• 検索結果がありません。

参加者の連合的なスケッチによる協創

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "参加者の連合的なスケッチによる協創"

Copied!
130
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博⼠論⽂

参加者の連合的なスケッチによる協創

公⽴はこだて未来⼤学⼤学院 システム情報科学研究科

システム情報科学専攻

福⽥ ⼤年

2020 年2⽉

Doctoral Thesis

Co-Creation Through Associated Sketches by Participants

by

Hirotoshi FUKUDA

Graduate School of Systems Information Science

Future University - Hakodate

(2)

概 要: 筆者は,参加型デザインに寄与するため,協創スケッチ法を開発した.協創スケッチ法は, スケッチを⽤いて多⼈数で創造過程を表現し合うことによって,「協働的な創造活動(本研 究では,これを「協創」と名付ける)」を実現する⼿法である.本論⽂は,協創スケッチ法 の実践を分析し,協創スケッチ法や協創の場への効果を解明し,協働的な創造活動の展望に ついて述べた. 本論⽂は,全7章で構成した. 第1章(序論)では,本研究に⾄る背景と研究⽬的を述べた.さらに,本研究のシステム情 報科学での位置付けを述べた.近年,市⺠は,製品やサービスの利⽤者として観察対象にな るだけではなく,開発者の⼀員として開発に参加して課題解決にあたる機会が増している [e.g. ⼭内, 2012; 安岡, 2013].さらに,社会課題の解決⽅法として,参加型デザイン (Participatory Design)[Sanders, Stappers, 2008]が近年注⽬されている.現在の多様で複雑 な社会問題を内包するデザイン活動に対応するためには,企画者やデザイナなどの⼀部の 専⾨家だけでは不⼗分である.当事者も含めた多様な市⺠との協働によって課題解決にあ たる必要がある.しかし,多様な⼈がデザインに参加するためのデザイン⼿法の研究は,始 まったばかりである.これまで筆者は,社会課題を解決するデザインの⽅法を,デザインの 学校,地域の住⺠,企業,団体とともに模索してきた[福⽥, 2015, 2016a, 2016b; 福⽥ほか, 2011, 2012a, 2012b, 2013, 2016c, 2017, 2019; 柿⼭ほか, 2014; 菊地ほか, 2016; 中野ほか, 2017; スーディほか, 2016].特に,スケッチや図を⽤いた視覚表現を取り⼊れたデザイン の実践は,参加者同⼠が関わり合うことによるアイデア創出を可能とした.そのため,市⺠ が参加する課題解決プロセスに,視覚表現を取り込むことが有効な⼿段だと思われた.しか し,視覚表現を実践に取り⼊れても,参加者の社会的地位や⽴場,能動性や受動性,声の⼤ ⼩などの特性,あるいは創造活動への苦⼿意識の影響を受けてしまい,参加者が対等な関係 で,協創を⾏うことは難しい.そこでこれらの課題を克服する,協創スケッチ法を開発した. この⼿法は様々なデザイン実践で使⽤した実績はあるが,この実践によってもたらされる 協創現象や効果について解明する機会はこれまでなかった.本論⽂は,協創スケッチ法の実 践の分析を通じて,協創スケッチ法や協創の場の効果を解明し,協創の展望について述べ る.参加型デザインは,システム情報科学の設計法の⼀部を構成する.不確定で流動的な要 素が多層的に関係する現在の社会課題を解決するためには,開発⼯程の初期段階から多様 な当事者の参加を許容し,容易に設計できるシステムのデザイン⽅法とその理論化が求め られている. 第2章(関連研究)では,本研究に関連する研究を概観し,本研究の社会的意義を述べた. 参加型デザインの活動を形づくるヒントは,実践知を持つ参加者と創造知を持つデザイナ が,知を共有する⾏為の中にある[岡本, 2014].参加者の知の背景を,創造活動を通して探 ることは有効である[e.g. 岡本, 2014; Sanders, Stappers, 2008].しかし,参加者らが主体的 に協創できる⼿法開発には⾄っていない.個⼈の創造性の活性化には,拡散的思考[e.g.

(3)

Osborn, 1953]や創造過程の認知的な把握[e.g. Finke et al., 1992]が重要である.しかし,そ の思考と技法の熟達には⼀定の時間を要する[岡⽥ほか, 2007].短期間に拡散的思考を促す ⼿法[e.g. Osborn, 1953; ⾼橋, 2007]は,多⼈数の創造活動でも⽤いられる.しかし,参加 者の社会的地位や⽴場,能動性や受動性,声の⼤⼩などの特性,あるいは⼿法の熟知度の差 が,アイデア創出や協⼒の機会損失につながる[Sawyer, 2007].スケッチや図などの視覚表 現が,創造活動に果たす役割は⼤きい[e.g. Suwa, Tversky, 1997; 岡本, 2012; 植⽥, 1998]. 特にスケッチは,漠然としたイメージから描き始め,具体化を繰り返す中で,対象の本質を 理解する過程の記録であると⾔える.スケッチや図を⽤いた表現⾏為は,個⼈や多⼈数を問 わず,開発プロセスへの導⼊も模索されている[e.g. Sanders, Stappers, 2008; Stappers, Sanders, 2005; ⾦箱ほか, 2011].協働とは,市⺠,企業,公的機関などが,異なる⽴場や特 性を尊重しながら,共通の⽬的のために協⼒して事にあたることである[e.g. 原⼝ほか, 2016; 益川, 2007; 三好, 2011].⼈が持つ利他性を⽣かした相互⾏為[Tomasello et al., 2009] によって,異質な個⼈の集まりでも互恵的な関係を作ることが,協創の基盤となる.協創の ⽀援や促進する役割として,ファシリテータは有効である[e.g. Kolb, Song, 2008].ただし, その有効性は理論レベルの議論[池⽥, 2015]であり,ファシリテータの⾏動の意図を明らか にする研究はあまりない.参加者が協創に緩やかに参加し,主体的に協創を活性化させるた めには,ファシリテータは,参加者と対等な⽴場で,なおかつ伴⾛者のように関わるファシ リテーションが求められる.以上のことから,スケッチや図などの視覚表現を⽤いて,多様 な市⺠の協創を促す⼿法構築に必要な要素の確認ができた.しかし,協創の⽣成過程とその 条件,そして協創を⽀えるファシリテータの役割を理解する必要がある.本論⽂では,これ らを協創スケッチ法の実践の分析によって解明し,視覚表現を⽤いた協創の可能性を探る. 第3章(協創スケッチ法の提案)では,協創スケッチ法が開発された経緯と提案した協創ス ケッチ法を説明した.協創スケッチ法は,障碍者の就労⽀援事業所とのプロジェクトで,障 碍者と職員の新製品開発ディスカッションにスケッチを取り⼊れたことで⽣まれた[福⽥, 2012].スケッチや図の特性を活かした協創によって,創造活動を⾼度化させる⼿法である. スケッチで表現した個⼈のアイデアに,他メンバーらが順番にアイデアや意⾒を付加する ことを,メンバー全員が同時に,そして並⾏的に⾏う.障碍の状態や個⼈の性格に左右され ずに協創できる⼿法として作り上げた.これまでに,実践と⼿法の改善[福⽥, 2015, 2016a, 2016b; 福⽥ほか, 2017]を⾏ってきた.その結果,協創スケッチ法は,スケッチを⽤いたこ とで,漠然としたアイデアでも表出できることと,参加者の意⾒表出の機会が均等になると いう特⾊を有していることが分かってきた.さらにこれらの特⾊は,各⾃のアイデアの是⾮

(4)

