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(1)

じめに

 2014年半ばから原油価格が大きく下落した。ベネズエラ、エクアドル、コロンビア等南米で生産さ れる原油は重質油が多い。また、ブラジルでは、超大水深のプレソルトで油田開発が進められている。 膨大な埋蔵量があるアルゼンチンのシェール開発は端緒が開けたばかりである。原油価格が100ドル/ bblを超える状態であれば問題はないのかもしれないが、油価が大幅に下落してしまった状況下で、こ れらの探鉱・開発を続けることは可能なのだろうか。  油価下落前から探鉱・開発が停滞していたベネズエラ。油価下落以上にPetrobrasの汚職問題が探鉱・ 開発の進展に影響を与える恐れのあるブラジル。埋蔵量のポテンシャルが小さいため生産減退の可能性 が出てきたコロンビア。油価下落にもかかわらず粛々と探鉱・開発が続くアルゼンチン。油価下落によ り、これらの国の状況は悪化しているのだろうか。逆に、油価下落が状況を好転させるきっかけになっ てはいないのだろうか。  本稿では、南米の石油生産量の88%、ガス生産量の55%を占めるベネズエラ、ブラジル、コロンビア、 アルゼンチンの4カ国を取り上げ、各国の概況、主要なプロジェクトの状況、油価下落の影響、それに 対処するためにどのような政策が採られているのかについて、分析した。

南米の石油・ガス探鉱・開発状況

-原油価格下落下で探鉱・開発は進んでいるのか?-

中南米国別石油生産量内訳(2014 年) 図1 中南米国別天然ガス生産量内訳(2014 年) 図2

出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014

アルゼンチン 8% ブラジル 31% コロンビア 13% エクアドル 7% ペルー 1% トリニダード・トバゴ 2% ベネズエラ 36% その他中南米 2% アルゼンチン 20% ボリビア 12% ブラジル 12% コロンビア 7% ペルー 7% トリニダード・トバゴ 24% ベネズエラ 16% その他中南米 2%

(2)

1.

ベネズエラ

(1)概況

 ベネズエラでは、Chávez 前大統領政権下で資源ナショ ナリズム政策が採られてきた。2001 年には新炭化水素 法が制定され、全ての石油プロジェクトの過半を国営石 油会社 PDVSA(Petroleos de Venezuela S.A.)が所有 し、ロイヤルティが 33.33%に引き上げられることになっ た。2005 ~ 2006 年には法人税率が引き上げられ、2008 年には Windfall Tax が導入された。PDVSA 上層部は 刷新され、同社職員の大量解雇やエネルギー石油相が PDVSA 総裁を兼務することで同社への政府関与が強化 された。対外的には、経済合理性を度外視し、中国、ロ シア、中南米諸国などに石油を割安価格で提供、これら の国の国営石油会社を中心に探鉱 ・ 開発を推進すること が計画された。2013 年 4 月に実施された Chávez 氏死 去に伴う大統領選挙で当選を果たした Maduro 氏は、こ の Chávez 氏の政策を引き継いだ。  その結果、Chávez 前政権下で停滞したベネズエラの 探鉱・開発は、Maduro 政権下でも停滞を続けている。 BP 統計によると、石油生産量は 1998 年の 348 万 b/d から、2002 年末からの反 Chávez 派のゼネストにより 2003 年には 287 万 b/d まで減少、2006 年に 334 万 b/d まで回復したが、その後再度減少し、2014 年は 271 万 9,000b/d となっている* 1。天然ガス生産量も 2007 年に 361 億㎥と過去最高を記録した後減少し、2010 年以降は 横ばいの状況で、2014 年は 286 億㎥となった。石油確 認埋蔵量は、2008 年以降オリノコベルトの超重質油が 算入されたことで急増し、サウジアラビアを凌しのいで世界 第 1 位となったが、2010 年以降は、天然ガス確認埋蔵 量とともに、横ばいを続けている。2014 年末の確認埋 蔵量は石油が 2,983 億 bbl、天然ガスが 5.6 兆㎥であった。  Maduro 大 統 領 は 石 油 政 策 と 同 様 に、 生 産 目 標 も Chávez 氏から引き継ぎ、2019 年までに石油生産量を 600 万 b/d に引き上げる計画である。この生産増の中心 となるのがオリノコベルトの超重質油プロジェクトとさ ベネズエラ天然ガス確認埋蔵量 図5 図6 ベネズエラ天然ガス生産量・消費量 ベネズエラ石油確認埋蔵量 図3 図4 ベネズエラ石油生産量・消費量

出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成 出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成 出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成 出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成

0 50 100 150 200 250 300 350十億bbl 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000千b/d 1965 1967 1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 石油生産量 石油消費量 0 1 2 3 4 5 6兆㎥ 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 0 5 10 15 20 25 30 35 40 十億㎥ 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 天然ガス生産量 天然ガス消費量

(3)

れ、政府は 2014 年 3 月に、オリノコベルトの超重質油 新規プロジェクトの生産量を 6 年間で 200 万 b/d 増加 させる計画を発表している。  ベネズエラの石油輸出量は、石油生産量の減少と消費 量の増加により減少傾向にある。2014 年の輸出量は 235 万 7,000b/d(原油 189 万 7,000b/d、石油製品 46 万 b/d)で、 2013 年の 242 万 5,000 万 b/d より減少した。石油輸出 は、輸送距離が短いことや米国メキシコ湾岸に重質油を 処理可能な製油所が操業していること等から、従来、米 国向けが多くを占めていた。しかし、Chávez 前大統領 が、対米輸出依存度を低下させようと、中国等への輸出 拡大を目指したこともあり、米国向け輸出量が減少、中 国、インド向けが増加する傾向にある。ただ、2014 年 は米国向け、中国向けともに減少した。 (2)主要プロジェクトの状況 ①オリノコベルト超重質油プロジェクト  オリノコベルトはベネズエラ東部に帯状に広がる超重 質油の賦存エリアで、総面積は 6 万 3,000㎢に及ぶ。原 始埋蔵量が 1 兆 2,000 億 bbl、そのうち将来的に開発可 能なものが 2,600 億~ 2,700 億 bbl とされている。この うち、これまでに生産されたのは 143 億 7,000 万 bbl と なっている。  オリノコベルトでは、1980 年代から生産が開始さ れ、1990 年代後半以降は、超重質油を開発・生産・軽 質化(改質)する戦略的提携プロジェクト 4 件 Sincor、 Petrozuata、Hamaca、Cerro Negro が 立 ち 上 げ ら れ、 生産量は増加した。2007 年には、Chávez 前政権によ り PDVSA とのジョイントベンチャープロジェクト化 が進められたが、これを嫌って、ExxonMobil が Cerro 地域別石油輸出量 表1 2 0 1 3 年 2 0 1 4 年 原油 石油製品 合計 原油 石油製品 合計 北米 7 7 3 7 2 8 4 5 7 6 1 7 6 837 うち米国 7 6 8 7 0 8 3 8 7 6 1 7 5 836 中南米 4 9 7 1 1 5 6 1 2 4 6 0 1 1 1 571 欧州 8 7 2 0 1 0 7 1 0 9 2 2 131 アジア 7 2 6 2 8 9 1,0 1 5 6 9 4 2 6 0 954 うち中国 2 9 3 7 7 3 6 9 2 4 4 7 9 323 うちインド 4 0 3 0 4 0 3 4 1 5 0 415 その他 0 2 2 2 2 0 17 1 7

