デザ
イ
ン
プ
ロ
セ
ス
と
標準
化
Standardization
for
Products
Designing
Process
畠
中 順 子HATAKNAKA
Nobuk
。高橋 美和
子TAKAHASHI
・Miwako
吉
岡松太 郎 YOSH
[OKA
Matsutar
。(社)人間生活 工学研究セ ン タ
ー
Research lnstitute ef Human Engineering for Quality Life(HQL)1
.
は じめ に 近年、
コン ピュー
タやインター
ネットに代 表 され るよう に、
情 報 技 術の 急 速 な発 展 は、一
昔 前では考え られ な い ような 便 利 な道具 や イン フラを造 り出 し、
最近では、
こ うした新しい 道 具 やシステムが社 会システムの機 構の 中に組み 込ま れ ようとし て お り、
こうした傾 向は今 後 更 に進ん でいくと思われ る。
情 報 技 術は、
我々 の 生活を便 利にする道具やシ ス テ ムを次々 と誕生させ、
これ らシステムが 利 用 可 能 な 人 々 に とっ ての生 活の 利 便 性の向 上 な ど に 大 きく寄与し て い る。 し か しな が ら、
これら情 報 技 術の急 速 な発 展 は、
同時に、
ディジタル ディバ イ ドという言 葉に代 表 され るごとく、
こうし た道具 やシス テム の 持つ 利便性 を享受 できない人々 を生み 出して い る。
一
方、
社 会の 高 齢化 に伴い、
い わ ゆ るバ リアフリー
やユ ニ バー
サル デ ザインとい っ た高 齢 者やハ ンディキ ャップ を持つ 人 達 に も健 常 者 と同 様 に、種々 のものや システムが利用できる環 境つ くりが 叫 ば れるようになっ てきてお り、
こうした考え は、ISO
/IEC
ガ イド71
や米 国 の リハ ビリテー
ション法508
条な どに代 表され るように、
企 業 等が世の 中に製品 を提 供 する際の 重要な 考 慮 条 件とし て位置づ け られ るようになってきてい る。
こうした背 景から、
近 年のもの づくりの世 界で は、
「人 に優しい 技術」や 「人 間中心の もの づくり」とい っ た「人 間」に焦 点を合わ せ た 技術 視 点が重 要視され、
こうした 技 術 視 点のひ とつ として「人 間 生 活工学」の 考 え 方 が 注 目されてきている。 こ こで は、
我々が 進 めている 「人間生 活工学」を 基本と した デ ザ インプロセス (設計 プロセス)につ い て考えるとと も に、
これ に 関 連 した 基 準化、
標準化につ いて考える。
2.
人 間生 活工 学とデザイン これまでの 「もの づくり」が、
アイデアと技 術をデ ザイ ンとい う器の中に盛り込む 過程であっ たとすれ ば、
これ か らの 「ものづくり」は、人 間 とその生 活 をもう一
方の 重 要な要素として、
人 間 中 心の 「もの 」に ま とめ 上げること が求められ、その 中 核的役 割を果たすの が「人 間生活 工 学j
である。 つ まり、
人 間 生 活工学とは、
人間 中心 の デ ザ インを実 践 することであるとも言え る。
人間 や生活の特 性をアイデアや 技 術に結びつ け、
もの とし てまとめあ げる過程は、
そ れ ぞ れの 企 業 や設 計 者固 有のもの となっ て い て、
必 ず しも 共 通の方 法 論が 確立 されてい るわ けでは な く、
多くが、
設 計者の 勘と経 験 に 基づい ている。人 間 生 活工学では、
様々 な 生 活 場 面を想定し、
そこ で の人 間の行 動を観 察し、
「どのような 人 が使 うの か 」、
「どの ような 状況で使 うのか 」を 明確に し、
設計に取り入 れ て ゆ くことを特 徴としている。
3.