協創の⽣成過程,その協創を⽣み出す条件,さらに協創を⽀えるファシリテータの役割が解 明できていない. 第4章(協創スケッチ法による協創の⽣成過程の解明)では,協創スケッチ法による協創の ⽣成過程を解明した.協創スケッチ法は,⼀⼈のデザイナが⾏っていたアイデア⽣成の活動 を複数⼈で協働的に⾏うことによって,デザイナの創造活動に近い状況,あるいはそれ以上 の創造の可能性を期待して構築したものである.そこで,筆者が協創スケッチ法を⽤いて実 践したワークショップ(以下,協創ワークショップ)を観察対象にして,スケッチを介した参 加者同⼠の関わり合いが,どのようなアイデア創出の過程を協働的に発⽣させているかを 明らかにすることとした.実践した協創ワークショップの中から,プロデザイナである実務 者と学⽣が参加した協創ワークショップを観察対象にして,参加者らが表現したスケッチ を,質的に分析した.その結果,デザイン経験の少ない⼈でも,スケッチを⽤いた参加者同 ⼠の関わり合いによって,拡散的なアイデア創出の過程をつくることが観察された.つま り,参加者らの意⾒が多層的・連鎖的に描き込まれることで,個⼈では思いつかない多様な 視点が提⽰される.この多様な視点によって解釈,類推,着想が促進される状態を,協働的 に構築していると考えられる.参加者がデザインに熟達してなくても,熟達者の発想⽅法に 近い創造活動を協働的に⾏え,さらに意⾒の表明が平等な環境を作られたことは,特筆すべ きことである.そして,スケッチによって創造過程が可視化されることは,参加者全員の想 いや考えを理解する⼿がかりにもなり,協創を活性化させる要素となる. 第5章(協創スケッチ法による協創の認識変化の解明)では,協創スケッチ法によって協創 の認識にもたらす変化を解明した.協創を持続させるためには,参加者ら⾃⾝が,⾃主的に 協創を推進させていく必要がある.協創スケッチ法の「創発スケッチ」ステップは,スケッ チで表現し合うことで参加者らの創造過程を学び合える仕掛けが内在している.そこで,筆 者が実践した協創ワークショップを観察対象にして,「創発スケッチ」ステップが参加者の 協創の認識に,どのような変化をもたらすかを明らかにすることとした.実践した協創ワー クショップの中から,複数回の参加経験がある参加者がいる協創ワークショップを観察対 象として選び,参加者へのアンケートとヒアリングから,「創発スケッチ」ステップが参加 者の創造活動の認識にもたらす変化を,質的に分析した.その結果,「創発スケッチ」ステ ップでは,参加者が,他者の参与によって,他者がアイデアを発展させてくれることを期待 し,他者の⼒を借りてアイデアを深める状態が観察された.特に複数回の参加経験がある参 加者は,意図的に他者の参与を利⽤していた.⼿描きスケッチの特性である粗く未完成な印 象を活かし,他者が参与しやすい状況をつくっていた.このことは,他者の視点を尊重し, 他者の視点を獲得することが,協創に有意義であることを⽰唆している.つまり,「創発ス ケッチ」ステップは,スケッチを介した多視点の参与によって創造過程を学び合う状況をつ くっていると考えられる. 第6章(協創を⽀えるファシリテータの役割の解明)では,協創を⽀えるファシリテータの 役割を解明した.協創ワークショップで協創を実現するためには,参加者らが表現活動に緩

(5)

やかに参与できる環境を整える必要がある.筆者が実践した協創ワークショップでは,ファ シリテータを筆者⾃⾝が担当している.デザイナでもある筆者のファシリテーションには, 協創を実現するための特徴的な役割があり,参加者らとの関わりに様々な⼯夫をしている はずである.しかし,当事者の筆者は,意識下の⾏為もあれば,無意識に⾏っている⾏為も ある.そこで,協創ワークショップのファシリテータである筆者⾃⾝の発⾔や⾏為に着⽬ し,ファシリテータの意義や協創の場に対する役割を明らかにすることとした.実践した協 創ワークショップを観察対象にして,その映像記録から,ファシリテータの発⾔と⾏為を, 筆者⾃⾝が⼀⼈称視点[e.g. 諏訪ほか, 2010, 2015a, 2015b]で振り返り,質的に分析した. その結果,協創ワークショップで,ファシリテータが参加者と関わる際の⾏動の特徴が⾒え た.ファシリテータは,スケッチを⾒て参加者の状況を推察(創発的な状況推察)し,参加者 の次の⾏動を予測的に判断して⽀援⽅法を検討(予測調整的な⽀援)していた.ファシリテー タの創発的な状況推察や予測調整的な⽀援は,個々の参加者のささいな活動や発⾔がヒン トとなっている.だが,参加者に伝える際は,全員に,要点のみ,もしくは別な事例に喩え て⽰していた(ゆるい導き).ファシリテータのこれらの⾏動は,アイデア創出に関わるもの ではなく,デザインの進め⽅に参与する存在であると⾔える. 最後に第7章(結論)では,本論⽂の総括を⾏い,協働的な創造活動の展望を述べた.協創 スケッチ法は,スケッチを⽤いて協創過程を外化することを⼿掛かりに,多視点の参与によ って創造過程を学び合う環境を,多様な参加者とファシリテータが連携して構築している ことを,第1章から第6章までで得られた知⾒を基に確認した.協創スケッチ法は,デザイ ンの専⾨的な教育を受けていない市⺠でも,参加者の活動を相互に参照し,創造過程を主体 的に学び合うことで,円滑に創造活動の活性化ができる環境である.さらに,他者の知を集 めることで,個⼈で創造するよりも,多様なアイデアが創出できる.よって,協創スケッチ 法が,参加者の知を相互に関わり合わせ解決策を模索する協創を実現する⼿法であること が解明された.特に,多視点の参与による創造過程の学び合いが発⽣する「創発スケッチ」 ステップによって実現される協創は,情報システム分野だけではなく,多岐にわたる分野に 応⽤できることが期待される. キーワード:参加型デザイン,協創,スケッチ,相互学習

(6)

Abstract :

The author has developed a Co-Creation Sketch Method to contribute to participatory design. The Co-Creation Sketch Method is a method to enhance the willingness to participate in Co-Creation by expressing the creative process with many people using hand-drawn sketches. This paper writes about research aimed at elucidating the effects of participants on Co-Creation through the practice of the Co-Creation Sketch Method and describing the perspectives of Co-Creation. This paper consists of seven chapters.

Chapter 1 (Introduction) describes the background and purpose of this research. In addition, the position of this research in systems information science is described. In recent years, citizens have become increasingly observable not only as users of products and services, but also as a members of development, participating in development and solving problems [e.g. Yamauchi, 2012; Yasuoka, 2013]. In addition, Participatory Design [Sanders, Stappers, 2008] has recently attracted attention as a solution to social issues. It is not sufficeint enough to have only planners and designers who deal with the current and diverse design issues that involve complex social issues. It is necessary to solve the problem by cooperation with various citizens including the parties. However, there is little research on design methods for various people to participate in the design process. The author has been exploring ways to use design to solve social issues with design schools, local residents, businesses, and organizations [Fukuda, 2015, 2016a, 2016b; Fukuda et al., 2011, 2012a, 2012b, 2013, 2016c, 2017, 2019; Kakiyama et al., 2014; Kikuchi et al., 2016; Nakano et al., 2017; Soodi et al., 2016]. In particular, the practice of design that incorporates visual expressions using sketches and diagrams has enabled the creation of ideas through the involvement of participants. Therefore, it seems that incorporating visual expressions into the process of solving problems involving citizens is an effective means. However, even if the design is practiced through visual expressions, if the participants are influenced by characteristics such as social status and position, activeness and passivity, loudness of voice, and weakness in creative activities, it is difficult for participants to have Co-Creation in equal relationship. Therefore, the author has developed a Co-Creation Sketch Method to overcome these problems. This method has been used in many design practices. However, there has never been an opportunity to elucidate the collaborative phenomena and effects brought about by this practice. This paper clarifies the effects of the Co-Creation Sketch Method and the place of Co-Creation through the analysis of the practice of Co-Creation Sketch Method and describes the perspective of Co-Creation. Participatory Design is part of the design method of systems informatics. In order to solve the current social issues in which uncertain and fluid elements are involved in multiple layers, a system design method and its theory that allow various parties to participate from the initial stage of the

(7)

development process, and that can be easily designed is required.

