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アジア研究 Vol. 48, No. 2, April 2002

はじめに

本稿の課題は、フィリピン・ダバオ市のバジャウ(Badjao)(1)の生活条件についてつぎ のような視点から分析を行うことである。(1)バジャウの生活実態を周囲に暮らす他エス ニック・グループの生活実態と比較し、(2)彼らと他エスニック・グループのあいだに存 在する主観的な民族間イメージを検討する。具体的には、バジャウと非バジャウ、すな わち、セブアノ(Cebuano)、タウスグ(Taosug)、マラナオ(Maranao)、ラミヌサ (Laminusa)(2)5集団を対象とする。なお、紙幅の都合から生活実態については、経済 生活の側面に限ることを断っておきたい(3) この課題を探求するために、実態調査の結果に基づく量的分析によって、つぎのよう な作業仮説を検証する。(1)バジャウは、地域の市場社会に参加するための基本的能力 (たとえば学歴や基本的ニーズ充足に満たないような低い所得水準)の点において絶対的に不利 であり、(2)彼らは他集団との関係においても低い社会経済的地位にあること、さらに、 (3)こうした客観的指標による格差に加えて、非バジャウはバジャウに対する卑賤観をも っており、バジャウは貧困生活を余儀なくされていること、の3点である。 治安が比較的安定しているダバオ市は、ミンダナオとスルーにおける1970年代の内戦 ないし近年の政治情勢の悪化に伴いミンダナオ南西部や内陸部、スルー諸島から流出し た難民を受け入れてきた。本稿で扱うバジャウも、また非バジャウのうちセブアノを除 く3グループも、こうした人々の例である。フィリピンを対象とする都市民衆の社会経 済に関する研究において、難民の生活条件についての研究はまだ蓄積が少なく、本稿は そうした試みのひとつである。 とくに民族間イメージの視点を導入するのは、ホロやシアシなどスルー諸島のバジャ ウを事例とした過去の研究において、しばしばタウスグを頂点としバジャウを最下層と するエスニック・ストラティフィケーションの存在が指摘されてきたためである(cf. Stone, 1962; Nimmo, 1972; Warren, 1981)。あえて要約するならば、こうした地域における 当時のバジャウに対する卑賤観は、彼らが陸上家屋をもたず漂泊的な船上生活をしてい ること、イスラーム教への改宗が遅れている、あるいは信仰をもっていても正統とはみ 72

フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件

他エスニック・グループとの比較から

青山和佳

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73 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から なせないこと、物質的に簡素な生活をしていること、歴史的にタウスグなどから政治経 済的支配を受けてきたこと、などに拠っていた。1970年代の内戦以降、他地域に流出し たバジャウは、こうした過去の民族的文脈とは異なる地域へ流入していったのだが、少 なくともフィリピン側へ移動したグループについては新たな卑賤観を負っている場合が ある。たとえば、近年、ルソン島南部の地方都市近郊に住む少数民族のアエタが「バジ ャウ=乞食」というステレオタイプを周辺のほかの民族集団とともに共有していること が指摘されている(玉置2000; cf. 青山2001)。これは、マレーシアなどでむしろバジャウ という呼称がポジティヴなセルフ・アイデンティフィケーションとして使われるように なってきた事実(Nagatsu, 2001)とは対照的である。 本稿が扱うダバオ市の事例においても、住民のだれもが「バジャウはとくに貧しい」 ことを知っている。しかし、具体的な数値をもって当局にこの問題が取り上げられるこ とはなかった。たとえば、最小行政単位にあたるバランガイ(barangay)は、2年に1回、 ミニマム・ベーシック・ニーズという世帯悉皆調査を実施する。その結果に基づいてコ ミュニティの開発プログラムを作成するのだが、フェース・シートには回答者のエスニ ック・アイデンティティに関する質問はないから、エスニック・グループ別の集計はで きない。バジャウは政治的に弱体なので、自ら声をあげるということも少ない。こうし た状況に鑑みて、本稿は、都市貧困層居住区である調査地にあって、その生活改善にあ たる政府当局がエスニック・グループ間に存在する生活水準の格差や、意識における階 層化の問題を見落としたまま、政策策定を進めていることへ疑問を提起しようとする試 みでもある。 ここで、本稿でいうバジャウと文献におけるサマ(Sama)の関係を整理しておきたい。

まず、バジャウとは、過去の漂海民研究(cf. Lapian and Nagatsu, 1996)では、サマ語

(Sinama)を話す人々のうち、とくに家船生活者として特徴づけられる海サマ(Sama Dilaut)を指すことが多く、一般には海のジプシーといったイメージで知られる。しかし、 近年の研究では陸地定着化の進行、他民族集団との関係の変化などを背景に、バジャウ とよばれる人々の実態も変化、多様化しており、もはや実体的観点だけからバジャウと いう概念を整理することは難しくなっているという現実がある(4)。本稿で「バジャウ」 とよぶ集団も例外ではなく、漂海経験者以外にも、陸に定着して暮らしていたサマ(陸サ マ)でダバオ市に来てからバジャウとよばれるようになった集団も含まれている(5)。その ため、バジャウという呼び名だけから彼らの出自を正確に突き止めることはできないが、 ここで大雑把に調査地の「バジャウ」の位置づけを示しておく。まず、サマ語族である ことは確かである。彼らが話すサマ語は、南部フィリピン、マレーシア領ボルネオ、東 インドネシアで使用され、タウスグ語、マレー語の影響を受けている(Akamine, 1990)。 国家における民族別統計という観点からみると、フィリピン政府公刊の1995年センサス では、同国のサマ語系人口は3つに分かれて記載されている。すなわち、「サマ」(6)は総 人口(6,843万1,213人)の0.27 %(推定18万4,764人)、「バジャウ」(Badjao/Sama Dilaut)

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アジア研究 Vol. 48, No. 2, April 2002 は同0.25 %(17万1,078人)、陸サマのサブ・グループである「サマ・ディラヤ」(Sama Dilaya)は同0.07 %(4万7,901人)である。一方、学術的研究における従来の整理に照ら すならば、たとえばニンモが提唱し(Nimmo, 1968)、その後、多くのバジャウ研究者に 踏襲されたサマを北方と南方で異なるとする地理上の分類がある。これによれば、本稿 で扱うグループは従来から蓄積が少ないとされる、ホロ(Jolo)やシアシ(Siasi)以北に 分布し、フィリピン内海を移動する北方系サマに該当する(図1)。 本稿の構成はつぎのとおりである。第1節で調査地の概要を述べる。つづいて質問紙 調査の結果に基づく実証分析を行う。まず、世帯主を例に、地域間移動(第2節)と生業 転換の状況をみる(第3節)。さらに、経済生活の実態を概観するために、所得・支出・ 負債などの指標を検討する(第4節)。第5節では、意識調査の結果に基づいて、民族間 のバジャウ・イメージを確認する。結語として、以上の分析を要約し、作業仮説の検証 結果と政策的含意を述べる。

1

.調査地の概要

調査の舞台であるダバオ市は、フィリピン南部のミンダナオ島に位置し、ミンダナオ(7) の恵まれた自然条件と天然資源(鉱物・水産など)を背景に、フィリピンの一次産業の要 衝、および有数の港湾都市として発展してきた。1995年現在で約百万人の人口を擁し、 単独の政令指定都市としては全国第4位の規模である。95年人口センサスによれば、同 74 図1 ミンダナオ・スルー諸島

