IPFC と中 間 言 語 としての現 代フランス語 研究
近 藤 野 里 、川 口 裕 司
はじめに本 稿 では、筆 者 たちが 20028 年 度 より開 始 した国 際 プロジェクト「現 代 フランス語 の中 間 音 韻 論 」 Interphonologie du francais contemporain (以 下 では IPFC と略 )の 研 究 目 的 と 研 究 内 容 を 概 説 す る 。 本 プ ロ ジ ェ ク ト は 、 「 現 代 フ ラ ン ス 語 の 音 韻 論 」 Phonologie du français contemporain (以 下 では PFC と略 )における「PFC フランス語 教 育 」 PFC Enseignement du français 部 門 に関 連 するプロジェクトとして、東 京 外 国 語 大 学 と PFC との共 同 プロジェクトである。
IPFC の構 想 は、2006 年 12 月 9 日 に、パリの Maison des Sciences de l’Homme で開 催 された Journée PFC において、川 口 が“Projet de UBLI et la phonologie du français chez les apprenants japonais ”と題 する中 間 音 韻 論 に関 する発 表 を、またシ ル ヴ ァ ン ・ ド ゥ テ 氏 Sylvain Detey (Dyalang ル ー ア ン 大 学 ) と ド ミ ニ ク ・ ヌ ヴ ォ 女 史 Dominique Nouveau ( ナ イ メ ー ヘ ン 大 学 ) が 、 “PFC pour l’enseignement du français”と題 する発 表 を行 った時 点 に遡 る。1 ドゥテ氏 が その 前 年 度 まで 東 京 外 国 語 大 学 で 非 常 勤 講 師 を 勤 め て い た こ と も あ り 、 共 同 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト の 構 想 は Journée PFC の中 で自 然 に持 ち上 がった。学 習 者 言 語 の専 門 家 である Detey 氏 は、 共 同 研 究 プロジェクトの素 案 作 りを引 き受 けた。一 方 で、後 述 するオープンソースの e-learning システムである Moodle を 2005 年 度 から授 業 に導 入 していた川 口 は、 Moodle による学 習 者 言 語 コーパスを構 築 するためのシステムを実 現 するため、林 俊 成 氏 の協 力 を仰 ぎつつ、後 述 する Moodle の利 用 法 について話 し合 いを行 った。 2007 年 7 月 5 日 にはルーアン大 学 よりドゥテ氏 を招 き、「PFC コーパスの発 音 教 育 への応 用 」と題 するワークショップを企 画 した。2 その席 上 、PFC が収 集 し構 築 した 話 し言 葉 フランス語 コーパスを、本 学 で行 う最 適 化 教 育 プログラムにどのように 活 用 1 川 口 の PDF 版 は、http://www.projet -pfc.net/?u_act=download&dfile=kawaguchi 061209.pdf&、Detey et Nouveau の PDF 版 は、http://www.projet-pfc.net/?u_act=
download&dfile=PFC-EF_Lancement_Decembre06_Detey_Nouveau.pdf& をそれぞれ参 照 。 2 ド ゥ テ 氏 の 招 聘 に 際 して は 、 東 京 外 国 語 大 学 の「 世界 の「言語・文化・地域」理解のための最適 化教育プログラム」の援助を受けた。またワークショップは、平成 19年度の文部科学省科学研究費補 助 金、基 盤 研究 (A)「多 言 語 話 し こ と ば コ ー パ ス と 学 習 者 言 語 コ ー パ ス に 基 づ く 言 語 運 用 の 研 究 と教 育 への 応 用 」(課 題 番 号 19202015、代 表 者 川 口 裕 司 )との共 催 であった。 © Flambeau 34 (2008) pp.51–67.
することができるか、その可 能 性 と問 題 点 を討 論 するとともに、日 本 人 フランス語 学 習 者 の言 語 コーパスを構 築 するための原 案 が提 示 された。 本 稿 で概 説 する IPFC プロジェクトは、その後 の数 回 に渡 る議 論 を経 てまとめられ たものである。3 しかしここではまず最 初 に、IPFC の親 プロジェクトである PFC につい て、ごく簡 単 に説 明 しておいたほうが良 いであろう。 PFC は 2002 年 にフランスで始 まった国 際 プロジェクトであり、4 その目 的 は以 下 の 5 つの目 的 を実 現 することである。 ① 話 し言 葉 フランス語 がどのように単 一 性 をもち、かつ多 様 性 を有 するのか、その 正 確 な姿 を提 示 すること、 ② 共 時 態 と通 時 態 の両 方 について、音 韻 論 モデルを検 証 すること、 ③ 共 通 の方 法 論 を用 いて、話 し言 葉 フランス語 の大 きなデータベースを構 築 する こと、 ④ 音 韻 論 的 な知 識 を相 互 に共 有 しつつ、自 然 言 語 処 理 の ためのツール開 発 を 促 進 すること、 ⑤ フランス語 教 育 とフランス語 学 のためのデータを拡 大 し、刷 新 すること、 である。 PFC を 当 初 か ら 主 導 し て き た の は 3 人 の フ ラ ン ス 人 研 究 者 、 ジ ャ ッ ク ・ デ ュ ラ ン Jacques Durand (ERSS -UMR5610、トゥールーズ・ル・ミライユ大 学 )、シャンタル・リュ ック Chantal Lyche (オスロ大 学 )、ベルナール・ラックス Bernard Laks (MoDyCo,
