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JAXA Repository AIREX: 有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価

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宇宙航空研究開発機構研究開発資料

JAXA Research and Development Memorandum

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の

冷却特性評価

Finite element analysis on cooling characteristics of

refrigeration system for biaxial mechanical testing

熊澤 寿,笠原 利行

Hisashi Kumazawa, Toshiyuki Kasahara

2017年2月

宇宙航空研究開発機構

Japan Aerospace Exploration Agency

ISSN 1349-1121 JAXA-RM-16-005

(2)

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価

熊澤

寿

*1

,

笠原

利行

*1

Finite element analysis on cooling characteristics of refrigeration

system for biaxial mechanical testing

Hisashi Kumazawa

*1

, Toshiyuki Kasahara

*1

Abstract

A cryogenic testing system with a cryostat and a refrigerator for a biaxial testing machine was

developed to evaluate mechanical properties of composite materials under biaxial mechanical and

cryogenic thermal loads. In this report, cooling characteristics of the cryogenic testing system were

numerically evaluated with heat conduction analysis by the finite element method. Simplified

numerical calculation without temperature dependency of material thermal constants

approximately simulated the cooling characteristics of the cryogenic testing system compared with

the measured temperature data. Effects of heat generation by strain gauges and testing material

(composite, aluminum alloy, or stainless steel) on the cooling characteristics were evaluated for the

purpose of future cryogenic testing designs.

二軸荷重と極低温熱荷重が加わる複合材料の力学的特性を評価するために、二軸試験用冷凍機式極低温

試験システムを開発した。この報告では、極低温試験システムの冷却特性を有限要素法による伝熱解析

を用いて評価した。測定した温度データとの比較により、材料熱定数の温度依存性を含まない簡易な解

析を用いて極低温試験システムの冷却特性を近似的に計算することができることが分かった。今後の極

低温二軸荷重試験の設計のために、ひずみゲージの発熱や試験材料が冷却特性に及ぼす影響も評価を行

った。

*

平成28年 12月6日受付 (Received December 6, 2016) *1

 航空技術部門 構造 ・ 複合材技術研究ユニット(Structures and Advanced Composite Research Unit, Aeronautical Technology Directorate)

(3)

1

はじめに

使い切りロケットの高性能化や再使用型ロケットの実現には、機体重量の大幅な低減が必要であり、

構造重量の大きな割合を占める極低温タンクの軽量化のために、複合材料化が検討されている。しかし、

極低温環境に曝される構造に複合材料を適用する場合、極低温環境が及ぼす複合材料への影響を評価す

る必要がある。

米国では1990年代、NASAが再使用型宇宙往還機の無人実験機X-33の開発を進めており、X-33用大型

極低温複合材タンクを開発していたが、液体水素を使用した構造試験時にタンクの破壊が発生した 1,2)

このタンク破壊の原因調査の結果、積層板に発生した樹脂割れが原因であり、タンク構造において強度

だけでなく、推進剤の漏えいを伴う極低温での樹脂割れの特性も重要であることが明らかとなった。

極低温構造の小スケール試験片での極低温負荷環境模擬試験による評価のために、二軸負荷試験用極

低温環境槽の開発を行った 3,4)

。本極低温環境槽では、試験片の冷却に液体窒素などの冷媒ではなく、冷

凍機と冷却板等の伝熱材を用いて試験片評定部を局所的に冷却している。試験片評定部は冷却板により

冷却されているが、試験片端部は負荷のため常温で油圧グリップに接続されており、試験片端部から評

定部まで温度勾配が発生している。複合材料の材料特性に及ぼす極低温の影響を適切に評価するために、

試験片評定部近傍の温度分布を明らかにすることは重要である。また、試験片形状や材料を変更するこ

とによる冷却可能温度への影響評価も今後必要となる。極低温での温度分布や冷却特性に及ぼす試験片

形状や材料の影響評価には、実験的データと数値的解析の組み合わせが有効であると考えられる。

本研究では、有限要素法による極低温冷却特性の基礎的な解析を実施し、数値解析的に二軸試験用極

低温環境槽の冷却特性の評価を行う。また、この解析法を用いて、ひずみ測定用のひずみゲージの発熱、

試験片材質、試験片形状が評定部の温度分布に及ぼす影響を明らかにする。

2

二軸試験用極低温環境槽システムの概要

二軸試験用の極低温環境槽システム 4)

は、二軸試験機と組み合わせて、十字型試験片の評定部に極低温

環境での二軸負荷を加えることを可能とするシステムである。極低温環境槽システムは、図 2.1 に示す

ように環境槽、冷凍機、伝熱部材(伝熱棒、伝熱線、冷却プレート)、圧縮機、排気装置、チラーから構

成される。環境槽内は、試験片評定部を断熱するために、排気装置を用いて高真空に保持される。

環境槽内の試験片評定部は図2.1に示すように上下から 2 枚の冷却プレートで挟まれており、その冷

却プレートは伝熱線等の伝熱部材を介して冷凍機の低温部に熱的に接続されている。極低温環境槽は二

軸試験機の中央部に設置され、十字型試験片の評定部を極低温に冷却する。極低温となっている十字型

試験片の中央評定部は環境槽内にあるが、十字型試験片の腕の端部は環境槽外に露出しており、常温と

なっている。その露出している端部を二軸試験機のアクチュエータに油圧グリップでグリップし、十字

型試験片に二軸負荷を加える。

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005

2

(4)

2

.1

試験

片の冷却と負荷の概要

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 3

(5)

3

冷却解析モデル

解析対象とした CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)十字型試験片の形状を図 3.1(a)に示す。板

