J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 14, No. 2, pp. 5-17, 2001. 2
原
著
自然 流 産 後 の 女 性 の 心 理(2)
―
夫 の反応,妊 娠へ の思い,性 生活への思 いに焦点 を当てて―
Women's
Mental
States
after
Spontaneous
Abortion
(2)
•\
Focusing
on
Husbands'
Reactions
and
Women's
Feeling
for
Pregnancy
and
Sexual
Intercourse•\
竹 ノ上
ケイ子 (Keiko TAKENOUE)*1
佐
藤
珠
美
(Tamami
SATOH) *2
松
山 敏
剛
(Toshitaka
MATSUYAMA)
*3
要 約 流 産 後 の 女性49名 に対 して文 章 完成 法 を用 い,妻 の 目か ら見 た 夫(パ ー トナ ー)の 反 応,そ れ が 妻 に 与 えた影 響,妊 娠 へ の 思 い,性 生 活 へ の 思 い につ い て,直 後,3か 月 後,6か 月 後 の 縦 断 的 調 査 を 行 い,次 の結 果 を得 た。 1.多 くの 夫 が驚 き,シ ョ ック を受 け,悲 しん で い る様 子 が 妻 に よっ て記 述 され た。 2.半 数 以 上 の妻 が,夫 が 自分 と悲 しみ を共 有 して くれ た,思 い や っ て くれ た,支 えて くれ た,と 記 述 した 。 一 方 で,夫 へ の怒 りや 反感,気 持 ちの ず れ,申 し訳 な さや無 力感,寂 しさ,妻 の ほ うが 落 ち込 む夫 を思 い や り慰 め る例 もみ られ た。 3.夫 が 自分 と悲 しみ を共 有 し て くれ る,思 い や り,支 えて くれ る と感 じ られ る と妻 の悲 し み は 軽 減 し,癒 され て い た。 反 面,夫 は思 い や りが な い と感 じた妻 は夫 へ の怒 りや 反 感,気 持 ちの ず れ を感 じ て い た 。 4.1∼3の 結 果 か ら,夫 の 反 応 は妻 の悲 嘆 を進 め る方 向 へ も滞 らせ る 方 向 へ も影 響 す る と考 え られ た 。 5.流 産 を機 に よ り良 い関 係,よ り親 密 な関 係 を創 りあ げ た カ ップル が あ っ た。 6.妊 娠 を肯 定 的 に とら えて い る妻 が多 か った 。 同 時 に,人 知 を超 え る難 しい 出来 事,肯 定 と否 定 の混 在,妊 娠 や流 産 へ の 不 安 を記述 した人 も多 か った 。 これ らは時 間 経 過 と と もに,妊 娠 しな い こ とへ の*1米 国 ・ ミ ネ ソ タ 大 学 在 学 中 (School of Nursing, University of Minnesota, USA)
*2広 島 国 際大学 保健 医 療学 部看 護学 科 (Department of Nursing, Faculty of Health, Hiroshima International University)
*3中 村 学園 大学 家政 学部 食物 栄 養学 科 (Department of Food and Nutrition Nakamura Gakuen University)
自然流産 後 の 女性 の 心理(2) 焦 りや落 胆,無 事 出 産 した人 へ の 羨 望 な どに 変化 して い た 。 7.性 生 活 の再 開 につ い て 喜 び や幸 福 感 を記 述 した人 は 少 な く,身 体 回 復 へ の不 安,次 の妊 娠 や 流 産 へ の不 安 を抱 き なが ら性 生 活 を再 開 して い る人 が 多 か っ た。 これ らの結 果 か ら,医 療 者 は,妻 単 独 で な く,カ ップ ル双 方 が 当事 者 で あ る とい う認 識 を もち,夫 婦 両 方 の 流産 後 の心 理 や 相互 関係 を理 解 し,流 産 後1∼3か 月後 に 心理 面 の チ ェ ック を行 い,性 生 活 へ の 不安,次 の妊 娠 や 妊 孕性 喪 失 へ の不 安 の除 去 を含 め た カ ウ ンセ リ ン グや 指 導 教 育 が 必 要 で あ る こ とが示 唆 され た。 キ ー ワー ド 自然 流 産,カ ップ ル の心 理,妊 娠 へ の思 い,性 生 活 へ の 思 い Abstract
Japanese womens' and husbands' actual mental state after spontaneous abortion should be understand by health care providers. The purpose of this study is to explore husbands' reac-tions and women's feelings for pregnancy and having sexual intercourse after spontaneous abortion.
Forty nine women who have experienced spontaneous abortion and agreed to participate the survey were asked by sentence completion such as : "When my husband knew that our baby was not alive or when he noticed that I received the medical procedure after miscar-riage, his reaction was...," "I felt my husband's reactions like...," "I felt my husband's feelings and states were...," "When we had sexual intercourse for the first time after miscarriage, I felt like...," and "Pregnancy is...."
The following husbands' feelings and reactions after spontaneous abortion were described by women.
1. Many women described their husbands' (partners') shock, surprise, and sadness.
2. Over a half of the women described that they shared and sympathized sadness and loss with their husbands, and husbands helped women to soothe and supported their coping. At the same time, some women reported their anger, blame, antipathy, sorriness, helplessness, and loneliness. Some women supported their husbands.
3. If women felt as they shared sadness and loss with husbands or their husbands were sym-pathetic and supportive, the women's sadness were reduced, healed, and calmed down and vice versa.
4. These results indicate that husbands' responses influence the women's grief process either way to accelerate or to delay.
5. Some women described their relationship with husbands that it became better or more intimate after miscarriage than before.
6. Most of the women described positively about their feelings for pregnancy. At the same time, many women described their ambivalent feelings as they want to have a baby and they are afraid of repetition of miscarriage. These feelings changed to eagerness to be pregnant, disappointmemt, and envy toward a person who had had a beby.