出所:PDVSA Informe de Gestión Anual 2014 より作成

千 b/d

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014 年

千b/d

原油

石油製品

ベネズエラの石油・石油製品輸出量 図7

(4)

Negro、ConocoPhillips が Hamaca と Petrozuata から撤 退した。しかし、その後も生産は以前と変わらず続けら れている。  一方で、同政権は、2005 年より Magna Reserva プロ ジェクトを開始、オリノコベルトを 4 地域、28 鉱区に 分割し、中南米や中国、ロシア、インド、ベトナム等の 国営石油会社にこれらの鉱区の埋蔵量評価を実施させる こととした。しかし、これらの新規プロジェクトのうち early production に移行したのは Junin-2 鉱区、Junin-5 鉱区、Junin-6 鉱区、Carabobo プロジェクト 1 等、一部 のみである。しかも、これらのプロジェクトにも遅延や、 生産量の伸び悩みが見られる。  ベネズエラの公式発表では、2014 年のオリノコベル トの生産量は 2013 年の 123 万 b/d から 125 万 b/d に微 増した。2015 年に入っても、オリノコベルトの生産量 は増加しており、現在 130 万 b/d 強が生産されている ようである。オリノコベルトの生産量は、ベネズエラの 石油生産量の約半分を占めていることになる。オリノコ ベルトで生産される超重質油の多くが、旧戦略的提携 4 プロジェクトと Petrolera Sinovensa の合計 5 プロジェ クトで生産されている。  政府、PDVSA は、新規プロジェクトの生産増に期待 を寄せている。政府は、2019 年までにオリノコベルト の生産量を 400 万 b/d(うち新規プロジェクトの生産量 を 200 万 b/d)まで引き上げる計画で、改質装置、パイ プライン、製油所、ターミナルの建設を含め、1,440 億 ドル(2019 年までにこのうち約 1,050 億~ 1,080 億ドル) が投じられるという* 2。PDVSA も、2015 年の投資額 220 億~ 230 億ドルのうちオリノコベルトには 150 億ド ルを投じるとしている* 3。しかし、生産増を実現するた めには、解決すべき課題がある。  とりわけ、最大の課題が資金調達である。PDVSA は、 パートナー企業や中国からの融資に頼らざるを得ない状 況だが、油価下落で多くの外資企業は投資増に積極的で なく、ベネズエラにとっては中国の重要性が増している。 後述するとおり、2015 年に入ってからも、1 月に中国か ら 200 億ドル超の投資を受け入れることで合意したとさ れ、4 月には開発プロジェクト向けの 50 億ドルの融資 1 2 3 4 4 5 5 6 7 7 8 8 5 6 1 2 2 7 1 3 11 12 13 6 2 1 2 3 4 4 5 5 6 7 7 8 8 5 6 1 2 2 7 1 3 11 12 13 6 2 22 3388 3 3 10 10 9 1 1 4 4 ANCAP ANCAP ENARSA ENARSA ENAP ENAP Repsol ONGC Indian Oil Oil India Repsol ONGC Indian Oil

Oil India RosneftRosneft

Chevron 日本カラボボ石油 Suelpetrol Chevron 日本カラボボ石油 Suelpetrol CNPC CNPC CNPCCNPC Reliance Reliance Galp Galp CNOOC CNOOC ロシアコンソーシアム ロシアコンソーシアム 日本コンソーシアム 日本コンソーシアム Petrovietnam Petrovietnam PetroSA PetroSA Belarusneft Belarusneft Petronas Petronas Boyacá Norte Boyacá Norte Cupet Cupet Yucal Placer Margarita Lukoil Lukoil EniEni

Petropars Petropars Petroecuador Petroecuador ベネズエラ コロンビア ブラジル ガイアナ トリニダード ・ トバゴ 大西洋 Boyacá Junin Ayacucho Carabobo Repsol Repsol Petromonagas Petrocedeño Petroanzoátegui Petropiar オリノコ ベルト ONGC ONGC Rosneft Rosneft Petrolerasinovensa オリノコベルト主要鉱区図 図8 出所:各種資料より作成

(5)

を受けることが明らかになった。  技術力のある従業員が不足していることも問題となっ て い る。Chávez 前 政 権 下 で は、2002 ~ 2003 年 の ス トライキに参加したことを理由に PDVSA 従業員の約 40%にあたる 1 万 8,000 人が解雇された。その後、同社 は従業員数を 2003 年の 2 万 9,000 人から 2014 年末には 15 万人超まで増やしたが、新たに雇用した従業員に技 術力をつけることには失敗し、その技術力レベルは全体 として低下しているとされる。その上、給与が低く抑え られ、治安が悪いこともあって、技術力のある従業員が ベネズエラから流出することも非常に多いという。これ も技術力不足からなのか、原油流出や製油所等での爆発 等事故も頻発している* 4  また、オリノコベルトは遠隔の地にあるために、資機 材の確保が難しく、港湾やパイプライン等インフラスト ラクチャーの整備が必須となる。さらに、坑井の生産性 が低く、成熟油田の減退率が高いという問題も抱えてい る。PDVSA は掘削技術の向上により生産性の向上を図 る等対処しているという。  上記のように多くの課題を抱え、生産の遅延や伸び悩 みが見られることから、2013 年以降は Surgutneftegaz、 TNK-BP、Lukoil、Petronas がプロジェクトからの撤退 を表明している。Junin 2 鉱区で活動中の Petrovietnam も、ベネズエラのインフレ率の高さや通貨管理システム の不備を理由に、保有権益 40%の売却を検討している と伝えられる。

 PDVSA の Eulogio Del Pino 総裁は、2015 年、2016 年 にオリノコベルトの生産量は 10 万 b/d ずつ増加する見 通し、としている。この増産ペースでは、2019 年までに オリノコベルトの生産量を 400 万 b/d まで引き上げると いう政府の計画達成は難しいと考えられる。政府内にも そうした考えがあるのかもしれない。  なお、オリノコベルトに関しては、生産増に向けて、処 理能力 20 万 b/d のアップグレーダーの FEED(Front End Engineering Design)が PetroUrica、PetroMiranda、 PetroCarabobo の各プロジェクトで進みつつあるとの情 報がある* 5一方で、軽質原油を輸入し、これとオリノ コベルトで生産される超重質油をブレンドした原油の輸 出量を増加させようとしている* 6ともされる。これは、 新たなアップグレーダーの建設の遅れ、国内の軽質、中 質原油の生産量減少、希釈剤として使用してきたナフサ の値上がりから、PDVSA が軽質原油を輸入し、超重質 油とブレンドして輸出することを計画しているというも のだ。 オリノコベルト主要鉱区の開発・生産状況 表2 プロジェクト 旧名称 鉱区名プロジェクト名 パートナー※注 開発・生産状況等

