治療を受ける患者さんへ
レトロゾール
錠「サワイ」
の
社会医療法人 博愛会 相良病院 理事長 監修相良 吉昭
先生 ●緊急時連絡先 ●連絡先この冊子は、『レトロゾール錠「サワイ」』を使った乳がん のホルモン療法を受ける患者さんのために、ホルモン療 法がどんな治療なのか、また、お薬がどのように作用する のかといったことから、服用のし方まで、患者さんご自身 に知っておいていただきたいことをわかりやすく解説し ています。 また、がんの治療では副作用を心配されることが多い かもしれません。ホルモン療法は比較的副作用の少ない 治療といわれていますが、この冊子ではあらわれやすい 副作用と日常生活での工夫も紹介しています。 ご自身の治療をよく知るということは、治療を受ける ためにとても大切なことです。この冊子を読んでいただ いて、わからないことや疑問に思うことがあれば、担当の 医師や看護師、薬剤師にいつでもお尋ねください。 安心して治療に取り組んでいただくために、この冊子 をお役立ていただければ幸いです。
はじめに
目 次
1.乳がんのホルモン療法について
乳がんのホルモン療法とは ホルモン療法の対象となる乳がん 2 3 4 5 8 11 11 12 12 12 13 14 15 162.レトロゾール錠「サワイ」について
エストロゲンの分泌について レトロゾール錠「サワイ」はどんなお薬? レトロゾール錠「サワイ」の服用方法3.レトロゾール錠「サワイ」の主な副作用
ほてり 関節痛 頭 痛 吐き気 その他 注意していただきたい副作用(骨粗鬆症・骨折) 重大な副作用 コラム:からだを動かしましょう 気になる症状があるときには (メモ欄) こつそしょうしょう乳がんのホルモン療法とは
女性ホルモン「エストロゲン」をターゲットとしたお薬による治療です。 エストロゲンが乳がん細胞の持つエストロゲンの結合部位(エストロゲン受 容体)に結びつくと、乳がん細胞が増殖します。ホルモン療法では、エストロ ゲンを減らしたり、エストロゲン受容体とエストロゲンが結びつくのを防ぐ ことで、乳がん細胞の増殖を抑制します。 また、閉経前と閉経後ではエストロゲンの分泌経路が異なるため、お薬もそ れに合わせて使用されます。 ホルモン療法は、乳がんの手術直後から行われる場合と、進行・再発した乳 がんに対して行われる場合があります。ホルモン療法の対象となる乳がん
エストロゲン受容体、または、同じく女性ホルモンであるプロゲステロンの 結合部位(プロゲステロン受容体)の少なくともどちらか一方を持つ乳がんを 「ホルモン感受性乳がん」といいます。検査でホルモン感受性乳がんであるこ とが確認できれば、ホルモン療法の効果が期待できます。乳がんのホルモン療法について
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手術直後の治療については p.6 をご覧ください。 進行・再発乳がんに対する治療については p.7 をご覧ください。 乳がんとエストロゲン エストロゲン 受容体 乳がん細胞 エストロゲン (女性ホルモン) 乳がん細胞が増殖 エストロゲンが エストロゲン受容体に 結合すると… 乳がんの約7割は ホルモン感受性乳がんです。 ❶ 乳がんのホルモン療法について❷レトロゾール錠「サワイ」について
エストロゲンの分泌について
乳がん細胞を増殖させるエストロゲン(女性ホルモン)は、閉経前には主に 卵巣から分泌されます。しかし、卵巣の機能が低下した閉経後は、副腎から分 泌されたアンドロゲン(男性ホルモン)がアロマターゼという酵素によってエ ストロゲンにつくりかえられる経路が中心となります。アロマターゼは、脂肪 組織や乳がん細胞内などに広く存在しています。レトロゾール錠「サワイ」はどんなお薬?