デザインプロセス としての 人 間中心 設計 前 節にの べ た、
使う人の ことを考 慮した 設 計方法 に 関 す る規 格 としてISO−
13407(Human−
centred designprocesses for interactive systems )や、その 翻 訳 規 格と
し て
2000
年11
月に発効した、
JIS
Z
8530
(イ ン タ ラ ク テ ィ ブシステム の人 間 中心設 計過程 ) が ある。
こ の規 格で は、
設計のプロセスを、
大 きく以 下の4
つ の ステップで 行 うことを提 起している(図1
)。
図1ISO 13407にお け る 人 間 中 心 設 計プロセ ス 【注1
] 【利 用 状 況の 把握と明確化】 設 計 対 象 とす るもの が どの ような 人 が、
どの ような環 境 条 件で、
どのよ うに 使 うか を 明確 化する58 SPEcIAL IssuEoF JssD vol
.
11 No、
4 2004 デ サ イ ン学研究 特 集 号【ユ
ー
ザや 組 織の 要求 事 項の 明 確 化1
設計対象とするもの に対し て、 ユー
ザ が どの ような 要求や 仕様を求め て いるかを明 確 化 【設 計解決案の 作成 】 ユー
ザの 入 間特 性 や生活 特 性デー
タに基づき 具体的 なもの の仕様 を決 め 設計を行 う 【要 求 事 項に対 する設 計の評価
】
設計 され たものが
、
利 用 状 況やユー
ザ要 求 を満 足 しているか を評価こ こで、 「ユ
ー
ザは 高齢 者」で はな く、
「年 齢、
身体 機 能、
生 活 行 動 がこ の ような特 性を持つ 高 齢 者1
とい うこと を客 観 的に示 すことが 求 め られ、
利 用 状 況 は、
「家の 中 で使 う」で はなくて、
「使 う場 所 、使い 方、
さらに は、
そこ での明 るさ、
音、
温 湿度 条 件な ど」を特定するg
とが求 められ る。
こ のような基 本 的 なことがこれ まであ ま りにも無視され て きた た め、
事 新しく言うとい か にも複 雑で難し い ことの ようであ るが、
実 際の各 々 の設計場 面で、
どの要 素が 重 要 か判断できる 素 養 を 磨 くことに よ り、
複 雑で難しい もので はなくなる。 もの づ くりの 早 い段階からこのよ うな 手 法 を 取 り入 れ ることが、
ニー
ズをシ ャー
プ に絞っ た もの づくりへ の 近 道である と同時に、
頻 繁な設 計し直し に よるコ ス トを 大 幅 に軽 減する手 段でもある。
高齢社会、
さらに は情 報化、
こ れ は企業にとっ て これ からの時 代、
製 品の機 能・
性 能に は、
そ れほど差が な く なっ て お り、
人 間 をもっ と知ることによっ て製 品 やシステ ムの使い勝手 を 高 め ることが、
差 別 化の 決め 手 であり、
チャン スを 生 か す 手 段でもあ ると考え る。
最 近よく耳にする、
「バ リアフリー
設 計」「ユ ニ バー
サル デ ザイン1
な ども、
こうした視点から考えれ ば、
製品の ユー
ザはどういう特性を持った 人 が利用 す る製品 か を考え、
「人 間中心設計」を実践 することに帰 着すると言える。 4.
人間中 心 設 計 プロセスの具体 例こ こ で は
、
前 節までに述べ た、
人 間中心設計プロセ スの詳 細 につ い て 説 明 す る ととも に、
具体 的 製品 を例 に各 プロセスでの 作 業内 容 等につ い て紹介 する。な お、 こ こに 紹 介 す る 作業 内 容の 多くは文献 [注2
]を ベー
スに構 成 している。
4.
1.