パリ 10 大 学 )である。2002 年 のプロジェクトの開 始 後 、多 くの高 等 機 関 に所 属 する研 究 者 、ポスドク、大 学 院 生 が参 加 している。5 IPFC プロジェクトは、PFC の研 究 目 的 の、主 に②、③、⑤に関 わる研 究 であると言 うことができる。まず、それらの点 をについて説 明 する。 3 なかでも 2008 年 5 月 に本 学 が開 催 した国 際 シンポジウムにおいて、さらに同 7 月 にパリで開 催 された CMLF (http://www.ilf.cnrs.fr/spip.php?rubrique4 )の機 会 を利 用 してドゥテ氏 と長 時 間 に 渡 る話 し合 いを持 つことができた。 4 http://www.projet -pfc.net/ 5 たとえば http://www.projet -pfc.net/?pfc-rc# を参 照 。
1. 中 間 言 語 としての現 代 フランス語 研 究6 1.1. PFC PFC にとっての「音 韻 論 」は、通 常 よりも広 い意 味 で用 いられている。つまり、音 声 学 は音 韻 論 に付 属 する独 立 した研 究 分 野 とは考 えずに、むしろ音 声 の領 域 における 言 語 活 動 の認 知 構 造 を考 察 するための 音 韻 論 の補 完 的 な分 野 と見 なされている。7 また研 究 対 象 となる現 代 フランス語 は、いわゆる規 範 化 されたフランス語 ではなく、音 韻 調 査 によって得 られる実 際 の言 語 使 用 (usages)としてのフランス語 である。PFC は 4 つのレジスターを含 み、世 界 中 の諸 地 域 で使 用 されるフランス語 をカバーするという 目 標 をもつ。8 したがって PFC は、様 々な地 域 と社 会 において実 際 に使 用 されている 現 代 フランス語 の変 異 にも関 心 を抱 く。しかしそうしたフランス語 の変 種 の研 究 は、必 ずしもフランス語 の記 述 を無 意 味 に下 位 分 化 することにはならないと主 張 する。むしろ PFC では、多 様 な言 語 使 用 の裏 にこそ、一 つの構 造 が存 在 していると考 えるのである。 音 韻 論 と音 声 学 と社 会 言 語 学 が交 るところおいて、様 々な変 異 を観 察 することによっ て不 変 的 な構 造 を見 つけようとする。9 1.2. IPFC 中 間 音 韻 論 Interphonologie という術 語 は、中 間 言 語 Interlangue から派 生 し た用 語 である。中 間 音 韻 論 とは、主 に、学 習 者 が第 二 言 語 としてある言 語 を習 得 す る際 に、学 習 の様 々な過 程 ・段 階 における、学 習 者 の音 声 的 ・音 韻 的 特 徴 を理 論 的 に研 究 する分 野 を意 味 する。 PFC プロジェクトでは、ヨーロッパにおいてフランス語 を第 一 言 語 とする話 者 、カ ナダおよびルイジアナの二 言 語 併 用 話 者 、さらにアフリカのフランス語 圏 における多 言 語 併 用 話 者 が、日 常 生 活 の中 で使 用 するフランス語 を研 究 の対 象 とする。これに 対 して、IPFC プロジェクトでは、フランス語 を母 語 としない話 者 を対 象 とし、一 定 の調 査 要 項 に従 った音 韻 調 査 を行 い、様 々な学 習 レベル、そして様 々な言 語 背 景 を持 つ学 習 者 のフランス語 を音 声 学 的 かつ音 韻 論 的 に研 究 する。 こうした中 間 言 語 に関 する研 究 は、とくに英 語 圏 で盛 んに行 われており、10 本 プ 6
本 稿 における IPFC プロジェクトの概 要 は、同 計 画 書 (第 4版 ) Sylvain Detey、Yuji Kawaguchi 、 2008 年 10 月 10 日 作 成 に基 づく。 7 Delais-Roussarie et Durand , 2003, p.214. 8 Ibid. 9 Ibid. 1 0 http://leo.meikai.ac.jp/~tono/lcorpuslist. html に掲 載 されている英 語 学 習 者 の中 間 言 語 コー パスのリストを参 照 。同 様 に http://www.univie.ac.at/ voice/と http://www. uta.fi /laitokset/
ロジェクトは、規 模 こそ違 いはするものの、ベルギーの「ルーヴァン話 し言 葉 英 語 中 間 言 語 の 国 際 デ ー タ ベ ー ス 」 Louvain International Database of Spoken English Interlanguage (ICLE)11 に似 た研 究 プロジェクトになるものと予 想 される。一 方 、フラ ンス語 について言 えば、既 に 2 つの大 きな学 習 者 言 語 コーパスが存 在 する。書 きこと ばコーパスを対 象 とする「フランス語 中 間 言 語 データベース」 French Interlanguage Database (FRIDA)12 と、話 しことばコーパスである「フランス語 学 習 者 口 語 言 語 コー パス」 French Learner Language Oral Corpora(以 下 では FFLOC と略 )13
