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Academic year: 2021

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症例2 T. O 50歳 男性 160cm 69kg 主訴:頭痛、肩こり、倦怠感 職業:コンピューター会社営業課長である。 生活背景:週4回程度、出張で、食事は、外食が多い。朝、5時30分起床し、午前6時 30分に自宅を出て出勤する。帰宅は午後11時頃になり、寝酒を飲んで12時半頃に就 眠する。通勤に車を使用している。出張は飛行機、タクシー利用している。 食事は、フライドチキン、辛いチゲ鍋等、脂っこく味が濃いものが好きある。 アルコールは、ビール大瓶1本/日程度を飲んでいる。タバコは40本/日を喫煙してい る。 性格は、何事もとことんやらないとすまないタイプである。短気だが物事をあまり気にし ない。 現病歴:5年前より会社検診で血圧185/85mHgと高いと指摘された。1週間前の 会社検診で脂質異常症と指摘された。血圧190/85mmHgで高血圧も指摘された。 しかし、忙しく医療機関は受診しないで放置していた。 今週は、残業・出張が多く、疲労気味であった。2-3日前より頭痛、肩こり、倦怠感が 強いため、宮前診療所を受診した。 血圧は200/90mmHg、脈拍80回/分であった。 1週間前の会社検診結果を持参した。 会社検診検査所見 白血球数 WBC(4500-9000/µL) 6000 赤血球数 RBC(男性 410-500 万/µL)480×104 ヘモグロビン値 Hb(男性 14-18g/dL) 17.5 ヘマトクリット Ht(男性 39-52%)55% 血小板 PLT(10 万以上)28.0×104 LDL コレステロール値 LDL-C(70-140mg/dL) 185 HDL コレステロール値 HDL-C(男性 40-70mg/dL、女性 45-75)35 トリグリセリド TG(30-150mg/dL)220 血清クレアチニン値 Scr(男性 0.8-1.3mg/dL) 1.0 血清Na値 (135-145mEq/L) 141 血清K値 (3.5-5.0mEq/L) 4.0 血清Cl値 (98-108mEq/L) 98 空腹時血糖(FBS)(食事後 2 時間)(mg/dL)99 BMI=体重(kg)÷{身長(m)}2 27 教育目標 1.合併症を有する高血圧症の分類、リスク層別化ができる。 2.合併症を有する高血圧について合併症のリスク分類ができる 3.合併症の治療が説明できる。 4.合併症のあるリスク層別化で高リスクの高血圧の初期治療が立案できる。 5.合併症と高血圧の初期薬物治療が立案できる。

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問1: A.O の血圧を日本高血圧ガイドライン(JSH2014)に基づき分類しなさい。 問2: A.O の心血管病にリスクファクターをあげなさい。 問3: A.O にリスク分類層別化しなさい。 問4: A.O で注意が必要となる合併症は何か。 問5: A.O の治療の第一選択は何か具体的にあげなさい。 問6: A.O の高血圧治療で降圧剤選択する場合、第1選択は何か。また、降圧目標値を 答えなさい。 問7: 検査値の評価を行いなさい。 問8: A.O の症状等をPOSの#の項目について SOAP を用いて記載しなさい。 プロブレムリスト #1 高血圧の治療 #2 脂質異常症の治療 Subject(S): Object(O): Assessment(A): Plan(P):

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問1 A.O の血圧を日本高血圧ガイドライン(JSH2014)に基づき分類しなさい。 解答1:200/90であるためⅢ度高血圧(≧180/≧110mmHg) 解説1 血圧分類では収縮期(SBP)180以上、又は拡張期(DBP)110以上がⅢ度高血圧と なる。A.O は SBP200、DBP90 と SBP が 180 以上であることからⅢ度高血圧に分類され る。(高血圧症例1 参照) 表1 成人における血圧値の分類(mmHg)(JSH2014) 問2 A.O の心血管病にリスクファクターをあげなさい。 解答2:心血管病リスクファクターとして喫煙、肥満、脂質異常症があげられる。 解説2 該当ファクター:高血圧、喫煙、脂質異常症、肥満。 該当しないファクター:糖尿病、蛋白尿・アルブミン尿、高齢(男性60歳以上、女性 65歳以上)。(高血圧症例1 参照) メタボリックシンドローム、糖尿病を検討する検査を実施して精査が必要となる。 表2 高血圧管理計画のためのリスク層別化に用いる予後影響因子(JSH2014) 問3 A.O にリスク分類層別化しなさい。