7. Only few women described their happiness and delightfulness for resuming sexual activ-ities. Many women resumed sexual intercourse with fear for their physical recovery and anxiety that they might be pregnant or could not be pregnant and that they may repeat miscarriage.
These results suggest medical staffs that both miscarried women and their husbands need
自然 流産 後 の女性 の 心理(2)
psychological assessment within one to three months after spontaneous abortion and support system not only at hospitals but community.
Key Words spontaneous abortion, couple's feeling, feeling for pregnancy, feeling for sexual intercourse I緒 言 自然 流 産 した女性 の心 理 に は,夫(パ ー トナ ー を含 む 。以 下 同)の 影 響 が 大 きい で あ ろ うこ とは 容 易 に推 測 され る。 夫 が 妻 の 流産 を どの よ う に受 け止 め て い るか,ど の よ うな心 理 状 態 で あ るか に つ い て の研 究 は 欧 米 で は い く らか 見 ら れ る1ト3) が,わ が 国 で は ほ とん ど見 られ な い。 松 下4)は 自 然 流 産 を経験 した女 性 の 心 理 的環 境 因 子 に関 す る 調 査 を行 い,家 族 の役 割 の重 要 性 につ い て述 べ, 流 産 した妻 は夫 に対 して病 的 な,あ る い は通 常 の 怒 りを抱 くと報 告 して い るが,夫 の心 理 の詳 細 な 内容 に は 言及 して いな い。 朝 本5)は 流 産 を経 験 し た 夫婦 の精 神 的 打 撃 は大 きい ので,心 理 的 回復 過 程 へ の援 助,カ ウ ンセ リングが 重 要 で あ る と述 べ て い る が,夫 婦 が どの よ うな心 理状 態 に あ るか, そ の 内容 に は触 れ て い な い。 筆 者 らは 自然 流産 後 の女 性 の 心 理 に つ い て報 告 した6)∼8)が,本 報 は 自然 流 産 後 の 女性 の 心理(1)6) の続 報 で あ る。 妻 の 目か ら見 た 夫 の反 応 とそれ が 妻 に与 えた 影響,加 え て 自然 流産 した女 性 の 心 理 の う ち,夫 との関 係 に大 き く左 右 され る,妊 娠 に つ いて の 思 い,性 生 活 へ の 思 い に焦 点 を当 て,そ の 実 態 を報 告 す る。 II研 究 方 法 自記 式 調 査研 究 と した。 1.対 象 福 岡 市 内 のA総 合 病 院 で1997年1月 ∼8月 末 に 流産 後 処 置 を受 け た52名 中,研 究 へ の協 力 承 諾 が 得 られ た女 性49名 であ る。3か 月後 の デー タが 得 られ た の は23名,6か 月 後 は13名 で あ った 。 対 象 者 の 詳 細 は,す で に発 表 した論 文6)に 記 載 して い る。 2.調 査 内容 流 産 後 の 心 理 特 徴 が で き るだ け あ りの ま ま に 引 き出 され や す い よ うに工 夫 した文 頭 を置 き,そ れ に 引 き続 き文 章 を完 成 さ せ る文 章 完 成 法 を 用 い た。 その 他 の 調査 内容 の詳 細 は 文 献6)資 料1を 参 照 。 本 報 で は,「 赤 ち ゃ んが だ め ら しい(だ め だ っ た ら しい)こ とを知 っ た時,あ るい は流産 後 の夫 の 反 応 は 」,「そ の夫 の 反 応 をみ て 私 は 」,「最 近 の 夫 の 気 持 ち や 状 態 に つ い て,私 は 」,「妊 娠 は」, 「流 産 後 に,性 生 活 を 開 始 した 頃 の 私 は」 とい う 文頭 に 引 き続 く文 章 完成 法 に よ って得 られ た内 容 を報 告 す る。 3.調 査 方 法,調 査時 期 産 婦 人 科 外 来 お よび病 棟 で流 産(後)処 置,子 宮 内胎 児(胎 芽)死 亡 後 の処 置 を受 けた 女 性 の う ち,承 諾 を得 られ た女 性 を対 象 とし た(文 献6)を 参 照)。 4.デ ー タの 収集 と分 析 方 法,そ の 信 頼性,妥 当 性 得 られ た デ ー タ は,類 似 す る 内 容 ご と に 分 類 し,分 析 した。 今 回 使 用 部 分 の研 究 者 間 の分 類 一 致 率 は96.5%で あ った 。 一 致 しな か っ た もの に つ いて は研 究 者 間 で 討 議 し,意 見 の一 致 をみ た もの の み 分類 に加 え,意 見 が一 致 しな か っ た もの,解 釈 困難 な もの は その 他 に分類 した 。 本 調 査 に先 立 ち,流 産 経 験 の あ る看 護 職4名 を 対 象 に予 備 調 査 を行 い,内 容 の整 合 性,流 産 後 の 心理 が把 握 で き るか の検 討,質 問 内容 の追 加,削 減,表 現 上 の 不 備 につ い て の修 正 を行 っ た。 5.倫 理 面 へ の 配慮 研 究 趣 旨 を 口頭 お よび文 書 に て説 明 し,賛 同 を 得 られ た 人 を対 象 と した。 研 究 協 力 の諾 否 が 診 療 に影 響 し ない こ と,い つ で も研 究 へ の参 加 を 中止 で き る こ と,個 人 の プ ラ イバ シー に配 慮 す る こ と