利 用 状 況の把 握と明確化 「利用状況の把 握」は、
設 計 対象製品が、
い つ、
どこ で、
誰が、
どの ように使 用 する かを 明 確 にす るステップ である。
こ こで注 意 すべ きは、
「使 用 す る 可 能 性 が あ る か」ま で を考 慮 する必要があることで、
こ の可 能 性の 予 測はPL
(Product
Liability
)問 題 とも深 く関 係してくる。ま た
、
製品の利用状況の 把 握 に おいて は、
その 製 晶 のライフサイク ル、
つ まり、
製品 が作られて からユー
ザ に渡り、
最 後に廃 棄される全過 程で の状況 把握を 必 要 とする。
こ の た め、
「誰が」を検 討 する際にも、
製品 ライ フサ イ クルの 全 過 程 で製品 に 関与 する人 を洗い出し、
それ ぞ れの人に対して の状況 把握が 求 め られ る。
こ こ で、
使用段 階で の関 与 者とは必ずしも製品の使 用 者 だ けでな く、
同 居 人の ような 周 囲の 人 の振る舞い な ど も考 慮す る。
例 えば、
炊 飯 器 を例にとれば、
直 接の使用者 は家
庭の 主 婦 とい うことになるが、
家 庭に は幼 児がい て 場合 に よっ ては 炊 飯 中 に吹き出す 蒸 気に接し て しまう ことも考え られ、こうした状況 をも考慮してお く必 要 が あ る。
表1
に製品の ライフサ イクル と各ステップ別の 関 与 者及び関 与形 態につ い ての 例 を 示 す。 また、
使 用 状 況の把 握に際し て調査すべ き事 柄は、
製品の種 別 や機 能 などに よっ て異 なるが、
概ね 以下の ようなことが考え られ る。
表 1 製 品ライフサイクルと関 与 者の例 (文献 [注2
]を 参 考に作 成) ラ イ フ サ イ ク ル 関与 者 関 与の状 況 梱 包・
出 荷 梱 包・
出 荷 作 業 員 製 品の出 荷 作業 納 入・
展 示 納入作業員 店員 店へ の運 び 込み 陳 列・
展 示 作 業 購 入・
配 送 購入者、
入店 者 配 送 作 業 員 商品の試 用 購入者宅へ
運 込 使 用 準備 購入者、
家族 開 梱、
梱 包 材の 廃 棄 使 用 使 用者、
家族等 製品 を使 う、
いた づ らする 片づけ、
手 入 れ 手 入 れ を す る人、
保管す る 人 汚 れ を拭く、
保管 する 廃 棄 捨て る 人、
回 収 業 者 解 体、
資源回 収デザ イン学 研 究 特1号 SPECIAL ISSuE OF JSSD vol
,
11 No.
4 2004 59一
ユ
ー
ザ関する事 柄・
直 接 利 用者の 知 識・
意 識、
技 能、
経 験、
嗜好 等・
高 齢 者・
子供 等を含むハ ンディのあ るユー
ザの使 用 可 能性・
幼 児・
ペ ット等 直 接の 使用者で はない が製品 が使 われ る環境に存 在 する 人の有 無 使わ れ る環境・
温 湿度、
照 明、
塵埃な どの物 理 的環 境・
機 器 単 体で の利 用か、
別の機 器と接 続し て使 用 するかなどの使用 環境・
宗教的習 慣、文化的 要 因 等 につ い て の 配慮使 わ れ 方
・
商品 が 実際に どのような 形で使 わ れ るかの 調 査 (実験、
ア ンケー
ト等により)・
使い方に係る検 討 (操 作 法、
設置 条 件 等の取り扱 い説 明書に記述 すべ き事 柄、
望ま しくない使用環 境、
使用法 など)利用状況 把握の 実 際 例 として
、