In Chapter 2 (Related Research), the research related to this study is reviewed and the social significance of this study is described. The key to shaping participatory design activities lies in the sharing of knowledge between participants with practical knowledge and designers with creative knowledge [Okamoto, 2014]. It is effective to explore the background of participants' knowledge through creative activities [e.g. Okamoto, 2014; Sanders, Stappers, 2008]. However, the method has not yet been developed so that the participants can act independently. Diffusion thinking [e.g. Osborn, 1953] and cognitive understanding of the creative process [e.g. Finke et al., 1992] are important for activating individual creativity. However, it takes a certain amount of time to master such thinking and techniques [Okada et al., 2007]. The idea creation method that encourages diffusion thinking in a short period of time [e.g. Osborn, 1953; Takahashi, 2007] is also used in creative activities involving large numbers of people. However, differences in participants' social status and position, activeness and passivity, loudness and other characteristics, or differences in the level of familiarity with the methods lead to lost ideas and opportunities for cooperation [Sawyer, 2007]. Visual expressions such as sketches and diagrams play a large role in creative activities [e.g. Suwa, Tversky, 1997; Okamoto, 2012; Ueda, 1998]. In particular, a sketch can be said to be a record of the process for understanding the essence of an object as it begins to draw from a vague image and repeats its materialization. Expressions using sketches and diagrams are being sought to be introduced into the development process, regardless of individuals or large numbers [e.g. Sanders, Stappers, 2008; Stappers, Sanders, 2005; Kanebako et al., 2011]. Collaboration means that citizens, companies, public institutions, etc. work together for a common purpose while respecting different positions and characteristics [e.g. Haraguchi et al., 2016; Masukawa, 2007; Miyoshi, 2011]. Creating a reciprocal relationship even in a heterogeneous group of individuals through interaction utilizing human altruism [Tomasello et al., 2009] is the basis of Co-Creation. The facilitator is effective in supporting and promoting Co-Creation [e.g. Kolb, Song, 2008]. However, its effectiveness is a theoretical level discussion [Ikeda, 2015], and few studies reveal the intent of the facilitator's actions. In order for participants to participate in Co-Creation slowly and to independently invigorate Co-Creation, the facilitator is required to have a facilitation that is equal to the participants

(8)

In Chapter 3 (Proposal of the Co-Creation Sketch Method), the background of the development of the Co-Creation Sketch Method and the proposed Co-Creation Sketch Method are explained. The Co-Creation Sketch Method is created by incorporating sketches into new product development discussions for people with disabilities and staff in a project with employment support for persons with disabilities [Fukuda, 2012]. This is a method to enhance creative activities by Co-Creation utilizing the characteristics of sketches and diagrams. All members add ideas and opinions simultaneously and in parallel to the personal ideas sketched by other members in turn. It is created as a method that allows Co-Creation without being affected by the state of disability or personality. So far, the author has improved the practice and methods [Fukuda, 2015, 2016a, 2016b; Fukuda et al., 2017]. As a result, it was found that the Co-Creation Sketch Method had the characteristic that using sketches, even vague ideas could be expressed, and that the opportunities for participants to express their opinions were equal. Furthermore, it was found that these characteristics encouraged participants to interpret, analogize, comment, add, and supplement each others' creative process from various perspectives. And they do not judge each others' ideas. The Co-Creation Sketch Method was started with the idea of Co-Creation by people with disabilities; there is a possibility of supporting the Co-Creation of citizens. This possibility is thought to be provided by the properties of the sketch. However, previous studies have not elucidated the process of creating Creation by the Creation Sketch Method, the conditions that create such Co-Creation, or the role of the facilitator that supports Co-Creation.

In Chapter 4 (Elucidating of Generation Process of Co-Creation by Co-Creation Sketch Method), the generation process of Co-Creation by the Co-Creation Sketch Method is clarified. The Co-Creative Sketch Method is designed so that multiple people can collaboratively carry out a situation similar to the generation activity of one designer. By this design, I expect the situation that is close to the creative activity of the designer, or more of such activities. Therefore, it was decided to clarify what kind of idea creation process collaboratively occurred with the participants using sketches, within the workshop the author conducted as the object of observation. The sketches expressed by the participants were analyzed qualitatively from the Co-Creation Sketch Method workshops in which professional designers and students participated. As a result, it was observed that even a person with little experience in designing could create a process of creating ideas in a diffusion manner through the interaction between participants using sketches. In other words, the opinions of the participants were drawn in a multi-layered and chained manner, and various viewpoints that might not be thought of by individuals were presented. It is considered that a state in which interpretation, analogy, and idea are promoted by these various viewpoints is cooperatively

(9)

constructed. It is noteworthy that even if the participants were not proficient in design, they were able to collaboratively perform creative activities close to the creator's way of thinking, and created an environment where opinions were expressed equally. The visualization of the creative process through sketching is a key to understanding the thoughts and ideas of all participants, and is an element that activates Co-Creation.

In Chapter 5 (Elucidating of co-creation cognitive change by Co-Creation Sketch Method), it clarifies the change that brings about Co-Creation recognition by the Co-Creation Sketch Method. In order to sustain Co-Creation, it is necessary for the participants themselves to promote Co-Creation independently. In the “emergent sketching” step of the Co-Creation Sketch Method, there is a mechanism that allows participants to learn the creative process by expressing each other with sketches. Therefore, it was decided to clarify how the “Emergent Sketch” step would change participants' perceptions of Co-Creation, using the Co-Creation Sketch Method workshop that I conducted as an observation target. From the Co-Creation workshops that took place, the Co-Creation Sketch Method workshops with multiple experiences were selected for observation. The qualitative analysis of the change that the “Emergent Sketch” Step brought to the participant's perception of the creative activity was conducted through questionnaires and interviews. As a result, in the "Emergent Sketch" step, it was observed that the participants deepened their ideas, expecting the ideas to develop with the participation of others. In particular, those with multiple experiences intentionally used the participation of others. A situation was created where others could easily participate by taking advantage of the rough and unfinished impression, which was a characteristic of hand-drawn sketches. This suggests that respecting other people's viewpoints and gaining others' viewpoints are meaningful for Co-Creation. In other words, the “Emergent Sketch” step is considered to create a situation in which the creative process is learned through participation of multiple viewpoints through sketching.

In Chapter 6 (Elucidating of the facilitator supporting Co-Creation), the role of the facilitator supporting collaborative creation is elucidated. In order to realize Co-Creation in a Co-Creation Sketch Method workshop, it is necessary to prepare an environment where participants can participate in expression activities slowly. The author was in charge of the

(10)

[e.g. Suwa et al., 2010, 2015a, 2015b] based on the video recordings of the Co-Creation Sketch Method workshops that took place. As a result, the characteristics of the behavior when the facilitator was involved with the participants were seen in the Co-Creation Sketch Method workshop. The facilitator looked at the sketch and inferred the participant's situation (Emergent Inference of Situation), and predicted the subsequent participant's next action in a predictive manner, and examined the support method (Predictive Adjustment Support). The facilitator's Emergent Inference of Situation and Predictive Adjustment Support are inspired by the subtle activities and remarks of individual participants. However, when the facilitator communicated to the participants, only a minimum support or cares were shown (Loose Guidance). It can be said that these actions of the facilitator do not relate to idea creation but still contribute in the design process.

Finally, in Chapter 7 (Conclusion), this paper is reviewed and the prospect of Co-Creative activities is described. The Co-Creation Sketch Method is based on the idea of using a sketch to externalize the Co-Creation process, and builds an environment where various participants and the facilitator work together to learn the creative process through multi-view participation. This was confirmed based on the findings obtained in Chapters 1 to 6. The Co-Creation Sketch Method is an environment in which even citizens who have not received specialized design education can refer to the activities of other participants and learn about the creative process independently and smoothly activate the creative activities. Furthermore, by gathering the knowledge of others, it can create a variety of ideas rather than creating them individually. Therefore, it is clarified that the Co-Creation Sketch Method is a technique for realizing Co-Creation in which participants' knowledge is explored and solutions are considered. In particular, Co-Creation realized by the “Emergent Sketch” step, in which learning from the creative process through participation from multiple viewpoints occurs, is expected to be applicable not only to the information systems field but also to a wide of other fields.

