*千葉県立保健医療大学(Chiba Prefectural University of Health Sciences)
2009年10月21日受付 2010年10月15日採用
資 料
助産師の出産・育児と就業継続の関連要因
—就業継続状況に焦点をあてて—
Factors related to pregnancy, childcare
and work continuation among midwives
—Focusing on work continuation status—
北 川 良 子(Ryoko KITAGAWA)
* 抄 録 目 的 本研究の目的は,病院に勤務する助産師が,妊娠・出産・育児をしながら就業を継続していくために 必要な要因について明らかにすることである。 対象と方法 産科・産婦人科を標榜している336の病院に勤務する,妊娠中もしくは0歳から小学校卒業までの子 どもを養育している助産師1,469名を対象に,郵送法による無記名自記式質問紙を用いた量的横断的記 述研究である。調査内容は,属性,対象者の健康状態,家族・家庭環境,子ども・保育環境,職場環境, 仕事意欲等である。分析方法は各調査項目と『今までの就業継続状況(就業継続群と一時離職群)』『今後 の就業継続予定(継続希望群と退職考慮群)』との関連を検討した。 結 果 調査票の回収数は986部(回収率は67.1%)であり,有効回答数は951(有効回答率96.5%)であった。 対象者の平均年齢は36.8 5.2歳,子どもの平均人数は1.96人で2人が一番多かった。仕事意欲測定尺度 得点の平均値は58.7 8.6であった。『今までの就業継続状況』と実父母・義父母の理解・協力の間に有意 差が多く見られた。『今後の就業継続予定』では家族の協力・理解との間に有意差はほとんど認められず, 職場環境要因の職場の働きやすさ・仕事と育児の両立しやすさ,上司の理解,モデルとなる助産師の存 在において有意差が認められた。 結 論 病院に勤務する助産師が,妊娠・出産・育児をしながら就業を継続していくために重要な要因は,助 産師本人の高い仕事意欲と家族の理解・協力を前提に,育児と仕事の両立しやすい職場環境と上司の理 解が就業継続を決定付ける上で重要な要因であることが示唆された。 キーワード:助産師,育児,就業継続,職場環境,仕事意欲Ⅰ.序 論
近年,女性の高学歴化と社会進出により,経済的自 立や自己実現を求め仕事を続けながら妊娠・出産・育 児を希望している女性が増加している。また少子・高 齢社会の中で国は将来の労働力を確保するために女性 の就業を前提とした,仕事と家庭の両立ができるよう な社会基盤の整備を進めてきており,様々な法律や施 策が施行された(内閣府,2006a)。しかし勤労女性が 子どもを産み育てやすい環境整備は不十分であり,少 子高齢化が急速に進む中で企業には従業員の仕事と子 育て両立を支援する取り組みが求められている(内閣 府,2006b)。また男女共にワーク・ライフ・バランス という考え方に関心が高まり,女性においては「仕事 と家庭との両立」というライフコースを理想とするも のが増加している(内閣府,2006c)。一般女性および 看護職である母親達が仕事と育児の両立を図るために 必要なものとして,本人の努力や夫・家族のサポー ト,および両立しやすい職場環境が重要であり,その 上に多種多様な充実した子育て支援サービスなどの 社会資源の重要性について先行研究で明らかにされて いる(小川・野口・松村,2005;佐々木・門脇・山内, 2004;大木,2003;野村・脇田・妹尾他,2003;中・ 久納・飯島,2002;本間・中川,2002)。 一方,全国的に分娩を取り扱う産科医療機関は減少 の一途を辿り,産科医療の危機的な状況は大きな社会 問題になっている。その原因の一つとして産科医・助 産師不足があげられている(日本産婦人科学会,2006)。 「助産師問題について考える会」に所属する助産師関 係7団体が厚生労働大臣に提出した要望書において(日 本看護協会,2006), 早急かつ総合的な助産師確保対 策の促進 が明記されており,助産師の就業支援は急 務であると考えられる。この様な状況である今日にお いて,就業継続を希望している助産師が自らの妊娠・ 出産・育児のためにやむを得ず就業を断念する事がな いような社会環境,職場環境等の整備が必要不可欠で あると考える。助産師は専門職であるため自らの出産 ・育児の経験は必要ないが,助産師は看護師と比べて Abstract PurposeThe aim of the present study was to clarify important factors affecting hospital midwives' decision to continue working while pregnant, after giving birth, and while providing childcare.
Methods
Subjects comprised 1469 midwives working at 336 hospitals with an Obstetrics and Gynecology Department. Subjects were either pregnant or providing childcare for children between the age of 0 and graduation from elemen-tary school. A quantitative cross-sectional descriptive study was conducted using anonymous self-administered questionnaires distributed by mail. Survey content included subject attributes and health status, family and home environment, child and child-care environment, working environment, and motivation to work. Analysis was con-ducted to investigate the relationship between each survey item and "status of work continuation to date (continued work group and temporarily left job group)", and "intentions regarding future work continuation (hoping to con-tinue group and considering leaving group)".
Results
A total of 986 questionnaires were collected (response rate, 67.1%), of which 951 were valid (valid response rate, 96.5%). The mean age of subjects was 36.8 ± 5.26 years and the mean number of children was 1.96 with most subjects having 2 children. The mean score on the Work Motivation Scale was 58.7 ± 8.68. A highly significant dif-ference was observed between "status of work continuation to date" and the understanding and cooperation of par-ents and parpar-ents-in-law. No significant difference was seen between "intentions regarding future work continuation" and family understanding and cooperation; however, a significant difference was observed regarding workplace environmental factors of good working conditions, the ease of balancing working and childcare, the understanding of superiors, and the presence of other working-mother midwives as role models.
Conclusion
These findings suggest that a working environment in which it is easy to balance working and childcare, and the understanding of superiors are important factors affecting the decision of hospital midwives who are pregnant or are providing childcare to continue working. Strong personal motivation of the midwife and the understanding and cooperation of the family constitute prerequisites for continuing to work.