である。後 者 のコーパスは、イギリスの大 学 1 年 生 から 4 年 生 の学 生 を対 象 にしており、学 習 者 の言 語 能 力 レベルに合 わせて、写 真 を見 ながらの説 明 、会 話 、 役 割 プレイ、語 り、1 人 の話 者 を対 象 とする録 音 、2 人 の対 話 者 を対 象 とする録 音 など、多 様 なタスクを用 いたコーパスデザインを採 用 しており、その点 で内 容 的 に充 実 したコーパスである。 FLLOC のような既 出 のコーパス群 に対 して、本 IPFC プロジェクトは、以 下 の 5 つの 独 創 的 な面 を持 っていると言 えよう。 ① PFC のツールを利 用 し、話 し言 葉 フランス語 の統 語 的 ・語 彙 的 情 報 を収 集 しながら、学 習 者 の言 語 能 力 、とくに彼 らの音 声 と音 韻 に焦 点 を定 める。 ② 諸 地 域 の学 習 者 データを比 較 することができるように、調 査 項 目 に一 貫 性 を与 える。 ③ 既 存 の PFC データベースを参 照 することで、単 一 言 語 および多 言 語 環 境 における言 語 変 異 を比 較 研 究 することが可 能 になる。 ④ PFC で培 われたネットワークを継 承 し、研 究 協 力 者 の国 際 的 なネットワーク を構 築 する。 ⑤ 中 間 音 韻 論 としての研 究 的 側 面 だけでなく、PFC 教 育 プロジェクト(以 下 で は PFC-EF と略 )14 としての教 育 的 側 面 における探 究 も行 う。 kielet/engf/research/elfa/ の英 語 のリンガフランカのコーパスを参 照 のこと。 1 1
ICLE は S. Granger の指 導 のもとによって行 われた更 に大 きなプロジェクト International Corpu s of Leaner English (ICLE) の一 部 を成 している。
http://www.fltr.ucl.ac.be/FLTR/GERM/ETAN/CECL/cecl.html 参 照 。 1 2 http://www.fltr.ucl.ac.be/fltr/germ/etan/cecl/Cecl -Projects/Frida/frida.htm 参 照 の こと。 1 3 http://www.flloc.soton.ac.uk/ 参 照 のこと。 1 4
以 下 の研 究 を参 照 のこと。 A. Neri, C. Cucchiarini et H. Strik (2006) ( Selecting segmental
errors in non -native Dutch for optimal pronunciation training training ) は、異 なる第 一 言 語 を
持 つオランダ語 学 習 者 の話 し言 葉 分 析 をもとに、エラーの標 本 を作 製 した。このエラーとは、頻 出 し、知 覚 的 にも目 立 ったもので、また長 期 に渡 って続 き、さらにコミュニケーションを潜 在 的 に妨 げ
1.3. IPFC の目 的 次 に IPFC の目 的 を簡 単 に述 べておく。 研 究 的 側 面 : PFC の調 査 要 項 に基 づく学 習 者 言 語 コーパスを構 築 する。本 コーパスは第 二 言 語 としてのフランス語 の習 得 、さらには音 声 学 および音 韻 論 を研 究 対 象 とする言 語 学 者 、心 理 言 語 学 者 、教 育 者 のために有 益 である。コーパス は調 査 対 象 となったフランス語 学 習 者 の集 団 に見 られる特 徴 的 な情 報 だけ でなく、同 時 にそれらの学 習 者 に普 遍 的 に観 察 される傾 向 等 も提 供 すること ができるであろう。また、本 コーパスは、可 能 な限 り、長 期 的 な調 査 結 果 に基 づく必 要 がある。 教 育 的 側 面 : 本 コーパスは PFC の調 査 データに統 合 され、それにより以 下 のような情 報 を 提 供 することが可 能 であると言 える。 ・世 界 中 の フランス語 を第 一 言 語 としない 話 者 によって話 される口 語 フラン ス語 に関 する情 報 を学 習 者 や教 育 者 に提 供 できる。これにより学 習 者 は多 様 な言 語 変 異 に 習 熟 す ることが でき、教 育 者 は専 門 家 育 成 のために 活 用 できる。15 ・フランス語 学 習 者 の発 音 データとしてだけでなく、典 型 的 あるいは起 こりうる 誤 りと、特 徴 的 な誤 りといった、フランス語 習 得 の過 程 における困 難 に関 す る情 報 を、学 習 者 と教 育 者 に提 供 できる。 1.4. IPFC の研 究 内 容 IPFC の調 査 地 は、たとえば東 京 のような非 フランス語 圏 における諸 大 学 、さらにフ ランス語 圏 では、ジュネーブのアリアンス・フランセーズやジュネーブ大 学 の外 国 人 向 けフランス語 講 座 等 である。16 調 査 対 象 者 となるフランス語 学 習 者 の言 語 能 力 レベルは、『外 国 語 の学 習 、教 授 、 得 るものである。 1 5
たとえば、S. Behrent (2007) の最 近 の著 作 にある communication interalloglotte の概 念 を参 照 のこと。
1 6