厚は 2mm である。また、試験片が短冊型の場合の冷却特性の解析も行った。解析に用いた短冊型試験片

形状を図3.1(b)に示す。座標系は図3.1のように試験片中心からx方向、y方向を定義する。

冷却解析を行うモデルの概要を図3.2に示す。本解析では、CFRP試験片、冷却プレート、伝熱線、冷

却プレートと伝熱線を取り付けている取付板、冷却棒、冷凍機のコールドヘッドをモデル化した。冷却

プレートと伝熱線と冷却棒は銅製であり、取付板はアルミ合金製である。実際の各部材間は圧着端子や

ねじで固定し、接触させている。伝熱線にはアルミ合金製の圧着端子を取り付けており、本解析におい

て圧着端子は板厚 2mm の矩形取付板として近似した。図3.3に十字型試験片、冷却プレート、取付板の

寸法を示す。十字型試験片は中央部80mm×80mmを評定部とする。

試験片は冷却プレートを接触させ、評定部を冷却している。図 3.2 では、冷却プレートと試験片が直

接接触しているが、実際の試験では熱伝達を良くするため、冷却プレートと試験片の間にインジウムシ

ートを挟んでいる。本解析では、試験片と銅製冷却プレートの間の熱伝達係数を推定しているが、その

場合の接触熱抵抗は、間にインジウムシートを挟んでいること意味する。

伝熱線は、上側と下側の冷却プレート角の 4 か所と冷却棒の間を接続している。伝熱線は、複数本の

銅の撚り線であるが、同じ断面積と長さを持つ銅の角柱としてモデル化した。円柱棒である冷却棒は、

同じ断面積と長さを持つ銅の中実円柱としてモデル化した。解析モデルにおける伝熱線と冷却棒の断面

積と長さを表3.1に示す。

図3.4および図 3.5にそれぞれ解析で用いた十字型試験片(冷却プレート、取付板、伝熱線付き)と冷

却棒の冷却解析モデルを示す。実際の伝熱線は柔軟で冷却プレートに取り付けていない伝熱線の一端は、

試験片下部にある冷却棒に接続している(図3.2)。図3.4において伝熱線は直線状であり幾何学的に伝熱

棒には接触していないが、8本の伝熱棒は図3.5の伝熱棒上部の8つの突起に熱的に接続している。試験

片腕部の先端はグリップに接続していることを考慮して、図3.3に示すように先端長さ70mmの境界条件

として常温(25℃)とした。また、二軸試験機用極低温環境槽は短冊型試験片を用いた単軸試験の実施も

予定しているため、CFRP短冊型試験片の解析も行った。短冊型試験片の冷却解析モデルを図3.6に示す。

図3.6において、試験片の形状以外は十字型試験片のモデルと同一条件として、計算を行った。

冷却解析における銅、アルミ合金、CFRP、ステンレス鋼の熱物性値を表 3.2 に示す。金属材料の熱伝

導率に異方性はないが、CFRPは炭素繊維と平行な面内方向と、垂直の面外方向で熱伝導率に違いがある。

冷却棒下部はコールドヘッドで吸熱される。吸熱能力(冷却能力)は、冷凍機の仕様

4)

に基づいて図3.7

のような温度依存性を設定した。冷凍機の仕様 4)

では、180K 以下の冷却能力しか表示されておらず、図

3.7において180K以上は110Kから180Kの値を常温まで外挿した。

全ての構成物の初期温度を25℃とし、解析では無限遠での温度を25℃とし、輻射を考慮した。ただし、

実験では下部冷却プレートは、環境槽壁面からの輻射をほとんど受けないので、下部の冷却プレートの

み輻射を受けないと仮定した。解析にはエムエスシーソフトウェア製Marc 2015を用いて計算した。

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005

4

(6)

表 解析モデルにおける伝熱線と冷却棒の断面積と長さ

断面積 長さ

上側伝熱線 下側伝熱線

冷却棒

図3.1試験片(板厚 2、単位:mm)

図3.2冷却解析モデル概要

冷却プレート

取付板

コールド

ヘッド

伝熱線

常温

試験片

冷却棒

常温

極低温

(a)十字型試験片 (b)短冊型試験片

表3.1解析モデルにおける伝熱線と冷却棒の断面積と長さ

断面積 長さ

上側伝熱線 80 120

下側伝熱線 60 120

冷却棒 4069 110

(mm2

) (mm)

図 試験片 板厚 、単位

図 冷却解析モデル概要

冷却プレート

取付板

コールド

ヘッド

伝熱線

常温

試験片

冷却棒

常温

極低温

十字型試験片 短冊型試験片

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 5

(7)

図3.3 CFRP試験片に設置した冷却プレートと取付板(単位:mm)

図3.4 冷却プレートと伝熱線を取り付けたCFRP十字型試験片の冷却解析モデル

試験片

冷却プレート

伝熱線

取付板

常 温

常 温

常 温

常 温

1

0

0

70

8

0

2

400

10

冷 却 プ レ ー ト

取 付 板

CFRP

試 験 片

100

5

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005

6

(8)

図 試験片に設置した冷却プレートと取付板単位

図 冷却プレートと伝熱線を取り付けた 十字型試験片の冷却解析モデル

試験片

冷却プレート

伝熱線

取付板

常 温

常 温

常 温

常 温

冷 却 プ レ ー ト

取 付 板

試 験 片

図3.5 冷却棒の冷却解析モデル

図3.6 冷却プレートと伝熱線を取り付けたCFRP短冊型試験片の冷却解析モデル

取付板

試験片

冷却プレート

伝熱線

伝熱棒

伝熱線を熱的に接続

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 7

(9)