人的要因】,所属部署,上司・同僚の理解等,出産・ 育児と就業を両立しやすい職場環境等の【職場環境要 因】,子育てに関する社会資源が充実しているか等の 【社会的要因】,計3つの要因が導き出された。よって, 妊娠・出産・育児をしながら就業継続している助産師 には以上の3つの要因があると考え,以下のような質 問項目を設定した。 1 )個人的要因 家族からのソーシャルサポート(荒木・大石・岩 木他,2001),家族形態(佐々木・田辺・木下,2000), 働く母親の認識と対処(三橋・森・前原,1999),子ど もの育児状況(野村・脇田・妹尾他,2003),男性の 育児・家事(本保・八重樫,2003;中添・船越・白石, 2003)があると考え,「対象者の属性(年齢,職位,採 用職種,勤続年数,免許取得後の就業状況,健康状 態)」,「家族・家庭環境」,「子どもの人数,年齢,保育 ・養育環境」等を設定した。家族・家庭環境は家族形 態の他,夫の育児家事の参加状況,実父母・義父母 の育児の支援状況等を4段階評定尺度にて尋ね得点が 高いほど家族からの支援が多いように設定した。また 出産・育児が助産師を継続する上で貢献するという認 識(伊藤・岩崎,2009)を確認するために,「妊娠・出 産・育児の経験は仕事を続ける上でプラスになる」と, 両立できているかの認識を確認するために「妊娠・出 産・育児と仕事の両立ができている」という2項目を3 段階評定尺度で尋ねた。 出産・育児期の助産師の仕事意欲を測定するために 「看護師の仕事意欲測定尺度」を使用した。佐野・山 口(2005)が開発した尺度で,「現在の仕事に向ける意 欲」と「将来的な仕事に向ける意欲」の2下位尺度15項 目から構成されている。本尺度は病院に勤務する看護 師を対象に開発されている尺度であり,内容の検討か ら病院に勤務する助産師の仕事意欲の測定に妥当であ ると考え本尺度を用いた。1点(全く思わない)から,5 点(非常に思う)の5段階評定尺度で構成されており, 仕事意欲が高いほど得点が高くなるように設定されて いる。本尺度の構成概念の確認のため,得られたデー タにて因子分析(主因子法,バリマックス回転,固有 値1.0以上により因子を決定)を行ったところ,開発者 と同様に2因子が抽出された。第1因子(現在の仕事に 向ける意欲)は10項目,第2因子(将来的な仕事に向 ける意欲)は5項目からなる2下位尺度15項目構成で あった。Cronbachのα係数は,尺度全体は0.933,第 1因子は0.937,第2因子は0.836であった。 出産・育児が職業キャリアに貢献すると認識している 割合が高いという報告(伊藤・岩崎,2009)から,出産 ・育児を経験することで就業継続意欲を促進させるこ とが予測される。助産師は看護師よりも専門性が高く, 出産・育児期にある助産師の就業を支えキャリアを有 効に活用していくことは今日の産科医療の現場では必 要不可欠であると考える。しかし妊娠・出産・育児期 にある助産師を対象に就業継続の実態を分析した研究 や全国規模で行った研究は見当たらなかった。助産師 の就業支援は急務であるため,看護職に含めた調査で はなく助産師別個で出産・育児期にある助産師の就業 状況および,就業継続に必要な要因を明らかにする必 要がある。 そこで本研究は病院に勤務する,出産・育児期にあ る助産師が就業を継続していくために必要な要因につ いて明らかにすることを目的に本研究を行った。
Ⅱ.用語の操作的定義
1.今までの就業継続状況 助産師免許取得後通年で就業している助産師を「就 業継続群」,何らかの理由により一時離職した経験の ある助産師を「一時離職群」とした。 2.今後の就業継続予定 今後も就業継続を希望している助産師を「就業継続 希望群」,何らかの理由により退職を考慮しているも の「退職考慮群」とした。Ⅲ.研 究 方 法
1.研究デザイン 横断的量的記述研究デザイン。 2.研究対象者 妊娠中もしくは0歳から小学生までの子どもを養育 しながら病院に勤務する助産師とした。 3.測定方法 出産・育児と就業継続に関する調査項目を設定し た。先行研究と文献検討から勤労女性および看護職の 出産・育児と就業継続を可能にする要因について検討 した。その結果,家族の支援状況や対象者の年齢・職 位,仕事に対する意欲等,助産師個々の要因である【個2 )職場環境要因 就 業 し や す い 職 場 環 境(佐 々 木・ 門 脇・ 山 内, 2004;大西,1999)が出産・育児と就業継続のために は重要であると考え,職場環境,勤務部署,希望部署 の配属か否か,勤務形態,雇用形態,現在の職場で の勤務継続の意思(選択式),時間外労働・残業時間, 通勤手段と時間,職場の働きやすさ,両立しやすい職 場か,同僚・上司の理解の有無,有給休暇取得状況等 を設定した。4段階評定尺度を用い得点が高いほど働 きやすく両立しやすい職場であるようにした。 3 )社会的要因 勤労女性への育児支援の必要性(小川・野口・松村, 2005;大木,2003)があると考え,使用している育児 支援サービス(児童手当,乳幼児医療費助成制度,保 育園,学童保育,時間外保育,休日保育,夜間保育等) の使用状況について設定した。 4.プレテスト 調査項目の妥当性の検討と回答所要時間の調査する 目的で,0歳から小学生までの子どもを養育しながら 病院に勤務している助産師10名を対象に無記名自記 式質問紙を配布,郵送法にて予備調査を行った。質問 紙の回答所要時間と質問への答えやすさを考慮し,質 問項目の一部を修正した。 5.データ収集方法 1 )調査期間 2007年7月∼9月。 2 )調査方法 (1)調査協力病院の標本抽出方法 ジャパンDIC社の全国の産科・産婦人科を標榜し ている病院の名簿(病院要覧2003∼2004年版をベース に作成されており,年に1回見直しを行っているもの) より,多段抽出法を用いて抽出を行った。病院要覧は 2003∼2004年版を最後に発行されていないこと,及 び分娩の取り扱いのある病院1,273施設の公表はされ ていないため,本名簿を用い全国の産婦人科もしくは 産科を標榜している1,748の病院を都道府県別に多段 抽出法を用いて957病院を抽出した。 (2)各病院への調査協力の依頼 抽出した957の病院へ研究協力依頼状と返信用葉書 を同封し,郵送にて調査協力の依頼を行ったところ, 561の病院より回答を得,336の病院より調査協力を得 た。 (3)調査票の配布と回収方法 調査協力病院へ「調査票配布のお願い」と対象者の 人数分の無記名自記式質問紙を郵送し,看護部より対 象者への配布を依頼した。調査対象者個人に対し,研 究の趣旨を記載した「アンケート調査へのご協力のお 願い」と「調査票」および「返信用封筒」を一部ずつ封 筒にセットしたものを合計1,469部配布した。回収は 対象者各自より個別に郵送法にて直接回収とした。 6.分析方法 記述統計,クロス集計後の検定にはχ2検定を用い た。クロス集計にて度数5以下のセルがある場合は, 集約してからχ2検定を行った。平均値の差の検定に は対応のないt検定を用い,有意水準は5%未満を有 意差ありとした。データの入力・統計処理・分析には, 統計ソフトSPSS15.0Jを用いた。 7.倫理的配慮 調査協力病院に対し研究の趣旨,方法を紙面にて説 明した。調査協力は調査協力病院および,調査対象者 各自の自由意志であり,施設・個人等が特定されるこ とがないよう,調査対象者個人において記入後に封を し,郵送法にて回収した。また回答内容は統計的処理 を行うとともに研究の目的以外には使用しない,調査 対象者個人にはこの旨を記載した「アンケート調査へ のご協力のお願い」を添付し郵送による回収をもって 研究の同意が得られたと判断した。 本研究の計画書は,東邦大学大学院医学研究科看護 学専攻研究倫理審査委員会の審査を受け承認を得た (承認番号 第06-11号)。
Ⅳ.結 果
調査票の配布数は1,469部,回収数986部(回収率 67.1%),うち有効回答数は951部(96.5%)であった。 最初に対象者全体の背景について述べ,その後「今ま での就業状況(就業継続群と一時離職群)」および,「今 後の就業予定(就業継続希望群と退職考慮群)」と各要 因との関連について述べる。 1.対象者の背景 対象者の平均年齢は36.8 5.2歳であった。年齢区分 に分けると36∼40歳が299名(31.6%)と一番多く,次いで31∼35歳が278名(29.4%),であった。職位は, 一般スタッフが754名(79.7%)であった。採用職種 は助産師として採用されているものは793名(84.4%), 助産師免許を持っているが看護師として採用されてい るものは148名(15.6%)であった。助産師としての勤 務年数は11.6 5.7年であった。免許取得後継続して就 業しているもの680名(71.5%),出産・育児のため一 時退職したことがあるもの165名(17.4%),その他の 理由で就業していない時期があるもの92名(9.7%)で あった。今後も就業継続を予定しているものは847名 (91.0%),退職を考慮しているものは84名(9.0%)で あった。対象者の近頃(ここ1ヵ月)の健康状態として, 「健康である・まあ健康である」は763名(80.3%),「健 康管理に留意している」849名(89.3%)と回答してい たが,約8割に寝不足及び疲労感の蓄積が認められた。 勤務形態として夜勤を行っているものは790名 (83.9%),日勤のみ152名(16.1%)であった。 子どもの平均人数は1.9人 0.8であり,2人が424人 と一番多かった。子どもの平均年齢は7.2歳 4.4であ った。婚姻状況は,既婚者901名(94.7%)であった。 家族形態は,核家族689名(72.5%),拡大家族262名 (27.5%)であった。 社会資源の使用状況は「児童手当」を使用している ものが733名(77.1%)と一番多く,「乳幼児医療費制度」 が609名(64.0%),「認可保育園」が455名(47.8%)と 続いた。「学童保育・放課後ルーム」が271名(28.5%), 「病児病後児保育」が64名(6.7%),「夜間保育」を使用 しているものは39名(4.1%)であり,利用件数の平均 は3.1件であった。また育児に関する社会資源を全く 使用していないと回答したものは90名(9.5%)であっ た。 「妊娠・出産・育児の経験は仕事を続ける上でプラ スになる」は, そうである 905名(95.1%), どちら とも言えない は35名(3.7%), そうではない は11 名(1.2%)であった。 「妊娠・出産・育児と仕事の両立ができている」は, 出来ている 561名(59.2%), どちらとも言えない は281名(29.7%), 出来ていない は105名(11.1%)で あった。 仕事意欲測定尺度の得点の平均値は58.7 8.6,最小 値25,最大値75(尺度の取り得る範囲15∼75)であっ た。下位尺度の「現在の仕事に向ける意欲」は38.4 6.5, 「将来的な仕事に向ける意欲」20.2 2.9であった。 2.今までの就業継続状況(就業継続群と一時離職群) と各要因との関係 1 )個人的要因 (1)対象者の背景と仕事意欲 年齢,家族形態との間に有意な差は認められなかっ た。助産師勤続年数(t=3.294, p=0.001),施設勤続年数 (t=13.222, p=0.000),部署勤続年数(t=9.478, p=0.000), は有意差が認められた。「妊娠・出産・育児の経験は 仕事を続ける上でプラスになる」および「妊娠・出産 ・育児と仕事の両立ができている」は両群間で有意差 はなかった。仕事意欲においては仕事意欲測定尺度得 点に有意差は見られなかった(表1)。 (2)家族環境 夫の家事状況(χ2=9.093, p=0.028)は,有意差が認め られたが,夫の育児状況と精神的支持,仕事と家庭の 両立の応援については,有意差はなかった。 実父母の育児協力(χ2=11.003, p=0.001)と仕事と家 庭の両立応援(χ2=16.331, p=0.001),および義父母の育 児協力(χ2=10.575, p=0.001)と仕事と家庭の両立の応 援(χ2=9.081, p=0.001)には有意差が認められたが,実 父母および義父母との関係に有意差は認められなかっ た。子どもの人数に有意差は認められなかった(表2)。 2 )職場環境要因 (1)勤務環境 職位(χ2=15.156, p=0.001),夜勤の有無(χ2=39.919, p=0.000),雇用形態(χ2=123.378, p=0.000),時間外労 働時間(t=3.944, p=0.000)に有意差が認められ,採用 職種,所属部署,希望部署において有意差はなかった (表3)。 (2)職場環境 職場の仕事と育児の両立のしやすさ(χ2=23.593, p=0.000),仕事と育児を両立していくことへの上司 の理解(χ2=9.646, p=0.022),勤務表への希望の考慮 (χ2=13.790, p=0.003),有給休暇・年次休暇の取得(χ2= 14.193, p=0.003),に有意差が認められた。職場の働き やすさ,同僚の理解,モデルとなる助産師の存在にお いて意差は認められなかった。(表3) 3 )社会的要因 社会資源の使用件数は就業継続群3.1件,一時離職 群3.0件であり(t=0.402, p=0.688)有意差はなかった。
