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相互会社における保険加入者の法的地位--通説の再検討---香川大学学術情報リポジトリ

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香 川 大 学 経 済 論 叢 第68巻 第l号 1995年 6月 1-20

相互会社における保険加入者

の法的地位

一一通説の再検討一一

中 島 伸 一

I は じ め に 相互会社は,相互保険を目的として組織された会社であり,保険業法

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条に おいて,株式会社とならんで保険事業を営むことができる会社形態として指定 されている。相互会社は商法上の会社(商法

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条)ではなく,保険業法制条 以下に基づいて設立される一種の社団法人である(保険業法

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条で準用する商 法54条)。それは保険加入者Jたちを構成員(社員)とする会社であり(保険業 法

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項,

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条等),その意味では保険加入者たちは保険者たる地位を分有 している。相互会社には株主資本に相当するものがなく,しかも社員の責任は, (1) 服部栄三「相互保険会社におげる保険契約者の地位(二)J (r法学J23巻4号所収)61 ページが説く「相互会社は社団でも財団でもない第三種の法人」とする説,あるいは大塚 英明「保険相互会社概念の再構成J(r損害保険研究J45巻4号所収)15ページ以下のよ うに「財団」とする説も出てきているが,それらの評価については後述する。 (2 ) 相互会社設立時には碁金」と呼ばれる特殊な借入金(保険業法34条5号-6号, 36 条jが導入される。「基金」の経済的・法的性質(同法印条, 64条, 75条参照)につい ては,石井照久(鴻常夫増補)r海商法・保険法J165ページ参照。その相互会社定款にお ける具体的な規定例については山下友信監修「中目互会社の現代的課題」に資料として収録 された共栄火災海上保険相互会社定款第2章が参考になる。それによると,基金拠出者に は記名の「基金証券」が交付されるが,その法的に非常に不利な立場に見合って基金 利息引当金」を基金の未償却額に対し100分の12以内の割合で積み立てることとされ, この範囲内で基金利息が支払われる。 1994年 6月 24日付保険審議会答申「保険業法の改正についてJ(以下「業法改正答申」 と略記)では,相互会社設立後における基金の増額を可能にしようとしている。それは相 互会社における財産的基礎(広義の自己資本)の充実を図的としている(山下友信「保険 業法等の改正について(上)Jジュリスト 1051号参照)。

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-2ー 香川大学経済論議 2 その払い込む保険料を限度とする(同法44条)。保険料の対価として,相互会 社の保険加入者(またはその指定する第三者)は保険給付(正確にいえば,期 待権としての)を受けることになるが(商法629条, 647条, 673条, 675条), この相互会社と加入者との保険契約的な関係は r保険関係」と呼ばれる(保険 業法50条但書, 60条l項2号)。また,その保険加入者が相互会社の構成員と なるという結社行為的な側面は一般に「社員関係」と呼ばれる。加入者はこの こ重の関係を相互会社との間で持つことになるが,両関係は切り離しえないも のといわれ

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。これを法的にどう概念構成するか,債権法的な保険関係と社団 法的な社員関係というこつの関係の同時存者をどう説明するかは r学説の対立 するむずかしい問題」である。 この点,現在では「保険関係が社員関係に包摂されるJ,換言すれば「会社と 社員との関係は一体として社団法的な関係であり,そのー内容として保険関係 が含まれるに過ぎない」と主張する社員関係説(社員関係吸収説,社員権説等 の呼び名もある)が通説である。 (3) ,保険契約」と言い切らないのは,商法664条, 683条1項により商行為としての保険契 約に関する商法の規定は,相互保険に「準用」されるに過ぎないのであり,保険契約」 と言ってしまうと本稿の主題について一つの立場(重畳説)を採ってしまうことになるは ずだからである。 (4 ) 保 険 業 法 的 条 l項 l号等を根拠にこのように考えられているが,同条に関する北村雅 志解説(,文研論集J108号261ページ以下)は疑問を呈している。 ( 5) 社団法的関係とは,株式会社の場合で言えば,株主としての地位に基づく権利義務に対 応し,強行法規等に反しない限り新たな権利の付与や既存の権利の寺町j奪・変更も可能であ る。債権法的関係、とは,総会の決議により特定した配当金支払請求権のような通常の債権 債務に対応し,権利行使の順位も他の債権者と同じである(鈴木竹雄・竹内昭夫「会社法 第3版J106ページ参照)。通常の状態の相互会社における社員関係と保険関係とであれ ば,これと同様に考えてよいが,会社の解散・清算の段階においては,社員の保険金額」 および積立金(損保の場合は米経過保険料)は,基金の償却よりは優位にあるが「一般の 債務」よりも劣後するという特色がある(保険業法75条)。 ( 6 ) 石田満「相互保険における保険加入者の地位J(ジュリスト増刊「商法の争点IIJ 286-287ページ) (7) 江頭憲治郎「商取引法 下J342ページ,田中誠二・原茂太一「新版保険法(全訂版)J 61ページ,西島梅治「保険法(新版)J 125ページ。なお,岩崎稜「フランス相互会社法 素描J (生命保険文化研究所「所報」第5号所収)223ぺ」ジは,相互会社の法的構造の問 題がたえず注目されるのは「その展開の軸となる棺互保険加入者の独自な二重的地位が 団体法論一般の中核たる社員地位論推進の手がかりとなる最も鮮かな場を供している点 にある」という。

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3 相互会社における保険加入者の法的地位 -3-私は,かねてより相互会社加入者の法的地位に関する通説的説明は実務にそ ぐわない,という印象を抱いてきた。またこの問題についての論争が,非常に 抽象的(よく用いられる表現によれば,哲学的,あるいは神学的)なようであ りながら相互会社のあり方を考える基礎的視点を提供していることを感じてき た。そこで,本稿では「中目互会社への加入は,入社契約と保険契約との結合し た保険入社契約という独特の行為であり,その内容は保険関係と社員関係とが 平等の立場で結合しているもの」という結合説の確立と展開を試みることとし たい。 本稿は,まず相互会社と相互保険の概略を述べて問題の背景を説明するとと もに,議論の範囲を画定し(II),次いで相互会社の保険加入者の地位に関する 社員関係説を検討し (III),結合説の確立と展開を試み(IV),保険関係説を検 討し(V),最後に本稿で展開した法的検討と保険業法改正の動きとの関連を簡 単に述べる (VI)。 最近では,相互会社の研究が進んでトいる。かつてはこの分野の本格的研究は 少なかったが,保険業法の

