資 料
*地方独立行政法人山口県立病院機構山口県立総合医療センター助産院(Yamaguchi Grand Medical Center Maternity Hospital)
2015年7月1日受付 2016年4月2日採用 日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 30, No. 1, 141-147, 2016
院内助産院で取り扱ったlow risk経産婦に対する
妊娠・分娩管理の安全性評価
Assessment of perinatal outcome of low risk multipara-women
in a midwife-managed delivery unit established
with the perinatal care center
町 田 玉 枝(Tamae MACHIDA)
*近 藤 由美子(Yumiko KONDO)
*矢 阪 裕 子(Hiroko YASAKA)
*佐 世 正 勝(Masakatsu SASE)
* 抄 録 目 的 全国で院内助産院が設立され,助産師主導の外来及び院内助産が行われている。A病院の総合周産期 母子医療センター内に開設した院内助産院における妊娠・分娩管理の安全性について検討を行った。 方 法 平成21年1月1日∼平成25年12月31日までに,院内助産院での妊娠管理を行ったlow risk経産婦214 名のうち分娩取り扱いを行った179名(以下,助産院群)と同期間に周産期センターで管理したlow risk 経産婦258名(以下,センター群)との周産期予後の比較を行った。第2三半期まで母児とも正常に経過 したと医師により判断された経産婦が助産院での分娩を希望した場合に,妊娠28週より助産師主導管 理を行った。外来終了後に毎回,診療内容について産科責任医師と協議を行った.分娩には助産師2名 が立ち会い,フリースタイルで行なった.分娩を担当した助産師が必要と判断した場合には,医師の来 棟要請や周産期センターへの転科・転棟を行った. 結 果 妊娠期間は助産院群で有意に長かった。出生体重,分娩時出血量には差はなかった。臍帯動脈血pH 値には差はなかったが,アプガールスコア1分および5分値において,助産院群で有意に高かった。両 群に臍帯動脈血pH値7.00未満の症例はなかった。 結 論 助産師主導で行なったlow risk経産婦の妊娠・分娩管理の予後は,医師によるものと差はなく良好で あった。low risk経産婦に対する助産師主導の妊娠・分娩管理は,安全に行うことが可能であると考え られる。 キーワード:院内助産院,妊娠分娩管理,安全性,経産婦The purpose of this study is to examine the safe perinatal care and delivery for low risk women by a midwife-managed delivery unit.
Methods
A total of 214 low risk multipara women who wished care in a midwife managed delivery unit were enrolled in this study. The care for pregnant women, assessed to be in low risk by obstetricians, was started after 28 weeks of gestation. In cases where complications or increased risk factors become event during pregnancy, labor, or in the postpartum period, the woman is referred to an obstetrician in the perinatal care center. Thirty-five women were excluded due to complications occurring before delivery. The perinatal outcomes of pregnancy were compared between 179 women in a midwife managed delivery unit and 258 low risk multipara women in a consultant led labor ward.
Results
Significant differences between the midwives unit and labor ward were found in Apgar Score at 1 minute (midwife managed vs. consultant led; 8.6±0.5 vs. 8.2±0.7, p<0.0001) and 5 minutes (midwife managed vs. consultant led; 9.3±0.5 vs. 9.0±0.4, p<0.0001), and in gestational age (midwife managed vs. consultant led; 39.8±0.9 weeks vs. 39.4±0.9 weeks, p<0.01). There were no significant differences in birth weight, blood loss, and umbilical artery blood gas pH (UA-pH). There was no severe asphyxia with UA-pH less than 7.00. Overall, there was little difference between the two groups.