3.今後の就業継続予定(就業継続希望群と退職考慮 群)と各要因との関係 1 )個人的要因 (1)対象者の背景と仕事意欲 年齢と家族形態との間に有意差はなかった。「妊娠 ・出産・育児の経験は仕事を続ける上でプラスにな る」(χ2=6.015, p=0.049)はおよび「妊娠・出産・育児と 仕事の両立ができている」(χ2=45.903, p=0.000)は両群 間で有意差が認められた。仕事意欲測定尺度におい て就業継続希望群と退職考慮群間では尺度全体の得点 (t=5.298, p=0.000)および,下位尺度の「現在の仕事に 向ける意欲」(t=5.188, p=0.000),「将来的な仕事に向け る意欲」(t=3.971, p=0.000) ともに有意差が認められた (表1)。 (2)家庭環境 夫の育児状況・家事状況・精神的支持について有 意差はなく,夫の仕事と家庭の両立の応援の有無 (χ2=5.392, p=0.020)は有意差が認められた。実父母・ 義父母の理解・協力のすべての項目において,有意差 は認められなかった。 子どもの人数(χ2=6.248, p=0.044)において有意差が 認められた(表2)。 2 )職場環境要因 (1)勤務環境 すべての項目において,有意差はなかった。 (2)職場環境 職場の働きやすさ(χ2=10.160, p=0.017),職場の仕事 と育児の両立しやすさ(χ2=25.530, p=0.000),両立して いくことへの上司の理解(χ2=17.777, p=0.000),モデル になる助産師の存在(χ2=9.565, p=0.003)に有意差が認 められた。同僚の理解,勤務表への希望の考慮,有給 年次休暇取得状況,子どもが病気時の休暇に有意差は なかった。(表3) 3 )社会的要因 社会資源の使用件数は両群3.1件(t=0.068, p=0.946) であり有意差は見られなかった。 表1 【個人的要因】対象者の背景と仕事意欲 項 目 今までの就業継続状況 統計量 p値 今後の就業継続予定 統計量 p値 就業継続群 一時離職群 継続希望群 退職考慮群 n=680 n=257 n=847 n=84 年齢 37.0 5.1 37.2 5.3 t= -0.903 0.367 36.9 5.2 36.2 5.3 t= 1.171 0.242 助産師勤続年数 15.1 5.6 10.6 5.9 t= 3.294 0.001 11.7 5.8 11.8 5.4 t= -0.203 0.839 施設勤続年数 11.1 5.9 5.5 5.1 t=13.222 0.000 9.6 6.3 9.2 5.3 t= 0.573 0.567 部署勤続年数 7.7 5.4 4.1 4.1 t= 9.478 0.000 6.8 5.4 6.1 4.5 t= 1.021 0.308 家 族 形 態 核家族 496(52.9%) 182(19.4%) χ2=0.517 0.514 613(65.8%) 58(6.2%) χ2=0.440 0.802 拡大家族 184(19.6%) 75( 8.0%) 234(25.1%) 26(2.8%) 妊娠・出産・育児の経験は仕事を続ける上でプラスになる n=680 n=257 n=847 n=84 そうである 653(96.0%) 239(93.0%) χ2=3.850 0.146 810(95.6%) 76(93.0%) χ2=6.015 0.049 どちらとも言えない 20( 2.9%) 14( 5.4%) 29(3.4%) 5(6.0%) そうではない 7( 1.0%) 4( 1.6%) 8(1.0%) 3(3.5%) 妊娠・出産・育児と仕事の両立ができている n=676 n=257 n=844 n=84 そうである 415(61.4%) 140(54.5%) χ2=3.790 0.150 519(61.5%) 30(35.7%) χ2=45.903 0.000 どちらとも言えない 188(27.8%) 86(33.5%) 249(29.5%) 27(32.1%) そうではない 73(10.8%) 31(12.0%) 76(9.0%) 27(32.1%) 仕事意欲測定尺度 n=680 n=257 n=847 n=84 尺度全体 58.7 8.5 58.4 9.3 t= 0.516 0.606 59.2 8.4 54.0 10.2 t= 5.298 0.000 現在の仕事に向ける意欲 38.5 6.3 38.1 7.1 t= 0.889 0.374 38.7 6.3 34.9 7.6 t= 5.188 0.000 将来的な仕事に向ける意欲 20.2 2.9 20.3 3.0 t= -0.241 0.810 20.4 2.8 19.0 3.5 t= 3.971 0.000
表2 【個人的要因】家族環境 今までの就業継続状況 χ2値 p値 今後の就業継続予定 χ2値 p値 就業継続群 一時離職群 継続希望群 退職考慮群 夫 育児の実施状況 n=613 n=235 n=765 n=77 頻繁に実施 308(50.2%) 96(40.9%) 7.793 0.050 657(85.9%) 67(87.0%) 0.074 0.785 時々実施 229(37.4%) 97(41.3%) あまりしてない 66(10.8%) 35(14.9%) 108(14.1%) 10(13.0%) 全く実施してない 10( 1.6%) 7( 3.0%) 家事の実施状況 n=635 n=239 n=787 n=79 頻繁に実施 215(33.8%) 67(28.0%) 9.093 0.028 261(33.2%) 20(25.3%) 3.722 0.293 時々実施 254(40.0%) 88(36.9%) 306(38.9%) 37(46.8%) あまりしてない 120(18.9%) 54(22.6%) 155(19.7%) 13(16.5%) 全く実施してない 46( 7.2%) 30(12.6%) 65(8.3%) 9(11.4%) 仕事と家庭の両立の応援 n=607 n=240 n=787 n=79 充分応援 559(92.1%) 