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財団法人日本ビルヂング経営センター 日本ビル経営管理士会(JBMS)

JAPAN BUILDING MANAGEMENT INSTITUTE BULLETIN

JAPAN BUILDING MANAGEMENT INSTITUTE BULLETIN

2008.

1

No.134

いしずえ

http://www.bmi.or.jp ■ 連載/記者の眼〈第3回〉

 08年不動産業界展望と07年の10大ニュース

■ わかりやすい不動産証券化 最新動向講座②

「不動産証券化とグローバル化」

有楽町駅前第1地区市街地再開発組合 事務局 細包憲志

有楽町駅前第1地区市街地再開発事業

「有楽町イトシア」について

特 集

(2)

ISHIZUE

NEWS

平成 19 年度「ビル経営管理士試験」受験者は倍増

前年比 100%増の 698 名が受験

 平成19 年度「ビル経営管理士試験」 は昨年12月9日に全国主要都市 6 会場で 実施された。受験申込者 770 名、受験者 698 名で前年比倍増となり過去最高の数 字となった。  受験者倍増の背景は、「ビル経営管理 士」資格が金融商品取引法の「投資運 用業」登録の必要資格となったことが あげられる。「投資運用業」登録には国 土交通省「不動産投資顧問業登録規程」 の登録が必要となっている。この登録 にあたっての人的要件の一つに「ビル 経営管理士」資格が位置づけられてい る。また19 年度から、ビル経営管理講 座修了者には総合記述科目が受験免除 となる特典が与えられたことも影響して いると見られる。  明けましておめでとうございます。 ビル業界は好調な企業業績を背景に、 東京都心部においてはオフィスビル の空前の低空室率が続いています。 また、2008 年以降オフィスビルの供 給量の急減が予想されるため、需給 は引き続き逼迫する見込みです。  一方、東京以外の都市においては、 証券化手法を用いた開発も進み、需 給が緩和する兆しがあります。  現在、ビル事業各社の業績は好調 裡に推移しておりますが、今後はこ の好調さを如何に持続させるかが課 題となっています。  また、昨年 9 月、金融商品取引法 が施行され不動産の証券化に新しい ルールが導入されようとしているな か、サブプライムローンの問題が証 券化手法における信頼に大きな疑問 を投げかけています。  このような時代の要請に応えるべ く、当センターは、金融商品取引法の 「不動産関連特定投資運用業」の登 録要件として注目を集めている「ビル 経営管理士登録証明事業」の積極的 な展開と、優秀な「ビル経営管理士」 有資格者の育成を図り、業界の着実 な発展に貢献していく所存です。 平成 20 年

年 頭 所 感

年 頭 所 感

財団法人  日本ビルヂング経営センター 理事長 

河原崎 守彦

ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS 

平成 20 年度「ビル経営管理講座」は 6 月∼ 9 月に開講      「ビル経営管理士試験」は 12 月 14 日(日)に実施  平成 20 年度「ビル経営管理講座」は 6 月から 9 月の4ヶ月間に開講される。 また「ビル経営管理士試験」は、12 月 14 日(日)に実施されることが決定した。 詳細は4頁参照。

金商法「不動産関連特定投資運用業」の登録要件である

「ビル経営管理士登録証明事業」

積極的

展開

優秀

「ビル経営管理士」

育成

(3)

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ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS ISHIZUE NEWS ISHIZUE

第 62 回理事会を開催 

 財団法人 日本ビルヂング経営セン ターは平成 20 年 1 月 8 日、第 62 回 理事会を開催、平成 20 年度事業計画 を次のように決定した。 平成 20 年度事業計画  我が国経済は、サブプライム問題 及び原油高による景気後退の懸念は あるものの、好調な企業業績に支え られ、設備投資が拡大を続けるとと もに、雇用環境も改善の方向にあり、 景気は比較的堅調に推移している。  オフィスビル市場においては、企 業の拡張移転や増室等により、東京 都心部においては空前の低空室率が 続いている。平成 20 年度以降につ いては、東京都心部ではオフィスビ ルの供給量の急減が予想され、需給 は引き続き逼迫する見込みであるが、 東京以外の都市においては、証券化 手法を用いた開発が進み需給は緩和 する兆しがある。現在、ビル事業各 社の業績は好調裡に推移しているが、 今後この好調さを如何に持続させて いくかが課題となっている。  このような好調なビル市場と、昨 年 9 月に施行された金融商品取引法 でビル経営管理士が「不動産関連特 定投資運用業」登録の人的要件の一 つとなったことを背景に、ビル経営 管理士の需要は引き続き高まる見込 みである。  当センターとしては、昨年度、大 幅な刷新と一体化を行った「ビル経 営管理講座」と「ビル経営管理士試験」 の改善を進め、豊かな知識経験と高 い職業倫理観を有するビル経営管理 士の増加を図り、業界の発展に寄与 してゆく所存である。  各事業の個別の主な計画内容は次 の通り。 1.ビル経営管理講座の実施  平成 20 年度については、テキスト の加筆修正を行い、進歩するビル事 業にふさわしい内容をとり入れ、講 座を充実させていく。これにより、 ビル関係業界各社に講座を社員研修 制度として利用するよう営業活動を 実施するとともに、一般への周知活 動も積極的に実施して受講者数の増 加を図る。  平成 20 年度の受講者数は、350 名 を見込む。  なお、本講座は、教育訓練につい て厚生労働大臣の指定を受けており、 講座修了者は一定の要件を満たせば、 公共職業安定所から教育訓練給付金 を受けることができるが、平成 20 年 度より教育訓練給付制度の変更が行 なわれ、給付金は受講料の 4 割から 2 割に変更となる。 2.ビル経営管理士資格試験の実施  ビル経営管理士が、金融商品取引 法で必要資格となったこともあり、 ビル関係業界各社に会社の推奨資格 としてもらえるよう働きかけを行い、 受験者数の維持、拡大に努める。  平成 20 年度の受験申込者数につい ては、500 名を見込む。 ※ビル経営管理士更新登録料の変更  現在、更新登録料は新規登録料と 同じ 21,000 円(消費税込み)となっ ているが、平成 20 年度更新対象者よ り更新登録料を現在の半額の 10,500 円に変更する。 3.特別研究セミナー等の実施  「 特別研究セミナー 」 として時宜 に適した実践的なテーマについて月 1 回を目標に定期セミナーを開催す るほか、新春特別ビル経営セミナー を開催する。特別研究セミナーの 主な内容は、賃貸業務の法律問題、 PM・共益費に関する実務、不動産証 券化解説などを予定する。 4.日本ビル経営管理士会の運営  「日本ビル経営管理士会」では、士 会会員の資質の向上をはかるためス キルアップセミナー、出版物の刊行 等により継続教育を行う。スキルアッ プセミナーは東京・大阪以外の都市 でも行うこととする。 5.機関誌「いしずえ」の発行  センター及び日本ビル経営管理士 会の機関誌「いしずえ」を季刊によ り発行するとともに、時節に応じた 問題提起や不動産証券化を解り易い 内容で連載する等、内容の一層の充 実を図る。

平成 20 年度事業計画を決定

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1.募 集 期 間  平成 20 年 4 月 1 日から 5 月 31 日まで 2.受 講 期 間  平成 20 年 6 月 1 日から 9 月 30 日まで 3.受 講 料  126,000 円(消費税を含む) 4.学 習 学 科   (テキスト名) 5.教材の配布   テキスト 6月 6.スクーリング  平成 20 年 9 月 8 日(月)∼ 10 日(水)の 3 日間       会 場:シェーンバッハ・サボー(砂防会館)       千代田区平河町 2 − 7 − 5 7.添削問題の提出及び審査    提 出 期 間 平成 20 年 7 月 15 日から 8 月 15 日まで    添削指導期間 平成 20 年 9 月 15 日まで 8.修了証発行   平成 20 年 9 月 30 日 9.ビル経営管理主任の資格付与 平成 20 年 10 月