Conclusions
Midwife managed perinatal care for low risk women results in safety equal to consultant led treatment. Key words: midwife managed delivery, low risk women, perinatal outcomes, safety, multipara
Ⅰ.緒 言
我が国では1960年以降,医師管理下での施設分娩 が大部分を占めており,助産師主導による分娩は僅 かである(厚生労働省・母子保健の現状,p.9)。また, 施設分娩においても妊娠や分娩管理は医師主導であ り,助産師は医師の介助や保健指導が主な役割となっ ている。しかし,産科医師不足や分娩取り扱い施設の 減少に伴い,正常妊娠に対する助産師主導の妊娠分 娩管理が見直され(厚生労働省・安心と希望の医療確 保ビジョン,pp.8-9),国も「院内助産所・助産師外来 施設整備事業」を推進している(医政発第0331028号厚 生労働省医政局長)。しかし,我が国では助産師が管 理を行なった妊娠・分娩の安全性に関する評価は少な い(清水・斎藤,2014,pp.519-526;Suzuki, Hiraizumi, Satomi, et al., 2011, pp.1046-50)。low risk妊婦に対す る助産師主導の妊娠・分娩管理が良好に帰結するかど うかを検討することは,限られた人的資源の中で世界 トップクラスの周産期医療レベルを維持して行かなけ ればならない状況において助産師の活用をすすめてい く上で重要である。本研究は,助産師主導管理を行な ったlow risk経産婦の妊娠管理の検討および医師主導 管理を受けた妊婦と出生時の母児の状態を比較するこ とにより,院内助産院における妊娠・分娩管理の安全 性を明らかにすることを目的とした。Ⅱ.研究方法
1.方法 1 ) A病院院内助産院の概要 A病院院内助産院(以下,助産院)はB県の県央部に ある総合病院A病院内にあり,また同院には総合周産 期母子医療センターが設置されている。助産院は,近 隣の産婦人科施設の相次ぐ分娩取り扱い中止によりA 病院での正常妊娠管理の症例が増加した為に開設され, 平成21年1月より分娩取り扱いを開始した。対象は第 2三半期まで母児とも正常に経過したと医師により判 断され,助産院での分娩を希望した経産婦とし,妊 娠28週より助産師主導管理を行った。助産院外来で は,妊娠28週,30週,34週,37週,38週,39週,40週 で妊婦健康診査(以下,健診)を行った。なお,妊娠 32週,36週及び41週には医師外来における健診を行 った。助産院には経験年数10年以上の助産師9名が所 属しており,全員が日本周産期・新生児医学会が実施 する新生児蘇生法Aコースを修了している。妊娠分娩 管理に当たっては,「助産所業務ガイドライン」に沿っ た病院独自の基準・手順を作成した。助産院外来は完 全予約制で一人当たり30分の時間をかけて行い,健院内助産院で取り扱ったlow risk経産婦に対する妊娠・分娩管理の安全性評価 診内容は通常の問診・視触診,血圧・尿蛋白・尿糖の 確認に加え,独自の診療内容としてクスコ診による膣 分泌物を含めた膣内の観察,超音波診断装置による最 大羊水深度の計測および胎位確認とした(町田・石田 ・吉村他,2011,pp.351-356) 。助産院外来終了後に 毎回,診療内容について産科責任医師と協議を行った。 協議内容および助言は診療録に記載した。また,健診 時に行なった胎児心拍数モニタリングにおいて一過性 徐脈が出現した等の緊急を要する場合には,直ちに産 科責任医師と電話にて協議した。医師による健診時に は,可能な限り助産院助産師が介助や保健指導を行っ た。また,助産院外来時には胎児への愛着を高める 目的で,胎児の超音波画像を妊婦に見せ視覚的な胎児 認知を促進した(中川・永田・川元他,2014,pp.8-13)。 妊娠10ヶ月に入るとフリースタイル分娩に向けたシ ュミレーションや体作りのための保健指導を行った。 助産院と周産期センターの分娩管理方法の比較を表1 に示した。分娩には助産師2名が立ち会い,和室にお けるフリースタイル分娩を行なっている。