新しい 洗 剤 容器 開 発にお ける問 題 把握の 例 を 示 す [注3]。
ここ では、
実 験 やア ンケー
トによっ て得られ た、容器の使い 勝手 に 影 響を与え る要因を、
洗 剤ボ トルを実 際に使用する状 況 (ボトルか らの 洗剤の流し込 み動作 )を実 験 的に検証 し、
その 際の アンケー
ト調査から、
問 題点の 抽 出を行っ ている。
その 結果、
取っ 手の寸 法 や 形 状そ れ自身に関 す る 問 題 として、
・
取っ 手が短 く、
第 2指から第5指ま でを 差し入 れる ことができない と不快・
取っ 手の太 さ、
断 面 形 状 が 掌 に な じまない・
取っ 手 が 滑 る な どの問題点 が、
ま た、容 器 本体 と取っ 手の位 置に 関 する問題 とし て、
・
怒り肩容 器で は、
内容 液が 少 量になっ た 時、
怒り 肩部 分に内 容 液が残り、
容 器を逆さまにするな ど 無理 な 注ぎ動 作を強い られ 不快・
内容 液 を 注 ぎ 出 す 際、
容 器の 重心位 置が低い と、
回転 中 心から重 心 が 離 れてモー
メントが 大 きく な るた め に 前 腕 回 転のた め に よ り大 きな 筋 力 が 要 求され、
重 た く感じる などの問 題点が抽出され、
これ らの 分析を通して、
洗 剤 容 器の 使い 勝手 に影 響を与え る要因 を抽出 し、
図2
に 本 体形 状 取っ手 注ぎロ 使い勝 手の 良い容器 内 容 液 特 性 本 体 重 量 重 心 図2
洗剤 容器の使い勝 手に影響 を与える要因整 理 [注3
] 示 す ような 形で整 理 し、
これ を ボ トル の取っ 手 形 状の 設 計に適用してい る。4.
2.
ユー
ザ や組 織の要求事 項の 明確化 「ユー
ザの要求事 項の 明 確 化」では、
不満として顕 在化したニー
ズの把 握に加 えて、
「こ んな商品 が あった らもっ と良い の に」と言っ た潜 在 的ニー
ズの 把握が重 要 であ る。
特 に、
潜 在ニー
ズの把 握 は新製品 開 発や 製品 改良 に 大 きな 力 とな る。 ユー
ザニー
ズの 把 握は、
自 分の 「頭の 中で考え る」 の では な く、
調 査 や観察 な ど、
極 力客観 的 な情報 に 基 づくことが重 要である。ま た、調査 に おい ては、 ユー
ザ は 「〜
が良い 」と言 う肯 定 的な発 想より、
「〜
し にくい 」と 言った否 定 的 発想の方 がし易く、
こうした視点からの意 見を基 礎としたニー
ズ集 約を行 うことが重 要である。
ニー
ズ把 握の方 法とし て は、
以 下の ようなものが ある。
・
購買動向 調査・
商品 分 析・
顧 客 情 報分 析・
アンケー
ト調査・
生 活分析・
モニ タ実 験・
疑 似 体 験 分 析 これ らの 具 体 的な 内容につ い て、
表2
にま とめ て 示 す [注2 コ。
これ らの 方 法を通し て、
客 観 的な デー
タを集 約・
分 析 する ことによりユー
ザのニー
ズを整 理し、
開 発 製品の仕 様 決 定な どに役立て る。 ユー
ザニー
ズ把 握の 具 体 例とし て、
トイレ清 掃 用ブ ラシ に関し ての使い勝手に係る調 査 結 果の 例 を 表3
に 示 す。
こ こでは、
当 該 商 品 に 関 して、
実 際 に 利 用 してい る商品 (その 商品 が ど ん な もの か につ い ての 質 問 を含60 sPEciAL IssuE oF JssD vol
.