平成20年度ビル経営管理講座実施計画

(第1分冊) 『企画・立案』編(上巻) (第2分冊) 『企画・立案』編(下巻) (第3分冊) 『賃貸営業』編(上巻) (第4分冊) 『賃貸営業』編(下巻) (第5分冊) 『管理・運営』編(上巻) (第6分冊) 『管理・運営』編(下巻) 1.試験実施日  平成 20 年 12 月 14 日(日) 2.試 験 地  札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡のいずれかの希望地とする。 3.受験申込書の配布期間及び配布場所   (1)配布期間  平成 20 年 7 月中旬∼   (2)配布場所  ㈶日本ビルヂング経営センター       ㈳日本ビルヂング協会連合会及び各ビルヂング協会事務局 4.受験申込手続   (1)受験申込方法     受験申込書は、郵送により提出するものとする。   (2)受験申込書の受付期間 受付期間は平成 20 年 10 月 1 日から 10 月 31 日までとし、受付期間終了後到達した受験申込書は、 受付最終日までの消印のあるものについて、受付けるものとする。   (3)受験申込書の受付場所     ㈶日本ビルヂング経営センター  5.受 験 料  31,500 円(消費税を含む) 6.合格者の発表 平成 21 年 2 月上旬(受験生個別通知、センター窓口及びセンターホームページに掲示) 7.登 録 申 請  合格発表日の翌日から 1 ヵ月間 8.登 録 日  平成 21 年 3 月

平成20年度ビル経営管理士試験実施計画

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有楽町駅前第1地区市街地再開発事業

「有楽町イトシア

有楽町イトシア」

」について

について

有楽町駅前第

1

地区市街地再開発組合 有楽町駅前第

1

地区市街地再開発組合 事務局  事務局 

細包憲志

細包憲志

はじめに

 都心の中でも歴史と由緒ある有数の商業業務地として 位置づけられてきた有楽町駅前地区。大いなる発展への 豊かな可能性を擁したこの地に、2007年(平成19年)10月、 有楽町の新しい顔となる街「有楽町ITOCiA」が誕生し た。銀座・丸の内エリアをつなぐクロスポイントとして のポテンシャル。ここを訪れ、利用する人々に愛される 街(=イトシア)として相応しい多くの利便性。これら を備えた豊かな複合都市空間、人とビジネスと情報が集 まり、交流する、新しい街の創造である。

当地区の概要

1.有楽町の歴史  「有楽町」の名は、織田信長の弟である織田有楽齋が江 戸時代初期に居住したことに由来すると言われる。江戸 時代、現在の丸の内から有楽町にかけての地域は、有力 大名の屋敷があったため「大名小路」と呼ばれ、その南 端に位置する当地区には幕末まで南町奉行所があり、名 奉行として名高い大岡越前守忠相や桜吹雪で有名な遠山 左衛尉景元が南町奉行として職務を執っていた。(今回の 再開発事業に伴う発掘調査によって、江戸初期から幕末 期に至る屋敷跡と厚さ2mに及ぶ江戸時代の盛土層が確認 され、南町奉行所を示す遺跡の一部を再開発事業地に移 築し再現した)  江戸は火災の多発する都市として、幾度も罹災・復興 を繰り返してきたが、東京となった明治5年の火災は中枢 部を焼き尽くし、結果として文明開化を象徴する銀座煉 瓦街が整備された。また、明治23年に丸の内が買い上げ られると一丁ロンドンと呼ばれる日本初のオフィス街が 形成され、それと呼応するように鉄道網が整備され、明 治23年に有楽町駅が、大正3年には東京駅が完成した。  有楽町は今でも映画街として有名であるが、その起因 はわが国最初の洋風劇場として明治41年に完成した有楽 座、そして昭和9年にオープンした日本劇場などである。 また有楽町駅周辺は、新聞社やラジオ局の進出も著しく、 明治39年に報知新聞社・明治44年に毎日新聞社・昭和2 年に朝日新聞社が開業し、戦後ラジオ東京・ニッポン放 送などマスコミの機関が集まった。  そして戦後は、「君の名は」の数寄屋橋、昭和32年に開 業した有楽町そごうのキャッチフレーズでもある「有楽 町で逢いましょう」など、有楽町周辺は戦後東京の新名 所となった。 2.地域特性  当地区は、乗降客数が30万人を超えるJR有楽町駅の東 側に面し、半径500m以内の乗り換え可能な徒歩圏に、東 京メトロの有楽町駅・銀座駅・日比谷駅など8駅、合計乗 降客数約100万人を配する交通の重要結節点に位置する。

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 また500m圏内の店舗数・販売額・売場面積の集積も多 く、更に昼間人口は夜間人口の100倍を超え、丸の内・銀 座という都心でも有数の業務・商業地域に隣接している 地区でもある。  周辺では既存の業務・商業集積に加え、新丸の内ビル・ ペニンシュラホテルなどの丸の内側、そして銀座側でも マロニエゲートの他、超高級ブランドの進出など、周辺 の開発プロジェクトが目白押しの状況で、目を見張る変 貌を遂げている環境にもあった。  しかしながら、再開発前は、土地が不整形に細分化さ れた木造及び準耐火の小売店舗が密集して存在し、防災 面の危険が高く、駅前としての有効利用が図られていな い状況であった。

開発の経緯

1.戦中・戦後から都市計画まで  戦時中は、空襲による延焼を防ぐため、若干の耐火建 築物を除いて建物の強制疎開が行われたが、戦後すぐに 低層店舗が次々に建てられた。当時の状況を知る人によ れば、通行人が通れないほどの活況を呈し、商品も飛ぶ ように売れ、売上金がドラム缶からはみ出してしまうほ どだったようである。  しかしながら戦後復興期の資材不足の中で立てられた 木造建築物は、柱や梁も継ぎ足しの状況も散見され、防 災面では脆弱な環境を余儀なくされていたため、まず昭 和22年に戦災復興計画決定により駅前広場を整備する地 区に指定され、これがその後永く続く再開発計画の発端 となった。  昭和37年には周辺地域(A地区:現東京交通会館/昭 和40年竣工、B地区:当再開発地区、C地区:現マリオ ン/昭和59年オープン)も含めた街路事業による都市計 画が決定され、地域の象徴であった「すし屋横丁」も昭 和43年に撤去された。しかしながら、当地区は商売が盛 隆であったこと、権利を手放したくない権利者の意向に より、同計画による再開発は実現しなかった。  その後昭和55年に「市街地再開発事業・街路整備・高 度利用地区」の都市計画が決定され、開発手法は都市再 開発法(昭和44年)に基づく法定再開発(第一種/権利 変換方式)へと移行することになる。それ以前から地元 では「振興組合」他、開発を目指す複数の組織化が図られ、 また行政の仲立ちにより組織横断的な「世話人会」も発 足し、様々な検討がなされていた。しかし、都市計画の 内容が、駅前をターミナル的な交通広場として整備する 計画であり、駅から離れた建物配置は地元の理解を得る のが困難であった。すなわち、駅前で商売をしていた権 利者は、戦後からずっと、駅の改札口から流れ出てくる 人々、銀座へと向かう人々と会話するよう店舗を開いて おり、それが永年の商売のスタイルだったからである。 2.準備組合の設立から都市計画変更まで  昭和55年の都市計画決定後、しばらく膠着状態が続い ていたが、その間、一体となって高度利用地区の指定を 発掘風景(石組溝) 江戸時代の有楽町駅周辺 今回の再開発地区 ザ・ペニ ンシュラ ホテル N イトシア

