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次世代のための魅力ある建設業への転換に向けた提案

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Academic year: 2022

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次世代のための魅力ある建設業への転換に向けた提案

~仕事と生活の調和ならびに多様な人材の活用による建設業の持続的発展~

広島大学大学院 工学研究科 社会環境システム専攻 正会員 藤原 哲宏

1.はじめに

急速な少子高齢化が進行する中で,社会の健全な発展を図るために,企業には従業員の子育て等の生活と 仕事の両立を支援するワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)への取り組みが求められている.ま た,多様な人材や発想を取り入れて,市場の環境変化に柔軟に対応し,企業の成長と個人の幸福の両立を目 指すダイバーシティ(多様な人材を活かす戦略:

Diversity

)ワーク・ルールの研究も進んでいる.

近年の春闘においては,育児休職期間や短時間勤務制度の利用期間の延長等,個々人の生活様式に配慮し た勤務制度の導入が労使間で議論されている.育児休職は,男性の 1~2 週間程度の短期間有給休職が近年の 傾向であり,企業においても男性の育児休暇取得が課題になっている.

一方で,建設業の総労働時間は,全産業平均の 112%1)である.厚生労働省が 1999 年度から始めたファミ リー・フレンドリー企業表彰※a)を受賞した企業数は,2007 年度までに全国 275 社(大臣賞:25 社,都道府 県労働局長賞:250 社)であるが,建設業の受賞はなく,建設関連の建設コンサルタント業が全国で 2 社県 労働局長賞を受賞している状況にある.

建設業は,国内総生産の 6.9%(2006 年)2),全就業者数の 8.6%(2007 年)3)を占める重要な産業である.

また,建設業は,市民誰もが効用を享受し,市民生活と産業生産に不可欠な基盤施設である社会資本整備の 担い手として,市民の暮らしを豊かにし,安全を守り,地域の活力向上に寄与してきた.しかし,市民の建 設業に対する理解と印象は良好であるとは言えない.

本論文では,仕事と私生活の共存および人材や価値観等の視点で企業の成長を考えることが必要になって いる現状を踏まえて,建設業および建設関連業の健全な発展のために企業が取り組む一方向性を提案する.

2.建設投資と建設業の現状

図-1に建設投資および就業者数等の推移を示す.政府投資額は,1995 年の 35.2 兆円をピークに 2006 年に は 18.2 兆円(52%)まで減少している.民間投資額は,1990 年の 55.7 兆円をピークに 2003 年には 30.2 兆 円(54%)まで減少したが,2006 年には 34.8 兆円(62%)まで回復した.この結果,建設投資額(民間+政 府)は,1992 年の 84.0 兆円をピークに 2003 年まで減少

傾向にあったが,2003 年以降は約 53 兆円(63%)で横這 いの状況にある.

1991 年から 1995 年頃の景気後退期の状況をみると,

民間投資額は敏感に年平均 4.7%で減少している一方で,

政府投資額は年平均 6.6%増加し,政府投資額の構成比は 1990 年の 31.6%から 1995 年の 44.5%に急増したが,2006 年には 34.3%に低下している.

就業者数は,建設投資額がピークに達した 5 年後の 1997 年に 685 万人になり,2006 年には 559 万人(82%)

まで減少している.

35.2

18.2 30.2 34.8 55.7

601

542 685

559

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006

西 暦

建設投資額[名目](兆円)

300 350 400 450 500 550 600 650 700 750

業者(千社) 就業者(万人)

民間投資額 政府投資額 就業者数 許可業者数

84.0

52.9

図-1 建設投資,許可業者・就業者数の推移4)

※a)ファミリー・フレンドリー企業 : 仕事と育児や介護とを両立できる様々な制度を設けて,多様でかつ柔軟な働き方 を労働者が選択できるような取り組みを行っている企業

(2)

図-2に建設投資額と就業者数から求めた 1 人当たりの建 設投資額の推移を示す.就業者 1 人当たりの建設投資額は,

民間投資額がピークとなった 1990 年に 1,385 万円となり,

2003 年に 900 万円(64%)を割り込んだが,2006 年には 947 万円(68%)まで回復している.

