127 第16巻 第2号(1965) 環 境 別 溜 池 泥 土 の 研 究
ⅩVI新 の 池 コ ア の 鉄含盈
玉 置 鷹 彦,梅 田
裕 前報(8・4)において香川県大川郡長尾町衆にある新の他についてコアによる泥土の滞積状態の観察と,泥土の分 析と微細土粒の調査について得た結果を記述した.本報ではこの溜池より1961年9月7日採取したコアの風乾 細土を・供試し,全窒素,炭素,腐植,炭素率を測定したほか,微細泥土粒中の鉄を定盈し,泥土滞税考究の手が かりとしたので以下にこれを報告する‖ Ⅰ 試料の調製 既報(8)のようにこの溜池より得たコア7点を用い ,これを前報(2)と同様の方法で浮泥,沈降泥,地底泥の3屑 に区分してその風乾細土および粒径15〃以下の微細土糠を調製して供試した‘試料No・はすべて既報(き)のコア No‖に共通し,また試料No.1−6はこの沼地の南北方向を北より南に向って採取した試料であり,試料Noい7は 試料No.1を得た地点の西方約30mの個所より得たもので,池底泥を欠いている. Ⅱ 実験方法および実験結果 実験方法は既報(1)の場合と同様であるい得られた結果を第1,2表にしめす. 第1表 泥 土 分 析 結 果 第2表 微細泥土粒(粒径5〃以下)のFe(mg/g微細乾土)OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学農学部学術報告 128 Ⅲ 考 察 第1衰より全窒素盈に舶し浮泥は最多055%(試料No・6),最少031%(試料No5)の範囲にあり,大部分 の試料は040%あるいはこれに近い数値をしめしている,つぎに沈降泥は最多044%(試料No6),最少0・18% (試料No5)の範囲にあり,試料No6を除き,この溜他のほぼ中央部より待た試料No・2,3においてわずかに 多く含まれている傾向がある池底泥は故多032%(試料Noい3),最少0・17%(試料No・5)の範囲にあり,試 料No.2−4は0り30%台の数値をしめして試料No6を除く他の試料よりわずかながら多いすなわち試料No・
6は浮泥,沈降泥とも最多窒素含盈をしめしているが,地底泥の窒素盈は試料No・2−4に多い.また試料No5
は浮泥,沈降泥,地底泥とも最少の窒素慮である 炭素鼠に閲し浮泥は最多415%(試料No6),最少241%(試料No‖15)の範囲にあり,これら2試料を除く 他の試料は3%台あるいはこれに近い数値をしめしている.つぎに沈降泥は最多2・65%(試料No6),故少 126%(試料No5)の範囲にあり,試料No・2−3は2%台の数値をしめして,試料No6を除く他の試料よりや や多い地底泥は最多236%(試料No3),最少1・12%(試料No・5)の範囲にあり,試料No2−4は2%台の 数値をしめして他の試料より炭素量が多い試料No」6の浮泥,沈降泥の炭素畠が最多催をもつこと,そして試 料No。うの3層が段少値で,さらに地底泥においては試料No・3が最多値をしめすことは全窒素塵の場合と同じ 傾向である 腐植品に閲し浮泥は最多715%(試料No6),最少4159ら(試料Noう)の範謝にあり,5%台の数値をもつ試 料が全試料数の半ば以上を占めている沈降泥は最多4」56%(試料No6),最少2・17%(試料Noけ5)の花園に あり,地底泥は滋多406%(試料No3),最少L94%(試料Noり5)の範囲にあるい 試料No・6の浮泥,沈降泥 の腐植鼠が最多値をもつこと,そして試料No5の3屑が最少値で,さらに池底泥においては試料Nol3が最多 値をしめすことは全室素意,炭素盈の場合と同じ傾向である このように金宝素盈,炭素鼠,腐植蕊に閲し,試料No6が最多値をしめして−いることは,この試料を採取し た地点がこの溜池の水入口に近く,しかもこの試料採取地点より水入口にむかい溜池が著しくせまく細長い形に なっているので,春季より夏季の間こ.の試料No6を採取した地点をトト心として−オニヒシその他の水草の繁茂が 著しく,これが枯死後多良の有機物を地底に滞積す−るこ.とと,水入口より流入する水がこの地点の束側に位扮す る余水吐より束隣の中王田地へ流入するため池水が停滞することが少なく,したがって他派中の微生物相が他の 地点と趣を異にすることが思推されることなどにより地底の有機物が分解して腐植化の行われることが急激に進 行せず,水中に回帰する窒素,炭素の嵐が他の地点の試料よりも少ないことによるものであろう 炭素率に閲し浮泥は最広789(試料No2),最狭740(試料No・4)の範囲にあり,各試料とも7台の数値をし めし,その差異は僅少である沈降泥は最広7.00(試料No・5),叔狭602(試料No・6)の抱囲にあり,地底泥 ほ最広7.38(試料No3),巌狭6.50(試料No1)の範臣削こあって−,沈降泥,地底泥とも各試料間に−・走傾向を認 め難いことば前■報(2)において指摘したようにこの溜池底における有機物の腐植化作用が池内で−・様に進行してい ないことをしめすものである. つぎに第2表より粒径う〃以下の微細土粒の鉄含盈に朗し浮泥は最多3231mg(試料Nol3),最少2389mg (試料No6),沈降泥は最多3540mg(試料No5),最少25・68mg(試料No6),地底泥は蔽多34l39mg(試 料Noい5),最少17.5L7mg(試料No6)の範囲にあるが,全窒素慮,炭素盟,腐植鼠に最多値をもつ試料No6 において鉄含嵐は3層とも最少値をしめしている.また全室素炭,炭落詠,腐植盈において愚少値をもつ試料No5の鉄含還は沈降泥,池底泥において股多値をしめし,浮泥においても試料No」3についで多い数値をしめ