研 究 協 力 者 ( 予 定 ) 非 フ ラ ンス 語 圏 : 日 本 ( 川 口 裕 司 ) 、オ ラン ダ (D. Nouveau) 、 ノ ル ウ ェ ー (C. Lyche)、 デンマーク(A. B. Hansen) 、ドイツ (E. Pustka, T. Meisenburg, B. Lonnemann) 、イタ リア (E. Galazzi, C. Barone)、イギリス (P. Rowlett)、アメリカ合 衆 国 (T. Klingler)、スペイン(L. Baque)、 ポ ル トガル (E. d’Andrade) 。 フラン ス 語 圏 : ス イス (I. Racine) 、 フラン ス (S. Detey, J. Durand)、ベルギー(A.-C. Simon)
評 価 のためのヨーロッパ共 通 参 照 枠 (Cadre européen commun de référence pour les langues: CECRL)』の 6 つのレベルを適 用 するものとする。これ以 外 にも、一 定 のフラ ンス語 能 力 を測 定 する資 格 試 験 、たとえば国 際 的 なものとしては DELF、地 域 的 なも のとしては日 本 の実 用 フランス語 技 能 検 定 試 験 なども、言 語 能 力 レベルの判 定 の参 考 になるであろう。調 査 では、それぞれの個 人 においてフランス語 がどのような地 位 に あるか(第 一 外 国 語 、第 二 外 国 語 、または第 三 外 国 語 等 )、さらにフランス語 を学 習 した期 間 の長 さ等 も調 査 しなければならない。調 査 対 象 が大 学 生 の場 合 には、学 年 と専 攻 も明 記 する。その場 合 、学 習 者 のフランス語 能 力 のレベルは、彼 ら自 身 が記 入 する社 会 言 語 学 的 アンケートによって補 足 されるであろう。とはいうものの、社 会 言 語 学 的 アンケートは対 象 となる国 によって違 ってくる。たとえば、PFC のアンケートでは、 家 庭 内 で使 用 する言 語 と、家 庭 外 で使 用 する言 語 を明 記 するようになっているが、 日 本 の平 均 的 な大 学 生 は、親 のどちらかが外 国 籍 を持 たない限 り、家 庭 で話 される 言 語 の大 半 は日 本 語 である(方 言 を含 む)と言 える。日 本 では家 庭 内 と家 庭 外 にお ける使 用 言 語 の明 記 はあまり必 要 性 がないと判 断 される。 IPFC では面 接 調 査 も行 われる予 定 であるが、面 接 における学 習 者 のフランス語 レ ベルの評 価 については、彼 らの学 習 を担 当 するフランス語 教 師 等 によって行 われるこ とになろう。最 後 に、フランス語 学 習 の深 度 を時 系 列 的 に分 析 するために、たとえば、 年 度 始 まりと年 度 末 、あるいは授 業 期 間 内 において、可 能 であれば同 一 の調 査 を複 数 回 行 うことが望 ましい。 なお PFC と IPFC が構 築 する言 語 コーパスは、文 字 データと音 声 データから成 り、 個 人 が特 定 できる可 能 性 があるため、個 人 情 報 保 護 の観 点 から、データ 管 理 と公 開 条 件 を厳 重 にする必 要 がある。また調 査 協 力 者 には、全 員 、その場 で同 意 書 に署 名 してもらうことが必 須 である。 1.5. IPFC-JAPON ここでは IPFC の枠 組 みにおいて日 本 で実 施 される調 査 について簡 単 に説 明 する。 日 本 の IPFC には以 下 の 5 つの特 色 がある。 ① 日 本 人 学 習 者 に特 徴 的 な発 音 の誤 りと言 語 知 識 の関 連 性 はどのようなものか、 単 なる発 音 の誤 りなのか、それとも文 字 と関 係 があるのか等 を調 査 するために、 PFC の単 語 リスト以 外 に、日 本 語 学 習 者 用 の 61 個 の単 語 と 60 個 の無 意 味 語 を用 意 した。 ② フランス語 能 力 のレベルとリエゾンの関 係 、およびリエゾン学 習 の過 程 を調 査
するために、49 個 の短 文 リストを用 意 した。 ③ PFC では、現 代 フランス語 の長 文 テクストを読 んでもらい、朗 読 という特 殊 なス タイルにおける発 音 を調 査 するが、大 学 1 年 生 にとってはテクストが難 解 である ため、朗 読 のタスクは 2 年 生 以 上 を対 象 に行 うことにした。 ④ PFC の調 査 では、方 向 づけされた会 話 (CECRL の B1 以 上 のレベルであると判 断 された学 習 者 )、自 由 会 話 (CECRL の C1 以 上 のレベルであると判 断 された 学 習 者 )、学 習 者 が選 択 したテーマについての会 話 における発 音 を面 接 調 査 するが、IPFC-JAPON では日 本 人 学 習 者 に固 有 のタスクを多 く課 したため、面 接 調 査 は現 時 点 では行 わないこととした。 ⑤ 当 初 は PFC の単 語 リストを反 復 するタスクを計 画 していたが、上 記 のようにタス ク全 体 の分 量 が多 くなったために、単 語 反 復 タスクは 2 回 目 の調 査 で実 施 する ことになった。 IPFC では、録 音 対 象 者 を大 学 1 年 生 から 4 年 生 とし、各 学 年 で尐 なくとも 10 名 (男 女 それぞれ 5 名 が理 想 的 )を録 音 調 査 することを原 則 としている。この点 に 関 して IPFC-JAPON には他 の調 査 地 にない大 きな特 色 がある。