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パネルディスカッション デザインの哲学

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Academic year: 2021

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(1)パネルディスカッション デザインの哲学~豊かさを再考する 道具のありよう(デザイン)から生活を再考する 面矢慎介. OMOYA Shinsuke. 滋賀県立大学. The University of Shiga Prefecture. 道具学会. Forum Douguology. 1 道具学会についてと現在. 具学の「フォーラム」を作ろうということになりました。. 道具学会の面矢です。道具学会をご存知の方はいらっしゃい ますか。 (挙手)……多くの方がご存知で嬉しい限りです。しか. 道具とは何か. し、我々は実は文科省に認められた学会ではありません。いわ. ところで、道具とはどのようなものかというと、それ自体が. ゆる日本学術会議協力学術研究団体には登録されていません。. 道具学の研究テーマの一つですが、人間が生活、生存のために. 多くの方はご存知の内容だと思いますが、はじめに道具学会. 使うもの、“Artifact” の総称としています。しかし、個人的に. とそのプロジェクトについてお話ししたいと思います。また、. 「道具」とは “Artifact with Function” ではないかと思ってい. そのあとに道具のありようから生活のありようを再考するとい. ます。表象機能以外の機能を託された日常物、いわゆる、デザ. う一つの提案をしたいと思っています。. インされたものということになりますが、ただし単に Artifact. まずこの学会がどのように始まったかというと、1960年代、. としてしまうとやや厄介です。というのも、“Artifact” という. GK インダストリアルデザイン研究所の中で道具論研究という. と史的価値のある美術品を含むからです。我々としては、これ. ものが始まりました。これは道具の本性、ありようを生態、論. はちょっと置いておいて、それ以外の領域を想定しています。. 理から推論して仮説を設定し、それをもとに実作をするという. 誰がデザインしたのかわからないけれど、人間が何らかのかた. 活動でした。歴史的にみれば、当時はメタボリズムが盛んに議. ちでデザインしたもの、あるいはデザインされたものを「道. 論されていました。道具論研究はその流れの中で起こったとみ. 具」と呼んでいるという認識です。. ることができるでしょう。やがて GK のリーダーである榮久庵. 18. 憲司さんが「道具論」を発展させて「道具学」にならないかと. 道具学から見えてくるもの. 提言されました。榮久庵憲司さんについては、本日、GK の田. 道具学の研究対象についてお話しします。ここで[D]を. 中一雄さんがいらっしゃるので多くは語りませんが、榮久庵さ. 「道具」の意とします。そして、[D]がそれをとりまくシステ. んが社内研究部門として GK の中に道具学を研究する部門を設. ム(世界との関係)とします。すると、道具とは人工物の一つ. 置したのですが、私は大学院を出たあとそこに入社し、道具学. だから道具学の研究対象は人工物であろうというふうに、多く. にふれることになります。そして、やがて日本生活学会のなか. の人たちは思うかも知れません。しかし、道具は何も語らない. に道具研究会が発足しました。社内の研究活動だと思っていた. ので、道具に語らせるためには道具を見ているだけでは何もわ. ものが社外に出てきたのです。その後、学会設立の構想が始ま. かりません。結局、我々が考えていることはこういうことでは. るのですが、当時の我々には関連諸学を集めたいという思いが. ないでしょうか。[D - M](D:Dougu、M:Man)つまり. ありました。デザイナーがデザイナーの輪のなかだけで話して. 「道具」と「人間」のシステム(関係)のことであろうという. いても発展性がないという気持ちが大きかったと思います。設. ことです。ただ、問題は人間といっても非常に広く、人間の社. 立時の代表世話人は榮久庵さん、川添登さん(建築評論)、森. 会のことをいっているのか、生活のことをいっているのか、文. 政弘さん(ロボット工学、東京工業大学教授) 、佐々木高明さ. 化のことなのか、精神のことなのか、それとも、身体のこと. ん(文化人類学、国立民族学博物館館長) 、そして山口昌伴さ. か、各学会員たちも色々な関心をもって集まっているのでそれ. ん。私の上司でまさに道具学者でした。このようにして関連諸. ぞれです。. 学を集めるプロジェクトとしてデザイナー以外の方々も多く集. そこで、学会設立前に道具に関するいろいろな研究分野が想. まりました。. 定されました。例えば、いろいろな関連した学問があります。. 学会設立の目的として、人間のつくり出した道具のありよう. 道具に関係しそうな学問を並べてみると、デザイン学がありま. をつぶさに見すえることによって「人間 - 生活 - 道具」の総体. すし、芸術工学があります。また、生活学や民俗学がありま. を考えることを提唱しました。そのための研究分野の構築を目. す。そのような各学会の隙間を埋めるように道具学は成立しう. 指し、組織として道具に関するさまざまな議論を交わす場、道. るのではないかと考えました。. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017.

