空
海
に
お
け
る
即
身
成
佛
思
想
の
展、
開
勝
又
俊
教
一 室 海 が 印 身 成 佛 義 一 巻 を 著 し て 印 身 成 佛 思 想 を 強 調 し た こ と は 今 更 論 究 す る を 要 し な い こ と で あ る が、 し か し 室 海 の 印 身 成 佛 思 想 は 必 ず し も 印 身 成 佛 義 を. 通 し て の み 考 え ら れ る の で は な く、 室 海 の 生 涯 に お け る 多 く の 著 作 の 中 に 随 虜 に 見 ら れ る の で あ り、 そ れ ら の 著 作 を 通 し て み る と き、 室 海 の 印 身 成 佛 思 想 に は 中 國 に お け る 學 修 の 型 態 の 他 に、 自 ら の 思 索 に よ る 思 想 の 組 織 化 が あ り、 獲 展 が あ つ た と 考 え ら れ る。 そ し て こ の こ と は、 最 澄 が 守 護 國 界 章 や 決 椹 實 論 や 法 華 秀 句 の 中 で、 歴 劫 成 佛 思 想 に 封 し て 大 直 道 思 想 を 強 調 し な が ら、 経 典 に お け る 思 想 的 根 擦 を 示 す の み で、 自 ら の 思 想 の 組 織 化 や 獲 展 が 認 め ら れ な い の と 封 比 し て 大 い に 注 目 す べ き こ と で あ ろ う 。 室 海 は 出 家 後 間 も な く 三 論 ・ 法 相 ・ 華 嚴 な ど を 中 心 と す る 南 都 佛 敏 を 研 鐙 し た の で あ り、 そ の 學 問 的 傾 向 は 二 十 四 歳 の と き に 著 し た 三 教 指 鋸 に よ つ て 窺 う こ と が で き る。 久 米 寺 で 大 日 経 を 議 見 し て よ り 恐 ら く 大 日 経 を 中 心 と す る 密. 教 の 研 究 に 心 を 傾 倒 し た と 考 え ら れ る が 隅 し か し そ の 密 敏 思 想、 と く に 印 身 成 佛 思 想 に ど の 程 度 關 心 を も つ た か 明 ら か で は な い。 と こ ろ が 三 十 一 歳 の と き 入 唐 し、 そ の 翌 年 六 月 以 後 恵 果 に つ い て 密 敢 を 學 ぶ に 至 つ て、 印 身 成 佛 思 想 に 深 い 關 心 を 示 す よ う に な つ た。 そ れ は 密 敏 経 典 の 中 核 を な す 思 想 が 印 身 成 佛 思 想 で あ つ た か ら で あ る が、 ま た こ れ を と く に 強 調 し た 中 國 の 密 敢 弘 通 者 の 思 想 活 動 の 影 響 に よ る 鮎 も 大 き い と い わ ね ば な ら な い。 室 海 は 廣 付 法 傳 の 中 に、 在 唐 中 直 接 間 接 に ふ れ た 密 教 學 者 た ち の 思 想 を 紹 介 し て い る が、 そ の 中 ま ず 不 室 の 表 答 に 示 さ れ た 即 身 成 佛 思 想 を あ げ て、 其 所 レ 課 金 剛 頂 喩 伽 法 門 是 成 佛 速 疾 之 路。 其 修 行 者 必 能 頓 超 二 凡 境 一達 二 干 彼 岸 鯨 部 眞 言 諸 佛 方 便。 其 徒 不 レ 一。 と い う。 こ れ は 不 室 が 金 剛 頂 部 の 経 典 に 説 く 思 想 は 成 佛 速 疾 室 海 に お け る 印 身 成 佛 思 想 の 展 開 ( 勝 又 ) 四 五室 海 に お け る 印 身 成 佛 思 想 の 展 開 ( 勝 又 ) 四 六 の 路 で あ る こ と を 強 調 し て い た こ と を 傳 え る も の で あ る。 