Qスイッチアレキサンドライトレーザーを低出力で 照射することにより、ミトコンドリアの活性化が起 こり、皮膚の若返りが可能であることはすでに老化 撲滅大作戦その5で報告しました。アレキサンドラ イトレーザーを低出力で顔全体からフェイスライン に照射すると、たった3日であごの下のタルミはと れ、眼の下のクマや頬のたるみもなくなり、目元も くっきりとなります(図1から4)。 この方の場合照射後の写真はメイクアップをしてい ます。通常レーザーの効果の持続時間は1,2ヶ月 ですが、この方の場合レーザーの効果は3ヶ月以上 持続しました。老化撲滅大作戦その5で述べたよう に、私の皮膚にアレキサンドライトレーザーを照射 するとエラスチンと表皮細胞の増加が起こりました。 そしてメラニンを持っていないマウスではコラーゲンや表皮細胞の破壊の所見を伴わずに、 表皮細胞、繊維芽細胞と思われる細胞の数の増加、コラーゲンやエラスチンの著明な増加が認められました。
これらの所見は、もしレーザーがメラニンに邪魔されな いのであれば、ターゲットとなるミトコンドリアをより 強く活性化することが可能であることを強力に示唆して います。波長をアレキサンドライトレーザーより長い方 向に持っていくことにより、メラニンに対する反応性は 低下します。しかしながらヘモグロビンやミトコンドリ アに対する反応性は増加するのです(図5)。 もし私の説が正しいのであれば、波長が755nmのアレキサン ドライトレーザーよりも1064nmのヤグレーザーの方がより 強い若返り作用を発揮するはずです。そこで私は顔の片側、 写真の左側にアレキサンドライトレーザー、右側にヤグ レーザーを顔から頚部にかけて同じショット数照射しまし
この時点ではコラーゲンやエラスチンの増殖はほとんど起こっていないはずです。このリフトアップ効果は筋肉 の収縮によるものです。そしてノーメイクで撮影した照射1週間後の所見では左右とも頬がビシっと引き締まっ ています(図8)。また眼の下のクマもほとんど消失し、照射前にあった頬を八の字に走る垂れジワもなくなっ ています。これはコラーゲンやエラスチンの増加によるものです。これらの所見よりアレキサンドライトレー ザーもヤグレーザーも蛋白や細胞の増殖による顔の引き締め効果を発揮することが明らかになりました。この効 果は約1ヶ月は持続します。もちろんビタミンA,Cの外用は一切行っていません。(図9)。 1ヶ月後に顔から フェイスラインにかけてヤグレーザーを照射し、今度はビタミンA,Cの外用を併用しました。1ヵ月後でもさら にきれいなフェイスラインが維持されています(図10)。 36時間後の写真のみメイクアップをしていますがそれ以外の写真はメイクをしていません。これらの結果は老 化撲滅大作戦その5で述べたように、レーザーを照射するだけでなく、ビタミンA,Cの外用を併用したほうが、 表皮細胞の増殖が増加するという所見に一致します。 すなわち、レーザーでミトコン ドリアを活性化して、ビタミン A,Cがスムーズに細胞内に 栄養を補給するという協調 作用により、リフトアップが 増強したのです。もちろん ビタミンA,Cそのものにも代謝 促進作用があります。 3/7
私はいろいろな方にアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーを片方ずつ照射してみました。その結果、色の 白いヒトではどちらも有効であるという結果が出ました。今まで、色の黒い方にアレキサンドライトレーザーで 照射をする場合には、出力を十分に落として炎症性の色素沈着を起こさない様に、慎重にする必要がありました。 しかしながらヤグレーザーではメラニンに対する反応性が低いので、出力を落とすことなく気楽に照射すること が可能となったのです。レーザーで一番大切なことはどれほどのエネルギーを皮膚に与えるかと言うことです。 1ショットあたり皮膚に与えることのエネルギーの総量はエネルギー密度という言葉で表現されます。エネル ギー密度の単位はJ/cm2です。そして、エネルギー密度は、単位時間あたりに照射されるエネルギー(これをパ ワー密度といいます単位はW/cm2 です) かける 照射時間で表すことができます。すなわち、エネルギー密 度(J/cm2)= パワー密度(W/cm2) X 照射時間(秒)という計算式が成り立ちます。 Qスイッチアレキサンドライトレーザーの照射時間 は50ナノセック(nano sec) すなわち1億分の5秒とい う非常に短いものです。これはこのレーザーがもともとシミをとるために開発されたためです。すなわちアレキ サンドライトレーザーの光はメラニンを多く持っているシミを破壊する作用が必要です。しかしながら我々のシ ミでない正常皮膚にもメラニンは存在します。照射時間が長いと、正常皮膚も破壊してしまう可能性が増加しま す。ですから照射時間は非常に短い必要がるわけです。私はQスイッチアレキサンドライトレーザーのレーザー のエネルギー密度は設定できる最低の 3J/cm2として使用しています。一方ヤグレーザー(クールグライドバン テイジ Coolglide Vantage)の照射時間は 0.1ミリセック(msec) すなわち 1万分の1秒と設定しました。そ してエネルギー密度は15J/cm2としました。このように照射時間を長く設定できるのは、メラニンに対する 反応 性が低いからです。ヤグレーザーの1ショットあたりのエネルギー密度はアレキサンドライトレーザーの3J/cm2 から15J/cm2と5倍になっています。ヤグレーザーの照射時間はアレキサンドライトレーザーの1億分の5秒か ら1万分の1秒と2000倍になっています。したがって単位時間に皮膚に照射される光子(フォトン)の量、すなわ ちパワー密度は1/2000 X 5 = 1/400となることが計算式で求めることができます。すなわちヤグレーザーでは単