平成23年 までは入院時の胎児心拍数モニターおよび分娩時期に 応じた胎児心拍数確認を行い,産婦人科診療ガイドラ イン産科編2011(日本産科婦人科学会/日本産婦人科 医会,2011,pp.195-205)が出されて以降は全例無線式 の分娩監視装置を分娩まで使用した。分娩を担当した 助産師が必要と判断した場合には,産科医師や小児科 医の来棟要請や周産期センターへの転科・転棟を行っ た。なお,A病院は総合周産期母子医療センターであ り,院内に産婦人科医,小児科医が常駐している。 2 ) 調査方法 対象者は,平成21年1月1日から平成25年12月31日 の間に,第2三半期まで母子とも正常に経過したと医 師により判断され,助産院での妊娠・分娩管理を希 望したlow risk経産婦214名を対象とし,分娩管理の 評価には分娩まで取り扱った179名(以下,助産院群) とした。また,同期間に医師主導管理下に周産期セ ンターにおいて分娩管理を行ったlow risk経産婦258 名 (以下,周産期センター群)をコントロールとした。 なおlow risk経産婦とは合併症がなく妊娠後期リスク スコア(中林,平成16年度)が4点未満とし,他院か らの搬送例,分娩誘発例は除外した。 データ収集方法は,診療録から妊娠中および分娩時 のデータを抽出し後方視的に検討した。また妊婦健診 ・分娩担当者から業務上の不安の聞き取りを行なった。 分娩の安全性を評価する指標は,助産院分娩希望者か ら助産院分娩に適合したlow risk妊婦を選別できてい るか,医師外来で管理されたlow risk妊婦と比較して 母体予後と関連する出産年齢,分娩時出血量,児の短 期予後に関連する分娩週数,臍帯動脈血pH値,アプ ガースコア,出生体重について差がないかどうか,出 生後にriskのある褥婦や新生児を適切に選別できてい るかとした。 2.分析方法 解 析 に はStatView version 4.5を 使 用 し, 出 産 年 齢,分娩週数,分娩時出血量,出生体重の分析には unpaired-t検定,臍帯動脈血pHの分析にはχ2検定およ びMann-Whitney U検定,アプガースコアの分析には Mann-Whitney U検定を用い,危険率5%未満を有意 差ありとした。 3.研究の倫理的配慮 本研究は,A病院看護部倫理委員会(審査番号H21-01)の承認を得て行った。倫理的配慮について,後方 視的検討のため対象者への同意は得ていない。診療録 より収集したデータは連結不可能匿名化を行い,公 表に関しても個人が特定できないよう配慮した。また, 担当者から業務上の不安の聞き取りにあたり,口頭に て本研究の趣旨を説明し同意を得た。情報は連結不可 能匿名化を行い,公表に関しても個人が特定できない よう配慮した。収集されたデータはインターネットに 接続不可能でパスワードによりセキュリティーを保た れたパーソナルコンピュータに保管し,論文として報 告後5年以内に廃棄するものとした。
Ⅲ.結 果
214名の妊婦に対する助産院外来の延べ実施回数は 1178回であり,平均一人5.5回であった。助産院での 表1 助産院と周産期センターの分娩管理方法の比較 助産院分娩 周産期センター分娩 医師立ち合い なし あり 分娩場所 和室(畳の部屋) 分娩台(LDR) 分娩体位 フリースタイル 砕石位 血管確保 なし(弛緩出血既往の産婦のみ予防的確保) 全例に行う 分娩監視装置 全例(コードレス) 全例 促進剤使用 なし 必要時(医師の指示) 会陰切開 なし 必要時 LDR: LaborDelivery Recovery外来終了後の医師との協議に要した時間は,最大6名 の健診で約10分程度であり,健診における問題点の 確認や情報の共有を行うことができた。また,健診に 慣れていない助産師において,健診終了後の医師との 協議と医師外来とのタスキがけの助産院外来により, 安心して健診に習熟することができた。助産院管理を 希望した妊婦の経過を図1に示した。健診にあたって は,「助産所業務ガイドライン」に沿って作成した手順 により陣痛発来前にリスクを持った妊婦を除くことが 可能であった。助産院管理を希望しながら周産期セン ター分娩となった症例は,妊娠期で35名(16%)あっ た。医師が許可をしたが,助産院外来での詳細な問診 から喘息発作が2年以内に起こっていたという既往が 判明し周産期センター管理となった症例が2例含まれ ていた。羊水過多症例は助産院外来でも疑われており, 最終的に医師外来で診断された。