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75 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から 市の就業構造は農業志向型交易都市としてサービス業(37.8 %)、商業(19.0 %)と農林業 (25.2 %)が大きく、工業は8.0 %である。これに建設業7.6 %、漁業1.2 %、電気・水 道・ガス業0.6 %、鉱業0.4 %が続く。政府公刊の97年家計所得・支出調査から住民の 所得源をみると、住民をなす20万2,983世帯のうち主に賃金・俸給から所得を得ている ものが56.1 %、起業家活動が29.0 %(うち農業6.6 %、非農業22.5 %)であるから、自営業 部門が雇用吸収に一定の役割を果たしていることがわかる。 人口学的にミンダナオ地域を眺めると、約6割を占めるセブアノのほか、ムスリム諸 族のうち主要3大グループ(8)が全体の約15 %、また非ムスリムの少数・先住民も4 % どを占めるなど、多民族・文化的多様性をもつことが大きな特徴である(青山 1997)。こ の多様性は、しばしばキリスト教徒人口と非キリスト教徒人口のあいだの社会経済的格 差として現れる。先住民の貧困問題は、ミンダナオ最大の都市であるダバオ市にあって は、ビサヤ諸島やミンダナオ他地域から流入する都市移住者の貧困問題の一種として不 法占拠者居住区に顕在しやすい。本稿の調査地も数年後に政府から住民への土地払い下 げが予定されている不法占拠者居住区でイスラ・ベリャ(9)という。ここは、ダバオ市の 東部沿岸に横たわる砂州で、1970年代初め頃から季節風が運ぶ砂が少しずつ堆積してで きたものである。人が住みはじめるようになったのは70年代半ばであり、スルーからの バジャウが最初の移民であったといわれている。調査時点では、9ヘクタールの面積に 約1,300世帯・計1万人ほどが暮らす。人口の言語族別内訳では、ムスリム諸族(マラナ オ、タウスグなど)が全体の6割を占め、ダバオ市全体では圧倒的多数を占めるセブアノ 語系キリスト教徒人口を上回っていることが特徴である(10)。調査地を管轄するバランガ イ(末端行政単位)も首長ほか、8人の評議員のうち7人をマラナオが占めており、市内 でもムスリム優勢地区とみなされている。 イスラ・ベリャには、ふたつのバジャウ居住地がある。ともに海岸沿いであり、満潮 時には1メートルから2メートル近くまで海水が満ちることもあるため、住居は杭上家 屋である。ひとつはアラスカとよばれ、砂州の北東に位置する1ヘクタールほどの地域 である。この地区では、広場を中心に杭上家屋が向かいあうかたちで建てられており、 隣接する非バジャウ系住民居住区に対して閉じた構造になっている。もうひとつはアリ ーナ・ピカスとよばれ、ピカス(反対側)という名前の通り砂州の南東にある。こちらは セブアノやタウスグなど非バジャウ系住民居住区の中の海岸沿いに小さなバジャウ集住 地として存在しており、外部に対してもむしろ開いた構造をもつ。 本稿で使用する資料は、イスラ・ベリャに居住するサマ語集団でダバオ市においては 広く「バジャウ」と他称・自称される集団(合計184世帯)、および隣接する2地区に生活 する非バジャウの4つの集団(合計180世帯)に対して、1997年8月初旬 ─99年3月末ま で継続的に行われたフィールドワークによって収集されたものである。具体的には、(1) 基礎的世帯調査、と(2)自己イメージ・民族間イメージ調査を世帯悉皆質問紙調査(家庭 訪問、面接・他計式)の方法で行った。インタヴューは原則としてセブアノ語で行ったが、

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アジア研究 Vol. 48, No. 2, April 2002 必要に応じてサマ語の通訳を使った。 住民の基本的属性は表1の通り。なおバジャウ地区住民の自称はサマであるが、以下 の分析では便宜上、これをバジャウとよぶ。 76  表 1 住民の基本的属性:バジャウ地区と非バジャウ地区 バジャウ地区 非バジャウ地区 世帯数・人口  合計 184•••• 180   (アラスカ) (172)   (アリーナ・ピカス) (12)  1世帯当たりの構成員数(平均) 5.3•••• 5.7  1世帯当たりの子供の数(平均) 3.5•••• 3.9  地区総人口 981•••• 1,044 性別(対総人口比率)  男子 51.7%•••• 48.1%  女子 47.5%•••• 51.5% 年齢 男子 女子 男子 女子  平均年齢 22.3歳 22.8歳 22.4歳 22.9歳  年齢構成(対総人口比率)    0─6歳 21.0%•• 22.1%•• 18.6%•• 13.7%    7─15歳 20.4%•• 16.6%•• 22.9%•• 27.1%   16─29歳 29.4%•• 32.5%•• 26.0%•• 28.5%   30─49歳 20.6%•• 21.7%•• 26.2%•• 26.1%   50歳以上 8.6%•• 7.1%•• 6.3%•• 4.6% 就学経験年数(7歳以上対象) 男子 女子 男子 女子  平均 1.2年 0.9年 7.0年 7.0年  最頻値 0.0年 0.0年 6.0年 6.0年 セルフ・アイデンティフィケーション(対総人口比率)  サマ 97.8%•••• 0.1%   (陸サマ) (65.1%) (0.1%)   (海サマ) (32.7%) ─  ラミヌサ 1.5%•••• 6.6%  セブアノ 0.5%•••• 51.7%  アタ•• 0.1% ─  タウスグ ─•••• 20.5%  マラナオ ─ 17.4%  その他 ─ 3.6% 宗教(対総人口比率)  伝統的・土着信仰(オンボ) 80.3% ─  イスラーム教 10.8%•••• 44.5%  キリスト教 8.9%•••• 44.9%   (ボーン・アゲイン・クリスチャン) (4.8%) (0.4%)   (ローマン・カソリック他) (4.1%) (40.9%) 出生地(対総人口比率)  ダバオ市以外 68.7%•••• 54.9%  ダバオ市 31.3%•••• 45.1%  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 回答不明を含まないため合計は必ずしも100%とならない.

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77 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から

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.地域間移動

1.性別・年齢と移住者・非移住者の別  表2は、世帯主を取り上げ、エスニック・グループ別にその属性と地域間移動の特徴 を概観したものである。どのグループでも世帯主は男子が多く(全体の90.7 %)、マラナ オとラミヌサは100.0 %、タウスグは94.3 %に相当する。この調査では、被調査者が世 帯主とみなす世帯構成員を当該世帯の世帯主としたが、通常、男子が世帯主とされた。 世帯主が女子の場合、その世帯は未婚者、離婚/別居者、未亡人などを筆頭とする。世 帯主が女子である比率が高いのは、バジャウ(10.9 %)(11)とセブアノ12.5 %であった。 また平均年齢は全体で40歳前後である。バジャウとマラナオでは若干若く、それぞれ 38.6歳、36.1歳であった。 出生地をみるとダバオ市以外が全体の93.1%を占め、エスニック・グループの別にか かわらずほとんどが移民世帯である。バジャウ94.4 %、タウスグ97.1 %、ラミヌサ 92.6 %、マラナオ94.1%に対して、セブアノは88.4 %とやや少ない。これはイスラ・ベ リャで出生したというよりも、ダバオ市内の他地域からイスラ・ベリャに転居した者と 思われる。市内出身者はここでは移住者として扱わない。 2.移動回数と出生地 住所変更をともなう移動回数(市外から)の平均値は全体で1.9回である。セブアノ、 タウスグ、ラミヌサの2回以上に対して、バジャウとマラナオでは1.4回と少ない(表2)。 とくに「バジャウ」(サマ)については、文献でしばしば漂海民や海のジプシーとよばれ るわりには移動回数が少なくみえるかもしれない。これは本格的な転居をきめる前のト ライアルとしての移動や、ダバオ市を一種の停泊地としての一定地域内における短期的 あるいは周遊的移動を数えていないためである。陸地定着化が進んでいるとはいえ、彼 らの移動性は高く、彼ら自身も年代順に移動歴を正確に把握しているわけではないので、 そのすべてを質問紙のような定型的・量的調査方法で捕捉することは難しい。ここでの バジャウの回答は、おおまかにいって「(いくつかの場所を訪れたが)自分の家を建てて拠 点とする場所を1─2回変更した」という意味であろう。逆に、非バジャウの4グループ は、完全に定着性であるからこそ、年代順に移動歴を明確に回答できるといえる。 出生地(12)を地方別にみると(表2、エスニック・グループ別に大きな違いがみられる。 端的にいって、バジャウ、タウスグ、ラミヌサの3者はスルー系である。そのうち、バ ジャウでは西ミンダナオ地方(80.0 %)が多く、その大半が港湾都市のサンボアンガ市を 含む南サンボアンガ州である(13)。タウスグとラミヌサはムスリム・ミンダナオ自治地方 が多く(それぞれ44.1%、88.0 %)、ともにスルー州出身者の比率が高い(14)。タウスグでは