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解答3:リスク第三層、Ⅲ度高血圧であるため高リスクに分類される。 解説3 A.O は、体重69kg、160cm、BMI27で25以上が肥満となる。リスク因子と して喫煙、肥満、脂質異常症の3つのリスクがあげられる。3つ以上の危険因子があると するリスク第三層に分類される。 ただし、メタボリックシンドロームの診断は腹囲測定を行っていないため診断されておら す今後精査が必要となる。また、糖尿病についてはFBS99から可能性は低いと類推され る。腎機能は血清クレアチニンが正常であることからCKD・腎障害はないと判断される。 表3 診察室血圧に基づいた心血管病リスク層別化(JSH2014) 問4 A.O で注意が必要となる合併症は何か。 解答4:脂質異常症、高血圧から合併症として脳・心血管障害(脳梗塞・出血、心筋梗塞) の発症が最も注意が必要となる。 A.Oは冠動脈疾患はなしと考えられるが、LDL-C,HDL-C、TG の値から危険因子4個(加 齢男性:45 歳以上、高血圧、喫煙、低 HDL-C 血症)から高リスク患者となる 解説4 脂質異常症の診断、リスクを判断して治療計画を行う必要がある。 診断、リスク、治療計画については脂質異常症を参照すること。 冠動脈疾患については、1週間前の検診でいわれていないためない可能性が低いと推察さ れる。ただし、心電図での異常の有無をチェックする必要はあると思われる。 高血圧による死亡は心血管病である事が下記の表で示されている。

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表4 本邦の 2007 年の非感染性疾患および外因による死亡数への 各種リスク因子の寄与(男女計)(JSH2014) 問5 A.O の治療の第一選択は何か具体的にあげなさい。 解答5:生活習慣の改善、減塩、減量、油の多い食事を控える、規則正し生活、禁煙、運 動。患者の生活から減塩、油摂取を控える、体重コントロール、禁煙である。 Ⅲ度高血圧高リスクであるため直ちに生活習慣改善と共に薬物治療を開始する。 解説5 高血圧での降圧に最も影響する生活習慣ファクターは、減塩である。減塩で5mmHg 程 度の降圧が達成される。肥満は降圧に難治ファクターとして大きなファクターとなる。 油ものの摂取制限は、脂質異常症のコントロールに必要である。脂質異常症は、血管の粥 状病変を進展させる。血管の粥状病変が、脳・心血管疾患(脳血管障害、心筋梗塞等)の リスクファクターである。喫煙は多くの疾患のリスクファクターであるため禁煙は重要と なる。 生活習慣改善で到達する降圧効果(JSH2014)を下記に示す。

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表5 生活習慣改善で到達する降圧効果(JSH2014) 問6 A.O の高血圧治療で降圧剤選択する場合、第1選択は何か、また、降圧目標値を答 えなさい。 解答6:ACE 阻害薬、ARB、Ca 拮抗薬、利尿薬のいずれかを選択する。 患者は 60 歳以下で合併症を有しておらず、性格から交感神経優位状態、脈も頻脈である ことからβ遮断薬も第一選択薬となる。(表6) 降圧目標140/90mmHg(症例1参照) 解説6 降圧薬を使用する際に、急激な降圧は血圧の恒常性機能(ホメオタシス)の維持が困難 となり、気分不良・倦怠感等の不適正降圧症状が発症する。不適正降圧を防ぐためにも降 圧は2-3ヶ月以内にゆっくりと降圧目標に到達することを目指す。2-4週毎に血圧測定 し、降圧効果を評価しながら降圧治療を行うことが望ましい。不適正降圧を防止するため に降圧薬は初期量から開始し、血圧のフォローしながら必要があれば維持量まで増量する。

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表6 主要降圧薬の積極的適応(JSH2014) 問7: 検査値の評価を行いなさい。 解答7 血計(WBC、RBC、Hb、Ht、PLT):正常。 LDL-C 高値、HDL-C 低値:脂質異常症と判断される。 TG 高値:脂質異常症と判断される。TG 高値の原因は、食事性(油もの)と判断される。 Scr:正常から腎機能に障害はないと判断される。 Na、K:正常。 問8: A.O の症状等をPOSの#の項目について SOAP を用いて記載しなさい。 プロブレムリスト #1 高血圧 #2 脂質異常症 #1高血圧 S:頭痛、肩こりがひどい、(高血圧症状)、倦怠感がある(高血圧による二次症状)。 1週間前の会社検診で脂質異常症と指摘された。血圧190/85mmHgで高血圧も指 摘された。今週は、残業・出張が多く、疲労気味であった。2-3日前より頭痛、肩こり、 倦怠感が強いため受診した。食事は、フライドチキン、辛いチゲ鍋等油っぽい、味が濃い ものが好き。食事は、外食が多い。通勤に車を使用している。出張は飛行機、タクシー利