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受けた隣接地は、着々と再整備へ向かうこととなる。  昭和55年朝日新聞社の築地移転・昭和56年日劇サヨナ ラ公演を経て、昭和59年にマリオンがオープンする。工 事期間中は人の流れが変わり、オープン後は来街者が変 わる状況を目の当たりにして、地元としても一本化して 再開発を検討する必要性を肌で感じ、昭和60年9月「有 楽町駅前地区市街地再開発準備組合」が設立された。  まず、昭和55年に決定した都市計画の枠組みの中で検 討したが、駅近接型の建物配置を望む声が多く、行政に 対しては、都市計画変更の要請をすることになる。一方、 時代はバブル経済へ突入していく中で権利の移動も見ら れるようになり、その後のバブル崩壊に至るまで事業的 には不安定な状況となる。  また、当地区を戦後から立ち上げていった初代の方々 の代替わりや、それらに伴う店舗内容の変更、商売の活 況度の違いなど、地区内でも個別的な事情が浮き彫りに なり、約10年ほど再開発に対するベクトルが定まらない、 悶々とした期間となる。  これらの膠着状態を打破する契機となったのが、事業 再評価である。全国的に公共事業の継続・採否を見直す 中で当再開発事業も審議の対象となる。建物の老朽化が 進む一方、景気も悪く立地に見合った業績の確保が困難 な中での、不採択に対する地元の危機意識を行政側も受 け止め、平成11年3月の事業評価委員会において、都市 計画変更の必要性を認識の上、推進を図るべき事業とし て継続方針となる。   この方針を具体化すべく地元の意見を集約する中で、 再開発に対するスピードに温度差があるため地区を2分割 する変更案がまとまり、都市計画審議会を経て、平成13 年4月都市計画変更が告示された。  3.本組合の設立から権利変換・着工まで  都市計画の変更により漸く事業内容を検討する気運が 高まる。当地区を商業立地として再認識し、その再生の ためにも核店舗を導入することとなり、選定過程を経て、 丸井を参加組合員として迎えることとなる。  それにより事業の成立性も確認できたことから組合設 立に向けて合意形成を図り、平成14年9月「有楽町駅前 第1地区市街地再開発組合」の設立が認可される。翌10 月には、駐車場を所有することを前提として新たにパー ク24が参加組合員として加わり、権利変換計画の策定へ と進んでいく。  権利変換を受けるか否かの確認、権利を明らかにする 土地・建物調書の策定、従前評価、法97条補償費の算出 など、必要な各種手続きを経て、権利変換計画への同意 取得に入る。地区の特徴として、営業借家の方々への対 応並びに従後の店舗配置計画については、何度も協議・ 調整を重ね、縦覧型ではあるが、最終的には全員の同意 を得て、平成17年2月権利変換計画が認可される。その後、 建物明け渡し、解体工事・文化財調査等を経て、平成17 年6月起工式を迎えることとなる。

事業概要

1.開発コンセプト  再開発事業という枠組みの中で、商業・業務・公共の 各施設が1つになった、有楽町駅前に相応しい魅力ある 空間を創造すること。即ち、核店舗や専門店で構成され る商業施設によって、情報・文化の発信基地となり、新 しい人の流れを呼び込み、一層の賑わいを創出すること。 歩行者中心の駅前広場を地上・地下に整備するとともに、 歩道の拡幅や地下通路を整備して安全かつ利便性の高い 歩行者空間を整備すること。交通アクセスの利便性が非 常に高い立地に情報化に対応できる業務空間を設けるこ とで、多様な企業を誘致し、新たな価値を発信する場と すること。 2.施設機能・用途構成  ⑴イトシアオフィスタワー    10階∼ 20階の11フロアに、延床面積約25,000㎡の最 新業務空間を配置。基準階面積1,970㎡(専有1,430㎡) 建物除却前の当該地区(平成 2 年頃) 「有楽町イトシア」について

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を有する、天井高さ3mの無柱大空間。  ⑵有楽町マルイ    1階∼ 8階の約18,500㎡に約170のショップを取りそ ろえ、おしゃれな社会人が楽しめる店づくり。その店 づくりのポイントは「心からお買い物を楽しんでいた だくための空間づくり」「お客様の声を起点とした店づ くり」「ファッションセラピーをテーマに領域拡大に チャレンジ」。店舗の随所にそのポイントを実現。  ⑶イトシアフードアベニュー    地下1階に展開する、飲食とライフスタイル専門店・ 食物販の27店舗。回遊性を高め、個性豊かな店舗が集う。 思わず寄り道してしまうような、活況感や賑わい感あ ふれる路地感覚のフロア。  ⑷イトシアプラザ    昔懐かしいカフェや甘味処、レストラン、アミュー ズメント、物販、更に映画館まで、全17店舗が集積す る賑わいのゾーン。従前の有楽町の名残を残しつつ、 新しい来街者も呼び込む魅力の商業空間。  ⑸タイムズステーションイトシア    収容台数287台、24時間運営のパーキングエリア。当 施設以外にも、周辺エリアを含めて車で来られるお客 様の玄関となる駐車場。街との調和に配慮したデザイ ンと駐車場の利用目的に合わせた快適性と利便性を提 供。  ⑹公共施設    歩行者中心の駅前広場を地上・地下に整備するとと もに、歩道の拡幅やメトロにつながる地下通路を設け ることにより、安全で利便性の高い歩行者空間を創出。 特に駅前広場は人と人との出会いとコミュニケーショ ンを育み、街の賑わいを演出。    由緒ある歴史の跡である南町奉行所の遺跡を活用し た石割ベンチをはじめ、待ち合わせの目印ともなるシ ンボル灯、春を告げる桜並木など、潤い豊かなヒュー マンスペースを提供。 3.環境・防災への貢献  熱負荷の低減に配慮した形状・配置、窓部の日射を遮

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蔽し自然通風・換気するダブルスキン。各種省エネルギー システムやエコマテリアルの採用。資源の適正利用を促 す長寿命化対策・水循環の採用。更に、防災対策として 防災設備・倉庫の充実。 4.管理運営  区分所有建物であり、区分所有者による管理組合を組 成。その管理組合から、主に共用部の運営管理を受託す る権利者法人「有楽町駅前開発」を設立。また、専有部 が複数者の共有となっている床については、共有者組合 を設立しマスターリース等、運営・経営の効率化を追求。 5.ネーミング(愛称)・ロゴ  新しい「有楽町の顔」に相応しい名称として開発され た『イトシア(ITOCiA)』は、「愛しい+ia(場所を表 す名詞語尾)」からつくられた愛称。今まで永きに亘って この開発に携わってきた方々が、有楽町というこの地を 心から愛しく想っていたこと、また新しく誕生するこの 街が、来街する人たちや利用する人にとっても「愛しい 街」になることを祈って命名。  シンボルロゴのデザインは、歴史と由緒ある有楽町を、 クラシカルな明朝体と和のイメージの角印で表現。また 小文字にしたITOCiAの「i」は愛称の由来である愛 しさを「小さな愛」で象徴。

最後に

 有楽町駅前地区。昭和22年の戦災復興計画から数えて 約60年。人生でいえば還暦である。その間、どのぐらい の方々がこの再開発に関わったことであろうか。今日、 それぞれの方が、それぞれの想いを抱いてこの変貌ぶり を眺めていることであろう。  とはいえこのイトシアは、2007年10月に誕生したばか りである。幸いにして、オープン後は予想を上回る来街 者を迎えているが、これからも永きに亘って愛しく想わ れ、繁栄・成長し続けることを祈念する。  (「有楽町駅前第1地区第一種市街地再開発事業の概要」 は次頁参照) 「有楽町イトシア」について