ま た 嚴 郵 が 撰 し た 不 室 の 碑 銘 並 び に 序 に は、 稽 夫 眞 言 字 義 之 憲 度、 灌 頂 升 壇 之 軌 述、 則 時 成 佛 之 速、 慮 聲 儲 祉 之 妙、 天 麗 且 彌、 地 普 而 深。 固 非 三 末 學 所 二能 詳 一也。 と 述 べ て い る が、 こ れ に よ つ て 眞 言 密 敏 は と く に 即 時 成 佛、 速 疾 成 佛 の 思 想 を 強 調 し て い る こ と が、 こ の 撰 者 を 初 め 一 般 の 人 々 に 知 ら れ て い た こ と が 推 知 さ れ る。 つ い で 恵 果 の 弟 子 呉 懸 が 纂 し た ﹁ 恵 果 阿 閨 梨 行 状 ﹂ に は、 恵 果 の 言 葉 と し て、 常 謂 二門 人 一 日、 金 剛 界 大 悲 胎 藏 爾 部 大 教 者 諸 佛 秘 藏 印 身 成 佛 之 路 也。 普 願 流 二 傳 法 界 一度 二 脱 有 情 の 一 文 を か か げ、 恵 果 が い か に 即 身 成 佛 思 想 を 普 及 し よ う と し て い た か を 傳 え て い る。 こ の 恵 果 の 言 葉 は 室 海 も ま た 感 銘 深 く 聞 い て い た の で あ つ て、 室 海 の 撰 し た 恵 果 阿 閣 梨 の 碑 文 の 中 に も、 常 告 二 門 徒 一日、 人 之 貴 者 不 レ 過 二 國 王 法 之 最 者 不 レ 如 二 密 藏 策 二 牛 羊 一而 趣 レ道 久 而 始 到、 駕 二神 通 一以 蹟 渉 不 レ 勢 而 至、 諸 乗 與 二密 藏 一 山豆 得 二 同 日 而 論 一乎。 と 傳 え て い る。 こ れ ら に よ つ て す で に 不 室 ・ 恵 果 が 密 教 の 根 本 的 思 想 は 師 身 成 佛 を 強 調 す る 黙 に あ る こ と を 示 し て い た の で あ り、 室 海 は 入 唐 し て こ の 思 想 に ふ れ て 深 い 感 銘 を う け た こ と が 推 知 さ れ る。 の み な ら ず こ の 思 想 を い ち 早 く わ が 國 に 傳 え る こ と が 自 ら、 の 重 大 な 使 命 で あ る と 考 え た よ う で あ る。 こ の こ と は 蹄 朝 早 々 に 撰 し た 御 請 來 目 録 の 中 に、 幸 頼 二國 家 之 大 造 大 師 之 慈 悲 一學 二 爾 部 之 大 法 一習 二諸 尊 之 喩 伽 斯 法 也 則 諸 佛 之 肝 心 成 佛 之 径 路。 と い い、 ま た 夫 顯 教 則 談 二 三 大 之 遠 劫 密 藏 則 期 二 十 六 之 大 生 遅 速 勝 劣 猫 如 二 紳 通 蹟 騙 仰 善 之 客 庶 曉 二 其 趣 一。 教 之 優 劣、 法 之 濫 筋 如 二 金 剛 薩 唾 五 秘 密 儀 軌、 及 大 辮 正 三 藏 表 答 等 中 廣 説 ℃ と い い、 さ ら に、 修 レ 定 多 途 有 レ 遅 有 レ 速。 翫 一二 心 利 刀 一顯 教 也、 揮 二 三 密 金 剛 密 藏 也。 遊 二 心 顯 教 一 三 僧 砥 砂 焉。 持 二身 密 藏 一十 六 生 甚 促。 頓 中 之 頓 密 藏 當 レ 之。 と 説 い て い る。 こ れ ら は 顯 教 の 立 場 が 三 劫 成 佛 に あ る に 封 し て、 密 敏 の 目 ざ す 所 は 印 身 成 佛 で あ る こ と を 明 確 に し た も の で あ つ て、 こ れ が 御 請 來 目 録 を 貫 く 室 海 の 根 本 主 張 と な つ て い る。 