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ご 挨 拶
このたび第 2 回栃木ヘルニア研究会の当番世話人を仰せ付かり、平成 27 年 8 月
29 日(土)にホテル東日本宇都宮において開催させていただくことになりました。
本研究会の代表世話人でいらっしゃる十川康弘先生をはじめ、関係されます諸先生
方、皆様のご高配に衷心より感謝申し上げます。
さて、ヘルニアは若手外科医が最初に経験する手術のひとつとして、古くから外
科研修における登竜門と考えられてきました。近年では腹腔鏡下手術にて実施され
る施設が増加しており、さらに平成 24 年の診療報酬改定により腹腔鏡下ヘルニア
手術は今後ますます普及することが予想されます。このような現状の中で栃木ヘル
ニア研究会は、栃木県における腹部ヘルニアの診断・治療技術の向上、外科手術の
指導医の育成を目的として昨年設立されました。
今回の研究会では特別講演として、腹腔鏡下ヘルニア手術のオピニオンリーダー
でいらっしゃる早川哲史先生(日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会代表世話人、
刈谷豊田総合病院副院長)をお招きいたしました。演題名は、TAPP 法での腹膜剥
離はなぜ難しいのか?「2D 画像を見ながら立体的手術操作を再認識しよう」とい
う大変興味深い内容でご講演をいただきます。
また、一般演題として鼠径部ヘルニア、
腹壁瘢痕ヘルニア、傍ストーマヘルニア、
TAPP 法などに関して計 12 題の演題応募をいただきました。この場をお借りして
お礼申し上げます。
ヘルニア診療に携わる多くの外科医が参加し、活発なディスカッションで研究会
が盛り上がるよう、是非とも皆様のご協力をお願いいたします。
平成 27 年 8 月吉日
第 2 回栃木ヘルニア研究会
当番世話人 加藤 広行
(獨協医科大学 第一外科学講座)
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開 催 概 要
会
期: 平成
27 年 8 月 29 日(土)
14:00~18:00
会
場: ホテル東日本宇都宮
2 階 羽衣
〒320-0013
栃木県宇都宮市上大曽町
492 番地 1
TEL:028-643-5555
FAX:028-643-5213
会
費:
1,000 円
当 番 世 話 人: 加藤 広行(獨協医科大学第一外科)
事
務
局: 獨協医科大学第一外科 尾形 英生
〒321-0293
栃木県下都賀郡壬生町北小林
880
TEL:0282-86-1111(代表)
TEL:0282-87-2157(医局)
FAX:0282-86-6213
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会場までのアクセス
会 場: ホテル東日本宇都宮 所在地: 〒320-0013 栃木県宇都宮市上大曽町 492 番地 1 TEL:028-643-5555/FAX:028-643-5213 車を利用する場合 JR 宇都宮駅から (2km) 約 10 分 東武宇都宮駅から(2km) 約 15 分 バスを利用する場合 ●JR 宇都宮駅西口バスターミナル5番乗り場・ニュー富士見行、中里原行、玉生行、 宇都宮美術館行、宇都宮グリーンタウン行、帝京大行など 「大曽十文字」下車、徒歩5 分 ●竹林経由または済生会病院経由 富士見が丘団地行 「河内庁舎正門」下車、目前 ※路線によっては経由しない場合もございます。乗車の際に必ずご確認下さい4
研究会参加者へのご案内
参加者の方へ
1. 参加受付 ・場所:ホテル東日本宇都宮2 階「羽衣」前ロビー ・時間:平成27 年 8 月 29 日(土)13:30~ ・参加費:1,000 円 2. 抄録集 ・事前に送らせていただいた方は、抄録集をお忘れなくご持参ください。 3. 企業展示 13:30~18:30 ・「羽衣」前にて企業展示を開催いたします。 発表者の方へ
1. スライド受付 ・場所:ホテル東日本宇都宮2 階「羽衣」前ロビー ・受付時間:13:30~ ・発表の30 分前までに受付を済ませてください。 2. 発表について ・発表8 分、質疑応答 4 分です。 ・発表データはUSB フラッシュメモリー等でお持ちください。会場に用意してい るPC は Windows のみとなります。Macintosh をご利用の場合は PC 持ち込み でお願いします。PC 画像の外部出力ケーブルコネクタは D-sub15pin3 列タイプ です。この形状に変換するコネクタを必要とする場合には必ずご持参ください。 ・PC 持ち込みの場合は PC 受付で動作を確認後、ご自身にて発表会場の PC オペ レータ席(会場左手前方)までお持ちください。また、万が一のトラブルやバッ テリー切れに備えてデータを保存したメディアおよびAC アダプターも必ずご 用意ください。 世話人の方へ