Petrocedeño Sincor Total 3 0.3 %Statoil 9.7 % 2 0 0 0 年 1 2 月、超重質油生産開始。2 0 0 2 年 3 月、合成原油生産開始。2 0 0 7 年、PDVSA の権益比率を 3 8 %から引き上げ、Total、Statoil の権益比率を 4 7 %、 1 5 %から引き下げ。超重質油生産能力 2 0 万 b/d。合成原油生産能力 1 8 万 b/d。

Petroanzoátegui Petrozuata ― 1998年8月、超重質油生産開始。2001年4月、合成原油生産開始。2007年、ConocoPhillips撤退。超重質油生産能力12万b/d。合成原油生産量10万7,000b/d。

Petropiar Hamaca Chevron 3 0 % 2 0 0 1 年 1 1 月、超重質油生産開始。2 0 0 4 年 1 0 月、合成原油生産開始。2 0 0 7 年、ConocoPhillips 撤退。超重質油生産能力 1 9 万 b/d。合成原油生産量 1 9 万 b/d。

Petromonagas Cerro Negro Rosneft 1 6.6 6 %

1 9 9 9 年 1 0 月、超重質油生産開始。2 0 0 1 年 8 月、合成原油生産開始。2 0 0 7 年、 ExxonMobil撤退。2011年、TNK-BPがBPのベネズエラ上流資産を取得。2013年、 Rosneft が TNK-BP のベネズエラ資産を取得。2 0 1 5 年末までに改質装置の能力を 拡張する計画。超重質油生産能力 1 8 万 b/d。合成原油生産量 1 3 万 b/d。

Petrolera Sinovensa Bitor CNPC3 5.7 5 % 2 0 1 7 年までに生産量を 3 3 万 b/d に倍増させる計画。

PetroMacareo Junin-2 Petrovietnam4 0 % 2 0 1 2 年 9 月、early production 開始。2 0 1 6 年までに生産量を 5 万 b/d とする計画。

PetroUrica Junin-4 CNPC4 0 % early production 中。

PetroJunin Junin-5 Eni4 0 % 2 0 1 3 年 3 月、early production 開始。プラトー生産(7万5,000b/d)を 2 0 1 5 年に先送り。

Petromiranda Junin-6 RNOC(ロシアコンソーシアム)4 0 % 2 0 1 2 年 9 月、early production 開始。生産量は early production の目標 5 万 b/d に対し、2 0 1 3 年中ごろに 3,0 0 0b/d、2 0 1 5 年 5 月に 7,3 3 0b/d。2 0 1 3 年に Surgutneftegaz と TNK-BP、2 0 1 4 年 1 0 月に Lukoil が撤退を表明。 PetroCarabobo Caraboboプロジェクト 1 Repsol1 1 % ONGC1 1 % Oil India3.5 % Indian Oil3.5 %

2 0 1 2 年末、early production 開始。2 0 1 3 年 9 月、Petronas が撤退を表明。

PetroIndependencia Caraboboプロジェクト 3 Chevron 3 4 %日本カラボボ石油 5 %

Suelopetrol 1 % 開発計画策定に向け調整中。 ※注:残りの権益は PDVSA が所有。

(6)

 PDVSA は 2014 年 10 月以降、割安なアルジェリアの 軽質原油サハラブレンド 200 万 bbl を輸入、その後 11 月からは、ロシアからウラル原油の輸入も開始した。し かし、2015 年 1 月に、同社は価格で合意できないこと から、アルジェリア軽質原油の輸入を取りやめると発表 した。また、3 月には、ベネズエラは超重質油と輸入原 油を混合した新ブレンド油の輸出を促進していたが、成 果は限定的だったとの報道があった。しかし、4 月末に は、Sonatrach と PDVSA が両国の原油のブレンドを米 国市場等に販売するためジョイントベンチャーを設立す ることで協議を続けると報じられた。ウラル原油の輸入 は継続されており、Lagomar 原油や Mesa 原油の不足 分を補う形で、Curacao 島 Isla 製油所(精製能力 33 万 5,000b/d)で利用されている。 ② Perla ガス田

 Eni と Repsol YPF(当時)は 2005 年に実施された Rafael Urdaneta ライセンスラウンドでベネズエラ湾 Cardón IV 鉱区の権益を取得、2009 年 9 月に Perla 井を 掘削(水深 60m、掘削長 3,147m)、出ガスに成功した。 2012 年 8 月には Perla ガス田の確認埋蔵量は 9.51Bcf で 商業生産が可能であるとの発表があった。同ガス田は当 初、2012 年末に生産量 80MM ~ 100MMcf/d で生産を 開始、2013 年末までに約 300MMcf/d とし、2019 年よ りプラトー生産 1.2Bcf/d を実施する計画とされていた。 しかし、同ガス田の生産開始は延期され、2015 年 4 月 にようやく PP1 プラットフォームを設置、7 月中旬に生 産が開始される計画で、生産量は 150 MMcf/d とされる。 なお、2012 年に PDVSA が同鉱区の権益の 35%を取得、 Eni と Repsol が権益の 32.5%ずつを保有している。 (3)油価下落の影響  ベネズエラの経済は、2014 年中頃に原油価格が下落 し始める以前から悪化していた。Maduro 大統領には Chávez 前大統領ほどのカリスマ性はなく、政治、経済 は混乱を来たし、2013 年の実質 GDP 成長率は 1.3%に ※注:残りの権益は PDVSA が所有。 出所:各種資料より作成 Moruy Ⅱ Urumaco Ⅱ Urumaco Ⅰ Cardón Ⅳ Perla Cardón Ⅲ

ベネズエラ

VENEZUELA CURACAO NETH. ANTILLES ガス田 製油所 ガスパイプライン 石油パイプライン ベネズエラ コロンビア ブラジル ガイアナ トリニダード ・トバゴ 大西洋 ベネズエラ湾主要鉱区図 図9 出所:各種資料より作成

(7)