骨盤位が助産院外来 で認められた場合には逆子体操の指導および毎週の胎 位確認が行なわれ,妊娠36週の時点で骨盤位であっ た場合には周産期センター管理となった。妊娠36週 の早産が3例あったが,いずれも医師外来健診後であ った。また,妊娠32週以降に胎児心拍数モニター異 常のため3例がセンター管理となった。分娩時におけ る助産院群とセンター群の比較を表2に示した。検討 の対象となった両群間における分娩回数(助産院群 vs. 助産院外来:28週・30週 喘息 2名(0.9%)前回弛緩出血 1名(0.4%) 夫の希望 1名(0.4%) 医師外来:32週 GDM 1名(0.4%)PIH 2名(0.9%) 羊水過多 1名(0.4%) 本人の希望 1名(0.4%) 助産院外来:34週 医師外来:36週 骨盤位 6名(2.8%)HFD 2名(0.9%) FGR 1名(0.4%) GBS・クラミジア陽性 4名(1.8%) 早産 3名(1.4%) 助産院外来:37∼40週 医師外来:41週 予定日超過 5名(2.3%) 助産院分娩 179名(84%) CTG異常 3名(1.4%) 前期破水 2名(0.9%)
GDM:gestational diabetes mellitus, PIH: pregnancy induced hypertension, HFD: heavy-for-dates, FGR: fetal growth restriction, GBS: group B streptococcus, CTG: cardiotocogram
図1 助産院管理を希望した妊婦の経過 表2 分娩時における助産院群と周産期センター群の比較 助産院群 n=179 周産期センター群n=258 有意差 出産年齢(歳)a 分娩週数(週)a 分娩時出血量(ml)a 出生体重(g)a アプガースコア(1分)b アプガースコア(5分)b 臍帯動脈血pH値b 30.0 4.5* 39.8 0.9* 408 320* 3134 3.26* 8.5(710)** 9(810)** 7.33(7.00-7.48)** 30.0 4.4* 39.4 1.0* 375 236* 3080 359* 7(410)** 9(810)** 7.33(7.007.53)** なし p<0.01 なし なし p<0.0001 p<0.0001 なし
院内助産院で取り扱ったlow risk経産婦に対する妊娠・分娩管理の安全性評価 周産期センター群;1.4 0.6 vs.1.2 0.5,平均 標準偏 差),後期リスクスコア(助産院群 vs. 周産期センター 群;0.31 0.67 vs.0.38 0.67,平均 標準偏差)に有意 差はなかった。出産年齢に差はなかった。分娩週数は 助産院群で有意に長かったが,出生体重には差はなか った。分娩時出血量にも差はなかった。出生時の状態 を示す臍帯動脈血pH値には差はなかった。アプガー ルスコア1分値および5分値において,助産院群は周 産期センター群に対して有意に高かった。両群にお ける臍帯動脈血pH値の詳細を表3に示した。両群に 臍帯動脈血pH値7.00未満の症例はなかった。分娩後 に周産期センター管理となった症例は,8例あり,母 体5名・児3名の転棟理由を表4に示した。妊娠後期の 胎児期に発症したと考えられる腸重積による腸閉塞の ため出生当日に緊急手術となった児があったが,助産 師が新生児腹部の異常を適切に評価し周産期センター NICU転棟となっていた。今回,助産院で管理を行っ た妊婦214名および出生した児179名に,分娩後1年の 時点で母の死亡症例や後遺症例はなく,また児に脳性 麻痺,発達障害および機能障害を認めた症例もなかっ た。
Ⅳ.考 察