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年ぶりの改正の動き,特に相互会社の事業経営の た め の 財 産 的 基 礎 の 充 実 や 相 互 会 社 の 株 式 会 社 化 の 問 題 と の 関 連 で 注 目 を 集 め,多くの研究成果が発表されている。本稿はこうした最先端の研究から多く の示唆を受けているが,あくまでも古くから論じられてきた「相互会社におけ (8 ) このような古い形態の議論を続けることに対してはどれだけ意味のある論争かj, 「社員の実質的な地位をより肌理細かく検討すべき」という批判がある(山下・前掲監修 普所収の山下友信「キ目互会社法の問題点j16-17ページ参照)。この批判の趣旨はよく分 かるのであり,抽象的議論が保険加入者の権利義務の具体的検討の妨げとなってはなら ないが,私としては,トータルに相互会社およびその業務を認識するための一つの手法と して,このような議論をしているのだと考えている。なお,古瀬政敏「相互会社の財務構 造と社員の地位j (鈴木辰紀教授還暦記念「保険の現代的課題」所収)は,結論的には社 員関係説を採りつつも r結合説(に)共感を覚えなくもない」と述べている。 (9 ) 田中・原茂・前掲62ページ (10) 代表的なものとして,山下・前掲監修書のほか,同教授による「相互会社と生命保険」 (ジュリスト948号), r相互会社j (竹内昭夫編「保険業法の在り方上巻」所収)など, また,大津康孝教授の「中目互会社法の基本構造j (r私法A3号所収入「相互会社と生命保 険契約の関係j(ジュリスト 951号),r保険会社の破産についてj(鴻常夫先生還暦記念「八 十年代商事法の諸相」所収)などがある。

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-4- 香川大学経済論叢 4 る保険加入者の法的地位」という基本問題を解明しようとするものである。諸 先輩の研究の百尺竿頭に一歩を進めることができれば, と願っている。 II 相 互 会 世 と 相 互 保 険 相互会社は我が国の民間生命保険事業において中心的地位を占めている。す なわち 1993年度において, 会 社 数 で30社 (r外国保険事業者に関する法律」に より規制される外国法人を含む)中 16社 , 生 命 保 険 料 収 入30兆 円 余 の う ち 相 互 会 社 の 収 入 保 険 料 が91%を占めていど。一方,損害保険では相互会社は小さ な2社のみで市場占拠率もわずかであるが,外国ではかなりの数の損保相互会 社があり,大会社もあるという。 わが国で保険事業を営もうとする場合,保険業法によれば,株主を構成員と する会社形態(株式会社) または保険加入者を構成員とする会社形態(相互会 社)のいずれかによることが必要である(同法3条)。前者において営まれる保 険は営利保険,後者におげるものは相互保険と呼ばれど。商法

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号 に 規 定される「保険」は前者である。 相互保険は「保険を付けようとする者が団結して団体を組織し,同時にこれ と保険関係に立つ場合であって,保険を付けようとする者の共同の計算をもっ てする保険」 というように定義されど。図式化していえば,営利保険において (11) 週刊東洋経済臨時増刊「生命保険特集号例年版J167ページの表から計算 (12) 生命保険文化研究所編「ドイツ・オーストリアにおける保険相互会社論J34ページによ れば,損害保険における相互会社の市場占拠率 (1990年)は,フランスで39%,オラン ダで33%,オーストリアで31%である。なお,同書49ページ以下によれば, rEUの相互 保険事業者に関する規約は小規模企業しか念頭に置いていない」と,ドイツ保険総連合

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は非難しているという。 (13) 岩崎稜「保険事業の定義J(竹内昭夫編「保険事業の在り方下巻」所収)143ページ によれば,相互会社に相互保険の法的独占を認めるのは日本特有である。しかし,中西正 明「事業の監督J(竹内編・前掲所収)79ページはこの限定を維持すべきとし,業法改正 答申も同様である。 (14) 鈴木竹雄「商行為法・保険法・海商法J67ページ,田中・原茂・前掲44ページ参照。 現行法には相互保険あるいは相互会社を定義する規定はないが,旧商法(1885年制定)659 条は「社員相互ノ保険ヲ目的トシテ設立シタル会社」について規定していた(大津・前掲 「相互会社と生命保険契約との関係J74ページ)。

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5 相互会社における保険加入者の法的地位 -5-は,保険を必要とする多数の者の中聞に営業者(保険料の収入総額と保険金の 支払い総額との差額の収得を目的とする)が介在する。これに対して,相互保 険においては,保険を必要とする者によって共同危険団体が法的な組織として 直接に作られ,団体の理事者(取締役等)がその業務を管理するのである。 このような差異を反映して,株式会社における保険加入者は保険契約上の権 利義務しかもたない。一方,相互会社においては,保険加入者が,保険関係上 の権利のほか,議決権,総会決議取消請求権など会社の運営に参加する権利を 持ち(保険業法

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条,

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項,

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条等),また,剰余金の分配(配当) 請求権(同法

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条),残余財産分配請求権(同法

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条)などを有するが,反面, 加入者の支払う保険料が出資的な位置づけを与えられ(同法

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条-45条),実 際に発動されるかどうかは別にして,定款の定めるところにより経営悪化の場 合に保険金が削減されることが想定されているのである(同法

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条)。もっと も,この最後の点については,定款で保険金削減をしない旨を定めることも可 能という説がある。 営利保険は,論理的には,有限会担その他の会社形態あるいは個人によって も営まれうる(外国保険事業者に関する法律2条1項参照)。それと同様に相互 保険についても,論理的には,-保険を付けようとする者が団結」するための法 的形態として保険業法上の相互会社のみならず, ドイツで「小相互組合」と呼 (15) わが国では相互会社の運営のあり方が問題とされる傾向がある。しかし保険株式会社 の運営に関して保険契約者がなんの発言権もないのはもっと問題ではないか。特に長期 の契約にもとづき次々に流入する保険契約者からの資金が会社資金の大半を構成してい る生命保険株式会社に関連して大いに研究されるべき課題である(森本 滋「生命保険相 互会社の管理と商法改正J(三宅追悼「保険法の現代的課題」所収)598ページ,山下・前 掲「相互会社J356ページなど参照)。 (16) 保険業法51条は社員総会と社員総代会の双方を認めるが,相互会社の定款ではすべて 総代会を採用している。その現状と立法論について,山下・前掲「中目互会社J386ページ 以下参照。 (17) 野津・前掲113ページは「保険金削減を実行する相互会社は間もなく滅亡する」ことに 注意を喚起し,同110ページは保険業法46条の解釈としても保険金削減をしない旨の定 款規定は可能とする。大森忠夫「保険法J10ページも保険金削減が「実行されることはほ とんど予想されない」と述べている。手続面まで踏み込んだ保険金削減の研究として,大 津・前掲「保険会社の破産についてJ781ページ以下。

