1 .はじめに
「回収・循環利用こそが環境対策の原点である」の思想の基 に,めっき工程内における種々の回収技術をシステム化し,「エ コノバックシステム」として発表してから 43 年が経過した。 1976 年,エコノバックシステムを構成する主要なシステ ムとして,カートリッジ型イオン交換機による引き取り再生 システム「資源化センターシステム」を開発し,以来,多く の顧客にご利用いただき,学会,団体などの表彰もいただい てきた。 「資源化センターシステム」の目的は, ①めっき水洗工程内においては洗浄水の純水化と循環利用 ②引き取り再生処理場(資源リサイクルセンター)において は,イオン交換塔の再生と再生脱離液からの貴金属,銅, ニッケルなど有用金属の再資源化が主業務である。 しかも,本システムを採用することにより,排水処理に係 る CO2発生量が,従来の各工場で処理する場合と比べて, 1/3 以下に削減できるという試算もあり,環境保護の面にお いても大いに寄与できる。 本稿では回収・循環利用を主題にして,以上で紹介した各 システムの具体例について報告する。2 .めっき工程における資源循環システム(エコノ
バックシステム)
めっき加工では種々の金属や金属塩を使用している。消費 材料の数十パーセントはめっき皮膜として製品に付与してい るが,かなりの割合で洗浄排水や劣化(老化)廃液として排出 される。排出液中の金属のほとんどは水酸化物スラッジにし て産業廃棄物として埋め立て処分されている。 近年,埋め立て処分場の逼迫問題や金属資源の可採年数の 問題等からスラッジの減容化と金属の再資源化が望まれてい る。めっき工程からの排出液を対象とした金属資源の回収方 法は種々提案されているが,一旦希釈排出された排水から金 属回収するには相応の設備が必要であり,コストも掛かり, あまり前向きには取り組まれていないのが実情である。 工程内で水も含めた資源循環システムが構築されれば,金 属資源がより有効に活用されるのみならず,環境に優しい めっきシステムとなる。本項では,システムの基本概念につ いて述べ,ニッケルめっき工程,クロムめっき工程,亜鉛めっ き工程における資源循環システムおよび平成 18~20 年度戦 略的基盤技術高度化支援事業「次世代防錆めっきシステムの 開発」(管理番号:18-13)で採用された「環境無負荷型めっ きシステム」の概要を紹介する。 2.1 資源循環システムの基本概念 めっき工程における資源循環システムの基本は,めっき液 の濃縮回収と水洗水の循環利用である。図 1 に基本のモデル を示す。水洗水の循環利用には主にイオン交換装置を使用し, 浴液の濃縮には減圧型蒸発濃縮装置または閉鎖型大気濃縮装 置が使用される。濃縮装置で発生する凝縮水を水洗水として 循環利用できれば閉鎖型循環システムとなる。限られた量の 凝縮水で水洗するためには汲み出し量の削減,単槽多段水洗 などによる水洗水量の削減が必須である。しかしながら,循 環システムにすると不純物も濃縮蓄積され,めっき浴によっ ては金属濃度が増加することがある。そのため,不純物の除 去精製操作,液バランスの調整が重要となる。 2.2 主なめっき工程における事例 1)めっき浴温度が 40~50 ℃以上のめっきラインは,基本 的に工程内においてめっき液の濃縮回収を行う。また,洗浄 水は工程内で循環利用するか,同系統排水合同で循環するかめっきプロセスにおける薬品の回収および再資源化システム
野村 記生
a,北川 富則
a,加藤 隆
a,福田 正
a a㈱三進製作所(〒 484︲0894 愛知県犬山市羽黒貴船浦 1︲2)Recovery and Resource System of Chemicals in Plating Process
Norio NOMURA
a, Tominori KITAGAWA
a, Takashi KATO
aand Tadashi FUKUTA
aa Sanshin MFG. Co., Ltd.(1-2, Kifuneura, Haguro, Inuyama-shi, Aichi 484-0894)
Keywords : Closed System, Metal Recovery, Plating Wastewater, Recycling Technology