低下、インフレ率は 56%となった。2014 年 1 月の外貨 準備高は約 210 億ドルまで減少し、その大半は金等の 流動性の低いものとなっている。牛乳やトイレットペー パーといった生活必需品が欠乏、治安が悪化し、2014 年前半には Maduro 大統領の辞任を求める反政府デモが 頻発していた。  そうしたなか、原油価格が下落を始めた。ベネズエラ は、GDP に占める石油・ガス産業の割合が 12%、財政 に占める石油・ガス収入の割合が 45%、輸出収入に占 める石油輸出の割合が 96%と、石油収入に大きく依存 した経済構造となっている。石油生産コストは 10 ~ 20 ドル /bbl と高くはないが、このように石油収入のみに 大きく依存した経済構造であるため、ドイツ銀行による と、財政を均衡させるために必要な油価は 117.50 ドル / bbl となっている。原油価格を回復させようと、同国は 2014 年 11 月 27 日の第 166 回 OPEC 総会に際して、減 産をするよう強く訴えたと伝えられる。しかし、OPEC は生産目標を現行の 3,000 万 b/d に据え置くことを決め、 その結果、油価はさらに下落、2014 年の GDP 成長率は -3%と落ち込み、インフレ率は 64%に達した。国債の 格付けも、原油価格の下落が財政に悪影響を与え、デフォ ルトのリスクが高まっているとして、相次いで引き下げ られた。低油価に加え社会状況も悪化し、政治的安定性 を維持するのが困難になってきているとの見方もある。 ベネズエラでは、探鉱・開発を進めるための資金調達が 極めて困難で、かつ国内の探鉱・開発に携わる企業は、 投資や事業計画などに関する決定を行うのが難しい状態 だという。こうしたことから、生産量を増加させるのは 容易ではないとの見方がなされている。 (4)探鉱・開発促進策  探鉱・開発投資を増やし、石油生産量を増加させ、経 済の立て直しを図るべきなのだが、ベネズエラではそれ に逆行する動きが見られた。  2014 年 11 月 20 日に開催された Petrocaribe の第 14 回石油相会議で、Rafael Ramírez 外相は、ベネズエラ 政府は従来どおり Petrocaribe との公約を守り、石油の 供給を継続すると言明した。Petrocaribe は Chávez 前 政権下の 2005 年に設立されたベネズエラからカリブ諸 国、中南米諸国に原油や石油製品を割安な価格で供給す る枠組みで、この Petrocaribe 等の協定に基づいて、ベ ネズエラから、中米やカリブ海諸国 17 カ国には 18 万 b/d 程度の石油が供給されている。  また、同月には Maduro 大統領が原油価格の下落を 受けて、公共支出を合理化、削減し、大統領等の政府 高官を含む公務員の給与削減を行うことで、2015 年予 算を削減するとしたが、貧困層対策のための社会プロ ジェクトには手を付けず、逆に増額するとした。政府は、 Chávez 時代から貧困層救済のための社会プロジェクト を実施しており、本来であれば、探鉱・開発に投じられ るべき資金が社会プロジェクトにつぎ込まれている。社 会プロジェクトへは年間約 100 億ドルが投じられている という。  10 月には国連の仲裁機関 ICSID(国際投資紛争解決 センター)がベネズエラ政府に 2007 年の資産接収の賠 償として、 ExxonMobil に 16 億ドルを支払うようにとの 仲裁判断を下したことと併せて、これまで以上に探鉱 ・ 開発に資金が回らず、石油生産量の伸びは期待できない との見方が強まった。  しかし、一方で、油価下落で、Maduro 政権は石油政 策再検討を迫られているとの見方もある。財務状況が厳 しい PDVSA は、外資誘導強化に向け方針転換を企図 していると見られ、西部の成熟油田では掘削等の操業や 資機材の購入、投資等に関しパートナーに対してこれま でよりも発言権を認めたという。生産量を増加させるた め、オリノコベルトにもこの動きが広がっているという のだ。PDVSA がほとんどの操業上の決定をパートナー に任せているので、ビジネスの環境は悪くなく、新たな 開発に投資をするほどのインセンティブはないが、長期 的に現在のプロジェクトから得られる報酬はよいとする 企業もある* 7。そのため、油価下落にもかかわらず生産 は安定しているとの見方もある。  また、2015 年 1 月には Maduro 大統領が、油価下落 に対処し、生産量を増加させ、より多くの資金を得るた めに、オリノコベルトの外資の権益比率引き上げを求め ることになるだろうと語った* 8  油価下落により逼ひっぱく迫する PDVSA の財務状況を改善し ようとする動きも出ている。  2014 年 7 月末に発表された PDVSA の子会社 Citgo Petroleum 売却計画は、9 月末に Maduro 大統領がいっ たんは否定したが、12 月に入札が実施され、Marathon Petroleum、Valero Energy、HollyFrontier、TPG Capital/Riverstone Holdings の少なくとも 4 社(グルー プ)が入札に参加、応札した。応札額は最高が 100 億ド ル超であった。  ベネズエラは、また、資金確保、原油価格回復のため の働きかけを行っている。  具体的には、2015 年 1 月、Maduro 大統領が、中国や OPEC 加盟国、 ロシアを訪問し、石油価格回復のための 減産を呼びかけ、財政的な支援を訴えた。ロシアからは

(8)

生産削減も、財政的な支援も引き出すことはできなかっ たが、中国からは経済・エネルギー・社会プロジェク ト向けに 200 億ドル超の投資を受け入れることで合意し たとベネズエラ側は発表している。投資の時期や原油供 給によって返済するか否か等詳細は明らかにされていな い。また、カタールの金融機関からは 2015、2016 年向 けの資金を集めつつあるとした。  4 月には、同大統領が中国から新たに 50 億ドルの融 資を受けたことを明らかにした。中国は、ベネズエラに 開発プロジェクト向けの融資をし、ベネズエラは石油と 燃料で対価を支払う。  為替制度についても見直しが行われた。  2015 年 1 月 5 日、ベネズエラ中央銀行が、PDVSA が キューバ等近隣諸国への石油輸出で受け取ったドルを、 SICAD II に基づく為替レートで売却することを認める と発表した。SICAD II は入札方式の外貨供給システム で、為替レートは 1 ドル =50 ボリバル程度で、公式レー トの 1 ドル =6.3 ボリバル等に比べ有利なレートである。 PDVSA はこれまで、大部分の取引について公式レート を用いていた。  ベネズエラ政府はその後、3 種類存在する為替制度の うち、公定レートの為替制度はそのまま存続させ、変動 相場制の SICAD I と II(1 ドル =12 ボリバル、50 ボリ バル前後)を統合した。さらに、毎日の需要によって外 貨の価値が変わる変動相場制の新為替制度 SIMADI(1 ドル =170 ボリバル前後)を導入した。  そして、2 月 24 日、PDVSA 幹部は同国の大規模プロ ジェクトに参加している外資系企業 12 社に、SIMADI の適用を許可したと述べた。ベネズエラ政府は、これに より、外貨を獲得するとともに、プロジェクトを進展さ せたいとの考えと見られる。  ベネズエラでは、このように、本来、探鉱・開発に回 るべき資金が貧困者対策等に使われたり、割引価格で原 油が販売されたりするなどで、探鉱・開発へ十分な投資 が行われず、その上、十分な経験を持たない国営石油会 社等に探鉱・開発を任せようとしたことから、石油生産 量が伸び悩むという状況に陥っている。さらに、油価 が下落したことで状況が悪化したことから、ここから抜 け出そうとする動きが若干ではあるが出てきているよう だ。外貨準備が減少し、国債や PDVSA 債の償還期限が 続く上に、低油価も加わり、デフォルト懸念が高まって いるが、2015 年 12 月に予定される国会議員選挙までは 持ちこたえるのではないか、石油輸出でドル収入がある ので債権者側もデフォルトされるよりはリスケジューリ ング(債務返済の繰り延べ)を受け入れるほうがよいと 考え、デフォルトにはならないだろうと見る専門家もあ り、今後の動向を注視していきたい。

2.