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6 香川大学経済論叢 6 自 由 ばれ, フ ラ ン ス で 「 相 互 保 険 組 合 」 と 呼 ば れ る 保 険 目 的 の 相 互 組 織 , 各 種 協 同 組 合 法 に も と づ く 協 同 組 合 等 が 考 え う る 。 わ が 国 で ト も 保 険 業 法 以 外 の 法 律 を 根 拠 と し て 相 互 保 険 を 営 む も の が あ る 。 船 主 相 互 保 険 組 合 法 に も と づ く 日 本 船 主 責 任 相 互 保 険 組 合 , 漁 船 損 害 等 補 償 法 に

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も と づ く 漁 船 保 険 組 合 ( 船 体 , 積 荷 等 の 保 険 も 営 む ) な ど は そ の 典 型 で あ る 。 。 骨 な お ほ か に , 船 主 相 互 保 険 組 合 , 漁 船 保 険 組 合 の 場 合 の よ う な 十 分 な 法 規 制 が 存 在 し な い に も か か わ ら ず , 共 済 等 の 名 で 行 な わ れ て い る 相 互 保 険 ( な い し 相 互 保 険 類 似 の シ ス テ ム ) が あ る 。 こ の よ う な 形 態 の 相 互 保 険 に つ い て は , 本 稿 (18) その歴史,法規制等については,岩崎稜「フランス相互保険会社素描」および「ドイツ 相互保険法の中核概念J (生命保険文化研究所「所報J5号 6号所収),ならびに大塚英 明「保険相互会社概念の再構成(1)(2)J (損害保険研究 45巻 3-4号所収)。フランスの例 では, 1938年の段階で,相互保険会社・相互保険組合の区分が法制化され,後者は,地域 あるいは職域を基礎とした閉鎖的団体とされ,変額出資制(保険料は事後的に確定)であ ること,取締役等の無報酬などが要求されることとなった(前掲・大塚論文(1)92-94ペー ジ)。 (19) 江頭・前掲 338ページ,石井・前掲 142-143ページ (20) 船主責任相互保険組合および漁船保険組合に関する法規制について,保険業法による 相互会社との対比において注目すべき点のみ摘記すると,次のとおりである。(なお,こ こでは,前者を「船主の場合」と,後者を「漁船の場合」と略記する。)これらは,前述 の「小相互組合」あるいは「相互保険組合」に近似したものといえよう。 l 船主の場合,保険料とは別に組合員の出資の義務(出資の引受けが先行し,組合員に よる出資の総額は200万円以上司である要)。その出資と保険料の払込みにより「保険契 約」が成立。員外利用禁止を明記。一方,漁船の場合は保険料の支払い義務のみで,そ の支払いにより「保険関係」が成立。組合の契約引受拒否は制限され,また,一定の要 件を満たすと,組合員たる資格を有する者に付保義務が発生。(漁船の場合,国家によ る再保険システム,国庫補助などが法定されていることが関係しているのであろう。) 2 船主の場合,組合員総会のみで,総代会のシステムは予想されていない。また,組合 員以外の者を役員に選任するには主務(大蔵・通産)大臣の認可が必要。漁船の場合, 総代会も可能であり,理事について5分の3以上は組合員であることが要件。 3 組合からの脱退については, 3か月前までに予告の要(船主の場合は事業年度末での 脱退に限定するとともに,持分の払戻しを明記)。 4 保険金の削減のほか保険料の追徴J(漁船の場合 r追徴金J)が定款に定められる が,それを実行するには,総会の特別決議,主務大臣の認可が必要。 5 剰余金の分配については,船主の場合年 6分以下で出資額比例(補充的に利用量比 例),また漁船の場合「省令で定める基準」に従って行なう。 6 法の規定を準用する場合,船主の場合は保険業法と商法,漁船の場合は商法と民法を 準用。 (21) 共済の相互保険性については,大津康孝「保険と共済J (遠藤 浩ほか監修「現代契約 法大系第6巻」所収)131ページ以下参照。保険業法が,大規模会社(営利保険では株式 会社,相互保険では相互会社)に限って保険の引受けを認めている背景には,旧保険業法

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7 相互会社における保険加入者の法的地位 7~ では相互会社の保険加入者の地位を分析するという目的に必要なかぎりで参照 するに止めるが,相互保険には様々な段階のものがあれどこまでを視野に入 れるかにより議論の仕方が違ってくるように思われる。 閉鎖的な保険組合では,一人の加入者の保険事故が身近な他の加入者(仲間) の負担に直結するので,保険事故の発生を極力防止しようという気持ちが働く であろう。漁船保険組合などは典型的にこの段階のものと想定されているので あろう。こうした段階匂では,社員関係説が説くような,社団あるいは組合の組 織原理が優先するシステムがあるいは適合的といえよう。しかし,われわれの 問題意識は,あくまでも保険業法が想定する相互会社,すなわち加入者が

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万 人,

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万人というスケールの(あるいは,そうなることを目指している)相互 会社であり,これを社員関係説で説明し,あるいは社員関係説で考えることは 適切なのであろうか。 保険加入者が会社の構成員となるという相互会社の組織原理は協同組合に似

