• 検索結果がありません。

建設災害と施工段階における公共発注機関の責任

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "建設災害と施工段階における公共発注機関の責任"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)VI-107. 建設災害と施工段階における公共発注機関の責任 東京大学 東京大学. 学生会員 宋. 虎斌. 助教授 岩橋 健定. 東京大学 フェロー会員 國島 正彦. 1. はじめに. 死亡した事故において、 「国側の監督員は災害防止のため仮. 建設事業に携わる各当事者の負担すべき責任を明らかに. 設備工事を常時監視し、そのおそれのある施工に対しては. することは、建設災害防止における一つの課題であると考. 適時適切な指示をなすべきであるという積極的注意義務を. えられる。本研究は、過去 30 年の建設災害により公共発注. 負担してはいないのである」 (東京地裁昭 54.6.25 判タ 396. 機関の法的責任が問われた裁判例14 例に対して調査を行っ. −35)としている。. た。ここでは、裁判例の傾向を紹介し、施工段階において. c)地下鉄工事でガス漏出・爆発により、5 名の民間人が死. 建設災害を防止すべく公共発注機関の責任について考察を. 亡し 3 名が重傷を負った事故で、発注者の監督員が、 「事故. 行い、最後に定式化を試みた。. 現場付近の特質を念頭におき、その観点から、あるいは起. 2. 関連法律. こりうるべき災害を想定しつつ、慎重な配慮を加えること. 1972 年に公布された労働安全衛生法(以下「安衛法」と. が望まれるところであったといわなければならない」とし. いう)は、日本における労働保護法の中核的な位置を占め. ながら、 「ガス管が上からの荷重により折損して事故に至る. る法律である。安衛法が責任を課している主体は、主とし. 危険のあることを予測しなかったこと及びそれぞれが結果. て事業者となっており、 「事業者とは、事業を行う者で、労. 回避の措置を講じなかったことにつき、過失責任を問うこ. 働者を使用するものをいう」 (安衛法 2 条 3 項)と定義され. とはできないというべきである」 (東京地裁昭 58.6.1 判タ. ている。発注者は、基本的に安衛法の規制を受けないと考. 508−201)とした。. えられ、裁判例においても民法、国家賠償法(公共発注機. しかし、昭和 60 年代に入ってからは刑事事件と民事事件. 関に限る)や刑法などの法律に基づく制裁を認めている。. いずれにおいても建設災害における発注者の法的責任が広. より具体的にみると、民事責任に関しては民法 716 条(注文. く是認されるようになってきた(本研究で調べた裁判例の. 者の責任)、国家賠償法 2 条(営造物の設置管理の瑕疵と賠. うち、上記 3 例以外) 。特に、発注者が出した積極的な指図. 償責任・求償権)、刑事責任に関しては刑法 211 条(業務上. における過失のみならず、注文又は指図にあたり、災害を. 過失致死傷等)などの条文がある。. 防止すべきであるのにそれを怠ったという不作為も含んで. 3. 裁判例の傾向. 問責する傾向にある。. 建設災害は施工段階で起きるので、公共発注機関の建設. この点について国分川トンネル水没事件の控訴審(東京. 災害防止の法的責任に関する裁判においては、施工段階に. 高裁平 10.4.27 判タ 990−292)の判決文を引用する。 「工事. おける公共発注機関の注意義務違反(過失)の有無に焦点. 施工上の安全確保や災害防止に関しては、請負者が第一次. が置かれる。以下に例示する昭和 50 年代の刑事事件におい. 的に直接の責任を負うといえるのであり、発注者は、右の. ては、公共発注機関の監督員の注意義務が否定され、よっ. 広範囲にわたる監督権限が認められているので、請負者自. て、その法的責任が否認されている。すなわち、. 身が行う対策や措置の不備・不足を是正させるため監督す. a)排水路の掘削・拡張工事中、コンクリート側壁が倒壊し. べき二次的責任があるというべきである」 。. たため 7 名が死亡し、2 名が負傷した事故につき、県側の監. すなわち、建設災害防止においてまず施工者が重大な. 督員は、 「請負契約約款中にいう監督員であったというただ. 責任を負っているのは否定できないが、それ故公共発注. そのことだけで、工事の施工を安全に行なうべき注意義務. 機関が法的責任を免れるわけではなく、両者の注意義務. まで負担していたということにはならない」 (鳥取地裁昭. は競合して存在すると理解することができると思われ. 50.4.15 判タ 329−344) 。. る。建設災害防止において公共発注機関が二次的責任を. b)新四ツ木橋の橋脚工事で円形鉄枠が倒壊し作業員 8 名が. 負っているとするが、具体的に含まれている内容を概観. キーワード:建設災害、施工段階、公共発注機関、法的責任 連 絡 先:〒113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1 TEL/FAX:03-5841-6143 -214-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

