第 26 章 地域編②:グアナファト州
地域編②:グアナファト州
地域概要
概要
①グアナファトの概要
グアナファト州はメキシコシティの北西部に位置し、北部はサン・ルイス・ポトシ州、東部は
ケレタロ州、南部はミチョアカン州、西部はハリスコ州に隣接している。州都は 18 世紀に銀の生
産で富を築いたグアナファト市である。同州最大の都市はレオン市であり、国際空港や日本国総
領事館等がある。
グアナファト州の面積は 30,608km
2で国土の約 1.6%である。人口は約 588 万人(2016 年)で、
メキシコ全体の約 4.7%を占めている。
2017 年の GDP は 795,297 百万ペソであり、州別 GDP は全国 4 位である。また、当州への投資
額(FDI)は 1,160 百万ドルである。
図表 26-1 グアナファト州の概況
基本事項 面積 30,698km
2 人口 5,881,130 人 うち、労働人口 2,583,592 人 経済概況 GDP 795,297 百万ペソ 第一次産業が占める割合 3.7% 第二次産業が占める割合 38.7% 第三次産業が占める割合 57.6% 外国直接投資額(FDI) 1,160.3 百万ドル (出所)ProMéxico より作成②工業団地・日系企業進出動向
古くは農業と畜産が盛んな地域として知られていたが、General Motors がシラオ市に生産拠点を
設置したことを契機に工業化が進み、近年の主要産業は自動車産業となっている。
ホンダとマツダの進出に伴い日系企業が急増し、2011 年 10 月時点で 14 社だった企業数は 2016
年 10 月時点で 234 社と全国で最も多い。
メキシコの投資環境
ひとくちメモ 29:メキシコ最大級の工業団地 Puerto Interior 自動車産業の集積が進むグアナファト州の空の玄関口であるデル・バヒオ国際空港(レオン空港)の すぐ横に、メキシコ最大級の工業団地 Puerto Interior がある。工業団地内にはカナダ・アメリカ・港 湾まで続く鉄道のターミナル、税関などがあるとともに、他の自動車産業集積地エリア(アグアスカリ エンテス、イラプアト、サラマンカ、セラヤ等)へのアクセスも良い。また、団地内には大学、病院、 銀行があり、ホテル、商業施設やレストラン等の開発も行われている。この Puerto Interior には、100 社を超える企業があり、そのうち日系企業は 50 社を超えており、Puerto Interior にいるとまるで日本 の工業団地にいるかのようであり、日系企業の強い存在感を感じることができる。図表 26-2 グアナファト州の地図
進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト
①インフラ・物流
【道路】
他州にはない特徴は、州都グアナファト市のほかに、レオン市やシラオ市、イラプアト市、サ
ラマンカ市、セラヤ市などの大規模都市が複数存在することであり、主要都市間は幹線道路で結
ばれている。
グアナファト州
第 26 章 地域編②:グアナファト州
【空港・鉄道】
州内の主要空港は、シラオ市のデル・バヒオ国際空港であり、レオン市中心部から約 15km 南
東、イラプアト市近郊から約 40km 北東に位置する。隣接しているケレタロ州とミチョアカン
州から空港へのアクセスも容易である。
鉄道は Ferromex(フェロメックス)、KCSM(カンザス・シティ・サザン・ド・メキシコ)の
2 つの鉄道を利用することができる。太平洋側の主要港であるマンサニージョ港、大西洋側の主
要港であるベラクルス港とアルタミラ港は、航路や鉄道、高速道路でつながっている。
②労働事情
【人材】
2016 年のグアナファト州の 15 歳以上の人口は約 429 万人(72.2%)であり、内雇用者数は約
247 万人であり、失業者は約 10 万人である。
グアナファト州の人口は全国で 6 番目に多く、複数の都市圏が存在するために労働力を確保
しやすい環境にあるが、近年自動車関連企業の進出が急増したことにより、以前に比べ労働者
の確保が難しくなっている。
グアナファト州には、グアナファト市にある州立大学 Universidad de Guanajuato、レオン市に
ある Universidad de la Salle Bajío A.C.、Universidad Tecnológica de León 等の複数の都市圏に公立・
私立大学があり、各都市圏において高等教育を受けた有能な人材を輩出している。
【賃金】
2016 年のグアナファト州の 1 人あたり平均労働賃金は、263.0 ペソ(日額)であり、メキシコ