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ているが,協同組合では,通常,組合加入行為が先行し,加入に際して出資が (1900年,明治 33年制定)以来の,泡沫保険会社,類似保険業者に対する警戒心がある。 かつてそれらの業者のもたらした弊害の要点と政府による取締りの結果については,水 島一也「現代保険経済」第 4 版 63~64 ページ参照。現段階におけるこの問題の検討とし ては,大森忠夫・前掲 318~319 ページ,倉沢康一郎「現行保険業法の問題点 J (r保険学 雑誌J492号所収入岩崎・前掲「保険事業の定義J140ページ以下など参照。中西正明「事 業の監督J(竹内編・前掲・下巻)79ページおよび業法改正答申は,現行保険業法の大規 模会社限定を維持しつつ,資本金・基金の最低額を 10億円に引上げることを提案してい る。 (22) 相互会社に関して協同組合との共通性を強調する学者もある(たとえば野津・前掲 29~49 ページ)。これはドイツにおける相互会社の創設・発展が,イギリス保険会社の営 利主義(高い保険料)への反発をパネに,また思想としては古くからの相互扶助組織との 連続性を保ちつつなされたことを背景としており,そのドイツでの議論を輸入したもの であろう。歴史的事実としては,保険を最小の保険料で提供すること(実費による保険 サービス)を謡い文句として,企業家が,協同組合の組織原理(損益と会社支配権が保険 加入者に帰属),近代的保険の合理的経営手法(確率論を用いて保険料収入で保険金支払 いを安定的にカバーすること,マーケィング手法等),基金提供者(前記注2参照)など を結合したところに,相互会社(少なくとも保険株式会社と競争しようとするような相互 会社)が成立したものと思われる(大津・前掲「椙互会社と生命保険契約との関係J75ペー ジ)。また,そうしたシステムによる保険が世人にかなり受け入れられたわけである。な お,保険学者による相互会社の成立史の概観として水島・前掲 31~76 ページ,また欧米 各国の相互会社生成史の詳細について,水島一也「近代保険の生成J,田村祐一郎「経営 者支配と契約者主権」などがある。

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-8ー 香川大学経済論叢 8 要求される。そして組合加入後に購買,共済などの具体的利用行為が行なわれ る。農業協同組合が行なっている共済を例に取ると,共済契約と組合加入契約 とは別々に行なわれ,共済加入者と組合員とは一致しない。組合員がその資格 に基づいて有する組合事業利用権を行使する結果として,組合事業の一環であ る共済に関する権利義務関係が成立する。(また,枠を設けているものの,員外 利用が許容されている。)同様に,消費生活協同組合において売買関係が生じる には,組合加入後における個別の取引を必要とする。 相互会社に関する社員関係説的構成を協同組合にも貫徹する立場では「協同 組合における組合員の地位についても,一個の社員関係が存在するだけであり 具体的利用関係もそれに包摂されるものであるが,具体的利用関係については 仰) 第三者的法律関係として処理される」と説明される。しかし「個々の利用関係 は原則として第三者(たとえば員外利用の場合)と同様の法則によって規制さ れるが,定款,共済規程等による団体法的規制が及ぶ範囲では一般の法律関係 が修正されることがある」と考えるほうが素直なのではないか。そして私はこ のような協同組合について素直な考え方を,そのまま相互会粧の保険加入者の 地位に関する議論に持ち込めばよいのではないか,その構成は従来説かれてい た結合説を少し修正したものになるのではないか,と考えるのである。 なお,相互会社では,結社行為的意味での会社加入の意思表示が明確でなく,

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設立時を除き,保険加入のための申込書が提出されるのみである。 III 社員関係説の問題点 ここでは,まず,通説である社員関係説を要約しておきたい。たとえば大森 (23) 大津・前掲「保険と共済J128ページ以下 (24) 相互会社設立時において社員になろうとする者は,入社申込証(発起人がこれに記載す べき事項は保険業法38条2項により法定)を提出すべきこととされている。その記載事 項は株式申込証(商法 175条)に対応している点が多七社団関係が明白に出ているが, 社員になろうとする者が記載すべき事項として「保険の目的及保険金額J(保険業法38条 1項本文)があり,保険関係の同時存在がここでも明白に示されている。しかも, 38条1 項但替では会社成立後の場合は入社申込証の提出不要の旨を明記して,上述の笑務の根 拠を提供している。

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9 相互会社における保険加入者の法的地位 -9ー 博士は「相互保険関係が実質において営利保険契約とほとんど異ならないこと を承認しつつも法的な概念構成の問題としては,やはり会社と社員との関係は 一体として社団法的な社員関係であり,保険関係もそのー内容を構成するもの と解するほかないであろう。」とされる。このような構成をする根拠としては, 保険金削減の制度(保険業法46条)の存在 i実質的には払込保険料の一部払 戻に相当するものが剰余金の分配の制度として認められていることJ (同法66 ω 条)などが理由としてあげられる。このような理解のもとにおいては「保険関 係は(中略)契約関係ではない」のであり,だからこそ相互保険に関して「商

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法の営利保険の規定が適用ではなく準用されるのである」と主張される。 このような考え方のもとでは「保険関係上の問題が社団法的な法則ことにた とえば多数決原理によって社員の不利益に左右されうる」という問題が出てく る。そこで「特定の内容を持った保険関係の形成ということは相互会社への加 入の主要目的であり,この関係にもとづく権利はいわば社員の固有権として, m 多数決により不利益に変更され得ない,と解することができるであろう。」とさ れる。 大森博士の慎重な言い回しに象徴されるように,この通説的見解は,決して 問題のないものではない。社員関係説をとる学者たちが自認しておられるよう に,このような理論構成は,社員となる加入者の意識と希離している。加入者 は保険契約を締結するという意識しか持っていなし亙。特に生保の場合,株式保 険会社も相互会社との競争上,契約者配当を実施するようになり,相互会社に 加入するメリットについて語られなくなったことも背景になっている。 さらに相互会社自身の意識とも需離している。相互会社の定款にも約款に も,随所に「保険契約Ji保険契約を締結」等の用語が用いられている。これは 戦後にできた相互会社(現在の相互会社のうち,生保の 13社,損保の2社)の みに見られる事象ではない。戦前からの生保相互会社(第一,千代田,富国) (25) 大森・前掲351-354ページ (26) 鈴木・前掲70ページ (27) 大森・前掲353ページ

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-10- 香川大学経済論叢 世田 10 の 設 立 時 定 款 , 約 款 で さ え 同 様 な の で あ る 。 そ し て 決 定 的 な の は , 保 険 業 法 が 堂 々 と 「 保 険 契 約 」 と い う 言 葉 を 用 い て い る こ と で あ る 。 同 法