(11)

⽬次

第1章 序論 ... 1 1.1 本論⽂の背景と⽬的 ... 1 1.2 システム情報科学における本研究の位置付け ... 1 1.3 本論⽂の構成 ... 2 第2章 関連研究 ... 3 2.1 参加型デザイン研究 ... 3 2.2 創造活動研究 ... 5 2.3 協働的活動研究 ... 7 2.4 ファシリテーション研究 ... 8 2.5 本研究の社会的意義 ... 9 2.6 本研究で使⽤する⾔葉の定義 ... 10 第3章 協創スケッチ法の提案 ... 11 3.1 協創スケッチ法の開発経緯 ... 11 3.2 協創スケッチ法 ... 13 3.3 これまでの実践活動と課題 ... 21 第4章 協創スケッチ法による協創の⽣成過程の解明 ... 24 4.1 ⽬的 ... 24 4.2 研究⽅法 ... 24 4.3 分析結果 ... 27 4.4 考察 ... 29 4.5 本章のまとめ ... 36 第5章 協創スケッチ法による協創の認識変化の解明 ... 38 5.1 ⽬的 ... 38 5.2 研究⽅法 ... 38

(12)

6.1 ⽬的 ... 54 6.2 研究⽅法 ... 54 6.3 分析結果 ... 60 6.4 考察 ... 63 6.5 本章のまとめ ... 64 第7章 結論 ... 66 7.1 本研究の成果 ... 66 7.2 システム情報科学における本研究の意義 ... 68 7.3 本研究の今後の⽅向性 ... 69 謝辞 ... 70 参考⽂献 ... 72 資料 ... 76

(13)

図⽬次

図 2-1.共創の概念図 [岡本ほか, 2016] ... 4 図 2-2.Different levels of knowledge about experience are accessed by different

techniques. [Sanders,2002; SleeswijkVisser, et al., 2005] ... 4 図 2-3.ブレインライティングの例 [出典: https://ideaplant.jp/products/bws2/index.html, 最終閲覧⽇: 2020-01-07] .. 6 図 3-1.絵しりとりの例(絵しりとり実施後に⾔葉が追記されている) [出典: https://hoiclue.jp/200121720.html, 最終閲覧⽇: 2020-01-07] ... 12 図 3-2.協創スケッチ法ワークショップの様⼦1 ... 13 図 3-3.協創スケッチ法ワークショップの様⼦2 ... 14 図 3-4.協創スケッチ法(クルクルスケッチ)の基本的な進め⽅ ... 17 図 3-5.フェーズ1の「スケッチ・アイスブレイク」で基本図形を描く様⼦ ... 18 図 3-6.フェーズ1の「スケッチ・アイスブレイク」でメンバーの似顔絵を描く様⼦ ... 18 図 3-7.フェーズ2の「キーワード対話」の「創発キーワード」ステップの様⼦ ... 19 図 3-8.フェーズ3の「スケッチ対話」の「創発スケッチ」ステップの様⼦ ... 19 図 3-9.フェーズ3の「スケッチ対話」の「決断スケッチ」ステップの様⼦ ... 20 図 3-10.フェーズ3の「スケッチ対話」の「決断スケッチ」ステップのスケッチ例 . 20 図 3-11.フェーズ4の「収束対話」の様⼦ ... 21 図 4-1.スケッチを介した協創現象の解釈⼿順 ... 25 図 4-2.作業環境と活動の様⼦(例:グループE) ... 26 図 4-3.スケッチを介した協創現象の分類例(例:主体者 E-c の表出スケッチに他メン バーが⾏った創発スケッチ) ... 28 図 4-4.多層的に描き込まれる創発スケッチ ... 30 図 4-5.スケッチを介して協創が⽣成される過程(3名グループの場合) ... 31 図 4-6.「⾁付け」が多い創発スケッチの例(主体者 C-a の表出スケッチが創発スケッ チを経て決断スケッチになるまで) ... 33 図 4-7.他メンバーらの協創によってアイデアが⽣成できた例(主体者 A-b の表出スケ ッチが創発スケッチステップを経て決断スケッチになるまで) ... 35

(14)

図 5-4.「図 5-3」を基に表現された決断スケッチ(主体者は T3-a[1]) ... 49 図 5-5.他者視点と関わる参加者の視点の成⻑ ... 51 図 5-6.多視点の参与による創造過程の学び合い ... 53 図 6-1.ファシリテーションの意図の分析⼿順 ... 55 図 6-2.ファシリテーションの意図の分析⽅法 ... 56 図 6-3.作業環境と活動の様⼦(例:UX 勉強会ワークショップ) ... 57 図 6-4.360 度ビデオカメラの設置例(例:UX 勉強会ワークショップ) ... 58 図 6-5.360 度ビデオカメラで記録した映像の再⽣例1(例:衛星データワークショッ プ) ... 59 図 6-6.360 度ビデオカメラで記録した映像の再⽣例2(例:衛星データワークショッ プ) ... 59 図 6-7.「多視点の参与による創造過程の学び合い」に参与するファシリテータ ... 65

(15)

表⽬次

表 3-1.協創スケッチ法の基本的な時間配分 ... 16 表 3-2.協創スケッチ法の実践活動の例 ... 23 表 4-1.分析対象の紙の種類と枚数 ... 27 表 4-2.スケッチを介した協創現象の分類と参加者ごとの発⽣数 ... 29 表 5-1.技術⼠会ワークショップの技術⼠キーワードとグッズキーワード ... 41 表 5-2.技術⼠会ワークショップでのキーワードの組み合わせ結果 ... 41 表 6-1.分析対象の映像の種類と時間 ... 60 表 6-2.ファシリテーターの発⾔と⾏為の分類 ... 61

(16)

第 1 章 序論

1.1 本論⽂の背景と⽬的

近年,市⺠は,製品やサービスの利⽤者として観察対象になるだけではなく,開発の⼀員 として開発に参加して課題解決にあたる機会が増している[e.g. ⼭内, 2012; 安岡, 2013]. これは,市⺠の⽣活や社会に深く関わるシステムやサービスの開発が増加しており,現場の 課題をよく知る市⺠がデザインに参加することが期待されているからである.さらに,社会 課題の解決⽅法として,参加型デザイン(Participatory Design)[Sanders, Stappers, 2008]が 近年注⽬されている.現在の多様で複雑な社会問題を内包するデザイン活動に対応するた めには,企画者やデザイナなどの⼀部の専⾨家だけでは不⼗分である.当事者も含めた多様 な市⺠との協働によって課題解決にあたる必要がある.しかし,多様な⼈がデザインに参加 するためのデザイン⼿法の研究は,始まったばかりである[安岡, 2013]. これまで筆者は,社会課題を解決するデザインの⽅法を,デザインの学校,地域の住⺠, 企業,団体とともに模索してきた[福⽥, 2015, 2016a, 2016b; 福⽥ほか, 2011, 2012a, 2012b, 2013, 2016c, 2017, 2019; 柿⼭ほか, 2014; 菊地ほか, 2016; 中野ほか, 2017; スーディほか, 2016].特に,スケッチや図を⽤いた視覚表現を取り⼊れたデザインの実践は,参加者同⼠ が関わり合うことで,アイデア創出することを可能とした.そのため,市⺠が参加する課題 解決プロセスに,視覚表現を取り込むことが有効な⼿段だと思われた.しかし,視覚表現を 実践に取り⼊れても,参加者の社会的地位や⽴場,能動性や受動性,声の⼤⼩などの特性, あるいは創造活動への苦⼿意識の影響を受けてしまう.参加者が対等な関係で,協働的な創 造活動(本研究では,これを「協創」と名付ける)を⾏うことは難しい.さらに,デザインの 経験が少ない参加者は,アイデア創出や視覚表現を苦⼿と感じる⼈が多く,それが協創を阻 害する要因となっていた.そこでこれらの課題を克服する,協創スケッチ法を開発した.こ の⼿法は様々なデザイン実践で使⽤した実績はあるが,この⼿法によってもたらされる協 創現象や効果について解明する機会はこれまでなかった. 本論⽂は,協創スケッチ法の実践を分析し,協創スケッチ法や協創の場の効果を解明し, 協創の展望について述べることを⽬的とする.

1.2 システム情報科学における本研究の位置付け

参加型デザインは,システム情報科学の設計法の⼀部を構成している[⼭内, 2012].不確 定で流動的な要素が多層的に関係する現在の社会課題を解決するためには,開発⼯程の初 期段階から多様な当事者の参加を許容し,容易に設計できるシステムの設計⽅法とその理 論化が求められている.

