も,グローバル社会にとって喫緊の課題である。 自然災害の中でもとりわけ農業災害は,食料事情や社 会情勢と密接に関わり社会的損失を増大させるため,こ れまでに各国で農業保険制度や農業災害補償制度が整備 されてきた (吉井,1992,2008a)。第二次大戦後の日本に おいては,1947年に農業災害補償法が制定され,農業災 害補償制度が創設された。同法第一条によると,農業災 害補償の目的は,「農業者が不慮の事故に因つて受ける ことのある損失を補填して農業経営の安定を図り,農業 生産力の発展に資すること」にある。当時の政策目標は, 1 .はじめに 1-1 問題の所在 世界各地で発生する自然災害は,当該国・当該地域に 甚大な被害をもたらすだけでなく,これらと関係をもつ 国や地域へも社会的・経済的な影響を及ぼしている。自 然災害が,グローバル化の下で二次災害や三次災害と なって空間的に拡大している1)。被災国・被災地域にお いて復興へ向けたより迅速な対応をとることはもちろん であるが,関係国が連携して事前の対策を講じること
両角 政彦
*・森島 済
*The major factors of damage to horticultural facilities and the business deployment of agricultural mutual aid associa-tions in the agricultural disaster compensation system were analyzed in around the country and Okinawa Prefecture. Then the regional difference of damage to horticultural facilities and its influences on the agricultural disaster compensa-tion system were discussed in the case within the jurisdiccompensa-tional district of the agricultural mutual aid associacompensa-tion in Kuni-gami County, the northern part of Okinawa.
There is the continuity and a certain regularity of occurrence in the damage to horticultural facilities over the whole country, and Okinawa Prefecture has a high damage ratio. The occurrence of damage depends on the locations and existence time in passing typhoons, the wind direction and speed, and the form of greenhouse covered by the mutual aid system. In the case of the jurisdictional district of agricultural mutual aid association in Kunigami County, that has the especially high ratio of damage to horticultural facilities in Okinawa Prefecture, the strong wind with typhoons and greenhouses with low resistance to wind cause the extent of damage. There are also the regional differences both of participation rate and of the damage ratio in each municipality within the district, related to the distinctions of implementation contents in the grant-aided project of the national and local governments to the construction of horticultural facilities, and to those of dominant crops. Therefore, the damage of horticultural facilities combines the aspect of natural disaster by typhoon and that of social disaster reflected in the grant-aided projects to the facilities and to encourage producing centers. These regional differences cause the conflicts of coverage options between areas.
It can be considered that the risk management of agricultural mutual aid association will have two types of change, that is, the correspondence with individualization, and the realignment of jurisdictional districts with the reorganization of agricultural mutual aid associations.
Keywords: agricultural disaster compensation system, horticultural facility, typhoon disaster, agricultural mutual aid association, risk management, Okinawa
農業災害補償制度下における園芸施設被害と農業共済組合
Damage to Horticultural Facilities and Agricultural Mutual Aid Associations
in Agricultural Disaster Compensation System
Masahiko MOROZUMI
*and Wataru MORISHIMA
*(Received October 31, 2011)
* Department of Geography, College of Humanities and Sciences, Nihon
University: 3-25-40 Sakurajosui Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550 Japan
* 日本大学文理学部地理学科:
農地改革後における自作農の所得安定と食糧生産の維 持・増加にあり (山内,1983),国による農業保護政策の 一端を担っていた。日本では農業災害補償を政府が主導 的に管理しているが2),一部を民間保険会社が請け負う 国もあり,管理主体には差異がみられる3)。 農業災害を農産物市場の問題として捉えると,自然災 害によって農業経営が不安定化し,農産物需給における 社会的リスクが高まる中で,これらのマネジメントの問 題として認識することができる。これは,市場競争メカ ニズムの農業分野への導入における保険・補償制度の重 要性を示すものである (長谷部,1999)。農業は年・月・ 日ごとの気象・気候変化に影響を受け,不確実性をとも ないながら地域の特性や空間の差異を反映しやすい産業 であるため,被災した地域においてその実態と要因を継 続的に明らかにしていくことが求められる。 さらに,農業は元来,地域ごとの自然環境に適応する ように営まれてきた産業である一方で,施設化によって 作物の生育環境を人工的に制御してきた側面も有する。 そこでは資本投下を図りつつ,農業経営を継続するため に保険や補償が不可欠になっている (永木,2001)。農業 者には施設設備に対する災害を想定した事前の対策と事 後の対応が考えられることから,災害への対処としての 農業共済のもつ意味についてリスクマネジメントの側面 から検討する必要がある。先行研究においては,これら の点が農産物産地の維持・形成過程の中で必ずしも十分 に捉えきれていない面があった。 1-2 先行研究と本研究の目的 農業災害に関する研究は,これまで地理学,気象学, 農学,工学,建築学,経営学等の諸科学で広範に行われ てきた。