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 まず、今年を展望する上で、07 年不動産業界・マー ケット 10 大ニュースをご覧いただきたい。異論もおあ りと覚悟の上で、トップはサブプライムローン問題、2 位は金商法、3 位は改正建築基準法とした。この手の企 画は、年前半のことは忘れ去られがちで、後半の出来 事がクローズアップされてしまう傾向があるが、昨年に 限っては、年後半のこれら3 つのイシュー(問題)が業 界やマーケットに与えるインパクトは非常に大きかった といわざるを得ない。  振り返ると、筆者は、日々の取材活動を通じ、一昨 年後半、“オフィス市況、貸し渋り局面へ。供給先細り、 空室は含み益との解釈も” “07 年問題は幻、旺盛な戦略 的増床ニーズ”との見出しで、「オフィスマーケットに 吹いている風は順風。いまのところ、死角はなさそうだ」 と書いたが、それが懐かしい、といえる状況にきている。 昨年前半には、「2007 年以降の新築ビル供給減で、当面 の賃料上昇は見込めるが、青天井を感じさせる要素は見 当たらない」としたものの、昨年 4 月オープンの新丸ビ ルで坪 6 万円超の成約事例が出るなど、相変わらず不動 産バブル論もちらついていた。  それが昨年秋頃には、“マンション郊外苦戦、都心が 市場を牽引。Jリートは調整続く”“都心オフィス、強 気の新規賃料一服”といった見出しで、「(オフィス市場 に)米サブプライムローン問題の影響は特にない。ただ、 一部のエリアを除き、強気の新規募集には一服感がみら れるようになってきた。主要エリアの格差も広がりつつ あり、エリアによっては、賃料が下落しているケースも みられる」と、変調の兆しを報告するに至った。    渦中のサブプライムローン問題だが、日本の不動産 マーケットへの実影響は、利上げ見送りである。その意 味では、不動産経営にとって、良かったということにも なる。住宅販売上は、消費者マインドにネガティブとも いえるが、グローバルに見渡した場合、東京不動産市場 は、世界一のイールドギャップを依然、続行することに なった。特に、Aクラスビルには不足感もあり、外資投 資家のアペタイト(食欲)は旺盛なままのはずだが、ノ ンリコースローンなどのいわゆるデットについて、外資 などの金融機関が引き締めに動いたため、外資による不 動産投資が鈍り、都心の地価上昇傾向が減速した。  Jリートについては、昨年の6月以降、外人売りで値 を下げ、8月のサブプライムローン問題で大きく下げた。 その後、外人買いは戻ったが、株式市場と連動してさえ ない展開を続けた。Jリート投資口は、株と債券の中間 に位置し、必ずしも株式市場とJリート市場は連動する わけではないという見方も関係者の中ではあったが、サ ブプライムローン問題は、見事にそうした関係付けを打 ち砕き、Jリートが世界の資本市場の荒波に揉まれる存

08年不動産業界展望と

07年の10大ニュース

ファンド・マンションのダブル異変、

変調し始めたマーケット

 08年の不動産業界・マーケットはどうなるのだろうか。その前に、昨年を振り返って みると、景気回復・値上がり感があった前半と、サブプライムローン問題が巻き起こった 猛暑の夏以降、年後半とでは、まったく局面が変わった。昨年後半以降、順風が逆風に転 じた業界・マーケットの今年を占いたい。 「不動産経済通信」記者

松本義弘

記者の眼〈第3回〉

07年不動産業界動向の全体概要

1.サブプライムローン問題

金融機関におけるデット引締めで、 外資不動産買いのデットが引く

07年・不動産業界10大ニュース

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在でることを証明したといえる。「価格が下がれば、再 び買いが入るはず」との楽観論がある一方、価格下落で 増資が困難になる一昨年のレジデンシャルリートの状況 が再燃する可能性がある。Jリートが既に持つ物件や、 その収益性にすぐさま影響は出ないはずだが、負債が過 大になったり、資金がショートして新規の物件取得(外 部成長)が滞るようだと影響が出てくる。  さらに、一般論でいえば、米国がくしゃみをすれば、 日本は風邪をひくわけで、米国の住宅バブル崩壊が米国 景気全体を後退させた場合、東京の賃貸オフィスビル市 場といえども、影響は避けられないといえる。ただ、そ の影響の度合いについては「限定的」との見方もある。 その根拠として、外資を含め、東京に拠点を構える企業 がビジネス対象としているのは、東京を始めとする日本 の消費マーケットであるということが挙げられている。 そこらへんは、米国景気の影響をダイレクトに受けるこ とはないだろうという見方のようである。  とはいえ、新規賃料における強気の交渉に一服感があ ることは確か。ある大手不動産会社の社長は、昨年末の 段階で、「ビルの賃料上昇もほぼ終わりに来たと感じて いる。ただ、需要は根強い。今後、賃料は高値で安定、 空室率は低位で安定するとみている」と、話している。 仲介業者の間でも「坪 5 万円を超すと決まりにくくな る」「高値ではテナントがついてこなくなっている」と の声が出ており、こうした足元に、本格的なサブプライ ムが振りかかってきた場合、影響は「限定的」とは言い 切れないだろう。  それにしても、サブプライムローン問題とは、証券化 という分業の落とし穴に落ちたその果てである。米国の モーゲージブローカーは、手数料欲しさに無理なローン 計画を迫り、モーゲージバンカーは、ローン債権を投資 家に転売してしまうため、甘い審査で無闇な貸し付け に走った。証券化アレンジャーは、証券化を繰り返して リスクが見えなくなり、欧州の金融機関は、リスクをわ きまえず、リターンだけを求めて投資し続けた。証券化 商品の場合、未だに会計基準が定まっておらず、損失額 が一体、いくらなのかが見えない点や、格付け会社の信 頼性も問われている。証券化商品という複雑な仕組み商 品がグローバルマーケットにおいて、プロとはいえない ようなプレイヤーたちに取り扱われ、得体の知れないも のへと変質していった。サブプライム危機とは、わから ないものへの恐れとその増幅である。そして、影響の多 少にかかわらず、日本の不動産もグローバルな金融マー ケットに組み込まれたということを実感させられた出来 事でもあった。ファンダメンタルズとは別に、金融マー ケットの影響で、今後は、不動産が突然、変調することだっ てあり得る、と肝に銘じておいた方が良さそうである。

2.金商法スタート

金融機関による融資の選別・厳格化  続いて、2 位とした金商法(金融商品取引法)スター トだが、これは、従来の証券取引法を改正し、各種投 資ファンドを規制する上、日本版 SOX 法(いわゆる J-SOX)も内包する幅広く横断的な投資サービス法制で ある。ここで金融業界新参の不動産ファンドなどにとっ て、特に脅威となるのは、金融庁の検査がやってくるこ とである。  焦点は、内部統制の作り込みに絞り込まれ、検査に耐 え得る態勢づくりが課題となった。既に検査を経験した Jリートをモデルに据えれば、問題ないわけだが、業登 録(いわゆるライセンス)について、金融庁がわかりや すい線引きを示さなかったため、アセットマネジメント 会社としては、コスト負担や運用の指向から、業登録を 「投資運用業」とするか、「投資助言・代理業」で良い のかが問われた。  金融庁は、不動産鑑定士など、不動産に詳しい人材の 採用を進め、不動産関連への対応体制を構築しているが、 如何せん、不動産が「未体験ゾーン」であることに変わ りはない。当初、大手不動産会社に検査に入ることを含 め、プレイヤーとの情報交換を進め、2年程度をかけ、 検査のスタンダードを固めていくのではないかといった 見方が出ている。  昨年 9 月 30 日の施行以降の影響としては、ノンバン クが融資を厳格化し、これが中小の不動産業者を直撃し て、中小規模物件の流動性を低下させた。信託銀行が保 守的な解釈で違法建築規制を始めたのは一昨年来のこと だが、金商法施行以降、金融機関が転売を繰り返した土 地への融資を見合わせたり、「投資運用業」を申請しな い不動産ファンドに対し選別融資を始めた。すなわち、 業登録について、明快に説明しない金融庁になり代わり、 金融機関が保守的解釈で「投資運用業」を要求し始めた のである。金商法によるプレイヤーの淘汰・再編は予測 され、よくいわれたところではあるが、それが現実化し、