(17)

1.3 本論⽂の構成

本論⽂は,全7章で構成する. 第1章「序論:本章」では,本研究に⾄る背景と研究⽬的を述べる.さらに,本研究のシ ステム情報科学での位置付けを述べる. 第2章「関連研究」では,本研究に関連する研究を概観し,本研究の社会的意義を述べる. 関連研究では,参加型デザイン,創造活動,協働的な活動,そしてファシリテーションに関 する研究を考察する.最後に,本研究の社会的意義を述べる. 第3章「協創スケッチ法の提案」では,協創スケッチ法が開発された経緯と,提案する協 創スケッチ法を説明する.協創スケッチ法の概要と開発の経緯を,筆者⾃⾝が⼀⼈称視点で 述べる.このことによって,多⼈数の創造過程をスケッチし合うことの価値を考察する.そ して,実践で協創スケッチ法を⽤い,改良を加え続けてきたことを述べる.さらに,これま での研究で,解明できていない研究課題があることを述べる. 第4章「協創スケッチ法による協創の⽣成過程の解明」では,協創スケッチ法による協創 の⽣成過程を解明する.スケッチを介した参加者同⼠の関わり合いが,どのような協創を発 ⽣させているかを明らかにするため,協創スケッチ法を⽤いたワークショップ(以下,協創 ワークショップ)を対象に,参加した実務者であるプロデザイナと学⽣のスケッチを分析す る. 第5章「協創スケッチ法による協創の認識変化の解明」では,協創スケッチ法によって協 創の認識にもたらす変化を解明する.参加者ら⾃⾝が,⾃主的に協創を推進させていくた め,創発スケッチが参加者の協創の認識にどのような変化をもたらすかを明らかにする.そ のため,協創ワークショップの参加者のアンケートとヒアリングの分析から,参加経験が異 なる参加者の認識の違いを探る. 第6章「協創を⽀えるファシリテータの役割の解明」では,協創スケッチ法の活動を⽀え るファシリテータの役割を解明する.ファシリテーである筆者⾃⾝の協創の場づくりへの 効果を明らかにするため,協創ワークショップのファシリテータの発⾔や⾏為を,筆者⾃ら が⼀⼈称視点で振り返り,分析する. 第7章「結論」では,本論⽂の総括を⾏い,協働的な創造活動の展望を述べる.

(18)

第2章 関連研究

2.1 参加型デザイン研究

2.1.1 従来のデザインプロセスと参加型デザインとの違い

参加型デザイン(Participatory Design)[Sanders, Stappers, 2008]は,多様な⼈々の知恵の 共有と活⽤を重視し,デザイン開発⼯程の初期段階から当事者を許容し,協働による課題解 決を⽬指す考え⽅である.課題解決に対する⼈々の姿勢や組織編成をデザインする取り組 みとして⽇本でも注⽬されている[e.g. ⼭内, 2012; 安岡, 2013].それは近代から現代に⾄ る社会や⽣活の変化に合わせて,デザインが扱う対象や範囲がサービスやコミュニティの 問題解決にも広がっているためである[e.g. ⼭崎, 2011; 武⼭, 2013; ⼭内, 佐藤, 2015].市 ⺠の⽣活や社会課題全般を捉えた活動として,これからの社会の課題解決に果たす役割の 重要性は増している. 参加型デザインの特徴的な点は,従来のデザイン思考をはじめとしたデザインプロセス では,観察の対象であった当事者を,現場の経験で得た知である実践知を豊富に持つ「参加 者」と捉えていることである[岡本, 2014].参加型デザインプロセスは,まず,参加者らと 創造活動の専⾨家であるデザイナが連携して,「何をデザインすべきで,何をデザインすべ きではないか[Sanders, Stappers, 2008]」を⾒出すことから始める.そして,参加者の⽴場・ 考え⽅を尊重しつつ,協働に必要な知識を相互に学び合う[須永ほか, 2013].この過程を経 ることで,参加者個⼈の内発的動機を刺激し合いながらチームの創造性も向上させる.この デザインプロセスは,今後の社会システム構築に求められる要素を内包していると考えら れる. 2.1.2 参加型デザインの課題 岡本[2014]は,デザイナの創造知(創造活動の経験で得た専⾨の知)と,デザインパートナ ーとなる参加者の実践知を共有する⾏為の中に,参加型デザインの概念形成のヒントがあ るとした(図 2-1).この概念形成のためには,両者の知の背景を探る必要がある.しかし, 容易なことではない.Sanders[2002]が⽰した「say(⾔う)・do(⾏う)・make(つくる)」は, 両者の知の背景を探る⽅法として参考となる(図 2-2).参加者の本当に望むことは,暗⽰的, 潜在的である.そのため,岡本や Sanders らは「make(つくる)」に注⽬し,参加者らに創造 活動をさせ,表現物を介して,思考の深層に触れようとしている[e.g. 岡本, 2014; Sanders, Stappers, 2008].このことは,参加者の知の背景を探る⼿段としての創造活動の有効性を⽰ している. しかし,参加者がそれぞれの知を表現し合い,協創するための⼿法開発までに⾄ってはい ない.協創の⼿法開発が困難なのは,現在の参加型デザインの様々な部分に,参加者が障壁 を感じているためだと考えられる.その障壁の1つは,参加者が創造活動に抱く敷居の⾼さ を解消できないことである.参加者の創造活動が,習熟度や意欲の差によって萎縮すると,

(19)

同じ⽬線で主体的に活動できなくなる.参加者の創造活動に対する敷居を低くするために は,協創の⼿法が,参加者個⼈の創造性の活性化を,緩やかに体験できる内容であり,なお かつ,参加者らが主体的に関わることによって,協創も活性化する仕組みになっている必要 がある. 実践の知 共創の知 創造の知 デザイナ デザインパートナー 図 2-1.共創の概念図 [岡本ほか, 2016] tacit 暗示的な要求 observable 観察可能な要求 explicit 明示的要求 latent 潜在的な要求 generative sessions 生成的 セッション observations 観察 interviews 対面、会話 know feel dream do use say think techniques : 探る技術・方法 得られる知見・知識knowledge : ヒトの行動・振る舞い 表層 deep 深層 say 言う do 行う make つくる 言う 考える 行う 使う 知る・分かる 感じる・思う 願う surface what people :

図 2-2.Different levels of knowledge about experience are accessed by different techniques.

(20)

2.2 創造活動研究

2.2.1 個⼈の創造活動研究

従来の創造活動研究は,拡散的思考を⽐較的短期間で促すための技法[e.g. Osborn, 1953] や個⼈の創造過程を認知的に把握するもの[e.g. Finke et al., 1992],そしてクリエイタなど の専⾨家の創造性の熟達化過程を理解するもの[岡⽥ほか, 2007]がある. アイデア創出とは,既存の要素の新しい組み合わせを考えることである[Young, 1975]. 岡⽥ら[2007]は,そのアイデア創出の技法や知識として,差異性に基づく思考である「ずら し」に⾔及している.「ずらし」とは,類似性と差異性を把握して積極的に差異を⽣み出し, 差異に着⽬して,思考を外化した結果を解釈する思考である.しかし,⼈は⾃⾝が持つ知識 の枠を超えづらい,そのため,アイデア創出の経験の少ない⼈にとって,差異を⽣み出す思 考を積極的に⾏うことは困難を伴う.創造性の熟達化には,創造活動の中で扱う要素の結び つきを再構造化して,新たな事物を創出することが重要であり,⻑期的な創造の実践経験が 必要である[岡⽥ほか, 2007]. 個⼈の創造性,つまり「想いや考えを,表出と内省を繰り返して表現として具体化する 能⼒」を熟達化させるには,物事の多様な捉え⽅を促す拡散的思考の獲得と技法の習得,そ してそれらを醸成させるための⼀定の時間が必要である. 2.2.2 多⼈数の創造活動研究 多⼈数の創造活動で,短期間に拡散的思考を促す例として「ブレインストーミング [Osborn, 1953]」や「ブレインライティング[⾼橋, 2007](図 2-3)」などがある.これらは, ⾔葉を主体としたアイデア創出法である.思考過程が⾔葉で全て記述されるため,⾃由度は ⾼く,容易に使うことができる. ブレインストーミングは,参加者が意⾒やアイデアを紙に書いて表明することで,アイデ ア創出の活性化を狙う⼿法である.意⾒交換を活発にするために,判断・結論を延期する 「批判厳禁」,ユニークなアイデアを歓迎する「⾃由奔放」,量を重視する「質より量」, 付け⾜しや結合,改善を求める「便乗歓迎」という4つの原則を設けている.ブレインライ ティングは,ブレインストーミングの改良版として⽣まれた.だが,多⼈数の意⾒交換を, 紙に⽂字を書くことで実現している点が特徴である.これにより,意⾒表出の機会均等を実 現する. しかし,ブレインストーミングなどの発話によって連想する仕組みは,参加者の社会的地 位や⽴場,能動性や受動性,声の⼤⼩などの特性,あるいは⼿法の熟知度合いによって⽣産 性阻害・社会的抑制・社会的怠惰が⽣じ,アイデア創出や協⼒の機会損失につながる可能性 がある[Sawyer, 2007].さらに,ブレインライティングなどの⾔葉を使って連想する仕組み は,現象や状況を伴うアイデア創出には不向きな側⾯がある.⾔葉を⽤いた表現は,厳密性 が⾼く,⾔葉を⽤いた他者との議論は,詳細で具体的な記述が必要である.様々な利害や問 題が絡む社会課題を協働で解決するためには,漠然とした現象や状況を基にしたアイデア