すなわち実際にレーザを照射する場合、エネルギーの総量が同じであるのであれば、照射時間の長いレーザーほ ど、単位時間に照射されるレーザーの光子(フォトン)は低下するということです。アレキサンドライトレー ザーを照射する場合、1ショットごとにゴムを弾くようなパチンという衝撃があります。これは大量の光子が皮 膚にあたる際に生じる衝撃波なのです。ヤグレーザーでは単位時間に照射される光の量は400分の1になった ため、パチンという衝撃波はなくなったのです。他に時間あたりの光の量が400分の1になった分、照射時間 を2000倍と長くすることでトータルの1ショットあたりのエネルギー密度はアレキサンドライトレーザーの5 倍とすることが可能となりました。これらの結果は様々な利益を患者さんにもたらします。 いままでのアレキサンドライトレーザーでは、パチンという痛みを防ぐために、麻酔のクリームを塗って、20 分から30分待ってもらう必要がありました。しかしながらヤグレーザーでは少し温かみを感じるだけで、痛み は全くありません。また照射後にアレキサンドライトレーザー ではやや赤くなった皮膚に非ステロイドの抗炎症 剤を塗り、20分から30分冷やす必要がありました。しかしながらヤグレーザーでは照射後に皮膚はほとんど 赤くならず、照射後の冷却の必要もありません。両方のレーザーとも照射時にはフォトフェイシャルや一部のダ イレーザーのように冷却ジェルや冷却ガスを必要としません。しかしながらアレキサンドライトレーザーの場合 は麻酔と冷却が必要なため、青山ヒフ科クリニックでは予約制となっていました。ところがヤグレーザーでは麻 酔も冷却も必要ないため、1日何人でも照射することが可能となりました。
このヤグレーザーの利点は波長が長いのでメラニンへの吸収率が低く、アレキサンドライトレーザーほどメラ ニンに邪魔されずに、細胞の発電機であるミトコンドリアを確実に活性化できることです。したがって色の黒 い方でも大丈夫です。アレキサンドライトレーザーでは1秒間に5ショットの照射数でしたが、ヤグレーザー では1秒間に7ショット可能です。これは照射範囲が広い場合では大きな照射時間の差になります。 ミトコンドリアは細胞の細胞質に2000個ほど存在し ます。ミトコンドリアのDNAは細胞の核に存在するDNAと は全く異なっています。太古の昔、数十億年前、光合成 をする細菌が真核細胞に取り込まれて、植物のなかで進 化したのが、光合成をする葉緑体と言われています。ま た好気性細菌が真核細胞に取り込まれて、動物のなかで 進化したのが、ミトコンドリアといわれています。すな わち動物のミトコンドリアの相似体が植物の葉緑体なの です(図11)。
さてミトコンドリアの電子伝達系も低出力レーザーで活性 化することがすでに報告されています。この現象はミトコンドリアが植物の葉緑 体の相似体と考えれば当然のことです。そしていままでの高出力レーザーのメカニズムは、ターゲットとする色 素の熱による破壊でした。ですからシミやあざや血管腫が治療可能なのです。しかしながら低出力レーザーのメ カニズムはターゲットとなるミトコンドリアの活性化なのです。そしてミトコンドリアの電子伝達系は赤茶色な のです。そして1064nmより波長の長いレーザーで若返り効果をうたっているものがありますが、なかなか治療効 果が出にくいようです。これは1064nmより波長が長くなると、レーザー光が水に吸収されてしまうからだと考え られます。我々の体重の75%が水です。波長の長いレーザーでは皮膚の表層に大量に存在する水によりそのエ ネルギーが吸収されてしまい、深部に到達しないのでしょう。しかしながら非常に興味深いことがあります。大 部分の患者さんは、痛くないヤグレーザーを好みます。でも一部の患者さんは、痛くてもアレキサンドライト レーザーの方が効果を感じるので、アレキサンドライトレーザーのほうを希望するのです。ミトコンドリアの感 受性がヒトによって異なるのでしょうか? この事実はこれから解明しなくてはならない謎です。 ミトコンドリアではATP合成酵素と電子伝達系(プロトンポ ンプ)が存在します。一方葉緑体ではATP合成酵素と電子伝 達系に加えて、光捕捉系が存在します。そして葉緑体が捕 捉する光は赤なのです。波長の短い青い光は大気中で散乱 してしまいます。一方波長の長い赤い光は大気の中で散乱 することなく、地表に到達し、そして植物の奥深くまで 入っていくのです。アレキサンドライトレーザーの色もヤ グレーザーの色も赤です。葉緑体では電子伝達系に光が当 たると、低エネルギーの電子が励起され、高エネルギーと なって次々と移動します。これらの反応は光子があたって、 10-6秒以内に瞬時に起こるとされています。これらの 様子を(図12)に示します。