近年,医療サービスの質の向上と量の確保ならびに 医療従事者の勤務環境改善についての提言(厚生労働 省,平成20年6月)や分娩施設確保にむけた国の支援 (医政発第0331028号厚生労働省医政局長)もあり,助 産外来や院内助産システムの実施施設は着実に増加 し(厚生労働省医政局看護課,p.4),チーム医療の推 進や妊産婦の満足度向上に貢献している(日本看護協 会,pp.11-13)。しかし,助産師が主導的な管理を行 なった妊娠・分娩管理の経過および転帰を検討した報 告は少なく(清水・斎藤,2014,pp.519-526;Suzuki, Hiraizumi, Satomi, et al., 2011, pp.1046-50),助産師主 導の分娩管理の安全性に関して十分な評価がなされ ているとは言えない。一方,海外では助産師主導分 娩は安全で満足度も高いという報告も多いが(Hund-ley・Cruickshank・Lang, et al., 1994, pp.1400-1404; Turnbull・Holmes・Shields, et al., 1996, pp.213-218; MacDorman・Singh, 1998, pp.310-317),助産師主導分 娩が盛んなオランダにおいて助産師主導分娩が国の周 産期レベル低下に影響している可能性を指摘する報告 がなされている(Evers・Brouwers・Hukkelhoven, et al., 2010, c5639)。また,我が国においても助産師主導 の妊娠分娩管理に対し警鐘を鳴らす報告もある(池田 ・鴨下・望月他,2004,pp.553-556)。今後,助産師主 導の妊娠・分娩管理を進めていくためには,助産師主 導で行なってきた妊娠・分娩管理の評価はなくてはな らないものである。 今回検討を行なったA病院では,平成21年から助 産院を行なってきた。医師との協業型で,第2三半期 まで母児とも正常に経過したと医師により判断され た経産婦が助産院での分娩を希望した場合に,妊娠 28週より助産師主導管理に移っている。早産が3例あ り,いずれも医師外来後の妊娠36週以降であり予後 は良好であった。しかし,早産にいたる事例もあり得 ることから考えると,新生児の予後に重大な影響を及 ぼす超早産の時期を経過した後に助産師管理に移行す ることは,周産期予後を考えれば妥当と思われる。協 業型で妊婦管理を行なう利点として,助産院外来では 一人当たり30分の時間をかけて行なわれるため,30分 間に数人の健診を行なっている忙しい医師外来のみ では気がつかれにくいことにも注意が及ぶ点が挙げら れる(町田・石田・吉村他,2011,pp.351-356)。実際 に,周産期センター管理に戻された症例の中に2例の 妊娠中に無症状であった喘息合併妊婦が含まれていた。 また,助産師にとっても外来終了後に医師との協議を 持つことや間に定期的に医師外来が入ることは,正常 からの逸脱を把握する上で重要であり,助産師単独で 外来を行なうことのリスクや心理的重圧感の軽減に も有効であると思われる(町田・石田・吉村他,2011, pp.351-356)。今回の検討でも,助産師外来で疑われ 表3 2群別の臍帯動脈血pHの比較 (人(%)) 助産院群 (n=179) 周産期 センター群 (n=258) X 2値 p値 臍帯動脈血pH値 7.00∼7.19 7.20∼ 164 15(91.7)(8.4) 246 12(95.3) 1.932 0.11(4.7) X2検定 表4分娩後に周産期センター管理となった症例の転棟理由 対象 理 由 症例数 母 体 弛緩出血 胎盤娩出遅延 PIH 産後出血持続(ⅩⅢ因子低下) 2 1 1 1 新生児 呼吸障害発熱,感染症疑い 腹部膨満・小腸閉塞疑い 1 1 1の保健指導に助産院助産師が積極的に係ることにより, 診療の継続性が維持され妊婦の信頼も得られるものと 思われる。 low risk妊婦であっても,僅かではあるが陣痛発来 後に異常を呈する場合がある(Sameshima, Ikenoue, Ikeda, et al., 2004, pp.118-123)。今回の検討において も,214例中3例(1.4%)が胎児心拍数モニター異常の ために周産期センター管理に移行していた。したがっ て,入院時や胎動減少を訴えて受診した際には,必ず 胎児心拍数モニタリングを行なう必要がある(日本産 科婦人科学会/日本産婦人科医会,2011)。助産院でフ リースタイル分娩を行なう際には,分娩監視装置のプ ローブコードが邪魔になるが,最近普及してきたコー ドレス・プローブを使用すれば,産婦も介助する助産 師にも負担なく連続モニタリングが可能である(泉・ 佐藤・石田他,2012,pp.383-388)。間欠的胎児心拍数 モニタリングでも十分である(Vintzileos・Nochimson ・Guzman, et al., 1995, 149-155;Alfirevic・Devane・ Gyte, 2006)が,産婦のケアを充実させるための手段 としてコードレス・プローブの使用は考慮する価値が あると思われる。