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産後1か月の母親に関する育児適応に影響を与える要因の検討

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資  料

日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 21, No. 2, 71-76, 2007

日本赤十字北海道看護大学(Japanese Red Cross Hokkaido College of Nursing)

2007年3月25日受付 2007年11月16日採用

産後1か月の母親に関する育児適応に

影響を与える要因の検討

Factors influencing childcare adaptation

in one-month-old babie’s mothers

田 中 和 子(Kazuko TANAKA)

* 抄  録 目 的  研究目的は産後1か月の母親の育児適応に影響を与える要因を明らかにする。 対象者および方法  1か月健診に来院し,研究参加の同意を得られた母親275名を対象に無記名自記式調査票を配布し, 調査を実施した。 結 果  調査票の全ての回答を得られた母親226名を分析対象とした(有効回答率82.2%)。有効回答者の内訳 は,初産婦120名(53.1%),経産婦106名(46.9%)であった。設定した30項目と属性で関連のみられた 2項目の32項目を独立変数として強制投入法による重回帰分析を行った。結果,育児適応に明確に関連 していた項目が明らかになった。 1.初産婦の育児適応には『あやすのがつらい』,『育児が楽しい』,『お風呂入れがつらい』,『育児に慣れた』, 『気持ちの通じあう人がいる』の5項目が関連していた。重相関係数は,R=0.84であり,調整済み決 定係数は,R2=0.59であった(p<0.001)。 2.経産婦の育児適応には『思うようにしてくれる人がいる』,『赤ちゃんの空腹のサインに早く気づくこ とができる』,『育児に慣れた』,『夜間子育てを手伝ってくれる人がいる』の4項目が関連していた。重 相関係数は,R=0.78であり,調整済み決定係数は,R2=0.43であった(p<0.001)。 結 論  育児適応を高めるためには,母親が育児に慣れたと感じられるよう育児技術の支援を早期から行うこ と,夜間の育児支援および情緒的サポートが得られるような環境整備の必要性が示唆された。また,赤 ちゃんの泣きの対応を支援することが重要であることがわかった。 キーワード:産後1か月の母親,育児適応,要因

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This study was aimed to determine the factors which have an influence on childcare adaptation in one-month-old babies' mothers.

Subjects and Methods

Subjects were two hundred and seventy five mothers who came to hospital to have their one-month-old babies undergo a regular medical check-up. They were first asked to participate in this research and then those who con-sented to cooperate were handed out a questionnaire. They were not asked to write their names on the question-naire sheets.

Results

Two hundred seventy five subjects produced a total of two hundred and twenty six valid responses (82.2%), of which one hundred and twenty (53.1%) were from primiparae and one hundred and six (46.9%) were from multipa-rae. Including thirty two independent variables, two of which were found related to each other in an attribute, a mul-tiple linear regression analysis was conducted on the collected data using a compulsory input method. It was found that as for primiparae, five independent variables were associated with childcare adaptation (R=0.84, R2=0.59, and

p<0.001). They were "baby nursing is tough," "childcare is enjoyable," "bathing a baby is tough," "you have adjusted to life as a parent," and "you have a person who understands you." As for multiparae, four independent variables were found to be associated with childcare adaptation (R=0.78, R2=0.43, and p<0.001). They were "You have a very

helpful person," "You can perceive your baby being hungry quickly," "You have adjusted to life as a parent," and "You have a person who helps you with childcare during the night."

Concl us ion

To help mothers better adjust to life as a parent, providing them the following points is emphasized as all key in importance: practical childcare skills which enable them to feel in the early stage of child rearing that they have ad-justed to life as a parent, assistance with childcare in the nighttime, emotional support, and coping skills for dealing with crying babies.

Key Words : one-month-old babies' mothers, childcare adaptation, factors

Ⅰ.緒   言

 厚生労働省は2000年に「健やか親子21」で4つの主 要課題をあげ,母子保健の取り組みの方向性を示し ている(厚生統計協会, 2004)。中でも,子どもの心の 安らかな発達の促進と育児不安の軽減は近年報道され ている社会問題である虐待に関する取り組みとしても 重要である。子どもの出生後,環境などが変化するこ とから,家族の適応過程にはソーシャルサポートな ど多様な要因が影響し,適応を促進する看護援助を 確立することが重要であると報告されている(大月& 森,2002)。そして,周産期に関わる助産師は妊娠期 から母親の状態を把握することが望まれる。育児適応 を把握することが育児困難の早期発見および育児支援 へのひとつの手立てとなり,ひいては虐待予防につな がるのではないかと考え,平成16年乳児健診に来院 する第1子をもつ母親を対象に子育てに関する調査を 実施した。その結果,乳児をもつ母親における育児適 応に影響する要因を明らかにすることができた(田中, 2007)。しかし,子どもの月齢に応じて少しずつ影響 要因が異なることが明らかになったため,より具体的 な育児支援を導き出すために,本研究では産後1か月 の母親を対象者とし,調査を実施した。