(21)

創出も求められる.⾔葉を主体にしたアイデア創出法を利⽤する場合は,多くの⼯夫を要す る. 2.2.3 スケッチや図を⽤いた創造活動研究 スケッチや図とは,⾝の回りの物や⾵景あるいは概念を紙などに描く⽅法である.スケッ チは,対象を写実的に記録するだけではなく,描く主体の考え⽅や感情を表す.図は,事物 の関係を視覚的に説明する機能を持つ.近年では,デザイン学,認知科学,⼈⼯知能などの 分野で,スケッチや図が創造活動に果たす役割の研究がなされている[e.g. Suwa, Tversky, 1997; 岡本, 2012; 植⽥, 1998]. スケッチは,対象との対話である.岡本[2012]はスケッチを「活動という状況を対象とし, その属性にふさわしい観察や思考や創造の道具(環境)を持つ」ものとし「創造的な解を得る ための優れた思考環境」と捉え,その解を得るプロセスを「おぼろげなイメージを外化し, 外化したものを客体として⾒ることにより主体の意図が主体⾃⾝で確かなものになる」と 図 2-3.ブレインライティングの例 [出典: https://ideaplant.jp/products/bws2/index.html, 最終閲覧日: 2020-01-07]

(22)

図は,関係性を構造化して,対象の本質を明確に⾒出す⾏為である.漠然と捉えた対象の 性質を,図化を繰り返しながら理解していく過程は,スケッチを描く⾏為にも通じるものが ある.考えを外化して本質を探る⾏為は,様々な⾒⽅・捉え⽅を⽀援する可能性がある.そ れは図が「情報の縮約,関係性の創発,概念の特定化,解釈の多様化[植⽥, 1998]」という 特性を持つからである. スケッチや図などの視覚表現を,参加型デザインプロセスに導⼊することの有効性も⽰ されている.例えば,参加者による視覚表現を⽤いた試作を参加型デザインの初期段階から 導⼊する事例[Sanders, Stappers, 2008; Stappers, Sanders. 2005]や,描画ルールを設けるこ とで画⼒に寄らないアイデア創出と評価を試みたアイデアスケッチ⼿法の提案[⾦箱ほか, 2011]などの事例がある. なお,⾔葉より図が優れているという議論ではない.⾔葉,図,スケッチには,それぞれ の利点がある.参加型デザインに参与する参加者が扱いやすい表現環境を作る必要がある. 本研究で提案した協創スケッチ法は,スケッチや図,⾔葉を⽤いてアイデアを表現する環境 であり,それぞれの媒体の利点を⽣かす環境である.

2.3 協働的活動研究

協働という⾔葉は,市⺠,企業,公的機関などが,異なる⽴場や特性を尊重しながら,共 通の⽬的のために協⼒して事にあたる様を表現する⾔葉として⽤いられることが多い[e.g. 原⼝ほか, 2016; 益川, 2007; 三好, 2011].つまり協働とは,⽴場が異なる⼈や組織などが 「同じ⽬的のために,協⼒して働くこと[三省堂編, 2019]」である. 多⼈数の対話は,「協働⾏為」の中で進化してきた[Tomasello et al., 2009].協働⾏為と は,多様な⼈が持つ利他性を活かした⾏為の共有である.「利他性」とは,援助(気遣い), 指摘(気づき,知らせる),贈与(分け合う)で成り⽴つとされる[Tomasello et al., 2009].利 他性を活かした⾏為を共有することで,異なる視点を持つ参加者同⼠の相互理解が促進さ れ,互恵的な関係をつくることができる.参加者同⼠が異質性を保ちながら,組織を構成す ることについて,例えば三宅[2011]は「⼈が複数いると⼀⼈の時よりも多くの⾒⽅や考え⽅ が提供されるということと,さらにそれについて話し合いながら考えを進めて⾏くとそれ らの多視点をまとめようとする働きが起きて考えの良さの評価基準がより⼀般的になる」 とも述べている.異質な個⼈の集まりだとしても,⼈が持つ利他性を活かした,多様な視点 による相互学習によって,協働⾏為が促進される活動となる可能性がある. 本研究では特に,多⼈数の市⺠の関わり合いによって,扱う要素の結びつきを再構造化し て新たな事物を創出する協働的な活動に注⽬する.

(23)

2.4 ファシリテーション研究

2.4.1 参加者とファシリテータの関係性 多⼈数の創造活動を⽀援や促進する役割として,ファシリテータは有効である[e.g. Kolb et al., 2008].ファシリテータの⾏動であるファシリテーションは,⼀般的に「グループに よる活動が円滑に⾏われるように⽀援すること.特に,組織が⽬標達成するために,問題解 決・合意形成・学習などを⽀援し促進すること.また,そのための⽅法[三省堂編, 2019].」 ならびに「組織や集団による問題解決や合意形成,学習促進などのコミュニケーション活動 において,協働的・創造的な議論や話し合いのプロセスを設計・マネジメントすること.ま た,その技法[三省堂編, 2010].」とされている.ファシリテータは,参加型デザインプロ セスでも,組織や集団による協働的・創造的な活動を促進するための⽀援,そしてその⽅法 をデザインする役割がある.これまでも,ファシリテータの役割や有効性に関する議論がな されているが,ファシリテータが,参加者の⾃律や協働をどのように促進するかは明らかに されてない[池⽥, 2015]. さらに池⽥[2015]は,ファシリテーションを「組織活動において,コミュニケーションを 通して共に働く⼈の⾃律,もしくは共に働く⼈同⼠の協働を促す個⼈の⾃然発⽣的な⾏動」 と捉えた.ファシリテータは,特殊な能⼒でメンバーの協働を推し進めるわけではない.参 加者と同じ⽬線で関わることで得られた着想が,ファシリテーションの起点となる. 2.4.2 参加者の協働を促すためのファシリテータの役割 堀ら[2008]は,ファシリテータの役割を,その存在感が場をつくり上げること,その場を ⾒守ることで参加者の安⼼感を与えること,ワークショップ中に起こる「うまく⾔い表せな いこと」を表に出すこと,参加者を操作や⽀配せず⽀援する⽴場であること,と捉えた.中 野[2017]は,ファシリテーションの基礎スキルを,「場づくり」,「グループサイズ」,「問 い」,「⾒える化」,「プログラムデザイン」の5つとしてまとめている.特に「場づくり」 では,什器や参加者の配置などの物理的なものへの配慮だけではなく,参加者の「関係の質 を上げる」ことの⼤切さを指摘している.関係の質が上がると活発なコミュニケーションが ⾏われ,遠慮なく率直にやりとりできると,⾃ずと集団全体が⾼いレベルで考えることがで き,「思考の質」が上がる[中野, 2017].さらに,中野[2017]は,ファシリテータの条件と して,⼼理療法のカウンセラーとクライアントの関係構築を応⽤した「援助的関係[ロジャ ーズ, 2005]」の三つの中核条件である「⼀致」,「受容」,「共感的理解」にも⾔及してい る.「⼀致」は,今ここで起こっていることをありのままに気づき,その気づきと⽭盾しな い態度や発⾔をすることである.「受容」は,肯定的で受容的な態度で,他者を尊重するこ

(24)

有効である.しかし,全ての実⾏には,ファシリテータに⾼い能⼒を要求する.そのため, ファシリテータの能⼒や経験によって参加者の協働が制限される可能性がある. 中⻄ら[2006]は,創造活動を主体にしたワークショップを「『つくって,さらして,振り 返る』ことを徹底することで,不明瞭だったシステムや仕組み,概念をカタチにし,それら の経験を通じて,『世界を捉えるまなざしの⾰新,あるいは再構成を促す場』」になりうる としている.さらに,中⻄ら[2006]は,創造⼒開発系ワークショップで新しいアイデアの出 現を促すためには,参加者らの様々な関わり合いによって,参加者個⼈が持つ先⼊観や固定 概念を緩和させ,テーマや対象を中⽴的な視点で捉えることの重要性も述べている. つまり,参加者が協創に緩やかに参加し,主体的に協創を活性化させるためには,ファシ リテータの役割は重要である.しかしその役割は,リーダーのように介⼊するのではなく, 参加者と対等な⽴場で,なおかつ伴⾛者のような関わり⽅で,中⽴的なファシリテーション をすることで実現する.参加者の協創を促す中⽴的なファシリテーションを実⾏するため には,ファシリテータの⾏動の意図を明らかにする必要がある.しかし,ファシリテータの ⾏動の意図を明らかにする研究はあまりない.

