下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤とは
「血管が浮いている。」「足の血管がミミズ腫れしている。」とよく言われており ますが、下肢の静脈が太く浮きでているものを「下肢静脈瘤」といいます。静 脈瘤は太くなっているばかりでなく、曲がりくねっています。下肢静脈瘤の症状
私が以前、勤めていた診療所でのことですが、非常にひどい静脈瘤のおばあさ んがいました。おばあさんは「痛くも痒くもないからほったらかしにしている。」 とおっしゃっておりました。非常にたくさんの静脈瘤ができていても、このお ばあさんのように全く症状のでない人(感じない人?)もいますし、「子供を生 んでから静脈瘤ができたから、かれこれ 20 年以上も前からある!」といったよ うに、静脈瘤は案外「病気」と認められていない?かもしれません。もちろん、 静脈瘤は生命を脅かす様な危ない病気でもありませんし、必ず治療しなければ ならない病気でもありません。また、いつ治療したらいいのか、あるいはどこ の診療科にいったらいいのかよくわからない疾患かもしれません。しかし、静 脈瘤があると、足が重く疲れやすい、脚がはったような感じがする、ふくらは ぎや足首がむくむ、よくこむら返りがおこるといったような症状が見られます。 さらにひどくなると、皮膚に十分な栄養がいかなくなり、湿疹やかゆみなどの 皮膚炎を起こしたり(うっ滞性皮膚炎)、足の皮膚の色が茶褐色になったり(色 素沈着)、治り難い皮膚潰瘍(難治性潰瘍)になったり、日常生活に支障を来す ような症状がでてきたりします。特に血栓が形成され、血栓性静脈炎といった 赤く痛くなることもあります。症状の重症度分類
専門的には CEAP 分類、あるいは VCSS などの評価法がありますが、簡単に言 えば 第 1 段階:むくみ、だるさ、こむらがえり 第 2 段階:瘤の出現、(みみずばれのような) 第 3 段階:湿疹、かゆみ、色素沈着などの皮膚障害、 第 4 段階:皮膚潰瘍 と言った順で重症化しますが、必ず重症化する訳でもありませんし、重症化す るまでの期間も個人差があります。静脈瘤の原因
血管には動脈と静脈があり、静脈は組織で使われた血液を心臓まで返す役割の 血管です。その静脈には重力による血液の逆流を防止するための「弁」が存在 し、一方通行の流れを作っています。この静脈弁が正常に機能しなくなると血 液が逆流し足の下の方に血液がたまり(うっ滞)、その結果、静脈は拡張し静脈 瘤ができてくるのです。弁不全がなぜ起こるかは、はっきりとした原因はよく わかっておりませんが、静脈瘤の患者さんには次のような傾向があります。 静脈瘤になりやすい人の傾向 1) 女性に多い、年齢とともに頻度は増加する。 2) 立ち仕事(調理師、教師、理美容師など)に従事している人 3) 家族(血縁者)に静脈瘤を持っていることが多い 4) 妊娠、出産をきっかけに静脈瘤ができやすい。静脈瘤の治療
静脈瘤の治療には、保存的療法(弾性ストッキング)、手術療法『(ストリッ ピング術(静脈抜去術)、大伏在静脈結紮療法)』、硬化療法の 3 種類がありまし た。従来はストリッピング術が典型的な Gold standard と言われていましたが、 入院が必要など時間面での制約もあり、当院では日帰りによる結紮療法を主に 行ってきました。これまで 1200 例以上の治療経験から、患者様の 95%に症状の 消失、軽快などの満足度が得られました。2011 年より血管内治療である下肢静 脈瘤血管内レーザー治療が下肢静脈瘤の保険診療の認可がおりました。それま でレーザー治療は 15 万から 20 万円ぐらいの自費診療でしたが、2014 年より当 院でもついに静脈瘤血管内レーザー治療を開始することとなりました。この治 療の最大の利点は皮膚に切開を加えないという最大のメリットがあります。従 来は鼠径部と大腿部に 10〜15mm の皮膚切開を加えていましたが、これらの新 しい血管内治療は切らずに静脈瘤の治療を行う事ができ、患者様により一層低 侵襲で優しい治療を施す事ができると期待されております。 もちろん患者様の静脈瘤の程度や大きさや症状によって、ストリッピング術や 今までの治療法を使い分けたり、組み合わせたりしています。 当院では患者様の症状やニーズにあわせた治療法を選択しております(オー ダーメイド治療)。 下肢静脈瘤の患者様のほとんどの場合が、外来での日帰り手術となっており ます。手術の当日は、静脈エコーの検査をした後、手術室で静脈瘤血管内レー ザー治療と同時に静脈瘤切除術を追加します。