(2) 会員を集めて彼らに道具学会で何をしたいですかというアン ケートをとったことがあります。デザイナーではない一般の会. 2 道具のありよう(デザインされたもの)から生活のありよ うを再考する. 員からも道具作りの実践と提案を行いたいという答えが寄せら. 本会のテーマ「デザインを哲学する〜豊かさを再考する」か. れました。また、道具とは何かという本質的なことを考えたい. ら考えると、「道具のありようから生活のありようを考える」. という哲学的な期待もありました。もちろん、道具は面白いか. ということが道具学会のスタンスだといえます。道具のありよ. ら知識を広げたいという素朴な意見もありました。世界のいろ. うとデザインは深く関係しています。 道具がどのような形を. いろな道具を知り、それを集めて博物館のようなものを作りた. しているか、どのような機能を持っているかということはデザ. いといったものも含め、3つの領域として「道具作りの実践と. インによって決まるからです。ただし、我々は道具を見ている. 提案」「道具の本質を考える」「道具についての知識を広げる」. というよりも、その先の生活を見ているといえます。ここで. があり、それらをふまえて学会はスタートしました。. は、デザイン学と道具学は対称的な視点を持っていると言えま. これまでの活動としては研究集会を行ってきました。研究発. す。狭義のデザイン学はデザインするための学や知からモノを. 表やシンポジウムといったものです。また、フィールドワーク. 考え、学問の核心にはモノ、実体があります。しかし、我々. が盛んで、「海外道具探検」と称して海外調査旅行を行いまし た。はじめに訪問地を決めてから同行する人を募るというとい うフィールドワークです。さらに色々な出版物もあります。学 会出版物はもちろんですが、会員個人から出版された著書もあ ります。それから、 「湯たんぽプロジェクト」という活動もあ りました。東北の震災前に北陸で震災がありましたが、学会員 のなかに湯たんぽを研究している方がおり、被災地に湯たんぽ を送ろうと企画したものです。その方の湯たんぽメーカーとの つながりを活かし、費用は募金で集めました。しかし、この企 画は結局失敗してしまいました。実は避難所に湯たんぽが届い ても、それが全員に行き渡らないと不公平になるという問題が あり、配ることができなかったのです。 それから、道具学会に近い研究手法や研究対象を持っている 日本民具学会、日本生活学会とともに合同シンポジウムも行っ ています。これまでに二回開催し、二回目は今年の三月に行い ました。本日もいくつかの学会が集まっていますが、同じよう なかたちになっています。 先ほどふれた「海外道具探検」についてですが、主に中国の 古い町を見にゆくというツアーとフランスを中心とするヨー ロッパにコレクションを見に行くという企画を行いました。な ぜ中国とフランスなのかというと、世界の道具のあり方を考え るときに日本と中国、フランスという三角測量的な視野で考え たいという意図があったためです。 学会の出版活動としてはさまざまなことに取り組んできまし たが、論文集はもちろんのこと、「道具学会 NEWS」のような 小さな刊行物も出してきました。また、「絵葉書通信」という ものもあります。月に一回、会員が「このような気になる道具 がありますが、どう思いますか」というような写真と文章を葉 書にして全会員に送っています。また会員の中にはジャーナリ ズム系、編集系の方もおり、会員が著者・編者になった単行本 も多く出されてきました。. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 19.

(3) (道具学)はデザインされたモノから生活世界を探っています。. は学生を農山村に連れて行き、そこの文物を調べるという、デ. つまり、道具学はデザイン学とは逆の方向から道具を見ている. ザイン学生にとってはややショッキングなものでした。まさに. ことになります。しかし、ことはそれほど単純ではありませ. 農山村の生活世界を直接探るというものだったのです。私自. ん。モノのまわりには使い方やソフトウェアといった事柄が関. 身、「なぜ農山村なのか」と思いましたが、当時の時代背景と. わります。さらに見ると、そういったものが無数に集まって全. して現代文明への批判があったのだと思います。かつての豊か. 体像としての生活世界があるのではないでしょうか。道具学で. な生活世界が産業化と都市化によって崩れてきている。まだか. は「生活世界」という語はあまり使いませんが、本会の午前中. ろうじて残っている豊かな生活世界を見に行け、と学生を農山. に向井先生が「『生』の全体性としての生活世界」と述べられ. 村に送り出したのではないかと思います。. ました。「世界」という言葉には生活様式や生活行為だけでは. かつてデザイン学会でもデザインするための学・知に取り組. なく、そこに住む人が何を欲し、何を夢見ているかというよう. む人たちとアノニマスなデザインを研究する人たちの間で熾烈. な精神世界が入っていると思います。このような考えから、道. な議論がありました。デザイン学というデザインするための. 具学における生活には広がりがあり、その意味で「生活世界」. 学・知と、道具学というデザインされたものから生活世界を探. といったほうが適切に思えます。我々の周りにある生活世界を. る学・知はどこかで深くリンクしているのだと思います。. デザイン学と道具学は違う論法で見ており、それぞれの構図を 持っているということかも知れません。 デザイン研究の関心がモノを生み出すことに限らないという 認識がここ数十年で広まり、サービスや社会的な仕組みといっ たことまでがデザインの対象になってきました。その一方で、 デザイン学会においてもアノニマス・デザインの研究(誰がデ ザインしたのかわからなくとも、人間の歴史の中で作られ使わ れてきたモノや物質文化の研究)が盛んに行われてきました。 さらに、我々の学生時代にはデザイン・サーベイの流れもあり ました。私の恩師である宮崎清先生(元千葉大学教授)の教育. 20. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017.

(4) デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 21.

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