211(87.9%) 3.629 0.057 724(92.0%) 66(83.5%) 5.392 0.020 だいたい応援 あまりしてない 48( 7.9%) 29(12.1%) 63(8.0%) 13(16.5%) 全くしてない 精神的支持 n=629 n=238 n=780 n=79 あり 526(83.6%) 196(82.4%) 0.201 0.654 654(83.8%) 64(81.0%) 0.420 0.517 なし 103(16.4%) 42(17.6%) 126(16.2%) 15(19.0%) 実 父 母 育児協力 n=586 n=227 n=750 n=75 はい 444(75.8%) 145(63.9%) 11.003 0.001 548(73.1%) 49(65.3%) 2.039 0.153 いいえ 142(24.2%) 82(36.1%) 202(26.9%) 26(34.6%) 仕事と家庭の両立の応援 n=585 n=229 n=758 n=75 充分応援 387(66.2%) 121(52.8%) 16.331 0.001 721(95.1%) 67(89.3%) 4.470 0.54 だいたい応援 176(30.1%) 87(38.0%) あまりしていない 15( 2.6%) 13( 5.7%) 37(4.9%) 8(10.7%) 全くしていない 7( 1.2%) 8( 3.5%) 関係 n=585 n=227 n=761 n=75 良好 566(96.8%) 217(95.6%) 0.520 0.914 731(96.1%) 72(96.0%) 0.001 0.980 良好でない 19( 3.2%) 10( 4.4%) 30(3.9%) 3(4.0%) 義 父 母 育児協力 n=544 n=211 n=688 n=74 はい 360(66.2%) 112(53.1%) 10.575 0.001 427(62.1%) 45(60.8%) 0.045 0.833 いいえ 184(33.8%) 99(46.9%) 261(37.9%) 29(39.2%) 仕事と家庭の両立の応援 n=541 n=209 n=692 n=74 充分応援 228(42.1%) 65(31.1%) 9.081 0.028 274(39.6%) 27(36.5%) 1.584 0.663 だいたい応援 236(43.6%) 103(49.3%) 311(44.9%) 35(47.3%) あまりしていない 50( 9.2%) 24(11.5%) 71(10.3%) 6( 8.1%) 全くしていない 27( 5.1%) 17( 8.1%) 36( 5.2%) 6( 8.1%) 関係 n=543 n=210 n=698 n=74 良好 473(87.1%) 178(84.8%) 2.362 0.501 602(86.2%) 66(89.2%) 0.497 0.481 良好でない 70(12.9%) 32(15.2%) 96(13.8%) 8(10.8%) 子 ど も 人数 n=656 n=253 n=823 n=82 1人 215(32.8%) 77(30.4%) 1.534 0.821 258(31.2%) 35(42.7%) 6.248 0.044 2人 302(46.0%) 115(45.5%) 384(46.4%) 27(32.9%) 3人以上 139(21.2%) 61(24.1%) 181(21.9%) 20(24.4%)
表3 【職場環境要因】勤務環境・職場環境 項 目 今までの就業継続状況 統計量 p値 今後の就業継続予定 統計量 p値 就業継続群 一時離職群 継続希望群 退職考慮群 勤 務 環 境 職位 n=679 n=256 n=845 n=84 一般スタッフ 519(76.4%) 224(87.5%) χ2=15.156 0.001 670(79.3%) 68(81.0%) χ2=0.229 0.892 主任・係長 127(18.8%) 22( 8.6%) 136(16.1%) 13(15.5%) 師長以上 33( 4.9%) 10( 6.9%) 39( 4.6%) 3( 3.6%) 採用職種 n=673 n=255 n=838 n=83 助産師 559(83.1%) 224(87.8%) χ2=3.208 0.073 707(84.4%) 71(85.5%) χ2=0.079 0.778 看護師 114(16.9%) 31(12.2%) 131(15.6%) 12(14.5%) 所属部署 n=680 n=257 n=847 n=84 産科・産婦人科病棟・外来 418(61.5%) 164(63.8%) χ2=0.924 0.630 521(61.5%) 50(59.5%) χ2=0.383 0.826 産科を含む混合病棟・外来 210(30.9%) 77(30.0%) 261(30.8%) 26(31.0%) 産科・産婦人科以外の病棟・外来 52( 7.6%) 16( 6.2%) 65( 7.7%) 8( 9.5%) 部署の希望 n=680 n=257 n=847 n=84 希望とおり 586(86.2%) 222(86.4%) χ2=0.007 0.935 729(86.1%) 70(83.3%) χ2=0.470 0.493 希望ではない 94(13.8%) 35(13.6%) 118(13.9%) 14(16.7%) 勤務形態 n=680 n=257 n=847 n=84 夜勤あり 602(88.5%) 183(71.2%) χ2=39.919 0.000 708(83.6%) 74(88.1%) χ2=1.154 0.283 日勤のみ 78(11.5%) 74(28.8%) 139(16.4%) 10(11.9%) 雇用形態 n=677 n=257 n=817 n=80 正職員 657(97.0%) 187(72.8%) χ2=123.378 0.000 735(90.0%) 75(93.8%) χ2=1.193 0.275 パートその他 20( 3.0%) 70(27.2%) 82(10.0%) 5( 6.2%) 時間外労働時間 n=679 n=256 n=847 n=84 56分 40 44分 36 t=3.944 0.000 52分 40 55分 36 t=-0.621 0.535 職 場 環 境 職場の働きやすさ n=678 n=254 n=843 n=84 働きやすい 130(19.2%) 67(26.4%) χ2=6.874 0.076 