・世話人会 13:30~13:50 ホテル東日本宇都宮4 階「おおるり」にて開催いたします。5
プログラム
14:00~14:05 開会の挨拶 第 2 回栃木ヘルニア研究会 当番世話人 加藤 広行 一般演題 14:05~16:50 セッション A:傍ストーマヘルニア 14:05~14:30 座長:上都賀総合病院 外科 橋場 隆裕 先生 1. 回腸導管造設術後の傍ストーマヘルニアによるイレウスの 2 例 自治医科大学 消化器・一般外科1)、泌尿器科2) ○東條 峰之1)、小泉 大1)、伊藤 誉1)、直井 大志1)、森本 光昭1)、 鯉沼 広治1)、佐久間 康成1)、堀江 久永1)、細谷 好則1)、森田 辰男2)、 佐田 尚宏1) 2. 腹腔鏡下に sandwich 法にて修復した傍ストーマヘルニアの 1 例 上都賀総合病院 外科 ○橋場 隆裕、十川 康弘、知久 毅、佐野 渉、室野井 智博、志田 陽介、 森田 隆介 セッション B:鼠径部・腰部ヘルニア 14:30~15:20 座長:済生会宇都宮病院 外科 木全 大 先生3. 鼠径へルニア根治術(メッシュプラグ法)後に発症した toxic shock syndrome の 1 例 獨協医科大学 第二外科 ○渋谷 紀介、下田 貢、喜島 博章、森 昭三、髙木 和俊、窪田 敬一 4. 横行結腸が嵌頓した右鼠径ヘルニアの 1 例 独立行政法人地域医療機能推進機構 うつのみや病院 外科 ○高橋 大二郎、小泉 大、風當 ゆりえ、斎藤 晶、太白 健一、森嶋 計、 丸山 博行
6 5. 両側上腰ヘルニアと右大腿ヘルニアに対して同時手術を施行した 1 例 済生会宇都宮病院 外科 ○石田 隆、篠崎 浩治、小澤 広輝、加藤 昴、若林 大雅、松本 健司、 笹倉 勇一、清水 徹一郎、寺内 寿彰、木全 大、古川 潤二、小林 健二、 尾形 佳郎 6. 鼠径ヘルニア手術の際に偶発的に発見された胃癌腹膜播種の 1 例 獨協医科大学 日光医療センター 外科1) 獨協医科大学 第一外科2) ○久保 僚1)、宮地 和人1)、小野寺 真一1)、横山 悠2)、加藤 広行2) コーヒーブレイク 15:20~15:30 セッション C:腹壁瘢痕へルニア 15:30~16:10 座長:国際医療福祉大学病院 外科 大平 寛典 先生 7. 再発性腹壁瘢痕ヘルニアに対し自家組織を用いて修復した 1 例 足利赤十字病院 外科1)、形成外科2) ○森田 覚1)、松田 圭央1)、添野 孝文1)、山田 暢1)、藤崎 洋人1)、 尾之内 誠基1)、戸倉 英之1)、平畑 忍1)、高橋 孝行1)、藤崎 眞人1)、 横山 愛2)、倉林 孝之2) 8. 腹壁瘢痕ヘルニアに対し腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った 2 例 国際医療福祉大学病院 外科 ○伊藤 栄作、大平 寛典、中島 啓吾、鈴木 範彦、安田 淳吾、今北 智則、 筒井 信浩、吉田 昌、柳澤 暁、鈴木 裕 9. 腹壁瘢痕ヘルニアに対する修復アプローチによる比較検討 ~開腹術と腹腔鏡手術~ 獨協医科大学 第一外科 ○倉山 英豪、佐々木 欣郎、里村 仁志、菊池 真維子、大塚 吉郎、 小野寺 真一、中島 政信、山口 悟、加藤 広行
7 セッション D:腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術 16:10~16:50 座長:那須赤十字病院 外科 小島 正夫 先生 10. POP-TANKO 式腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の定型化と治療成績 独立行政法人国立病院機構 宇都宮病院 外科1) 獨協医科大学 第一外科2)、群馬大学 病態総合外科3) ○滝田 純子1)、増田 典弘1)、芳賀 紀裕1)、勝又 大輔1)、柴崎 雄太1)、 高橋 雅一2)、中島 政信2)、山口 悟2)、加藤 広行2)、桑野 博行3) 11. TAPP 導入における当施設の試み 佐野厚生総合病院 外科 ○池田 篤、林 応典、横田 光央、迫 裕之、内田 寛、池田 謙、 奥澤 星二郎 12. 当院での腹腔鏡下ヘルニア根治術の導入と手術定型化の取り組み 那須赤十字病院 外科 ○谷 紀幸、磯部 雄二郎、後藤 拓也、五十嵐 高広、川島 俊文、 青木 真彦、城戸 啓、小島 正夫、田村 光 特別講演 17:00~18:00 司会:獨協医科大学 第一外科 加藤 広行
TAPP 法での腹膜剥離操作はなぜ難しいのか?