ブラジル

(1)概況  ブラジルでは、石油、天然ガスの自給達成を目指し、 国営石油会社 Petrobrasが中心となって主に Campos Basinで探鉱・開発が行われてきた。2000 年代に入り 石油生産量が順調に増加を続けるようになると、これま での重質油に加えて、軽質油と天然ガスの生産を増やし た い と、Petrobrasは Santos Basinや Espíritosanto Basinでも探鉱を進めるようになった。その結果、2006 年以降、Santos Basin等のプレソルト*9で巨大な油田が 相次いで発見されるようになった。  探鉱の成果から、ブラジルの確認埋蔵量は石油、天然 ガスともに増加傾向にある。2014 年末の確認埋蔵量は 石油が162億bbl、天然ガスが4,640億㎥である。  石油生産量も順調に増加していたが、BP統計による と、2010 年 以 降 は 2010 年 213 万 7,000b/d、2011 年 219 万 3,000b/d、2012 年 214 万 9,000b/d、2013 年 211万4,000b/dと210万b/d台で推移し、増加が見られ なくなった。これは、Campos Basinの既存油田の生 産量が著しく減退する一方で、Santos Basinプレソルト 等の新規油田の生産開始が遅れ、予定していたほどには 生産量が増加しなかったことによるとされる。  しかし、ANP(ブラジル国家石油庁)によると、プレ ソルトの油田の生産量が増加したことで、2014 年 6 月 以降、ブラジルの石油生産量は220万b/dを超えるよう になり、12 月には 249 万 7,000b/dと過去最高を記録、 2014年通年では225万b/dとなった。  また、ガス需要が低調に推移していたため、2000 年 以前に生産が行われていた非随伴ガス田は Merluzaと Pescada/Arabaianaの 2 ガス田のみであった。しかし、 1999 年にボリビアからパイプラインガスの輸入を開始

(9)

して以降、需要が急増し、Mexilhão、Manati等のガス 田開発やパイプライン網の整備が進められている。 2014年の天然ガス生産量は2013年の187億㎥から200 億㎥に 7 %増加した。ブラジルの 2014 年の天然ガス消 費量は 396 億㎥で、消費量の 28 %にあたる 112 億㎥を ボリビアからパイプラインで輸入、20 %にあたる 79 億 ㎥のLNGを輸入している。 (2)主要プロジェクトの状況 ~プレソルト~  Petrobrasは、2006年、Santos Basin、BM-S-11 鉱区 のプレソルトでTupi(Lula)油田を発見、2007年11月、 同油田の可採埋蔵量は石油と天然ガスを合わせて原油換 算 50 億~ 80 億 bblであると発表した。その後、Santos Basin、Campos Basinのプレソルトで相次いで油田が発 見され、開発が進められている。

 2015年3月時点でSantos Basinで3、Campos Basinで 6のプレソルトの油田が生産中だ。プレソルトの油田の 生産量は増加を続け、同月の石油生産量は67万2,867b/d、 天然ガスを合わせた生産量は83 万 3,001boe/dと月間で の過去最高を記録した。ブラジルの石油生産量に占める プレソルトの割合は、2011年3月3%、2012年3月6%、 2013年3月16%、2014年3月19%と増加し、2015年3 月には28%となった。5月11日には、プレソルトからの 生産量が初めて80 万 b/dを超えたとの発表が Petrobras からなされた。Petrobrasは2015年だけでプレソルトの 生産量が70%増加する見通しであるとしている。  プレソルトで大規模な油田が相次いで発見されたこと から、ブラジル政府はプレソルトの油田を開発するため の新たな法律の導入が必要であるとし、法制改革に乗り 出した。2009 年 8 月に法案が議会に送られ、2010 年に プレソルト開発に関する3件の法律が成立した。 ブラジル石油確認埋蔵量 図10 ブラジル石油生産量・消費量 図12 ブラジル天然ガス生産量・消費量 図14 ブラジル月別石油生産量 図13 ブラジル天然ガス確認埋蔵量 図11

出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成

出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成

出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成

出所:ANP ホームページを基に作成

出所:BP Stastical Review of World Energy June 2014 を基に作成

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18十億bbl 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000億㎥ 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500千b/d 石油生産量 石油消費量 1,600 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015月 千b/d 1,700 1,800 1,900 2,000 2,100 2,200 2,300 2,400 2,500 2,600 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 十億㎥ 天然ガス生産量 天然ガス消費量

(10)

 この法律に基づき、2010年9月にはPetrobrasが過去 最大規模の増資を実施(追加公開分を含めて約700億ド ル)、このうち約 425 億ドル分の株式は、ブラジル政府 が石油換算埋蔵量50億bbl相当のSantos Basinプレソル トの6鉱区(Transfer of Rights)の権益をPetrobrasに移 転し、それと引き換えに政府が取得した。  Petrobrasが探鉱を行ったとこ ろ、 こ の Transfer of Rightsの 6 鉱区には当初想定していた 50 億 bblよりも 5 倍程度多い可採埋蔵 量が賦存していることが判明し た。 そ こ で、2014 年 6 月 24 日、 国家エネルギー政策会議(CNPE: National Energy Policy Council) は Petrobrasに、プレソルトの 4 鉱 区 Florim、Buzios、Entorno de Iara、Nordeste de Tupiで 既 に契約を結んでいる累計50億bbl を上回る原油を生産する権利を、 入札によらずに付与することを決定した。Petrobrasは 2014年にサインボーナスとして20億レアル(9億ドル) を政府に支払い、また、利益原油の政府シェア分として 130 億レアル(58 億 5,000 万ドル)を生産に先立って、 2015年に20億レアル(9億ドル)、2016年30億レアル(13 億5,000万ドル)、2017年、2018年は各40億レアル(18