し た が つ て こ の 御 請 來 目 録 に よ つ て、 室 海 が す で に 入 唐 求 法 中 に 顯 密 封 辮 の 思 想 を 學 ぶ と 共 に、 と く に 密 敏 の 根 本 的 立 場 が 即 身 成 佛 思 想 と そ の 實 践 に あ る こ と を 學 修 し て い た こ と を 知 り う る の で あ り、 室 海 の 蹄 朝 後 の 思 想 も こ の 鮎 を 椹 軸 と し て 展 開 す る の で あ る。 し か し て こ こ に 示 さ れ た 即 身 成 佛 思 想 は 室 海 の 即 身 成 佛 思 想 の 初 期 的 形 態 を 示 す も の と 見 る こ と が で き る。
二 室 海 は 鯖 朝 後 弘 仁 三 年 高 雄 に 灌 頂 坦 を 設 け、 最 澄 と そ の 弟 子 た ち や 南 都 の 學 侶 た ち に も 密 敏 の 傳 授 を な し、 大 い に 密 教 の 弘 通 に 努 め た の で あ り、 す で に 御 請 來 目 録 に 示 さ れ た よ う な 顯 密 差 別 や 即 身 成 佛 思 想 を 強 調 さ れ た と 考 え ら れ る が、 文 胤 的 記 録 は 見 出 さ れ な い。 し か る に 弘 仁 六 年 四 月 一 日 に 撰 し た 渤 二 諸 有 縁 衆 慮 7 奉 レ 爲 二 秘 密 藏 法 一文 に よ れ ば、 室 海 は 弟 子 の 信 康 守、 安 行 等 を 諸 國 に 遣 つ て 密 教 経 論 の 書 爲 を 勧 め て い る が、 そ の 中 に 顯 密 二 教 の 差 別 を 述 べ、 つ い で 即 身 成 佛 思 想 に ふ れ て、 若 有 二紳 通 乗 機 善 男 善 女 若 糟 若 素 與 レ 我 同 レ 志 者 一結 二 縁 此 法 門 一書 爲 讃 諦、 如 レ 説 修 行 如 レ 理 思 惟、 則 不 レ 経 三 二 僧 舐 一父 母 所 生 身 超 二 越 十 地 位 一速 謹 二 入 心 佛 と い う。 こ こ に 示 さ れ た 即 身 成 佛 思 想 は 菩 提 心 論 等 に よ る の で あ つ て、 未 だ 六 大 思 想 を 原 理 論 と す る 組 織 的 な 帥 身 成 佛 思 想 を 示 し て い な い。 こ の こ と は 徳 一 の 帥 身 成 佛 説 批 剣 と 比 較 し て 密 接 な 關 係 が あ る と 思 う。 即 ち ( 弘 仁 六 年 ) 四 月 五 日 付 の 室 海 か ら 徳 一 宛 の 書 簡 が あ り、 こ の 頃 に 恐 ら く 密 教 経 論 が 徳 一 に も 傳 え ら れ、 こ れ を 契 機 と し て 徳 一 が 眞 言 宗 未 決 文 を 撰 す る に 至 っ た と 考 え ら れ る が、 徳 一 は こ の 書 の 中 で 十 一 ケ 條 の 疑 問 を 堤 起 し て そ の 第 三 條 に 印 身 成 佛 疑 を か か げ て い る。 今 そ の 要 旨 を 見 る と、 菩 提 心 論 の 中 の 二 文、 (1) 今 眞 言 行 人 能 從 レ 凡 入 二 佛 位 一者。 亦 超 二 十 地 菩 薩 境 界 (2) 亦 眞 言 行 人 三 行 爲 レ因 印 身 成 佛、 一 者 行 願 二 者 勝 義 三 者 三 摩 地。 を か か げ、 こ の 二 文 に よ つ て 印 身 成 佛 を 説 く 限 り、 行 不 具 の 失 と 闘 慈 悲 の 失 と が あ る と い う。 