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アジア研究 Vol. 48, No. 2, April 2002 78  表 2 世帯主の属性と地域間移動:エスニック・グループ別 合計 セブアノ タウスグ ラミヌサ マラナオ 世帯数合計 364• 180• 96• 35• 27• 17 性別  男子 90.7%• 89.1%• 87.5%• 94.3%• 100.0%• 100.0%  女子• 9.3%• 10.9%• 12.5%• 5.7%• 0.0%• 0.0% 年齢  平均値 40.0歳 38.6歳 41.2歳 41.7歳 43.7歳 36.1歳  標準偏差• 13.6075• 14.8986• 11.6635• 9.5356• 16.1460• 9.6688 出生地  ダバオ市• 6.9%• 5.6%• 11.6%• 2.9%• 7.4%• 5.9%  ダバオ市以外• 93.1%• 94.4%• 88.4%• 97.1%• 92.6%• 94.1% 移動歴(母数:移住者) (338) (170) (84) (34) (25) (16)  住居変更をともなう移動回数(市外)a   平均値 1.9回 1.4回 2.7回 2.5回 2.3回 1.4回   標準偏差 1.2075• 0.6854• 1.414• 1.6002• 0.8744• 0.7188 出生地(地方別)b  西ミンダナオ地方 45.5%• 80.0%• 10.0%• 17.6%• 4.0%• ─  ムスリム・ミンダナオ自治地方 22.2%• 12.4%• ─• 44.1%• 88.0%• 100.0%  南ミンダナオ地方 16.5%• 2.9%• 40.0%• 26.5%• 4.0%• ─  中央ビサヤ地方 6.3%• 1.8%• 21.3%• 2.9%• ─• ─  中央ミンダナオ地方 2.4%• ─• 5.0%• 8.8%• 4.0%• ─  北ミンダナオ地方 1.8%• ─• 7.5%• ─• ─• ─  カラガ地方 1.5%• 1.8%• 2.5%• ─• ─• ─- 東ビサヤ地方 1.5%• ─• 6.3%• ─• ─• ─  西ビサヤ地方 1.5%• ─• 6.3%• ─• ─• ─  南タガログ地方 0.6%• 0.6%• 1.3%• ─• ─• ─  中部ルソン地方 0.3%• 0.6%• ─• ─• ─• ─ 出生地から転出した理由c  治安の悪化 40.5%• 68.2%• 7.2%• 29.4%• 8.0%• 13.3%  転入先で仕事を探すため 19.3%• 2.4%• 43.4%• 29.4%• 32.0%• 33.3%  生活苦• 14.6%• 13.5%• 15.7%• 8.8%• 24.0%• 13.3%  転入先で住居を探すため 6.9%• 1.2%• 3.6%• 11.7%• 16.4%• 33.3%  親の転居に同伴 5.7%• ─• 15.7%• 5.9%• 12.0%• 6.7%  親族の呼び寄せ 4.5%• 8.8%• ─• ─• ─• ─  結婚にともなう転居 3.9%• 2.9%• 7.2%• ─• 4.0%• ─  転入先で教育を受けるため 2.4%• ─• 6.0%• 5.9%• ─• ─  転勤・異動 0.6%• ─• 1.2%• 2.9%• ─• ─  漁場を探すため 0.3%• 0.6%• ─• ─• ─• ─  高潮に被災 0.3%• 0.6%• ─• ─• ─• ─ 現住所に関する情報の入手方法d  家族・親族 74.6%• 82.4%• 57.1%• 70.6%• 84.0%• 75.0%  友人・隣人 16.0%• 2.4%• 41.7%• 29.4%• 12.0%• 18.8%  自分でみつけた(パイオニア移住者) 8.6%• 15.3%• 1.2%• ─• 4.0%• 6.3% 現住所への転入時期e  1965─69年• 7.1%• 1.8%• 13.1%• 11.8%• 20.0%• ─  1970─74年• 7.4%• 10.6%• 3.6%• 2.9%• 8.0%• ─  1975─79年• 14.8%• 8.8%• 21.4%• 11.8%• 32.0%• 25.0%  1980─84年• 19.5%• 11.8%• 23.8%• 32.4%• 24.0%• 37.5%  1985─89年• 15.1%• 15.3%• 17.9%• 8.8%• 4.0%• 18.8%  1990─94年• 23.4%• 31.2%• 14.3%• 29.4%• 4.0%• 18.8%  1995─99年• 12.7%• 20.6%• 6.0%• 2.9%• 8.0%• ─ 非バジャウ  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 「合計」には「その他のエスニック集団」(度数9)を含む.回答不明を含まないため合計は必ずしも100%とならない. a.•分散分析結果:自由度5,F値19.926,有意確率0.000. b.•ピアソンのカイ二乗:自由度50,有意確率(両側)0.000. c.•ピアソンのカイ二乗:自由度70,有意確率(両側)0.000. d.•ピアソンのカイ二乗:自由度15,有意確率(両側)0.000. e.•ピアソンのカイ二乗:自由度30,有意確率(両側)0.000. バジャウ (サマ)

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79 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から 南ミンダナオ州(26.5 %)も比較的多いが、これはダバオ市対岸にあるサマール島を含む 北ダバオ州からの移住者であり、つぎに多い西ミンダナオ地方(17.6 %)はすべて南サン ボアンガ州からの移住者である(15)。一方、マラナオもムスリム・ミンダナオ自治地方が 多い(100.0 %)が、これは内陸都市のラナオ市を含む南ラナオ州が主である(16)。セブア ノは、南ミンダナオ地方(40.0 %)、中央ビサヤ地方(21.3 %)を中心とする(17)。いずれの エスニック・グループも伝統的に当該グループの人口比率が比較的高い地域の出身であ る。移住したダバオ市においては、多数派であるセブアノに対して、バジャウ、タウス グ、マラナオ、ラミヌサは少数派という立場を共通とする。 3.転出理由 出生地が異なる以上は当然かもしれないが、転出理由もエスニック・グループでばら つきがみられる(表2)。スルー系では「治安の悪化」が多い。とくにバジャウでは 68.2 %にのぼり、難民の印象がいっそう強い(18)。回答者の多くが用いた「ゲラgira: 争)」という言葉からは、1970年代初頭から10年以上も続いたムスリム分離独立派とフ ィリピン政府軍の武装紛争によるスルー諸島・サンボアンガ地域における治安の悪化が 想起される。個人の経験はさまざまであるが、多くの場合、直接紛争に巻き込まれたの ではなく、紛争激化にともない避難民となったタウスグなどムスリム諸族が比較的平和 であったサマの居住区に流入したために、二次的避難民として流出に追い込まれたよう である(cf. Nimmo, 1990a; 1990b)。また転入時期が85年以降の場合には、バジャウのい う「治安の悪化」は「海賊行為の多発(daghang tulisan)」として語られることが多い。海 賊行為の主体はホロアノ(Joloano)とされ、具体的にはタウスグやヤカンなどのムスリ ム諸族である。同じスルー系でも、タウスグやラミヌサでは「転入先で仕事を探すため」 (それぞれ29.4 %、32.0 %)、「転入先で住居を探すため」(同11.7%、16.4 %)など、背後に は紛争の影響があったかもしれないにしろ、バジャウにくらべて明確な社会経済的動機 をもっての移住となっている。内陸系ムスリムであるマラナオもまた紛争地域の出身で あるが、転出理由は「転入先で仕事を探すため」(33.3 %)、「転入先で住居を探すため」 (33.3 %)などとなっている。一方、セブアノの場合、紛争地域からの難民ではないから、 経済的動機が主であり、「転入先で仕事を探すため」(43.4 %)、「生活苦」(15.7 %)などが あげられた。 4.現住所への転入にあたっての情報収集経路と移動時期 現住所に関する情報源は、フィリピンのような低開発諸国に典型的にみられるように、 「家族・親族」(全体の74.6 %)と「友人・隣人」(同16.0 %)で9割以上になる(表2)。し ばしばそれは先に移住していた者であり、移住前の情報ばかりでなく、移住後には一時 的滞在先や雇用情報を提供することも多い。エスニック・グループ別にみた特徴として は、セブアノでは「家族・親族」(57.1%)と「友人・隣人」(41.7 %)が拮抗しているの