これまでの PFC 調 査 は、調 査 者 が DAT レコーダー等 を持 って行 き、現 地 で一 人 一 人 の発 音 を録 音 した。これに 対 して IPFC-JAPON では、先 述 の Moodle を利 用 した e-learning システムの中 で、 学 習 者 が 自 ら 録 音 タ ス ク を 行 い 、 録 音 し た 音 声 フ ァ イ ル ( WAVE の 20Kbps 、 11.025Hz、16 ビット、モノラル形 式 )をサーバーに送 信 し、サーバーが音 声 ファイルを タスクと学 習 者 の情 報 とともに自 動 的 に データベース化 する。別 の言 い方 をするなら ば、Moodle を用 いて学 習 者 の録 音 データを自 動 的 にコーパス化 していくシステムを 採 用 しているのである。17 2008 年 10 月 17 日 に、IPFC-JAPON の第 1回 録 音 調 査 が東 京 外 国 語 大 学 で実 施 された。18 以 下 に、Moodle を用 いた録 音 調 査 の概 要 を紹 介 する。 学 生 は、まず Moodle を起 動 し、アカウント作 成 画 面 から必 要 な情 報 を記 入 して、ア カウントを作 成 する。次 に ID とパスワードでログインし、TASK PFCJ No.1 の講 義 に登 録 する(図 1参 照 )。その日 に Moodle を初 めて使 用 する学 生 もいたが、アカウント登 1 7
Moodle による e-learning 運 営 の詳 細 については、2008 年 6 月 3 日 のグローバル COE プログ ラム「コーパスに基 づく言 語 学 教 育 研 究 拠 点 」 の第 1回 研 究 会 、『Moodle を用 いたマルチメディア コーパス収 集 』の 3 つの報 告 を参 照 されたい。「Moodle を利 用 したフランス語 教 育 の実 践 例 」(報 告 者 : 川 口 裕 司 )、「Moodle による書 き取 りタスクの実 践 と コーパス 構 築 」 (報 告 者 : 松 澤 水 戸 )、 「Moodle による音 声 録 音 方 法 のデモンストレーション」(報 告 者 :林 俊 成 )。 1 8 PFC http://www.el.tufs.ac.jp/moodle19/login/index.php を参 照 。
録 で特 に問 題 は生 じなかった。
図 1 Moodle による IPFC タスク
図 2 IPFC-JAPON のタスクリ スト
PFC Word List No.1 には、PFC の調 査 要 項 で決 められた 94 個 の 単 語 が あ る 。 具 体 的 に は図 3 を参 照 され た い 。学 生 は下 に あ る録 音 ボタンを押 してから、単 語 リストを読 み上 げる。読 み終 えて 停 止 ボタン を押 す と 、録 音 内 容 が自 動 的 に再 生 される。録 音 内 容 に問 題 がなければ送 信 ボタン を押 す 。す る と 録 音 内 容 が ユ ー ザ ー 情 報 、 時 間 情 報 等 と と も に サーバーに転 送 されるようになっ ている。
図 3 PFC 単 語 リストと録 音 画 面
PFCJ Word List No.2 と List No.3(図 2参 照 )は、IPFC-JAPON に特 有 のタスクで、そ れ ぞ れ 61 個 の 単 語 と 60 個 の 無 意 味 語 か ら な る 。 PFCJ Reading sentences も IPFC-JAPON に固 有 のもので、リエゾンの習 得 状 況 を分 析 するための 49 個 の短 文 が 含 まれる。Reading PFC Text には朗 読 タスクのための長 文 テクストがある。テクストは 3 つのパラグラフに分 けられ、まず最 初 に日 本 語 の説 明 を読 み、それを読 み終 えた後 、 録 音 ボタンを押 してテクストを読 み上 げる。最 後 に社 会 言 語 学 的 なアンケート調 査 が ある。Excel 文 書 の形 式 で、その場 で回 答 して、ファイルを課 題 提 出 するようになって いる。 PFC では全 ての調 査 地 点 で単 一 の決 められた実 施 要 項 に従 って録 音 調 査 が行 わ れた。このような統 一 された実 施 要 項 があることで 、得 られた データの相 互 比 較 が可 能 になる。IPFC の録 音 調 査 においても、フランス語 学 習 者 間 の比 較 、さらには PFC のフランス語 母 語 話 者 と IPFC のフランス語 学 習 者 とのデータ比 較 ができるように、
IPFC の録 音 調 査 で課 されるタスクは、できる限 り PFC の実 施 要 項 に従 うことにした。19 今 後 の研 究 プロジェクトに関 しては、以 下 のような問 題 提 起 が可 能 であろう。 ① 学 習 者 言 語 データのテクスト化 をどうするのか、 ② Praat 等 を用 いた音 声 分 析 を行 うのか、 ③ PFC サイトへの登 録 と表 示 方 式 をどうするのか、 ④ テキストデータに特 殊 なタグを行 うのか たとえば誤 答 の場 合 に、どのレベル(分 節 音 、音 節 、語 、文 など)で特 殊 なタ グ等 を付 記 するのか、 を考 える必 要 がある。 2. IPFC の研 究 ここでは音 声 レベルと音 韻 レベルにおける諸 研 究 のうち、筆 者 たちが 現 在 最 も関 心 を抱 いている、①分 節 音 と②リエゾンについて、PFC との関 連 性 を中 心 に述 べることに する。 2.1. 