レトロゾール錠「サワイ」(以下、レトロゾール)は、アロマターゼの働きを阻 害するアロマターゼ阻害薬のひとつです。アンドロゲンからエストロゲンが つくられるのをおさえ、乳がん細胞の増殖を抑制します。 レトロゾールによる治療の対象となるのは「閉経後の乳がん」です。レトロゾール錠「サワイ」について
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閉経後のエストロゲンの分泌 レトロゾールの作用 アンドロゲン (男性ホルモン) エストロゲン (女性ホルモン) 乳がん細胞 アロマターゼ アロマターゼ 脂肪組織など 乳がん細胞が増殖 乳がん細胞が増殖 副腎 腎臓 (男性ホルモン)アンドロゲン アロマターゼの働きを おさえて、エストロゲン がつくられるのを抑制 エストロゲン (女性ホルモン) 乳がん細胞 アロマターゼ アロマターゼ 脂肪組織など レ ト ロ ゾ ー ル 乳がん細胞の増殖を抑制 副腎 腎臓 乳がん細胞の増殖を抑制❷レトロゾール錠「サワイ」について
乳がんの手術直後からレトロゾールの治療を行う場合
手術では取り切れない目に見えないくらいの小さながんがある可能性や、 がんが全身に広がっている可能性を考えて、がんの再発や転移を防ぐ目的で レトロゾールによる治療が行われます。 手術後のホルモン療法は5年間、場合によっては10年間続けられることも あります。治療期間は、治療の効果や副作用の程度を考慮して決められます。進行・再発乳がんに対してレトロゾールの治療を行う場合
進行している乳がんや、再発した乳がんに対しては、がんの進行をおさえた り、症状をやわらげたりするためにレトロゾールによる治療が行われます。患 者さんのQOL(生活の質)を保ち、できるだけ長い間、普段どおりの生活を 送っていただくことを目的としています。治療は、効果のある間は続けられま す。❷レトロゾール錠「サワイ」について
レトロゾール錠「サワイ」の服用方法
飲み忘れた場合、多く飲んでしまった場合 通常、1日1回1錠を毎日服用します。コップ1杯程度の水またはぬるま湯 で服用してください。 朝、昼、夜、食前、食後にかかわりなく、いつ服用しても効果は変わりませ んが、飲み忘れを防ぐため時間を決めて服用することをおすすめします。 飲み忘れた場合、その日のうちに気付いたときはできるだけ早く服用して ください。 翌日になって気付いた場合は、前日分を服用せず、1日分のみを服用してく ださい。絶対に2日分を一度に服用しないでください。 間違えて多く飲んでしまった場合は、すぐに担当医師か薬剤師に連絡して ください。 注意していただきたいこと お薬の服用期間(治療期間)は患者さんごとに異なります。自分の判断で服 用をやめないでください。 一緒に飲むことでレトロゾール錠「サワイ」の副作用が強く出たり、効果が 弱くなったりするお薬があります。市販薬も含めて、他のお薬を服用する 場合には、担当医師や看護師、薬剤師に必ず伝えてください。レトロゾール錠「サワイ」の主な副作用
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❷レトロゾール錠「サワイ」について その他の注意点 肝臓や腎臓の病気がある場合には、事前に担当医師に相談してください。 他の診療科や他の医療機関を受診するときは、レトロゾール錠「サワイ」を 服用していることを受診先の医師や薬剤師に伝えてください。 疲れやめまい、ねむけがあらわれることがあります。自動車の運転や危険 を伴う作業をするときには注意してください。 直射日光を避け、小さなお子さんの手の届かないところに保管してください。 顔がのぼせる、からだや顔がほてる、突然多量の汗が出るといった症状があ らわれることがあります。軽いものを含めると半数以上の患者さんにあらわ れますが、次第に軽快することが多い症状です。 《病院などで行われる対策》 ■ 日常生活に支障がある場合には、ほてりをやわらげるお薬が処方されるこ とがあります。 ●脱ぎ着しやすい服装で、こまめに体温調節をするように しましょう。 ●熱い飲みものや香辛料はひかえめにしましょう。ほてり
あらわれやすい 手指、ひざ、ひじ、肩の関節に、痛みやこわばりが出ることがあります。時 間の経過とともに軽快することの多い症状です。 《病院などで行われる対策》 ■ 痛み止めのお薬が処方されることがあります。関節痛
あらわれることがある 日常生活での 工 夫 ●関節をゆっくり動かす運動や ストレッチを行いましょう。 ●同じ姿勢を長く続けないよう にしましょう。 日常生活での 工 夫注意
注意
❸レトロゾール錠「サワイ」の主な副作用 エストロゲンは骨量を維持する働きを持っています。治療によってエスト ロゲンが減少すると骨密度が低下し、骨粗鬆症になったり、骨折しやすくなっ たりします。治療中は定期的に検査を受けて骨の状態を確認します。 《病院などで行われる対策》 ■ 骨粗鬆症の治療薬が処方されることがあります。 ●カルシウムやビタミンDを多く含んだ食事をとるように しましょう。 ●適度な運動を心がけるようにしましょう。
注意していただきたい副作用
骨粗鬆症・骨折
副作用のあらわれ方には 個人差があります。 症状がつらいと感じたときは 我慢せず、 担当医師や看護師、薬剤師に 相談してください。 頭痛があらわれることがあります。つらい と感じたときは担当医師に相談してください。頭 痛
発疹、かゆみ、めまいなどが起きることがあります。その他
気持ちが悪い、吐き気がするなどの症状があらわれることがあります。 《病院などで行われる対策》 ■ 吐き気止めのお薬が処方されることがあります。吐き気
日常生活での 工 夫 乳製品 骨ごと食べる魚介類 (干しえび、ししゃも、いわし など) 海藻類 カルシウムの多い食品 魚類(鮭、さんま、かれい など) きのこ類 卵(卵黄) ビタミンDの多い食品 こつそしょうしょう あらわれることがある あらわれることがあるまれに以下のような症状があらわれることがあります。重大な副作用(【 】 内に表示)の初期症状の可能性もあるため、以下のような症状があらわれた場 合はすぐに担当医師の診断を受けてください。