つ い で 華 嚴 経 毘 盧 遮 那 品 に 刹 塵 劫 或 は 劫 海 を 経 て 成 佛 す る と 説 い て い る の に、 こ の 佛 説 に 背 い て 論 書 で 印 身 成 佛 を 説 く の は 正 し く な い と い う。 ま た つ い で 天 台 宗 の 印 身 成 佛 説 を も 否 定 し て い る が、 そ の 典 檬 に つ い て は 全 く ふ れ て い な い。 何 れ に し て も 徳 一 の 印 身 成 佛 の 疑 の 提 起 の 仕 方 は 資 料 的 に は 菩 提 心 論 に 限 ら れ、 未 だ 印 身 成 佛 義 を 見 て い な い の で あ る。 こ れ は こ の 時 に 未 だ 印 身 成 佛 義 が 成 立 し て い な か つ た か ら だ と 考 え ら れ る。 ま た 最 澄 の 大 直 道 や 印 身 成 佛 の 思 想 は 弘 仁 九 年 成 立 の 守 護 國 界 章 や、 そ の 後 に 著 さ れ た 決 権 實 論 や 法 華 秀 句 に 示 さ れ て い る の で あ る が、 眞 言 宗 未 決 文 の 撰 述 さ れ た 時 に は こ れ ら の 徳 一 と の 論 孚 の 著 作 は 未 だ 成 立 し て い な か つ た と 見 て よ い で あ ろ う。 し た が つ て 眞 言 宗 未 決 文 で 問 題 と し て い る 印 身 成 佛 疑 は こ れ ら の 室 海 最 澄 の 著 作 以 前 の 問 題 で あ る と 考 え ら れ る が、 何 れ に し て も 弘 仁 六 ・ 七 年 頃 に 眞 言 宗 で も 天 台 宗 で も 即 身 成 佛 思 想 を 強 調 し て い た こ と は 明 ら か で 働 り、 し か も そ れ ら の 思 想 が 即 室 海 に お け る 印 身 成 佛 思 想 の 展 開 ( 勝 又 ) 四 七
室 海 に お け る 印 身 成 佛 思 想 の 展 開 ( 勝 又 ) 四 八 身 成 佛 思 想 の 初 期 的 形 態 を 窺 う に 足 る も の と し て 注 目 す べ き で あ る。 他 方 ま た こ の 時 代 に 法 相 宗 側 か ら 印 身 成 佛 思 想 を 批 到 す る 立 場 か ら の 論 説 が 現 わ れ た こ と は 師 身 成 佛 思 想 史 上 興 味 あ る こ と で あ る。 三 辮 顯 密 一、 一教 論 は 密 教 の 立 場 を 闘 明 す る た め の 極 め て 重 要 な 論 書 で あ る が、 こ の 論 書 の 内 容 の 一 部 を 要 約 す る と、 弘 仁 六 年 四 月 一 日 付 の 勧 二 有 縁 衆 鷹 レ 奉 レ 爲 二 秘 密 藏 法 一 文 と 極 め て 類 似 し て お り、 雨 者 の 密 接 な 關 係 が 考 え ら れ、 そ の 撰 述 年 代 も あ ま り 時 を 隔 て て い な い と 推 定 さ れ る が、 今 こ の 二 教 論 に 現 わ れ た 即 身 成 佛 思 想 を あ げ て み る と、 菩 提 心 論 の ﹁ 惟 眞 言 法 中 即 身 成 佛 故 ﹂ の 一 節 を 引 き ﹁ 喩 自、 ⋮⋮顯 密 二 敏 差 別 淺 深 及 成 佛 遅 速 勝 劣 皆 説 二 此 中 一 ﹂ と い い、 こ の 論 書 が 顯 密 差 別 の 問 題 と 成 佛 遅 速 の 問 題 を 明 ら か に し て い る 代 表 的 文 鰍 で あ る こ と を 指 摘 し て い る。 ま た 六 波 羅 蜜 経 を 引 い て、 そ れ が 速 疾 解 脱 頓 悟 浬 墾 を 説 く も の で あ り、 ま た い か な る 罪 悪 人 で も 眞 言 陀 羅 尼 に よ つ て 直 ち に 救 わ れ る こ と を 強 調 し て い る。 