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小特集:めっきプラントからの排水処理とリサイクル
イオン交換装置(または RO) (工程別または系統別循環) 回収槽 めっき槽 水洗槽 水洗槽 精製及び濃縮装置 図 1 めっき工程資源循環システムの基本モデルめっきプロセスにおける薬品の回収および再資源化システム を作業条件によって決める。 回収率が高くなるにしたがって 不純物の持ち込みも増加するので,同時に浴液の精製も考慮 する必要がある。(ニッケル,クロムなど) 2)めっき浴温度が 30~35 ℃以下の低温めっきラインにつ いては,めっき液の濃縮を閉鎖型の大気型蒸発濃縮装置で行 うか,あるいは,回収槽の液を定期的に取り出し,不溶化或 いは電析して再資源材に供する。また,洗浄水は工程内で循 環利用するか,同系統排水合同で循環するかを作業条件に よって決める。(硫酸銅,各種亜鉛等) 2.2.1 ニッケルめっき工程における資源循環システム 図 2 に示すフローは平成 13~14 年度において,全国鍍金 工業組合連合会から受託して開発したニッケルめっき工程の 循環システムある。本研究の主目的は「ホウ素対策」にある が,めっき工程を循環システムにすることにより,ホウ素規 制対応を満足させることは勿論のこと,ニッケル回収の効果 も多大である。通常,ニッケルめっき工程は半光沢ニッケル めっき(SB-Ni)を施して光沢ニッケルめっき(B-Ni)をする例 が多い。 濃縮回収操作は,図 2 に示すように,光沢ニッケルめっき 回収槽液を濃縮して半光沢ニッケルめっき槽に返送するため, 濃縮前溶液に含まれる一次光沢剤(サッカリンなど)を除去す る必要がある。また,半光沢ニッケルめっき槽では,陰極電 流効率 90~95% に対し陽極電流効率は約 100% であるため, ニッケル濃度が基準値より高くなる。ニッケル濃度を安定さ せるため,陽極面積の 10% 程度を不溶性陽極(例えば,チタ ン-酸化イリジウム)に置き換える必要がある(図 3)。 2.2.2 クロムめっき工程における資源循環システム めっき種の中でもクロムめっき浴は浴温が高く,循環シス テムが構築しやすく実施例も多い。装飾クロムめっきのよう に数ミクロンのめっき厚みでは,電着量より汲み出し量が多 くなる。図 4 に標準的なクロムめっき工程の循環システム例 を示す。 1)汲み出されためっき液は,大気型若しくは減圧型蒸発濃 縮装置で規定の濃度まで濃縮してめっき槽に戻す。 2)濃縮操作によって,必ず不純物が増加する。不純物とし ては,銅,ニッケル,鉄など外部から持ち込まれたり,めっ き加工中に発生する金属イオンと,条件によっては用水 中の塩素イオン(Cl−)が持ち込まれて濃縮される例もあ る。 ①金属イオンの増加を抑制する方法としては,被濃縮液中 の不純物を濃縮操作前にイオン交換樹脂(強酸性カチオ ン交換樹脂)によって除去する。 ②めっき槽内で発生する金属イオンについては,めっき槽 内または濃縮液の処理が必要である。これまで,主に隔 膜電解法が行われているが1),管理面で手間が掛かるな どの課題がある。 ③塩素イオンの増加原因としては,用水に含まれる塩素が 同時に濃縮回収されることが多い。このため,水洗水に は純水を使用することが望ましい。 2.2.3 亜鉛めっき工程における資源循環システム 各種の亜鉛めっきなどの常温めっきはめっき槽の蒸発減量 がほとんどなく,高温にすると光沢剤が分解するなどの弊害 が生じるため,これまで蒸発濃縮の実績は無かった。しかし, 亜鉛の排水規制が強化され,工程内回収による循環システム 化技術が望まれてきた。