2.5 本研究の社会的意義

前項までの考察から,多様な⼈の協創を促す⼿法構築に必要な要素を確認する.そして, この⼿法の社会的な意義を考察し,社会的に貢献するために解明すべきことを述べる. スケッチや図を⽤いた創造活動を参加型デザインプロセスに取り⼊れることで,多⼈数 の相互作⽤と,拡散的思考と熟達化過程を結びつけた協働的な新しい創造活動につながる ことが分かった.そして,多様な⼈がスケッチや図を⽤いて考えや想いを表出し合うこと は,相互理解を促し,参加者同⼠が同じ⽴場で関わる⼿がかりとなることが分かった.さら に,この協創を⽀える⽴場は,グループのリーダーのように振る舞うのではなく,参加者と 中⽴的な関わり⽅ができるファシリテータのような存在であることも分かった.以上のこ とから,スケッチや図を介して,多様な⼈が意⾒交換することで,お互いを理解し,同じ視 点に⽴って,協創を活性化させる⼿法の構築の⽬処が⽴った. この⼿法は,現在の多様で複雑な問題に取り組む社会活動に寄与できると考えられる.例 えば,まず,地域社会の課題解決プロセスでは,専⾨家と地域住⺠らが協働して,課題の探 索,解決案の検討,合意形成する際に使⽤できる.そして,教育分野では,様々な知識と技 能を共有し,新しい知を獲得する相互学習を⽀援できる.さらに,システム情報科学の上流 ⼯程で,多様な⼈の参画を助け,参加者の実践知と専⾨家の創造知を共有することで創出さ れる新しいサービスや,そのサービスの設計システムの構築に貢献できる可能性がある.し かし,スケッチや図などの視覚表現を⽤いた協創を機能させるためには,その協創の⽣成過 程とその条件,そしてその協創の場を⽀えるファシリテータの役割を理解する必要がある. 本論⽂では,これらを協創スケッチ法の実践の分析によって解明し,視覚表現を⽤いた協 創の可能性を探る.

(25)

なお,この⼿法開発では次の3点が重要となる.まず,参加者らが同じ⽴場で関われる協 創の環境をつくることである.次に,参加者が創造活動に敷居の⾼さを感じづらい環境をつ くることである.そして,参加者らの主体性によって,協創が活性化できる仕組みをつくる ことである.

2.6 本研究で使⽤する⾔葉の定義

本項では,本研究で特に留意する⾔葉の定義をする. (1) 創造活動:想いや考えを,表出と内省を繰り返して表現として具体化する活動のこ と. (2) 創造性:創造活動で獲得される能⼒のこと. (3) 創造過程:表出と内省を繰り返し,想いや考えを,表現として具体化する過程のこ と. (4) 多視点:複数の参加者から⽰される多くの⾒⽅や考え⽅のこと.⽰された多くの⾒ ⽅や考え⽅を組み合わせることで,新しい概念形成の⼿がかりになる. (5) 参与:他者の⾒⽅や考え⽅に関わること.また関わり合うこと.介⼊のように強制 的な関わりではなく,他者の状況を考慮した関係を築いていく過程でもある. (6) 学び合い:異なる知を持つ複数の参加者が,互いの知を学習し合うことで,各⾃の ⾒⽅や考え⽅を⾼め合うこと. (7) 協働的な創造活動(協創):参加者がお互いの⽴場を尊重し,主体的に,利他的に多 くの⾒⽅や考え⽅を関わり合わせ,協働的な知を獲得していく過程を,表出と内省 を繰り返しながら具体化していく創造的な活動のこと.

(26)

第3章 協創スケッチ法の提案

3.1 協創スケッチ法の開発経緯

3.1.1 協創スケッチ法の概要 協創スケッチ法は,スケッチや⾔葉で表現した個⼈のアイデアに,他のメンバーらが順番 にアイデアや意⾒を付加することを,メンバー全員が,同時に⾏うことができる協創の⼿法 である.協創スケッチ法は,アイデア創出⽀援だけでなく,コミュニケーションが苦⼿な⼈ でも容易に参加できる⼿法である.参加者らが,紙を順番に回してスケッチするため,「ク ルクルスケッチ」とも呼ぶ. 3.1.2 協創スケッチ法の開発の発端 協創スケッチ法は,2012 年に障碍者の就労⽀援事業所(以下,事業所)との共同プロジェ クトで,障碍者と職員が協⼒して新製品を開発する話し合いにスケッチを取り⼊れたこと で⽣まれた[福⽥, 2012],本事業所は,パンの製造販売を通じて,精神的な障碍を持つ利⽤ 者(以下,利⽤者)の社会的⾃⽴を⽬指している.パンは,全て⾃社で製造し,素材にもこだ わっている.しかし,他社商品との類似点が多く独⾃性が低い.さらに,顧客は,障碍者が 製造するパンは商品価値が低いという先⼊観を持つことが多い.そのため,販売価格が市場 の平均より低くなり,売上⽬標が達成できない状況が続いていた. 本事業所と筆者がプロジェクトを始めた当初は,パンの包装などを刷新することで製品 の付加価値を⾼め,売上を向上させようとしていた.デザイン系学⽣による包装のデザイン などによって,⼀時的に売上が改善したが,売上の継続的な向上には貢献できなかった.そ こで,まず,障碍者がパンの製造販売で得た経験(経験知)を活かしたパン開発をすることと した.障碍者が⾃信を持って顧客に提供できるパンを,障碍者らが中⼼となって考えること は,製造⼯程,販売⽅法,顧客へのサービスなどの質向上に,障碍者の関⼼がつながると考 えた. 多数の障碍者によって新製品のアイデアを創出するワークショップを企画し,実践した. ブレインストーミング[Osborn, 1953]など従来の⼿法を⽤いたワークショップでは,いつも より意⾒が出せる⼈と,意⾒が出せずに消極的になる⼈に,障碍者の参加態度が分かれてし まった.障碍者の障碍の⼀般的な特徴は,集中⼒が持続しづらい,作業に慣れるのに時間が かかる,状況変化に⼾惑いやすい,ことである.⼀⽅,定型的な作業を正確にこなす,記憶 ⼒に優れている,という特徴も持っている.会話が苦⼿な障碍者も多いため,積極的なコミ ュニケーションを要求するワークショップの仕組みでは,障碍者同⼠の意⾒交換が促せな いことが分かった.そのため,障碍者の特徴を⽣かしたアイデア創出の仕組みを模索するこ ととした.そして,ブレインストーミング[Osborn, 1953]のように,障碍者が持つ多様な経 験知を活かした意⾒交換を⽬標に,会話が苦⼿な⼈でも意⾒が平等に表出できる仕組みを 考案した.さらに,ブレインライティング[⾼橋, 2007]が持つ多⼈数の創造活動を活性化さ

(27)

せる特徴も継承した.この仕組みの構築に参考となったのが,絵でしりとりをする遊び「絵 しりとり(図 3-1, 出典: https://hoiclue.jp/200121720.html, 最終閲覧⽇: 2020-01-07)」であ る. 絵しりとりとは,「絵の描いた題材でしりとりのように,それでつなぐ事.描かれた絵で, その呼び名のしりとりをする,その意味で描かれた絵[ピクシブ百科事典製作委員会編, n.d.]」である.絵しりとりは,複数⼈で絵だけで,しりとりをする遊びである.絵しりとり 終了後に,参加者全員で絵の名前を答え合わせすることで,他者に絵だけで内容が伝えられ たかを確認して楽しむ.描かれた絵の意味とは異なる解釈で次の絵が描かれても,しりとり として参加者全員が絵を描ければ良い.つまり,絵の解釈の正誤ではなく,絵の解釈の多様 性を確認して楽しむのである.さらに,絵しりとりが描かれた紙は,絵がしりとりとしてつ ながった変遷が分かる.その変遷を辿ることで,他者の絵を参加者らがどう解釈し,意⾒を 表出したかが分かり,参加者らの思考過程が⾒えてくる.この絵しりとりのように,絵を⽤ 図 3-1.絵しりとりの例(絵しりとり実施後に言葉が追記されている) [出典:

https://hoiclue.jp/200121720.html

, 最終閲覧日: 2020-01-07]