さ ら に 金 剛 頂 五 秘 密 経 の 於 二 顯 敏 一修 行 者 久 経 二 三 大 無 敷 劫 ﹂然 後 謹 二 無 上 菩 提 ⋮⋮若 依 二 砒 盧 遮 那 佛 自 受 用 身 所 説 内 讃 自 毘 聖 智 法 及 大 普 賢 金 剛 薩 唾 他 受 用 身 智 一則 於 二 現 生 一遇 二 逢 曼 茶 羅 阿 閣 梨 一得 レ 入 二 曼 茶 羅 ⋮⋮受 二 得 廣 大 甚 深 不 思 議 法 一 起 二 越 二 乗 十 地 ゆ の 文 を 引 い て、 顯 敏 の 三 劫 成 佛 に 封 し て 密 教 の 印 身 成 佛 を 入 坦 灌 頂 の 方 面 か ら 明 ら か に し、 さ ら に 金 剛 頂 分 別 聖 位 経 の 三 身 説 法 の 差 別 を 説 く 文 を 引 い て、 喩 日、 此 経 説 二 三 身 読 法 差 別 淺 深 成 佛 遅 速 勝 劣 と も 述 べ て い る。 こ の う ち、 菩 提 心 論 と 金 剛 頂 五 秘 密 経 と は 後 に 印 身 成 佛 義 に も 引 用 さ れ る が、 何 れ に し て も 辮 顯 密 一 一敏 論 の 中 に 印 身 成 佛 思 想 が 密 教 思 想 の 一 大 特 質 と し て 説 か れ て い る。 し か し そ の 印 身 成 佛 思 想 は 経 論 の 引 謹 に と ど ま る の で あ つ て 積 極 的 に 印 身 成 佛 思 想 を 組 織 構 成 し よ う と す る 意 圖 は 示 さ れ て い な い。 こ の 鮎 で は 御 請 來 目 録 に 現 わ れ た 即 身 成 佛 思 想 と 同 程 度 の も の で あ つ て、 こ れ も 室 海 の 印 身 成 佛 思 想 の 初 期 的 形 態 を 示 す も の と 見 て よ い で あ ろ う。 四 し か る に 六 大 能 造 の 思 想 が 現 わ れ、 六 大 無 擬 常 喩 伽 云 云 の 二 頗 八 句 が 成 立 す る に 至 つ て、 室 海 の 印 身 成 佛 思 想 は 著 し く 組 織 化 さ れ、 大 き な 展 開 を 示 す に 至 つ た と 考 え ら れ る。 ま ず 室 海 の 著 作 に 現 わ れ た 六 大 思 想 に つ い て 考 え て み る に、 六 大 能 造 思 想 が 凋 立 に 読 か れ て い る 場 合 と、 二 頗 八 句 の 組 織 化 の 型 で 説 か れ て い る 場 合 と に 匠 分 さ れ る。 し か し 軍 純 に 六 大 能 造 思 想 の み を 説 く 場 合 で も、 そ れ は 六 大 思 想 を 根 櫨 と す る 帥 身 成 佛 思 想 を 豫 想 し て い ゐ の で あ る か ら、 こ の 爾 者 を と も に
室 海 の 即 身 成 佛 思 想 展 開 の 同 じ 場 に お い て 見 な け れ ば な ら な い。 そ こ で こ の 匙 に 留 意 し て 室 海 の 著 作 に 現 わ れ た 六 大 思 想 を 槍 討 し て み る と、 ま ず 大 日 経 開 題 七 本 あ る 中、 法 界 浄 心 本 に は 加 持 の 意 義 を 説 明 す る 所 で、 加 以 二 往 來 渉 入 一 爲 レ 名、 持 以 二 撮 而 不 散 一 立 レ 義、 印 入 我 我 入 是 也 と 加 持 の 定 義 を し た 後、 阿 等 六 字 者 法 界 之 躰 性、 四 種 法 身 十 界 依 正 皆 是 所 造 之 相。 