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80 に対し、他の4グループでは「家族・親族」など血縁者に頼る場合が7─8割と高い。バ ジャウでは「友人・隣人」(2.4 %)への依存度は低く、「家族・親族」(82.4 %)に頼るか、 さもなくば「自分でみつけた」(15.3 %)という場合が多い。調査地においては、このパ イオニア性あるいは独立性はバジャウに特徴的である。ただし、バジャウのパイオニア 移住者は必ずしも出身地が同じではない。バジャウ地区は特定出身地の支村ではなく、 出身地が異なるバジャウの混住地なのである。 現住所への転入時期は、どのグループも1970年代前半まではまだ少なく、75年以降 が7割以上である。セブアノ、タウスグ、ラミヌサで75─84年の期間における移住者の 比率が高いのは、多くが初めはイスラ・ベリャ隣接地区に転入してきたものの、そこで 火災に遭ったために空いている土地を求めて調査地に流入してきたためである。セブア ノ、タウスグ、マラナオ、ラミヌサは遅くとも94年頃までには移住のピークをむかえ、 それ以降一段落している。これに対して、バジャウは90年代に移住してきた者が5割強 もおり、20.6 %は95年以降の新規移住者であることが特徴的である。 ここで付け加えておくと、現在、バジャウはイスラ・ベリャ総人口のうち約1割を占 める少数派である。ただし、ダバオ市全体ではバジャウの人口は1 %にも満たないこと を考えれば(19)、イスラベリャにおけるバジャウのプレゼンスは相対的に大きい(20)。初 期においてはアリーナ・ピカスに流入したバジャウのほとんどが80年代半ば、高潮を理 由に砂州北東部のアラスカ地区に集団移住した。1980年代以降、出生地のプッシュ要因 が解決しない一方で、イスラ・ベリャに定着したバジャウが情報や転居直後のシェルタ ー提供機能を果たすことで親戚・友人を介した流入が続いて現在に至っているために新 規移住者が減少しないと考えられる。

3

.生業転換の状況

1.就業状態の変化  表3は、世帯主の出身地における主たる生業と調査地における現在の生業をエスニッ ク・グループ別にまとめたものである。全体的に移住前は、非労働力状態か失業状態に あった者の比率が高い(23.7 %)。学生だった者は、とくにセブアノ(25.0 %)やマラナオ (12.5 %)で多くなっている。非バジャウでは出身地で働いていなかった者が多いことに なるが、バジャウでは非労働力状態や失業状態にあった者は8.8 %、学生だった者は 1.2 %にすぎない。バジャウの世帯主は移住前も現在も就業率があまりかわっていないこ とが特徴である。次節以降で、バジャウは非バジャウと比較して低所得であり、一般に 貧困であることが明らかになるが、就業率でみる限りは非バジャウよりも働いているよ うにみえる。問題は生業の分布と転換状況である。

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81 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から 2.非バジャウの生業転換 非バジャウの世帯主で現在働いていないと回答した者はほとんどなかった。移住前に は無職であったものの、ダバオ市移住後は何らかの仕事を見つけたのである。全体に自 営業(非農業)の比率が高い。エスニック・グループ別にみると、とくに自営業が多いの はラミヌサ(80.0 %)とマラナオ(69.0 %)で、ともに「バイ・アンド・セル」(それぞれ 72.0 %、31.3 %)を含む行商・露天商が中心である。「バイ・アンド・セル」とは文字通り 物を売り買いすることで利益をあげる商売で、この場合には、ムスリム系商人から仕入 れた小間物(サングラス、ヘア・アクセサリ、ベルト、履物など)をダバオ市内や近隣諸都市 を移動しながら売り歩く。この業種はタウスグにもみられ(5.9 %)、一般にムスリム系に 特徴的な職種といえるが、一部セブアノにもみられた(4.8 %)。セブアノで自営業に就く 者は52.7 %で、最も多いのは大工(10.7 %)である。自営業以外の生業に就いている者 は、セブアノでは賃金労働者(32.1 %)、タウスグでは賃金労働者(26.4 %)と漁師 (23.5 %)、マラナオでは賃金労働者(12.6 %)と専門職・公務員(12.6 %)に多い。賃金労 働者のほとんどは労働基準法適用外であるような従業員規模10人未満の事業所に雇われ ているか、日雇いのような臨時雇用である。したがって、ここで自営業主と賃金労働者 とを比較して、雇用機会の安定性や所得の高さの点でどちらがより良いということはで きない。ただ、だれかに雇われて働くということは、雇用主やほかの従業員とのコミュ ニケーション能力が不可欠となる。ダバオ市の多数派がセブアノであることを考えると、 ここで就いている職種の数において、セブアノのほうが他のグループよりも多いのは、 そのためかもしれない。逆に、非セブアノの場合には、賃金労働よりも自営業のほうが 参入しやすいということであろう。 3.バジャウの生業転換 このようにダバオ市に移住後はさまざまな生業に就くようになった非バジャウにくら べ、バジャウの生業転換は緩慢である。ほとんどの世帯主は出身地で漁師であった (74.1%)。漁師の比率は現在51.2 %であるが、これはむしろ緩やかな変化にみえる。ひ とつの証左として、表3には世帯主の父親が就いていた生業を併記した。非バジャウで は、親から子へと世代を経るにつれて漁業を含む農業部門への就業が激減し、かわって 非農業部門への就業が増加している。とくにセブアノ、ラミヌサ、マラナオではダバオ 市に移住してきた子世代で農業部門に働いている者はほとんどいない。いまも漁業を続 けているタウスグであっても、父世代の67.6 %から子世代では23.5 %まで大きく減少し、 農業に限れば皆無となった。こうした世代間の職業移動は、バジャウにはほとんどみら れない。父親が漁師だった者は62.9 %、地域間移動を経験した子世代にあっても5割は 漁師なのである。職業移動はしばしば階層移動に結びつくとすれば、バジャウの場合、 世代間でそうした階層移動もみられないということになろう。

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アジア研究 

Vol. 48, No. 2, April 2002

 表 3 生業の転換:父親の主たる生業,本人の出生地・現在の生業,エスニック・グループ別 バジャウ(サマ) 合計 セブアノ タウスグ ラミヌサ マラナオ 非バジャウ 本人 父親b 移住前 現在 本人 父親b 移住前 現在 本人 父親 移住前 現在 本人 父親 移住前 現在 本人 父親 移住前 現在 本人 父親 移住前 現在 283• 338• 338• 116• 170• 170• 84• 84• 84• 34• 34• 34• 25• 25• 25 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0• 100.0 7.4• 32.9• 4.7• 17.2• 10• 7.1• 0• 65.5• 3.6• 0• 44.1• 0• 0• 48• 4 7.4• 23.7• 4.7• 17.2• 8.8• 7.1• ─• 40.5• 3.6• ─• 35.3• ─• ─• 44.0• 4.0 • ─ 9.2• ─• ─• 1.2• ─ • ─ 25.0• ─• ─• 8.8• ─• ─• 4.0• ─ 65.7• 50.6• 29.3• 68.1• 75.9• 51.2• 67.8• 20.3• 2.4• 67.6• 32.3• 23.5• 44.0• 32.0• 0.0 37.8• 43.8• 29.0• 62.9• 74.1• 51.2• 7.1• 2.4• 1.2• 44.1• 29.4• 23.5• 44.0• 32.0• ─ 27.9• 6.5• ─• 5.2• 1.8• ─• 60.7• 16.7• ─• 23.5• 2.9• ─• ─• ─• ─ • ─ 0.3• 0.3• ─• ─• ─• ─• 1.2• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 16.7• 12.0• 45.0• 5.2• 10.1• 33.0• 19.1• 12.0• 52.7• 26.3• 17.6• 40.9• 40.0• 20.0• 80.0 4.9• 1.8• 2.4• 1.7• 1.8• ─• 1.2• ─• ─• 8.8• 2.9• 17.6• 28.0• 8.0• 4.0 3.9• 1.2• 3.6• ─• ─• ─• 10.7• 2.4• 10.7• 5.9• 5.9• 2.9• ─• ─• ─ 1.4• ─• 1.8• ─• ─• ─• ─• ─• 6.0• ─• ─• ─• 4.0• ─• ─ 1.1• 2.4• 8.6• ─• ─• ─• 1.2• 1.2• 4.8• ─• 5.9• 5.9• ─• 8.0• 72.0 0.7• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─• ─• 4.0• ─• ─ 0.7• 0.9• 9.5• 1.7• 1.8• 18.8• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 0.4• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─• ─• ─ 0.4• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─ ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 0.4• ─• 1.2• ─• ─• 0.6• 1.2• ─• 3.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 0.4• ─• 0.9• ─• ─• ─• 1.2• ─• 1.2• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─ 0.4• ─• ─• 0.9• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 0.4• 0.6• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• 2.9• ─• ─• ─• ─• ─ 0.4• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─• 4.0• ─ • 0.4• 0.3• ─• 0.9• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • 0.4• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • 0.4• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─ 0.6• 1.2• ─• 3.5• 2.4• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─ 0.3• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• 2.9• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• 0.6• ─• ─• ─• ─• 1.2• 2.4• ─• ─• ─• 4.0• ─ ─ ─ 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─ ─ ─• ─ ─ ─• ─ ─ ─ ─ 0.3• 0.6• ─• 0.6• ─• ─• ─• 1.2• ─ ─ 2.9• ─ ─• ─ ─ 0.3• 0.6• ─• ─• ─• ─• 1.2• 1.2• ─• ─• 2.9• ─ ─ ─ ─ 0.3• 0.3• ─• ─• ─ ─• 1.2• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2 ─ ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2 ─• ─ ─ ─• ─ ─ ─ ─ 0.3• ─ ─ ─ ─• ─• 1.2 ─• ─ ─ ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─• 0.3• 0.6• ─• ─• ─• ─• 1.2• 1.2• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─ • ─• ─• 5.0• ─• ─• 9.4• ─• ─• ─ ─ ─• ─ ─ ─ 4.0 • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─ ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─ ─ ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─ ─ ─• ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 16• 16• 16 100.0• 100.0• 100.0 0• 56.3• 0 ─• 43.8• ─ • ─• 12.5• ─ 50.1• 6.3• 6.3 6.3• ─• ─ 43.8• ─• ─ • ─• 6.3• 6.3 37.6• 31.4• 69.0 6.3• ─• ─ ─• ─• ─ 18.8• ─• 6.3 12.5• 18.8• 31.3 ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• 6.3• 18.8 ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• 6.3• 6.3 ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─• ─ ─ ─ ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ • ─ ─ ─ • ─ ─ ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ ─ ─ ─ 合計(n, 移住者のみ対象:人) (%) 生業  非労働力状態/失業状態a  学生 農業・漁業 漁師 農業 半農半漁 自営業(非農業) 魚販売人 大工 サリサリ・ストア(雑貨店)経営者 バイ・アンド・セル行商人 バティック販売人 真珠・貝殻販売人 金製品販売人 ココナッツ材販売業者 チチャリア(スナック)行商人 テーラー メカニック 露天商 ジュエリー職人 パール・コーラル・ダイバー キャトル・レイジング 労働者手配人 マット織り(内職) Tシャツ販売店経営者 金細工職人 グソ(海藻)養殖人 個人運転手 洗濯婦 トライシカッド(ペティ・キャブ)運転手 トライシクル運転手 廃品回収人 バティック縫製職人 非合法賭博元締め 船大工 フルーツ・スタンド販売人 溶接工 ウカイウカイ(古着)販売人 衣料品販売店経営者 オルガン奏者・歌手 シップ・レスキュー業者 住宅賃貸業者