自然 流産 後 の 女性 の心理(2) を説 明 した。 また,記 入 内 容 や 白紙 提 出 で対 象者 が 不 利 益 を被 らな い よ うに 無 記 名 とした 。 質 問紙 の郵 送 に際 し,内 容 が わ か らな い よ う にす る等 の 配 慮 を行 っ た。 本 調査 に先 立 ち,流 産 経 験 の あ る 看 護 職 者 に意 見 を聞 くと と もに,倫 理 委 員 会 に替 わ る もの と して,調 査 施 設 の 診 療 部 門 の 代 表 者, 看 護 部 門 の代 表 者 の 了解 を得 た 。 III結 果 1.自 然 流産 した 妻 の 目か ら見 た流 産 後 の 夫 の 反 応 とそ れ る対 す る妻 の 思 い 「赤 ち ゃん が だ め ら し い と知 っ た 時,あ るい は 流 産後 の 夫 の 反 応 は」 の 文 頭 に続 く記 述 か ら得 ら れ た 夫 の 反 応 を表1に,「 そ の 夫 の 反 応 を み て 私 は」 に続 く記 述 か ら得 られ た 夫 の 反 応 に対 す る妻 の 思 い を表2に 示 した 。 妻 の記 述 か ら得 られ た夫 の 反 応 と して,悲 しみ を共 有 し夫 と 自分(妻)が 相 互 に思 い や る様 子 の 記 述,夫 が 自 分 を思 いや っ て くれ て い る とい う記 述 が27名 で最 も多 か った 。 同時 に,驚 き,シ ョ ッ ク を受 け て妻 を 思 い や る余 裕 が な い と思 わ れ る 内 容 の 記 述 が10名 み られ た 。 冷 静,平 常 どお り,あ るい は弔 い の行 為 で癒 そ う と して い る様 子,他 の こ とで 代 償 して い る様 子,上 の子 ど もへ の配 慮 や 世 話 を し て い る様 子,不 機 嫌,解 って も らえ な い 等 の 記 述 も少 数 ず つ み られ た(表1)。 そ の よ う な夫 の 反 応 を見 た 妻 の 反 応 とし て,安 表1妻 の 目か ら見 た流 産後 の夫 の反 応 ()内 は記 入 者 数,N=46名 8 日本 助 産学 会 誌 第14巻 第2号(2001.2)
自然 流産 後 の女 性 の心 理(2) 表2流 産 後 の 夫 の 反 応 に 対 す る妻 の 思 い()内 は記入者数,N=46名 心 した,シ ョッ クが 和 らい だ 等 の肯 定 的 な記 述 が 22名 で最 も多 か った 。 不愉 快,少 しは 自分 をい た わ っ て欲 しい 等,怒 りや 非 難,反 感,気 持 ち の ず れ を記 述 した 人,落 ち着 い て 冷 静 に夫 の様 子 を記 述 した り,妻 の ほ うが 夫 を思 い や り励 ま し慰 め て い る様 子 の記 述,申 し訳 な い と思 った とい う記述 が そ れ ぞ れ1割 強,次 の妊 娠 に期待 して い る とい う記 述,無 力 感 を感 じた,寂 しい 等 の記 述 も少 数 ず つ み られ た(表2)。 以 上 よ り,流 産 後,夫 も驚 き,シ ョ ック を受 け て い る様 子 で あ る が,そ うい う状 況 の 中 で も半 数 以 上 の男 性 が妻 を思 い や っ て い る とい う こ とが 妻 の記 述 か ら明 らか に な っ た 。 そ の よ う な夫 の反 応 を見 て妻 は安 心 し,落 ち つ き,癒 され た が,夫 の 反応 に よっ て は怒 りや 非難,反 感,気 持 ち の ズ レ を感 じ る,申 し訳 な い と思 う,あ る い は妻 の ほ う が夫 を 思 い や り慰 め る例 もあ る こ とが わ か っ た 。
自然流 産後 の女性 の心理(2) 図1最 近の夫の気持 ちや状態 につ いての妻の思 い 2.自 然 流 産後 の 夫の 気 持 ちや 状 態 の 変 化 と妻 の 思 い 「最 近 の 夫 の 気 持 ち や 状 態 に つ い て,私 は 」 の 文 頭 に続 く記 述 か ら,最 近 の 夫 の気 持 ち や状 態 を 妻 が ど う見 て い るか,直 後,3か 月後,6か 月 後 と時 間経 過 を追 っ てみ る と図1の よ うに な る。 優 し く接 して くれ るの で感 謝 して い る,安 心 で きる,気 づ か って くれ るの で嬉 しい,頼 もし い, と肯 定 感 を も って 夫 を み て い る記 述 が,直 後46名 中23名,3か 月後22名 中9名,6か 月 後13名 中9 名 で,6か 月 後 に肯 定 感 を記 述 した 人 の 割 合 が 急 増 して い た 。 夫 が 自 己 中心 的 だ と思 う,も っ と力 に な っ て欲 しい とい う反 感 の記 述,感 謝 は して い る が 自分 の 方 が傷 つ い て い る と思 う等肯 定感 と反感 の混 在 す る記述 が直 後6名,3か 月後2名,6か 月後1名 で,図1で も明 らか な よ うに時 間経 過 と と もに減 少 して いた 。 申 し訳 な い と夫 との関 係 の 中 で 自責 感 を感 じ,夫 の 前 で は決 し て 悲 しい 表 情 を し な い,と 感情 を抑 圧 して い る様 子 を記 述 し た人 が 直 後5名,3か 月後1名 あ っ たが,6か 月 後 に は こ の よ うな 記 述 は なか っ た。 