図3.7冷凍機冷却能力の温度依存性

表 熱物性値

銅 アルミ合金 ステンレス鋼

熱伝導率 熱伝導率 比熱 密度 ρ 輻射率 ε

参考文献 比熱は純アルミの値

参考文献 参考文献 式を参考に設定

参考文献

参考文献

熱伝達係数の評価

接触による熱伝達係数は、接触圧の関数であるため、実験結果をもとに銅 銅間、銅 アルミ合金間、

銅 間の熱伝達係数を定める。極低温試験においては、それらの接触はねじにより接触させている。

銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を変化させたときの冷却曲線を実験結果と比較し、

本数値解析における銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を定めた。参考文献

を参考として、銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数の初期設定の目安をそれぞれ

とした。 0 50 100 150 200 250 300 350

0 50 100 150 200 250 300 350

(W

)

温度(K)

図 冷凍機冷却能力の温度依存性

表 熱物性値

銅 アルミ合金 ステンレス鋼

熱伝導率 熱伝導率 比熱 密度 ρ 輻射率 ε

参考文献 比熱は純アルミの値

参考文献 参考文献 式を参考に設定

参考文献

参考文献

4

熱伝達係数の評価

接触による熱伝達係数は、接触圧の関数であるため、実験結果をもとに銅-銅間、銅-アルミ合金間、

銅-CFRP 間の熱伝達係数を定める。極低温試験においては、それらの接触はねじにより接触させている。

銅-銅間、銅-アルミ合金間、銅-CFRP 間の熱伝達係数を変化させたときの冷却曲線を実験結果と比較し、

本数値解析における銅-銅間、銅-アルミ合金間、銅-CFRP 間の熱伝達係数を定めた。参考文献 10), 11)

を参考として、銅-銅間、銅-アルミ合金間、銅-CFRP間の熱伝達係数の初期設定の目安をそれぞれ10000

W/m2K, 500 W/m2K, 200 W/m2K

とした。

温度

図 冷凍機冷却能力の温度依存性

表3.2 熱物性値

銅 アルミ合金

*1

CFRP*2

ステンレス鋼

*3

熱伝導率 kx, ky(W/mK) 401 120 1.795 16.7 熱伝導率 kz(W/mK) 401 120 0.59 16.7 比熱 C(J/kgK) 379 900.7 980 590 密度 ρ(kg/m

3) 8940 2770 1570 7930

輻射率 ε

*4

0.03 0.02 0.53 0.2

*1:参考文献5) 比熱は純アルミの値(24.3[J/molK]/26.98[g/mol])

*2:参考文献6) pp.648-650, p.664, 参考文献7) p.354, (II.91)式を参考に設定

*3:参考文献8)

*4:参考文献9)

熱伝達係数の評価

接触による熱伝達係数は、接触圧の関数であるため、実験結果をもとに銅 銅間、銅 アルミ合金間、

銅 間の熱伝達係数を定める。極低温試験においては、それらの接触はねじにより接触させている。

銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を変化させたときの冷却曲線を実験結果と比較し、

本数値解析における銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を定めた。参考文献

を参考として、銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数の初期設定の目安をそれぞれ

とした。

温度

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005

8

(10)