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号 は , 社 員 名 簿 の 記 載 事 項 と し て 「 各 社 員 の 保 険 契 約 ノ 種 類 , 保 険 金 額 及 保 険 料 」 を 規 定 し て い る 。 ま た 経 営 効 率 が 劣 悪 な 保 険 会 杜 の 経 営 を 委 任 契 約 に よ り 他 の 保 険 会 社 に 管 理 さ せ る 制 度 に つ い て , 同 法92条 2項 は 「 柾 員 総 会 ノ 決 議 」 に よ り 管 理 を 委 託 す る 場 合 を 想 定 し つ つ , 受 託 会 社 ( 株 式 会 社 , 相 互 会 社 と も 可 ) が 「 委 託 会 社 ノ 為 ニ 保 険 契 約 其 ノ 他 ノ 取 引 ヲ 為 ス ニ ハ 」 云 々 と 規 定 し て い る 。

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条 以 下 の 整 理 勧 告 ・ 命 令 ,

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条 以 下 の 「 保 険 契 約 ノ 全 部 ヲ 包 括 シ テ 移 転 」 す る 制 度 等 に つ い て の 規 定 に お い て も 同 様 で あ る。 ま た , 外 国 保 険 事 業 者 に 関 す る 法 律3条2項 , 同 条5項 2号 , 保 険 募 集 の (28) たとえば第一生命の設立時(1900年)の定款第 2条には「社員ハ当会社ノ保険契約者タ ルコトヲ要スJ,また第4条には「当会社ハ保険契約ノ終期ニ達シタ1レトキ(中略)保険 金ヲ支払フモノトス」というように規定されている。なお,本文記載のような事実を指摘 したものとして,野津・前掲129ページ,江頭・前掲 342ページ。 (29) 窪田宏「保険法J47ページは,社員関係説の立場から,この「保険契約J(49条 2項) および「保険料J(45条)という言葉は「便宜上」のものだとされるが,はたしてそのよ うに簡単にかたづけてよいのであろうか。保険業法制定当時には,相互保険における保険 加入者の地位に関しては,重畳説(相互保険契約は団体行為と保険行為のニつを包含し, この両行為は相互に独立性を保ちつつ同時になされる,という説)が通説であったといわ れており,立法担当者はこの説によって同法を書いたのであろう,と推測されている(野 津・前掲119ページ。なお米谷隆主「米谷隆三選集第 2巻J45ページも同旨)。法解釈上, 立法担当者の考え方が決定的なわけではないが,無視できないのも当然である。 重畳説は,独立した保険契約と社団への入社契約との重畳的併存を説くものであり,設 立後の実態を説明することが困難で,現在では「すでに重畳説は克服されたJ(石田・前 掲286ページ)と評されている。本稿でも特に検討の対象とはしないが,霊長説の主唱者 とされる粟津清亮博士の記述は結合説のようにも読み取れるのであり,このような立法 経緯があるとすれば,現行保険業法を根拠に考えるかぎり,結合説を採るべき有力な根拠 となろう。(服部・前掲論文付10ページも「結果において重畳主義も結合主義も大差なく, 理論上結合主義をとるべきものとすれば,規定の解釈をこの主義に照らして行うことは 当然許される」と述べている。) また, I日商法のロエスレル草案が,保険業法に相当する「保険の公行」の主主において, 「英国最初の保険会社法をそのまま」盛り込んだ,といわれている(岩崎・前掲「ドイツ 相互保険法の中核概念J397ページ)のが注目される。英国と同様な考え方を採っている はずの米国についてであるが,相互会社の保険加入者は,保険契約者(営利保険における 保険契約者と同義であろう)と会社所有者の二つの地位を合わせ持つ,というのが一般的 理解だといわれている(山下・前掲「中日互会社J368ページおよび 374ページ参照)から である。

(11)

11 相互会社における保険加入者の法的地位 11 取締に関する法律

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項等においても同様である。 これは単に用語の問題にとどまらない。保険業法19条以下の株式会社から相 互会社への組織変更手続等においても,株式会社の「保険契約者J

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項 -2項)は当然に相互会社の社員となると定められ(30条),両者の法律的近似 性が前提にされているのである。 理論的に考えてみても,相互保険加入者が第一義的目的としている保険給付 の確保を図るための第一次的手段は,契約的構成をとり,裁判所による契約の 保護の可能性を広げることであろう。保険加入者の社員関係における権利の行 使や行政府による保険監督は,保険会社の経営の健全性確保という会社全体に 注目したものを中心とせざるを得ないし,また,それらが個別の保険関係に立 ち入るのはむしろ問題である場合もある。社員関係説を採る学者は「社員の資 格において保険金請求権を有する」としながら,それは「いわゆる固有権に属 する問題であり,多数決により変更を受けない」と強調されるが,固有権とは 0曲 何か,という根本問題の残る領域に解決を求めることが適切なのか疑問が残る のである。さらに,第三者を保険給付の受取人とする場合(生保の死亡保険金 ではそれがむしろ常態である),社員関係説では説明がつかないのではないか, という疑問を感じるのである。 さらに「現在の相互会社に関する法理論は主としてドイツにおける学説を 継受しているものといってよい」とされ,しかも「相互会社における社員と会 自 由 社の法律関係の性質というような法律問題については徹底されている」と言わ れているのが問題である。たしかにわが国の保険関係法は基本的にドイツ法の 影響のもとにあるといえようが, ドイツ法と異なる点もある。たとえばいわゆ る小相互会社(ドイツ保険監督法53条が規定する,保険種類,地域または加入 者の範囲に関して制限的な会社)に対し禁圧的であること,相互会社と社員以 (30) 鈴木・竹内・前掲110-111ページ,野津・前掲132ページ参照 (31) 服部・前掲論文(ー)23ページ (32) 山下・前掲「中目互会社法の問題点J6ページ。なおドイツ保険監督法の相互会社関連条 文(1986年時点)の翻訳は,同書の付録として収録されている。

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一12 香川大学経済論叢 12 問) 外の者との間での保険契約(非社員契約,同法21条2項)を認めないこと,賦 。仰日 課式保険料や保険料の追徴(同法24条 25条, 27条)を認めないこと,普通 側 保険約款の変更につき社員総(代)会の決議(同法41条1項)を要しないこと 等である。このような差異は,法解釈に影響しでもおかしくないはずであり, 日本の保険業法および商法の解釈において, ドイツの通説である社員関係説が 同じように通説である必然性はない。私は,少なくとも日本の現行保険業法・ 商法を前提にするかぎりは,相互保険においても保険契約的要素を強く打ち出 し,しかも担員関係を法的にしっかり位置づける結合説を採るのが適切だと考 えるのである。