しかしながら、ほとんどの傷は わずか 3mm ほどで縫合も行いません。従って抜糸もいりません。手術終了後に弾力包帯と弾性ストッキングの着用をして終了となります。手術時間は 1 時間 程度で、局所麻酔と静脈麻酔で行うため、手術後は歩いて帰宅できます。 弾性ストッキングによる圧迫療法は術後 5 日間は 24 時間着用して頂き、その 後 3 週間は着用をお願いしております。 手術後の流れとしましては、翌日にガーゼ交換と静脈エコー検査、術後 7 日 目ぐらいに診察と血管エコー、その後、1 ヶ月後にもう一度、診察と血管エコー での評価をしており、術後は計 3 回程度の外来受診となっております。 遠方のため、翌日の来院は困難という患者様の場合は、1 泊入院でも行っており ます。
(合併症)
結紮療法には大きな合併症はありませんが、下肢静脈瘤レーザー血管内焼灼術 には、出血(皮下出血斑)、深部静脈血栓症(EHIT)、血栓性静脈炎、下肢の違 和感(神経障害)、アレルギーなどがあります。 それと遠隔期にはやはり静脈瘤の再発、下肢のむくみなどの症状の再発があり ます。 全身的な大きな合併症はほとんどありません。(治療成績)
症状の改善としまして、大半の方々から、治療後、脚が軽くなったと言ってい ただいております。(外来治療患者様の約 95%の患者様に満足して頂いておりま す。 従来の下肢静脈瘤の当院での治療経験では、1999 年以来 1200 例以上手術してお りますが、再発で来院されたのは 43 例でおよそ 3%程度でした。もちろん静脈 瘤手術による mortality(死亡例)は 0%で、満足度は 95%程度でした。下肢静脈瘤血管内レーザー治療に関して
Q)どのような治療ですか? A)静脈瘤の原因である血管の中に細いカテーテルを挿入し、レーザーファイ バーを通して、レーザーの熱によって静脈をふさいでしまう方法です。静脈瘤 の外科的手術として Gold standard なストリッピング術は悪くなった静脈を抜 去(取り除く)する手術ですが、これらの血管内レーザー治療、ラジオ波焼灼 術は取り除く事なく静脈をふさいで血流をなくす手術です。 Q)この治療のメリットは? A)最大のメリットは、従来の手術は足の付け根(鼠径部)と大腿部の 2 箇所 に切開を加える事が必要でしたが、これらの血管内治療は細い針を穿刺するだ けで治療する事ができます。下腿の静脈瘤も可及的に小さい傷で摘出すること で、目立たない傷、痛みが少ない、身体に優しい治療となります。 Q)焼いた静脈は大丈夫ですか? A) レーザーで焼かれた血管は血液が流れなくなって、およそ、半年間ぐらい で退化し生体に吸収されます。 Q)無くなっても大丈夫ですか? A) もともと静脈瘤の原因のいわゆる「悪い血管」ですので、無くなっても大 丈夫です。深部静脈がありますので、そちらを通って血液は心臓に戻ります。 Q)再発はありますか? A)長時間たつとやはり、再発が認められるケースはありますが、非常に少な いです。 Q)いい事ばかりだけど、悪い事は?合併症は? A)合併症として、術後に下肢のしびれ、後出血、下肢のむくみ、水泡、皮下出 血班、痛み、血栓などがあります。いずれも対症療法で問題なく経過するもの ばかりです。ただし、長期間で再開通する場合もあり、また、患者様が思って いた以上に症状が変わらないと訴える場合もあり、患者様の満足度が 100%叶 えられるものではないかも知れません。(医学の限界?個人差?)Q)手術後は、何回も通院しないといけないのですか? A) ほとんどの場合が、外来での日帰り手術となっております。手術後は翌日 と 1 週間後、そして 1 ヶ月後の計 3 回程度です。 Q)手術後すぐに歩けますが? A)手術後は歩いて帰ってもらって、家事や家庭内の仕事は当日からできます。 事務系のお仕事などは翌日より復帰する事ができますが、肉体労働や長時間の 立ち仕事、あるいは汗をかくような激しい運動は 2〜3 日は控えるようお願い しています。 Q)治療費はいくらぐらいですか? A) 2011 年 1 月から健康保険が適応されておりますので、3 割負担の方で自己負 担は約 4 万 6 千円から 5 万円です。 Q その治療は安全ですか? A) 安全は治療です。また、保険収載にあたって、厚生労働省より治療を行う 医師にはレーザー機器の取り扱いとレーザー治療の講習が義務づけられてお ります。(但し、医学に 100%の安全はありえません。) 当院はレーザー治療の認定施設であり、施行する Dr も外科指導医、脈管専門 医でレーザー治療実施認定医で、血管外科、静脈瘤のスペシャリストです。