図 冷凍機冷却能力の温度依存性

表 熱物性値

銅 アルミ合金 ステンレス鋼

熱伝導率 熱伝導率 比熱 密度 ρ 輻射率 ε

参考文献 比熱は純アルミの値

参考文献 参考文献 式を参考に設定

参考文献

参考文献

熱伝達係数の評価

接触による熱伝達係数は、接触圧の関数であるため、実験結果をもとに銅 銅間、銅 アルミ合金間、

銅 間の熱伝達係数を定める。極低温試験においては、それらの接触はねじにより接触させている。

銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を変化させたときの冷却曲線を実験結果と比較し、

本数値解析における銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を定めた。参考文献

を参考として、銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数の初期設定の目安をそれぞれ

とした。

温度

図 冷凍機冷却能力の温度依存性

表 熱物性値

銅 アルミ合金 ステンレス鋼

熱伝導率 熱伝導率 比熱 密度 ρ 輻射率 ε

参考文献 比熱は純アルミの値

参考文献 参考文献 式を参考に設定

参考文献

参考文献

熱伝達係数の評価

接触による熱伝達係数は、接触圧の関数であるため、実験結果をもとに銅 銅間、銅 アルミ合金間、

銅 間の熱伝達係数を定める。極低温試験においては、それらの接触はねじにより接触させている。

銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を変化させたときの冷却曲線を実験結果と比較し、

本数値解析における銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を定めた。参考文献

を参考として、銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数の初期設定の目安をそれぞれ

とした。

温度

4.1

-CFRP

間の熱伝達係数

銅-アルミ合金間および銅-銅間の熱伝達係数を500W/m

2K

および10000W/m 2K

にそれぞれ固定し、銅-CFRP

間の熱伝達係数を 40W/m

2K, 200W/m2K, 1000W/m2K

とした場合の冷却プレート上面の温度変化の計算結果

と実験の比較を図4.1に示す。銅-CFRP間の熱伝達係数を大きく変えても、変化が少ないことが分かる。

銅-アルミ合金間および銅-銅間の熱伝達係数を2500W/m

2K

および10000W/m 2K

にそれぞれ固定し、同様に

銅-CFRP間の熱伝達係数を変化させた結果を図4.2に示す。銅-アルミ合金間の熱伝達係数を変化させた

場合でも、銅-CFRP間の熱伝達係数の変化が温度履歴に与える影響が少ないことが分かる。

4.2

-

銅間の熱伝達係数

銅-CFRP 間および銅-アルミ合金間の熱伝達係数を200W/m 2K

および 500 W/m 2K

にそれぞれ固定し、銅

-銅間の熱伝達係数を 5000 W/m

2K

、10000 W/m 2K

、20000 W/m 2K

にとした場合の冷却プレート上面の温度変

化の計算結果と実験の比較を図4.3に示す。銅-銅間の熱伝達係数の変化が冷却曲線に与える影響が少な

いことが分かる。銅-CFRP間および銅-アルミ合金間の熱伝達係数を200W/m

2K

および2500 W/m 2K

にそれぞ

れ固定した場合の同様の計算結果を図4.4に示す。図4.4においても銅-銅間の熱伝達係数の変化が冷却

曲線に与える影響が少ないことが分かる。

図4.1 冷却プレート上面温度履歴における銅-CFRP間熱伝達係数の影響(熱伝達係数:銅-アルミ 500

W/m2K,

銅-銅 10000W/m 2K) 0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

時間()

上面温度(実験) 銅-CFRP 40 W/m2K 銅-CFRP 200W/m2K 銅-CFRP 1000W/m2K 銅-アルミ500W/m2K

銅-銅10000W/m2K

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

᫬㛫()

ୖ㠃 ᗘ(ᐇ㦂) 㖡-CFRP 40 W/m2K 㖡-CFRP 200W/m2K 㖡-CFRP 1000W/m2K 㖡-䜰䝹䝭500W/m2K

㖡-㖡10000W/m2K

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 9

(11)

図4.2 冷却プレート上面温度履歴における銅-CFRP間熱伝達係数の影響(熱伝達係数:銅-アルミ 2500

W/m2K,

銅-銅 10000W/m 2K)

図4.3 冷却プレート上面温度履歴における銅-銅間熱伝達係数の影響(熱伝達係数:銅-CFRP 200W/m

2K,

銅-アルミ合金 500W/m 2K) 0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

時間()

上面温度(実験) 銅-CFRP 40 W/m2K 銅-CFRP 200W/m2K 銅-CFRP 1000W/m2K 銅-アルミ2500W/m2K

銅-銅10000W/m2K

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

時間()

上面温度(実験) 銅-銅5000 W/m2K 銅-銅10000W/m2K 銅-銅20000W/m2K 銅-CFRP 200W/m2K

銅-アルミ500W/m2K

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

᫬㛫()

ୖ㠃 ᗘ(ᐇ㦂) 㖡-CFRP 40 W/m2K 㖡-CFRP 200W/m2K 㖡-CFRP 1000W/m2K 㖡-䜰䝹䝭2500W/m2K

㖡-㖡10000W/m2K

᫬㛫 ⛊

ୖ㠃 ᗘ ᐇ㦂 㖡 㖡

㖡 㖡 㖡 㖡 㖡

㖡 䜰䝹䝭

᫬㛫 ⛊

ୖ㠃 ᗘ ᐇ㦂 㖡

㖡 㖡 㖡 䜰䝹䝭 㖡 㖡

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

᫬㛫()

ୖ㠃 ᗘ(ᐇ㦂) 㖡-㖡5000 W/m2K 㖡-㖡10000W/m2K 㖡-㖡20000W/m2K 㖡-CFRP 200W/m2K

㖡-䜰䝹䝭500W/m2K

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005 10

(12)

図 冷却プレート上面温度履歴における銅 間熱伝達係数の影響 熱伝達係数:銅 アルミ

銅 銅

図 冷却プレート上面温度履歴における銅 銅間熱伝達係数の影響 熱伝達係数:銅

銅 アルミ合金

時間秒

上面温度実験

銅 銅アルミ 銅銅

時間秒

上面温度実験

銅銅

銅銅

銅銅 銅

銅アルミ

図4.4 冷却プレート上面温度履歴における銅-銅間熱伝達係数の影響(熱伝達係数:銅-CFRP 200W/m

2K,

銅-アルミ合金 2500W/m 2K)

4.3

-

アルミ間の熱伝達係数

銅-CFRP間および銅-銅間の熱伝達係数を200W/m 2K

および10000 W/m 2K

にそれぞれ固定し、銅-アルミ合

金間の熱伝達係数を500 W/m

2K

から2500 W/m 2K

に変化させた場合の冷却プレート上面の温度変化の計算

結果と実験の比較を図4.5に示す。銅-CFRP間および銅-銅間の場合と違い、銅-アルミ合金間の熱伝達係

数を変えることにより、冷却曲線が大きく変わることが分かった。温度が低下して定常に近くなるまで

の温度低下の傾向は、実験の結果と差があることが分かる。実際の冷却では、材料の熱伝導率や、比熱

が温度の関数であるが、本解析では一定としているので解析と実験で違いが生じたと考えられる。

図4.1から図4.4までを評価して、銅-銅間、銅-CFRP間の熱伝達係数は冷却曲線にほとんど影響を与

えないため、以後の解析においては、銅-銅間、銅-CFRP 間の熱伝達係数を文献より目安として設定した

10000 W/m2K, 200 W/m2K

とする。また、銅-アルミ合金間は図4.5の定常状態の温度より2500 W/m

2K とし

て以後計算を行う。これら設定した熱伝達係数を用いて、極低温環境槽の冷却特性の数値解析的な評価

を行う。

4.4

冷却プレートと

CFRP

の温度

冷却されたCFRP評定部の温度の変化を冷却プレート温度とともに図4.6に示す。CFRPの温度は、中央

(x=0mm, y=0mm)の中央面の温度である。冷却プレートの温度とCFRP評定部の温度はほとんど差が無いこ

とが図4.6より分かる。実験においても、CFRPと冷却プレートの温度差が数度程度に収まっていること

が確認されており、解析においても同様の結果となることが分かった。 0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