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結合説の確立と展開 保険加入者の法的地位に関する結合説は、少数説であるので、まずこの説を 採る先学の説くところを紹介したい。 古くは野津務博士が大著「キ目互保険の研究J(1935年初版、ただし以下の引用 は1965年版による)において, ドイツでの議論を紹介しつつ結合説を唱えられ た。同書は,まず相互会社,株式会社の共通性を強調し,両方とも「保険料と 保険金額との各総実額との相均衡する予定の下に其の事業が行われる」のであ り,両者の保険は異なった法則によるものではなく r単に企業の目的従って其 の形態に於て異れるもの」に過ぎないとする。次いで相互会社を特徴づ、ける「相 (33) その立法論的検討については山下・前掲「キ目互会社J382ページ以下。業法改正答申は, 相互会社が「社長関係を伴わない保険契約を締結することができることとする」と答申し ている。 (34) その具体的内容については岩崎・前掲「ドイツ相互保険法の中核概念J459ページ以下。 なお,注20参照。 (35) ここでは保険料という言葉を使っておいたが,ドイツ法は営利保険では「保険料J,相 互保険では「拠出金」というように言葉を使い分けており,ドイツ保険契約法1条では「相 互会社において支払うべき拠出金は,これをこの法律における保険料と見なす」とわざわ ざ規定している(岩崎・前掲「ドイツ相互保険法の中核概念J417-418ページ参照)。 (36) ドイツでは普通保険約款の変更手続きは定款の場合と同様である(社員関係説の立場 からはそうなるはずである)。もっとも普通保険約款については,緊急の必要があるとき は,監督官庁の認可をえて監査役会(保険監督法35条)が暫定的に変更することが認め られている。

(13)

13 相互会社における保険加入者の法的地位

-13-。

1) 互性」は,保険料追徴も保険金額の削減も行なわない段階の相互会社をも視野 に入れた場合,保険料の不定額(保険金削減も含めた意味で)に存するのでは なく「保険契約者が社員たることJ (社員自治)に存すると主張する。 そして「相互保険の真の姿」は「保険入社契約と名付け得るもの」であり, 「此の契約の内容は同等の価値において保険関係と社員関係とからなる」もの とする。担員関係発生すなわち社員資格の取得に関しては,設立に際しての社 員(保険業法

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条)につい、ては「社員資格の取得を目的とする入社行為」の存 在を指摘しつつ,その「社員資格の取得は畢寛保険関係の手段に過ぎざるが故 に,入担行為は同時に保険行為即ち所謂『保険入社行為』である」と主張する。 一方,相互会社設立後の加入者については r保険関係の設定が法律上有効なる 場合には当然法律自体の運動として社員関係が設定」されるとし,社員資格の 取得に向けられた意思表示の必要を認めない。この点に関連して「結合主義論 者の所謂『保険入社行為』は会社設立後の場合には法律行為自体の意義として は保険行為として解せられるべきであって,唯だ此の行為より社員資格取得の 効果を生ずる点を謂い表わすが為にのみ入社行為といい得ぺきに止まるものと 解すべきである」とさえ言われ,後述の保険関係説に接近している。 また「相互保険関係が内容的には株式会社の保険関係と同ーであること」の 反面として,保険関係と社員関係との内容的分離を強調し i相互会社に於ける 被保険者の保険関係上の請求権は(中略)会社法的規範の制約を受けないので (37) フランスやドイツではこれが大相互会社の選択肢として認められている。岩崎・前掲両 論文,大塚・前掲参照。社員関係説と結合説の相違の一例は,この点に関連した保険業法 46条の読み方に表われる。すなわち前者は社団構成員たる資格の反面として保険金削減 は必須であり,定款には保険金削減の原則的事項を規定する必要がある,と主張とする。 これに対し,後者は営利保険の保険契約との共通性の観点から保険金削減の排除を定款 で定めるのも可能と解するのである。 46条の保険金削減を排除した場合の対応策として は,第一次的には基金(前述)あるいは損失填補準備金(同法 63条)など剰余金の内部 留保のかたちによることになり,第二次的には保険業法92条以下の「会社の管理」に関 する規定(株式保険会社の場合と共通)による処理に委ねることになろう。その中には同 法 114条に示されているように「計算ノ基礎ノ変更,保険金額ノ削減」が含まれうる。 もっとも大津・前掲「相互会社と生命保険との関係J78ページは,社員関係説を採りつ つも結局保険加入者自身がその損失を負担することになるということには変わりがな く,右の点はその負担方法の取り決め方のー態様に過ぎない」という理由で現行法下でも 保険金削減の可能性を定款上排除することを肯定する。

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-14- 香川大学経済論叢 14 ある」とし,定款の規定により保険関係上の請求権を律することを否定する。 したがって保険金削減に関する事項(保険業法46条)は普通保険約款において 規定すべきものとされる。同様の趣旨から,相互保険契約は商行為でないこと を理由として民法上の法定利率を適用した判例を批判する。 保険料の法律的性格についても, (社員関係説の主張するような)社員資格に

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基づく出資ではなしあくまでも保険関係上のものとする。一方,社員の剰余 金分配(保険業法66条)については,剰余金の源泉が保険料に限らず基金や諸 積立金の運用もその源泉であることを理由に,-保険関係上の理由に基くもので はなくして会社の管理に参与する社員の権能又は職能に対する反射である」と する。 ω) 最近では田中誠二・原茂太一共著「保険法」が結合説を採っておられる。 この本では,まず「相互保険への加入は,入社契約と保険契約の結合した保 険入社契約

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という独特の行為であり,その 内容は保険関係と社員関係とが平等の立場で結合しているもの」と述べられた 後,この保険入社行為は,会社設立時においては「会社設立を目的とするもの であるから保険入社申込(単独行為)と発起人の会社設立を目的とする意思表 示との結合であって,団体法に固有な合同行為と見るべきもの」であり,会社 設立後の場合は「株式会社新株発行の場合の新株の引受と同様に,一種の契約 (入社契約)と解すべきであろう」とされる。次いでト「保険金支払請求権は保 険関係上の主要権であるから,保険金削減に関する事項は定款に記載」すべき (38) このことは相互会社が保険料の支払いを求める訴訟を起こす場合の裁判籍に関係する (民事訴訟法5条および12条参照。ドイツでの議論について野津・前掲123-124ペー ジ)。なお,ドイツの相互会社で認められている無限責任または保証責任の相互会社にお ける追補金ないし割当金の場合は,保険の対価たる保険料と社員関係上の出資との両方 の性格を有し得る,としておられる(野津・前掲175-181ページ) (39) この背景には田中博士の「商法の理念のーっとして顧客の保護を考えることを強く主 張するJ (同君主19ページ)立場があるように思われる。同;$62ページでは「保険関係が 社員関係に吸収されると解すると,保険関係が社団法に律せられ,多数決により影響をう けるおそれを生ずることとなって,保険加入者の権利が不安となり,適当でなくJ,逆に もし保険関係が多数決により影響を受けないというなら「社員関係に吸収させて考える ことは適当でないのではないか」と社員関係説を批判される。