3.夫 の 反 応 が 妻 に与 えた 影 響 と妻 の 目か ら見 た 3か 月後 の 夫婦 関 係 「流 産 す る前 と比 べ て,最 近 の夫 と私 の 関係 は」 に続 く記 述 内容 か ら得 られ た,妻 の 目か ら見 た 夫 婦 の 関 係 を表3と して示 した。 3か 月 後,妻 の 目か ら見 て,23名 中3名 が お互 い を思 い や る気 持 ちが 深 ま り関 係 が 良 くな っ た, あ るい は,つ な が りを強 く感 じる よ うに な っ た と 記 述 した。 流産 前 と変 わ ら な い関 係 と記 述 した人 が15名,と て もい い 関係 だ と思 う,と 記 述 した 人 が3名 あ っ た。 自分 た ち の 関係 をあ ま りよ くない と記 述 した人 が1名,私 の 方 が わ が ま ま を言 う よ う に な った と記 述 した人 が1名 あ っ た。 図2は 流 産 直 後 の 夫 の反 応 とそ れ に対 す る妻 の 思 い の 関 連,そ れ ら と3か 月 後 の夫 婦 の関 係 の関 連 を図 示 した もの で あ る。 複 数 者 の記 述 が み られ た 内容(太 線)を 追 う と,夫 が 悲 しみ を共 有 し, い た わ り,優 し さ を示 す と妻 は安 心 し,落 ち つ き,癒 され て い た が,中 に は,申 し訳 な い と自責 感 を感 じた人,早 く次 の妊 娠 を した い と記 述 した 人 もい た。 夫 が冷 静 で落 ち つ い て お り,家 事 や 上 の子 の世 話 等 に協 力 的 で あ れ ば 妻 は 安 心 し,落 ち つ き,癒 され て い た。 夫 が 自分 を 思 い や っ て くれ な い と妻 が 感 じた 場 合 は,怒 りや反 感,気 持 ち の ズ レが 生 じ,あ る い は申 し訳 な い と感 じて い た。 ま た,夫 との 関 係 の 中 で 悲 しみ が薄 れ た,安 心 で きた,癒 され た と感 じた 場 合 は,流 産 前 と変 わ ら な い関 係 を持続,あ る い は流 産 前 よ り もよ い 関係 にな った と記述 され て い た 。 4.流 産 後 の 女性 の 妊 娠 へ の 思 い 流産 後 の女 性 の 心 理 の 一 部 と して,「 妊 娠 は」 の文 頭 に続 く記 述 内容 か ら得 られ た,流 産 直 後, 3か 月後,6か 月後 の妊 娠 へ の 思 い と時 間 経 過 に 伴 う変 化 の様 子 を図3に 示 した 。 流 産 直 後 に は,早 く次 の 妊 娠 を した い と期 待 し,妊 娠 を肯 定 的 に と ら えて い る人 が45名 中15名 あ った 。 自然 に任 せ る等,妊 娠 を人 知 を超 え る難 しい出 来 事 とみ て い る人 が5名,次 回 は心 身 共 に よ い条 件 で計 画 的 に妊 娠 した い,気 持 ち を整 理 し て考 えた い と考 慮 中 の人,迷 っ た り結 論 を先 延 ば 10 日 本 助 産 学 会 誌 第14巻 第2号(2001.2)
自然 流産 後 の女 性 の心 理(2) 表3流 産 す る前 と比 べ て,最 近 の夫 と私 の関係 は 3か 月 後 ()内 は記 入 者 数,N=23名 6か 月後 ()内 は記 入 者数,N=13名 し に して い る人 が5名 あ った 。子 ど も を持 つ こ と を諦 めた 人,あ る い は もう妊 娠 した くな い と記 述 した 人 が7名,妊 娠 に対 して 肯 定 と否 定 の相 反 す る感 情 が 混 在 す る人 が7名,流 産 繰 り返 しの不 安 を記述 した 人 が2名,そ の他 が4名 あ った。 これ ら は時 間 経 過 の 中 で 多様 に変 化 して い た。 3か 月 後,6か 月 後 も ほぼ 同様 の 結 果 で あ っ た が,既 に次 の 妊 娠 を して い る と記 述 した人 が,3 か 月後1名,6か 月 後1名 あ った 。3か 月後,6 か 月後 と時 間経 過 の 中 で,妊 娠 へ の期 待 や願 望 は 妊 娠 しな い た め の 焦 りや落 胆,無 事 に 出産 した人 へ の羨 望,あ るい は経 済 的,体 力 的 に可能 な ら妊 娠 を希 望 す る とい う よ うな条 件 つ きの 肯定 へ と変 化 し て い た。 以 上 の よ うに,流 産 後 の妊 娠 へ の思 い の 多 くは 肯 定 感 を もっ て記 述 され て い たが,肯 定 と否 定 の 混 在,妊 娠 や 流 産 へ の不 安,妊 娠 しな い こ とへ の 焦 りや 落 胆,無 事 出産 した人 へ の 羨望,あ る い は 人 知 を超 え る,自 分(人 間)の 力 の及 ぼ な い 出 来 事 と記 述 され,こ れ らは複 雑 に絡 み合 って 時 間 経 過 の 中 で変 化 す る こ とが 流 産 後 の 女性 の 記 述 か ら 明 らか に な っ た。 5.流 産 後 の 女 性 の 性 生 活 へ の思 い 流 産 後 の 女 性 の妊 娠 へ の 思 い と同 様 に,「 流 産 後 に性 生 活 を開 始 した こ ろの 私 は」 の文 頭 に続 く 記 述 内容 か ら得 られ た 流 産 後 の女 性 の性 生 活 へ の 思 い を 内 容 別 に分 類 した 。 そ の 結 果,1.流 産 繰 り返 しへ の 不 安,妊 娠 へ の 不 安,2.漠 然 と した 不 安,た め らい,没 頭 で き な い,3.拒 否 感,悲