記者の眼〈第3回〉

(13)

資本力のない中小業者は、融資が付かず、物が買えずと いう厳しい環境に追いやられた。そんなあたりからは、 「地価はもう上がらない」「地価はもうピーク」といっ た地価ピーク論さえ出始めたのである。  いずれにせよ、金融庁は、不動産業を監督下に置いた わけであり、今後は、フレキシブルかつわかりやすい業 行政が求められることになる。投資家保護を確保した上 で、規制一辺倒ではなく、透明性を保った行政でなけれ ば、「行政リスク」とされ、シンガポールやオーストラ リアのリート市場に日本の不動産が上場したように、日 本にいまいる不動産ファンドが海外流失することになり かねないといえる。  

3.改正建築基準法施行

確認申請長期化で建築着工激減  3 位とした改正建築基準法で確認申請現場が混乱し、 建築着工が激減した。たとえば、マンション施工最大 手の長谷工コーポレーションでは、昨年 6 月の改正法施 行後 3 カ月で確認取得はわずか 3 件と、それまでの通常 ペースと比べ 6 ∼ 7 分の 1 というレベルに落ち込んだ。 それまで確認手続きは、1 カ月半で済んでいたものが、 改正直後は3 ∼ 4カ月を要した。  今回の改正の目玉だったのは、ピアチェックの導入で ある。また、3階建て以上の共同住宅は、中間検査も義 務付けられている。特に、確認にかかわるピアチェック は、高さ 20 m以上のRC建造物に構造審査が義務付け られたが、この構造審査も滞った。結局、国土交通省に よる検査・判定機関への周知徹底と絶対的な判定員(構 造設計者)の不足が指摘されているところである。影響 はマンションにとどまらないものの、事業回転の早いマ ンションは、混乱をまともに受けた。来年度以降、デベ ロッパーの業績への影響は避けられず、各デベロッパー は、マンション以外の他部門の収益でカバーするか、プ ロジェクト用地を売りに出し、資金調達するかなど、何 らかの対応を迫られることになる。構造計算ソフト、大 臣プログラムができれば流れ始めるといった楽観論があ る一方、ソフトを使いこなす人の問題に不安がないわけ ではない。  ただ、足元のマンション発売戸数の減少については、 改正建築基準法はさほど影響していない。確認の遅れの 騒ぎに掻き消された格好だが、販売価格の高騰や、物件 の立地難を背景とした売行き不振が主因である。また、 建築費が上昇し続けているため、いわゆるゼネコン交渉 に時間がかかるなど、なお現段階において減少要因は複 合的なのである。  

4.買収ファンド動く

企業が持つ不動産に着目  企業買収ファンドが不動産価値に着目し動いた。その 兆候は、村上ファンドが動き、結果的に、阪急・阪神統 合に至ったあたりからみられたが、昨年は、スティール・ パートナーズがサッポロビールを買い占めた結果、モル ガン・スタンレーの不動産ファンドがサッポロ株と恵比 寿ガーデンプレイスの一部を取得することになったし、 ゴールドマン・サックスとエートスは、日興コーディア ル証券系だった不動産運用会社、シンプレクス・インベ ストメント・アドバイザーズを 5000 億円という巨額で 買収を果たすなど、本格化した。  また、ダヴィンチ・アドバイザーズは、テーオーシー 買収に動いた。こうした現象は、不動産が上昇した反面、 株価がそれに見合っていない企業を買うという新しい不 動産投資スタイルとして注目される。 

5.東京都のCO

2

対策

オリンピック招致に向け環境都市施策  東京都はオリンピック招致に向け環境都市施策を相次 ぎ打ち出した。特に環境税論議が高まりつつある。CO2 排出に関するオフィスビル等の「業務部門」対策として、 電気・ガス使用への課税が検討されている。いまの都の 施策は、すべてがオリンピックを意識したものとさえ言 えそうだが、環境都市(エコシティ)化の取り組みは、 その筆頭格といえる。産業界の猛反発を受け、話が進展 しない国を尻目に、都は環境税導入に踏み切る意向を示 している。  このほか、都は大規模事業所を対象とした地球温暖化 対策計画書制度や、延床面積 1 万㎡超となる施設開発を 対象とした建築物環境計画書制度を規制強化する方向に ある。さらに、新築の大規模建築物に対し環境評価書を 発行し、売買・賃貸する際には、その評価書を購入者や テナントに提示することを義務付ける制度の創設も検討 している。 08年不動産業界展望と07年の10大ニュース

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6.07年注目プロジェクト

東京ミッドタウンと新丸ビルが竣工・オープン  去年最も注目された開業プロジェクトは、東京ミッド タウンと、東京駅前の新丸の内ビルディングだった。ミッ ドタウンは、総事業費 3700 億円に上る都市再生の象徴 的なプロジェクトといえる。その資産価値は、いまや 1 兆円レベルに達したとの試算もある。リッツ・カールト ンの入るホテルや運営アパートメントを始め、商業施設、 美術館、オフィス、広大な緑地スペースなどで全体構成 されている。だが、ここで注目したいのは、これまで六 本木ヒルズだけだった六本木にもう一つの核となる拠点 ができ、六本木が、丸の内や日本橋にも対抗し得る街と して評価を得たことである。

7. ダヴィンチ・アドバイザーズの異色のビル

経営

 ダヴィンチアドバイザーズは異色のビル経営だが、一 昨年に 1 兆円ファンドを立ち上げ、八重洲のパシフィッ クセンチュリープレイス、芝の軍艦ビルを相次いで取得 したのは鮮烈だった。これに続く形だが、昨年は、テー オーシーの買収に動いたり、新宿マインズタワーではテ ナントを提訴した。パシフィックセンチュリーでは、最 上階一部フロアでテナント入札を行い、月・坪 10 万円 の成約事例もあげた。  また、森トラストと組んで、虎ノ門パストラルホテル を落札、オーストラリアの不動産ファンドを買収し、豪 州市場にも参入した。一方で、関連のJリートが金融庁 から処分されるという辛酸もなめている。

8.ビルの2007年問題とホテル戦争

 ビルの 2007 年問題は回避されたが、ホテル戦争が勃 発した。団塊世代リタイアが叫ばれたいわゆる 07 年問 題は、景気回復、雇用延長・拡大に、ビル供給が前倒し・ 分散化したこともあり、回避された。07年前には終わっ ていたのがビル07年問題だった。  これに対し、ビルとともに大量供給された高級ホテル については、スケジュール通りの 07 年戦争が勃発した とされる。だが、実態は、東京における超高級ホテルの 絶対的な数の少なさの下、新規に開業したそれぞれのラ グジュアリーホテルの客室数はそれほど多くなく、むし ろ小振りといえ、現状においては、パイの奪い合い現象 にはなっていないとの見方もある。