「2D 画像を見ながら立体的手術操作を再認識しよう」
演者:日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会 代表世話人
刈谷豊田総合病院 副院長
早川 哲史 先生
18:00~18:05 閉会の挨拶 18:05~ 情報交換会 2 階「孔雀」(講演会場のとなりです)8 演題 1. 回腸導管造設術後の傍ストーマヘルニアによるイレウスの 2 例 自治医科大学 消化器・一般外科1)、泌尿器科2) ○東條 峰之1)、小泉 大1)、伊藤 誉1)、直井 大志1)、森本 光昭1)、 鯉沼 広治1)、佐久間 康成1)、堀江 久永1)、細谷 好則1)、森田 辰男2)、 佐田 尚宏1) 【症例1】74 歳女性。5 年前に膀胱癌に対して、膀胱全摘術、回腸導管造設術を施行した。 術後4 年目に傍ストーマヘルニアに起因するイレウスを発症した。腹部 CT で 3cm のヘル ニア門を有する7×4cm の傍ストーマヘルニアを認めた。Sugarbaker 法で修復し、術後 第10 病日に退院した。術後 1 年で再発は認めなかった。【症例 2】72 歳男性。3 年前に膀 胱癌に対して、膀胱全摘術、回腸導管造設術を施行した。術後3 年目で傍ストーマヘルニ アに起因するイレウスを発症した。腹部CT で 5cm のヘルニア門を有する傍ストーマヘル ニアを認め、同部位が原因のイレウスと診断した。イレウス管での減圧後に手術を施行し、 Sugarbaker 法で修復した。術後第 11 病日に退院した。術後 6 ヶ月で再発を認めた。膀胱 全摘後の回腸導管は最も一般的な尿路再建法であり、回腸導管造設術後の傍ストーマヘル ニアの発症率は、15%程度とされている。回腸導管造設術後の傍ストーマヘルニアについ て文献的考察を加え、報告する。
9 演題 2. 腹腔鏡下に sandwich 法にて修復した傍ストーマヘルニアの 1 例 上都賀総合病院 外科 ○橋場 隆裕、十川 康弘、知久 毅、佐野 渉、室野井 智博、志田 陽介、 森田 隆介 傍ストーマヘルニアに対する腹腔鏡下修復術の報告は近年増加している。当科で経験し た症例に若干の文献的考察を加えて報告する。症例は 73 歳女性。5年前に直腸癌に対し てS 状結腸人工肛門造設術を施行後、二期的に病変部を切除したが、人工肛門の閉鎖は行 われなかった。術後よりストーマ周囲の膨隆をみとめ、経過観察されていたが、今回手術 希望あり当科受診。ストーマは双孔式で、肛門側が盲端となっていた。CT にてストーマ の外側中心に70×42mm の傍ストーマヘルニアをみとめた。腹腔鏡下手術の方針となり、 sandwich 法にて修復を行った。術後6ヶ月経過し、再発をみとめていない。
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演題3. 鼠径へルニア根治術(メッシュプラグ法)後に発症した toxic shock syndrome の1 例 獨協医科大学 第二外科 ○渋谷 紀介、下田 貢、喜島 博章、森 昭三、髙木 和俊、窪田 敬一 43 歳の男性。左鼠径ヘルニアに対してメッシュプラグ法によるヘルニア根治術施行した。 術後第14 病日より発熱、全身紅斑、下肢紫斑を認め DIC 傾向となった。採血上、WBC 18.3 (10^9/l)、CRP 28.05(mg/dl)と著明な炎症反応、肝逸脱酵素の上昇、腎機能の悪化、 血小板の低下を認め入院となった。抗菌薬による治療を開始し、入院後3 日目には全身状 態、採血上も改善を認めた。手術創部よりStaphylococcus aureus(MSSA)が検出され、 toxic shock syndrome(TSS)と診断した。入院後 15 日目にメッシュプラグ除去術を施行 し、経過良好のため退院となった。メッシュによるTSS はまれで、メッシュプラグ除去に より治癒した症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