Ⅱ.研 究 目 的

 産後1か月の母親に関する育児適応へ与える要因を 明らかにする。

Ⅲ.研 究 方 法

1.調査対象  A病院の1か月健診に来院し,調査の同意を得られ た母親。 2.調査期間  平成17年7月∼平成18年3月 3.倫理的配慮  データは統計的に処理し,個人が特定されないこと, また,回答は自由意志であることを説明した。得られ たデータは研究終了後シュレッダーにて破棄し,研究

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産後1か月の母親に関する育児適応に影響を与える要因の検討 以外では使用されないこと,漏出しない旨を伝え同意 を得た。さらに,本研究は研究者の所属する大学の倫 理委員の審査を受け,承認された。 4.調査内容  「育児適応」と影響要因とした。  「育児適応」には,産褥育児生活肯定感尺度(島田他, 2003)19項目を開発者に許可を得て使用した。  影響要因には,先行研究(田中,2004)で得られた 影響要因をもとに,「看護成果分類」(Marion Johnson, 2000)の中の「母乳栄養確立」,「子どもの気質認知」(川 井他,2001),「育児行動に関する苦痛」,「情緒的支援 ネットワーク」(宗像,1986),「自尊感情」(山本&松井, 1982)について,信頼性・妥当性の明らかにされてい る既存の尺度35項目および自作の質問5項目から相関 の高いもの23項目を選択した。  「育児の楽しさ」「育児の慣れ」「子どもへの愛着(2項 目)」「妊娠経過の満足感」「経済的なゆとり」「分娩経過 の満足感」の7項目を加え30項目で構成した。  属性は,「母親の年齢」「父親の年齢」「母親の仕事」 「夜間の子育て手伝い」「妊娠の計画性」「子どもの栄養 方法」「分娩回数」「家族形態」「子どもの出生時体重」の 9項目を追加し,全58項目の質問紙を作成した。 5.調査方法  1か月健診に来院した母親に研究の主旨を伝え,調 査の協力を得た母親に自記式無記名調査票を配布し, 記入後封筒に入れてもらい,回収箱を用いて調査票を 回収した。 6.用語の定義  「育児適応」:出産した母親が赤ちゃんという新たな 家族をむかえ,新たな生活の過程において子どもや育 児生活に対して肯定的な感情をもつこと。 7.測定尺度  本研究の育児適応の定義内容と尺度の内容がほぼ一 致していること,さらにこれらの項目に対して成育看 護の教員および修士課程を修了した臨床助産師5名で 内容妥当性を検討した上で島田らが開発した産褥育児 生活肯定感尺度を使用することにした。産褥育児生活 肯定感尺度は,「親としての自信」「自己肯定感」「生活 適応」「夫のサポートに対する認識」の4因子から構成 されている。尺度の信頼性はクロンバッハα=0.81で ある。妥当性については,第1因子「親としての自信」 と一般性セルフエフィカシー尺度(GSES)で構成概念 妥当性を検証されている。 8.分析方法  分析は基本的統計量を算出し,SPSSVer15.0を用い, 重回帰分析を行った。

Ⅳ.結   果

 調査票275名配布中231名回収(回収率84%)であり, 「産褥育児生活肯定感尺度」と設定した5要因「母乳栄 養確立」,「子どもの気質認知」,「育児行動に関する苦 痛」,「情緒的支援ネットワーク」,「自尊感情」の項目 で欠損値のない226名を解析対象とした(有効回答率 82.2%)。解析対象者の背景(表1)は,母親の年齢が, 21∼29歳が1名(6.4%),30~39歳が205名(90.7%),40 歳以上が16名(7.1%),無回答が4名(1.8%)であった。 父(パートナー)の年齢は,30~39歳が199名(88.1%), 40歳以上が22名(9.7%),無回答が5名(2.2%)であっ 表1 対象者の背景 N=226 項 目 人 % 母親の年齢 20歳未満 21∼29歳 30∼39歳 40歳以上 無回答 0 1 205 16 4 0 6.4 90.7 7.1 1.8 父(パートナー)の年齢 20歳未満 21∼29歳 30∼39歳 40歳以上 無回答 0 0 199 22 5 0 0 88.1 9.7 2.2 仕事 あり なし 無回答 33 192 1 14.6 85.0 0.4 子どもの体重 2500g以上 2500g未満 無回答 193 32 1 85.4 14.2 0.4 夜間子育ての手伝い あり なし 無回答 136 89 1 60.2 39.4 0.4 分娩回数 初めて(初産) 2回以上(経産) 120106 53.146.9 家族形態 核家族 複合家族 無回答 202 18 6 89.4 7.9 2.7 妊娠の計画性 あり なし 無回答 181 44 1 80.1 19.5 0.4