本法は,当社で開発した閉鎖型大気 B ニッケルめっき槽 回収槽 水洗槽 水洗槽 水洗槽 SB ニッケル 光沢剤(サッカリン) 除去(活性炭法) 蒸発濃縮装置 ① 大気型蒸発装置 開放型,閉鎖型) ② 減圧型蒸発装置 Ti/酸化イリジウム ニッケル金属濃度が上昇 不溶性陽極(10%程度) 蒸発濃縮装置 光沢剤吸着装置 再生溶離廃液 床面清掃廃液 ろ過機洗浄廃液 ニッケル固形化処理 処理水は排水処理へ イオン交換またはRO 図 2 ニッケルめっき工程の循環システム 図 3 半光沢ニッケルめっき槽に設置した不溶性陽極 脱塩水または脱Cl-水補給 六価クロムめっき浴 回収槽 水洗槽 水洗槽 水洗槽 隔膜電解装置 不純物(Fe,Ni,Cuなど)除去法 ① カチオン交換樹脂法・・・浴槽に微量の硫酸持ち込み ② 電解隔膜法・・・隔膜(セル)の材質 蒸発濃縮装置 ① 大気型蒸発装置(閉鎖型) ② 減圧型蒸発装置 イオン交換装置 蒸発濃縮装置 イオン交換装置(または RO) (工程別または系統別で循環) A 塔 C 塔 再生溶離廃液 床面清掃廃液 スクラバー廃液 金属分離廃液 クロム還元処理/中和処理 クロムスラッジ排出 他系統排水と合流 図 4 クロムめっき工程の循環システム 再生溶離廃液 濾過機洗浄廃水など 亜鉛固形化処理 処理水は排水処理へ 常温・常圧・閉鎖型 蒸発装置 (凝縮水) 亜鉛めっき槽 回収槽 水洗槽 水洗槽 水洗槽 再生溶離廃液 濾過機洗浄廃水など 濾過機洗浄廃水など 亜鉛固形化処理 亜鉛固形化処理 処理水は排水処理へ処理水は排水処理へ 常温・常圧・閉鎖型 蒸発装置 (凝縮水) 亜鉛めっき槽 亜鉛めっき槽 亜鉛めっき槽 回収槽回収槽 水洗槽水洗槽 水洗槽水洗槽 水洗槽水洗槽 イオン交換またはRO 再資源化 図 5 亜鉛めっき工程の循環システム
トピックス 蒸発装置2)を用いて濃縮回収する方法であり,温度による成 分の分解がなく,閉鎖構造であるため,アルカリ浴でも空気 中の炭酸ガスを吸収して炭酸ナトリウムが増加することもな い(図 5)。 2.2.4 その他の表面処理工程での事例 電気めっき,アルミニウム陽極酸化,プリント配線基板製 造などの表面処理では,酸洗浄,ピックリング,エッチング, 研磨などの工程で高濃度の硫酸,硝酸,塩酸,ふっ酸などを 使用している。これらの酸は金属濃度の上昇による処理能力 の低下とともに更新され,廃酸として処分されているが,廃 酸には 60~70% の有効酸が残っている。特殊なイオン交換 樹脂を利用して,廃酸から金属塩を吸着分離し,有効酸を回 収することができる。図 6 に実施例を示す。 2.3 環境無負荷型亜鉛めっきシステムへの適用 平成 18~20 年度戦略的基盤技術高度化支援事業「次世代 防錆めっきシステムの開発」において,サブテーマとして実 施した「環境無負荷型めっきシステムの開発」の概要を紹介 する。 プロトタイプめっきライン(図 7)を構築し,ジンケート亜鉛 めっき液を用いて長期連続運転を実施した。汲出し量削減,水 洗水量削減,不純物蓄積回避,水バランス確立に係る各要素技 術は有効に作動し,新たに建浴したジンケート亜鉛めっき浴で めっきした皮膜と,当該プロトタイプめっきラインで連続運転 したジンケート亜鉛めっき浴でめっきした皮膜の特性は, 耐食性,三価クロメート処理後の塩水噴霧試験,折り曲げ 試験いずれにおいても同等の性能であることが確認された。 2.3.1 循環システムの各要素技術および適用装置 本システムに採用した装置を工程順に示し,それらの機能 及び目的を述べる。 (1)脱脂浴精製 / 油分分離装置 傾斜板式浮上油分分離装置で,脱脂槽で発生する浮上油分 を除去する。 (2)脱脂浴水洗水量削減 / イオン交換装置 水洗水量削減のため水洗槽において可搬式ボンベ型イオン 交換機を用いて水洗水を循環再利用するとともに,めっき品 質に影響を与えない水洗水質を維持する。 (3)酸洗浴(硫酸)精製 / 晶析装置 めっき前酸洗液(硫酸)を冷却することにより,溶解度差を 利用し硫酸第一鉄の結晶として除去する。 (4)酸洗浴(硫酸)蒸発濃縮 / 高温閉鎖型大気濃縮装置 めっき液汲み出し量を基にして,水洗水量を設定し,蒸発 濃縮量を調整することにより蒸発水量(凝縮水量)との水バラ ンスを設定する。本プロセスでは閉鎖型大気濃縮装置を採用 し,被濃縮液を 50~55 ℃に加温した。 (5)めっき浴(ジンケート亜鉛)蒸発濃縮 / 低温閉鎖型大気 濃縮装置 めっき液汲み出し量を基にして,水洗水量を設定し,蒸発 濃縮量を調整することにより蒸発水量(凝縮水量)との水バラ ンスを設定すし,亜鉛濃度も管理する。