全土の平均労働賃金の 317.9 ペソの約 8 割に留まっている。
③生活環境
【気候】
最大都市のレオン市は標高 2,000 メートルの高地にある。6 月から 9 月は雨季であり、激しい
スコールが降ることがある。1 月から 4 月と 10 月から 12 月は乾季であり、朝晩は冷え込む。3
月から 5 月が最も気温が高い。
【教育】
グアナファト州には、当地の日系企業及び日本人が運営する週末補習校「グアナファト補習
授業校」がある。グアナファト補習授業校は、小学部と中学部があり、現地校に通う日本人子
女に対して、帰国後の日本の学校教育に円滑に適用できるよう教育指導する目的で、週一回土
曜日に授業を行っている。2017 年 11 月時点で 134 名の児童・生徒が通学している。
メキシコの投資環境
図表 26-3 グアナファト補習授業校の概況
ホームページ https://guajapanschool.jimdo.com/ 電話 +52-1-473-119-0915 (出所)在メキシコ日本国大使館、グアナファト補習授業校ホームページより ひとくちメモ 30:グアナファト補習授業校 グアナファト補習授業校では、国語、算数・数学を中心に授業が行われている。学校はイラプアトの 現地校の施設を利用し、生徒たちは、主に東はケレタロ・セラヤ、北はレオンに至る半径 100Km 圏内か らも通学している。春は卒業式・入学式、秋には親子参加の運動会、正月は書き初め、毎回の朝の会・ 終わりの会など、生徒たちには、日本の学校文化の学び舎となっている。 なお、2019 年にはグアナファト州に新たな日本人学校が設置される予定となっている。【医療】
日系企業の進出に伴い、日本人向けの生活インフラは徐々に開発されてきており、州内の私
立総合病院等では英語対応可能な医師もいる。
【治安】
グアナファト州は、外務省の海外危険情報において危険情報は出ていないが、在メキシコ日
本国大使館が公表している 2017 年邦人犯罪被害状況によると、地域別件数ではメキシコシティ
の 57 件に次いでグアナファト州は 48 件と多いことから、車上荒らしや歩行中の強盗などに十
分な注意が必要である。
ひとくちメモ 31:メキシコの治安 全国犯罪統計によると、全国の殺人件数は 2014 年 15,653 人、2015 年 17,013 人、2016 年 20,789 人、 2017 年 20,878 人(1-10 月まで)と殺人件数は増加の一途をたどっている。 邦人被害件数も近年は増加しており、強盗や車上荒らしなどの窃盗被害を受けている。邦人被害は日 中、日没後関係なく発生していることから、常に警戒しておく必要がある。特に自動車に乗車中でも被 害を受けることがあるため、外から見える場所に荷物を置かない、運転中はネクタイ、ジャケットを着 用しない、深夜の移動は避ける、高速道路を利用するなどの防犯対策を講じるべきであろう。また傾向 として日本もそうであるが、年末はやはり犯罪が増えるようである。 なお、在メキシコ日本大使館、在レオン日本領事館に届けられた邦人被害の犯罪件数は、2017 年は 164 件あり、2016 年の 132 件と比較して 24%増加している。【住居】
日本人の多くは州内最大都市のレオン市又はイラブアト市近郊に居住している。レオン市の
第 26 章 地域編②:グアナファト州
バイリンガルスクールがあり、セキュリティがしっかりしたアパート物件、ゲートコミュニ
ティーの一戸建てが多い。南部はシラオに勤務する日本人が多く住む近年開発が進んだエリア
であるが、アパート物件は少なく、ゲートコミュニティーの一戸建ての場合が多い。
【日本食】
グアナファト市、レオン市、シラオ市、イラプアト市などの主要都市には日本食レストラン
が存在し、お寿司や定食メニュー等を提供している。日本人が多く居住するレオン市及びイラ
プアト市には、日本食の調味料、インスタント食品及び調理器具等が揃う日本食材店もある。
ひとくちメモ 32:レオンの生活環境 レオンは、グアナファト州最大の都市である。10 年以上前、日系企業はレオン近郊に数社しかなく、 レオンで日本人を見かけることはほとんどなかった。しかし、2010 年以降日系自動車関連企業のバヒオ 地域への進出に伴い、レオン市内には家族連れを含めて日本人在住者数が急増しており、2016 年には在 レオン日本国総領事館が開設された。 日本人在住者の住まいは主にレオンの北部エリアと南部エリアに分かれている。北部エリアは学校が 多いことから家族連れが多く、また、ゴルフ場も多いためゴルフ愛好者には恵まれた環境である。南部 エリアは、新興住宅地(NATURA Residencial 等)があり、シラオ方面の工業団地へのアクセスが良いこ とから、比較的単身駐在者が多い。 レオンには以前からメキシコ人に愛されている日本食レストラン(栄紀、SATO 等)があり、日本食材 店 TOYO が 2 店舗、また最近では日本の 100 円ショップ商品を取り扱った Dokkoi Japan(39.9 ペソ均一) がオープンし、日本人の生活も便利になってきている。また、レオンから車でグアナファト市まで世界遺産を見に行くことも可能であり、メキシコの歴史や 文化を十分に満喫できる環境にある。