たとえば,三澤 (1937) は,風土を生かした産業 づくりの重要性を説く中で,自然災害に対して「自然征 服」 から 「自然順応」 への思想を展開した。 菊池(1982) と菊池編 (1987) は,気象災害や地震災害の実態と,地 形と災害との関係性などに着目し,地域ごとの自然環境 と人間活動との関わりを考察している。また,松村 (1987) は,明治・大正期の農業災害について,「災害の規模, 持続性,時間的集中,多様性と,連年,同一年内,月や 日ごとの時間スケールの違いによる災害の質的な差異に 着目し,農業生産と地域主体の生活へ与えた影響」を解 明する必要性に言及し,地理学的アプローチの有効性を 示した。これは,気象・気候変化の種類によって,自然 災害の時間・空間スケールが異なることをまとめた研究 (吉野,1987) と関わっており,人間・環境の相互作用を 解明する地理学の共通テーマにつながっている(Matthews and Herbert, 2008)。 農業災害と気象変化の関係に着目した寺田 (1949) は, 災害の地理的分布と地理的条件を考慮する重要性に触 れ,真木ほか編 (1991) は農業気象災害を網羅し各々の 対策を検討した上で,環境変動と農業気象災害との対応 関係を明らかにしている。農業災害の中でも,台風災害 は広域的でかつ継続的に発生してきた。特定の地域を対 象とした台風災害について,仲本 (1989) が沖縄県のサ トウキビ栽培の被害状況を生産性と関連づけて考察し, 有馬 (1999) が大分県の台風災害後におけるシイタケ産 地の変容を明らかにした。個々の台風がもたらした農業 災害と気象変化に着目した山本 (1992,2000) や山本ほ か (1994,1995,2008) は,現地調査にもとづき台風災害 の発生プロセスの解明を試み,防災技術の確立を提起し ている。これらの事例研究に対しては,近年の気象・気 候変化と農業を取り巻く社会・経済変化を背景に研究の 必要性が一層高まっている。そこでは,GISを活用して 台風による森林災害を分析した研究 (横山,1999,2001) や,行政による災害状況図の作成と情報提供システムの 構築 (飯田ほか,2005) などのように,新たな技術や手法 を取り入れた農業災害研究が求められている。 農業災害への対応としては,農業保険・農業共済・農 業災害補償に関する研究が蓄積されている。国際比較の 視点で分析を行った山内 (1950,1983) は,作物保険と小 農経営の非調和問題の論理を考察しその解決の道筋を提 示し,吉井 (1996,1997,2008a,2008b) は,農業災害補 償制度を含めた農業保険制度について,諸外国の実状を 紹介する中で,日本との比較と導入可能性を検討してい る。農業災害補償制度における農業共済事業の多様な機 能と運営体制を概観した竹中 (2008) は,補償内容と損 害評価方法に関わる検討課題を整理し,作物保険を取り 上げたGil (2011) は,制度・政策・組織の側面からその 経過と現状を明らかにした。また,単年における農業災 害と農業共済に関する実態報告 (成田,2005;南,2008; 菊池,2009) もみられ,各地の被害状況と農業共済の対 応例が紹介されている。農業共済の歴史,現状,課題を 総括した長谷部・吉井編 (2001) は,共済組織を支える 基本理念である「相互扶助」の再考を提起している。と くに農業災害補償制度を農家経済に着目して分析を試み た茂野 (1986) は,農作物共済の保険サービスを競争均 衡下の保険市場と比較し,その特質を明らかにした上 で,制度の変遷とその意味の変質を浮き彫りにしてい る。さらに茂野(1988)は,災害時の農家経済行動に着 目し,冷害への抵抗力としての兼業化,共済金や制度資 金の借入れ,貯蓄の取崩し,不要不急の出費の抑制など
理解する上で,短期的かつ中長期的な時間スケールと, ミクロからマクロまでの空間スケールを接合した視点と その分析が必要になることを示唆している。加えて,園 芸施設産地では農業者が固定資本の維持・形成を果たし てきた一方で,農産物市場のグローバル化の進展によっ て既存の経営形態が転換を迫られるため,農業保護政策 としての農業災害補償制度と共済事業についてもその役 割を改めて捉える必要がある。 これまでに農産物産地研究では,産地の形成過程や産 地・農業者間の競争状態を分析する際に,完全な市場競 争を前提とする場合が多く,不規則に発生する経営の阻 害要因を見過ごしてきた側面があった。産地・農業者 は,実際には少なからず自然災害や事故,疾病等の影響 を受けて市場競争を展開している。これらの不確実な要 因に着目することによって,産地のもつ地域的特質や農 業者の直面する課題をより現実に即して理解できる可能 性がある。これは,農業における資金の地域的循環 (長 谷部,1999) の理解にも関わっている。さらに,こうし た視点は経営学における競争戦略論やリスクマネジメン ト研究と,農業分野におけるナレッジマネジメント研究 (日本農業経営学会・門間編,2011) につながっている。 リスクマネジメントの対象である自然災害については, Porter (1980) を念頭に置いたOlson (2003,2010) の「5 つの主要なリスク」の中で捉えることができる。すなわ ち,生産,市場,財務,法制度,人的資源の各リスクに 関わっている。 農業におけるリスクマネジメントについて,農業災害 への対応を論じた研究 (Barry,1984) や,自然災害に対 する技術的対応策と経営的対応策を検討した研究 (阿 部,1992) と,リスクマネジメント技術の導入可能性に 関する研究 (上原,2003;横内,2005) のほか,農業に関 わるリスクを情報のマネジメントの側面から捉えた研究 (南石,2011) などが行われている。 長谷部・吉井編(2001) は,農家のリスクマネジメントの一環として農業共済制 度の運用に着目し,安定的な食料供給と農業経営を踏ま え研究を総括している。また,金山 (2001) は,野菜の 価格安定制度下における園芸施設共済の現状と課題を整 理し,天野 (2000,2001) は,農家のリスクマネジメント と農業共済との関係について明らかにしている。 前述のように農業経営におけるリスクマネジメント は,事前対策と事後対応に大別できるが,農業共済への 加入は事後を想定した事前のリスクマネジメントに位置 づけられる。長谷部 (1999) は,農業共済に関する研究 蓄積の必要性を強調した上で,自然災害だけでなく,価 格リスクを補償する収入保険の必要性について指摘して による対応実態を明らかにした上で,耐冷化技術・経営 体質改善と農家行動の合理性との「スレ違い構造」の解 消に注視する必要性を提起している。 農業共済の中でも園芸施設共済は,制度の発足が畑作 物共済と同様に遅かったが,農業者の固定資本の維持・ 形成の観点から注目されてきた事業である。土屋 (1979) は,園芸施設共済の導入に関する法改正に触れ,園芸施 設共済の本格的実施に至る経緯と試験的実施との共済内 容の違いを詳説している。また,奥島・奈良 (1992) は, 全国における園芸施設の設置実面積の推移を概観した上 で,地方別の園芸施設被害の原因を把握し,プラスチッ クハウスの建設コスト削減と耐候性向上の必要性につい て指摘している。さらに,県連合会における園芸施設共 済の普及経緯と共済対応に関する報告 (田中,1992) や, 農業共済組合における園芸施設共済の撤去費用方式の導 入推進に関する報告 (西尾,2005) と,農協・生産団体と の連携による園芸施設共済の推進に関する報告 (植田, 2006) が行われている。 農業共済は事前加入による被災後の補償対応であり, 事前対策そのものとは異なる。そのため,園芸施設被害 の回避または軽減を目的とする園芸施設の立地や構造特 性に関わる研究も重要になる。プラスチックハウスの立 地配置の違いによって台風の被災形態が異なることを現 地調査から実証した豊田ほか (1998) は,実践的な応急 対策と耐風設計について検討している。園芸施設の被害 程度を倒壊パターンに分類した森山ほか (1999) は,そ の原因である園芸施設の基礎と接合部の強度と骨組み構 造を解析した。実際に被災した個別の園芸施設の立地に 着目して構造解析を行った森山ほか (2003) は,園芸施 設の破壊メカニズムを明らかにし,森山 (2008) が園芸 施設の種類による被害の違いに着目し,雨よけ施設の建 設時に立地条件(地形,防風林,周辺施設)を考慮する 必要性を指摘した。また,台風対策としての園芸施設の 技術開発とその普及過程について明らかにした研究 (髙 倉,2004) と,耐候性を有する園芸施設の構造特性に関 する研究 (羽倉,2006;玉城,2006a) が行われている。 とくに台風による園芸施設被害が常態化している沖縄県 について,現地調査にもとづく被害状況の把握とその対 策に関する研究 (玉城,2005) と,園芸施設の普及過程を 踏まえて耐風性と低コスト化を両立する園芸施設の開発 に関する研究 (玉城,2006b) のほか,営農現場に提案し 得る台風対策手法の確立を目的として,既存施設の欠点 とその補強の必要性について考察した研究 (玉城ほか, 2007) が行われている。 以上にみてきた実証的研究は,園芸施設被害の実状を