図-3に全産業と建設業の利益率の推移を示す.就業者 1 人当たりの建設投資額の回復基調は,建設業の利益率にも 現れており,利益率は 2003 年より回復基調にある.しかし,

全産業の利益率が 1990 年頃の利益率以上に回復している 状況と比較すると,建設業の利益率の回復は大きく遅れて いる.利益率の回復の遅れは,投資額ピーク(1992 年)と 就業者数ピーク(1997 年)の 5 年の差異による供給過剰構 造と考えられることから,就業者数の減少は今後も継続す ることが想定できる.

図-4 に都市部における公共事業の入札不成立件数の状 況を示す.民間投資の好調な都市部においては,公共事業 の入札不成立が増加している.一方で,地方では,公共事 業への依存状態が続いており,都市と地方の格差は広がっ ている.このような状況から近年の建設業の回復基調は,

都市部の民間投資に依存していると考えられ,建設業には 民間調達への対応も求められている.

3.建設業への期待

図-5 は,社会資本整備に関する世論調査結果について,

1972 年と 2004 年を比較したものである.公営住宅整備へ の要請が大きく低下した一方で,調査項目に防災施設や情 報通信基盤施設の整備が新たに加わっている.福祉厚生・

医療関係施設や地域の道路の整備に対する要請の高さは続 いている.また,公園・緑地,地域の交通機関,廃棄物処 理施設,汚水処理施設,幹線交通体系等の土木系に係わり の深い要請に大きな変化はなく,建設業への期待は大きい.

地方部の建設業には,迅速な災害対応に加えて,公共施 設の維持管理等の地域行政ニーズおよび過疎地域における 公共交通・福祉サービス等の地域に根付いたコミュニティ 産業としての役割も期待できると考える.

4.建設業就業者の現状

図-6に 2055 年までのわが国の人口と年齢構成の動向を

示す.総人口は,2005 年の 12,777 万人をピークに減少傾向にある.また,生産年齢人口(15~64 歳)は,

1995 年の 8,717 万人をピークに 2005 年には 8,409 万人(96%)にまで減少し,2035 年には少子化により,6,292 万人(72%)まで減少することが予想されている.

8.89 9.47 10.98

11.92 13.57 13.85

5 7 9 11 13 15

1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006

西 暦 就業者1人当たりの 建設投資額(百万円)

図-2 就業者1人当たりの建設投資額の推移4)

1.7 3.4

1.3

3.4

1.4 1.5 3.0

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5

1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

西 暦

利益率(%)

建 設 業(経常利益)

建 設 業(営業利益)

全 産 業(経常利益)

全 産 業(営業利益)

図-3 全産業および建設業の利益率の推移5)

11

32 29

89

117 80

159

115

340

165

2.7

9.1

0.6 1.2

2.2

10.5 9.4

6.0 5.2

13.2

0 50 100 150 200 250 300 350 400

大阪市 横浜市 東京都 名古屋市 仙台市

入札不成立件数(件)

0 2 4 6 8 10 12 14 16

入札不成立件数の構成比(%)

2005年度(件数)

2006年度(件数)

2005年度(構成比)

2006年度(構成比)

図-4 入札不成立件数の状況6)

45.5 35.9 18.7 18.8 20.0 15.4 11.4 0.0 0.0

7.7 2.7

27.6 7.2 0.0

7.8 0.0

1.5 1.0

78.6

31.2 27.7 23.6 19.3 15.6 11.8 11.1 10.6 10.5 10.2 7.1 6.4 5.6 4.8 3.7 2.9 1.9 1.3

22.0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 福祉厚生・医療関係施設(保育所,老人施設等)

地域の道路 公園・緑地,スポ・レク施設 地域の交通機関(鉄道・バス等)

教育・社会教育施設(幼稚園・学校・美術館等)

廃棄物処理施設 下水道等の汚水処理施設 情報通信基盤施設(CATV,携帯電話施設等)

防災施設(避難地,避難経路等)

幹線交通体系(高速道・新幹線・空港・港湾等)

公共出先機関,交番・消防,郵便局 公営住宅 治山・治水対策(堤防・ダム・砂防等)

産業振興施設(産業振興,起業支援)

農林水産業基盤(農地,農林道,漁港等)

科学技術の基礎研究のための基盤施設 上水道 その他 特にない,わからない

複数回答(%)

2004年(H.16) 1972年(S.47)

図-5 社会資本の整備に関する世論調査結果7)

(3)

図-7には,男女別の就業者数と女性就業者の構成比を示 す.就業者総数は,1997 年の 6,557 万人をピークに 2003 年には 6,316 万人に減少したが,2007 年には 6,412 万人ま で 96 万人増加している.