六 字 則 能 造 之 躰。 能 造 阿 等 遍 二 法 界 一而 相 慮、 所 造 依 正 比 二 帝 網 一而 無 碍、 錐 二 此 不 レ 在 彼 不 7 來、 然 猫 法 爾 喩 伽 故 故 無 二 能 所 一而 能 所。 と い い、 つ づ い て 六 大 無 碍 常 喩 伽 の 二 頽 八 句 を か か げ て い る。 こ こ で は 六 大 を 法 界 の 禮 性 と し、 そ れ は 能 造 の 膿 で あ る と も い い、 こ れ に 封 し て 四 種 法 身 と 十 界 の 正 報 ・ 依 報 と を 所 造 の 相 と な し、 こ こ に 髄 ・ 相 の 思 想 を 導 入 し て お り、 し か も 六 大 と 四 種 法 身、 十 界 の 正 報 ・ 依 報 は 法 爾 に 相 鷹 し て い る か ら、 第 一 義 的 に は 能 所 の 關 係 は 考 え ら れ な い が、 現 實 的 に は 能 所 の 關 係 と な る と い う。 こ こ の 文 は 即 身 成 佛 義 と 一 致 す る の で は な い が そ の 趣 意 は 略 同 一 で あ る。 し た が つ て こ の 大 日 経 開 題 は 即 身 成 佛 義 を 豫 想 し て い る と 見 て よ い で あ ろ う。 と こ ろ で こ の 大 日 経 開 題 は 仁 和 寺 爲 本 に よ れ ば、 爲 二 笠 仲 守 先 批 一講 文 と せ ら れ て お り、 性 璽 集 第 七 に は 笠 大 夫 奉 二 爲 先 批 一奉 レ 造 二 大 曼 茶 羅 一願 文 が あ り、 そ の 中 に、 謹 以 二 天 長 元 年 孟 冬 二 十 日 一云 云 と あ る か ら、 こ の 大 日 経 開 題 と こ の 願 文 と は 密 接 な 關 係 が あ る と 考 え ら れ る。 果 し て 然 ら ば、 こ の 大 日 経 開 題 は 天 長 元 年 十 月 頃 に 撰 せ ら れ た も の で あ り、 室 海 五 十 一 歳 の 時 で あ る が、 こ の 時 す で に 印 身 成 佛 義 は 成 立 し て い た か も 知 れ な い。 な お 同 じ く 大 日 経 開 題 の 中、 關 以 受 自 樂 本 に も、 加 持 の 意 義 と 六 大 無 碍 の 頗 が あ る が、 こ の 所 の 文 は 法 界 浄 心 本 の 文 と 略 一 致 す る か ら、 こ れ も 同 年 の 撰 述 と 見 て よ い で あ ろ う。 つ ぎ に 同 じ く 性 塞 集 第 八 の 爲 二 亡 弟 子 智 泉 一達 嘲 文 に は、 五 相 成 身 妙 観 察 智 力 即 身 成 佛、 即 心 曼 茶 ⋮⋮仰 願 金 剛 界 三 十 七 蝉、 大 悲 胎 藏 四 種 曼 茶 入 我 我 入 故、 六 大 無 碍 喩 伽 故、 與 二 塵 敷 春 属 一無 來 而 來 將 二 海 滴 分 身 一不 撮 而 撮。 と い う。 智 泉 は 天 長 二 年 二 月 十 四 日 に 高 野 山 で 寂 し て い る か ら、 こ の 文 は 天 長 元 年 の 大 日 経 開 題 以 後 の も の で あ り、 こ の 中 に 六 大 思 想 が 説 か れ て い る の は 當 然 の こ と で あ ろ う。 と こ ろ で こ こ に 注 意 す べ き こ と は、 こ の 智 泉 の た め の 達 磯 文 の 六, 大 無 碍 の 文 と 略 同 一 の 文 が 念 持 眞 言 理 観 啓 白 文 に も 見 ら れ る か ら、 こ の 爾 者 の 密 接 な 關 係 も 推 知 さ れ る。 