している.このことばこの溜他において有枚物の滞積盈の多い地点の池泥はその微細土粒の鉄含量が少なく,反 対に有機物の滞積品の少ない地点のそれは鉄含意にとむことをしめし,微細土粒中の有機部分盛の多少により鉄 含急に差異を生ずることが恩推される.すなわちこの微細土粒中の鉄の給源は無機微細土粒のもつそれによって 強く支配されている.そしてこの含鉄無税微細土粒は地底における化学変化によって沈でんとして生成するもの より,流入水により溜池外より地内に運びこまれる異地性のものに起因するであろうことばこの溜池の位置する 周辺が洪硫台地でその土壌は微細土粒にとむことおよび水深が最深部で260mで地底の浅い溜池であることか ら推察されるところである.OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
第16巻 第2号(1965) 】29 Ⅳ 摘 要 香川県大川郡長尾町束にある新の池より得たコア7点につき,浮泥,沈降泥,地底泥別に風乾細士の金宝素, 炭素,腐植,炭素率を測定し,また粒径5〃以下の微細土粒中の鉄を定還してつぎの結果を得た (1)全量素藍は浮泥0・3ト0・55%,沈降泥0・18−0・44%,地底泥0.17−0.32%である小 (2)炭素鼠は浮泥2血41−415%,沈降泥126−265%,地底泥112−236%である (8)腐植量は浮泥4..15−715%,沈降泥217−4.56%,地底泥1‖94∼4‖06%である. (4)炭素傘は浮泥7・40−7・89,沈降泥6い02−7・00,池底泥6…50−7・38である‖ (5)微細乾土1g中の鉄(Fe+++)盈は浮泥23・89−3231mg,沈降泥25・68−3・540mg,地底泥17.57一弘.39mg である… 引 用 文 献 (1)玉置鷹彦,梅田 裕:本誌12,260(1961) (8)−−,− 】 :同上14,57(1962). (2)【−−− ,−−一−−−−− :同上13,174(1962)
(4)+
,−−m− :同上16,13(1964)小Studiesonreservoirdeposits
XVIIroncontentsofcoresamplesinShinreservoir・
TakahikoTAMAKrand YutakaUMEDA
Stlmmary Pursuing thefbrmer studies,theamountof totalnitrogen,Carbon,humus,Carbon nitrogen ratio andironinぴOrganicdeposit”,パSedimentaIymud”and〃Bottomsoil”ofShin−reSerVOirdepositsweIe
determinedandthefb1lowingresultswereobtained:
(1)Totalnitrogen content ranges fromOl31%toO”55%in㍍Organic deposit”,fromO・・18%toO44%in “Sedimentarymud”andfromOl17%toO32%in“Bottomsoil”
(2)CaIbon content ranges from2・41%to4.15%in“Organic dcposit”,froml26%to2h65%in〃Sedi− mentarymud”andfroml・12%to2”36%in代Bottomsoil”
(3)Humus content ranges from4115%to715%in“Organic deposit”,from2り17%to456%in“Sedi− mentarymud”andfroml94%to4l06%in㍍Bottomsoil” (4)Calbonnitrogenratiorangesfrom7小40:lto7189:1in“Organicdeposit”,from602:1to700‥1in パSedimentarymud”andfrom6い50:1to7l38:1in‖Bottomsoil” (5)Ironcontent(mg/govendriedsoil)of6nesoilparticles(below5Ft)rangesfrom23‖89mgto32.31mg in〃Organicdeposit”,from25”68mgto3540mgln“Sedimentarymud”and froml7r59mgto34.39mgln 〃Bottom soilM