リオデジャネイロ

サンパウロ

ブラジル

100Km

3,000m 3,000m 2,000m 2,000m 1,000m 1,000m 500m 500m 岩塩分布エリア プレソルトエリア(Law12351/10) 1984年以前の発見油ガス田 1985∼2001年発見油ガス田 2002∼年発見油ガス田 プレソルトでの発見油ガス田 プレソルトで油田発見のあった主要鉱区 Transfer of Rights 【BM-C-33鉱区】 【BM-C-33鉱区】 【Xerelete鉱区】 【Xerelete鉱区】 【BM-C-43鉱区】 【BM-C-43鉱区】 【BM-C-41鉱区】 【BM-C-41鉱区】 【BM-C-42鉱区】 【BM-C-42鉱区】 BaleiaFranca BaleiaFranca Argonauta Argonauta Ostra Ostra Abalone Abalone Nautilus Nautilus Pirambu Pirambu Wahoo Wahoo Caxareu Caxareu Baleia Azul Baleia Azul Jubarte Jubarte Cachalote Cachalote Baleia Ana Baleia Ana BM-C-30 BM-C-30 BM-C-32 BM-C-32 Itaipu Itaipu 1 1 サントス盆地 サントス盆地 カン ポス 盆地 カン ポス 盆地 エス ピリ トサ ント 盆地 エス ピリ トサ ント 盆地

Corcovado

Corcovado

【S-M-623鉱区】

Sagitário

【S-M-623鉱区】

Sagitário

【Albacora Leste鉱区】 【Albacora Leste鉱区】 【Albacora鉱区】 【Albacora鉱区】 【Barracuda鉱区】 【Barracuda鉱区】 【BM-S-10鉱区】

Parati

Macnaima

【BM-S-10鉱区】

Parati

Macnaima

Lapa

Carioca

Lapa

Carioca

) 【Marlim Leste鉱区】 【Marlim Leste鉱区】 【BM-C-29鉱区】 【BM-C-29鉱区】 【BM-S-54鉱区】

Gato do Mato

【BM-S-54鉱区】

Gato do Mato

Cernambi

Cernambi

【BM-S-11鉱区】

Iara

【BM-S-11鉱区】

Iara

【BM-S-42鉱区】

Dolomita Sul

【BM-S-42鉱区】

Dolomita Sul

【Florim鉱区】

Itapu

【Florim鉱区】

Itapu

【Buzios(Franco)鉱区】 【Buzios(Franco)鉱区】

Libra

Libra

Papa Terra

Papa Terra

Roncador

Roncador

Baúna

Baúna

【BM-S-24鉱区】

Jupiter

【BM-S-24鉱区】

Jupiter

【Nordeste de Tupi油田鉱区】

Sepia

【Nordeste de Tupi油田鉱区】

Sepia

【Entorno de Iara鉱区】 【Entorno de Iara鉱区】 【BM-S-8鉱区】 【BM-S-8鉱区】 【BM-S-21鉱区】

Caramba

【BM-S-21鉱区】

Caramba

Biguá

Biguá

Abaré Oeste

Abaré Oeste

Abaré

Abaré

Bem-Te-Vi

Bem-Te-Vi

Carcará

Carcará

Iguaçu

Iguaçu

Iguaçu Mirim

Iguaçu Mirim

Lula/Tupi

Lula/Tupi

【Peroba鉱区】 【Peroba鉱区】 【Sul de Lula鉱区】 【Sul de Lula鉱区】 【BM-S-9鉱区】

Sapinhoá (Guara)

【BM-S-9鉱区】

Sapinhoá (Guara)

【Sul de Guara鉱区】

Sul de Sapinhoá

【Sul de Guara鉱区】

Sul de Sapinhoá

【Caratinga鉱区】 【Caratinga鉱区】 【Voador鉱区】 【Voador鉱区】 【Marlim鉱区】 【Marlim鉱区】 ブラジル主要鉱区図 図15 出所:各種資料より作成 プレソルトの月別生産量推移 図16 出所:ANP ホームページを基に作成 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 万 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 2011 2012 2013 2014 2015 月年 プレソルト原油生産量(b/d) プレソルト原油換算生産量(boe/d)

(11)

億ドル)と分割して支払う。さらに、税、ロイヤルティ としてコスト回収後に 76.5 %を政府に支払う。これに より、Petrobrasは石油換算 98 億~ 152 億 bblと推定さ れる追加生産が可能になった。  また、プレソルト開発法に基づき、2013年10月には、 プレソルト鉱区を対象とする最初のライセンスラウンド が実施された。対象とされた Santos Basinの Libra鉱区

は、推定可採埋蔵量が80億~ 120億bbl、ピーク時生産 量は 140 万 b/dが期待されるとされたにもかかわらず、 入 札 件 数 は 1 件 で、Petrobras、Total、Shell、CNPC、 CNOOCのコンソーシアムが落札した。政府引き取り利 益原油はANP が入札条件として提示した割合と同一の 41.65%で、サインボーナスは150億レアル(67億5,000 万ドル)、最低探鉱計画は約6億1,000万レアル(2億7,000 プレソルト主要油田の状況 表3 Basin 鉱区 油田 埋蔵量可採 (億boe) API比重 (度) 探鉱・開発状況 生産量 (上段b/d、下段boe/d、 2015年3月) 生産井数 (2015年3月) 権益保有比率(%) Santos Lula-Iracema (BM-S-11) Lula 65 28 2006年、Tupi(Lula)油田発見。2009年5月、テスト生産開始。 2010年10月、パイロット生産開始。 288,068 370,781 15 Petrobras*65 BG 25 Galp 10 Iracema 18 30 2012年、テスト生産実施。2014年10月、生産開始。 Sapinhoá (BM-S-9) Sapinhoá 21 28 ~ 30 2008年、Guará(Sapinhoá)油田発見。 2010年12月、テスト生産開始。 2013年1月、商業生産開始。 153,216 186,475 7 Petrobras*45 BG 30 Repsol Sinopec 25 Buzios (Franco) Buzios 30.58 26 ~ 28 2010年5月、Franco(Buzios)油田発見。 2013年、テスト生産開始。 2015年3月、商業生産開始。 9,450 11,526 1 Petrobras*100 Iara (BM-S-11) Atapu Berbigão Sururu 50 25 ~ 27 2008年、Iara油田発見。 2020年以降、生産開始予定。 ― ― Petrobras *65 BG 25 Galp 10 Entorno de Iara ― ― Petrobras*100 Lapa (BM-S-9) Lapa 4.59 26 2007年、Carioca(Lapa)油田発見。2016年下半期、生産開始予定。 ― ― Petrobras*45 BG 30 Repsol Sinopec 25 Libra Libra 80 ~ 120 27 2011年、Libra油田発見。 2013年10月、初のプレソルトライセンス ラウンドによりPS契約締結。 2020年、生産開始予定。 ― ― Petrobras*40 Shell 20 Total 20 CNOOC 10 CNPC 10 Campos

Jubarte Jubarte N.A. 30 2008年9月、ブラジル初のプレソルトでの生産開始。 86,85094,497 6 Petrobras*100 Baleia Azul Baleia Azul N.A. 30 2008年11月、プレソルトで油田発見。2012年、生産開始。 58,37471,077 4 Petrobras*100