し か し 念 持 眞 言 理 観 啓 白 文 の 撰 述 年 時 が 明 ら か で な い。 つ ぎ に 天 長 七 年 頃 の 勅 撰 と 推 定 さ れ て い る 十 住 心 論 の 蹄 敬 序 に は 能 所 無 碍 六 大 夫、 如 レ 是 自 他 四 法 身、 法 然 輪 二 圓 我 三 密 二 天 珠 渉 入 遍 二 虚 室 一重 重 無 碍 過 二 刹 塵 の 句 が あ り、 こ れ も 六 大 思 想 の み な ら ず、 二 頒 八 句 の 思 想 を 室 海 に お け る 邸 身 成 佛 思 想 の 展 開 ( 勝 又 ) 四 九
室 海 に お け る 印 身 成 佛 思 想 の 展 開 ( 勝 又 ) 五 〇 豫 想 し て い る と み て よ い。 ま た 序 の 中 に、 衆 生 狂 迷 不 レ 知 二 本 宅 沈 二 倫 三 趣 一鈴 二 餅 四 生 一不 レ 知 二 苦 源 無 レ 心 二 還 本 聖 父 懲 二 其 如 7 是 示 二 其 編 路 蹄 路 有 二 径 紆 所 乗 有 二 遅 速 一、 牛 羊 等 車 逐 二紆 曲 噌而 徐 進、 必 経 二 三 大 無 敷 劫 軸 紳 通 寳 酪 凌 二 虚 室 唱 而 速 飛、 一 生 之 間 必 到 二 所 詣 と い つ て、 顯 教 と 密 教 と の 成 佛 の 遅 速 を 説 い て い る が、 こ れ に よ つ て 十 佳 心 論 に お け る 印 身 成 佛 思 想 は 六 大 思 想 に ょ る 所 が 僅 か で あ る に も 係 ら ず、 す で に 六 大 思 想 を 豫 想 し て い る こ と は 明 ら か で あ る。 た だ 極 め て 不 審 に 思 わ れ る こ と は、 十 佳 心 論 及 び 秘 藏 寳 鍮 の 第 十 秘 密 荘 嚴 心 を 説 く 所 に 即 身 成 佛 義 に 示 さ れ た よ う な 六 大 思 想 を 中 心 と す る 印 身 成 佛 思 想 が 全 く 読 か れ な い こ と で あ り、 殊 に 秘 藏 寳 鍮 に お い て は 菩 提 心 論 の 三 摩 地 段 を そ の ま ま 引 用 し て、 以 て 眞 言 宗 の 住 心 と な し て い る こ と で あ る。 こ れ は 十 住 心 論 も 秘 藏 寳 鍮 も 経 論 を 引 謹 す る こ と に 重 貼 を お い た か ら と 見 れ ば、 そ れ ぞ れ 充 分 な 意 味 も あ る が、 室 海 自 身 に よ る 眞 言 宗 の 立 場 が 示 さ れ て い な い の は い か に も 物 足 ら な く 感 ぜ ら れ る。 こ の 貼 は 他 の 機 會 に 論 じ た い。 さ ら に 性 霊 集 第 九 に 掲 げ ら れ て い る 天 長 九 年 八 月 二 十 二 日 の 高 野 山 萬 灯 會 の 願 文 中 に は、 六 大 所 レ 遍、 五 智 依 レ 含、 排 虚 沈 地 流 水 遊 林 惣 是 我 四 恩。 の 句 が あ る。 こ の 六 大 所 遍 と は 六 大 所 遍 の 衆 生 を さ し て い る の で あ り、 六 大 が 能 造 で あ り 法 界 髄 性 で あ る と い う 思 想 が 豫 想 さ れ る の で あ つ て、 こ こ に は 直 接 に 印 身 成 佛 思 想 を 読 い て い る わ け で は な い が、 と も か く 六 大 思 想 を 自 由 に 示 し て い る 貼 を 注 意 し た い。 