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用している。朝、5時 30 分起床し、午前 6 時 30 分に自宅を出て出勤する。帰宅は午後 11 時頃になり、寝酒を飲んで 12 時半頃に就眠する。 O:血圧200/90、脈拍80回/分、BMI 27(肥満)、ヘビースモカー(高血圧、 心疾患、脳血管障害、肺疾患のリスクファクター、)、50歳 男性 160cm 69 kg、血清クレアチニン値Scr 1.0、血清Na値 141、血清K値 4.0、血 清Cl値 98 A:血圧が非常に高い(200/90)。頻脈気味、Ⅲ度高血圧(≧180/≧110) 高リスクとなる。生活習慣の改善・高血圧の治療が必要。BMI 27肥満で減量。ただち に薬物治療が必要。すぐにできることとして減塩、運動があげられる。毎日の飲酒である ため早朝高血圧(モーニングサージ)、夜間高血圧(non-dipper 型)の可能性がある。 P:生活習慣の改善指導(減塩、禁煙、節酒、油ものを控える)。減塩:減塩薄味に心が ける。運動週 1 回(30 分程度)のウォーキングの奨励。24時間自由行動下血圧測定 (ABMP)の実施。non-dipper 型かの判定。モーニングサージの有無の判定。 血圧200/100の降圧薬治療の即時実施。 頻脈気味なので降圧薬治療としてACE常用量を使用する。 リシノプリル1 回 10mg(常用量) 1 日 1 回朝食後 当面の降圧目標 1 ヶ月140/9 0。血圧が非常に高いため2週間後の血圧降下が不十分であれば頻脈ぎみなので Ca 拮抗 薬より利尿剤ヒドロクロロチアジド12.5mg追加またはβ遮断薬アテノロール25m gを追加する。経過観察する。最終降圧目標130/80 解説8-1 1.24時間自由行動下血圧測定(ABMP)で得られる情報(JSH2009) 1)早朝血圧 朝家庭血圧135/85mmHg以上であれば早朝血圧といえる。 (1)モーニングサージ 早朝覚醒後急激に血圧上昇がみられるものを言う。血管病のリスクとなり得る。 2)夜間血圧 夜間睡眠時のABMP で測定した血圧を夜間血圧とよぶ。 (1)正常型 昼間の血圧レベルより10-20%夜間降圧するもの。 (2)夜間非降圧型(non-dipper 型) 昼間の血圧レベルより0-10%夜間降圧するもの。 (3)夜間昇圧型(riser 型) 夜間に昼間より血圧が高くなるもの。 (4)夜間過降圧型(extreme-dipper 型) 昼間の血圧レベルより20%以上夜間降圧するもの。

non-dipper 型、riser 型は dipper 型に比べ無症候性ラクナ梗塞等高血圧性臓器障害のリ スクが高率に認められている。

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extreme-dipper 型では高齢者に無症候性脳梗塞が多いとの報告がある。 2.薬剤投与計画 高リスクであるため常用量で開始とした。(表7)。頻脈があるためCa拮抗薬は副作用と して頻脈を起こしやすいのでβ遮断薬を選択とした。また、Ca拮抗剤ではジルチアゼム は頻脈を起こさないので選択薬となる。また、併用はJSH2009、2014に示され た併用を参考とした。β遮断薬とACE阻害薬の併用は推奨されていないが、頻脈傾向で 交感神経トーンが上がっていると判断された場合には併用も可となる。アムロジピンに代 表されるジヒドロピリジン系Ca拮抗薬でないジルチアゼムを追加選択すれば、β遮断薬 の選択は逆になくなる。ケースバイケースでの判断が求められる。 β遮断薬がJSH2014で第一選択薬剤から外れた理由と評価については症例1を参照 のこと。 表7 降圧目標を達成するための降圧薬の使い方(JSH2014) 表8 積極的適応がない場合の高血圧の進め方(JSH2014) 表9 2剤併用(JSH2009)

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表9 2剤併用(JSH2009) 表10 2剤併用(JSH2014) #2 脂質異常症 S:食事は、フライドチキン、辛いチゲ鍋等油っぽい、味が濃いものが好き。食事は、外 食が多い。 O:LDL-C 185、HDL-C 35、TG 220、BMI27 A:高リスク群、食事の改善(理由はLDL-C 高値、TG 高値の原因が、A.O について食事 性と判断されるためである。) P:食事として油ものを控える。野菜中心の食事、豆腐等大豆食品を使用する。 食事療法で不十分であれば薬物治療を実施する。 目標 LDL<120、HDL≧40、TG<150

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解説8-2 野菜、豆腐等大豆製品はコレステロールの吸収を阻害する作用を有している。 薬物治療は主に下記の2 系の薬剤が使用される。その特徴を下記に示す。 HMG-CoA 還元酵素阻害薬:LDL-C 低下、HDL-C 上昇目的で使用。注意すべき副作用(筋 痛、横紋筋融解症) フィブラート系薬剤:LDL-C 低下、TG 低下目的で使用。注意すべき副作用(筋痛、横紋 筋融解症、肝障害)。安全性はHMG-CoA 還元酵素阻害薬より劣る。 治療の詳細は症例検討入門第2 版(京都廣川書店)脂質異常症の項を参照。 表11 脂質管理カテゴリー別管理目標(脂質異常症治療ガイド2008) 表12 患者カテゴリー別の管理目標と治療方針(脂質異常症治療ガイド2008)

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提示症例の特徴 1.合併症(脂質異常症)を有する高血圧症例 2.合併症を有し、リスクの高い高血圧の初期治療を立案する症例 3.リスクの高い高血圧における降圧薬の初期治療選択を実施する症例 4.合併症(脂質異常症)の治療を立案する症例 (大澤 友二)

参照

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