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子どもの出生時体重は,2500g以上が193名(85.4%), 2500g未 満 が32名(14.2%), 無 回 答 が1名(0.4%) だった。夜間子育て手伝い者の有無は,ありが136名 (60.2%),なしが89名(39.4%),無回答が1名(0.4%) だった。分娩回数は,初産120名(53.1%),2回以上の 経産婦106名(46.9%)だった。家族形態は,核家族が 202名(89.4%),複合家族が18名(7.9%),無回答が6 名(2.7%)だった。妊娠の計画性については,計画性 ありが181名(80.1%),計画外が44名(19.5%),無回 答が1名(0.4%)であった。 1.産後1か月の母親の育児適応  産褥育児生活肯定感尺度から総得点を算出した結果, 全体の平均値61.2点,初産婦の平均値59.7点,SD7.8, 経産婦の平均値62.7点,SD8.4であり,全体の最小値 36点,最大値82点であった。構成されている4因子別 の得点を表2に示す。その値は,Kolmogorov-Smirnov 検定で正規性が認められた。  産褥育児生活肯定感尺度の下位尺度,「親としての 自信」「自己肯定感」「生活適応」「夫のサポートに対す る認識」の4因子はいずれも,初産婦と経産婦の2群に おいて有意差が認められた(p<0.01)。 2.育児適応と各項目との関連 1 )育児適応と属性との関連  設定した属性9項目のうち分娩回数(r=0.20,p< 0.01),夜間子育ての手伝いの有無(r=0.20,p<0.01), 妊娠の計画性(r=0.15,p<0.05)の3項目が育児適応 と関連が認められた(表3)。 2 )育児適応と関連がみられた要因  「育児適応」を従属変数,設定した30項目と属性で 関連がみられた3項目のうち分娩回数を除く2項目を 独立変数とした強制投入法による重回帰分析をした結 果を初経産婦別に以下に示す(表4-1,4-2)。 ①初産婦において関連がみられた要因  最も関連が強かったのは『あやすのがつらい』であ が楽しい』がβ=0.27(p<0.001),『お風呂入れがつ らい』がβ=­0.18(p<0.05),『育児に慣れた』がβ= 0.17,『気持ちの通じある人がいる』がβ=0.16であっ た。重相関係数は,R=0.84であり,調整済み決定係 数は,R2=0.59であった(p <0.001)。多重共線性は みられなかった。 ②経産婦において関連がみられた要因  最も関連が強かったのは『思うようにしてくれる人 表2 産褥育児生活肯定感尺度平均得点 項 目 親としての自信 自 己 肯 定 感 生 活 適 応 夫 に 対 す るサ ポ ー ト 認 識 産褥育児生活肯定感 尺 度 得 点 初 産 婦 経 産 婦 15.316.9 22.324.0 14.614.4 7.57.4 59.762.7 表3 産褥育児生活肯定感と各項目との関連    (ピアソンの相関係数) N=225 項    目 r p値 妊娠の計画性 母の年齢 父(パートナー)の年齢 仕事の有無 夜間の子育て手伝いの有無 子どもの栄養方法 分娩回数 子どもの体重 家族形態 0.15 ­0.20 ­0.16 ­0.121 0.20 0.04 0.20 0.001 ­0.02 * N.S N.S N.S ** N.S ** N.S N.S **:P<0.01 *:P<0.05 N.S:not significant 表4-1 育児適応と32項目との関連(初産婦) N=120 目的変数:産褥育児生活肯定感 項      目 β あやすのがつらい 育児が楽しい お風呂入れがつらい 育児に慣れた 気持ちの通じ合う人がいる ­0.42 0.27 ­0.18 0.17 0.16 重回帰分析(強制投入法)  説明変数:32項目 重相関係数(R)0.84   調整済み決定係数(R2) 0.59 表4-2 育児適応と32項目との関連(経産婦) N=106 目的変数:産褥育児生活肯定感 項       目 β 思うようにしてくれる人がいる 赤ちゃんの空腹のサインに早く気づくことができる 育児に慣れた 夜間子育てを手伝ってくれる人がいる 0.33 0.23 0.23 0.22 重回帰分析(強制投入法)    説明変数:32項目 重相関係数(R)0.78   調整済み決定係数(R2) 0.43