分 節 音 2.1.1. PFC 単 語 リスト PFC の推 進 担 当 者 が述 べているように、PFC の単 語 リストには、これまでに行 われ てきた複 数 の音 韻 調 査 や音 声 研 究 の成 果 を引 き継 ぐような事 例 が集 められている。 また、インフォーマントのより完 全 な音 韻 体 系 を記 述 するため、基 本 的 に強 勢 位 置 に おける母 音 の発 音 が調 査 された。20 た と え ば 、前 舌 母 音 [a]と 後 舌 母 音 [α]が観 察 され る可 能 性 のある単 語 とし ては、 mal (4)21、mâle (52)、malle (46)、pâte (12)、patte (74)、ras (5)、rat (2)がリスト中 に ある。さらに patte – pâte (85-86)は、最 小 対 としても調 査 される。リストの単 語 は 1-84 番 までランダムに並 べられている。一 方 、上 記 の 85-86 番 に続 いて、épais – épée、 jeune – jeûne、beauté – botté、brun – brin の 4 つの最 小 対 がリストに盛 り込 まれてい る。これによってランダムな場 合 と最 小 対 の場 合 の 実 現 形 の違 い、その関 連 性 、さら に話 し手 の音 韻 意 識 を調 査 する。PFC の単 語 リストにおいて、唯 一 最 小 対 が調 査 さ 1 9 タスクの最 終 版 は現 在 検 討 中 である。 20 Delais-Roussarie et Durand , 2003, p.218. 2 1 ( )の数 字 は PFC 単 語 リストの通 し番 号 を表 す。
れていない母 音 対 立 は、[ɔ]-[o]である。しかしながら、ランダムな単 語 中 には roc (1)、 rauque (67)、paume (21)、pomme (54)がある。
中 舌 母 音 schwa を観 察 するために、mal (4) – mâle (52)、roc (1) – rauque (67)等 の 最 小 対 が リ スト の 中 に あ る 。ま た 渡 り 音 に つ い て は 、 miette (63) 、 mouette (30) 、 muette (79)等 の例 が多 数 含 まれる。鼻 母 音 は blanc (59) – blond (42) – brin (57) – brun (27)がある。
単 子 音 は様 々 な単 語 の 中 に 散 見 され る が 、語 末 の 子 音 ク ラスター と して、 aspect (38) 、 infect (22) 、 intact (8) が 、 語 中 の 子 音 ク ラ ス タ ー と し て 、 explosion (50) 、 extraordinaire (70)、ex-femme (32)、ex-mari (53)があり、声 の同 化 として islamique (17)、slip (64)、socialisme (36)、médecin (20)がリストに入 っている。
と ころ で 、 幾 つ かの 単 語 の 発 音 に 関 し て は 、 代 表 的 な フ ラ ン ス 語 辞 典 で あ る Le
Petit Robert の 1993 年 版 (以 下 PR)の記 述 は、Martinet et Walter の発 音 辞 典 Dictionnaire de la prononciation française dans son usage réel , 1973 年 (以 下
M&W)の記 述 と、かなり 異 なっていることが知 られている 。こうした発 音 の変 異 を記 述 することは、PFC の単 語 リスト調 査 の目 的 の一 つであると言 える。
以 下 に、単 語 リストの 1 番 から 10 番 までの例 で、記 述 に相 違 が見 られるものを挙 げ ておく。より完 全 な例 示 については、PFC Bulletin 1, pp.40-43 を参 照 のこと。
rat (2) PR [Ra], M&W [rɑ]10, [ra]722
jeune (3) PR [ʒœn], M&W [ʒœn]16, [ʒœnə]123 des jeunets (7) PR [deʒœnɛ], M&W des [de]14, [dɛ]4,
jeunets [ʒønɛ]9, [ʒœnɛ]7, [ʒøn e]1
fêtard (10) PR [fɛtaR], M&W [fetar]11, [fɛtar]4, [fetɑr]1, [fɛːtar]1。
ところで PFC の発 音 調 査 は、厳 密 的 な意 味 において Labov や Milroy が英 語 につ いて行 ったような社 会 言 語 学 的 調 査 とは言 えない。推 進 担 当 者 たちも認 めているよう に、PFC のインフォーマントは、必 ずしもその地 域 社 会 を代 表 していると考 えられず、 その規 模 もあまり大 きくない。24 PFC の主 眼 は、むしろ、ある程 度 まで地 域 社 会 と 関 連 づけられている地 理 的 な発 音 変 異 を記 述 することにあると言 えるだろう。 2 2
M&W の辞 書 は 17 名 の Paris type と称 するインフォーマント の録 音 調 査 に基 づいている。川 口 (1983)を参 照 。 2 3 PFC の発 音 分 析 が近 年 多 くの研 究 対 象 にな っている e muet とリエゾンの研 究 に貴 重 なデータ を提 供 していることは注 目 に値 する。 24 Delais-Roussarie et Durand, 2003, p.217.