(28)

3.2 協創スケッチ法

3.2.1 協創スケッチ法の構成要素 協創スケッチ法は,複数の参加者と1⼈のファシリテータで⾏う(図 3-2, 3-3).ファシリ テータの進⾏に沿って,参加者はアイデア創出の活動をする.ファシリテータは,参加者の 活動状況を常に把握しながら進⾏の管理と活動時間の調整を⾏う.参加⼈数に制限は無い が,3〜6⼈ずつグループに分かれる. 図 3-2.協創スケッチ法ワークショップの様子1

(29)

参加者が使⽤する道具は,参加者ごとに⾊の異なるペン,そして模造紙もしくは複数の紙 である.ペンは,主に市販の⽔性マーカーペンを使⽤する.各参加者が使⽤するペンの⾊は, グループ内で⾊が被らないように決める.参加者は,選んだペンの⾊を,途中で変えてはい けない.誰のスケッチかを,作業中および作業終了後に,⾊で判別するためである.そのた め,他の⾊を隠す⿊のような濃⾊のペン,または⻩のような淡⾊のペンは,使⽤しない.紙 は,参加者⼀⼈につき 4 枚以上使⽤する.紙のサイズは,主に A3や A4だが,模造紙など の⼤判サイズを使⽤する場合もある.紙の⾊は,⽔性マーカーペンの⾊が判別しやすい⽩を 基本とする. 活動に適した場所は,グループの参加者全員がペンと紙を使って活動でき,ファシリテー タの声が参加者全員に届く必要がある. 協創スケッチ法を構成するこれらの要素は,実施する際のテーマ,場所,参加⼈数などの 条件によって調整可能である. 3.2.2 協創スケッチ法の進め⽅ 協創スケッチ法は,多⼈数の市⺠による協創の初期段階,つまり課題解決のための要件の 図 3-3.協創スケッチ法ワークショップの様子2

(30)

フェーズ1の「スケッチ・アイスブレイク」では,まずスケッチで意⾒表出することに慣 れるためのトレーニングをする.例えば,基本図形を描く練習(図 3-5)では,正円,正三⾓ 形,正⽅形を,A3もしくは A4サイズの紙に,1枚ずつ描くことから始める.紙の中央に, 可能な限り⼤きな図形を,ひと筆で⼀気に描く.そして図形を描くごとに,グループのメン バー同⼠で,描いた図形の特徴,描き⽅などを確認し,意⾒交換する.次に,基本図形を使 ってグループメンバーの似顔絵を描く練習(図 3-6)では,線,円,三⾓,四⾓などの基本図 形を組み合わせて,グループメンバー同⼠で似顔絵を描く.対象を単純な図形の組み合わせ て描くことで,対象の特徴の観察と抽出の練習をする.この似顔絵も,メンバー同⼠で確認 し,意⾒交換する.この練習によって,対象を簡素で端的に表現しても,描いた対象を他者 が理解できることを実感する.そして,スケッチと⾔葉を使って状況を説明する練習では, 各参加者の記憶に残った出来事を,基本図形と⾔葉を組み合わせて描くことに挑戦する. 「最近⼀番嬉しかったこと」などの練習テーマを,ファシリテータが設定する.結果はグル ープメンバーと⾒せ合って意⾒交換をする.この練習によって,描く対象が物だけでなく時 間経過を伴う状況であっても,スケッチで表現でき,他者にも伝わることを実感する.つま り,このフェーズの主な⽬的は,描画に苦⼿意識を抱く参加者でも参加しやすい状態をつく ることであり,副次的にアイスブレイクの効果もある.参加者の描画能⼒によって,練習内 容や組み合わせを変更して実施する. フェーズ2の「キーワード対話」では,メンバーが対話して,アイデアのタネとなるキー ワード出しをする.最初の「表出キーワード」のステップでは,テーマに関する気づきを, 各参加者が,5分程度で,紙に書き出す.そして,次の「創発キーワード」のステップでは, 気づきを書いた紙を,まず他メンバーに渡す.紙を渡されたメンバーは,書かれているキー ワードに,1⼈につき3〜5分程度で,意⾒を書き込む(図 3-7).メンバー全員に回し終わ り⾃分の⼿元に戻った紙は,⾊の異なるペンで多層的にメンバーらの意⾒が書かれた状態 になっている.「キーワードの共有」では,その紙を⾒て,グループメンバー全員と意⾒交 換し,最後の「決断キーワード」のステップでは,各⾃でアイデアのタネを⾒つける. フェーズ3の「スケッチ対話」では,スケッチを介した対話によって,アイデアを創出す る.最初の「表出スケッチ」のステップでは,⾃分のアイデアを,各参加者が,新しい紙に 5分程度でスケッチする.そして,次の「創発スケッチ」のステップでは,アイデアが描い た紙を,まず他メンバーに渡す.紙を受け取ったメンバーは,描かれているアイデアに,1 ⼈につき3〜5分程度で,アイデアや意⾒を描き込む(図 3-8).メンバー全員に回し終わる と,⾊の異なるペンで多層的にメンバーらのアイデアや意⾒が加筆された紙が⼿許に戻る. 「スケッチの共有」では,その紙を⾒て,グループメンバー全員と意⾒交換し,最後の「決 断スケッチ」のステップでは,最終的な⾃分のアイデアを決め,新しい紙に 10 分程度で描 く(図 3-9, 3-10).このとき,他メンバーの加筆を全て採⽤する必要はない.決断スケッチ を他メンバーに渡し,創発スケッチもう⼀度⾏うことも可能である.

(31)

フェーズ4の「収束対話」では,各参加者が描いた決断スケッチを全て並べ,参加者全員 で眺めて評価し合う(図 3-11). フェーズ ステップ 時間 フェーズ1. スケッチ・アイスブレイク 20〜40 分 フェーズ2. キーワード対話 20〜60 分 2-1.表出キーワード (5分程度) 2-2.創発キーワード (1人3〜5分) 2-3.キーワードの共有 (5分程度) 2-4.決断キーワード (5分程度) フェーズ3. スケッチ対話 25〜60 分 3-1.表出スケッチ (5分程度) 3-2.創発スケッチ (1人3〜5分) 3-3.スケッチの共有 (5分程度) 3-4.決断スケッチ (10 分程度) フェーズ4. 収束対話 10〜20 分 計 75〜180 分 表 3-1.協創スケッチ法の基本的な時間配分

図 2-2.Different levels of knowledge about experience are accessed by  different techniques
図 3-6.フェーズ1の「スケッチ・アイスブレイク」でメンバーの似顔絵を描く様子 図 3-5.フェーズ1の「スケッチ・アイスブレイク」で基本図形を描く様子
図 3-7.フェーズ2の「キーワード対話」の「創発キーワード」ステップの様子
図 3-9.フェーズ3の「スケッチ対話」の「決断スケッチ」ステップの様子
+4

参照

Outline

関連したドキュメント

Keywords: continuous time random walk, Brownian motion, collision time, skew Young tableaux, tandem queue.. AMS 2000 Subject Classification: Primary:

Kilbas; Conditions of the existence of a classical solution of a Cauchy type problem for the diffusion equation with the Riemann-Liouville partial derivative, Differential Equations,

The study of the eigenvalue problem when the nonlinear term is placed in the equation, that is when one considers a quasilinear problem of the form −∆ p u = λ|u| p−2 u with

We show that for a uniform co-Lipschitz mapping of the plane, the cardinality of the preimage of a point may be estimated in terms of the characteristic constants of the mapping,

It turns out that the symbol which is defined in a probabilistic way coincides with the analytic (in the sense of pseudo-differential operators) symbol for the class of Feller

To derive a weak formulation of (1.1)–(1.8), we first assume that the functions v, p, θ and c are a classical solution of our problem. 33]) and substitute the Neumann boundary

The proof uses a set up of Seiberg Witten theory that replaces generic metrics by the construction of a localised Euler class of an infinite dimensional bundle with a Fredholm

This paper presents an investigation into the mechanics of this specific problem and develops an analytical approach that accounts for the effects of geometrical and material data on