(15)

15 相互会社における保険加入者の法的地位 -15-ものと説明する。また営利保険においても剰余金分配が行われることを理由に, 相互会社での剰余金分配請求権も保険関係に属する,とされる。相互会社が営 利法人でないことの理由として,-たとえ利益を得た場合にも,社員としての資 格ではなく,保険契約者としての資格のみに基いて保険料を払い戻してしまう ものであるから」と述べられるのも,これに関連している。 このように野津説と田中・原茂説は細部にわたると同ーではないが,ここで, 結合説に対する批判として指摘された点を検討しておきたい。真剣に検討しな ければならないのは,結合説を採った場合「保険関係と社員関係がどのように して結合するかが明らかでない」とか「法律に明文がない個々の問題を解決す るのに際し,保険関係,柾員関係のいずれの規制によって解決するのか」とい う問題提起である。これは,-両関係が平等の立場で結合している」という場合 の結合の仕方の具体的イメージにも関係する。 私としては,従来の結合説を少し修正し,保険入社契約は,保険証券,保険 約款,商法などが規制する保険関係,および定款,保険業法などが規制する社 員関係とから成ると考えたい。このような構成の形式的根拠は,第一に,相互 会社の「保険契約申込書」が不動文字で「貴社の定款・普通保険約款および特 約条項を承知のうえ(中略)この保険契約を申し込みます」と記載し,そこに 加入者の署名・押印を求め,さらに生保の例では,申込書記載前に「ご契約の ω しおり 定款・約款」を交付してその「受領印」を求めていることである。第 二の形式的根拠は保険業法34条の定める定款記載事項と同法施行規則12条 (40) 従来,結合説に対する代表的な批判として「異質的なこ者を統ーした一つの法律関係を 想定するところに難点がある」とか新しい法概念は,法生活上のある現象を既成概念 の助けで把握できなくなったときにのみ形成すべきであるJ(石田・前掲286ページ参照) といった抽象的なものがある。これに対しては「異質的なこ者を統ーした法律関係」とし ては有料老人ホームの入居契約(借室契約的要素と養老契約的要素の結合)を例にあげる ことができょうし(もっとも,異質さの程度が違う,と反論されるかもしれない),相互 会社の保険加入者の地位を社員関係説で説明できるから「新しい法概念」は要らないとい うのなら,結論を先取りしたことになってしまうだろう。 (41) 服部・前掲論文(ー)13ページ,岩崎・前掲「ドイツ相互保険法の中核概念J419ページ (42) 石井・前掲153ページに「実際上保険契約の申込をうけてから入社手続をとっているこ とは,社員関係の内容が保険関係であることから,その内容の確定及びその実効確保のた めの便宜的方法たるにすぎない」と述べられているが,これはかつての生保実務のよう

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-16ー 香川大学経済論議 16 の定める普通保険約款記載事項の割振りである。そこでは,社員関係は定款, 保険関係は約款に定める,という整理がなされているように思われる。 社員関係には,私見によればこつの部分があり,一つは保険関係契約に関す る法規制を修正する部分,もう一つは結社行為的な意味での社員関係を定める 部分である。 (倒 私は,実費主義の理念による保険保護の提供という相互会社の存在目的との 関連で,保険加入者;の法的地位に関しては保険関係と柾員関係とが相互会社と いう法人との間でバランスよく成立していなければならないと考える。保険関 係は, (隈定的に)社員関係による修正がありうる限りで保険契約そのものでは ないが,法人である相互会社と加入者とが,原則的に営利保険における契約関 係の場合と同ーの立場で向かい合い,原則的に同ーの法規制に服すべきである。 その理由は社員関係説を批判する箇所で述べたところであり,社員関係説の説 くような,保険関係が社員関係に「包摂」される(社員関係というカプセルに 入れられる)という構成は不適切である。 経済的,実質的にはこの保険関係を主要部分として,しかし法的にはどちら も優劣のない位置づけにおいて,社員関係が存在する。そのうちまず保険契約 に関する法規制を修正する部分につき述べる。(これらは,まさに商法

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条,

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項が「其性質カ之ヲ許ササノレトキ」と述べている具体的事例として位置 づけられる。) 保険金削減(保険業法

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条)については,定款上削減しないことも可能とす る野津説に賛成するが,定款上削減の余地を残す場合には,これは社員である ことに伴い受忍するものとしか説明できない事柄で,社員総代会決議等との関 連上も社員関係上の事項と考える。「社員ハ保険料ノ払込ニ付相殺ヲ以テ会社ニ 対抗スノレコトヲ得ズ」とする保険業法

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条については「現実に保険料が払い込 まれるのでなければ保険経営をなすことは不可能である」という技術的理由に に,定款が保険証券とともに送付された場合を想定し,その送付時点で後れ馳せながら相 互会社入社(社員関係の設定)手続がなされたものと構成したのであろうか。 (43) 山下・前掲「宇目互会社J350-351ページの説かれるところである。

(17)