11 No.
4 2004 デ ザ イ ン学 研究 特集 号表
2
ユー
ザニー
ズ把 握の方 法 例 [注2
]を参 考に作成 ) 調査項目 調査の方 法 調査の内容 購 買動向・
購買意 識 調 査 ア ン テナショップ、
街角観察 流行フ ァッショ ン、
購 買動 向な どを 基にニー
ズ に係 る 流 れ を掴 む POSデー
タ の解 析 売 り上げ デー
タ の分 析 を通し て売 れ 筋商品 を 探 る 商品分析 類 似商品、
他 社製品 の分析 他社製品を含む類似品 の動 向 を掴む 技 術情報 自社の商品 に繋が る シー
ズ技術を把握する 事故情報 分析 過去に起 きた商品 トラブル等 を事 故情報 などか ら探 る 絶滅 商 品、
ロ ング セラー
商 品 調 査 市 場からな くなった 商 品 や 逆 にロ ン グセラー
商 品 につい て そ の 要 因 にっ い て分析する 顧 客 情 報 分 析 小 売 店 情 報、
コー
ル (クレー
ム) 窓口情報、
愛用 はがき な どの分 析 ユー
ザの 不満、
商品 に対するユー
ザ意見、
具体 的な 利 用 状 況 な ど か らの ニー
ズを 探 る アンケー
ト調査 質 問紙やヒ アリング 調査対象と した 購 買 層の意見 や 問題意識 を 探 る 生活 分析 生活行動 分析 生活行 動や行 為と商品 との関 係 を 分 析 し、
製品 の役 割 や 具 備 すべ き機 能 な どにつ い て分 析 モ ニタの 生 活 調 査 商 品 等 が 置 かれ る 空 間、
使 わ れ る 状 況での関 与 者 な どにつ いて把 握 痕跡調 査 ユー
ザが製品 に貼っ た メモ や 製 品につ い た傷 な どか ら製 品の不 具 合 点 を探 る モニ
タ実 験 グ ルー
プイン タ ビュー
具 体 的 商 品 に 対 す る インタビュー
を グルー
プ で 行う こ と に よって、
幅広い意見を集約 する 状 況 観 察 商 品 や 試 作 品の実 際の使 用状況 を ビデオ、
写真 等 で 撮 影 し、
その分 析 を通 して、
使 用 上の問 題 点 を探 る 疑 似 体 験 分 析 疑 似 体 験 車椅子、
高 齢 者 疑似体 験 グッズ等によ り、
障害 者や高齢者の 生活 を自ら 「体 験」す ることに よ り問 題 点 を 実感 する 表3
使用中の トイレ掃 除用ブラシ に 関 しての よい 点 / 悪い点 [注3
] (単位 :%) 項 目 よ い点 悪い 点、
ちやすい 12.
力 が 入 り にくい 4,
身 体に フ ィッ トす る さ が ちょ うど よい 8.
が短い 4.
無理をしない が握りや すい 5.
ち に くい 3・
1 カ がいる 1.
人 はねしない 3.
2 しぶき が と ぶ 2L 5 間・
清 潔・
衛 生性 切 れ が よい 3.
2ブラ シの 汚れ が 落 ちに く い 4.
6 生 活 ブ ラシに汚 れが残 らない L1 乾 きにくい 3,
コ
ンパク ト 5,
3ケー
スに 入れ や すい 4.
保 管・
収 納 納 しや すい 3.
2 頑 強性・
信頼性 丈夫で長持 ちする 24.
5 れ やすい、
減りや すい 10.
価 格 格が安い 1.
1 格 が高い 1.
汚れが落 ち や すい 9,
6 かいところ が 磨 き に くい 33.
かい とこ ろ に届 く 5.
3 たま りの奥 まで届かない 3.
至 利 た ま りの奥まで洗 える 4,
3 器が傷つ きそ う 2.
1 便 機能 と 性能 ブ ラシ の大きさ が ちょ うど よい 3.
2 ブラ シ の 硬さが ちょ う ど よ い 2,
1 器 を 傷っ け ない 2,
1 感 性 意匠・
外 観 色 が よい 3,
2 デ ザインがよい 2.
1デ ザ イ ン学 研 究特 集 号 SPECIAL ISSU∈OF JSSD Vol
.