時間()

上面温度(実験) 銅-銅5000 W/m2K 銅-銅10000W/m2K 銅-銅20000W/m2K 銅-CFRP 200W/m2K

銅-アルミ2500W/m2K

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

᫬㛫()

ୖ㠃 ᗘ(ᐇ㦂)

㖡-㖡5000 W/m2K

㖡-㖡10000W/m2K

㖡-㖡20000W/m2K

㖡-CFRP 200W/m2K

㖡-䜰䝹䝭2500W/m2K

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 11

(13)

図4.5 冷却プレート上面温度履歴における銅-アルミ合金間熱伝達係数の影響(熱伝達係数:銅-CFRP

200W/m2K,

銅-銅 10000W/m 2K)

図4.6 冷却プレート上面とCFRP中央面温度の時間履歴 (熱伝達係数:銅-CFRP 200W/m

2K,

銅-アルミ合 金2500W/m

2K,

銅-銅 10000W/m 2K) 0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

時間()

上面温度

銅-アルミ500W/m2K 銅-アルミ1000W/m2K 銅-アルミ1500W/m2K 銅-アルミ2000W/m2K 銅-アルミ2500W/m2K 銅-CFRP 200W/m2K 銅-銅10000W/m2K

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

時間()

上面温度(実験) 上面温度(解析)

CFRP中央面温度(解析) 銅-CFRP 200W/m2K

銅-アルミ2500W/m2K 銅-銅10000W/m2K

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

᫬㛫()

ୖ㠃 ᗘ

㖡-䜰䝹䝭500W/m2K 㖡-䜰䝹䝭1000W/m2K

㖡-䜰䝹䝭1500W/m2K

㖡-䜰䝹䝭2000W/m2K

㖡-䜰䝹䝭2500W/m2K

㖡-CFRP 200W/m2K

㖡-㖡10000W/m2K

᫬㛫 ⛊

ୖ㠃 ᗘ ᐇ㦂 ୖ㠃 ᗘ ゎᯒ

୰ኸ㠃 ᗘ ゎᯒ 㖡

㖡 䜰䝹䝭 㖡 㖡

᫬㛫 ⛊

ୖ㠃 ᗘ 㖡 䜰䝹䝭 㖡 䜰䝹䝭

㖡 䜰䝹䝭 㖡 䜰䝹䝭 㖡 䜰䝹䝭 㖡

㖡 㖡

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

᫬㛫()

ୖ㠃 ᗘ(ᐇ㦂)

ୖ㠃 ᗘ(ゎᯒ) CFRP୰ኸ㠃 ᗘ(ゎᯒ)

㖡-CFRP 200W/m2K

㖡-䜰䝹䝭2500W/m2K

㖡-㖡10000W/m2K

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005 12

(14)

5

冷却特性解析結果

5.1

冷却による

CFRP

試験片の温度分布

解析により、CFRP 試験片の評定部から腕部までの温度分布を求めた。図 5.1 に冷却開始1000 秒から

12000秒までの試験片のx軸に沿った温度分布(板厚中央面、y=0mm)を示す。図5.1より外部に露出して

油圧グリップにつかんでいる部分は常温であるが、評定部中心付近は、一定に冷却されていることが分

かる。図 3.3に示すように幅 100mm の冷却プレートを用いているが、評定部近傍で温度が一定になる部

分は、各温度域で中央部 80mm 程度となることが分かる。中央部の十字試験片の腕幅と同じ 80mmの部分

の12000秒後の温度分布を図5.2に示す。図5.2より、試験片評定部80mmの端での温度差は数K程度に

とどまることが分かる。

図5.1 十字型CFRP試験片(板厚中央面, y=0mm)の温度分布(試験片腕部含む)

0 50 100 150 200 250 300 350

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

(K

)

位置x (mm)

1000[sec]

3000[sec]

5000[sec]

12000[sec]

0 50 100 150 200 250 300 350

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

(K

)

఩⨨x (mm)

1000[sec] 3000[sec] 5000[sec] 12000[sec]

[ [

[ \

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 13

(15)

図5.2 十字型CFRP試験片試験片評定部の温度分布(板厚中央面, y=0mm、冷却後12000秒後)