園芸施設共済では,全国統計6),都道府県統計7),農業共 済組合連合会資料,農業共済組合資料のいずれにおいて も,統計の上で個別の被害原因までを特定することも困 難である8)。単年度では甚大な被害をもたらした台風災 害に関する行政資料も存在するが9),近年,共済加入率 が低下傾向にある点などを含めて,研究遂行上の資料的 な制約がある。 その一方で,園芸施設共済に関わる統計・資料は,全 国,都道府県,市町村の各空間スケールをリンクして地 域単位の統計が長期にわたりしかも経年で入手可能であ り,これに類する他の資料は限られている。また,園芸 施設被害をもたらした原因を一部ではあるが,気象庁の 保有する気象データと直接関連づけて把握できる利点が ある。さらに,園芸施設共済では加入組合員が所有する 園芸施設1 棟ごとに損害評価が行われ,損害額が算定さ れて共済金が支払われる金銭授受をともなうため,共済 対象の園芸施設に限ってみれば,引受状況と被害状況を 戸数,棟数,面積,金額の各側面から高い精度で分析す ることが可能である。 上記の資料の制約を補うために,気象関連の資料10), 農業災害関連の統計11), 農業災害補償制度関連の資料12), 農業災害対策関連の資料13), 農作物に関する被害統計14), 統計内に掲載された被害状況の説明文書15),沖縄県農業 共済組合連合会の提供資料16),国頭郡農業共済組合の提 供資料17)などを使用するとともに,同連合会および同 組合においてヒアリングを行った。 以下,2 章では,全国における園芸施設共済事業と園 芸施設被害の特徴を地域差に着目して把握し,沖縄県の 位置づけを行う。3 章では,沖縄県における園芸施設共 済事業と園芸施設被害の実態とその地域差を把握し,国 頭郡農業共済組合管内の特質を明確にする。4 章では, 沖縄県における園芸施設被害と台風との関係について, 台風の経路を中心位置の存在時間数に着目して解析し, 近年の傾向を明らかにする。5 章では国頭郡農業共済組 合管内の園芸施設共済事業と園芸施設被害の実態とその 地域差を把握し,続く6 章で同組合管内における構成主 体の対応の地域差とその要因を明らかにする。最後に7 章ではまとめとして,農業災害補償制度下における園芸 施設への台風災害と農業共済組合の事業展開のもつ地域 的な意味について考察する。 2 .全国における園芸施設共済事業と園芸施設被害 2-1 農業災害補償制度の概要と園芸施設共済の特徴 日本における公的な農業保険制度としての共済事業に は,農業共済組合 (NOSAI) と農業協同組合 (JA) によ いる。これは広義のリスクマネジメントとしての農業補 償に関わっている。日本では,2000年度から「中山間地 域等直接支払制度」が実施され,2010年度に水田を対象 とする「戸別所得補償モデル対策」と,2011年度から畑 作物に対象を拡大した「農業者戸別所得補償制度」など の実施が本格化している。これら農業経営の安定化に寄 与する諸制度に関する横断的な研究が,今後の課題に なっている。 以上のように,農業災害と農業共済について,多様な 研究分野と研究視点をもとに多くの研究が蓄積されてき た。これら先行研究からは,農業災害補償制度の発足と その後の経過を踏まえた上で,農業災害と農業共済に関 する時間的・空間的スケールに着目した研究の必要性が 示唆された。そこで本研究では,農業災害補償制度下に おける全国および沖縄県の園芸施設共済の事業展開と被 害の主要因を分析した上で,沖縄本島北部を管轄区域と する国頭郡農業共済組合を事例として,園芸施設被害の 地域差とその要因を明らかにし,これら地域差がもたら す意味を考察する。 なお,研究対象地域とした沖縄農業に関する研究例と しては,電照ギク栽培地域の形成にいち早く着目した松 井 (1986) や,農業振興策の現状と課題を浮き彫りにし た増井 (1990) のほか,新井・永田 (2002,2009) の一連 の研究成果や松村 (2005) などを挙げることができる。 新井・永田は,沖縄の日本復帰後の農業政策を「沖縄農 業政策」と位置づけ,その独自の政策体系に注視し,干 ばつや台風などの気象条件が農家経営に及ぼす影響につ いて分析している。また,松村は,台風の襲来や害虫被 害が農産物産地の形成に関わることを指摘している。本 稿はこうした農業のもつ地域性を,農業災害へのリスク マネジメントの一側面から捉えようとするものである。 1-3 資料と研究方法 本研究では,農業災害補償制度の仕組みとその運用を 重視し,農業共済組合の「園芸施設共済」に関するデー タを使用する。ただし,園芸施設共済にはすべての農家 と園芸施設が加入しているわけではなく,任意加入を原 則としているため,未加入農家も相当数存在する。全国 の園芸施設共済加入 (引受) 率について,園芸施設面積 をもとに推計すると,2009年度は38.9%であった4)。こ れは,共済に加入していない園芸施設を含めた全体の被 害規模が,本稿で取り上げた被害状況を上回っているこ とを推察させるものである。園芸施設共済の加入率と被 害率には地域差もあり,園芸施設共済に関わる資料では 被害状況の全体像の把握と事故要因を特定できない5)。
施設共済」と「建物共済」では,共済対象が全国で統一 されて運用されている20)。「園芸施設共済」の共済目的 による種別には,「特定園芸施設」「附帯施設」「施設内 農作物」「撤去費用」の4 つがあり,「特定園芸施設」を 中心にその他を組み合わせて共済事業が行われている。 本稿で取り上げる農業災害補償制度が対象とする「園 芸施設共済」の目的について,農業災害補償法第八十四 条では,「農業共済組合は,(略),当該各号に掲げる共 済事故によつて生じた損害について,組合員に対し共済 金を交付するものとする」と規定し,共済の対象を「施 設園芸 (略) の用に供する施設 (略) のうち温室その他の その内部で農作物を栽培するための施設及び気象上の原 因により農作物の生育が阻害されることを防止するため の施設 (略)」とした上で,共済事故として「風水害,ひ よう害その他気象上の原因 (地震及び噴火を含む。)に よる災害,火災,破裂,爆発,航空機の墜落及び接触, 航空機からの物体の落下,車両及びその積載物の衝突及 び接触,病虫害並びに鳥獣害」を挙げている。農業災害 上の園芸施設被害の特性として,農家の生産手段への物 理的な破壊と,被災後に修繕,撤去・廃棄,改築などの 対応が必要になる点を指摘できる。 園芸施設共済は,1974~1978年度まで「畑作物共済 及び園芸施設共済に関する臨時措置法」にもとづいて試 験的に5ヵ年間実施され,1976年度の農業災害補償法の 一部改正を経て,1979年度から本格的に実施に移され た21)。これらは,国が園芸施設共済事業を制度化するに あたり,運用に向けた準備を慎重に進めてきたことを表 している22)。その後,1981年から2003年の間に 6 度の 法改正があり,主として園芸施設の補償対象の拡大や金 るものとがある。農業共済組合の共済事業は農業災害補 償法を法的根拠とし,作物・家畜・園芸施設・建物 (短 期) を対象に,建物共済を除き 5 割前後の国庫負担で運 用されている。一方,農業協同組合の共済事業は農業協 同組合法を法的根拠とし,生命・自動車・建物 (長期) を対象に,国庫負担に依存せず任意加入で運営されてい る。農業共済組合と農業協同組合は,共済事業で互いに 競合しないように事業領域を棲み分けている。 農業災害補償制度は,農家が農業共済組合に加入し組 合員となり,共済金額に対する共済掛金を支払い,被災 した際に組合から共済金を受け取るものである (図 1)。 農業共済組合は都道府県単位の農業共済組合連合会に保 険料を支払い,保険金を受け取り,農業共済組合連合会 は国に再保険料を支払い,再保険金を受け取る関係に よって成立している。資金循環としてみれば18),政府の 一般会計から農業共済再保険特別会計に予算が繰り入れ られ,国が共済掛金のほぼ半額を補助し,連合会と組合 の運営には政府の一般会計から出資を受けた独立行政法 人農林漁業信用基金が貸付や債務保証を,また連合会と 組合が出資・金銭寄託を行っている19)。つまり,農業共 済組合は,国および連合会を不可欠の存在とし,組合と その構成員である組合員が独自で事業を運営する組織機 構ではなく,国の農業保護政策の一環として機能を分担 するという特徴をもっている。 2010年度現在,農業共済には「農作物共済」「家畜共 済」「果樹共済」「畑作物共済」「園芸施設共済」「建物共 済」の6 つがあり,このうち「農作物共済」「家畜共済」 「果樹共済」「畑作物共済」では,連合会ごとに共済組合 が対象とする作目を設定している。これに対し,「園芸 国 共済金の一部負担 事務費の一部負担 事務費の一部負担 共済金 保険金 再保険料 再保険金 共済掛金 保険料 農 業 共 済 組 合 連 合 会 農 業 共 済 組 合 等 農 家 等 組 合 員 図1 農業災害補償制度の仕組み 注)特定組合と国の二段階制,農林漁業信用基金の貸付・債務保証等は省略。 資料)全国農業共済協会資料より作成。