常温タイプのめっき 浴のため,被濃縮液を高温に加温できない。そのため,被濃 縮液を冷却することでめっき液を除湿濃縮させる閉鎖型大気 濃縮装置を採用した。また閉鎖型であるため,めっき液成分 の大気への放出,大気接触による炭酸ソーダの生成が防止で きる。 (6)めっき槽上スプレー洗浄 / 可動式囲い装置 ラック上昇時にめっき槽上で回収液をスプレーし,汲み出 し量を削減する。 (7)水洗水量削減 / 単槽多段洗浄装置3) 省スペース,省エネルギー型水洗技術であり,単槽で多段 の水洗を行うため水洗槽数を減らすことができ,水洗水量の 削減が可能になる。単槽でスプレー洗浄を多段(4 段)で行う。 格段の水洗の際に所定の濃度に達した水洗水を回収し,次回 の水洗時にそれぞれ上段の水洗水として用いる。 単槽多段洗浄方式は,向流水洗方式と同等の水洗機能を 持っており,水洗水量を削減することができ,さらに,初段 の高濃度水洗水は,蒸発濃縮操作によって一定濃度まで濃縮 しめっき槽へ回収再利用される。 (8)水洗水量削減 / イオン交換装置 水洗水量削減のため水洗槽において可搬式ボンベ型イオン 交換機を用いて水洗水を循環再利用するとともに,めっき品 質に影響を与えない水洗水質を維持する。 (9)めっき浴精製 / 炭酸ソーダ除去装置 ジンケート亜鉛めっき浴で増加しめっき作業に悪影響を及 ぼす炭酸ソーダを晶析装置で除去する。 (10)硝酸活性浴蒸発濃縮 / 減圧濃縮装置 高温(60 ℃以上)に加温しても分解等の浴変質がないので 図 6 廃酸の精製回収システム(リサイター) 脱脂 水洗 酸 洗 水 洗 亜鉛 めっ き 回収 油分分離 晶析 硝 酸 活 性 水 洗 化成 処理 水洗 低温濃縮 酸回収 減圧濃縮 水回収 水 洗 単槽多段水洗 図 7 プロトタイプめっきライン(一部抜粋)
めっきプロセスにおける薬品の回収および再資源化システム 蒸発効率の高い減圧型の濃縮器を採用し,水バランスを確立 する。 (11)硝酸活性浴精製 / 有効酸回収装置(リサイターⓇ)4) アシッド・リタデーション(Acid Retardation)を利用した有 効酸回収装置(リサイターⓇ)を適用し,亜鉛が溶解した硝酸 溶液を特殊なイオン交換樹脂で金属塩と遊離酸に分離して金 属塩を除去するとともに遊離酸を回収循環利用する。 (12)化成処理浴精製 / カビ防止・殺菌対策装置 クロムフリー後処理として,植物由来ポリフェノール化成 皮膜が検討され,処理浴の精製管理が必要となった。水洗水 槽のカビ防止方法として活性炭によるタンニン酸高分子成分 の吸着除去,殺菌方法として光触媒紫外線殺菌器による殺菌, 死骸の分解,有機物質の酸化分解を行い,金属イオンの除去 にはイオン交換機を適用した。 2.3.2 長期運転と評価 プロトタイプめっきラインを長期運転し,新建浴時のめっ き皮膜と物性に差がないかを確認した。試験品は円筒形部品 (1.2 dm2 / 個)で,延べ 93 日間,総処理ラック数 2,400 ラック, 処 理 面 積 は 142,000 dm2ま で 稼 動 さ せ た。 加 工 負 荷 量 は 240 dm2/L である。その結果,長期連続運転による皮膜のつ きまわり性,曲げ物性,耐食性の劣化はなかった。 環境無負荷型めっきシステムの実用化に際して最大の課題 はその経済性である。今回実施した研究運転では,脱脂浴, 酸洗浴,亜鉛めっき浴ともに安価であるため,回収によるコ ストメリットが出ない。しかし,循環システムを完成させる ためには汲出し液を完全に回収する必要があり,処理液の減 容化(水の蒸発)は不可欠である。 脱脂,酸洗ともに槽上スプレー,単槽多段水洗を採用して 水洗水量を削減し,少ない蒸発水量で稼働できれば蒸発濃縮 に係るエネルギーコストを上下水道代とその排水処理費用で 賄うことが可能になると結論付けた。
3 .資源化センターシステムによる水と金属資源の回収