記者の眼〈第3回〉

ミッドタウン 新丸ビル

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9. ANAホテルをモルガン・スタンレーが取得

 モルガン・スタンレーは、ブラックストーンが提示 したとみられる 2400 億円を土壇場で逆転し、全日空 (ANA)ホテル 13 件を約 2600 億円で取得した。出口 プランは明らかではないが、ホテル運営だけの回収は現 実的ではなく、売却や、赤坂のホテル再開発を視野に入 れているのではないかとの観測がでている。いずれにせ よ、巨額のファンドが故になせた巨額買収であり、また 世界各地でホテルを所有・運用するが故になせた業とい える。

10. 三井不動産が帝国ホテルを傘下にして

   日比谷再開発へ

 帝国ホテル株を売ったサーベラスも、買った三井不動 産もメリットを享受した。これは、買収ファンドによる 企業買収ではなく、不動産のプロによる不動産購入とい える。ただ、それにとどまらず、帝国ホテルのオペレー ションノウハウを活用し、三井不動産はリゾート事業で のシナジーも構想している。内幸町の帝国ホテル周辺は、 NTT グループなどが土地を保有しており、周辺でも動 きが出始めつつある。  このほか、番外となったが、文部科学省などの建て替 え竣工は、都心における国内最大規模の PFI 事業であっ た。

08年の不動産業界・マーケット展望

08年は「不確実性」と「環境」の年

 それでは、08 年の不動産業界・マーケットはどうな るのだろうか。  ここでは、07年に起こった出来事(重大ニュース) などから今年の潮流トレンドを占ってみたい。昨年来 のキーワードを挙げてみると、1 ∼ 3 位のサブプライム 問題、金商法施行、改正建築基準法に代表される「不 確実性」を始め、東京ミッドタウン、新丸ビル、文科 省等霞が関PFIなどにみられた「再開発・建て替え」 や、その再開発にも絡む 2007 年ホテル戦争や帝国ホテ ル、ANA ホテルが流動化した「ホテル」、ブラックストー ンやモルガン・スタンレーなどが動いた「M&A」といっ たところだろう。  特に、「不確実性」は、昨年前半であれば、「価格上昇」 がキーワードとなっていた状況からすり変わってしまっ た。また、新興国の浮上に伴うオイルマネーのプレゼン ス増大、福田政権発足もあり、「中東」、「中国」もキー ワードだろう。このほか、金商法施行など、「不確実性」 の中で静かに進む大手の「寡占化」、郵政民営化がスター トしたが、今後ともリストラ・不動産放出源としての「公 的セクター」が挙げられよう。これに加え、以下、列挙 すると、「200 年住宅」「デリバティブ」「CRE」「CSR」 に、「コンプライアンス」「景観」「安心・安全」、そして、 「機関投資家」といったところが挙げられる。  「グローバル化」と「少子高齢化(=人口減少)」に、 温暖化など、「地球環境問題」を加えたものが日本全体 のメインキーワードといえ、10 ∼ 20 年後を形成するも のといえようが、これらに最近のキーワードを掛け合わ せ、今年をどう読みとっていくかだろう。  2008 年を展望すると、今年は、「不確実性」の年と言 える。サブプライム問題などが長引き、日本経済や、ビ ル市況にさえ影響するマーケット局面入りするのではな いか。また、夏には北海道洞爺湖サミットが行われる。 温暖化対応を始め、CSR や景観、コンプラ、安心・安 全までもが急速に求められることになりそうである。

Aクラスビルは◎(07年)⇨○(08年)

 最後に、わかりやすくかつ大胆にマーケットを予測 すると、ビル市況は、Aクラスビルマーケットが昨年の 「◎」から今年は「○」に、Aクラス以外のビルマーケッ トは「○」から「△」へ、マンションは「○」から「×」 と見通しはネガティブ、ファンド関連は「○」から「△」 といった展開を予想する。  07 年 → 08 年予想 Aクラスビルマーケット ◎  →  ○ Aクラス以外のビルマーケット ○  →  △ 分譲マンションマーケット ○  →  × 不動産ファンド関連マーケット ○  →  △ 08年不動産業界展望と07年の10大ニュース 08 年不動産マーケット予測

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不動産証券化とグローバル化

わかりやすい不動産証券化 最新動向講座② ジャパンエクセレントアセットマネジメント株式会社 取締役企画管理本部長 田辺 信之  4回のシリーズの中で、前回は「不動産証券化と金融」 について、その関係を整理しました。今回は「不動産証 券化とグローバル化」をテーマとして取り上げることに します。  ここ数年で、不動産投資は急速にグローバル化してい ます。最近では、外資系ファンドが日本の不動産や不動 産保有企業を数百億円、数千億円規模で買収することも 珍しいことではなくなりました。日本の不動産会社やファ ンドも海外不動産投資に取り組み始めましたし、日本の 不動産会社がオーストラリアで不動産ファンドを上場さ せて、日本の不動産に投資するケースなども見られるよ うになりました。また、J-REIT(上場不動産投資信託) による海外不動産投資が、早ければ来年度早々にも解禁 される見込みです。  ジョーンズ・ラング・ラサールの調査によれば、2007 年上半期(1月∼ 6月)の全世界における不動産への直 接投資は約46兆円(前年同期比25%増、便宜的に1ドル =120円で換算、以下も同様)と、16四半期連続の増加 となりました。アジア太平洋地域の投資も、クロスボー ダー投資(国境を越えた投資)を中心に増加(前年同期 比14%増)し、その投資額は約6.5兆円に達しています。  このように、近年になって不動産投資が急速にグロー バル化しているのは何故でしょうか。根底にある要因と しては、①世界的な金余り現象の中で、機関投資家や年 金をはじめとする世界中の投資家が、有利な投資先を探 していること(株式や債券と異なる資産特性を持つ不動 産に関心)、②ITの発達、英語の共通言語化、金融のグロー バル化などを背景に、多くの商品、サービスにおいてグ ローバル化が進展していることがあります。  不動産投資のグローバル化を促進しているもう一つの 重要なファクターが、「不動産の証券化」です。不動産証 券化が普及する前までは、たとえ投資家が海外の実物不 動産に投資しようと思っても、海外の法規制、取引慣行 などが不透明であるため、なかなか思い切った投資に踏 み切れない面がありました。もちろん不動産会社や生保 などが現地企業と連携して、海外不動産に投資すること は従来からもありましたが、投資規模としては限界があ りました。  これに対して不動産が証券化されると、金融商品とし て「標準化」されるプロセスを通じて、投資家は次のよ うなメリットを享受できるようになります。 ①不動産証券化の過程で、専門家によるデューデリ ジェンス(鑑定評価、エンジニアリングレポートな どの取得を含む)が行われ、対象不動産の特性、投 資リスクなどが整理されて投資家に開示されように