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83 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件 ─ 他エスニック・グループとの比較から ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─ ─ ─• ─ ─ • ─• ─• 0.9• ─• ─• ─• ─• ─• 2.4• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• 1.2• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─ ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─ ─ ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.6• ─ ─ ─ ─• ─• 2.4• ─• ─• ─ ─ ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─ ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─ ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─ ─ ─ • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─ ─• ─• 1.2• ─• ─• ─ ─ ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─ ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─ ─• ─• 1.2• ─ ─ ─• ─ ─ ─ 2.6• 3.0• 9.6• 0.9• 3.6• 1.8• 4.8• 2.4• 32.1• 0.0• 5.8• 26.4• 0.0• 0.0• 4.0 1.1• 0.9• 2.7• ─• 1.2• 0.6• 2.4• 1.2• 8.3• ─ ─ ─• ─ ─ ─ 0.4• ─• ─• 0.9• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 0.4• ─• ─• ─• ─• 0.6• 1.2• ─• 7.1• ─• ─• 8.8• ─• ─• ─ 0.4• 0.3• 0.6• ─• 0.6 ─ ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 4.0 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ 0.6• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─ 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─ • ─• ─• 1.5• ─• ─• ─• ─• ─• 4.8• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─ • ─• ─• 3.3• ─• ─• ─• ─• ─• 8.3• ─• ─• 11.8• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• 0.6• ─ ─ ─ ─ ─ ─• ─ ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─• ─• ─• 1.2• ─ ─ ─• ─ ─ ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 2.5• 0.3• 0.9• 0.0• 0.0• 0.0• 3.6• 0.0• 0.0• 2.9• 0.0• 2.9• 8.8• 0.0• 0.0 1.4• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• 2.9• ─• ─• 8.8• ─• ─ 0.7• ─• 0.3• ─ ─ ─ 1.2• ─ ─ ─• ─• ─• ─• ─• ─ • 0.4• ─• ─• ─• ─• ─• 1.2• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ ─• 0.3• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ • ─• ─• 0.3• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 2.9• ─• ─• ─ 5.7• 0.3• 4.5• 8.7• 0.6• 5.9• 3.6• 0.0• 4.8• 2.9• 0.0• 0.0• 6.0• 0.0• 4.0 2.8• ─• 3.3• 6.9• ─• 5.9• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 4.0 1.8• ─• ─• ─• ─• ─• 3.6• ─• ─ 2.9• ─• ─• 2.0• ─• ─ • 0.4• ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─• 4.0• ─• ─ 0.4• ─• ─• 0.9• ─ ─ ─• ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─ ─ 0.3• ─• ─• 0.9• ─ ─ ─ ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 0.3• ─• ─• 0.6• ─• ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ • ─• ─• 0.9• ─• ─• ─• ─• ─• 3.6• ─ ─ ─• ─ ─ ─ • ─• ─• 0.3• ─ ─ ─ ─ ─ 1.2• ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ • ─ ─ ─ • ─• ─ ─ • ─ ─ ─ • ─• ─• ─ • ─• ─ ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• 6.3 • ─ ─ ─ • ─ ─ ─ • ─ ─ ─ • ─• ─• ─ • ─ ─ ─ 0.0• 0.0• 12.6 ─ ─ ─ ─• ─• ─ ─• ─• 6.3 ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ ─ ─ ─ ─• ─• ─ ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─• ─• ─ • ─ ─ ─ • ─• ─• 6.3 6.3• 6.3• 12.6 ─• ─• ─ 6.3• ─• 6.3 • ─• ─• ─ ─• 6.3• 6.3 • ─• ─• ─ 6.3• 0.0• 0.0 ─• ─• ─ 6.3 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ • ─ ─ ─  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 回答不明を含まないため合計は必ずしも100%とならない. a. 非労働力状態:主婦,高齢者や15歳未満で就学も就職もしていない者など,失業状態:15歳以上の者で求職していた者. b. バジャウ(サマ)については,世帯主の両親に関する調査を一部の世帯で実施しなかったため,サンプル数が少なくなっている. 住宅賃貸業者 石工 タバコ行商人 バーター貿易 はしけ運搬人 バッグ職人 バナナ・ディーラー ビーズ職人 美容師 ビリヤード・ホール経営者 プラスチック販売店経営者 ブリキ職人 野菜ディーラー 賃金労働者 その他の日雇い労働者 フィッシュポンド・ケアテーカー 料理人 建設労働者 トゥバ(ココナッツ・ワイン)配達人 港湾労働者 ウェイター 梱包労働者 魚屋労働者 販売手伝い ジープニー運転手(雇われ) 警備員 印刷業手伝い 工場労働者 集金人 タクシー運転手 荷役人(港湾以外) 専門職・公務員 教師 公務員 PLDTオペレータ イスラーム学校教師 警察官 その他の収入源をもつ者 物乞い 兵士 MNLFメンバー 伝統的医療者 バジャウのイマーム 助産婦(伝統的) 年金生活者 聖職者(キリスト教に改宗した牧師)