と こ ろ で こ の 六 大 所 遍 の 考 え 方 は 性 露 集 第 八 所 牧 の 承 和 元 年 二 月 十 一 日 の 招 提 寺 達 嘲 文 に も、 伏 願 學 二斯 白 業 一沃 二 彼 四 恩 六 大 所 レ 遍 皆 是 我 身、 十 界 所 レ 有 並 是 我 心。 と 説 い て い る。 な お こ の 他、 撰 述 年 月 は 不 明 で あ る が 金 剛 頂 経 開 題 に も 界 是 差 別 義、 如 來 身 以 二 六 大 一爲 レ 躰 故 云 レ界。 と い つ て 六 大 躰 大 の 思 想 を 示 し て い る。 こ の よ う に み て く る と、 六 大 思 想 が し ば し ば 説 か れ る よ う に な つ た の は 天 長 元 年 以 後 の こ と で あ り、 弘 仁 の 末 年 頃 ま で の 文 鰍 に は 未 だ 現 わ れ て い な い の で あ る。 と こ ろ で 六 大 思 想 は 秘 藏 記 の 中 に 説 か れ て い る の で、 秘 藏 記 の 成 立 が も し 從 來 一 般 に 説 か れ て い た よ う に 恵 果 口 授 察 海 筆 記 で あ る と す れ ば、 六 大 思 想 は た と え 弘 仁 末 年 ま で の 室 海 の 著 作 に 現 わ れ て い な い と し て も、 そ れ は 恵 果 の 思 想 で あ り、 室 海 は た だ そ の 思 想 を 租 述 し た に 過 ぎ な い こ と に な る。 は た し て そ う で あ ろ う か。 秘 藏 記 の 撰 者 に つ い て は 古 來 異 説 が 多 く、 近 時、 室 海 某 隣 等 の 口 説 を 弟 子 の 圓 行 が 筆 録 し た も の と な す 読 が 立 て ら れ た が、 こ の 説 が 安 當 で あ る と 考 え ら れ る。 こ れ に は 諸 々 な る 理 由 が あ げ ら れ る が、 五 乗 三 科 百 法 等 の 名 目 を 列 ね る な ど
は、 室 海 の 入 唐 以 前 の 學 識 か ら 見 れ ば 今 更 こ れ ら の 名 目 を 恵 果 か ら 學 ん で 筆 録 す る こ と は あ り 得 な い と 考 え ら れ る。 ま た 秘 藏 記 に 示 さ れ た 六 大 思 想 を 説 く 文 は 部 身 成 佛 義 の 文 を さ ら に 整 理 し た 文 と 見 る べ き で あ る。 か く し て 秘 藏 記 を 恵 果 の 口 読 で な い と す れ ば、 六 大 能 造 の 思 想 も 恵 果 に は な く、 室 海 の 濁 創 的 な 思 想 と 見 る べ き で あ る。 し た が つ て 六 大 思 想 が 展 開 し た の は 室 海 の 五 十 歳 前 後 の 頃 の こ と で あ り、 こ の 頃 に 塞 海 の 印 身 成 佛 思 想 が 從 來 の 経 論 に 現 わ れ、 或 は 不 室、 恵 果 等 に よ つ て 強 調 さ れ た 印 身 成 佛 思 想 か ら 一 輻 し て、 六 大、 四 曼、 三 密 を 艦 相 用 の 三 大 に 配 す る 組 織 的 な 印 身 成 佛 思 想 へ と 獲 展 し た と 考 え ら れ る。 こ れ は 印 身 成 佛 思 想 史 上 極 め て 注 目 す べ き こ と で あ り、 密 教 の 日 本 的 展 開 の 重 要 な 一 面 が こ こ に 見 出 さ れ る。 ( 文 部 省 科 學 研 究 費 に よ る 綜 合 研 究 の 成 果 の 一 部 ) 室 海 に お け る 印 身 成 佛 思 想 の 展 開 ( 勝 又 ) 五 一