183(21.7%) 12(14.3%) χ2=10.160 0.017 どちらかといえば働きやすい 461(68.0%) 159(62.6%) 561(66.5%) 55(64.3%) どちらかといえば働きにくい 78(11.5%) 23( 9.1%) 89(10.6%) 13(15.5%) 働きにくい 9( 1.3%) 5( 2.0%) 10( 1.2%) 5( 6.0%) 職場の仕事と育児の両立しやすさ n=677 n=255 n=843 n=84 両立しやすい 67( 9.9%) 53(20.8%) χ2=23.593 0.000 113(13.4%) 6( 7.1%) χ2=25.530 0.000 どちらかといえば両立しやすい 383(56.6%) 140(54.9%) 483(57.3%) 35(41.7%) どちらかといえば両立しにくい 185(27.3%) 46(18.0%) 204(24.2%) 29(34.5%) 両立しにくい 42( 6.2%) 16( 6.3%) 43( 5.1%) 14(16.7%) 仕事と育児を両立していくことへの上司の理解 n=677 n=256 n=840 n=84 理解がある 218(32.5%) 110(43.0%) χ2=9.646 0.022 307(36.5%) 18(21.4%) χ2=17.777 0.000 どちらかといえば理解がある 376(56.0%) 119(46.5%) 446(53.1%) 47(56.0%) どちらかといえば理解がない 67(10.0%) 25( 9.8%) 79( 9.4%) 14(16.7%) 理解がない 10( 1.5%) 2( 0.8%) 8( 1.0%) 5( 6.0%) 仕事と育児を両立していくことへの同僚の理解 n=677 n=255 n=843 n=84 理解がある 644(95.1%) 249(97.6%) χ2=2.937 0.087 806(95.6%) 78(92.9%) χ2=1.310 0.252 理解がない 33( 4.9%) 6( 2.3%) 37( 4.4%) 6( 7.1%) 仕事と家庭を両立させモデルになる助産師の存在 n=676 n=250 n=837 n=84 いる 461(68.0%) 179(71.6%) χ2=0.991 0.319 586(70.0%) 45(53.6%) χ2=9.565 0.003 いない 215(32.0%) 71(28.4%) 251(30.0%) 39(46.4%) 勤務表への希望 n=678 n=254 n=843 n=84 考慮あり 636 (93.8%) 238(93.7%) χ2=0.027 0.870 792(94.0%) 75(89.3%) χ2=2.745 0.098 どちらかといえば考慮あり どちらかといえば考慮なし 42( 6.2%) 15( 6.3%) 51(6.0%) 9(10.7%) 考慮なし 有給休暇・年次休暇の取得 n=677 n=247 n=838 n=82 取得できる 115(17.0%) 68(27.5%) χ2=14.193 0.003 169(20.2%) 11(13.4%) χ2=7.622 0.055 どちらかといえば取得できる 226(33.4%) 80(32.4%) 284(33.9%) 21(25.6%) どちらかといえば取得できない 227(33.5%) 63(25.5%) 260(31.0%) 31(37.8%) 取得できない 109(16.1%) 36(14.6%) 125(14.9%) 19(23.2%) 子どもが病気時の休暇 n=654 n=249 n=817 n=82 取得できる 114(17.4%) 86(34.5%) χ2=35.640 0.000 182(22.3%) 19(23.2%) χ2=3.130 0.372 時々取得できる 234(35.8%) 85(34.1%) 289(35.4%) 25(30.5%) あまり取得できない 186(28.4%) 54(21.7%) 213(26.0%) 28(34.1%) 取得できない 120(18.3%) 24( 9.6%) 133(16.3%) 10(12.2%)
Ⅴ.考 察
1.対象者の特徴 内閣府(2006c)によるとわが国の女性の労働力は20 歳代半ばと50歳代前後に2つのピークを持ついわゆる 「M字カーブ」を描いている。今回調査した助産師の 平均年齢は36.8歳であり,労働力が下がる年齢層が働 き続けていることを示している。 採用職種において,助産業務を行っているにもかか わらず看護師として採用されている助産師がいること, および産科・産婦人科以外の部署に勤務している助産 師の存在が推測され,これは各病院の方針や近年の 分娩施設の集約化等が影響しているものと考えられる (日本産婦人科学会,2006)。 家族形態は拡大家族が27.5%であり。一般女性にお ける就業型の家族形態の調査(厚生統計協会,2005)の 21.5%よりも割合が高い。これは就業している出産・ 育児期にある助産師は家族の協力を必要としている ケースが多いためと考えられる。 仕事と家庭の両立には本人の健康が重要であるが, 本研究の対象者は大半のものが健康であると回答して いた。しかし寝不足や疲労蓄積を訴えており,就業と 家庭の両立のために疲弊している状況であると言える。 対象者の子どもの平均年齢は7.2歳 4.4であること から,未就学児と就学児が約同数であることが推察さ れる。認可保育園の使用が455名(47.8%)であること から,未就学児がいる場合は大多数が自治体の認可保 育園を使用しているものと考えられる。学童がいる対 象者が約半数と推察されるが「学童保育・放課後ルー ム」の使用者は271名(28.5%)であった。全小学校数 に対する学童保育の実施割合は74.4%であることを考 慮すると(内閣府,2008),「学童保育・放課後ルーム」 の対象となる学童の大半は使用していると推察される。 夜勤をしている者は83.4%いたが,夜間保育を使用し ているものは4.1%のため夜間保育は育児支援サービ スとして普及はしておらず,夜勤時の子どもの保育・ 養育は家族が担っているものと考えられる。児童手当 は77.1%と多数のもの使用していたが,自治体により 所得制限がある場合もあることから,8割弱の使用に 留まったものと考えられる。以上のことから育児をし ながら就業している助産師は使用出来得る限りの社会 資源を活用したうえで就業していると推察できる。 