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84 緩慢とはいえ、移住前の漁師比率と現在のそれでは2割以上のちがいがあるから、非 漁業へ転換した者も確かにある。非農業の生業では、非バジャウと同様に自営業の比率 が高い(33.0 %)。しかし、職種の分布は非バジャウとはかなり異なり、かつ限定的であ る。多い順に、「貝殻・真珠販売人」(18.8 %)、セブアノ語でウカイウカイ(ukay-ukay) とよばれる古着を売る「古着販売人」(9.4 %)、「マット織り」(2.4 %)であった。このう ち、マット織りは主婦が自宅用につくるもので余分にできれば親戚や隣人に譲るものな ので、生業というほどのものではない。貝殻・真珠販売業と古着販売業はバジャウが従 事する場合、ほとんど行商であり、就業形態の点では当地におけるバジャウに特徴的な 生業である。真珠も古着も地場の製品ではなく、港湾として物流の要衝であるダバオ市 に移入してくる製品である。ダバオ市は地場人口の規模が大きいうえに、ミンダナオ有 数の観光地であるから、貝殻・真珠販売業や古着販売業はこうしたダバオ市の都市とし ての性格に適した生業のようにみえる。 ダバオ市でバジャウが就いているもうひとつの特徴的な生業は、「物乞い」(5.9 %)で ある。一見、非生産的で不適応な状態にみえるがそうではない。ダバオ市内には大小多 くの公設市場があり、豊富な生鮮食料品が毎日取引されているため、金銭だけではなく、 食糧を乞うことが可能である。本稿では質問紙調査で集めたデータを使っているために、 回答に抵抗感があろう物乞いについては過少申告になっていると思われる。観察によれ ば、実際、市場(いちば)や大通りで恒常的な物乞いをすることで糊口をしのいでいるバ ジャウは少なくない。この背景には、漁業の衰退がある。質問紙調査で現在も漁業を生 業としていると回答した者のうちには、現実には「現在も漁業を生業と考えている」と いったほうが正確であって、市場交換どころか自給水準にも満たないような低生産性に 陥っていることもまれではない(21)。そのような場合、非漁業に速やかに転換できなけれ ば、世帯構成員がばらばらに物乞いを展開し、なんとか生き残っていくことになるので ある。 バジャウの生業転換は非バジャウにくらべて、世代間の職業移動も少なければ、ダバ オ市における非漁業自営業の職種も極端に少ないことが特徴である。また、こうした生 業分布の特徴は、当然、経済生活の水準を示す諸指標にも反映されてくる。これを次節 で検討したい。

4

.経済生活の水準

(22) 1.所得  現在、就業している世帯主335人の1日当たり所得は平均177.7ペソ(23)である(表4 単位を1日当たりとしたのは、被調査者の76.3 %が生業からの所得を1日当たりの純益

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85 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から (自営業)か日当(賃金労働者)として答えたためである。比較のために、週給(11.9 %) や月給(11.9 %)とした者は日当に換算した。1日当たり労働時間は平均9.0時間、1週間 当たりの就業日数は平均6.25日で、ともに賃金支払い単位や職種とは相関がなかった。 エスニック・グループ別にいくつかの統計的な分析をしてみよう。まず1日当たりの 生業からの平均所得では、高い順に、マラナオ278.5ペソ、ラミヌサ221.5ペソ、セブア ノ194.8ペソである。5グループのうちでバジャウは最も低く、153.9ペソであった(表4)。 申告された1日当たり所得の最低値がバジャウでは6ペソという値があるが、これは女 子の世帯主がマット織りをしている場合である。どのエスニック・グループにおいても 標準偏差が大きいことからもわかるように、賃金のばらつきが大きい。 ここで世帯主のうち移住者(325人)を対象に1日当たりの所得の決定要因について若 干の考察をしておこう。表5は、従来の移住者に関する研究において説明変数としてあ げられてきた、年齢、就学年数(教育水準)、都市滞在年数(ダバオ市居住年数)、エスニシ ティ(バジャウか非バジャウかの別)による重回帰分析を試みた結果である。自由度修正済 み決定係数が0.062とモデルの当てはまりはよくないが、これをみると、就学年数が所 得決定に与える影響があることが示唆される。年齢は符号が通常の仮説と逆(24)、都市滞 在年数も符号が逆(25)かつ統計的に有意ではなかった。エスニシティは係数(β)をみる  表 4 世帯主の生業からの1日当たり平均所得:エスニック・グループ別 エスニック・グループ 平均値 度数 標準偏差 最小値 最大値 合計 177.7• 335• 124.7512• 6.0• 700.0 バジャウ(サマ) 153.9• 166• 123.5355• 6.0• 600.0 非バジャウ  セブアノ 194.8• 87• 114.7040• 32.0• 640.0  タウスグ 169.6• 32• 98.6848• 40.0• 560.0  マラナオ 278.5• 17• 172.6464• 50.0• 700.0  ラミヌサ 221.5• 24• 128.0010• 60.0• 480.0  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 回答不明を含まないため合計は必ずしも100%とならない.分散分析結果:自由度5,F値4.611, 有意確率0.000, R二乗0.020,イータ二乗0.065. (単位:ペソ)  表 5 世帯主の生業からの1日当たり平均所得水準に与える影響線形重回帰分析の結果 世帯主かつ移住者(n=325人) 非標準化係数 標準化係数 モデル B 標準誤差 β t 有意確率 (定数) 166.596•• 30.464•• 5.469• 0.000 エスニシティ (0=バジャウ,1=非バジャウ) 27.588•• 20.871• 0.111• 1.322• 0.187 年齢 −1.031•• 0.551• −0.109• −1.871• 0.062 就学年数 4.274•• 2.243• 0.156• 1.905• 0.058 ダバオ市居住年数 −0.496•• 0.757• −0.0400• −0.655• 0.513  (注) R二乗0.074(自由度修正済みR二乗0.062).  分散分析結果(回帰):自由度4,F値6.385,有意確率0.000.

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86 と、バジャウよりも非バジャウが有利であることが示唆されるが、有意確率が0.187で あり、統計的な意味は弱い。ただし、この分析は就業形態や業種の実態を考察していな いので、詳しくはそうした特質を抽出する作業を踏まえたうえでの議論が必要となる。 事実として、バジャウは非バジャウとくらべて決定的に教育水準が低い(表1)。就学 年数の平均は非バジャウでは男女ともに7.0年であるのに、バジャウでは男子で1.2年、 女子で0.9年にすぎず、最頻値にいたっては0.0年であった(26)。ほとんど学校に通ってい ないバジャウでは、読み書き算数など基本的な学習をする機会がないという問題以外に、 国語であるフィリピーノ語、地域共通語であるセブアノ語、公用語である英語などを学 ぶ機会がないという問題もある。つまり、一般的な解釈において、バジャウは非バジャ ウよりも人的資本において劣る。バジャウと非バジャウとの平均所得の格差は、能力あ るいは生産性一定のもとでエスニシティによる差別があるのではなく、労働市場の外で すでに決まっている能力差―ここでは学歴―のために、バジャウと非バジャウでは 就業する機会に質的な違いがあるためと推察されよう。 表6は、生業別に1日当たり平均所得をまとめたものである。上から下へ、高い順に 列挙してあり、太字の業種はバジャウに特有のものである。バジャウが就いている生業 には1日当たり300ペソ以上も稼げるような高収入のものはなく、非バジャウとの関係 において相対的に低い所得の就業機会に就いている。さらに、バジャウの内部に目をむ けると、彼らに特有の生業にあっても所得の点でばらつきが大きい。平均所得が高い順 に、貝殻・真珠販売人で248.2ペソ、古着販売人175.0ペソ、漁師139.2ペソ、物乞い 49.5ペソ、マット織り8.5ペソである。このうち、貝殻・真珠販売人と漁師では、標準 偏差や最小値と最大値の乖離が大きい。質問紙調査では把握しきれなかったが、このふ たつの生業はその内部に生産性の格差がある。具体的には、貝殻・真珠販売人では行商 かホテル販売かという就業形態の違い、漁師ではパナ(pana: 突き漁)を主とするか、パ ラングレ(palangre: 延縄漁)・ボボ(bubu: 魚伏籠)を主とするかという漁法の違いを反映 するものである(27) つぎに、配偶者の生業からの所得を検討しよう。世帯主のほか配偶者も働いているの は123世帯で、配偶者(女子)の生業からの1日当たり平均は153.3ペソである(表7)。 共稼ぎ世帯の比率は、全体で31.3 %であった。エスニック・グループ別にみると、セブ アノで40.9 %、タウスグで44.1 %、マラナオで32.0 %、ラミノサ17.6 %、バジャウ 24.4 %である。バジャウでは共稼ぎが少なくみえるが、これは実際にはかなりの女子が 日常的に行っている物乞いが過少申告になっているためである。 平均所得をエスニック・グループ別にみると(表7)、非バジャウに限ればラミヌサ 207.2ペソ、マラナオ180.2ペソ、タウスグ180.0ペソ、セブアノ171.4ペソである。世 帯主のそれに比べてばらつきが小さいが、これは女子の場合、男子よりも限られた職種 に就いているためであろう。一方、バジャウの配偶者が稼ぐ1日当たり所得の平均は非 バジャウよりかなり少なく、119.0ペソであった。ここでもやはりバジャウと非バジャウ