メキシコの投資環境
主要工業団地
主要工業都市はセラヤ市、サラマンカ市、イラプアト市、シラオ市、レオン市である。マツダ
はサラマンカ市、ホンダはセラヤ市、General Motors はシラオ市に拠点を置いている。州内には 24
の工業団地及び工業地域が整備されている。
図表 26-4 グアナファト州の主要工業団地一覧
No. 工業団地名 所在地 総開発面積1 Business Park Celaya II Calle Sur 2, S/N Celaya, Guanajuato, C.P. 38010 14,000 ㎡ 2 COLINAS DE APASEO
INDUSTRIAL PARK APASEO EL GRANDE, Guanajuato 290 ha 3 COLINAS DE LENDE,
Guanajuato PARK LEÓN, Guanajuato 230 ha 4 COLINAS DEL RINC,
Guanajuato PARK SAN FRANCISCO DEL RINCÓN, Guanajuato 100 ha 5 LAS COLINAS INDUSTRIAL &
BUSINESS PARK SILAO, Guanajuato 130 ha 6 Parque Industrial Advance
Apaseo
Carretera Federal 45 Libre, Km 45+937, Apaseo El
Grande, Guanajuato. 146,000 ㎡ 7 Parque Industrial Amistad Bajio Boulevard Juan José Torres Landa 204, 2º Piso
Colonia del Parque Celaya, Guanajuato 74.79 ha
8 PARQUE INDUSTRIAL CUADRITOS
JOSÉ YVES LIMANTOUR # 305, COL. CONDOMINIO PARQUE INDUSTRIAL CUADRITOS, CELAYA, GTO., C.P. 38104
45 ha
9 Parque Industrial Marabis Abasolo
Carretera Fed. 90. Tramo Abasolo-Pénjamo Km. 36+125 Parque Industrial Marabis
Abasolo.Abasolo, Gto., México. C.P. 36970
120 ha
10 Parque Industrial Marabis Comonfort
Carretera Federal 51 tramo Celaya – San Miguel de Allende km 8+800. Parque Industrial Marabis Comonfort, Comonfort, Guanajuato.
110 ha
11 Parque Tecno Industrial Castro del Rqu
Carretera Federal 45, Tramo Irapuato-Silao Km. 125 + 250 Paque industrial Castro del Río Irapuato, Guanajuato
444 ha
12
SANTA FE INDUSTRIAL PARKS GUANAJUATO INLAND PORT
SILAO, Guanajuato 650 ha
13 VestaPark Guanajuato I Av. Mina de Guadalupe, Parque Industrial Santa
Fe IV, Guanajuato, México, 36275 - 14 VYNMSA Guanajuato Industrial
Park
Carretera Federal 45 Km 131.5 Tramo
Irapuato-Silao Guanajuato, Guanajuato 68.31 ha 15 VYNMSA Le F Industrial Park Carretera León-Cuerámaro, Predio Rústico Lote 4 48 ha