Marlim Leste Marlim Leste N.A. 30 2011年2月、プレソルトの生産開始。 49,10856,111 6 Petrobras*100 Barracuda/

Caratinga Barracuda/Caratinga N.A. N.A. 2010年12月、プレソルトの生産開始。 26,77024,451 2 Petrobras*100 Baleia Franca Baleia Franca N.A. 30 2008年12月、プレソルトで油田発見。2010年7月、プレソルトの生産開始。 12,26314,958 2 Petrobras*100 Pampo/ Trilha/ Linguado/ Badejo Pampo/ Trilha/ Linguado/ Badejo

N.A. N.A. ― 538790 3 Petrobras*100

*:オペレーター 出所:各種資料より作成

プレソルト開発に関する法律 表4

Law 1 2 3 5 1/1 0 プレソルトの新規鉱区および National Energy Policy Council(CNPE)が戦略的地域と定めた地域については、契約形態を PS 契約とし、Petrobras が鉱区権益の最低 3 0 %を保有しオペレーター となる。入札では政府への配分比率を最も高く設定した企業が落札する。

Law 1 2 3 0 4/1 0 1 0 0 %国有の石油会社 Pré-Sal Petróleo S.A.(PPSA)を設立。PPSA は、ANP の監督下に置かれ、政府に代わって PS 契約の交渉、管理を行い、操業会議に出席し、石油会社の決定に拒否権等を 行使、プロジェクトの実施状況を評価、監視する。

Law 1 2 2 7 6/1 0 政府は Petrobras に Santos Basin プレソルトの鉱区権益(埋蔵量 5 0 億 bbl 相当分)を付与する。Petrobras はプレソルトの探鉱・開発に必要な資金を得るために新株を発行するが、この新株の 一部を鉱区権益付与の代わりに政府が取得し、政府の Petrobras 持ち株比率を引き上げる。 出所:各種資料より作成

(12)

万ドル)であった。  このように、プレソルトの開発は Petrobras を中心に進められおり、今後もその状況が続く 計画であったが、2014 年 3 月以降、同社をめ ぐる汚職問題が大きく取り上げられるように なった。  Petrobrasが米国Texas州のPasadena製油所 を高値で買収したとされる件に端を発したこの 汚職問題は、その後、沖合プラットフォームや 製油所建設時の贈収賄や国会議員に対する違法 な献金、資金洗浄(マネーロンダリング)等に問 題が拡大した。Petrobrasがニューヨークで米 国預託証券を上場していることから、ブラジル 国内のみならず、米国証券取引所や司法省も本 件の調査に着手している。  2015 年 2 月 4 日 に は、Petrobrasの Foster Petrobras 汚職問題をめぐる 2014 年の主な動向 表6 年月日 出来事

2 0 1 4 年 3 月 ・ 連邦警察が、Petrobras の Pasadena 製油所(米国テキサス州)買収問題や SBM Offshore(オランダの FPSO等沖合生産施設の販売、傭船〈ようせん〉企業)からの収賄疑惑について捜査を開始した。

9 ~ 1 0 月

・ Petrobras 元役員 Paulo Roberto Costa 氏(マネーロンダリングや Pernambuco 州 Abreu e Lima 製油所建設 事業での贈収賄に関与したとの容疑で逮捕、起訴)が、減刑と引き換えに利益を享受したとされる人物の情 報を提供した。そのなかには Edison Lobão 鉱山エネルギー相等 Rouseff 政権の閣僚やブラジル社会主義者 党(PSB)の大統領候補 Campos 氏が含まれていた。Costa 容疑者は、Petrobras が種々のサービスを提供す る企業と契約を結んだ際、契約額の約 3 %を賄賂(わいろ)として受け取り、それらの資金が自分自身と 2 0 1 0 年の統一選での労働者党(PT)、民主運動党(PMDB)、進歩党(PP)の資金源になっていたことも明ら かにした。さらに、自身が 2 0 0 4 年に当時下院議員だったジョゼ・ジャネネ氏(PP)の推薦で同社の供給部 長の職を得、就任時から各政党に不正な資金を提供する役割を担っていたことを認めた。

1 0 月 1 8 日 ・ Rouseff 大統領は、Petrobras 幹部が長年にわたり特定の業者に契約を受注させる見返りに賄賂を受け取っていたことを認め、Petrobras から違法に拠出された資金を取り戻すために全力を尽くすと述べた。

1 1 月 9 日 ・ 米国司法省も Petrobras の捜査を実施しているとの報道があった。 1 1 月 1 4 日 ・ 連邦警察が Petrobras と大手建設・土木工事会社など 3 社を家宅捜索、元同社サービス部部長のレナト・ドゥ ケ氏を含む 1 8 人を逮捕した。 ・ 同社の 2 0 1 4 年第 3 四半期決算が発表される予定であったが、汚職事件の捜査の進展によって内容が影響 を受ける可能性があるとし、決算発表の時期を 1 2 月 1 2 日まで延期する方針を明らかにした。 1 1 月 1 7 日 ・ Petrobras は、汚職対策のための理事会を設置すると発表した。

・ Petrobras 経営審議会は、Pasadena 製油所買収が高額となった責任は、Costa 容疑者や元国際部長のネス トル・セルヴェロー氏、元総裁 José Sergio Gabrielli 氏らにあるとし、同社が受けた損害の賠償を求め提訴 する方針を明らかにした。 1 1 月 1 9 日 ・ 連邦会計検査院(TCU)は、総額最大 4 0 億レアルの資金が不正に動いた可能性があるとの見方を示した。 ・ Morgan Stanleyは、Petrobrasの汚職疑惑による資金流失は最大210億レアルになる可能性を指摘した。(誤 差を考慮してリベートを契約金額の 1 ~ 5 %と設定して)リベート総額は最低 5 0 億レアル、最高 2 1 0 億レ アルに達すると予想した。 1 1 月 2 0 日 ・ ブラジル中央銀行は、Petrobras の汚職捜査に関連し、容疑者らの資産約 1,8 6 0 万ドル相当を凍結した。 1 2 月 1 日 ・ Petrobras の汚職は 1 5 年ほど前から始まったが、組織化されたのは 2 0 0 4 年でジャネネ氏によると地元紙が報道した。 1 2 月 9 日 ・ 米法律事務所ウルフ・ポッパーは、汚職疑惑について「著しく虚偽の陳述をした」として、Petrobras に対する集団訴訟をニューヨーク米連邦地方裁判所に提起した。2 0 1 0 年 5 月~ 2 0 1 4 年 1 1 月に米証券取引所で 同社の米国預託証券(ADR)を購入した「全員」の利益を代表して行動すると述べた。 1 2 月 1 1 日 ・ ブラジルの検察当局は、汚職疑惑をめぐり11月に逮捕されたPetrobras元幹部ら少なくとも12人を起訴した。 1 2 月 1 2 日 ・ Petrobras は 2 0 1 4 年第 3 四半期決算発表を再び延期した。なお、この日発表された同期の売上高は 8 8 3億 8,0 0 0 万レアルで、前年同期 7 7 7 億レアルから増加した。また、同社は「プロジェクトへの投資ペース を緩める」ことなど支出計画を削減する意向を示した。 出所:各種資料より作成 2010 年に政府が Petrobras に 50 億 bbl の 生産を認めた Santos Basin プレソルトの鉱区 表5 鉱区 政府より生産を認められた量 Florim 4 6 7 Buzios(Franco) 3,0 5 8 Entorno de Iara 6 0 0 Nordeste de Tupi 4 2 8 Guara South 3 1 9 Tupi South 1 2 8 Peroba* 計 5,0 0 0 *: Peroba 鉱区は、Petrobras が他の 6 鉱区の埋蔵量の再評価を行い、その結果、 これらを合わせても埋蔵量が 50 億 bbl に満たない場合の予備とされた。 出所:各種資料より作成 百万 boe