5.2

ひずみゲージの発熱による影響

冷凍機による極低温冷却では、ひずみ測定のためのひずみゲージの発熱による温度上昇が懸念される

ため、解析的にひずみゲージの発熱の影響を確認した。ひずみゲージによるひずみ測定では、図 5.3 に

示す解析モデルように、中央部に矩形の孔をあけた冷却プレートを用い、試験片に矩形の孔部に収まる

ようにひずみゲージを貼付して、ひずみを測定する。穴部の大きさは 20mm×20mm、ひずみゲージの抵抗

は低温用の350Ω、励起電圧 2V である。二軸ゲージを表裏に貼るとし、合計4枚のひずみゲージにより

発生するジュール熱による影響を評価する。ひずみゲージは冷却初期より発熱しているとし、計算を行

った。

図5.4に冷却開始1000秒から12000秒までの試験片評定部から腕部までの温度分布を示す。図5.4で

は中央部に発熱の無い図 5.1 の温度分布と全体的には同様の分布が見られるが、ひずみゲージによる発

熱が発生している部分(x=0mm)においてわずかな温度上昇がみられる。図 5.5 に 12000 秒後の評定部の

80mmでのひずみゲージによる発熱が無い場合とある場合の解析結果を示す。図5.5より、ひずみゲージ

の発熱により評定部中心で5K程度の温度上昇がみられた。この結果より、目標とする温度域によっては、

励起電圧を下げてジュール熱を下げるか、発熱しない光ファイバ式ひずみセンサを用いることなどを検

討する必要があることが分かった。

ひずみゲージが発熱している場合の試験片評定部温度と冷却プレート上面温度の比較を図5.6に示す。

冷却プレートに覆われている試験片評定部の温度は、冷却プレート上部の温度とほぼ同じであることが

分かる。

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

位置x (mm)

12000[sec]

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

఩⨨x (mm)

12000[sec]

[ [

[ \

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005 14

(16)

図5.3 CFRP評定部のひずみゲージによる発熱箇所

図5.4 ひずみゲージによる発熱がある場合の十字型CFRP試験片(板厚中央面, y=0mm)の温度分布(試験片

腕部含む)

0 50 100 150 200 250 300 350

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

(K

)

位置x (mm)

1000[sec]

3000[sec]

5000[sec]

12000[sec] 発熱

試験片

冷却プレート

0 50 100 150 200 250 300 350

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

(K

)

఩⨨x (mm)

1000[sec] 3000[sec] 5000[sec] 12000[sec]

[ [

[ \

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 15

(17)

図5.5 ひずみゲージによる発熱がある場合と無い場合のCFRP試験片評定部の温度分布(板厚中央面、

y=0mm、冷却後12000秒後)

図5.6 ひずみゲージによる発熱がある場合の十字型CFRP試験片評定部(板厚中央面、 y=0mm)と冷却プレ

ート上面の温度分布(冷却後12000秒後)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

位置x (mm)

CFRP試験片評定部

有孔冷却プレート上面温度

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

位置x (mm)

有孔冷却プレートとひずみゲージ

無孔冷却プレート

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

఩⨨x (mm)

CFRPヨ㦂∦ホᐃ㒊 ᭷Ꮝ෭༷䝥䝺䞊䝖ୖ㠃 ᗘ

[ [ [ \   ᗘ ఩⨨

᭷Ꮝ෭༷䝥䝺䞊䝖䛸䜂䛪䜏䝀䞊䝆 ↓Ꮝ෭༷䝥䝺䞊䝖

[ [ [ \   ᗘ ఩⨨

ヨ㦂∦ホᐃ㒊 ᭷Ꮝ෭༷䝥䝺䞊䝖ୖ㠃 ᗘ

[ [ [ \ 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

఩⨨x (mm)

᭷Ꮝ෭༷䝥䝺䞊䝖䛸䜂䛪䜏䝀䞊䝆 ↓Ꮝ෭༷䝥䝺䞊䝖

[ [

[ \

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005 16

(18)

試験片材質の影響

金属試験片に対する冷却試験を行った場合の極低温環境槽の冷却性能を評価するために、試験片材質

を 複合材料からアルミ合金とステンレス鋼に変更した場合の試験片評定部の冷却特性を計算した。

本計算では、評定部材質の熱物性の影響のみを確認するため、表 に示す物性のみを変え、材料間の熱

伝達係数は 複合材料の場合と同じとした。

図 に試験片材料が 複合材料、アルミ合金、ステンレス鋼の場合の試験片評定部中央面

の温度の時間履歴を示した。熱伝導率が高い材料程、外部から熱が流入するため、温度が低下しないこ

とが図より分かる。この結果より、二軸試験機用極低温環境槽を用いた金属材料の極低温評価には、腕

部まで金属材料で製作した場合は、 複合材料程極低温まで冷却できない可能性があることが分かっ

た。本極低温環境槽を用いて金属材料の極低温評価を行う場合は、環境槽外部に出ている腕部を複合材

料などの熱伝導利率が低い材料を使った接合タイプの試験片を用いる必要がある。

図5.7 試験片材質を変えた場合の十字型試験片中央面(x=y=0mm)の温度の時間履歴(材質:CFRP、アルミ

合金、ステンレス鋼)

5.4

短冊型試験片における冷却特性

短冊型試験片における評定部から腕部までの温度分布を計算した。図5.8に冷却開始1000秒から12000

秒までの試験片のx軸に沿った温度分布(板厚中央面、y=0mm)を示す。十字型試験片の場合(図5.1)とお

およそ同様に評定部が冷却されていることが分かる。冷却後 12000 秒後の短冊型試験片と十字型試験片

の評定部のx 方向(短冊型試験片長手方向, y=0mm)温度分布とy方向(短冊型試験片幅方向, x=0mm)温度

分布をそれぞれ図5.9と図5.10に示す。評定部長手方向(x方向)の温度分布を比較すると、短冊型試験

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

時間()

CFRP

アルミ合金

ステンレス鋼

5.3

試験片材質の影響

金属試験片に対する冷却試験を行った場合の極低温環境槽の冷却性能を評価するために、試験片材質

を CFRP 複合材料からアルミ合金とステンレス鋼に変更した場合の試験片評定部の冷却特性を計算した。

本計算では、評定部材質の熱物性の影響のみを確認するため、表3.2に示す物性のみを変え、材料間の熱

伝達係数はCFRP複合材料の場合と同じとした。

図5.7に試験片材料がCFRP複合材料、アルミ合金、ステンレス鋼の場合の試験片評定部中央面(x=y=0mm)