男女別に 1997 年と 2007 年の就業者数を比較すると,男 性就業者は,3,892 万人から 3,753 万人に 139 万人減少し ているのに対して,女性就業者は,2,665 万人から 2,659 万人と横這いの状況にある.この結果,女性就業者の構成 比は,40.6%から 41.5%に 0.9 ポイント増加している.一方 で建設業の女性就業者の構成比は,2003 年以降約 15%で横 這いの状況にあり,男女とも他の産業に就業者が移動する とともに,新規参入者が減少していると考えられる.

図-8に 2007 年の全産業と建設業就業者の年齢階級別構 成比を示す.建設業の 1997 年以降の急激な就業者減は,20 歳代就業者の構成比に現れている.一方で,50 歳以上の構 成比が高く,団塊の世代の引退とともに急激な労働力の不 足が懸念される.

図-9 に建設業の就業者と総生産の構成比の動向と景気 後退期の比較を示す.1980 年代の景気後退期には,総生産 の構成比と同様に就業者の構成比も低下しているが,1990 年代の景気後退期には,政府投資額の急増に合わせるよう に就業者の構成比が急増している.この結果は,建設業に おける 40 歳代の構成比が低く,30 歳代と 50 歳代の構成比 が高い現状と符合している.

5.建設業の持続的発展に向けた提言

建設業および建設関連業が担い手として整備した社会資 本は,経済成長と国民生活を支えてきた.しかし,低成長 時代の今日では,高度成長期に隠れていた都市と地方の格 差の拡大等,社会構造の歪みが表面化し,社会資本の投資 効果が厳しく求められるようになった.これからの社会資 本整備には,整備施設が機能して効率性や生産性等が向上 する施設供用効果を重視する施策が重要である.

また,建設業および建設関連業は,社会資本整備への関 与度が高く,社会的責任の大きい業種であり,CSR(企業の 社会的責任:

Corporative Social Responsibility

)への取 り組みの推進等により,社会から信頼され,評価される業 界への変革が求められている.三重県は 2007 年度から公共 工事の総合評価入札に,次世代教育支援,男女共同参画,

労働安全衛生マネジメントシステム等の新たな審査項目を 新設した11).国においては,建設企業における CSR 評価制 度の調査が進められており12),公共工事の調達先の選定に

3,753 3,719 3,892

2,659 2,597 2,665

40.6 41.5

14.7 16.4 14.7

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500

1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 西 暦

就業者数(万人)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

構成比(%)

就業者(男)総数(万人)

就業者(女)総数(万人)

全産業就業女性の構成比(%)

建設業就業女性の構成比(%)

図-7 男女別就業者数と女性就業者の構成比3)

127,768

89,930 110,679

84,092 87,165

45,951 62,919

56.8

51.1 69.5 65.8

20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000

1920 1930 1940 1947 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055

西  暦

人 口(千人)

45 50 55 60 65 70 75

構 成 比(%)

総 人 口

生産年齢人口(15~64歳)

年齢階層別構成比(15~64歳)

図-6 日本の人口・年齢構成の動向8)

1.5 7.3

9.8

11.3 11.4

10.4 10.1 10.2 12.2

7.2 8.4

0.7 4.9

8.2

12.0 12.1 9.6 9.4

11.6 14.7

9.2 7.4

0 2 4 6 8 10 12 14 16

15~19歳 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65歳以上

年齢階級

構成比(%)

全産業(構成比)

建設業(構成比)

図-8 年齢階級・産業別就業者構成比(2007 年)9)

9.419.62 10.45

8.768.61

6.89 8.00

8.63 9.90 10.49

6 7 8 9 10 11

1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005

西 暦

構成比(%)

就業者の構成比(建設業)

総生産の構成比(建設業)

図-9 建設業の就業者・国内総生産の構成比2),3)

:景気後退期

10)

(4)

おいて,価格での選定に技術面での評価が加わり,さらに,社会的責任への取り組みも求められつつある.