「妊娠・出産・育児の経験は仕事を続ける上でプラ スになる」は, そうである が905名(95.1%)であり 自らの出産・育児の経験は就業に役立つと,出産・育 児期にある助産師は認識していると考えられる。助産 師は専門職であるため自らの出産・育児の経験は必要 ないが,出産・育児の経験が助産師として仕事をする 上でプラスになるという認識は,出産・育児期の助産 師の就業継続意欲を促進させると考えられる。 2.今までの就業継続状況と各要因との関係 今までの就業継続状況(就業継続群と一時離職群) と個人的要因・職場環境要因・社会的要因との関係を 考察する。 1 )個人的要因 助産師勤続年数・施設勤続年数・部署勤続年数に有 意差が認められた。一時離職群は出産・育児や夫の転 勤等,様々な理由により離職を経験しその後,より就 業継続しやすい職場へ再就職しているためと考えられ る。 夫の理解・協力において,育児状況・精神的支持・ 両立の応援は両群において差はなく,同様の支援が受 けられていると考えられるが,就業継続群の方が夫の 家事実施の割合が高かった。藤内・藤内(2004)は交 代性勤務の看護師は家事的生活時間が多く,社会文化 的生活時間が少ないことが疲労感に影響していると報 告しており,夫も家事を行い家庭生活に貢献すること が就業継続のために必要な要因であること考えられる。 実父母の「育児協力」,「子どもの日常の世話」,「仕 事と家庭の両立の応援」において有意差があり,就業 継続群は一時離職群よりも実父母の理解協力の得られ ている割合が高く,実父母の理解・協力の有無は就業 継続の要因であると推測できる。義父母においてもほ ぼ同様の結果であり,実父母同様・義父母の理解・協 力の有無も就業継続の要因であると言える。 内閣府(2006c)によると子どもの年齢や人数,健康 状態が女性の就業に影響を与えていると言われている が,両群とも現時点で就業しているために子どもの人 数と就業継続状況との関連は見られなかったと考えら れる。 2 )職場環境要因 (1)勤務環境 職位において,就業継続群のほうが管理職(主任・ 師長)の割合が高かった。就業継続群の方が施設内, 部署勤続年数が長いことから年功序列による昇進が多 いことが推測される。勤務形態では,一時離職群は日勤のみの割合が高く, 時間外労働も少ない傾向が認められた。一時離職群は 家族の協力が就業継続群よりも少ないという前述の結 果より,夜勤を行うということは育児をしていく上で 家族のサポートがない限り困難であることが多いため (本間・中川,2002),日勤のみの職場に転職している と考えられる。 雇用形態において,就業継続群のほうが正職員の割 合が高く,一時離職群は就業継続群と比し,パートの 割合が多かった。一時離職群は日勤のみの職場及び時 間外労働の少ない職場等,より両立しやすい職場を求 めて転職を行っている結果と考えられる。高橋(2007) はライフステージに合わせた柔軟な雇用形態の必要性 を報告しており,正規職員の時短勤務制度など,就業 継続しやすい雇用形態を病院が組織全体で取り入れる ことで,より出産・育児と就業の両立が可能になるも のと考えられる。 (2)職場環境 一時離職群の方が,「仕事と育児の両立のしやすさ」 「上司の理解」「有給・年次休暇の取得」「子どもが病気 時の休暇取得」において肯定的に捉えている割合が多 かった。就業継続群は前述のように家族の協力を得ら れている割合が高いことから,家族の協力を得ること で職場環境の不足分を補い,就業継続しているものと 考えられる。 3 )社会的要因 野村・脇田・妹尾(2003)は看護職として働く母親 は育児上の困難に対し,「今ある社会資源制度を活用 する」などの積極的な対処行動が見られたと報告して いる。両群共に使える社会資源はすべて活用したうえ で就業しているために社会資源の使用件数と今までの 就業継続状況との間に関連は認められなかったと考え られる。 3.今後の就業継続予定と各要因との関係 今後の就業継続予定(継続希望群と退職考慮群)と, 3つの要因との関係を検討した。 1 )個人的要因 実父母・義父母の理解・協力と今後の就業継続予定 の結果より,家族の理解・協力と今後の就業継続予定 との関連性は少ないと推測される。しかし「夫の仕事 と家庭の両立応援」の項目のみ有意差がみられ,夫か らの両立の応援が今後の就業予定に影響していると考 えられる。夫からの心理的サポートの重要性の報告(荒 木・大石・岩木,2001;本保・八重樫,2003;中添・ 船越・白石,2003)にもある様に,家族の心理的サポー トは就業継続を左右するひとつの要因になっていると 考えられる 子どもの人数と今後の就業継続予定に有意差が見ら れ,子ども2人は退職を考慮しているものの割合が有 意に低く,子どもが1人と3人は退職を考慮している 割合が高かった。子ども1人の場合は育児に慣れてい ない割合が多く,子ども3人の場合は育児にかかる負 担が大きいことなどが考えられるが,今回の結果のみ で,推測することは困難である。 「妊娠・出産・育児の経験は仕事を続ける上でプラ スになる」は有意差が認められ,就業継続希望群が妊 娠・出産・育児の経験は就業継続する上で良い影響を 与えると認識している者が多いとの結果であった。し かしp値が0.049であること,具体的な割合の値を見 ると認識の差はあまりなく,両群共に出産・育児の経 験は就業をする上で肯定的な体験であるとの認識を示 している。 仕事意欲は就業継続希望群の方が退職考慮群よりも 有意に高く,下位尺度である「現在の仕事意欲に向け る意欲」と「将来的な仕事に向ける意欲」においても同 様の結果であった。「職場の働きやすさ」,「職場の仕事 と育児の両立しやすさ」,「両立していくことへの上司 の理解」が退職を考慮する要因として有意に影響して いたが,退職考慮群は両立しにくい職場環境であるが ゆえに仕事意欲が低くなったと考えられる。 2 )職場環境要因 看護職の育児と就業の両立において,個人的要因 よりも職場環境に影響を受けることが指摘されてい る(Coomber & Louise, 2007;佐々木・門脇・山内, 2004;鈴木・畑瀬・結城他,2004;畑瀬・鈴木・結 城,2004;中・久納・飯島,2002;大西,1999)が,助 産師の出産・育児と就業の両立においても同様の結果 であった。職場環境における「職場の働きやすさ」「職 場の仕事と育児の両立しやすさ」「仕事と育児を両立 していくことへの上司の理解」「仕事と家庭を両立さ せモデルになる助産師の存在」において,いずれも就 業継続希望群のほうが肯定的な回答の割合が高かった。 田所(2008)は産科診療所に勤務する看護職の就業継 続意志に関連する職場要因のひとつとして,「生活と の両立」が行えることと報告していることからも,今