助産院群において分娩週数はより 予定日に近かった。差はわずかであり出生体重や臍帯 動脈血pHに差がないことから,妊娠予後に影響を及 ぼしている可能性は少ないが,妊婦の主体的な体づく りへの支援とありのままの経過をみる助産院外来では, 医師外来で時に行われる内診指による頸管刺激などの 処置がなく,より自然な妊娠経過をたどった結果とい う可能性はある。予定日超過で周産期センター管理に なった症例が5例(2.3%)あった。最近は妊娠42週を 越えない範囲での誘発入院予約となっているが,開院 当初は妊娠41週に入るとすぐに誘発目的の入院が決 定していたことも影響していると考えられる。 新生児の出生時の状況は,周産期センター群と同様 に良好であった。アプガースコアは助産院群の方が高 かったが,臍帯動脈血pHには差はなく医師による評 価と助産師による評価の違いが影響していた可能性 は否定できない。むしろ,酸血症を示す臍帯動脈血 pH7.20未満の症例数に有意差はないが助産院群で多 く,出生した児の観察は慎重に行なう必要があり,新 生児蘇生にも習熟しておくことが重要である。また, 分娩第二期は臍帯動脈血pH低下の原因となる胎児徐 脈が出現しやすい。分娩第二期に会陰保護を行なう際 切な評価が児の良好な予後につながった症例があった。 日頃から正常新生児を丁寧に診ることは,正常から逸 脱した新生児を見分けることにもつながると思われる。 分娩時の母体出血は助産院群と周産期センター群 で差はなかったが,分娩後に周産期センター管理に なった5例のうち3例は出血が原因であった。フリー スタイル分娩で出血のリスクが高くなることはない と言われている(印出・荒巻・柴田他,2010,pp.1670-1676)。しかし,分娩時の出血は母体生命に直結する異 常であり,産科ガイドラインでは産後出血が500mLを 越えた場合には産後の出血過多を疑い,補液および子 宮収縮薬の投与等の初期治療を開始すると記載されて いる(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会,2014)。 我々は,ルーチンには血管確保を行なっていないが, 弛緩出血既往のある妊婦には了解を得て血管確保のみ 行なっている。この様な予防的な処置も必要と考えて いる。 外来管理や分娩管理において,日頃から産科医や小 児科医と情報の共有や意思疎通をはかり,適切な管理 を行なうことにより産科医や小児科医からの信頼を得 ておくことが,スムーズな妊婦や新生児の紹介・医師 の速やかな来棟応援につながったと思われる。助産院 の母児の緊急事態に随時対応可能というメリットを生 かしつつ,自然な分娩を望む妊婦の希望をかなえるた めに,一つずつ結果を積み重ねていく必要がある。本 研究は,経産婦のみを対象とし検討数も十分ではない。 今後,対象を増やして検討を行っていく必要がある。
Ⅴ.結 語
助産師主導で分娩を取り扱う助産院における妊娠・ 分娩管理の安全性の検討を行った。助産院群と周産期 センター群において周産期予後の差はなく良好であっ た。また,医師管理が必要な妊産褥婦や新生児は「助 産所業務ガイドライン」の基準・手順に沿って適切に 周産期センターへの移行が行われていた。 文 献Alfirevic, Z., Devane, D., Gyte, G.M. (2006). Continuous cardiotocography (CTG) as a form of electronic fetal monitoring (EFM) for fetal assessment during labour.
院内助産院で取り扱ったlow risk経産婦に対する妊娠・分娩管理の安全性評価
Evers, A.C., Brouwers, H.A., Hukkelhoven, C.W., Nikkels, P.G., Boon, J., van Egmond-Linden, A., et al. (2010). Perinatal mortality and severe morbidity in low and high risk term pregnancies in the Netherlands: pro-spective cohort study. BMJ, 341, c5639.