の温度の時間履歴を示した。熱伝導率が高い材料程、外部から熱が流入するため、温度が低下しないこ

とが図より分かる。この結果より、二軸試験機用極低温環境槽を用いた金属材料の極低温評価には、腕

部まで金属材料で製作した場合は、CFRP 複合材料程極低温まで冷却できない可能性があることが分かっ

た。本極低温環境槽を用いて金属材料の極低温評価を行う場合は、環境槽外部に出ている腕部を複合材

料などの熱伝導率が低い材料を使った接合タイプの試験片を用いる必要がある。

図 試験片材質を変えた場合の十字型試験片中央面 の温度の時間履歴 材質: 、アルミ

合金、ステンレス鋼

短冊型試験片における冷却特性

短冊型試験片における評定部から腕部までの温度分布を計算した。図 に冷却開始 秒から

秒までの試験片の 軸に沿った温度分布 板厚中央面、 を示す。十字型試験片の場合 図 とお

およそ同様に評定部が冷却されていることが分かる。冷却後 秒後の短冊型試験片と十字型試験片

の評定部の 方向 短冊型試験片長手方向 温度分布と 方向 短冊型試験片幅方向 温度

分布をそれぞれ図 と図 に示す。評定部長手方向 方向 の温度分布を比較すると、短冊型試験

時間秒

アルミ合金

ステンレス鋼

0 50 100 150 200 250 300 350

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

(K

)

᫬㛫()

CFRP

䜰䝹䝭ྜ㔠

䝇䝔䞁䝺䝇㗰

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 17

(19)

片の温度が約 ほど低いことが分かる。十字型試験片では外部の常温部に接続されている腕が 本であ

るが、短冊型試験片では 本となり、外部からの熱の流入が短冊型試験片では低いため、冷却温度も短

冊型試験片で低くなった。図 の 付近では、中央部より温度がわずかに高くなっている。図

の 付近は冷却プレートの端部に近く、腕から流入する熱のため温度がわずかに上昇してい

ると考えられる。短冊型試験片の試験片幅方向の温度分布 図 では、冷却プレートの端部に近い

付近で温度上昇がみられなかった。短冊型試験片の試験片幅方向の 付近では、自由端と

なっており熱の流入が無いため、幅方向の温度はほぼ一定となったと考えられる。

図5.8 短冊型CFRP試験片(板厚中央面、y=0mm)の温度分布(試験片腕部含む)

0 50 100 150 200 250 300 350

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

(K

)

位置x (mm)

1000[sec]

3000[sec]

5000[sec]

12000[sec]

x=-200 x=200

x y

片の温度が約8Kほど低いことが分かる。十字型試験片では外部の常温部に接続されている腕が4本であ

るが、短冊型試験片では 2 本となり、外部からの熱の流入が短冊型試験片では低いため、冷却温度も短

冊型試験片で低くなった。図5.9のx=±40mm付近では、中央部より温度がわずかに高くなっている。図

5.9のx=±40mm付近は冷却プレートの端部に近く、腕から流入する熱のため温度がわずかに上昇してい

ると考えられる。短冊型試験片の試験片幅方向の温度分布(図5.10)では、冷却プレートの端部に近いy=

±40mm付近で温度上昇がみられなかった。短冊型試験片の試験片幅方向のy=±40mm付近では、自由端と

なっており熱の流入が無いため、幅方向の温度はほぼ一定となったと考えられる。

図 短冊型 試験片 板厚中央面、 の温度分布 試験片腕部含む

位置

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005 18

(20)

図5.9 短冊型試験片と十字型試験片のCFRP試験片の温度分布(短冊型試験片長手方向、板厚中央面、y=0mm、 冷却後12000秒後)

図5.10 短冊型試験片と十字型試験片のCFRP試験片の温度分布(短冊型試験片幅方向、板厚中央面、x=0mm、 冷却後12000秒後)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

位置y (mm)

短冊型試験片(12000秒)

十字型試験片(12000秒)

x y y=40 y=-40 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

位置x (mm)

短冊型試験片(12000秒)

十字型試験片(12000秒)

x=-40 x=40

x y

片の温度が約 ほど低いことが分かる。十字型試験片では外部の常温部に接続されている腕が 本であ

るが、短冊型試験片では 本となり、外部からの熱の流入が短冊型試験片では低いため、冷却温度も短

冊型試験片で低くなった。図 の 付近では、中央部より温度がわずかに高くなっている。図

の 付近は冷却プレートの端部に近く、腕から流入する熱のため温度がわずかに上昇してい

ると考えられる。短冊型試験片の試験片幅方向の温度分布 図 では、冷却プレートの端部に近い

付近で温度上昇がみられなかった。短冊型試験片の試験片幅方向の 付近では、自由端と

なっており熱の流入が無いため、幅方向の温度はほぼ一定となったと考えられる。

図 短冊型 試験片 板厚中央面、 の温度分布 試験片腕部含む

位置

఩⨨

▷෉ᆺヨ㦂∦ ⛊

༑Ꮠᆺヨ㦂∦ ⛊

[ \ \ \ [ \ \ \ 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

఩⨨x (mm)

▷෉ᆺヨ㦂∦(12000⛊)

༑Ꮠᆺヨ㦂∦(12000⛊)

[ [ [ \ [ [ [ \ 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

(K

)

఩⨨y (mm)

▷෉ᆺヨ㦂∦(12000⛊)

༑Ꮠᆺヨ㦂∦(12000⛊)