11 No.
4 20D461一
めて)に対しての 肯 定 的 評 価と否 定 的評 価を 同時に質 問し
、
トイレブラ シ に対する機 能面へ のニー
ズや 利用 時へ の 要 望につ い て の把 握 を試みてい る[注 4 ]。
その 結果、
ブ ラシ本 来の機 能で あ る、
「汚 れ が落ちやすい 」 「細 かい ところ まで磨 け る」「水 た ま りの 奥まで届 く」な ど の要 求 事 項 を明 らか にするとともに、
「身 体に フ ィットす る」嘸 理 をしない 」といった身 体 的 な適 合 性へ の 要 求 も少 な くない ことが明 らか になっ た。
4.
3.
設 計 解 決 案の作成設 計解の 作 成では
、
前 記の ステップ にて抽出 され た 製 品に対 する要 求 仕 様を設 計 仕 様とし て整 理するとと も に、
具体 的製品の設計を行 う。
設 計に当たっ ては、
「利 用 状 況の 把 握と明確化」や 「ユー
ザの 要 求事項の 明 確 化」に よっ て得 られ た 設計 に際して配 慮 すべ き 事 柄 を 具 体 的 設 計値に 落 とし込 む ことが 必要となる。
例えば、
調理 台の設 計を例にとれ ば、
「利用状 況」 や「ユー
ザニー
ズ 」から「成人 だけでなく、
子供 や 高 齢 者なども使え ること 」が求め ら れ て い る とすれ ば、
要求 仕様とし て 「背の 低い 人にも無理なく使え ること」へ の配 慮が 必 要で、
これ を実現する た め に は、
台の 高 さを 具 体的 に何cm とした らよいか を 決 定 す ることが 設 計 解 とな る。 こうした設 計 解を求 めるた め に は、・
人間 特 性に係るデー
タベー
ス の利 用・
参 照・
設 計ガ イ ドや規 格 等の参 照・
簡 単な実 験やコン ピュー
タマ ネ キン等の支援ツー
ルを利 用し て の設定 値の 評 価 などを行う必要があ る。
とりわけ、
人 間 特 性デー
タベー
ス の利用・
参 照は、
実 験 等に よ らずに あ る程度の 設 計 値 を導き出 すことが 可 能 で あ る。 ま た、
少 数被験者に よ る実 験値の場 合な ど は、
デー
タベー
スとの相 関 関 係を 求めることで応 用 範囲も広 が る。4 .
1.
で示した洗剤 容 器 の例で は[注3
]、
第2
指から第5
指ま での4
指が入 る持 ち 手の 設 計値を 求めるに あ た り、
ま ず 初めに自社で手 を 開い た 状 態の 各 指の遠位 関節幅の 合 計 と取っ 手 付 き容 器 を把 持 した 時の 手 指 幅 を 測 定・
収集して2
つ の 寸法 値の補正係 数を 求 め た。 次 ぎにその補正係 数を 日本人 人体 計 測 デー
タベー
ス に当てはめることで、
男 女別、
年齢別の 取っ 手付き容器把 持 時の 手幅を計 算 上求めてい る (図3 )。
ところで、一
般 に、
要 求 仕 様 は多岐 に 亘 ることが多 く、
そこ では、
要 求の 対 立 が 起こる 可 能 性 も 少 な くな い。 上記の例では、 台の高さを 決 め る際に成入 (背の 高い 人)と子供 (背の 低い 入 )の ど ち らに焦点 を あて て 設計 値を決めた らよい かが 問 題 となる。
こうしたケー
ス で は、
要 求の優 先 度 を考える 必要が ある。
優 先 度 評 価 に当たっ ては、
要求が 実 現 で きない 場合の 弊 害レ ベ ル の評価要 求が満たされ ることで満 足 を 得 られ る 人の 人 数 や満た され る 要求の強さ の 積 に よっ て評 価 す る
。
調 理 台 で考え れ ば、
も し子 供 の 高 さに 合 わ せ ると毎 日の調 理 をす る主 婦の 負担は 大 容 器 を 把 持した時の屈 曲 時の寸 法 値=
103 × 指 を 伸 ば し た 時の寸 法値) 図3
日本人 人体 計 測デー
タベー
ス の設計 値へ の展 開例 [注1
]62 sPEclAL IssuE oF JssD vol
,
11 No,
4 2004 デ ザ イ ン学 研 究 特 集 号きくな り、
一
方で、
主 婦と子供との 調理台を利用 す る頻 度 や時間を 考 え ると自 ずと解は明確になる。
このように、
「設 計解決 案の作 成」におい ても、
人 間 特 性デー
タの 参 照 や支 援ツー
ル の活 用 等により、
客 観的 デー
タに基づ い て、
解を 求 め て行 くことが 必要とされる。4A .