施設異常事故」26)の基準緩和などが行われた。これら制 度の改正・適用を画期として,その翌年の1995年度を 基準に引受状況を指数で確認すると (図 3),引受戸数 と引受棟数がほぼ同様に推移している。一方,引受金額 は,引受戸数や引受棟数と比較して低い伸び率にとど まっており,1990年代半ばから2000年代初頭までと, 2000年代半ば以降とを比べると若干振幅が大きくなっ ている。これは,2003年度に特定園芸施設撤去費用補償 方式が導入されたこととプラスチックハウスⅦ類の追加 や,共済掛金国庫負担対象共済金額の限度額の引き上げ など,共済金額に直接関わる制度が変更され,2004年度 から適用された影響であると考えられる。 1990年代半ば以降は,園芸施設共済の引受戸数,引受 棟数,共済金額のいずれも横ばいに転じており,これ以 前とは異なる変動を示している (図 2)。とくに2006~ 2009年度は 4 年連続して引受戸数,引受棟数,共済金額 が減少しており,後述するように園芸施設面積の減少傾 向が関わっている。これらの点は,園芸施設共済制度の 発足から30年余りが経過し,共済組合と組合員を取り 巻く状況が近年転換期に入っていることをうかがわせる ものである。 2-3 全国の園芸施設被害の実態 1979年度以降,全国における園芸施設への被害状況 には年度ごとに大きな変動がみられ (図 4),1991年度 と2004年度には通常の被害年の 3 倍以上の被害が発生 した。とくに2004年度には,被害戸数が8.9万戸に達し, 被害棟数は16万棟を超えた27)。同年度の被害額は181億 円に上り,共済金も144億円を超えた28)。また,1998年 度から1999年度にかけては,被害戸数と被害棟数が横 ばいであったにもかかわらず,被害額のみが急増した。 この理由として,ガラス室やプラスチックハウスⅣ類・ Ⅴ類などの共済金額が相対的に高い施設を保有する地域 における被害の大きさを考えられる。このように年度ご との被害に差があるものの,園芸施設共済の開始以降, 継続的に被害が発生しており,通常規模の被害年と異常 な規模の被害年とに分けることができる。 園芸施設共済の被害率の推移をみると (図 5),年度 ごとに変動しており,とくに1979年度と1991年度そし て2004年度に被害率が高くなっている。1979年度の場 合には,園芸施設共済制度の発足当初であり,共済加入 者も少なく限られた引受棟数に相対的に多くの被害が及 んだ可能性を指摘し得る。1991年度は,戸数被害率29) が46.6%に達し,棟数被害率30)は35.2%になり,金額被 害率31)は4.8%であった。さらに2004年度は,戸数被害 額面の改定などが行われた。1993年には特定園芸施設の 対象施設に雨よけ施設の追加等が,1999年には農業共済 組合連合会の責任分担等が見直され翌年度より実施に移 された23)。とくに後者については,農業災害補償制度の 改正で地域の意向によって,「二段階制」で共済事業の 実施が可能になった点を挙げられる。これは,2000年代 以降の農業協同組合の合併と同様に,農業共済組合が効 率化と合理化を目指して合併が進み,1 県 1 共済組合も 発足するなど,従来の「三段階制」からの組織再編の流 れである。とはいえ,農業共済組合は,多角的な事業を 展開する農業協同組合とは異なり,国庫による事務費負 担や掛金の一部負担を基盤とし,共済事業を目的に組織 されている点に農業生産者組合としての特質がある。 2-2 全国の園芸施設共済事業の概要 1979年度から2009年度までにおける全国の園芸施設 共済の引受状況を確認すると (図 2),事業開始から2000 年代半ばまでの20数年余りにわたって,引受戸数,引受 棟数,共済金額のいずれも増加傾向にあった。引受戸数 は,園芸施設共済制度の開始当初は6.2万戸であったが, 1992年度には 3 倍強の20万戸を超え,2000年代初頭に 一旦減少に転じたものの,2005年度にはピークの25.2万 戸に達した。引受棟数は,引受戸数とほぼ同様に推移し ており,1979年度に18.7万棟であったものが,1992年 度に60万棟を超え,2005年度にはピークの73.2万棟に 達した。これら引受戸数と引受棟数の増加は,特定園芸 施設区分の見直しや共済掛金率の改定などの制度変更を ともないながら,新規加入者や加入済み組合員の経営規 模の拡大などを背景に推移してきたと考えられる。 さらに共済金額は,制度開始当初に1,702億円であっ たが,1992年度には2倍強の4,000億円を超え,2005年 度にピークの4,618億円に達した。共済金額の上昇には, 共済加入の増加に加え,物価変動と組合員による園芸施 設設備の高度化が影響している。特定園芸施設には, 1994年度から新たにプラスチックハウスⅥ類 (雨よけ等) が追加され,2000年度からプラスチックハウスⅣ類が甲 と乙に細分化され,2004年度から新たにプラスチックハ ウスⅦ類 (多目的ネットハウス) が追加され,現行の10 区分24)となっている (表 1)。園芸施設共済の区分には, 運用段階で詳細な基準が設けられている25)。これは,園 芸施設メーカーが開発する新たな構造特性をもつ園芸施 設に合わせ,共済の公平性を保つために,特定園芸施設 区分を細分化する必要があったからである。 1994年度以降は,組合等の手持責任の拡大や,共済掛 金国庫負担対象共済金額の限度額の引き上げと,「園芸
0 200 400 600 800 1979 '85 '90 '95 2000 '05 '09 引受戸数 引受棟数 共済金額 (千戸・千棟・十億円) (年度) 図2 全国における園芸施設共済の引受戸数・棟数,共済金額の推移 資料)農林水産省『園芸施設共済統計表』(各年度)より作成。 20 40 60 80 100 120 引受戸数 引受棟数 共済金額 (指数) (年度) 1979 '85 '90 '95 2000 '05 '09 図3 全国における園芸施設共済の引受戸数・棟数,共済金額の指数の推移 注)1995年を100とする指数。 資料)図2 に同じ。 0 500 1,000 1,500 2,000 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 1979 '85 '90 '95 2000 '05 '09 被害戸数 被害棟数 被害額 共済金 (千万円) (百戸・百棟) (年度) 被 害 戸数 ・被 害 棟数 被 害 額 ・共済金 図4 全国における園芸施設共済の被害戸数・棟数・額,共済金の推移 資料)図2 に同じ。 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 1979 '85 '90 '95 2000 '05 '09 戸数被害率 棟数被害率 金額被害率 (%) (%) 戸 数 被 害 率 ・ 棟 数 被 害 率 (年度) 金 額 被 害 率 図5 全国における園芸施設共済の戸数・棟数・金額被害率の推移 注)経過戸数・棟数・金額による。 資料)図2 に同じ。 (年度) (年度) (年度) (年度)
年代まで拡大傾向にあった (図 6)。また,1980年代以降 は,比較的低額の資本投下で建設が可能な雨よけ施設も 増加している。とはいえ,園芸施設共済事業の試験的実 施は1973年度であり,この時点で全国にはすでに約 2 万 haの園芸施設の設置実面積が存在した。共済事業が本 格的に実施に移された1979年度には,約 3 万haへ設置 実面積が拡大している。このことから,全国で園芸施設 産地が形成される初期の段階で共済事業が実施されたわ けではなく,相応の事業規模と事業運営が見込める段階 になった時点で,本事業が開始されたとみなすことがで きる。これは,1994年度にプラスチックハウスⅥ類 (雨 よけ等) が共済対象に追加された1994年度の時点で,す でにほぼピークに近い設置実面積に達していた点も類似 した経緯を表している。 園芸施設の建設と共済事業の拡充の背景には,政府と 地方自治体による農業構造改善事業等の補助事業や融資 事業を通じた園芸施設産地の育成が進められ,産地主体 による産地形成が成し遂げられてきたことがあった。つ まり,園芸施設共済事業と産地育成事業は,農業保護政 策として相互に補完する関係にあった34)。 2-4 全国の園芸施設区分別の被害状況 園芸施設共済が沖縄県で発足した1989年度以降にお 率が50.4%に達し,棟数被害率は32.4%になり,金額被 害率は3.8%であった。いずれの年度においても戸数被 害率および棟数被害率と,金額被害率との間には大きな 開きがみられる。この理由は,戸数被害率と棟数被害率 は被害規模にかかわらず,組合員と園芸施設に何らかの 被害が生じれば戸数と棟数が計上されるのに対し,金額 被害率は組合員が申し出た共済金額に対して支払われた 共済金をもとに算出されるため,実質的な被害の大きさ を表すことになるからである32)。 