パネルディスカッション デザインの哲学
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(2) 会員を集めて彼らに道具学会で何をしたいですかというアン ケートをとったことがあります。デザイナーではない一般の会. 2 道具のありよう(デザインされたもの)から生活のありよ うを再考する. 員からも道具作りの実践と提案を行いたいという答えが寄せら. 本会のテーマ「デザインを哲学する〜豊かさを再考する」か. れました。また、道具とは何かという本質的なことを考えたい. ら考えると、「道具のありようから生活のありようを考える」. という哲学的な期待もありました。もちろん、道具は面白いか. ということが道具学会のスタンスだといえます。道具のありよ. ら知識を広げたいという素朴な意見もありました。世界のいろ. うとデザインは深く関係しています。 道具がどのような形を. いろな道具を知り、それを集めて博物館のようなものを作りた. しているか、どのような機能を持っているかということはデザ. いといったものも含め、3つの領域として「道具作りの実践と. インによって決まるからです。ただし、我々は道具を見ている. 提案」「道具の本質を考える」「道具についての知識を広げる」. というよりも、その先の生活を見ているといえます。ここで. があり、それらをふまえて学会はスタートしました。. は、デザイン学と道具学は対称的な視点を持っていると言えま. これまでの活動としては研究集会を行ってきました。研究発. す。狭義のデザイン学はデザインするための学や知からモノを. 表やシンポジウムといったものです。また、フィールドワーク. 考え、学問の核心にはモノ、実体があります。しかし、我々. が盛んで、「海外道具探検」と称して海外調査旅行を行いまし た。はじめに訪問地を決めてから同行する人を募るというとい うフィールドワークです。さらに色々な出版物もあります。学 会出版物はもちろんですが、会員個人から出版された著書もあ ります。それから、 「湯たんぽプロジェクト」という活動もあ りました。東北の震災前に北陸で震災がありましたが、学会員 のなかに湯たんぽを研究している方がおり、被災地に湯たんぽ を送ろうと企画したものです。その方の湯たんぽメーカーとの つながりを活かし、費用は募金で集めました。しかし、この企 画は結局失敗してしまいました。実は避難所に湯たんぽが届い ても、それが全員に行き渡らないと不公平になるという問題が あり、配ることができなかったのです。 それから、道具学会に近い研究手法や研究対象を持っている 日本民具学会、日本生活学会とともに合同シンポジウムも行っ ています。これまでに二回開催し、二回目は今年の三月に行い ました。本日もいくつかの学会が集まっていますが、同じよう なかたちになっています。 先ほどふれた「海外道具探検」についてですが、主に中国の 古い町を見にゆくというツアーとフランスを中心とするヨー ロッパにコレクションを見に行くという企画を行いました。な ぜ中国とフランスなのかというと、世界の道具のあり方を考え るときに日本と中国、フランスという三角測量的な視野で考え たいという意図があったためです。 学会の出版活動としてはさまざまなことに取り組んできまし たが、論文集はもちろんのこと、「道具学会 NEWS」のような 小さな刊行物も出してきました。また、「絵葉書通信」という ものもあります。月に一回、会員が「このような気になる道具 がありますが、どう思いますか」というような写真と文章を葉 書にして全会員に送っています。また会員の中にはジャーナリ ズム系、編集系の方もおり、会員が著者・編者になった単行本 も多く出されてきました。. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 19.
(3) (道具学)はデザインされたモノから生活世界を探っています。. は学生を農山村に連れて行き、そこの文物を調べるという、デ. つまり、道具学はデザイン学とは逆の方向から道具を見ている. ザイン学生にとってはややショッキングなものでした。まさに. ことになります。しかし、ことはそれほど単純ではありませ. 農山村の生活世界を直接探るというものだったのです。私自. ん。モノのまわりには使い方やソフトウェアといった事柄が関. 身、「なぜ農山村なのか」と思いましたが、当時の時代背景と. わります。さらに見ると、そういったものが無数に集まって全. して現代文明への批判があったのだと思います。かつての豊か. 体像としての生活世界があるのではないでしょうか。道具学で. な生活世界が産業化と都市化によって崩れてきている。まだか. は「生活世界」という語はあまり使いませんが、本会の午前中. ろうじて残っている豊かな生活世界を見に行け、と学生を農山. に向井先生が「『生』の全体性としての生活世界」と述べられ. 村に送り出したのではないかと思います。. ました。「世界」という言葉には生活様式や生活行為だけでは. かつてデザイン学会でもデザインするための学・知に取り組. なく、そこに住む人が何を欲し、何を夢見ているかというよう. む人たちとアノニマスなデザインを研究する人たちの間で熾烈. な精神世界が入っていると思います。このような考えから、道. な議論がありました。デザイン学というデザインするための. 具学における生活には広がりがあり、その意味で「生活世界」. 学・知と、道具学というデザインされたものから生活世界を探. といったほうが適切に思えます。我々の周りにある生活世界を. る学・知はどこかで深くリンクしているのだと思います。. デザイン学と道具学は違う論法で見ており、それぞれの構図を 持っているということかも知れません。 デザイン研究の関心がモノを生み出すことに限らないという 認識がここ数十年で広まり、サービスや社会的な仕組みといっ たことまでがデザインの対象になってきました。その一方で、 デザイン学会においてもアノニマス・デザインの研究(誰がデ ザインしたのかわからなくとも、人間の歴史の中で作られ使わ れてきたモノや物質文化の研究)が盛んに行われてきました。 さらに、我々の学生時代にはデザイン・サーベイの流れもあり ました。私の恩師である宮崎清先生(元千葉大学教授)の教育. 20. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017.
(4) デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 21.
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