本システムは,昭和 46(1971)年度・通商産業省(現経済産 業省)重要技術研究課題の研究成果を踏まえて当社が工業化 を実践した金属リサイクリングシステムである(図 8)。 3.1 システムの理念 中・小規模の事業所を対象にして,可搬式ボンベ型イオン 交換機を利用しためっき水洗工程における洗浄水の精製,循 環利用と飽和したイオン交換樹脂塔の集中再生処理(資源リ サイクルセンター)および再生溶離液から回収する単体金属 の不溶化と再資源化を目標としている。 めっき工場の水洗工程から排出される希薄な洗浄排水に含 まれる金属を可搬式ボンベ型イオン交換機(図 9)で吸着し, 処理水は水洗水として循環利用する。金属吸着が飽和状態に 達したイオン交換樹脂は容器ごと当社で引き取り,当社の「資 源リサイクルセンター」に運搬して分別再生される5)。再生 は吸着した金属種ごとに分別して行い,発生する濃厚再生溶 離液は単一金属スラッジ化し製錬所に返送され,再資源化さ れる。 資源リサイクルセンターは,昭和 51 年(1976 年)に当社の 工場内に設立してから,全国の顧客を対象に年間 6,000 本以 上のボンベ型イオン交換塔の引き取り再生を行っており, 2014 年 3 月末までに累計 20 万本を超える再生実績がある。 30 年以上にわたる廃棄物削減と資源循環に貢献した実績が 認められ,2007 年に愛知環境賞・銀賞,2012 年に資源循環 技術・システム表彰・財団法人産業環境管理協会協会長賞, 2013 年に資源循環型ものづくりシンポジウム・最優秀賞を 受賞した。さらに,2010 年には愛知県より「あいちエコタ ウン施設」に認定されている。 3.2 システムの経済性と環境負荷削減効果 【リデュース】従来行われている洗浄排水の「無害化放流」 方式を,イオン交換機により洗浄排水を精製し,水洗水とし て循環使用することにより,水の使用量を削減する。さらに 2 章で紹介した循環システムを採用して汲み出されためっき 液を濃縮回収すれば,イオン交換樹脂への負荷が削減され, 再生周期は長くなる。 【リユース】飽和したイオン交換樹脂塔は集中再生施設(資 源リサイクルセンター)に搬送・再生し,再生した樹脂塔を 使用工程に返却する。 【リサイクル】イオン交換樹脂塔は金属毎に個別再生し, 発生する金属溶液は,単一金属スラッジ(銅,ニッケル),あ るいは電析(銅,ニッケル),精製濃縮(クロム)し,製錬山元 などに返却,資源材として再利用する。排水処理の負荷が低 減されれば,環境保全効果が上昇し,従来埋め立て処分して 資源リサイクルセンター ユーザー 飽和イオン交換樹脂塔 再生済イオン交換樹脂塔 鉱山 製錬所 還元 金属再利用 重金属資源 図 8 資源リサイクルセンターシステム 図 9 可搬式ボンベ型イオン交換機トピックス いた混合金属スラッジの減量により運搬や処分作業で排出し ていた CO2も削減される。 3.3 再資源材(銅,ニッケル)の付加価値向上策 めっき工程の水洗水を対象にボンベ型イオン交換塔を工程 別に設置し,水洗水の循環を行い,飽和したイオン交換塔は 「資源リサイクルセンター」で金属ごとの分別再生を行なっ ている。イオン交換塔より排出される再生溶離液中のニッケ ル,銅はそれぞれスラッジ化し,山元還元される。しかしな がら,この方式では経済的な回収メリットが小さい。 そこで,付加価値を高めるためにイオン交換樹脂の再生溶 離液,めっき濃厚廃液を対象にロール回転型電析装置を開発 した。図 10 に示したロール回転型電析装置の電流効率は, 対象液の種類,濃度,不純物によって異なるものの,ニッケ ルで 40~90%,銅で 70~95% 程度である。図 11 に本装置を 用いて回収した銅およびニッケル金属片を示す6)。回収金属 は 98% 以上の純度のものが得られており,高い付加価値を 有する。 ニッケルの電解回収では,電解液の純度が析出電流効率に 大きく影響するため銅,鉄,亜鉛,錫,クロム等の混入を極 力避ける必要がある。場合によっては溶媒抽出法7)や選択硫 化法8)∼10)を利用した不純物除去操作を組み合わせたシステ ムも有効である。 また,めっき工程から排出される回収槽液,比較的濃度の 高い水洗排水を濃縮(蒸発濃縮,RO 濃縮など)することによ り,電解液の金属濃度を上げることで安定した高い電流効率 を得ることができる。 水酸化物状のニッケルスラッジの売却価額に比べ,金属ス クラップの売価は金属換算で 10 倍程度になり,この間に要 する経費を差し引いても付加価値の向上が認められた。