2.1.2. IPFC 単 語 リスト IPFC 単 語 リストは、日 本 人 フランス語 学 習 者 の中 間 言 語 研 究 を専 門 とする ドゥテ 氏 が作 成 した。リストは 2 種 類 あり、第 1 のリストは現 実 に存 在 するフランス語 の単 語 61 語 からなり、第 2 のリストは 60 個 の無 意 味 語 からなる。 ところで、幾 つかの国 々のフランス語 学 習 者 に見 られる発 音 の特 徴 については、既 に先 行 研 究 の ある程 度 の 蓄 積 があり 、その 一 般 的 な発 音 傾 向 は 、たと え ば Lauret (2007) pp.75-77 等 に簡 潔 にまとめられている。ここでは Detey(2008)の IPFC-JAPON を参 照 しつつ、主 要 な調 査 項 目 について見 ておく。 語 頭 語 中 語 末 R/L ravage/lavage rakito/lakito baron/ballon kirato/kilato anti-bar/anti-bal makotar/ makotal B/V ballet /valet bakito/vakito dévaler/ déballer kibato/kivato cube/cuve makotab/ makotav U/Y août/ut oukito/ukito la boulle/la bulle kidouto/kiduto au bout/obus kotadou/ kotadu
U/EU houleuse / heureuse oukito/eukito
c’est l’heure/c’est lourd kidouto/kideuto un peu/un pou kotadou/ kotadeu CC-sC stalagmite skalapo la pastèque laposkède la poste malatosk CCCC expliqué / exprimé まず最 初 に R/L のペアである。日 本 人 学 習 者 が最 も苦 手 とする区 別 である。25 表 にあるような最 小 対 を現 実 の語 と無 意 味 語 で用 意 している。 B/V も日 本 人 の不 得 意 とする区 別 である。26 U/Y では、日 本 人 学 習 者 は、/u/をしばしば[ɯ]または[ə]として実 現 することが知 ら れており、/y/は渡 り音 を前 に伴 って[jy]と発 音 する傾 向 がある。 U/EU の場 合 、日 本 人 学 習 者 は/œ/と/ø/をいずれも[ɯ]と発 音 することが多 い。 この他 にも、狭 い/e/を広 い[ɛ]として発 音 する傾 向 があり、/o/と/ɔ/の対 立 が実 現 でき ないことも、しばしば指 摘 される。さらに、摩 擦 音 の/ʒ/が破 擦 音 [dʒ]になってしまうこと もよく知 られている。日 本 人 学 習 者 には、子 音 連 続 の間 に母 音 を挿 入 して発 音 する 2 5 杉 山 、川 口 (2007) p.143-144 を参 照 。 26 同 上 p.143 -144 を参 照 。
傾 向 があり、リスト中 にも子 音 連 続 を含 む幾 つかの単 語 がある。 今 回 の IPFC 調 査 によって、これまで分 析 者 の直 観 に頼 って行 われることの多 かっ た日 本 人 フランス語 学 習 者 の発 音 傾 向 に関 する仮 説 は、多 数 の音 声 データを用 い て、より詳 細 に検 証 されることになるだろう。 2.2. リエゾン リエゾン研 究 は PFC においては初 期 の段 階 から、分 節 音 、schwa、イントネーション とともに行 われてきた。 2.2.1. PFC におけるリエゾン研 究 PFC コーパス間 で調 査 要 項 が一 貫 していることでコーパスの相 互 比 較 できる点 、フ ランス語 だけを母 語 とする話 者 と多 言 語 併 用 話 者 との間 で変 異 を比 較 して研 究 でき る点 などから、年 齢 、社 会 的 背 景 、または 地 域 間 でのリエゾン変 異 の違 い、フランス 語 学 習 者 のリエゾンの習 得 における分 析 などが可 能 だろう。今 までに PFC に携 わる 研 究 者 によって、学 会 や論 文 で発 表 されてきた研 究 には以 下 のようなものがある。
H. N. Andreassen アンドレアセン(2003)の“Une contrainte de fidélité flottante pour le traitement du schwa de la liaison dans le canton de Vaud ”27 では、スイスの ヴォー州 の 12 名 のインフォーマントから得 た PFC コーパスについて、最 適 性 理 論 の 観 点 からリエゾンと Schwa を研 究 している。
P. Encrevé アンクルベ他 (2005)の中 の“Liaison in French: towards an unified explanation of variation”28 において、S. Wauquier-Gravelines ヴォキエ・グラヴリヌ 女 史 は、リエゾンの種 類 (禁 止 、義 務 、選 択 的 リエゾン)、アンシェヌマンなしのリエゾ ン、フランス語 母 語 話 者 としての幼 児 のリエゾン習 得 における観 察 、音 響 的 データか らのリエゾン子 音 分 析 、スケルトン理 論 でのリエゾン子 音 の定 義 付 けなど、リエゾン研 究 における多 様 な研 究 的 視 点 を提 示 している。 2.2.2 IPFC-JAPON のリエゾン調 査 項 目 に関 して IPFC-JAPON におけるリエゾンの調 査 項 目 を決 定 する上 で、まず 3 種 類 のリエゾン が考 慮 された。その 3 種 類 とは、「義 務 的 リエゾン」、「禁 止 リエゾン」、「選 択 的 リエゾ ン」である。しかしながら、「選 択 的 リエゾン」はフランス語 母 語 話 者 においても 大 きな 揺 れが見 られ、学 習 者 との比 較 は困 難 になると予 想 されるため、調 査 項 目 には加 え ず、調 査 項 目 では特 に「禁 止 」と「義 務 」リエゾンの調 査 を行 うことにする。調 査 項 目 に 2 7
Bulletins PFC n° 3 : http://www.projet -pfc.net/?u_s=4&u_a=26& を参 照 のこと。 28
お け る 「 義 務 的 リ エ ゾ ン 」 は 、 ①PFC (Bulletin PFC n°129
) に お い て 、 Delattre
(195130)により義 務 的 にリエゾンを行 う必 要 があるとされているコンテクストと、②PFC コ ーパス (Durand & Detey, 200731
; Durand et Lyche, 200832) において 28893 例 の分 析 によって、安 定 してリエゾンされるものを選 んでいる。特 に、 ②においては、(i)冠 詞
(un, les, des, mon, son, ton, mes, tes, ses) +母 音 で始 まる名 詞 句 (例 :les enfants, les autres enfants, mon enfant)、(ii)後 接 代 名 詞 (ils, elles, on, nous, vous, en)(例 : on/[n] en/[n] avait parlé, il y en/[n] a )、(iii)前 接 代 名 詞 (例 :De quoi parle-t/[t] on ? Comment dit/[t] on ? Encore faut/[t] il travailler) を含 むリエゾン文 を作 成 し、
調 査 項 目 とした。
「禁 止 リエゾン」については以 下 に挙 げる 5 つのリエゾンが禁 止 されるコンテクスト33 を含 む文 を調 査 項 目 に加 えた。
① リズムグループ間 にまたがる場 合 : Le lion// est un animal.
