh2
CHO O
NPh2
CN
3 11b (X=S)
11c (X=Se) X
COOH NC
NPh2
10 11a
0"
2"
4"
6"
8"
10"
12"
14"
0" 0.1" 0.2" 0.3" 0.4" 0.5" 0.6" 0.7" 0.8"
(mA/cm2)
(V)
12.21 0.66 0.70 5.61
短絡電流密度 Jsc (mA/cm2)
開放電圧 Voc (V)
曲線因子 FF
光電変換効率 η (%)
12.80 0.67 0.70 6.06
13.30 0.71 0.67 6.28
S N
R1 R1
R2 R2
12a: R1 = propyl, R2= s-Bu 12b: R1 = hexyl, R2= s-Bu
COOH NC
11b 12a 12b
◆:11b
■: 12a
▲: 12b