戸数被害率と棟数被害率はほぼ同様に変動している が,1991年度や2004年度などのように被害が相対的に 甚大な年度ほど金額被害率が上昇している。これは,大 規模な被害が生じた年度にガラス室のような共済金額の 高い園芸施設も被害を受けているためであると推察され る。共済制度発足当初の1979年度における被害規模の 評価にもよるが,仮に金額被害率のみでみた場合,制度 発足からおよそ10数年のサイクルで高被害率が発生し ている。各被害率の経年変化の特徴として,上昇もしく は低下等の一定の傾向がみられない点も指摘できる33)。 こうした園芸施設共済への加入や被害の変動は,全国 各地で園芸施設の建設が進み,設置実面積が拡大してき たことと深い関わりがある。全国における園芸施設の設 置実面積は,ビニルハウスを中心に1970年代から1990 表1 農業災害補償法の園芸施設共済における特定園芸施設の区分 特定園芸施設の区分 区分の標準 ガラス室I類 屋根及び外壁の主要部分がガラスにより造られ、かつ、骨格の主要部分が木により造られている施設 ガラス室Ⅱ類 屋根及び外壁の主要部分がガラスにより造られ、かつ、骨格の主要部分が鋼材又はアルミ材により造られて いる施設 プラスチックハウスI類 主としてプラスチックフィルムが被覆材として使用され、かつ、骨格の主要部分が木又は竹により造られて いる施設 プラスチックハウスⅡ類 主としてプラスチックフィルムが被覆材として使用され、かつ、骨格の主要部分がパイプにより造られてい る施設 プラスチックハウスⅢ類 主としてプラスチックフィルムが被覆材として使用され、かつ、骨格の主要部分が鋼材又は鋼材及びパイプ により造られている施設のうち、プラスチックハウスⅣ類甲及びプラスチックハウスⅣ類乙以外のもの プラスチックハウスⅣ類甲 主としてプラスチックフィルムが被覆材として使用され、かつ、骨格の主要部分が鋼材又はアルミ材により 造られている施設のうち、農林水産大臣が定める基準に該当するもので、プラスチックハウスⅣ類乙及びプ ラスチックハウスV類以外のもの プラスチックハウスⅣ類乙 主としてプラスチックフィルム(農林水産大臣が定める施設以外の施設にあつては、硬質フィルムに限る。) が被覆材として使用され、かつ、骨格の主要部分が鋼材又はアルミ材により造られている施設のうち、農林 水産大臣が定める基準に該当するもので、プラスチックハウスV類以外のもの プラスチックハウスⅤ類 屋根及び外壁の主要部分が合成樹脂板により造られている施設並びに屋根及び外壁の主要部分がプラスチッ クフィルム(硬質フィルムに限る。)により造られている施設のうち農林水産大臣が定める基準に該当する もの プラスチックハウスⅥ類 主として屋根面のみがプラスチックフィルムにより被覆されている施設及びその全体又は主として屋根面の みが通気性を有する被覆材により被覆されている施設のうちプラスチックハウスⅦ類以外のもの プラスチックハウスⅦ類 その全体が通気性を有する被覆材により被覆され、かつ、骨格の主要部分が鋼材、アルミ材又はコンクリー トにより造られている施設のうち、農林水産大臣が定める基準に該当するもの 資料)農業災害補償法施行規則(最終改正:平成23年 6月22日農林水産省令第38号)第33条24項関係の別表より。
ける全国,沖縄県,国頭郡の各空間スケールで,金額被 害率が高かった年度に着目すると (図 5,後掲図12・ 26),全国では1991,2004年度,沖縄県では1991,1996, 1997年度,国頭郡では1996,1997,2004年度であった。 これを踏まえ,以下では1991,1996,1997,2004年度の 4ヵ年における園芸施設被害を取り上げたい。 表2 は,全国における園芸施設区分別の共済引受状況 と被害状況を示したものである35)。共済引受には年度ご とに差がみられるが,共済に加入する組合員の90%以 上がプラスチックハウスの所有者であり,中でもⅡ類の 所有者が全体の70%以上を占めている。しかし,プラ スチックハウスⅡ類の共済金額率は30%前後であり, 他の園芸施設の引受率よりも相対的に低く,共済価額 (時価額) も低く,簡易な構造であることを反映している (表1)。プラスチックハウスⅡ類の共済金額率を前述の 4ヵ年についてみると,徐々に低下してきていることが わかる。これは,引受率が増減しているため,Ⅵ類やⅦ 類の新たな区分の追加や,Ⅱ類の老朽化にともなう共済 価額と共済金額の低下などの影響を考えることができる。 園芸施設の種類ごとの被害が全体に占める割合をみる と,被害戸数率と被害棟数率は引受戸数率と引受棟数率 とにそれぞれ比較的近い数値を示しており,一定の相関 関係が認められる36)。一方,共済金率ではプラスチック ハウスⅡ類が被害戸数率や被害棟数率よりも低く,この 4ヵ年では55.1%から70.1%の間にあり,共済金額率を およそ2 倍前後上回っており,被害を金額でみれば,Ⅱ 類の被害が相対的に際立っている37)。また,全国的に異 常な被害年である1991,2004年度と,通常の被害年であ る1996,1997年度について被害状況を比較すると,一定 の傾向が読みとれず,被害年に耐風性の高い園芸施設が 多くの被害を受けているとは一概にいえない。これは, 全国で様々な気象災害が発生し,被害をもたらした原因 として地域の特性が関わっていると考えられる。 被害状況を戸数被害率,棟数被害率,金額被害率でみ ると,1991年度にはプラスチックハウスⅡ類がいずれも 数値が高く,他の園芸施設よりも被害を受けやすい状況 を示している。同様に異常な被害年の2004年度では,プ ラスチックハウスⅡ類は必ずしも被害率が高くなかった が,ガラス室Ⅰ類やプラスチックハウスⅠ類などの骨格 部材が木製の園芸施設と,プラスチックハウスⅥ類のよ うに比較的軽度の園芸施設の被害率が高くなっている。 一方,通常の被害年では,プラスチックハウスⅡ類が他 の園芸施設よりも被害率が際立った数値を示していると はいえず,1996年度はⅥ類が,1997年度は戸数被害率で Ⅵ類,棟数被害率でⅢ類などが高くなっている。つま り,通常の被害年では園芸施設の種類ごとの被害率の差 が小さい一方で,異常な被害年においては耐候性の低い 園芸施設の被害率が高くなる傾向にあるといえる。ただ し,戸数,棟数,金額の各被害率に高い相関関係は認め られない38)。 2-5 全国の園芸施設被害の地域差 園芸施設被害をもたらした主要因は,台風や低気圧の 通過にともなう風害 (写真),水害,雪害,雹害などであ るが,これら被害原因を個別に特定し,その経年変化を 分析することは困難である。そこで,上記の4ヵ年を例 として金額被害率の都道府県分布 (図7a~d) と農林水 産省経済局『農業災害補償制度年報』の記載内容をもと 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 1973 '75 '77 '79 '81 '83 '85 '87 '89 '91 '93 '95 '97 '99 2001 '03 '05 '07 '09 ガラス室 ハウス 雨よけ栽培 (年) (ha) 図6 全国における園芸用施設種類別の設置実面積の推移 注)前年の7月1日から当該年6月30日までの数値を表す。 資料)農林水産省『園芸用ガラス室・ハウス等の設置状況』(各年次),同『園芸用施設及び 農業用廃プラスチックに関する調査』(各年次)より作成。
に,園芸施設被害の地域差を概括したい。 1991年度は,中国・九州・沖縄地方と日本海側の各県 で被害が大きく,異常な被害年に地域的な偏りがあっ た。本年度は,園芸施設共済制度の発足以降,全国的に みて最も大きな被害を受けた年度の1 つであった。主な 被害の発生状況を確認すると39),4月に東北地方北部で 雪害があり,4~5月には全国各地で低気圧の通過にと もなう強風が発生した。7月には台風 9 号によって中 国・九州地方で風水害が,8月には台風12,13,14号に よって関東地方で風水害が,さらに9月には台風17,19 号によって九州・中国・北陸・東北地方を中心に全国で 風水害があった。