自然 流産 後 の女 性 の 心理(2) 図2流 産 前後 の夫 の反 応が妻 に与 えた影 響 と3か 月後 の夫 婦 の関 係()内 は記入者数 注)太 線― は複 数 者 の記 述 が み られ た もの しみ,4.身 体 回復 の不 安,5.罪 悪 感,6.次 の 妊 娠 へ の 期 待 と焦 り,7.幸 福 感,8.流 産 前 と変 わ らな い,の8つ の カ テ ゴ リー に分 類 され た 。 そ の 記 入 者 数 の3か 月後,6か 月後 の 経 時 的 変 化 を図 4に 示 した。 性 生 活 の再 開 に つ い て,幸 福 感 や 喜 び を表 現 す る等 肯 定 的 に記 述 した人 も少 数 み られ た が,妊 娠 す る こ と,し な い こ とへ の不 安,流 産 繰 り返 しへ の不 安,そ の他 漠 然 と した不 安,自 分 自身 は そん な気 分 に な れ な か っ た けれ ど,何 度 も拒 否 す るわ け に は い か な い し,と い う よ う な 拒 否 感 や 悲 し み,身 体 回復 の不 安,罪 悪 感,等 を 抱 えた ま ま性 生 活 を再 開 して い る ケ ー ス が17名(3か 月 後 の 全 記 入 者 の80%)あ り,き わ め て 多 い こ とが 明 らか に な っ た。 身 体 回 復 の 不 安 は6か 月 後 に は 消 失 し,拒 否 感 や悲 しみ は減 少傾 向 が み られ た 。 しか し,流 産 繰 り返 しへ の不 安,漠 然 と した 不 安 や た め らい は6か 月後 に 至 っ て も記 述 者 の3割 以 上 あ り,減 少 して い な か っ た。 これ らの性 生活 へ の 思 い は,妊 娠 へ の 思 い と複 雑 に絡 ん で い た。 性 生 活 の再 開 にた め らい や 不 安 を もっ て い る人 も妊 娠 に は肯 定 的 で,早 く次 の 妊 娠 を した い,妊 娠 は嬉 しい もの と記 述 した人 が 多 か っ た。 性 生 活 の 再 開 を悲 しか った,辛 か った と 記 述 した人 は 妊 娠 へ の 思 い を,も う二度 と した く な い,と 否 定 的 に記 述 し,自 分 の身 体 が 元 に戻 っ て い るか 不安 だ っ た と記 述 した 人 は,子 ど もは欲 しい が また 同 じよ うに な った ら と不 安 も大 き い, と記 述 して い た 。 幸 福 感 を も っ て性 生活 を再 開 し た人 は3か 月 後 に妊 娠 して いた 。 また 罪 悪 感 を感 じた と記 述 した人 は,来 年 に で も妊 娠 した い と肯 定 的 に記 述 して い た 。 12 日本 助産 学 会誌 第14巻 第2号(2001.2)
自然 流産 後 の女 性 の心 理(2) 図3流 産直後 の妊娠 へ の思 いの変 化()内 は記入者数 注)太 線― は複 数 者 の記 述 が み られ た もの IV考 察 1.夫 の 悲 嘆,心 理 の理 解 の必 要 性 本 調 査 の 妻 の 目か ら見 た 流産 後 の夫 の反 応 は, 妻 の流 産 で 夫 が 受 けた影 響 とみ る こ とが で き,夫 の 心 理 が流 産 した女 性(妻)の 心 理 に大 き く影 響 し て い る こ とが 明 らか に な っ た 。Campbell9)は 流 産 とい う出来 事 は夫 や子 ど もを含 め た家 族 全 員 に影 響 を及 ぼ す と述 べ て い る が,中 で も夫 へ の影 響 が い ち ば ん大 きい と考 える。 夫 が受 け た影 響, 夫 の 悲 嘆,心 理 は直 接,あ る い は間 接 的 に妻 に影 響 す るの で,夫 の心 理,悲 嘆 を理 解 す る こ とは重 要 で あ る。 妻 の流 産 後 に夫 が 体 験 す る感 情 に っ い てMur-phy10)は,直 後 は シ ョ ッ ク,信 じ ら れ な い,動 転,無 力 感,希 望 等 を感 じる と し,後 に は怒 り, 精 神 的 な痛 み,フ ラ ス トレ ー シ ョ ン,苦 悩,罪 悪 感,心 配,無 感 覚,安 堵 感,孤 独 感,死 を悼 む感 情 等 を体 験 す る と報 告 して い る。 これ ら は本 調 査 で得 られ た 表1の 内容 とほ ぼ一 致 して い た 。 怒 り や 苦 悩,孤 独 感 の表 現 は ご く少 数 しか 記 さ れ て い な か っ たが,こ れ は 夫 が妻 に 表 現 して い な い,あ る い は妻 が 夫 の反 応 と して と ら え て い な い,ま た は記 述 しな か っ た た め で あ ろ う と思 わ れ,調 査 方 法 の工 夫,調 査 件 数 の増 加 に よ っ て は もっ と多 く
自然 流産 後 の女性 の心理(2) 図4流 産後 の性生 活へ の思 い み られ るの で はな い か と予 測 さ れ る。 夫 の心 理,悲 嘆 を理解 す る に は,上 記 の よ うな 夫 が体 験 す る感 情 を知 る こ と も重 要 で あ る が, 「妻 を支 え る とい う役 割 」 に つ い て の認 識 や 行 動 を 理 解 す る こ と も 重 要 で あ る。Murphyl1)は, 「男性 は妻 を支 え る た め に,強 く,タ フで あ る こ とを期 待 され るた め,悲 嘆 や 死 を悼 む感 情 を表現 した り他 者 と共 有 す る こ と は 少 な い」(p.329) と述 べ て い る。 また,身 体 的 な面 か ら流産 を体 験 す る こ との な い男 性 に は,パ ー トナ ー を支 え る こ とが 社会 的役 割 と して期 待 され,そ の こ とが 流産 後 の 男性 の心 理 の主 要 な部 分 を 占め る12)。 