Hundley, V.A., Cruickshank, F.M., Lang, G.D., Glazener, C.M., Milne, J.M., Turner, M.,et al. (1994). Midwife managed delivery unit: a randomised controlled com-parison with consultant led care. BMJ, 309, 1400-1404. 池田泰裕,鴨下詠美,望月純子,金井雄二,右島富士男 (2004).助産所からの搬送例の実状と周産期予後.日 本周産期・新生児医学会雑誌,40,553-556. 印出佑介,荒巻東香,柴田文香,濱田由美,廣畑早記子, 山崎綾子他(2010).ローリスク妊産婦における分娩 第二期の分娩体位と直接介助者の助産技術が短期周産 期予後に与える影響.周産期医学,40,1670-1676. 医政発第0331028号厚生労働省医政局長(平成20年3月31 日).院内助産所・助産師外来施設整備事業等の実施 について http://www.pref.shimane.lg.jp/life/kenko/ir yo/ shimaneno_ir yo/shisetusetubiseibi.data/B11_ innaijosann.pdf#search= [2015-04-15] 泉祐子,佐藤祥子,石田京子,伊藤令子,佐世正勝(2012). 胎児心拍数モニタリングにおける外側法無線式プロー ブの利点および問題点に関する検討.母性衛生,53(2), 383-388. 厚生労働省(平成20年6月). 安心と希望の医療確保ビジョン http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/06/dl/s0618-8a. pdf#search= [2015-04-15] 厚生労働省.母子保健の現状 http://www.mhlw.go.jp/stf/ shingi/2r9852000001oujo-att/2r9852000001oumv.pdf#search= [2015-04-15] 厚生労働省医政局看護課(H21.11.4).院内助産所・助産師 外来について http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1104-3j. pdf#search= [2015-04-15]
MacDorman, M.F., Singh, G.K. (1998). Midwifery care, so-cial and medical risk factors, and birth outcomes in the USA. J Epidemiol Community Health, 52, 310-317. 町田玉枝,石田京子,吉村栄子,伊藤令子,徳原多賀子, 佐世正勝(2011).low risk妊婦に対する助産師外来に おける妊婦健診の安全性評価(第1報).母性衛生,52 (2),351-356. 中林正雄.妊娠リスク自己評価法.厚生労働科学研究費補 助金(医療安全・医療評価総合研究事業)「産科領域に おける安全対策に関する研究」平成16年度総括研究報 告書別冊. 中川幸代,永田智子,川元恵子,藤本美由紀,佐世正勝 (2014).入院中妊婦の気分の変化と胎児への愛着形 成̶超音波装置を用いた看護介入前後の比較̶.山口 県母性衛生学会会誌,30,8-13. 日本看護協会.平成21年度「院内助産システムの普及・課 題に関する調査」報告. http://www.nurse.or.jp/home/innaijyosan/pdf/21-hokoku.pdf[2015-04-15] 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会(2011).分娩 監視の方法は? 産婦人科診療ガイドライン産科編 2011.pp.195-205,東京:日本産科婦人科学会事務局. 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会(2014).産後の 出血過多(PPH),その原因と対応は? 産婦人科診 療ガイドライン産科編2014.pp.184-187,東京:日本 産科婦人科学会事務局.
Sameshima, H., Ikenoue, T., Ikeda, T., Kamimoto, M., Ibara, S., et al. (2004). Unselected low-risk pregnancies and the effect of continuous intrapartum fetal heart rate monitoring on umbilical blood gases and cerebral palsy.
Am J Obstet Gynecol, 190, 118-123.
清水理恵,斎藤いずみ(2014).ローリスク妊婦における 院内助産の安全性に関する研究̶産科/産婦人科病棟 との比較から̶.母性衛生,55(2),519-526.
Suzuki S, Hiraizumi Y, Satomi M, Miyake H (2011). Midwife-led care unit for 'low risk' pregnant women in a Japa-nese hospital. J Matern Fetal Neonatal Med, 24, 1046-50. Turnbull, D., Holmes, A., Shields, N., Cheyne, H., Twaddle,
S., Gilmour, W.H., et al. (1996). Randomised, controlled trial of efficacy of midwife-managed care. Lancet, 348, 213-218.
Vintzileos, A.M., Nochimson, D.J., Guzman, E.R., Knuppel, R.A., Lake, M., Schifrin, B.S., et al. (1995). Intrapartum electronic fetal heart rate monitoring versus intermit-tent auscultation: a meta-analysis. Obstet Gynecol, 85, 149-155.