後の就業継続を決定づける要因は家族の理解・協力の 程度よりも,育児と就業を両立しやすい職場環境か否 かが今後の就業継続予定に影響を与えていると言える。 「妊娠・出産・育児と仕事の両立ができている」は 両群間で有意差が認められ,継続希望群は両立できて いると認識している者の割合が高かった。退職考慮群 は両立に関する認識の度合いはほぼ同率であり,継続 希望群と比べ両立できていないと認識している者の割 合が高かった。退職考慮群は就業継続希望群よりも職 場環境において否定的な回答の割合が高いことから出 産・育児と就業の両立が困難になっていることが「両 立できていない」と認識している理由の1つと考えら れる。 塚本・野村(2007)は,「看護師長のスタッフへの配 慮」の認知によって離職意図は有意に規定されている と報告しており,本研究においても同様の結果であっ た。「仕事と育児を両立していくことへの上司の理解」 が大きな影響を与えていることは明らかである。助産 師は女性のみの専門職であること,出産・育児は女性 の重要なライフイベントのひとつであることから,出 産・育児期にある助産師の就業を支援する,上司の理 解がある職場環境であるか否かは非常に重要な要因で あると考えられる。 本研究の対象者のように助産師としての勤続年数 が10年以上ある経験豊かな助産師が増えるというこ とは,助産・看護ケアの質向上につながる。またキャ リアを重ねた助産師が増加し,質の高い助産ケアを提 供することにより,国民運動計画の健やか親子21に 挙げられている課題「妊娠・出産に関する安全性と快 適さの確保」に貢献できると考えられる。よって上記 に述べた「職場の働きやすさ」,「職場の仕事と育児の 両立しやすさ」,「仕事と育児を両立していくことへの 上司の理解」,「仕事と家庭を両立させモデルになる助 産師の存在」等の就業と出産・育児の両立ができるよ うな職場環境が就業継続のためには必要であることを, 看護管理者・師長・主任等の直属の上司および同僚が 認識する必要性がある。助産師は女性のみの職能集団 であるため,職場全体でお互いに支え合うことが必要 と考えられる。また職場に仕事と育児を両立させ,モ デルになり得る経験豊かな助産師が存在するというこ とは,職場の活性化,助産・看護の質向上,後に続く 後輩の育成にもつながるものと考えられる。 希望ではない部署に配属の場合は就業継続意志に 影響を与えるとの報告があったが(鈴木・畑瀬・結城, 2004),助産師免許を持ちながら産科・産婦人科以外 の部署に配属となり助産師として専門性が発揮できな い職場であっても,今後の就業継続予定との間に有意 差はなかった。本来,就業・仕事とは生計を立てる手 段として従事する事柄であるため,就業継続の理由が 経済的理由であるため(北川,2010)と考えられる。 3 )社会的要因 対象者は使える社会資源はすべて活用したうえで就 業しているために社会資源の使用件数と今後の就業継 続予定との間に関連は認められなかったと考えられる。 4.助産師特有の要因 調査対象者を病院に勤務する助産師としたため,先 行研究(佐々木・門脇・山内,2004)が示すように本人 の高い仕事意欲と家族の理解協力を前提に,両立しや すい職場環境と上司の理解が就業継続に影響を与えて いるという,病院に勤務する看護師とほぼ同様な結果 であったと考えられる。 助産師の就業継続意欲やキャリアを促進させる要 因は多様であるが(新道・村本・遠藤他,2009;田所, 2008),出産・育児期にある助産師においては自らの 出産・育児の経験が就業継続意欲を促進させる1つの 要因であると考えられる。 5.本研究の限界と今後の課題 出産・育児をしながら就業継続している助産師を対 象とし,今までの就業継続状況と今後の就業継続予定 を基準に就業継続のために必要な要因を探った。しか し就業継続の要因を明らかにするためには,「今現在, 出産・育児をしながら就業している助産師」と「出産 ・育児のために就業継続を断念し今現在就業していな い助産師」を対象とした,ケースコントロールスタデ ィが必要である。よって今後は出産・育児のために就 業継続を断念した助産師について検討する必要がある。
Ⅵ.結 論
1 .『今までの就業継続状況』は,個人的要因の家族の 理解・協力の程度が主な要因となっており,「夫の 理解・協力」が得られていることを前提とし,特に 「実父母・義父母の理解・協力」の程度が就業継続 状況に影響を与えていた。 2 .『今後の就業継続予定』は個人的要因よりも職場環境要因が関連しており,特に「職場の働きやすさ」 「両立のしやすい職場」「上司の理解」が重要な要因 であった。 3 .『今までの就業継続状況』と『今後の就業継続予定』, の両方に影響している要因は,職場環境の「職場の 仕事と育児の両立のしやすさ」と「仕事と育児を両 立していくことへの上司の理解」であり,職場環境 は就業継続を決定付ける上で非常に重要な要因であ ることが明らかとなった。 4 .本研究対象者は使用できる社会資源を使用した上 で就業継続していた。 謝 辞 出産・育児をしながら就業継続されておられる助産 師の皆様にとりまして,お忙しく貴重なお時間の中, 本研究へのご協力をご承諾頂きましたことを心より感 謝申し上げます。本研究の主旨をご理解頂き,調査協 力を受諾して下さいました全国の病院の看護部長・産 科師長をはじめ関係者の皆様に深くお礼申し上げます。 また研究活動の全過程においてご指導賜りました宮岡 久子先生に謹んで御礼申し上げます。 本研究は東邦大学大学院医学研究科看護学専攻に提 出した修士論文の一部に加筆修正したものであり,内 容の一部は第50回日本母性衛生学会で発表した。 文 献 荒木美幸,大石和代,岩木宏子,渡辺鈴子,池田早苗,達 田志津子他(2001).育児期にある母親に対するソー シャルサポートの実態̶有職の母親と無職の母親との 比較,長崎大学医療技術短期大学紀要,13,127-132. Coomber, B., & Louise, B.K. (2007). Impact of job
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