本 調 査 で半 数 以 上 の 夫 が 妻 と悲 しみ を共 有 し, あ る い は妻 を思 いや って い る とい う こ とが妻 の記 述 か ら明 らか に な った 。 「自 分 自身 悲 し い し,辛 い だ ろ うけ ど,今 は私 を支 えて くれ て い る」 等 が そ の例 で あ る。 妻 は夫 が 自分 をい た わ り,支 え て くれ るか ど うか を見 て お り,そ の よ うな反 応 が感 じ とれ る,あ る い は観 察 され る と多 くの妻 は安 心 し,癒 され た 。 この 「妻 を支 え る とい う役 割 」 に つ い ての 夫 の認 識 や行 動 を理 解 す る こ とは夫 の悲 嘆 の 主 要 な 部 分 を理 解 す る こ とに つ な が り,そ れ は直 接 ・間 接 的 に妻 に影 響 す るの で,ひ い て は流 産 後 の 女 性 の 心 理 の 理 解,適 切 な 援 助 に つ な が る。 本 調 査 で,妻 を思 い や る余 裕 が な い と思 わ れ る 夫 の 様 子 に つ い て の 記 述 が 約2割 み ら れ た。 Kimble13)は,新 生 児 死 亡 を 経 験 した 父 親 の 心 理 の研 究 の 中 で,「 女 性 の 方 が,よ り言葉 で 悲 嘆 を 表 現 す る」 と述 べ て い る。 ま た,May14)は 初 め て 父親 に な る人 た ち の妊 娠 受 け入 れ の 段 階 に は, ア ナ ウ ン ス メ ン ト(通 常 妊 娠12週 前 後),モ ラ ト リア ム(12-25週),フ ォー カ シ ン グ(25-30週) の3段 階 が あ る と述 べ,ア ナ ウ ンス メ ン トの 時期 に は多 くの 男 性 が ス トレ ス,あ る い は居 心地 の悪 さ を感 じる,モ ラ トリア ム の期 間 に は,妻 は既 に 身 体 的,感 情 的 な変 化 を体 験 し,妊 娠 へ の順 応, 適 応 を迫 られ,夫 の サ ポ ー トや 安 心 材 料 が欲 しい 時 期 で あ るの に,夫 は実 感 が な く,あ る い は対 処 法 が わ か らず,双 方 に とっ て ス トレ ス の 多 い時 期 で あ る と述 べ て い る。 今 回 の調 査対 象 の8割 以 上 が 妊 娠12週 以 前 で あ る こ と,子 ど も が い な い カ ップ ル が 約 半 数(47 %)で あ る こ とか ら考 え る と,多 くの夫 は ア ナ ウ ンス メ ン ト,あ るい はモ ラ ト リアム の時 期 で,妊 娠 と流産 を 同時 期 に知 ら され,二 重 に適 応 を迫 ら れ,妻 を思 い や る余 裕 が な い 人 も あ るの で は な い か と考 え られ る。 中 に は妻 の 悲 しみ を増 幅 す る よ うな気 が して面 と向 か っ て 自分 の 悲 し み を表 現 で きな い男 性,他 の こ とに紛 ら して しか 自分 の 悲 し み を表 現 で きな い男 性,仕 事 に没 頭 し て悲 し み を 癒 そ う とす る 男 性 も い る15)と 思 わ れ る。 また, 「 夫 は安 心 して い る と思 う」 とい う記 述 もみ られ た が,子 ど もを もつ心 構 えが十 分 で な い場 合 や 距 離 的 に離 れ て生 活 して い る場 合 に は安 堵 感 を感 じ た り,実 感 が な い夫 もあ る と思 わ れ る。 妻 が 流 産 した時 に,夫 が 安 堵 感 を感 じた り,無 関 心 で あ る と,妻 の悲 しみ を増 幅 しや す い 。 また その よ う な 夫 の態 度 は,非 難 の対 象 とな りや す く夫 婦 関 係 に 支 障 を来 しや す い。 妻 の 目 か ら見 た流 産 後 の 夫 の 反 応 と文 献 か ら, 夫 が体 験 す る感 情 や 夫 の 悲 嘆 につ い て述 べ たが, わ が 国 で は,妻 が流 産 した場 合 に夫 が 経 験 す る感 14 日本 助産 学 会誌 第14巻 第2号(2001.2)
自然流 産後 の女 性 の心理(2) 情 や夫 婦 の相 互 関 係 を含 め た 悲嘆 過 程 の研 究 はほ とん どな され て い な い。 本 調 査 で そ の一 端 が 明 ら か にな った が,妻 の記 述 に よ る夫 の反 応 で あ るた め,内 容 の詳 細 や 解 釈 に限 界 が あ る。 本 調 査 を契 機 と して,夫 も悲 嘆 を経 験 して い る と理 解 し,さ ら に妻 に影響 を与 え,妻 を支 え る重要 な キー パ ー ソ ン として,夫 婦 の相 互 関 係 を含 め た悲 嘆 過 程 の 詳 細 な研 究 を して い く必 要 が あ る。 2.カ ッ プル を対 象 と した流 産 後 の心 理 理 解 と援 助 の 必 要 性 本 調 査 で,流 産 した妻 の記 述 か ら多 くの カ ッ プ ル は3か 月後 に は よい 関係,流 産 前 と変 わ らな い 関係 で あ る こ とが わ か っ た。 流 産 に よる悲 しみ を 共有 し,互 い にい た わ り合 い,癒 しあ っ た結 果 で あ ろ う と思 われ る。 反 面,非 難 感 情 や 反感 を抱 いた り,感 情 を抑 圧 して い る様 子 を記 述 した女 性 や,3か 月後 にお 互 い の 関係 に つ いて,あ ま り良 くない と記 述 した 人 も少 数 あ っ た。 