わが国は,少子化により十分な労働力が確保できない社会に移行するが,建設業の持続的な発展には,社 会から選択される産業であるとともに,多様な人材の活用が求められる.建設業においては,社会的要請お よび人材確保面から,女性と高齢者を活かす戦略に取り組む必要がある.また,建設業が積極的に社会的責 任を果たすことで建設業のイメージが向上するメリットもある.さらに,多様なニーズに応えることのでき る多様な人材を育てることで,企業の競争力向上にも繋がる.

人口減少による縮小経済では,年金や医療費等の経済的な理由からも女性や高齢者の就労が必要になる.

しかし,現行の長時間労働やストレス社会での高齢者の就労は負担が大きい.また,多様な人材の活用,さ らに,個々人の付加価値を高めて企業の競争力を向上させるための自己研鑽環境を整えるためにも働き方の 変革が必要である.一部の製造業や IT 産業では,仕事と生活(含,自己研鑽)が調和する就労環境整備への 取り組みが始まっており,建設産業界においても早急な対応が必要になっている.

6.おわりに

海外の動向や既に CSR 調達に取り組んでいる大手製造業の影響を受けて,社会資本整備に深く関与する建 設業にも CSR 調達に対する関心は高まり,建設業に係わりを持つ企業には経営活動の中心に CSR を置き,実 効性のある CSR の定着に取り組むことが求められており,各種団体等で様々な取り組みが進んでいる12)

建設業界の社会的評価と就業者の労働意欲向上,市民と就業者の満足度向上による建設業の持続的発展に 向けた施策の一つとして,今後の少子化への備えも含めたワーク・ライフ・バランスやダイバーシティへの 取り組みが必要である.

ワーク・ライフ・バランスに積極的に取り組むファミリー・フレンドリー企業には,労働者の労働意欲の 向上や人材の確保等のメリットがあり,労働者には,家族とのコミュニケーションの増大,仕事の満足度の 向上やストレスの減少等のメリットがある.また,ファミリー・フレンドリー企業を投資対象とした SRI フ ァンド(社会的責任投資:

Socially Responsible Investment

)が商品化されており,ファミリー・フレンド リー企業は,社会的貢献度だけでなく,業績面(利益率等)においても評価されている.

参考文献

1)厚生労働省:毎月勤労統計調査,第 17 表,産業大中分類別常用労働者1人平均月間実労働時間数,2001 年~

2005 年の平均時間数,事業所規模 5 人以上,http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/indexkr_1_10.html 2)内閣府経済社会総合研究所:平成 18 年度国民経済計算,

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h18-kaku/20annual-report-j.html

3)総務省統計局:労働力調査,長期時系列データ,http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm 4)国土交通省:国土交通白書 2007(資料:国土交通省「建設投資見通し」,国土交通省「許可業者数調べ」,総務

省「労働力調査」),pp.173,2007.

5)国土交通省:国土交通白書 2007(資料:財務省「法人企業統計」),pp.173,2007.

6)朝日新聞:2007 年 11 月 30 日朝刊掲載記事

7)内閣府大臣官房政府広報室:社会資本の整備に関する世論調査,http://www8.cao.go.jp/survey/index2.html 8)厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成 18 年 12 月推計)《詳細結果表》,

http://www.ipss.go.jp/

9)総務省統計局:労働力調査(平成 19 年平均),第 11 表,年齢階級・産業別就業者数,

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001018321

10)内閣府:統計情報・調査結果,景気動向指数,平成 20 年 1 月分(速報),

http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di-graph.html 11)建設通信新聞:2008 年 3 月 10 日掲載記事

12)財団法人建設業情報管理センター:建設企業における CSR の評価制度および当該評価制度データベースの活 用方策に関する調査報告書(平成 18 年度),2007 年 3 月,http://www.ciic.or.jp/topics/topics20070615.pdf

参照

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