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87 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から  表 6 世帯主の生業からの1日当たり平均所得:生業別        生業 平均値 度数 標準偏差 最小値 最大値        合計 177.7• 335• 124.7512• 6.0• 700.0 Tシャツ販売店経営者 700.0• 1• シップ・レスキュー業者 640.0• 1 警察官 560.0• 1 野菜ディーラー 500.0• 1 ココナッツ材販売業者 480.0• 1 海外出稼ぎ労働者(ウェイター) 400.0• 1 フィッシュ・ボール販売人 325.0• 2• 35.3553• 300.0• 350.0 衣料品販売店経営者 300.0• 1 タクシー運転手 300.0• 1 はしけ運搬人 300.0• 1 プラスチック販売店経営者 300.0• 1 サリサリ・ストア経営者 287.9• 7• 167.0294• 100.0• 500.0 ジープニー運転手 256.0• 5• 153.8831• 100.0• 500.0 貝殻・真珠販売人 248.2 38 167.2687 40.0 600.0 バイ・アンド・セル行商人 247.1• 31• 122.507• 60.0• 500.0 公務員 240.0• 1 バーター貿易 240.0• 1 露天商 240.0• 4• 108.3205• 160.0• 400.0 メカニック 230.0• 2• 98.9949• 160.0• 300.0 バッグ職人 225.0• 2• 106.0660• 150.0• 300.0 魚販売人 222.5• 8• 139.0529• 80.0• 500.0 イスラーム学校教師 212.0• 1 金細工職人 200.0• 1 その他の行商人 200.0• 1 半農半漁 200.0• 1 溶接工 200.0• 1 テーラー 196.7• 3• 45.0925• 150.0• 240.0 年金生活者 180.0• 4• 151.4376• 80.0• 400.0 ブリキ職人 180.0• 1 古着行商人 175.0 2 35.3553 150.0 200.0 トライシクル運転手• 175.0• 2• 35.3553• 150.0• 200.0 大工 162.7• 12• 17.9913• 144.0• 200.0 販売手伝い 160.0• 1 石工 153.3• 3• 30.5505• 120.0• 180.0 個人運転手 150.0• 2• 70.717• 100.0• 200.0 スナック販売人 150.0• 2• 0.0000 警備員 144.3• 11• 33.9767• 68.0• 200.0 清掃人 140.0• 1 漁師 139.2 102 96.389 20.0 500.0 その他の日雇い労働者• 135.0• 10• 24.8813• 100.0• 180.0 料理人 131.3• 13• 22.7815• 80.0• 155.0 印刷業手伝い 129.0• 1 工場労働者 128.0• 1 バナナ・ディーラー 128.0• 1 集金人 120.1• 1 ビリヤード・ホール経営者 120.1• 1 廃品回収人 119.6• 2• 27.7186• 100.0• 139.2 建設労働者 108.0• 2• 16.9706• 96.0• 120.0 ビーズ職人 105.0• 2• 77.7817• 50.0• 160.0 タバコ行商人 100.0• 1 トライシカッド(ペディ・キャブ)運転手• 100.0• 2• 0.0000 荷役人(港湾以外) 100.0• 1 美容師 96.0• 1 物乞い 49.5 11 23.7123 30.0 100.0 家具職人 48.0• 1 住宅賃貸業者 32.0• 1 マット織り 8.5 4 2.5166 6.0 12.0  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 太字がバジャウに典型的な生業で,非バジャウの就業者は含まない.非バジャウは,セブアノ,マラナオ, タウスグ,ラミヌサ(シアシ系サマ)からなる. (単位:ペソ)

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88 では就業機会に質的な違いがあることが影響している。 これらについて、生業別に1日当たり平均所得をまとめた表8をみてほしい。まず、 全体について世帯主よりも職種が少なく、300ペソ以上の高収入が得られる仕事はホス テスと海外出稼ぎ労働者を除けば4つしかない。つぎに、太字で示したバジャウに特有 の生業をみてみると、貝殻・真珠販売人に就いているとした1名を除けば、大半は古着 販売人に集中しており、その1日当たりの所得は平均139.4ペソである。ここでも同じ古 着販売人であっても最小値20ペソ、最大値300ペソと格差があり、商売のやり方次第で 所得格差が生じることが示唆される。また、物乞いはここでは2人しかいないが、とも に40ペソを稼ぐとしている。 ここでみる限り、調査地の就業状況において、バジャウの女性は必ずしも最低の収入 しか得られない生業に就いているわけではない。しかし、だからといって問題がないと はいえない。実質的に古着販売人という1職種に集中していることは、比較的さまざま な職種に就いている非バジャウと比べて極端に就業選択の自由がないことを示している からである。 2.支出(28) (1) 基礎的な支出項目 表9は、支出水準はともかく、ある項目に何らかの現金支出をしているかどうか、た ずねた結果である。ここで基礎的な支出として、食費、照明、水道、調理用燃料、交通 費をみると、すべての項目についてバジャウでは全体の平均より支出している世帯の比 率が低く、多くの項目でほとんどの非バジャウ・グループを下回っている。平均支出額(29) についても考慮しながら(表10)、両グループの比較をしてみよう。 バジャウで食費を支出している世帯が91.7 %ということは、逆に食事代を費やさずに 暮らしている世帯が1割近くもいるということである。これはにわかに信じがたいが、 食費ゼロと申告したバジャウの世帯は、若年か高齢、あるいは健康上の問題などから自 ら食糧を調達できず、親戚や隣人に食べさせてもらっているか、あるいは自ら物乞いし

アジア研究 Vol. 48, No. 2, April 2002  表 7 配偶者の生業からの1日当たり平均所得:エスニック・グループ別 エスニック・グループ 平均値 度数 標準偏差 最小値 最大値 合計 153.3• 123• 107.8634• 2.0• 700.0 バジャウ(サマ) 119.0• 51• 80.7918• 2.0• 300.0 非バジャウ  セブアノ 171.4• 42• 92.6583• 32.0• 400.0  タウスグ 180.0• 13• 175.4993• 28.0• 350.0  マラナオ 180.2• 6• 131.0862• 28.0• 350.0  ラミヌサ 207.2• 9• 127.0970• 50.0• 400.0  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 回答不明を含まないため合計は必ずしも100%とならない.分散分析結果:自由度5,F値2.037, 有意確率0.000, R二乗0.046,イータ二乗0.080. (単位:ペソ)

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89 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から て糊口をしのいでいる、という可能性が考えられる。表10で支出額をみると、バジャウ では1日平均107.2ペソ、非バジャウでは121.1ペソである。ここで単位が1日当たりか ら1ヵ月当たりまで与えられているのは、調査中、回答者によって支出を把握する期間 が異なったためである。バジャウはすべて1日単位での回答であったが、非バジャウで は1週間当たりと1ヵ月当たりである程度予算をたてて支出したと回答した者が5件ずつ あった。より長い期間を考えながら支出できるということは、かんたんにいえば、その 日暮らしではなく、まとめ買い―1単位当たりの購入費は安く―できるということ  表 8 配偶者の生業からの1日当たり平均所得:生業別       生業 平均値 度数 標準偏差 最小値 最大値       合計 153.3• 123• 107.8634• 2.0• 700.0 GRO(ホステス) 700.0• 1• 海外出稼ぎ労働者(家事労働者) 300.0• 2• 84.8528• 240.0• 360.0 貝殻・真珠販売人 300.0 1 バイ・アンド・セル行商人 300.0• 2• 141.4214• 200.0• 400.0 美容師 300.0• 1 プト行商人 300.0• 1 ドレス・メーカー 260.0• 2• 28.2843• 240.0• 280.0 タバコ行商人 250.0• 1 露天商 233.3• 3• 76.3763• 150.0• 300.0 サリサリ・ストア経営者 227.8• 18• 102.5874• 80.0• 400.0 食堂 210.0• 2• 127.2792• 120.0• 300.0 フィッシュ・ボール販売人 200.0• 1 漁師 200.0• 2• 56.5685• 160.0• 240.0 魚販売人 166.7• 3• 28.8675• 150.0• 200.0 秘書 160.0• 1 集金人 150.0• 1 その他の臨時雇い 146.5• 3• 48.7173• 104.6• 200.0 古着販売人 139.4 42 71.0222 20.0 300.0 廃品仕切り場手伝い 130.0• 1 ビーズ職人 130.0• 2• 42.4264• 100.0• 160.0 清掃人 122.5• 2• 3.5355• 120.0• 125.0 教師 120.0• 1• 17.9913• 144.0• 200.0 販売担当職 105.0• 4• 40.2078• 50.0• 135.0 家具塗装職人 100.0• 1 野菜ディーラー 100.0• 1 魚販売人手伝い 80.0• 2• 0.0000 政府臨時雇い 80.0• 1 工場労働者 68.0• 2• 16.9706• 56.0• 80.0 コンピュータ入力手伝い 50.0• 1 洗濯婦 49.8• 5• 27.2494• 28.0• 96.0 フルーツ販売人 45.0• 4• 10.0000• 30.0• 50.0 物乞い 40.0 2 0.0000 プロック・リーダー 8.0• 1 マット織り 5.4 1 5.0000 2.0 12.0  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 回答不明を含まないため合計は必ずしも100%とならない.太字はバジャウに典型的な生業で,非バジャ ウの就業者は含まない. (単位:ペソ)