[ \ \ \ [ \ \ \   ᗘ ఩⨨

▷෉ᆺヨ㦂∦ ⛊

༑Ꮠᆺヨ㦂∦ ⛊

[ [ [ \ [ [ [ \

有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 19

(21)

6

おわりに

本研究では、有限要素法を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性の基礎的な解析を実施し、数値

解析的に極低温冷却特性の評価を行った。実験データをもとに熱伝達係数を求め、それらの熱伝達係数

と文献から設定した熱物性値を用いて、試験片上の温度分布、ひずみゲージの発熱による影響、試験片

材質の影響、試験片形状による影響を明らかにした。今後、極低温試験における材料や試験片形状の影

響を考慮した試験片の設計や、ひずみゲージの発熱を考慮したひずみ計測等の設定を行う上で、本報告

における解析結果は重要なデータとなる。

参考文献

1) Richard W. Powell, Mary Kae Lockwood and Stephen A. Cook, The Road from the NASA

Access-to-Space Study to a Reusable Launch Vehicle, 49th International Astronautical Congress,

Melbourne, Australia, IAF-98-V.4.02, Sept 28-Oct 2,1998.

2) Marshall Space Flight Center/NASA, Final Report of the X-33 Liquid Hydrogen Tank Test

Investigation Team, May 2000.

3) 熊澤寿, 高戸谷健, 極低温環境力学特性用試験設備の開発(その1:単軸力学特性試験), 宇宙航空研究

開発機構研究開発資料, JAXA-RM-13-014, 2014.

4) 熊澤寿, 高戸谷健, 極低温環境力学特性用試験設備の開発(その2:二軸力学特性試験), 宇宙航空研究

開発機構研究開発資料, JAXA-RM-15-005, 2016.

5) アルミ合金の物理的性質, http://www.alumi-world.jp/files/pdf/chishiki_03seishitsu.pdf.

6) 複合材料活用辞典, 日本複合材料学会複合材料活用事典編集委員会, 産業調査会事典出版センター,

初版1刷, 2001.

7) 複合材料ハンドブック, 日本複合材料学会編, 日刊工業新聞社, 初版1刷, 1989.

8) ステンレス鋼の特性・性能, http://www.morimatsu.jp/data/stainless.html.

9) 放射率表, http://www.raytekjapan.co.jp/Raytek/ja-r0/IREducation/EmissivityTableMetals.htm.

10) 熱設計ハンドブック, 1.1章熱伝導, 朝倉書店, 第2刷, 1997.

11) M. RHOADES, “Thermal contact conductance between aligned, unidirectional carbon/epoxy

resin composites under vacuum conditions”, AIAA paper 91-0379, 1991.

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-005 20

(22)

発 行

発 行 日

電 子 出 版 制 作

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 〒182-8522 東京都調布市深大寺東町7-44-1 URL: http://www.jaxa.jp/

平成29年2月10日 松枝印刷株式会社

©2017 JAXA

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有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価

Finite element analysis on cooling characteristics of refrigeration system for biaxial mechanical testing

宇宙航空研究開発機構研究開発資料 

JAXA-RM-16-005

JAXA Research and Development Memorandum

(23)

表 解析モデルにおける伝熱線と冷却棒の断面積と長さ 断面積 長さ 上側伝熱線 下側伝熱線 冷却棒 図 3.1 試験片 ( 板厚   2 、単位 :mm)  図 3.2 冷却解析モデル概要 冷却プレート取付板コールドヘッド伝熱線 常温試験片冷却棒常温極低温(a)十字型試験片(b) 短冊型試験片表3.1解析モデルにおける伝熱線と冷却棒の断面積と長さ断面積長さ上側伝熱線80 120 下側伝熱線 60 120 冷却棒4069 110 (mm2)  (mm) 図試験片板厚、単位図冷却解析モデル概要冷却プレート取付板コ
図 3.3 CFRP 試験片に設置した冷却プレートと取付板 ( 単位 :mm)  図 3.4  冷却プレートと伝熱線を取り付けた CFRP 十字型試験片の冷却解析モデル試験片冷却プレート伝熱線取付板常 温常 温常 温常 温1007080240010冷 却 プ レ ー ト取 付 板CFRP試 験 片1005宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-16-0056
図 試験片に設置した冷却プレートと取付板 単位 図 冷却プレートと伝熱線を取り付けた 十字型試験片の冷却解析モデル試験片冷却プレート伝熱線取付板常 温常 温常 温常 温冷 却 プ レ ー ト取 付 板試 験 片 図 3.5 冷却棒の冷却解析モデル図3.6 冷却プレートと伝熱線を取り付けたCFRP 短冊型試験片の冷却解析モデル取付板試験片冷却プレート伝熱線伝熱棒伝熱線を熱的に接続有限要素解析を用いた二軸試験用極低温環境槽の冷却特性評価 7
図 3.7 冷凍機冷却能力の温度依存性 表 熱物性値 銅 アルミ合金 ステンレス鋼 熱伝導率 熱伝導率 比熱 密度 ρ 輻射率 ε 参考文献 比熱は純アルミの値 参考文献 参考文献 式を参考に設定 参考文献 参考文献 熱伝達係数の評価 接触による熱伝達係数は、接触圧の関数であるため、実験結果をもとに銅 銅間、銅 アルミ合金間、 銅 間の熱伝達係数を定める。極低温試験においては、それらの接触はねじにより接触させている。 銅 銅間、銅 アルミ合金間、銅 間の熱伝達係数を変化させたときの冷却曲線を実験結果と比較し
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参照

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