17 相互会社における保険加入者の法的地位 17-よるものと考え,また「会社ノ債務ニ関スノレ社員ノ責任ハ保険料ヲ限度トス」 という同法44条の規定については i社員が保険契約上払い込んだ保険料の限 度においては社員として会社の損失を分担するのである」と考えたい(いずれ も田中・原茂説に同調)。また,同法47条は損害保険の目的物を譲渡した場合 における保険契約上の権利義務の承継に関するが,これは柾員関係が結合して いることによる商法650条1項の修正である。 こうした形式による保険関係の修正は,極力限定されなければならない。そ のためには,定款変更等による保険関係の内容修正を,原則として保険業法, 商法等が定めあるいは許容する範囲内に限定することが必要であろうし,社員 関係の局面であるだけに社員関係説が力説する固有権論の助けを求め得る局面 があるかもしれない。 つぎに結社行為的な意味での社員関係の部分については,基本的に通説と同 様に考える。ただし,形式的であってもこれに向けた意思表示が前記の保険契 約申込書の記載に含まれていると考える。この点,野津説とは異なるが,こう した観点は,相互会柾に非社員契約を認めるのであれば必須のものであろう。 また社員の自治の意義を認め,その実効性を求めつつも,実費主義の理念によ る保険保護を基本目的とするという認識に立つ関係上,同時にその限界を意識 し,国家や地方自治体,消費者団体などによるチェックをも期待することにな る。(保険関係説に接近する一方で相互会社の特徴は社員自治に存する,と主張 される野津博士の立場は矛盾を含んでいるように思われる。) (44) 関連して,保険業法 49条や 109条の「保険契約」という言葉と結合説の関係について ふれておきたい。野津博士は, 49条の「保険契約」は「入社契約の外に独立せる保険契約 の存在を前提するものと解するより,寧ろ社員関係とは別に内容的に独立せる保険関係 の存在を前提するもの」と解すべきとし, 109条の「保険契約の移転」は保険関係の移転 と解し得る,と主張する(野津・前掲119-120ページ)。重畳説を採らない限り厳密な文 言解釈上は問題が残る(前述)が,この野津説に私も賛成する。いわば剥き出しの(基本 的に保険契約と同一内容の)保険関係を認める点,社員関係説よりは結合説の方が法の文 言に忠実な解釈と言えよう。 (45) (社員総代会自身が次期の社員総代を選任するという)自己補充方式を採用している相 互会社との関連で結合説を見直すドイツの学説について,山下友信「現代ドイツ相互会社 法論J(山下前掲監修脅所収)82ページ以下参照。

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18ー 香川大学経済論叢 18 難しいのは,剰余金配当請求権の位置づけである。相互保険の実費主義の理 念実現のためには必須のシステムであるが,保険契約(営利保険)に本質的な ものではないし r営利保険でも保険契約者に配当するのが一般的になっている こと」を理由に保険関係上の権利とするのは歴史的経緯を無視することになろ う。保険業法

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項ならびに同法施行規則

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項 および別記書式6号を前提にするかぎり,社員関係上のものと位置づけるべき である。なお同施行規則12条7号で「保険契約者,被保険者日又ハ保険金額ヲ受 取ノレベキ者ガ利益又ハ剰余金ノ配当ニ与カJレ権利ヲ有スノレ場合於テハ其ノ範 囲」が約款規定事項として想定されているが,法の定める定款記載を優先して 考えるべきで,定款の枠内でその細目を約款に定めることを想定したものであ ると解する。(なお税法における剰余金配当の取扱については,独自に保険料の 余剰分の返還という経済的実質に着目して考えればよい。もっとも最近では, 財産運用益の部分について,剰余金配当の実質をこのように考えることにつき 疑問を呈する学者もあり,また,非社員契約を認めた場合には剰余金の性格が 変化しうることに注意する必要があろう。) V 保険関係説の検討 もう一つの有力な少数説として保険関係説(あるいは保険関係吸収説)があ る。これは相互保険の実態と加入者の意思を重視し r加入者の意思が重視され る限り,保険関係に重点をおいて理論を構成すべきである」と主張する。そし て「相互保険加入者は相互会社と保険契約 これは営利保険の場合の保険契 約と何ら異なるところはないーーを締結することによって,その直接の効果と して保険的権利義務を取得し,またその間接のかつ法定の効果として相互会社 の管理に参加するある種の権利義務を取得する」と構成する。それに関連して 「社員が入社に際しでも入社後も個性を尊重されることなしまたその範囲が 無限に拡大されるとすればJr社団性に固執してみても,大した理論的意味を持 ちえないのみならず,却って問題の解決を妨げることになる」とし r今日の大 相互会社は柾団法人でも財団法人でもない第三種の法人と見るのが妥当」と主

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19 ( 4日 張される。 相互会社における保険加入者の法的地位 -19 またこの最後の点については「保険株式会社の株主が,保険者として,会社 の利益をあげるために積極的に会社経営に参加するのとは異なり,相互保険の 目的を達成するために会社財産の減少を防ぐという,いわば消極的な財産管理 を行えば足りる」として r近代的な相互会社とは,保険経営を目的として形成 された資金が,財団として法人格を取得したものと解することができる」とい う主張もある。 この説の法政策的狙いは十分理解セきるが,社員の支配の空洞化と相互会社 の法的構造とは別個に考えるべきである。「第三種の法人」の具体的管理システ ムは明確にされていないし r財団」の場合は寄付行為(民法

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条)の内容が 固定的かつ決定的であり,しかも財団の評議員等による理事(民法 52条)の チェックは本質的なものではないので、ある。むしろ,従来の社団法人の構成を

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維持しつつ,実際的解決方法を考えるべきであろう。

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お わ り に 以上,実務家的な細かい検討が中心になってしまったが,相互会社の保険加 入者の法的地位、に関して検討してきた。私は,結合説が基本とされるべきだと 考える。その理論的帰結については各部分で触れてきたので,ここでは最近の 保険業法改正の動きとの関連について若干のコメントをしておきたい。 保険業法改正案の内容に接する機会をまだ得ていないが,相互会社に関する 限り,その内容は保険審議会の業法改正答申に非常に近いものになると想像さ れる。そこで業法改正答申の「相互会社」に関する部分および答申の別添

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と して添付された「宇目互会社についての基本的考え方」を読むと,説明の仕方と しては通説の社員関係説で一貫している。(それは,立法準備の手順としては実 (46) 服部・前掲←)16-24ページ (47) 大塚・前掲(1)72-74ページ (48) 山下・前掲「キ目互会社J362-363ページ (49) 業法改正答申は,社員総代および総代会に関する基準を明確化するとともに,社員の提 案権,代表訴権等につき,実際的な基準を提案している。

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20- 香川大学経済論叢 20 際的なやり方であろう。)しかし,その提案内容を見ると,ほぽ結合説から帰結 する法政策に近いのではないかと感じられる。 その意味で保険業法改正の相互会社に関する基本方向について私は異論はな いのであるが,現行保険業法には,以上で述べてきたように色々な考え方が法 文全体を通じて重層的に積み重なってしまっているように思われる。現行条文 をベースに法文が書かれるのであれば,解釈の混乱の原因を残さぬために相当 な用語上,規定内容上のチェックが必要のように感じられるのである。

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日脱稿)

参照

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