要求事 項に対 する設計の評 価こ の ステップで は
、
前 節で求 め られた 「設 計 解」が 4.
1.
、
4.
2。
で抽出 された、
要 求 事 項 を満足して いるかど うかを評 価 する。
こ の ステップで の評 価 法としては、・
質問 紙 や アンケー
トによる評 価・
姿勢 計 測等 身 体 動 作的 実 験に よる評 価・
コン ピュー
タマ ネキンを利用しての評 価・
筋電、
心拍、
脳 波 等 生 理 計 測 法 に よる評 価・
タス クの達成時間等パフ ォー
マン ス評価 などの方 法が 上 げ られ る が、実 際 に どの ような方 法に よって評 価 する か は、
対 象 製品の 種 別 や 機 能 さらに は、
評価に費 やせ る時間や費用 な どによる。
特に
、
製品 寸法 等の評 価に 当 たっ ては、
多くの 体 格 を有 する人に よる適 合 性 評 価が 必 要 に な る 場 合 が あ る。
こうした 評価を被 験 者 を使っ ての 実 験により評価す ることは 困 難である た め、
コン ピュー
タマネキンによる評 価が、
こ の ステップでの 評 価 法とし て有 効な 手 段 とな る。
図4
は 人 間生活工学 研 究セ ンター
が オー
ジス総研 と共 同 開 発 したコ ンピュー
タマネキ ン 「quete 」を利用し ての 住 宅 設 備 用 品の 設計 評 価の例 を示 し てい る。 ま た、 パ フ ォー
マ ン ス法 評価は情報 関連 機 器に対する評 価 法 として有効であ る。
5 .
お わ りに【
SO
13407を 中心に、 「人 間生活工学」を基本とし たデ ザイン プロ セ スと しての 人 間中心設 計につ い て、
ISOl3407
の考 え 方 を紹介す るととも に、
具体的設計プロ セスにおい て配 慮すべ き事 柄 な どにつ いて 検 討 した。
人間 中心設 計で は、従 来 設計 者の 勘と経験 に よっ て成 され てい たデ ザインを、
より客 観 的な デー
タに基づ い た設 計 プロセスとし て確立 する ことを提 案し てお り、
こ うした考え 方は、
これ か らさらに 進 む と考え られ、
我が国 の高 齢 社 会へ の対応 としても一
層 重 要 性 を 帯 び て くる と考えている。 図4 コンピュー
タマネキン 「quetel を利 用して の住宅 設 備用 品 の 設計 評 価 例 参 考文献1
) (社 )人間生 活工学 研 究センター
編:平成 13 年度 経 済 産 業 省 委 託ユー
ザビリテ ィ評価の 標 準 化 に 関 する調 査 研 究報告書、2002
2
) (社 )人 間生 活 工学研 究セ ンター
編 ;人 間 生 活工 学 商 品 開 発 実 践ガ イ ド、 日本 出 版サー
ビス 刊、
2002
3
) 当麻 洋二 :ボトル 型洗 剤 容 器の使い勝手に関 する 研 究、
人間生活工学、
VoLl、
No .
1、2000
4) 旅 田健史 他:トイレブ ラシ の人間生活工学 評価,
人 間 生 活工学、
Vol.
3、
No .
1、2002
デ ザ イ ン学研究 特 集 号 SPECIAL ISSuE OF JSSD vol