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不動産証券化とグローバル化 なる。 ②不動産が証券化されることによって、一般的には実 物不動産よりも流動性(必要なときに売却して資金 化できること)が向上する。 ③小口化された複数の証券化商品に投資することに よって、リスク分散の効果が得られる。 ④不動産証券化スキームを活用した不動産ファンドに 投資することにより、アセットマネジャーの専門能 力を活用できる  こうした証券化のメリットが、特に海外不動産に投資 するときには、投資家がリスク分散を図る中で一定のリ ターンを確保するために、重要な役割を果たすことにな るのです。  それでは、不動産投資がグローバル化することは、不 動産投資ビジネスにどのような影響を及ぼすのでしょう か。  第1に、海外から大量の投資資金が流入することによっ て、日本の不動産投資市場が活性化します。これまでは 他資産や他国に向かっていた投資資金が新たに流入する のですから、稼動物件の売買取引が活発化するのはもち ろんのこと、その一部の資金は都市開発にも回ります。  他方において、こうした動きは、日本の不動産投資市 場がグローバルな投資活動の影響を受けることも意味し ます。たとえば、海外資金が国内資金とともに過当な物 件取得競争を引き起こすと、不動産価格の上昇、さらに はバブルの醸成につながる惧れもあります。  第2に、不動産投資手法に関してもグローバル化がいっ そう進みます。既に不動産投資のための重要なツールで ある不動産証券化が日本でも普及していますし、証券化 のプロセスを通じて、「デューデリジェンス」(物件の詳 細調査)、「出口戦略」(証券化した物件を最終的に売却し たり、リファイナンスする戦略)、「レバレッジ戦略」(不 動産投資の際の借入比率を高めて、投資資金の利回りを 高めること)などの手法も定着してきました。 図表 1:世界の不動産投資市場 出所:第1回 投資家に信頼される不動産投資市場確立フォーラム資料 (ジョーンズ・ラング・ラサール 2007年5月17日ニュースリリースを基にARES作成) 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 2003 2004 2005 2006 (億USドル) 世界の不動産投資の状況(商業不動産への直接投資) 年 2003 2004 2005 2006 投資総額(A) うち、クロスボーダー投資(B) B÷A 金額(US$) 3,540億ドル 3,930億ドル 4,950億ドル 6,820億ドル − 11%増 26%増 38%増 対前年比 金額(US$) 900億ドル 1,140億ドル 1,660億ドル 2,880億ドル − 27%増 46%増 73%増 25% 29% 34% 42% 対前年比 投資総額(A) うち、クロスボーダー投資(B) クロスボーダー投資の比率(B÷A)

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 既に欧米では普通に行われている海外不動産投資も、 投資リスクを分散する観点から、今後は日本でも広がっ ていくことが予想されます。そうした中で、これまで以 上に、各国の「不動産サイクル」(不動産市況の周期的な 上下)や「イールド・スプレッド」(投資資産の利回りと 調達資金の金利の差)が意識されるようになるでしょう。 さらには、不動産証券化を活用して、世界のどこから資 金を調達し、どこに投資するのがベストかという観点か ら投資判断することも考えられます。ただし、為替リスク、 政治リスクなどの新たなリスクが生じることにも十分留 意しなくてなりません。  今後も、不動産投資のグローバル化は、証券化ととも にいっそう進展することが予想されます。中東のオイル マネー、年金資金などが不動産投資に向かうことが予想 されますし、オーストラリアのように自国の不動産投資 が規模的に限界に達している国もあります。また、世界 各国の不動産関連団体が、不動産投資のグローバル化を 促進するための基盤整備に取り組んでいます。  もちろん、日本の不動産会社や投資家が海外投資に踏 み切るかどうかは投資リスクを踏まえて冷静に判断する 必要がありますが、少なくともこうしたグローバル資金 の影響を踏まえて投資戦略を検討する必要がありそうで す。 図表 2:不動産投資のイールドギャップ(2006 年) −1.0% −0.5% 0.0% 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% 2.5% 東京 フランクフルト パリ ニューヨーク ロンドン (注)イールドギャップ=不動産の投資利回り(キャップ・レート)−資金調達レート(国債利回り) 資料:COLLIERS INTERNATIONAL GLOBAL OFFICE「REAL ESTATE REVIEW」を基に作成

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 Y1(D証券)は、Xから土地を賃借し、土地上に建物 を所有していたが、昭和49年、Xに無断で、土地上の建 物を現物出資してY2(Dビル)に借地権を譲渡したため、 Xは、Y1に対し、土地の賃貸借契約を解除するとともに、 Y1およびY2に対して、建物収去、土地明渡しを求めた。  この建物は建築以来Y1の浜松支店として利用され、借 地権のY2への譲渡以降もその使用形態に変化はなく、地 代の支払いも滞ることなく行われている。  Y2は、Y1の不動産を管理するための会社でY1とは 密接な関係を有しているとはいえ、あくまでも別法人であ るから、Y1からY2に建物等を現物出資として譲渡した ことは借地権の譲渡に該当する。そしてこの譲渡に借地 契約で定められた事前の協議やXの承諾がないのである から、借地権の譲渡は賃借権の無断譲渡に当たる。Y1ら は、建物の実質的所有権がY1にあるなどと主張するけれ ども、この主張は採用することができない。  Y2の設立は、Y1の不動産管理のためであり、借地権 の譲渡についてXの承諾を得なかったのは、Y1ら社員の 感覚として両者が別会社であるという意識がなく、賃借権 の譲渡に当たるという感覚が欠如していたこともその一因 であったことを認めることができる。  以上の諸事情を総合考慮すると、Y1らは借地権を現物 出資として譲渡するに当たりXの承諾を得るか、これが得 られなかったとしても借地法の譲渡許可等をとっておけば 今回のような紛争に至らずに済んだもので、本件紛争が 発生した責任はY1らにあるが、Y1らが借地権を現物出 資として譲渡したことをXにことさらに隠してきたような 事情もなければ、土地及び建物の利用状況に借地権の譲 渡の前後で何ら変化はなく、地代も滞りなく支払われてき たのであるから、土地の明渡しが認められない場合の不利 益は、建物を収去され、浜松支店としての営業の拠点が 失われることになるY1らの不利益に比較すればさほど大 きいものとは認められない。したがって、Y1からY2に 対する本件賃借権の無断譲渡には、信頼関係を破壊しな い特段の事情があるということができる。

【解 説】

 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲 り渡し、又は賃借物を転貸することができない(民法 612 条1項)。賃借人がこの規定に違反して第三者に 賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契 約の解除をすることができる(同条 2 項)。  もっとも賃貸借は賃貸人と賃借人の信頼関係に基づ いて成り立つものである。そのため賃貸借契約におい て賃借人の義務違反があったとしても、信頼関係の破 壊に至らない特別の事情があれば、契約解除はできな いとされている。これが、信頼関係破壊の法理である (最高裁昭和 28.9.25 判決、最高裁昭和 39.11.19 判 決)。背信性の理論といわれることもある。  本裁判例は、子会社への譲渡について、信頼関係の 破壊に至らない特別の事情があるとされた事案である。

ビルマネジメント

判例061

(借地権の現物出資)(東京地裁平成 10 年 2 月 23 日判決)信頼関係破壊の法理(1) 弁護士

渡辺 晋

(わたなべ すすむ) 弁護士

渡辺 晋

(わたなべ すすむ)  昭和 55 年 3 月 一橋大学卒業  同    年 4 月 三菱地所㈱入社  平成 元年 11 月 司法試験合格  平成 2 年 3 月 三菱地所㈱退社  平成 4 年 4 月 弁護士登録(第一東京弁護士会)  平成 14 年 4 月  山下・渡辺法律事務所開設、現在に至る 