翌年2月には九州地方北部で雪害が発 写真 台風通過にともなう強風による園芸施設被害(2001年9月) 表2 全国における特定園芸施設別の共済の引受と被害 年度 特定園芸 施設区分 引受 戸数率 引受 棟数率 共済 金額率 被害 戸数率 被害 棟数率 共済金率 戸数 被害率 棟数 被害率 金額 被害率 1991 ガラス室 I類 0.7 0.6 0.7 0.2 0.1 0.1 8.8 4.4 0.5 Ⅱ類 4.9 3.8 24.0 1.7 1.0 1.4 10.7 5.7 0.2 プラス チック ハウス I類 1.4 0.8 2.0 1.4 0.8 1.2 32.5 22.6 2.5 Ⅱ類 70.2 82.8 30.4 75.5 85.3 70.1 56.9 39.0 14.6 Ⅲ類 13.8 7.3 20.2 14.2 8.5 17.2 43.5 36.7 4.6 Ⅳ類 6.8 3.6 15.6 5.9 3.6 8.2 30.1 25.5 2.3 Ⅴ類 2.2 1.1 7.1 1.1 0.6 1.8 16.4 13.6 1.0 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 46.6 35.2 4.8 1996 ガラス室 I類 0.4 0.3 0.4 0.2 0.1 0.1 7.0 3.3 0.3 Ⅱ類 3.5 3.1 21.7 2.6 1.8 3.1 12.4 5.5 0.2 プラス チック ハウス I類 0.9 0.5 1.6 0.9 0.6 1.0 15.9 11.8 0.7 Ⅱ類 72.0 78.8 30.0 71.7 76.5 59.2 26.8 14.5 3.3 Ⅲ類 12.4 6.7 19.0 12.1 9.0 16.6 21.4 16.8 1.3 Ⅳ類 6.7 3.7 18.7 7.1 5.3 13.1 19.3 14.9 0.9 Ⅴ類 2.0 1.0 7.2 1.3 0.9 4.4 11.7 9.0 0.7 Ⅵ類 2.2 5.9 1.4 4.1 5.8 2.5 63.2 18.0 4.8 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 24.5 14.3 1.4 1997 ガラス室 I類 0.3 0.3 0.3 0.1 0.1 0.1 5.9 2.6 0.2 Ⅱ類 3.4 3.0 21.5 2.7 2.1 3.3 12.3 5.6 0.2 プラス チック ハウス I類 0.9 0.5 1.5 1.2 0.9 1.3 22.2 16.0 0.9 Ⅱ類 72.6 79.2 30.0 72.2 77.1 59.2 25.0 12.4 3.0 Ⅲ類 11.7 6.3 18.5 13.7 10.7 20.7 23.1 17.6 1.5 Ⅳ類 6.8 3.8 19.3 6.6 5.3 10.7 16.4 12.3 0.6 Ⅴ類 2.0 1.0 7.5 1.2 0.8 3.4 9.3 6.9 0.5 Ⅵ類 2.2 5.8 1.3 2.3 3.0 1.3 31.9 7.9 2.2 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 22.9 12.2 1.2 2004 ガラス室 I類 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 22.5 12.5 1.1 Ⅱ類 3.0 2.7 18.4 1.1 0.7 1.2 12.8 6.0 0.2 プラス チック ハウス I類 0.5 0.3 0.9 1.1 0.7 1.9 74.9 58.9 6.4 Ⅱ類 70.9 78.0 27.6 65.1 70.0 55.1 50.1 30.0 9.1 Ⅲ類 12.5 6.9 21.3 16.2 11.5 24.3 57.6 46.4 4.6 Ⅳ類甲 5.9 3.3 14.5 7.2 5.1 9.5 49.3 39.0 2.3 Ⅳ類乙 2.7 1.3 9.9 1.5 0.9 2.1 20.7 16.2 0.7 Ⅴ類 1.9 1.0 5.9 1.2 0.8 2.0 23.7 18.8 1.1 Ⅵ類 2.3 6.3 1.4 6.5 10.2 3.9 193.6 71.7 17.8 Ⅶ類 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 52.6 22.9 3.0 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 50.4 32.4 3.8 注)各特定園芸施設が各項目の全体に占める割合 (%) を表す。 戸数・棟数・金額被害率は,特定園芸施設ごとの経過数による被害率 (%) を表す。 資料)農林水産省『園芸施設共済統計表』 (各年度) より作成。
生するなど,年間を通じて被害が発生した。 1996年度は,全国的にみれば被害が大きくはなく,被 害率1 %未満の都道府県が多かったが,沖縄や鹿児島な ど特定の県で被害が拡大した。主な被害の発生は40),4 ~7月に低気圧の通過にともなう強風,降雹,多雨など があった。8月には台風 9 号によって沖縄で,台風12号 によって九州・四国地方で甚大な被害があった。9月に は台風17号によって関東・東海地方で,台風21号に よって沖縄で被害があった。12~3月には低気圧の通過 にともなう強風や降雪によって,北海道・東北地方など で被害があった。このほかに最大瞬間風速や降水量が基 準値を超え,千葉,福井,鹿児島,沖縄などで園芸施設 異常事故が発生した。 1997年度も全国では被害が大きくなく,沖縄や長野を はじめ,青森,山梨,奈良,鳥取,島根,熊本などに被 害地域が分散した。主として4月に水害によって熊本が, 5月上旬に強風や大雨で北海道・東北・九州地方が被害 を受けた41)。6月には台風 7 号によって関東・東海地方 が,台風8 号によって全国で被害があった。7月には台 風9 号によって近畿・中国・四国地方を中心に,8 月に は台風11号によって九州・沖縄地方を中心に,同月に 台風13号によって沖縄がそれぞれ被害を受けた。1~2 a.1991年度 0 400km (%) 10 5 3 1 b.1996年度 0 400km (%) 10 5 3 1 c.1997年度 0 400km (%) 10 5 3 1 d.2004年度 0 400km (%) 10 5 3 1 図7 都道府県別における園芸施設共済の金額被害率の差異 注)1991年度は経過金額の統計がないため,共済金額と共済金より算出した。 資料)農林水産省『園芸施設共済統計表』(各年度)より作成。
の3ヵ月間に集中している一方で,沖縄県では年間被害 棟数のおよそ9 割が 6~9月に集中し,同県における台 風による園芸施設被害の時期的集中の著しさがわかる。 また,全国では園芸施設被害のおよそ5 割弱が夏期以外 の時期に発生しており,被害原因の多様性をうかがわせ る。沖縄県以外の地域でも,降雪や降雹などのように地 域性を反映した気象変化による自然災害が発生している とみられる。 3 .沖縄県における園芸施設共済事業と園芸施設被害 3-1 沖縄県の園芸施設共済事業の概要 沖縄県における農業共済事業は,1972年度に農作物共 済 (水稲),家畜共済 (牛,馬,豚),任意共済 (建物) が 始まり,1979年度に果樹共済 (パインアップル) と畑作 物共済 (さとうきび) が加わり,1989年度に園芸施設共 済が開始されている。このうち果樹共済は,加入者の減 少と損害評価の困難さによって2008年度以降に引受を 中止している。同県では本土復帰直後の主要作目とその 後の作目転換に合わせて共済事業が整備され,主要作目 をある程度限定して事業が実施されている。沖縄県では 他県と同様に,農家が加入する公的な共済には農協が実 施する共済事業もある。2002年 4月に県単一農協として 月には低気圧の通過にともなう強風や降雪によって北海 道から東海地方の広範囲で被害を受けた。このほかに1 月に暴風雪によって長野で,2月には竜巻によって沖縄 で園芸施設異常事故の対象となる被害を受けた。 2004年度は,北海道・東北地方から東海・近畿・中 国・四国地方,さらに九州・沖縄地方など,被害の大き かった地域が全国に及んだ。本年度は,台風の上陸数が 過去最高の10個に上り,園芸施設共済制度の発足以 来,最大の被害が発生した。主な被害の発生状況を確認 すると42),6月に台風 4 号が沖縄に,台風6号が近畿・ 四国・沖縄地方に被害をもたらした。7月には高知で台 風10号の豪雨による土砂災害があった。8月には台風15 号によって北海道・東北地方で,台風16号によって四 国・九州地方で被害が大きかった。9月には台風18号に よって北海道・中国・九州・沖縄地方で,台風21号に よって九州地方などで甚大な被害が発生した。10月に は,台風22号によって関東地方で,台風23号によって 東海地方から九州・沖縄地方で甚大な被害が発生した。 11月には低気圧の通過にともなう強風によって東北地 方で被害があり,12~2月にかけては低気圧の通過にと もなう強風や降雪で北海道・東北地方を中心に被害が あった。 このように全国の園芸施設被害には,年度ごとに都道 府県別で差異がみられ,通常の被害年と異常な被害年の 両方において,被害地域が偏在している。園芸施設被害 に地域差を与えた要因は,主として台風や低気圧の通過 にともなう強風と降水であり,台風の進路や規模,気圧 配置が関わっている。その中でも沖縄県の場合には,台 風が頻繁に通過し,強風によって園芸施設被害が発生し ている。表3 によると,日本近海における台風の発生数 は,1981年から2010年までの30年間の平均値で年間 25.6個であり,7~10月が 3 個以上となっている。この うち沖縄県に接近した台風は,年間平均7.4個であり, 発生数のおよそ3 割が同県に接近している。