これ らは お互 い に感情 表 出が で き な い た め に,あ るい は妻 と夫 の悲 嘆 につ い ての 一 般 的 な知 識 が 不 十 分 で あ るた め に生 じた感 情 の す れ違 い や関 係 の 悪 化 で あ ろ う と考 え る。 援 助 者 は お互 い の感 情 表 出 を助 け,妻 と夫双 方 の悲 嘆 につ い て の知 識 や 援 助 に関 す る情 報 を提供 す る必 要 が あ る。 前 掲 のMurphy11)は,流 産 を 告 げ た 医 師 の 態 度 や,救 急 セ ンタ ー の ス タ ッフの対 応 に傷 つ い た と述 べ る男 性 が 多 い と述 べ,医 療者,救 急 セ ンタ ー の ス タ ッフ は流産 の事 実 を告 げ る際 の コ ミュニ ケ ー シ ョン技 術 や,患 者 や家 族 との対 応 の技 術 を 磨 くべ き であ る と述 べ て い る。Hugesら16)∼19)も 夫 へ の 情 報提 供 の不 足,意 志 決 定場 面 へ の 参 加 の 機 会 の 不 足,夫 へ の配 慮 の 不 十 分 さに つ いて 述 べ て い る。 これ らは 日本 の医 療 現場 の実 状 と酷 似 し て い る。 また一 般 的 に男 性 は流産 の原 因 を突 き止 め た い,状 況 を知 りた い と思 う傾 向が あ る。廊 下 で一 人 待 た され る等,情 報 を知 らされ ない と傷 つ き,悲 嘆 作 業 が 滞 る場 合 が あ る20)。 こ の よ うな 事 態 を避 け る た め に は,救 急時 で もカ ップル を一 単 位 と して扱 い,夫 を巻 き込 ん だ形 で 援 助 して い く必 要 が あ る。 本 調 査 で,少 数 で あ るが流 産 前 よ りも よい 関係 に な っ た と記 述 した 人 が あ った 。 夫 と妻 の 両 方 を カ ップ ル単 位 で援 助 の 対 象 とし,情 報 提 供 や 意 志 決 定,診 療 に参 加 させ,よ りよ い夫 婦 関 係 の 創 造 や夫 婦 双 方 の 人 間 的 な 成熟 を 目指 した援 助 が必 要 で あ る。 医 療 関 係 者 が 夫 婦 の相 互 作 用 へ の理 解 が な い場 合,感 情 の す れ違 い 等 に よ り夫 と妻 双 方 の 悲嘆 作 業 が 滞 り,流 産 を機 に 夫婦 関係 が悪 化 す る 可 能 性 もあ る。Murphyら21)は これ に備 え て, 夫 婦 双 方 に対 して 流産 後 の フ ォロ ー ア ップ シ ス テ ム を整 え る よ う推 奨 し,希 望 す る カ ップル に対 し て は地 域 で の 支援 シス テ ム も必 要 で あ る と述 べ て い る。 流 産 後 の 夫 婦単 位 の心 理 面 の チ ェ ックや フ ォ ロー ア ップ の シ ス テ ム が 十 分 で な い わ が 国 で は,今 後 これ らの シス テ ム を整 え て い く必 要 が あ る。 3.流 産 後 の 妊 娠 へ の思 い と性 生 活 妊 娠 へ の 思 い や性 生 活 へ の 思 い は,流 産 後 の 女 性 の心 理 の 重 要 な部 分 を なす もの と思 わ れ る。 ま た それ は夫 との 関係 の 中 で変 化 す る もの で あ ろ う と推 測 され る。 本 調 査 で 妊 娠 へ の 思 い と し て,直 後,3か 月 後,6か 月後 を通 じて約3割 以 上 の 人 が早 く次 の 妊 娠 を した い と期 待 し,妊 娠 を喜 ば しい もの と し て肯 定 的 に と ら えて い たが,子 ど もは欲 しい が も う妊 娠 した くな い と肯 定 感 と否 定 感 が 混 在 して い る人,迷 って い る人 も多 か っ た。 これ らは時 間経 過 と とも に,妊 娠 しな い こ とへ の 焦 りや落 胆,無 事 出産 した人 へ の羨 望 等 へ と変 化 し,複 雑 な感 情 が あ る こ とが 明 らか に な った 。 援 助 者 は この よ う な状 況 を理 解 す る必 要 が あ る。 性 生 活 の再 開 に つ い て は,幸 福 感 や 喜 び を表 現 した人 は少 な く,性 生 活 の 延 長 線 上 に あ る妊 娠 へ の 不 安,流 産 繰 り返 し へ の 不 安,身 体 回 復 の 不 安,拒 否 感 や罪 悪 感,等 を抱 えた ま ま性 生 活 を再 開 して い る様 子 が 多 く記 述 され て いた 。 多 少 の 不 安 は存 在 す るの が普 通 と も考 え られ るが,援 助 を 必 要 とす る不 安 もあ る もの と考 え る。 妊 娠 へ の 思 い,性 生 活 へ の思 い,夫 へ の思 い は 複 雑 に絡 み,時 間経 過 の 中 で,早 く子 ど もが 欲 し い とい う思 い,も う妊 娠 で きな い の で は な い か と い う焦 りや諦 め等 へ とさ まざ まに変 化 して い た。 「一 日 も早 く次 の妊 娠 を した い,不 妊 期 間 が 長 く