【事案の概要】

【裁判所の判断】

連載

16

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 Xは、貨物自動車運送事業等を目的とする有限会社で ある。設立時以来の代表取締役であるAが経営を担当し、 Xの持分はすべてA及びその家族が所有し、役員も同人 らとその親族で占められていた。  XとYは、昭和45年、Y所有土地について、普通建物 の所有を目的とする土地の賃貸借契約を締結し、Xが、土 地上に建物を建築し、運送業を営んでいた。  しかるにA及びその家族は、平成3年9月20日、その所 有するXの持分全部をHに売り渡し、同日付で役員全員が 退任、代わってHがその代表取締役に、同人の家族がそ の他の役員に就任した。同日以後、Hが中心となってXの 経営が行われている。  Yらは、平成4年8月25日、Xに対し、賃借権の無断譲 渡を理由として賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし た。  本裁判例の原審においては、「Xは、Aの経営する個人 会社であったところ、AがXの経営の一切を新たな経営者 であるHに譲渡してXの経営から手を引いたものであり、 譲渡の前後を通じてXの法人格は形式的には同一性を保 持しているとはいえ、小規模な個人会社においては、経営 者と土地所有者との個人的な信頼関係に基づいて土地賃 貸借契約が締結されるのが通常であり、経営者の交代は、 その実質に着眼すれば、旧経営者から新経営者に対する 賃貸借の譲渡である」とされ、AからHに実質的経営者が 交代したことは、賃借権の譲渡であるから、契約解除事由 に該当するとされていた。  民法612条にいう賃借権の譲渡が賃借人から第三者へ

【解 説】

 小規模閉鎖会社においては、たとえ法人格の同一性 が維持されていても、実質的経営者の交代があった場 合には、賃借人の建物の使用の態様や方法が変更す る可能性がある。本裁判例の原審は、実質的経営者の 交代が賃借権の譲渡に該当すると判断していたが、上 告審である本判例では、この原審の判断が覆り、法形 式を重んじ、実質的経営者の交代は、賃借権の譲渡に 該当しないとされている。  ビルのテナントにM&A があり、その実質的経営者 が交代することがめずらしくなくなっている状況の下 では、本裁判例によって示された考え方は、現代的意 義を有するものといえよう。  なお本裁判例は、役員や資本構成を変動させたとき は契約を解除することができる旨の特約に言及してお り、間接的にではあるけれども、最高裁がこのような 特約の有効性を認めている点にも注目される。

判例062

(経営者交代(1))(最高裁平成8年10月14日判決、判例タイムズ 925 号 176 頁)信頼関係破壊の法理(2)

【事案の概要】

【裁判所の判断】

の賃借権の譲渡を意味することは同条の文理からも明らか であるところ、賃借人が法人である場合において、法人の 構成員や機関に変動が生じても、法人格の同一性が失わ れるものではないから、賃借権の譲渡には当たらないと解 すべきである。そして、この理は、特定の個人が経営の 実権を握り、社員や役員が個人及びその家族、知人等に よって占められているような小規模で閉鎖的な有限会社が 賃借人である場合についても基本的に変わるところはない のであり、小規模で閉鎖的な有限会社において、持分の 譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代しても、 同条にいう賃借権の譲渡には当たらないと解するのが相当 である。賃借人に有限会社としての活動の実体がなく、そ の法人格が全く形骸化しているような場合はともかくとし て、そのような事情が認められないのに経営者の交代の事 実をとらえて賃借権の譲渡に当たるとすることは、賃借人 の法人格を無視するものであり、正当ではない。  賃借人である有限会社の経営者の交代の事実が、賃貸 借契約における賃貸人・賃借人間の信頼関係を悪化させ るものと評価され、その他の事情と相まって賃貸借契約解 除の事由となり得るかどうかは、この事実が賃借権の譲渡 に当たるかどうかとは別の問題である。  賃貸人としては、有限会社の経営者である個人の資力、 信用や同人との信頼関係を重視する場合には、個人を相 手方として賃貸借契約を締結し、あるいは、会社との間で 賃貸借契約を締結する際に、賃借人が賃貸人の承諾を得 ずに役員や資本構成を変動させたときは契約を解除する ことができる旨の特約をするなどの措置を講ずることがで きるのであり、賃借権の譲渡の有無につきこのように解し ても、賃貸人の利益を不当に損なうものとはいえない。

(21)

 Xは、東京八重洲地下食堂街の管理を主たる目的とす る株式会社である。Yは、Gが代表取締役を務め同人の 家族が9割以上の持株割合を占めるいわゆる同族会社で あった。  XとYは、昭和59年6月1日、次の内容により、賃貸借 契約を締結し、Yが居酒屋を経営していた。 (1)賃料は、最低基準賃料を契約日から1年間は月額 112万円、昭和60年6月1日から1年間は115万円と した上で、店舗の売上金額の18.375パーセントの歩 合賃料を支払う。 (2)Yは、資本又は役員構成に重大な変更を生じたとき は、Xに対し遅滞なく必要書類を提出し、その書面 による承認を得なければならない。 (3)Yは、店舗に関する賃借権、営業権等の権利の全 部又は一部を譲渡することができない(Yの業種・ 資本・役員構成等の重大な変更によりYが契約締結 当時と実質的な企業の同一性を欠くに至ったとき、又 は営業全部の賃貸、その経営の委任、他人と営業上 の損益全部を共通にする契約、その他これらに準ず る行為をなした場合は、これを譲渡とみなす)。 (4)Yがこれらの各項の一にでも違反した場合、Xは、 Yに対し、何らの通知、催告を要せず賃貸借を解除 できる。  ところでその後、Gの年齢や体力的な事情などの理由に より、Gとその家族はYの株式を第三者に譲渡し、平成2 年11月16日以降、YにおけるG及びその一族の持株割合 は過半数を下回り、Gは平取締役、他の取締役もG家以

【解 説】

 賃貸借契約において、賃借人が契約に定められた義 務を履行しない場合には、賃貸人は、催告のうえで、 契約解除をすることができる。  もっとも賃借人の契約違反についても、信頼関係破 壊の法理により、信頼関係破壊に至らない特別の事情 があれば、契約解除はできないとされている。  本裁判例は、賃借人である会社の役員構成に重大 な変更を生じたときは賃貸人の書面による承認を得る 必要がある旨の約定がある賃貸借契約において、役員 がほぼ全面的に交替し、株主に変更があったのに直ち に承認を求める手続がとられなかった場合、信頼関係 の破壊に至らない特別の事情が存在するかどうかが争 われたケースである。賃貸借契約における使用目的、 賃料の定め方、株式譲渡に関する経緯等を勘案のうえ で、裁判所は、特別の事情は認められないとして、解 除の効力を肯定している。

判例063

(経営者交代(2)(東京地裁平成 5 年 1 月 26 日判決、判例時報 1467 号 69 頁)信頼関係破壊の法理(3)

【事案の概要】

外の人物となり、元のYの経営者一族と相続関係にある親 族関係を有している者はいなくなった。  このような状況の下で、Xは、Yに対し、契約違反を理 由に賃貸借契約を解除する旨の意思表示を行い、店舗の 明渡しを求めた。  Gによる株式譲渡の動機が同人の年齢や体力的な事情 等によるものであることはY主張のとおりであるが、Yは 従前G及びその家族を中心とした同族会社であり、このよ うな会社にあっては、株式会社として法人格は同一であっ ても、その株主や役員の構成によってその会社経営の方 針・内容が変動することは容易に予測しうるところ、Xに おいて、従前のYと平成2年11月16日以降のYとの実質 的同一性が喪失しているとの判断に至ったこと、賃貸借契 約は最低基準賃料の定めがあるとはいえ歩合性賃料を採 用していること、居酒屋という職種及びその営業形態から は、経営者の変動によって営業収入の変動が生ずると予 測しうること、不動産業をしていたKが株式譲受人として 関与していながら契約上の義務である承認を求める手続 きを直ちにとらず、しかも調査に際し虚偽事実が述べられ ていたことなどの諸事情を総合勘案すると、Xが承認をし なかったことが不相当であるとは認められず、また、Yに おいて行った組織変更につき信頼関係を破壊しない特段 の事情の存在を認めることはできないものといわざるをえ ビルマネジメント判例百選

【裁判所の判断】

参照

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