11 演題4. 横行結腸が嵌頓した右鼠径ヘルニアの 1 例 独立行政法人地域医療機能推進機構 うつのみや病院 外科 ○高橋 大二郎、小泉 大、風當 ゆりえ、斎藤 晶、太白 健一、森嶋 計、 丸山 博行 症例は 71 歳、男性。幼少期より右鼠径ヘルニアを認めていたが、放置していた。受診 前日より自己還納が困難、疼痛も伴うようになり、当科受診した。診察時は右鼠径部に有 痛性の手拳大腫瘤を認めた。腹部CT では右鼠径部に脱出した大網と横行結腸を認め、口 側結腸の拡張も認めた。横行結腸を内容とした右鼠径ヘルニア嵌頓,腸閉塞と診断。用手 的還納は不可能であり,緊急手術となった。全身麻酔導入後に用手的に還納できた。手術 は前方アプローチで行い、外鼠径ヘルニアと診断した。ヘルニア嚢を解放し、腸管壊死を 疑う所見がないことを確認した。修復は BARD modified Kugel patch を用い、Direct Kugel 法で行った。鼠径ヘルニアの嵌頓率は一般的に 4〜5%とされ、ヘルニア内容は比較 的移動性に富む小腸、大網がほとんどであり、結腸は稀である。その中でも横行結腸がヘ ルニア内容となる鼠径ヘルニア嵌頓は極めて稀であり、文献的考察を含めて報告する。
12 演題5. 両側上腰ヘルニアと右大腿ヘルニアに対して同時手術を施行した 1 例 済生会宇都宮病院 外科 ○石田 隆、篠崎 浩治、小澤 広輝、加藤 昴、若林 大雅、松本 健司、 笹倉 勇一、清水 徹一郎、寺内 寿彰、木全 大、古川 潤二、小林 健二、 尾形 佳郎 腰ヘルニアは、上腰三角(Grynfelt 三角)あるいは下腰三角(Petit 三角)と呼ばれる 腰背部の解剖学的脆弱部位に発症する稀なヘルニアである。今回、非常に稀な両側上腰ヘ ルニアの1 例を経験したので報告する。症例は 63 歳女性。右腰背部膨隆を主訴に受診し、 CT で両側上腰ヘルニアと右大腿ヘルニアと診断した。手術は全身麻酔、腹臥位で開始し た。第 12 肋骨下縁を皮切し、広背筋を開排するとヘルニア内容である腎周囲後腹膜脂肪 組織が膨出した。ヘルニア門は第 12 肋骨、下後鋸筋下縁、仙棘筋、内腹斜筋後縁で構成 され、上腰ヘルニアと診断した。UHS-M size を用いた tension-free repair を施行した。 仰臥位に体位変換し、右大腿ヘルニアの手術をUPP-M size を用いた cooper's ligament repair で施行した。両側腰ヘルニアの報告例は極めて稀であり、若干の文献的考察を加え 報告する。
13 演題6. 鼠径ヘルニア手術の際に偶発的に発見された胃癌腹膜播種の 1 例 獨協医科大学 日光医療センター 外科1) 獨協医科大学 第一外科2) ○久保 僚1)、宮地 和人1)、小野寺 真一1)、横山 悠2)、加藤 広行2) 【症例】症例は76 才、男性。2011 年に胃癌に対して胃全摘+R-Y 再建術施行。pT3(SS) pN3a pM1(CY1)pStageⅣであり術後補助化学療法として TS-1 内服開始。2012 年に左 外鼠径ヘルニアに対しヘルニア根治術(メッシュプラグ法)施行。2014 年より右鼠径ヘル ニアと左鼠径部に隆起と疼痛を自覚したため受診。右鼠径ヘルニアと左鼠径ヘルニア再発 に対し2014 年 9 月にヘルニア根治術施行。術中所見として、左外鼠径輪より突出したヘ ルニア嚢内に腫瘤様結節を認め、腹膜播種病変が疑われたため左精巣摘出術施行。病理結 果より胃癌精巣転移の診断となる。 【考察・まとめ】胃癌の腹膜播種病変による精巣転移病変は極めてまれである。鼠径部の 転移に関しては卵巣癌や大腸癌において時折認められるが胃癌に関しても文献上も少数な がら報告例を認める。癌有病者における鼠径ヘルニアの手術の際には腹膜播種の可能性も 考慮する必要がある。