自然 流産 後 の女性 の心理(2) な れ ば な るほ ど,流 産 した こ とか ら本 当 の 意 味 で 立 ち直 る こ とが で き な い よ う な 気 が し て な ら な い 」 と記 述 した 人 が あ っ た が,Murphyら21)も, 次 の 子 ど もが生 まれ た後,悲 哀 や 喪 失 とい っ た感 情 が 癒 され た と報 告 した 男 性 の 例 を 紹 介 し て い る。 この よ うな状 況 を考 え る と,妻 と夫 の 両 方 に対 して,流 産 後1∼3か 月前 後 に,専 門 家 に よ る心 理 面 の チ ェ ッ ク を行 い,必 要 な人 に は カ ウ ン セ リ ン グ を行 う等 の援 助 体 制 を組 織 化 して い く必 要 性 を感 じ る。 日本 の現 状 か ら考 え る と,電 話 に よ る チ ェ ックや 相 談 活 動,あ るい は成 人 集 団 一 般 へ の 教 育 も必 要 で あ ろ う。 Wheat22)は 経 験 者 と して の 体 験 を も と に 流 産 後 に 妻 と夫 が ど う い う感 情 を体 験 す る か,自 分 (夫)の 悲 嘆 と妻 の悲 嘆 を ど う理 解 し,具 体 的 に ど う対 処 し,ど う妻 を支 え る と よい か等 を著 して い る。 妻 が 流 産 した場 合 に 日本 人 男 性 が 経 験 す る 感 情 や夫 婦 の相 互 関 係 を含 め た悲 嘆 過 程 の研 究 を 進 め る と と もに,日 本 人 男性 に合 っ た援 助 方 法 を 確立 して い く必 要 が あ る と考 え る。 そ の際,看 護 婦(助 産 婦)は もっ と主 導権 を もっ て病 院 の 中, あ るい は地 域 で,流 産 した カ ップ ル双 方 に か かわ って い くべ きで あ る。 V結 論 1.妻 の流 産 後,夫 も驚 き,シ ョッ クを受 け,悲 しみ,喪 失感 等 の悲 嘆 反 応 を示 す こ とが妻 の記 述 か ら明 らか に な っ た。 2.そ うい う状 況 下 で も半 数 以 上 の 夫 が妻 と悲 し み を共 有 し,妻 を思 いや り,支 えて い た。 一 方 で 夫 へ の怒 りや反 感,気 持 ちの ず れ,申 し訳 な さや 無 力感,寂 しさ を感 じる妻 もあ り,妻 の ほ うが 落 ち 込 む 夫 を思 いや り慰 め る例 も記 述 され た 。 3.夫 が 自分 と悲 しみ を共 有 して くれ る,思 いや り,支 えて くれ る と感 じ られ る と妻 の 悲 しみ は 軽 減 し,癒 され て い た。 反 面,夫 は思 いや りが ない と感 じた 妻 は夫 へ の怒 りや 反 感,気 持 ちの ず れ を感 じて い た 。 4.上 記1∼3よ り,夫 の反 応 は妻 の悲 嘆 を進 め る方 向 へ も滞 らせ る方 向 へ も影 響 す る と考 え ら れ た。 5.流 産 を機 に よ り良 い 関係,よ り親 密 な関 係 を 創 りあ げ た カ ップ ル が あ った 。 6.流 産 後,妊 娠 へ の思 い を肯 定 的 に表 現 した 人 が 多 か った が,人 知 を超 え る難 し い出 来 事,否 定 感 情,肯 定 と否 定 の相 反感 情,妊 娠 や 流産 へ の 不 安 等 を記 述 した 人 も多 か った 。 これ らは時 間 経 過 と と も に 妊 娠 し な い こ とへ の 焦 りや 落 胆,無 事 出産 した 人 へ の 羨 望 等 に 変 化 して い た 。 7.性 生 活 へ の 思 い は,妊 娠 ・流産 へ の不 安,漠 然 とした 不 安 や た め らい,拒 否 感 ・悲 しみ,身 体 回 復 へ の 不 安,罪 悪 感,次 の妊 娠 へ の期 待 と 焦 り,幸 福 感,流 産 前 と変 わ らな い,の8つ の カ テ ゴ リー に分 類 され た。 全 記 入者 の8割 が不 安 を表 現 し,性 生 活 の延 長 線 上 に あ る妊 娠 と絡 ん だ不 安 が 多 くみ られ た。 以 上 よ り,夫 の悲 嘆 を夫 婦 の相 互 関 係 を含 め て 理 解 す る必 要 性 が 明 らか に な っ た 。 そ の上 で カ ッ プル 双 方 が 当事 者 で あ る とい う認 識 を もち,で き る だ け すべ て の情 報 を夫 と妻 の 両 方 に知 らせ,カ ップル 双 方 を意 志 決 定 に参 加 させ る等,夫 を巻 き 込 ん だ形 で援 助 して い く必 要 が あ る こ と,産 婦 人 科 的 な チ ェ ック だ け で な く,双 方 の 心理 状 態 をチ ェ ック す る シ ス テ ム,性 生 活 再 開 へ の 不安,次 の 妊 娠 や流 産 へ の不 安,妊 孕 性 喪 失 へ の 不 安 の 除去 を含 め た カ ウ ンセ リ ング や指 導教 育 が 必 要 で あ る こ とが示 唆 され た。 本 研 究 の 限界 と して,今 回 得 られ た 夫 の 反 応 は す べ て妻 の記 述 か ら得 られ た もの で,間 接 的 な も の で あ る。 例 数 も少 な い 。 今 後,男 性 に直 接 質 問 す る方 法 で,例 数 も増 や し,流 産 を経 験 した 男性 の 心理 の更 な る詳 細 な 実 態,男 女 の悲 嘆 の違 い, あ るい は個 々 の 悲 嘆 の 強 さや 特 徴 を測 定,あ る い は解 釈 す るた め の ス ケ ー ル 開 発 等 を行 い,そ の成 果 を臨 床 で 応 用 して い く必 要 が あ る。 謝辞 研究 に当た り快 く研 究協 力 を承 諾 くだ さ った 皆様, また デー タ収 集 に協力 いた だ いた 木原 由美子 婦 長 さ ん,熊 谷 三 津子 さん,太 田純 代 さん,病 院 スタ ッフ の皆様 に感 謝 し ます。 16 日本 助 産 学 会 誌 第14巻 第2号(2001.2)
自然 流産 後 の女性 の心理(2)
本 研 究 の 要 旨 は第13回(1999),14回 日本 助 産 学 会 学 術 集 会(2000)に お い て 発 表 した 。
引用 文献
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