② h aspiré の前 : J’aime bien les// haricots rouges.
③ 接 続 詞 et の後 : Et //avec ça, ça sera tout ?
④ 単 数 名 詞 の後 ろに形 容 詞 が来 る場 合 : J’ai rencontré un étudiant// admirable.
⑤ 疑 問 文 で、主 語 と動 詞 の倒 置 している場 合34:
Vont-elles// écouter l’explication ?
以 上 で述 べた「義 務 的 リエゾン」と「禁 止 リエゾン」を含 む調 査 を日 本 人 フランス語 学 習 者 を対 象 として行 うことにより、学 習 者 のリエゾンの特 徴 が得 られ、その結 果 を日 本 人 を対 象 としたフランス語 学 習 、そしてフランス語 教 授 法 に応 用 できる可 能 性 があ
29
Bulltein PFC n°1 : http://www.projet -pfc.net/?u_s=4&u_a=108& を参 照 のこと。
30
Delattre, Pierre 1951. Principes de phonétique f rançaise à l’usage des étudiants anglo-américains, Middlebury College.
31
Durand, J. & Detey, S. (2007). Ressources pour l’apprentissage et grands corpus de français parlé : le projet PFC-EF et le cas de la liaison en français. In N. Spanghero -Gaillard & et M. Billières (éds) Actes de DidCog2007 [ CD-ROM], Toulouse: Université de Toulouse -Le Mirail, 75-80.
32
Durand, J. & Lyche, C. (2008). French liaison in the light of corpus data. Journal of Fren ch
Language Studies 18(1), 33-66.
33
Léon, P.R.(2005). Phonétism e et prononciations du français, 4ème édition, 153 -154.と Fouché, P. (1959). Traité de prononciation français , 2ème étidion, 437 -468.を参 照 し、作 成 し た。
34
このコンテクストでリエゾンが行 われるという指 摘 もあるが、 Léon, P.は禁 止 リエゾンであると述 べ ている。
るといえる。フランス語 学 習 年 数 や個 人 の注 意 度 によって 、リエゾンの習 得 度 は異 な ることも考 えられるが、学 習 者 の特 徴 的 な誤 りを結 果 から把 握 できるであろう 。たとえ ば、リエゾンの子 音 が後 に続 く単 語 の語 頭 でどのような音 として実 現 するかに対 する 認 識 のように、フランス語 学 習 者 がリエゾンをどのように認 識 しているのか を分 析 し、リ エゾンを学 習 者 に教 える際 の注 意 点 などを考 えることができる。 また IPFC-JAPON では、社 会 言 語 学 的 アンケートも同 時 に行 うため、フランス語 の 学 習 期 間 、学 習 頻 度 、個 人 の言 語 的 背 景 と録 音 したリエゾン調 査 結 果 を照 らし合 わ せることが可 能 である。 おわりに 以 上 に述 べてきたように、IPFC プロジェクトでは、フランス語 を母 語 としない話 者 を 対 象 に、様 々な学 習 レベルの様 々な言 語 背 景 を持 つ学 習 者 のフランス語 を音 声 的 に、そして音 韻 論 的 に研 究 することが可 能 である。また調 査 項 目 に一 貫 した柱 がある ことから相 互 比 較 を行 うことができる。 PFC の音 韻 調 査 によって得 られるフランス語 は、規 範 化 されたフランス語 ではなく、 実 際 の言 語 使 用 としてのフランス語 であり、PFC は様 々な地 域 と社 会 において、実 際 に使 用 されている現 代 フランス語 の 多 様 性 に関 心 をもっている。一 方 で、IPFC は中 間 音 韻 論 、主 に学 習 者 が第 二 言 語 としてフランス語 を習 得 する 際 における音 声 特 徴 や音 韻 特 徴 を理 論 的 に研 究 する。 これら二 つの研 究 成 果 を参 考 にして、単 一 言 語 および多 言 語 環 境 における言 語 変 異 を比 較 研 究 することが可 能 になるのである。第 二 言 語 としてのフランス語 の習 得 に 関 しては、コーパスは調 査 対 象 となったフランス語 学 習 者 の集 団 に観 察 される特 徴 的 な傾 向 を得 ることができる点 で、ある言 語 を母 語 とする学 習 者 の集 団 を対 象 とする 音 声 学 ・音 韻 論 的 な視 点 からのフランス語 教 授 法 、フランス語 教 育 法 の発 展 が期 待 できるであろう。IPFC-JAPON の調 査 に関 しては、2008 年 10 月 17 日 に東 京 外 国 語 大 学 で実 施 された第 1 回 録 音 調 査 の結 果 について、2008 年 12 月 にパリで開 催 され た PFC 学 会 で シ ル ヴ ァ ン ・ ド ゥ テ 氏 が 報 告 を 行 っ た (http://www.projet-pfc.net/ index.php?option=com_content &view=article&id=187&Itemid=167 を参 照 )。 参 考 文 献
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