14 演題7. 再発性腹壁瘢痕ヘルニアに対し自家組織を用いて修復した 1 例 足利赤十字病院 外科1)、形成外科2) ○森田 覚1)、松田 圭央1)、添野 孝文1)、山田 暢1)、藤崎 洋人1)、 尾之内 誠基1)、戸倉 英之1)、平畑 忍1)、高橋 孝行1)、藤崎 眞人1)、 横山 愛2)、倉林 孝之2) 症例は45 歳女性。12 年前、イレウスに対しストーマ造設、閉鎖術がなされた。8 年前、 ストーマ閉鎖部の腹壁瘢痕ヘルニアにprimary closure が施行され、5 年前にヘルニア再 発を認めた。痛みを伴うようになり当科受診し、CT 上、横径 4 ㎝のヘルニア門と嵌頓小 腸が確認され手術の方針とした。皮膚筋炎に対し 18 年来ステロイドを内服している。組 織の脆弱性、中心性肥満の体型を考慮するとprimary closure は再々発が危惧された。一 方、易感染宿主で、メッシュの使用は感染リスクがあるため、形成外科と相談した。腹直 筋前鞘を翻転しヘルニア門を閉鎖、さらに大腿筋膜を移植する術式の提案を受け、合同手 術を施行した。 腹壁瘢痕ヘルニアに対する術式には、primary closure、メッシュ貼付などが挙げられる が、今回我々は、患者の病態に合わせ、上記術式を選択した。若干の文献的考察を加え、 同術式について報告する。
15 演題8. 腹壁瘢痕ヘルニアに対し腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った 2 例 国際医療福祉大学病院 外科 ○伊藤 栄作、大平 寛典、中島 啓吾、鈴木 範彦、安田 淳吾、今北 智則、 筒井 信浩、吉田 昌、柳澤 暁、鈴木 裕 【諸言】腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術(LVHR)は創感染などの合併症が少なく、入院期 間も短いことから普及してきている。今回、開腹手術後腹壁瘢痕ヘルニアに対しLVHR を 施行した2 例を経験したので報告する。 【症例1】72 歳、男性。直腸癌に対して開腹前方切除術後 10 年、肥満症例(BMI 32)。 CT で腹部正中切開瘢痕に 6x4cm のヘルニア門を認め、LVHR を施行した。 【症例2】83 歳、女性。胃癌に対し腹腔鏡補助下胃切除術後 13 年、回腸腸重積に対し開 腹回腸部分切除術後1 年。CT で下腹部正中切開瘢痕に 9x4cm のヘルニア門を認め、恥骨 上ヘルニアと診断しLVHR を行った。 【考察】当院での腹壁瘢痕ヘルニアの治療方針は①可能なかぎりヘルニア門を縫合閉鎖、 ②メッシュ固定は全層固定、Double crown 法の併用、③恥骨上ヘルニアに対しては Retzius 腔を開放し、恥骨へのタッキングを行っている。
16 演題9. 腹壁瘢痕ヘルニアに対する修復アプローチによる比較検討 ~開腹術と腹腔鏡手術~ 獨協医科大学 第一外科 ○倉山 英豪、佐々木 欣郎、里村 仁志、菊池 真維子、大塚 吉郎、小野寺 真一、 中島 政信、山口 悟、加藤 広行 【緒言】大きな腹壁瘢痕ヘルニア修復にはメッシュ法が一般的で、最近では腹腔鏡アプロ ーチも報告されている。 【対象と方法】2010 年 1 月~2015 年 5 月に腹壁瘢痕ヘルニアを修復した 29 例の内、ヘ ルニア門の長径が5cm 以上であったのは 14 例で、開腹メッシュ法(O 群)が 9 例、腹腔 鏡メッシュ法(L 群)が 5 例であった。成績を比較検討した。 【結果】手術時間はO 群 131 分:L 群 134 分(p=0.7895)で有意差を認めなかった。ヘ ルニア門長径はO 群 8.4cm:L 群 18.6cm(p=0.006)で、L 群で有意に大きかった。術後 在院日数はO 群 14.8 日:L 群 7.6 日と L 群で短かったが有意差はなかった(p=0.287)。 再発は O 群の 2 例(22.2%)に認められたが L 群には現在まで再発は認めていない (p=0.255)。 【結語】腹腔鏡アプローチは大きな腹壁瘢痕ヘルニアに対しても安全に施行可能で有用と 思われた。
