建設災害と施工段階における公共発注機関の責任
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(2) VI-107. すると、ガス管の継手部に対する抜止め保護の措置を講. いる労働者等による工事の施工又は管理につき著しく不適. じるよう請負者に指示し、これを監督して施工させるべ. 当と認められるものがあるときは、請負者に必要な措置を. き義務(大阪地裁昭 60.4.17 判タ 567−86)、仮締切の設. とるべきことを請求することができる(12 条 1 項と 2 項) 。. 置・管理にあたって、工事施工上の安全確保に配慮すべき. さらに建設工事では、施工条件が複雑かつ多様であり、. 義務(東京高裁平 10.4.27 判タ 990−292) 、擁壁の内部構. 施工条件が工事の実施過程でも変化したり、予期せぬ状況. 造と工事目的に適合した掘削方法を採用するとともに、. が発生することが多く、設計変更や契約変更を強いられる. 土留めなどの安全対策を講じ、事故防止措置を採るよう. 場合がある。施工数量の増減、工事目的物の形状・寸法、. 指示すべき注意義務(大阪高裁昭 56.9.30 判タ 457−. 指定仮設が設計変更の対象となるほか、場合によっては任. 102)、掘削現場の土地の性状が、掘削した場合に土砂崩落. 意仮設や施工方法の変更も含まれるときがある。前掲約款. の危険性を包蔵することを認識し、それに基づく危険回避. によると、条件変更等(18 条) 、発注者による設計図書の変. について請負者に対し特段な指示を与えるべき義務(仙台. 更(19 条) 、工事の中止(20 条) 、請負者の請求による工期. 高裁昭 60.4.24 判タ 567−184) 、請負者が指図とおりの安全. の延長(21 条) 、発注者の請求による工期の短縮(22 条). 対策を採っているかどうかを確認し、ガードマンを配置し. などの場合に工期若しくは請負代金が変更される可能性が. て作業するよう指示する義務(神戸地裁伊丹支部昭 60.9.17. あるとされているが、実際に変更がなされるのは発注者に. 判タ 588−84) 、試掘につき、監督員を立会わせその指揮. より必要と認められるときである。もっとも、工期や請負. 監督の下で行わせるか、事後に試掘の結果を見分して十. 代金の変更が設計変更と釣り合わない場合、建設災害防止. 分な試掘が行われたか否かを点検指導し、埋設状況を正. のための経費の拠出を圧迫するなど請負者の安全管理にも. 確に把握し、これを図面化して全工事関係者に周知徹底. 影響を及ぼし、事故が発生しやすい状態が現出する可能性. させる措置を講ずる(作業員の末端まで周知させるよう. がある。したがって、設計変更や契約変更を行うときは、. 請負者に極力要望すべき)義務(神戸地裁昭 61.10.30. 裁量を有している発注者が、それらの変更が間接的に請負. 判時 1224−81) 、事故現場付近の植木を撤去した後に、照. 者の安全管理に支障にならないよう、時間的・経済的な面. 明を十分に施した上、バリケードやカラーコーン等で植木. からの適切な配慮を与える必要がある。. 撤去後の土砂部分を囲むなどの保安措置を採るよう請負者. 5. 施工段階における公共発注機関の責任の定式化 以上の議論に基づいて、建設災害防止における施工段階. の担当者に指示すべき具体的義務(東京地裁平 8.12.26 判. タ 960−237) 、請負者が採ろうとしている安全対策を確認し、 の公共発注機関の責任について定式化を行う。 a)公共発注機関には、監督員の監督業務を媒介として、. 転倒防止ワイヤーを取り付ける等の安全対策を採るよう指 示すべき義務(広島地裁平 10.3.24 判タ 988−215) 、などが. 請負者が講じる建設災害防止の対策や措置の不備・不足を. ある。. 是正させるための積極的な指示をすべき作為義務がある。. 4. 考察. これは二次的責任ではあるが、施工段階おいて請負者と公. 上記から工事監督における建設災害防止のために、公共. 共発注機関の責任は競合して存在しているため、施工者が. 発注機関の細部に至るまでの注意と徹底的な指示が求めら. 主要な責任を負うことが公共発注機関の責任を排除するも. れていることが分かる。公共発注機関は専門的知識や経験. のではない。. を保有していること、広範にわたって事業の施行に関与し. b)設計変更及び契約変更は、時間的・経済的な面から建. ており、かつ監督員若しくは公共発注機関が是正措置を求. 設災害防止に影響を及ぼしているため、設計変更及び契約. める権限を有していることなどを総体的に勘案した判断で. 変更の必要性の判断につき、公共発注機関は自己の有して. あると考えられる。監督員の権限については、建設工事標. いる裁量を適正に行使して、慎重に対応することにより、. 準請負契約約款(平成 7 年改正版)から検討することがで. 建設災害防止に支障になりうる間接的な要因を付加しない. きる。例えば、監督員は「契約の履行についての乙(請負. 不作為義務を負っている。. 者=筆者注)又は乙の現場代理人に対する指示、承諾又は. 【注】. 協議」 (9 条 2 項 1 号)の権限を有し、必要と認めるときは、. 1.刑事責任と民事責任において、その責任主体が異なっているが、. 請負者に対して臨機の措置をとることを求めることができ. 論述の便宜のため本文では区別していない。. る(26 条 3 項) 。また発注者は、請負者の職員及び使用して. 2.判タ=判例タイムズ、判時=判例時報. -215-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).
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