月別でみる と,7~9月に毎年 1 個以上の台風が接近している。 これらの点に園芸施設被害が発生した時期を加味する と (図 8),全国の年間被害棟数のおよそ 5 割が 8~10月 表3 台風の発生数と沖縄地方への接近数 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年間 台風の発生数 0.3 0.1 0.3 0.6 1.1 1.7 3.6 5.9 4.8 3.6 2.3 1.2 25.6 沖縄地方への接近数 ― ― ― 0.0 0.4 0.6 1.4 2.2 1.7 0.9 0.3 0.1 7.4 注)1981~2010年の30年間の平均値を表す。― は台風の接近なしを表す。 「沖縄地方に接近した台風」は,台風の中心が沖縄県のいずれかの気象官署から300 km以内に入った場合を指す。 資料)気象庁「気象統計情報」(http://www.jma.go.jp/jma/menu/report.html)より作成。 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 全国 沖縄県 (%) (月) 図8 全国と沖縄県における園芸施設共済の月別被害棟数率 注) 1990~2009年度の累積被害棟数に占める月別累積被害棟数の 割合 (%) を表す。 資料)農林水産省『園芸施設共済統計表』(各年度)より作成。
すると (後掲表 4),園芸施設の種類ごとの共済引受にお いて,プラスチックハウスⅡ類とⅣ類の割合が低下する 一方でⅤ類~Ⅶ類の割合が上昇している。また,2004年 度の金額被害率の方が1997年度よりも全体に低かった ことなどから,2004年度の園芸施設被害が全壊に至らな い一部損壊の割合が高かった可能性を指摘できる。この ように異常な被害年であっても,被害戸数,被害棟数, 被害額,共済金は,共済の引受状況や主要な被害対象な どによって差が表れている。 園芸施設共済の被害率の推移をみると (図12),戸数 被害率43),棟数被害率,金額被害率がいずれも変動して いる。戸数被害率は,1991,1996,1997,2002,2004年度 の5ヵ年で100%を超えており,棟数被害率でも2004年 度に100%を超えている。これらは年間に複数回被災し たことを示しており,単年度で被害が蓄積している。ま た,金額被害率は1991年度と1996年度に10%を超えて おり,全体として被害率そのものが全国と比較して高く なっている。 園芸施設被害の特徴として,戸数被害率と棟数被害率 との差が,全国では6~28%までの幅で推移してきたの に対して,沖縄県では-2~53%まで変動の幅が大きく かつ不規則であった。とくに1991年度は戸数被害率に 比べて棟数被害率が低かった。これは多くの共済加入者 が各々所有する園芸施設の一部に被害を受けた影響であ ると考えられる。沖縄県では,全国でみられた10数年 おきの高被害率のサイクルを確認できないが,被害率の 低い年度が5~7 年おきに表れ,近年は被害率の低い状 態が続いている。 異常な被害年と共済加入との関係を考察すると (図 9 ~12),1996年度は被害規模も被害率も高かったが,そ の翌年の1997年度には共済引受が減少した。1997年度 の被害状況と1998年度の引受状況についてもほぼ同様 の結果が表れた。2004年度の場合,被害棟数が多く被害 額は小さかったが,翌年の2005年度には引受戸数が伸 び,引受棟数は減少した。このように異常な被害年の翌 年に共済引受が必ずしも増加しておらず,前年度の被害 状況が翌年度の共済加入に対する意思決定に影響を及ぼ すとは限らないことを示している。 近年,園芸施設共済における被害棟数や共済金が減少 し,被害率は低下しているが,これは共済加入以外を含 めた園芸施設被害が総体として少なくなっていることを 表しているわけではない。この要因として,園芸施設区 分や共済対象の変更による影響と,共済掛金率の上昇に よって農家が共済掛金を負担しないようになってきてい る点を挙げられる。農業共済には「無事戻し金」の制度 発足したJAおきなわの共済事業は,「ひと・いえ・くる ま」に限定されており,農業共済組合と事業領域の棲み 分けが行われている。 沖縄県における園芸施設共済の引受状況の推移をみる と (図 9),園芸施設共済制度の発足以降,共済加入が急 増し,6 年目の1994年度にピークを迎え,引受戸数が 1,170戸,引受棟数が5,091棟,共済金額が56億円に達し た。沖縄県の共済引受は,全国における共済引受のピー クが2005年度であった点からも (図 2),極めて短期間 にピークを迎えたことを表している。しかし,1990年度 代半ばから2000年度前後にかけて,引受戸数,引受棟 数,共済金額のいずれにおいても減少がみられ,これ以 後に再び上昇に転じるという全国の動向とは異なる変動 を示している。これは,園芸施設区分の新規追加の時期 や異常な被害年ともずれがあり (図11・12),園芸施設 基準共済掛金率の上昇の年度とも異なっている (後掲図 15)。2005年度以降は引受戸数と共済金額が維持される 一方で,引受棟数のみが大幅に減少しており,この点で も全国とは異なった変化を示している。 これら園芸施設共済の引受状況について,1995年度を 100とした指数でみると (図10),引受戸数,引受棟数, 共済金額はともに,1989年度から2000年度代初頭まで ほぼ同様の変動を示してきた。しかし,近年,引受戸数 が維持される一方で,引受棟数の急減と共済金額の停滞 が生じている。これには後述するように,沖縄県で園芸 施設共済制度の運用が一部で変更されたことにともなっ て,園芸施設を多数所有する組合員の脱退や小規模農家 の新規加入などの影響を指摘できる。 3-2 沖縄県の園芸施設被害の実態 1989年度から20年余りにわたる沖縄県の園芸施設へ の被害状況を確認すると (図11),全国の状況と同様に 年度ごとに差がみられる。1996年度や1997年度のよう に全国で被害が比較的小さかった年度に,同県では大き な被害が発生するなど地域性も表れている。とくに被害 の大きかった1996,1997,2004年度は,通常年のおよそ 2~3 倍の被害が発生した。1996年度に被害額は5.7億円 に達しこれまでに最も高く,翌年の1997年度には低下し たものの,この間に被害戸数と被害棟数は増加した。 1997年度と2004年度は,被害戸数が800戸を超え,被 害棟数は3,000棟に達したが,2004年度の被害額と共済 金は1997年度のおよそ 7 割にとどまった。 こうした年度ごとの被害状況の差には,被災地におけ る気象変化や実際に被災した園芸施設の種類の違いが影 響していると考えられる。1997年度と2004年度を比較
0 20 40 60 80 100 120 140 引受戸数 引受棟数 共済金額 (指数) (年度) 1989 '95 2000 '05 '09 図10 沖縄県における園芸施設共済の引受戸数・棟数,共済金額の指数の推移 注)1995年を100とする指数。 資料)図9 に同じ。 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 被害戸数 被害棟数 被害額 共済金 (十万円) (戸・棟) (年度) 1989 '95 2000 '05 '09 被 害 戸数 ・ 被 害 棟数 被 害 額 ・ 共済金 図11 沖縄県における園芸施設共済の被害戸数・棟数・額,共済金の推移 資料)図9 に同じ。 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 戸数被害率 棟数被害率 金額被害率 (%) (%) 戸 数 被 害 率 ・ 棟 数 被 害 率 (年度) 金 額 被 害 率 1989 '95 2000 '05 '09 図12 沖縄県における園芸施設共済の戸数・棟数・金額被害率の推移 注)経過戸数・棟数・金額による。 資料)図9 に同じ。 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 1989 '95 2000 '05 '09 引受戸数 引受棟数 共済金額 (戸・棟・百万円) (年度) 図9 沖縄県における園芸施設共済の引受戸数・棟数,共済金額の推移 資料)沖縄県農業共済組合連合会『通常総会議案』(各年度)より作成。 (年度) (年度) (年度) (年度)