17 演題10. POP-TANKO 式腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の定型化と治療成績 独立行政法人国立病院機構 宇都宮病院 外科1) 獨協医科大学 第一外科2)、群馬大学 病態総合外科3) ○滝田 純子1)、増田 典弘1)、芳賀 紀裕1)、勝又 大輔1)、柴崎 雄太1)、 高橋 雅一2)、中島 政信2)、山口 悟2)、加藤 広行2)、桑野 博行3) 【背景】当院では平成26 年 5 月より、細径鉗子を併用した TANKO 式腹腔鏡下鼠径ヘル ニア手術(POP-TANKO-Hernia)を導入、現在までに 55 例に施行した。その術式、手術 成績に関して報告する。 【対象と方法】平成26 年 5 月から 27 年 4 月までの 55 症例(男性 44 例、女性 11 例)。 年齢は22-86 歳(中央値 71 歳)。患者は手術台に対し右斜めとし、左手入れの体位で固定。 臍部縦切開にてEZ access port Mini-mini を装着、同部より 5mm port を 2 本挿入し、そ のうち一方から5mm のフレキシブルスコープを挿入、他方を energy device およびその ほかの5mm 鉗子に使用。左側腹部より Endo-Relief (持針器型)を刺入し working port と して使用し、これをplus one puncture (POP) と定義した。
【結果】 JHS1 型 37 病変、JHS2 型 15 病変、その他 8 病変。手術時間は JHS1 型で 42-115(中 央値68)min 、JHS2 型で 62-149(中央値 92)min、両側例および特殊なヘルニア(8 例) では70-202(中央値 101)min であった。術後合併症として再発を1例認め、JHS2 型の 症例において、メッシュの外側から JHS1 型で再発したものであった。術後在院日数は、 片側例・両側例合わせて1-11(中央値 4)日であった。
【考察】POP-TANKO-Hernia は、triangular formation を保ったままの視野で剥離縫合 手技が可能で、整容性に優れた手術であると考えられる。今後さらにenergy device の操 作制限の問題、術者の立ち位置、細径鉗子の挿入部位を検討し術式を確立していきたい。
18 演題11. TAPP 導入における当施設の試み 佐野厚生総合病院 外科 ○池田 篤、林 応典、横田 光央、迫 裕之、内田 寛、池田 謙、奥澤 星二郎 鼠径ヘルニアに対するTAPP 法は保険収載によって爆発的に全国へと広がっている。し かし、日本内視鏡外科学会の 2014 年アンケート調査によると、再発率や合併症は直接法 と比較して多いのも事実である。これは腹腔鏡下手術技術の進歩により各領域での手術手 技が向上したことで、さまざまなピットフォールのあるTAPP 法を安易に取り入れてしま っていることが影響していると考える。当施設では、胆嚢・胃・大腸の腹腔鏡下手術を行 っている。TAPP 法の術者経験のある医師がいないなかで、当施設が定型的となっている TAPP 法を安全に導入するまでに至る経験と試みについて報告する。
19 演題12. 当院での腹腔鏡下ヘルニア根治術の導入と手術定型化の取り組み 那須赤十字病院 外科 ○谷 紀幸、磯部 雄二郎、後藤 拓也、五十嵐 高広、川島 俊文、青木 真彦、 城戸 啓、小島 正夫、田村 光 【はじめに】当院では平成25 年より腹腔鏡下ヘルニア根治術(以下 TAPP)を導入した。 TAPP のみ施行された 39 例の短期成績と定型化を目指した取り組みについて検討する。 【症例】平成25 年 3 月より平成 27 年 6 月までに TAPP のみが施行された 39 例。下腹部 手術歴がない症例を適応とした。年齢平均63.7 歳。男性 38 例、女性 1 例。前期(平成 26 年 10 月まで)は超音波凝固切開装置を用い、後期はバイポーラー鉗子を凝固切開に用い た。メッシュは原則としてBARD 3D Mesh。吸収性タッカーにて固定。腹膜は 3-0VICRYL にて体内連続縫合とした。 【結果】手術時間は前期平均113.7 分、後期平均 95.8 分。出血は前期平均 3.6ml、後期平 均4.6ml。合併症は、前期、後期に seroma1 例ずつを認めた。前後期にともにクリニカル パスの逸脱をした症例は認めなかった。現在までに再発は認めない。 【考察】当院においてTAPP を安全に導入できていると考える。取り組んでいる術式定型 化に向けた試みをビデオにて供覧する。
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