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産後1か月の母親に関する育児適応に影響を与える要因の検討 がいる』であり,β=0.33(p<0.05),次に『赤ちゃん の空腹のサインに早く気づくことができる』で,β= 0.23(p<0.05)だった。3番目に関連がみられたのは『育 児に慣れた』でβ=0.23,次に『夜間子育てを手伝っ てくれる人がいる』がβ=0.22であった。重相関係数は, R=0.78であり,調整済み決定係数は,R2=0.43であっ た(p<0.001)。多重共線性はみられなかった。

Ⅴ.考   察

1.産後1か月の母親の育児適応  産褥育児生活肯定感尺度の総得点は,初産婦よりも 経産婦の方が高かった。構成している因子別に得点を みると「親としての自信」「自己肯定感」については経 産婦のほうが高く,「生活適応」,「夫に対するサポート の認識」はほぼ同じ得点であった。これは,恵美須ら (2003)の研究結果と同様の結果である。島田他(2001) によると産後1か月の母親において,初産婦は経産婦 より疲労感と育児に対する自信喪失感があり,有意差 があったことを明らかにしている。本研究結果からも 「親としての自信」「自己肯定感」「生活適応」「夫に対す るサポートの認識」においてすべて有意差が認められ たことから,初産婦は特に親としての自信が持てるよ うにするなどの育児支援を強化することが重要である とわかった。 2.育児適応に関連がみられた要因 1 )初産婦  最も関連の強かった要因は『あやすのがつらい』で あり,あやすことがつらいということが育児適応を妨 げる要因になっていた。子どもをあやすという行為は 母親と子どもとの相互交渉であり,子どもの反応を確 かめながらする行動である。自分の子どもが生まれる まで小さな子どもと接したことがない女性が6割いる 現代社会(山本他,1999)では,あやす行為そのものが 子どもの泣きへの対応でもあり,養育行動の中で大き な位置を占めると考えられる。竹中他(1999)は母親 の疲労度と子どもの泣き易さは正の相関があり,子ど もが泣き易いことや身体のリズムが安定していないこ とは母の疲労感につながり,子どもとの相互作用に反 映すると述べている。飯田他(2003)は,特に出産後 2ヶ月までの初産婦は経産婦に比較して乳児の泣き声 が何を要求しているかわからずオロオロしていたとい う結果を報告している。このようにあやすことがつら いと認識することで母親は疲労するため,育児適応に マイナスの影響を及ぼすと考えられる。次に高かった のは『育児が楽しい』であり,育児をすることが楽し いと感じているほど育児適応を高めていた。また,『お 風呂入れがつらい』と思っている人ほど育児適応は低 く,毎日慣れないお風呂入れすることで育児が負担と なり,育児適応を妨げると考えられる。次に『育児に 慣れた』と感じることが育児適応を高めていた。我部 山(2002)によると育児に慣れた時期は,初産婦6.3か月, 1経産婦4.5か月,2経産婦3.0か月で初産婦が有意に遅 かったと育児に慣れた時期と分娩回数が育児適応に関 連していることを報告している。育児期の新たな環境 や物事について経験・時間を重ねることで知識や技術 として会得され,それが慣れたという認識になり,自 信につながるのであろう。初めての育児では新たな体 験が多く,うまくできないとマイナスの感情へ移行し やすいと考えられる。そのため,慣れたという認識を しているほど育児適応が高まったと考えられる。次に 関連のみられた『気持ちの通じあう人がいる』が高かっ た理由として,初めての体験が多い育児期に自分の気 持ちを理解してもらえるということが母親の精神的疲 労の緩和につながり育児適応が高まったと考えられる。 2 )経産婦  育児適応と最も関連が強かった要因は『思うように してくれる人がいる』であり,育児中の母親は自分の 思うようにしてくれる人の存在が育児適応を高める要 因になっていた。宗像は,自分の思うようにしてくれ る人がいることを情緒的支援のひとつとしており,こ の支援によって緊張緩和,安心感・信頼感が得られ, 自信が高まる効用が得られるとしている(宗像, 2003)。 そのため,育児している母親に自分の思うようにして くれる人がいる場合,サポートに対する安心感が得ら れ,情緒的なニードが満たされ精神的に安定するため 育児適応が高まると考えられる。次に高かったのは『赤 ちゃんの空腹のサインに早く気づくことができる』で あり,赤ちゃんへの対応が早期にできることが母親の 自信につながり育児適応を高めたと考えられる。3番 目は『育児に慣れた』であり,育児の経験を繰り返す ことにより次第にコツをつかみ,その場面に対応でき るようになる。慣れることで精神的に余裕が出てくる だけではなく,時間的余裕にもつながることから育児 生活を肯定的に受け止めることになり,育児適応が高 まると考えられる。4番目に関連の高かった要因は『夜 間子育てを手伝ってくれる人がいる』であり,夜間子