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90 アジア研究 Vol. 48, No. 2, April 2002  基礎的支出項目  表 10 平均支出額:項目別,バジャウ・非バジャウ別 食費 電気 水道 調理用燃料a 交通費b エスニック・グループ 単位 度数 平均支出額 度数 平均支出額 度数 平均支出額 度数 平均支出額 度数 平均支出額 バジャウ(サマ) 1日当たり 168• 107.2• 73• 3.7• 160• 6.5• 158• 8.4• 133• 15.4 1週間当たり• ─• ─ 2• 50.0• ─• ─ 3• 18.7• 14• 21.6   1ヵ月当たり• ─• ─ 74• 97.9• 6• 153.3• 3 215.0• ─• ─   1行事ごと• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─ 非バジャウd  1日当たり 170• 121.1• 4• 7.8• 35• 8.6• 75• 10.6• 141• 20.3 1週間当たり• 5• 370.0• 4• 175.5• 4• 43.8• 65• 26.5• 31• 67.3   1ヵ月当たり 5• 2,260.0• 166• 184.3• 139• 121.9• 168• 169.0• 4• 77.5   1学期当たり• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─• ─  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) a. ガス,薪,木炭など.b. 通勤,通学,買い物など日常生活で必要となる交通費.c. 授業料,教科書代など 就学に関係するすべての費用.d. セブアノ,タウスグ,マラナオ,ラミヌサの合計. (単位:ペソ)  その他の支出項目 タバコ 酒 賭博 教育費c エスニック・グループ 単位 度数 平均支出額 度数 平均支出額 度数 平均支出額 度数 平均支出額 バジャウ(サマ) 1日当たり 67• 16.6• 27• 31.1• 15• 23.7• 18• 17.8 1週間当たり 3• 15.7• 5• 30.5• 13• 53.8• 4• 122.5   1ヵ月当たり• ─• ─ 5• 88.0• 3• 183.3• 1• 1,200.0   1行事ごと• ─• ─• ─• ─• 4• 450.0• ─• ─ 非バジャウ  1日当たり 101• 13.4• 15• 17.1• 3• 26.7• 40• 60.5 1週間当たり• 6• 25.0• 55• 44.1• 13• 72.7• ─• ─   1ヵ月当たり 2• 245.0• 19• 72.6• 5• 162.0• 41• 760.0   1学期当たり• ─• ─• ─• ─• ─• ─• 39• 752.0  表 9 支出の有無:エスニック・グループ別 何らかの支出があると回答した世帯の比率(%) エスニック・グループ 母数 食費 電気 水道 調理用燃料a 交通費 タバコ 酒 賭博 教育費b 合計 364• 95.6• 88.7• 94.5• 90.9• 89.0• 49.2• 40.4• 15.4• 65.6 バジャウ(サマ) 180• 91.7• 81.8• 90.6• 88.9• 80.6• 38.3• 32.2• 19.4• 25.6 非バジャウ  セブアノ 96• 100.0• 96.9• 99.0• 96.9• 99.0• 53.1• 56.3• 14.6• 96.7  タウスグ 35• 100.0• 91.4• 97.1• 88.6• 100.0• 68.6• 31.4• 5.7• 85.2  マラナオ 17• 100.0• 100.0• 100.0• 88.2• 100.0• 58.8• 29.4• 5.9• 90.0  ラミヌサ 27• 96.3• 96.3• 96.3• 85.2• 92.6• 59.3• 48.1• 11.1• 90.5  (出所) 筆者のフィールド調査より作成.  (注) 回答不明を含まないため合計は必ずしも100%とならない.a. ガス,薪,木炭など.b. 7歳─20歳の子供がい る世帯のみを対象.母数は合計214(サマ87,セブアノ69,タウスグ27,マラナオ10,ラミノサ21).ピアソ ンのカイ二乗は自由度5で,漸近有意確率は項目ごとに,食費:0.016,電気:0.001,水道:0.047,調理用燃 料:0.193,交通費:0.000,教育費:0.000,タバコ:0.000,酒:0.002,賭博:0.258.

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91 フィリピン・ダバオ市におけるバジャウの生活条件─ 他エスニック・グループとの比較から である。こうした支出行動は安定した収入の裏返しでもあり、バジャウにはみられなか った。 電気代では非バジャウ・グループでは9割以上の世帯で支出があるのに、バジャウで は81.8 %と、10ポイントほど低い。これはそのまま両グループの電力化水準の格差を示 す。バジャウでは照明器具を含む家電製品を使っていない世帯が非バジャウよりも多い。 表10をみると、電力会社と正規に契約し、メーターを所有している場合、支払いは1ヵ 月ごとのため、1ヵ月当たりで支払い額を答えた者が多い。非バジャウではほとんどが これに該当し、月平均184.3ペソの支出である。バジャウでは、1ヵ月当たりと答えた者 は約半数の74件、平均97.9ペソだった。またバジャウでは、電気代を1日当たりの支出 額とした者が73件もあった。これは、正規契約をしている世帯から非合法に電線を引き 入れている場合などに、1日あるいは1週間単位で支払い額を決めていることがあるため である。つぎにみる水道と同様に、正規契約をしていないとかえって単位当たりの支出 は高くなる。 水道代(飲料水・生活用水)も非バジャウでは100 %近い世帯で支出があるのに、バジ ャウでは9割弱と少ない。水道は、非バジャウの場合には水道局と個人が正式にメータ ー契約して設置した水道管を隣人と共同使用していることが多い。一方、アラスカ地区 のバジャウ住民ではこうしたメーター契約をしている個人は皆無である。かわりに、地 区内にはタウスグ経営のサリサリ・ストア(雑貨店)、隣接地区にはセブアノ経営のサリ サリ・ストアがあるので、彼らはこれらの非バジャウの店から必要に応じて水を購入し、 プラスチック製ガロン容器などで自宅まで運搬して使っている。価格は店によって異な るが、だいたい1ガロン(約3.8リットル)25─50センタボ(30)である。表10をみると、バ ジャウでは大半にあたる160件、非バジャウでも35件で支払い単位が1日当たりで、そ の多くはこうした水の購入をしている。水道管利用よりも単位当たりのコストが高いば かりでなく、水運搬にかかる時間や労力など機会費用も大きい。水道は、トイレや洗濯 場、台所の施設状況との関係も深く、バジャウではこうした衛生水準も低いことが示唆 される。 調理用燃料費を支出しているとした世帯の比率は、バジャウと非バジャウで統計的に 有意な差はない。燃料費ゼロのケースとしては流木などを燃やして煮炊きに使うことが 考えられるが、表9の結果から多くの家庭では何らかの燃料を購入しているといえる。 表10は、こうした燃料の支出構造がバジャウと非バジャウでかなり違うことを示す。バ ジャウでは、ほとんどが1日単位で支出しており(平均8.4ペソ)、具体的には木炭や薪を 購入している。非バジャウでは、1日単位が75件のほか、1ヵ月単位が168件(平均 169.0ペソ)に達している。これはガスをボンベで購入して使っていることが多い。ガ ス・ボンベの利用は、木炭や薪に比べ調理効率が高いという利点がある。バジャウの家 庭では多くの場合、女性が食事の仕度をするが、彼女たちが木炭や薪を使って調理する ところを観察すると、実際、品数は主食のほかに1品と少ないにもかかわらず、長い時

参照

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