合が高くなっている。また,1997年度と比べて2004年 度はⅥ類の割合がいずれも上昇している。これは,沖縄 県で2000年前後から「平張施設」と呼ばれる農作物被害 防止施設が補助事業を通じて多数導入されてきた影響で ある46)。平張施設は強風への耐性を有する園芸施設とい うよりも,被覆材をネットにして防虫の機能を備えると ともに,強風を軽減する減災の構造になっている。 園芸施設の種類ごとの被害が全体に占める割合をみる と,被害戸数率と被害棟数率は,引受戸数率と引受棟数 率とに比較的近い数値を示している1996,1997年度と, 両者に大きな開きがある1991,2004年度とに分けること ができる。とくに後者について,1991年度は,プラス チックハウスⅡ類の引受数率に対する被害数率が低い一 方で,耐風性を有するⅣ類の引受数率に対する被害数率 が高かった。一方,2004年度は,Ⅱ類の引受数率に対す る被害数率が高い一方で,共済引受の割合が上昇したⅥ 類の引受数率に対する被害数率は低く,平張施設の効果 が表れている。共済金率は,Ⅱ類で被害棟数率よりも低 く,この4ヵ年では38.1%から63.2%の間にあり,全国 と比較すると低い年度がみられる。しかし,共済金率は いずれの年度においても共済金額率を上回っており,被 害状況を金額でみれば,Ⅱ類の被害が相対的に際立って おり,全国的な傾向とほぼ同様といえる。 被害状況を被害率からみると,この4ヵ年で戸数,棟 数,金額の各被害率が最も高い数値を示したのがプラス チックハウスⅢ類であった。Ⅱ類とⅣ類も戸数被害率と 棟数被害率で100%を超え,Ⅱ類では金額被害率が20% を超える年度があるなど,甚大な被害があったことを示 している。Ⅲ類の被害率の高さは,引受戸数率や引受棟 があるとはいえ,沖縄県のように台風常襲地ではこれが 共済加入を進める動機にはなり難いと考えられる。 こうした共済加入や園芸施設被害の変動は,沖縄県で 園芸施設の建設が促進され,その設置実面積が拡大して きた点と深い関連がある。沖縄県における園芸施設の設 置実面積は,ビニルハウスを中心に1980年代から1990 年代まで拡大傾向にあった (図13)。同県では1980年代 以降に国や県の補助事業を活用して,野菜,花き,果樹 の園芸施設の建設が進み,各地に産地が形成されてき た。その過程で園芸施設共済が導入され,共済加入者が 増加してきた。ただ,沖縄県で園芸施設共済事業が開始 された1989年度の時点では,園芸施設の設置実面積が すでに600haを超えていた。統計値が連続していない雨 よけ栽培施設面積を加えたとしても,当時,園芸施設の 設置実面積はピーク時のおよそ5 割に達しており,全国 の経緯と同様に共済事業が安定的に運営を見込めるよう になった段階で開始されたとみなすことができる。 3-3 沖縄県の園芸施設区分別の被害状況 表4 には,沖縄県における園芸施設区分別の共済引受 状況と被害状況について44),4ヵ年を例に示している。 沖縄県では,共済を引受けているガラス室は公表値とし てはなく,プラスチックハウスの中でもⅡ類もしくはⅣ 類を主としてきた。これは,亜熱帯性の気候や設備投資 による採算性,被災の可能性の高さと,被災後の撤去作 業と原状回復の困難さを考慮すると,ガラス室が必ずし も最適ではないからである45)。1990年代から2000年代 に入り,引受戸数率,引受棟数率,共済金額率のいずれ もプラスチックハウスⅡ~Ⅳ類が低下し,Ⅴ~Ⅶ類の割 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1973 '75 '77 '79 '81 '83 '85 '87 '89 '91 '93 '95 '97 '99 2001 '03 '05 '07 '09 ガラス室 ハウス 雨よけ栽培 (年) (ha) 図13 沖縄県における園芸用施設種類別の設置実面積の推移 注)前年の7月1日から当該年 6月30日までの数値を表す。 資料)農林水産省『園芸用ガラス室・ハウス等の設置状況』(各年次),同『園芸用施設及び農業用廃 プラスチックに関する調査』(各年次)より作成。
園芸施設共済における被害の程度は,共済の引受を左 右する共済掛金率にも影響を受けている47)。共済掛金は 共済掛金率によって決まり,共済掛金率は農林水産大臣 が概ね過去20年間における施設区分・種類別・地域ご との被害率を基礎として定める基準共済掛金率を下らな い範囲内で,各組合が共済規程等で設定している48)。基 準共済掛金率は通常3年ごとに改定され,共済掛金率の 高さは当該組合管内で被害率が過去においておおよそ高 く推移してきたことを表している。園芸施設区分別で掛 金率は異なっており,たとえばガラス室は高い耐風性を 備えているため掛金率は低く,一方,プラスチックハウ スは耐候性を考慮してその形態ごとに詳細に基準が定め られている。 図15は,園芸施設基準共済掛金率の変化について,プ ラスチックハウスⅡ類の「施設内作物有・事故除外無・ 撤去費用無・特定園芸施設及び附帯施設に係るもの」を 例として,都道府県別および沖縄県を農業共済組合別に 示したものである。これによると,1989年度から2009 数率が低いことから,一部の組合員や園芸施設が集中し て被害を受けている状況を表している。2004年度におけ るⅥ類の共済引受に対する被害率は,他の主要な園芸施 設に比べて低くなっており,ここでもⅥ類の平張施設の 効果を認めることができる。 沖縄県では全国と比較して園芸施設被害が高い割合で 発生しており,年度ごとと園芸施設の種類ごとに差異も みられる。こうした被害率の高さによって,共済事業自 体も影響を受けている。図14によると,同県で園芸施設 共済が発足して以降の21年間で,支払共済金が共済掛 金を上回った年度は,農家負担金のみでは18ヵ年あ り,農家負担金に国庫負担金を加えても13ヵ年に上っ ている。とりわけ1991,1993,1996年度は,支払共済金 が共済掛金の3 倍以上に達した。これらの点は,農業共 済組織としての県連合会と共済組合が事業の運営上大き な課題を抱えてきたことを示している。その一方で 2005年度以降は,支払共済金が共済掛金を下回ってきて いる点も特筆される。 表4 沖縄県における特定園芸施設別の共済の引受と被害 年度 特定園芸 施設区分 引受 戸数率 引受 棟数率 共済 金額率 被害 戸数率 被害 棟数率 共済金率 戸数 被害率 棟数 被害率 金額 被害率 1991 プラス チック ハウス Ⅱ類 61.9 82.1 33.3 54.2 58.6 38.1 59.4 23.1 7.7 Ⅲ類 5.1 2.7 2.6 10.9 9.5 11.0 144.1 115.2 28.1 Ⅳ類 33.0 15.2 64.0 34.9 32.0 50.9 71.7 68.3 5.4 Ⅴ類 ― ― ― ― ― ― ― ― ― 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 67.8 32.4 6.8 1996 プラス チック ハウス Ⅱ類 53.6 80.1 28.1 59.3 76.9 60.9 101.4 66.5 21.4 Ⅲ類 4.0 1.4 1.6 4.3 2.1 2.7 97.4 107.1 17.1 Ⅳ類 40.6 17.4 68.3 35.6 20.2 36.1 80.4 80.2 5.2 Ⅴ類 0.1 0.0 0.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 Ⅵ類 1.7 1.1 1.6 0.8 0.8 0.3 43.8 54.5 1.9 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 91.6 69.3 9.9 1997 プラス チック ハウス Ⅱ類 53.0 78.9 27.1 58.2 79.8 63.2 125.4 95.6 21.8 Ⅲ類 3.7 1.2 1.5 4.0 1.6 2.4 124.1 121.4 14.8 Ⅳ類 41.5 19.0 69.2 36.7 17.9 33.4 101.2 88.8 4.5 Ⅴ類 ― ― ― ― ― ― ― ― ― Ⅵ類 1.8 0.9 2.2 1.1 0.7 1.0 71.4 77.4 4.4 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 114.3 94.4 9.3 2004 プラス チック ハウス Ⅱ類 36.7 66.7 17.2 53.1 79.4 53.4 108.4 97.9 19.9 Ⅲ類 2.7 1.4 1.1 4.5 2.1 2.4 126.9 123.2 13.7 Ⅳ類甲 35.4 18.4 55.9 33.1 15.2 39.6 70.3 67.8 4.6 Ⅳ類乙 0.7 0.5 3.4 0.1 0.1 0.0 14.3 9.5 0.1 Ⅴ類 3.2 1.9 7.5 1.7 0.5 0.4 38.7 19.5 0.4 Ⅵ類 19.5 9.2 13.9 7.2 2.7 4.1 27.5 24.3 1.9 Ⅶ類 1.8 1.8 0.9 0.3 0.1 0.0 11.8 2.8 0.2 合 計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 75.0 82.3 6.4 注)各特定園芸施設が各項目の全体に占める割合 (%) を表す。 戸数・棟数・金額被害率は特定園芸施設ごとの延べ数による被害率 (%) を表す。 ガラス室 (Ⅰ類,Ⅱ類) およびプラスチックハウスⅠ類を除いた集計。―は引受なし。 資料)沖縄県農業共済組合連合会『通常総会議案』(各年度)より作成。