(2) VI-107. すると、ガス管の継手部に対する抜止め保護の措置を講. いる労働者等による工事の施工又は管理につき著しく不適. じるよう請負者に指示し、これを監督して施工させるべ. 当と認められるものがあるときは、請負者に必要な措置を. き義務(大阪地裁昭 60.4.17 判タ 567−86)、仮締切の設. とるべきことを請求することができる(12 条 1 項と 2 項) 。. 置・管理にあたって、工事施工上の安全確保に配慮すべき. さらに建設工事では、施工条件が複雑かつ多様であり、. 義務(東京高裁平 10.4.27 判タ 990−292) 、擁壁の内部構. 施工条件が工事の実施過程でも変化したり、予期せぬ状況. 造と工事目的に適合した掘削方法を採用するとともに、. が発生することが多く、設計変更や契約変更を強いられる. 土留めなどの安全対策を講じ、事故防止措置を採るよう. 場合がある。施工数量の増減、工事目的物の形状・寸法、. 指示すべき注意義務(大阪高裁昭 56.9.30 判タ 457−. 指定仮設が設計変更の対象となるほか、場合によっては任. 102)、掘削現場の土地の性状が、掘削した場合に土砂崩落. 意仮設や施工方法の変更も含まれるときがある。前掲約款. の危険性を包蔵することを認識し、それに基づく危険回避. によると、条件変更等(18 条) 、発注者による設計図書の変. について請負者に対し特段な指示を与えるべき義務(仙台. 更(19 条) 、工事の中止(20 条) 、請負者の請求による工期. 高裁昭 60.4.24 判タ 567−184) 、請負者が指図とおりの安全. の延長(21 条) 、発注者の請求による工期の短縮(22 条). 対策を採っているかどうかを確認し、ガードマンを配置し. などの場合に工期若しくは請負代金が変更される可能性が. て作業するよう指示する義務(神戸地裁伊丹支部昭 60.9.17. あるとされているが、実際に変更がなされるのは発注者に. 判タ 588−84) 、試掘につき、監督員を立会わせその指揮. より必要と認められるときである。もっとも、工期や請負. 監督の下で行わせるか、事後に試掘の結果を見分して十. 代金の変更が設計変更と釣り合わない場合、建設災害防止. 分な試掘が行われたか否かを点検指導し、埋設状況を正. のための経費の拠出を圧迫するなど請負者の安全管理にも. 確に把握し、これを図面化して全工事関係者に周知徹底. 影響を及ぼし、事故が発生しやすい状態が現出する可能性. させる措置を講ずる(作業員の末端まで周知させるよう. がある。したがって、設計変更や契約変更を行うときは、. 請負者に極力要望すべき)義務(神戸地裁昭 61.10.30. 裁量を有している発注者が、それらの変更が間接的に請負. 判時 1224−81) 、事故現場付近の植木を撤去した後に、照. 者の安全管理に支障にならないよう、時間的・経済的な面. 明を十分に施した上、バリケードやカラーコーン等で植木. からの適切な配慮を与える必要がある。. 撤去後の土砂部分を囲むなどの保安措置を採るよう請負者. 5. 施工段階における公共発注機関の責任の定式化 以上の議論に基づいて、建設災害防止における施工段階. の担当者に指示すべき具体的義務(東京地裁平 8.12.26 判. タ 960−237) 、請負者が採ろうとしている安全対策を確認し、 の公共発注機関の責任について定式化を行う。 a)公共発注機関には、監督員の監督業務を媒介として、. 転倒防止ワイヤーを取り付ける等の安全対策を採るよう指 示すべき義務(広島地裁平 10.3.24 判タ 988−215) 、などが. 請負者が講じる建設災害防止の対策や措置の不備・不足を. ある。. 是正させるための積極的な指示をすべき作為義務がある。. 4. 考察. これは二次的責任ではあるが、施工段階おいて請負者と公. 上記から工事監督における建設災害防止のために、公共. 共発注機関の責任は競合して存在しているため、施工者が. 発注機関の細部に至るまでの注意と徹底的な指示が求めら. 主要な責任を負うことが公共発注機関の責任を排除するも. れていることが分かる。公共発注機関は専門的知識や経験. のではない。. を保有していること、広範にわたって事業の施行に関与し. b)設計変更及び契約変更は、時間的・経済的な面から建. ており、かつ監督員若しくは公共発注機関が是正措置を求. 設災害防止に影響を及ぼしているため、設計変更及び契約. める権限を有していることなどを総体的に勘案した判断で. 変更の必要性の判断につき、公共発注機関は自己の有して. あると考えられる。監督員の権限については、建設工事標. いる裁量を適正に行使して、慎重に対応することにより、. 準請負契約約款(平成 7 年改正版)から検討することがで. 建設災害防止に支障になりうる間接的な要因を付加しない. きる。例えば、監督員は「契約の履行についての乙(請負. 不作為義務を負っている。. 者=筆者注)又は乙の現場代理人に対する指示、承諾又は. 【注】. 協議」 (9 条 2 項 1 号)の権限を有し、必要と認めるときは、. 1.刑事責任と民事責任において、その責任主体が異なっているが、. 請負者に対して臨機の措置をとることを求めることができ. 論述の便宜のため本文では区別していない。. る(26 条 3 項) 。また発注者は、請負者の職員及び使用して. 2.判タ=判例タイムズ、判時=判例時報. -215-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

(3)

参照

関連したドキュメント

内閣府により、過去 年の激甚災害指定状況一 覧に掲げられている 件の政令の内訳は、 ①梅雨 前線、台風による災害が 件、②地震による災害

2建 根 磯崎線道路改良工事に伴う配水管移設その 工事 高城字動伝一 地内 約 ヶ月間 水道施設工事 配水管移設工 1= 4建m 条件 一般競争入札 第

過去の土砂災害等発生箇所 指定緊急避難場所兼指定避難所

建設業は行政等と協定を結び災害時の応急・復旧 活動を行っており、主に応急復旧工事、公共土木施 設の被害調査等を行っている。

被害者救済に関する原子力損害賠償責任保険の課題.. 京電力・山崎雅男委員長,平成24年6月20日), 東京電力福島原子力発電所

Keywords: agricultural disaster compensation system, horticultural facility, typhoon disaster, agricultural mutual aid association, risk

東京都多摩障害者スポーツセンター 東京武道館 選手村 オリンピックアクアティクスセンター

宅地造成不適地 宅地造成区域に建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)第 39 条第1項の災害危険区域、地すべ り等防止法(昭和 33