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は眠っていた夜間の時間帯であっても子どもが泣くた びに対応することが必要となる。夜間育児を支援して くれる人がいる場合,育児における心身の負担が軽減 するため育児適応が高まると考えられる。

Ⅵ.結   論

 産後1か月の母親の育児適応に関連する要因が明ら かになった。 1 .産褥育児生活肯定感尺度の総得点は,初産婦より も経産婦の方が高得点であり,4つの下位尺度すべ てにおいて初産婦と経産婦で有意差が認められた。 2 .初産婦の育児適応に関連する要因として『あやす のがつらい』,『育児が楽しい』,『お風呂入れがつら い』,『育児に慣れた』,『気持ちの通じあう人がいる』 の5項目が得られた。 3 .経産婦の育児適応に関連する要因として『思うよ うにしてくれる人がいる』,『赤ちゃんの空腹のサイ ンに早く気づくことができる』,『育児に慣れた』,『夜 間子育てを手伝ってくれる人がいる』の4項目が得 られた。  これらのことから,育児適応を高めるためには,母 親が育児に慣れたと感じられるよう育児技術の支援を 早期から行うこと,夜間のサポートおよび情緒的サ ポートが得られるような環境整備の必要性が示唆され た。また,赤ちゃんの泣きの対応へ支援することが重 要であることがわかった。さらに,経産婦よりも初産 婦に対する育児支援の強化が望まれる。 謝 辞  本研究の調査を進めるにあたりご尽力いただきまし た医療機関の皆様方ならびにアンケートにご協力いた だきました皆様方に,また,統計学に関してご指導い ただきました日本赤十字北海道看護大学中岡教授に心 より感謝いたします。 定感に関する検討,基盤研究C(2)研究成果報告書, 23-25. 大月恵理子,森恵美(2002).第2子出生に伴う家族の適応 過程,日本母性看護学会誌, 2(2), 31-40. 我部山キヨ子(2002).産後の育児に関する研究,母性衛生, 43(2), 314-320. 川井尚,庄司順一,千賀悠子他(2001).子ども総研式・ 育児支援質問紙(ミレニアム版)の手引きの作成,日 本子ども家庭総合研究所紀要(37),159-180. 厚生統計協会(2004).国民衛生の動向,廣済堂,90-119. Marion Johnson, Meridean Maas, Sue Moorehead (2000)

/藤村龍子,江本愛子他監訳(2003).看護成果分類 (NOC)第2版,3-30,東京:医学書院. 宗像恒次(2003).行動科学からみた健康と病気,メジカ ルフレンド社,205-207. 宗像恒次,仲尾唯治,藤田和夫他(1986).都市住民のス トレス源と精神健康度,精神衛生研究, 32, 47-68. 島田真理恵,恵美須文枝,高橋弘子他(2003).産褥育児 生活肯定感尺度改訂に関する研究,日本助産学会誌, 16(2), 36-45. 島田三恵子,渡部尚子,神谷整子他(2001).産褥1か月間 の母子の心配事と子育て支援のニーズに関する全国調 査,小児保健研究, 60(5), 671-679. 竹中和子,下見千恵,片山美香他(1999).新生児期にお ける母子形成を促す看護,看護学統合研究,1巻1号, 56-60. 飯田美代子,宮里和子(2003).「わたしの育児日記」利用 者の育児に関する心配ごとと育児日記との関連,母性 衛生, 44(2), 250-259. 田中和子(2007).育児適応に影響を与える要因の検討, 母性衛生,47(4), 554-562. 乳児をもつ育児適応とその影響要因,日本赤十字北海道看 護大学修士論文. 山本真実,中谷茂一,熊井利広(1999).子ども家庭福祉 施策の評価に関する考察(2),日本子ども家庭総合研 究所紀要,239-257. 山本真理子,松井豊(1982).認知された自己の諸側面の 構造,教育心理学研究,64-68.

参照

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