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CEOが、資産の過剰評価の可能性を指摘し、辞表を提出、 Barbassa CFOと 4 名の Executive Directorもこれに倣 い、辞任することとなった。同月6日、 同社の経営審議 会で表 8 に見るように新たな CEOらが選任された。 CEOには国営ブラジル銀行の Bendine総裁が就任する こととなった。Monteiro新 CFOもブラジル銀行出身だ。 一方、新たな Executive Director4 名は技術畑出身で Petrobrasで30年以上の経験を有する。  また、3 月 27 日には、取締役会議長に Valeの Murilo Ferreira CEOが指名され、4 月 29 日の株主総会で承認 された。  一方、Petrobrasは、会計監査人が汚職疑惑を理由に 2014 年第 3 四半期の決算の承認を拒否したこと等から 同期の決算発表を延期していたが、2015 年 1 月 27 日、 外部監査もなく、連邦警察による捜査で判明した汚職に よる損失計上もない同期の財務結果を発表した。損失計 上のない決算発表で同社の金融市場での信用が大幅に失 墜し、株価は 1 日で 10 %下落した。ただ、経営陣にブ ラジル銀行出身者を迎えたことが奏効したのか、その後、 4 月 22 日には、監査済みの 2014 年決算を発表すること ができた。同社は汚職疑惑に関連する費用として 62 億 レアル(21億ドル)を計上したが、これは取引業者が契 約獲得で賄賂を支払った疑惑の調査に関連するものだと 説明した。また、資産がバランスシート上で過大に評価 されていたとして446億レアル(149億ドル)の減損を計 上した。2014年通期純損失は216億レアル(72億ドル) となり、債務合計は3,510億レアル(1,170億ドル)に増 加したと報告した。なお、5 月 15 日に発表された 2015 年第1四半期決算では、国内のガソリン価格の値上げや 輸入ガソリン価格の下落による負債減少で 53 億レアル (17億7,000万ドル)の黒字を計上、純益は前年同期比1.0% 減少したが、2014年の216億レアル(72億ドル)の赤字 から大幅に改善した。一方、負債総額は 3,324 億 5,700 万レアル(1,108億ドル)となった。  汚職問題の拡大を受けて、格付け機関による同社の債 権等の格下げも続いた。  米国の格付け機関 Moody’sは、2015 年 2 月、汚職問 題の影響と約 1,350 億ドルの債務を抱える Petrobrasの 返済能力に対する懸念から、同社優先債の格付けを Baa3からBa2(投資不適格級)に2段階落とした。2014 年10月以降、3度目の格下げとなる。

 Standard & Poor’s(S&P)も2014年12月、Petrobras の政府支援を考慮に入れないスタンドアローン信用格付 けをジャンク級(投機的水準)のBBに2段階引き下げた。 S&Pは、汚職捜査で同社が海外債券市場を利用するの が難しくなることを格下げの理由に挙げた。一方、通常 の信用格付けについては、Petrobrasが政府支援を得ら れる可能性は非常に高いとし、投資適格級で最低の BBB-に据え置いた。  監査済み決算を発表したことで一息ついた感があるも Pasadena 製油所買収問題の詳細 表7 年月日 出来事 2 0 0 5 年 1 月

・ Astra/Transcor は Crown Central Petroleum より、米国テキサス州の Pasadena 製油所(精製能力 1 0 万 b/d) を 4,2 5 0 万ドルで買収した。

・ Astra は 1 9 4 7 年設立のベルギー資本のトレーディング会社。1 9 8 5 年に石油エネルギー部門に参入。 Pasadena 製油所買収が初の製油所取得で、その後 2 0 0 6 年にも Washington 州 Tacoma に製油所を保有す る US Oil & Refining Company を買収したが、2 0 1 4 年に売却している。2 0 1 2 年にはカナダの Trans Mountain パイプラインの throughput contract を締結。

2 0 0 6 年 9 月

・ Astra は、Pasadena 製油所の 5 0 %を 3 億 6,0 0 0 万ドルで Petrobras に譲渡した。両社は、同製油所の精製 能力を倍増させ、重質油の処理を可能にするよう改修する計画であった。

・ 当時、官房長官で Petrobras 経営審議会を率いていた Rouseff 氏(現大統領)は、この取引に賛意を表明。後 日問題となる Put-Option(共同経営のあり方に異議を唱え、契約を破棄する際は相手の持ち株を買い取るこ とを定めた規定)とマルリン(市場悪化の場合も共同経営者に利益分配することを定めた規定)は契約には盛 り込まれていたものの、審議会に提出された契約内容の概要を記した書類には記されていなかった。 ・ 2 0 1 4 年に入り実施された捜査で、Rouseff 氏は、Pasadena 製油所買収問題について Put-Option やマルリ

ンが省かれた書類を見て賛成した、これらの存在を当時知っていたら、審議会は同製油所の株式買い取り を承認しなかっただろうと発言した。

・ 一方、国際渉外担当理事セルヴェロー氏は、Put-Option もマルリンも石油業界の買収交渉では常識的な契 約事項で、Petrobrasの売買契約の手順書にも書かれているとし、報告書に記述しなかったことを正当化した。

2 0 0 8 年 6 月 ・ Petrobras と Astra は、Pasadena 製油所拡張投資の時期で意見が相違し、Petrobras は Astra が 5 0 %の株式保有者としての義務を果たせとして提訴した。 2 0 0 8 年 7 月 ・ Astra が Petrobras に対して Put-Option 行使を求め提訴した。

2 0 1 2 年 ・ Petrobras 敗訴、テキサス州最高裁判所等に残りの株式 5 0 %の買い取りを命じられる。Petrobras は残りの5 0 %の株式取得に対して 8 億 2,0 0 0 万ドルを支払う。 2 0 1 3 年 ・ Petrobras は、海外資産売却の一環として Pasadena 製油所売却を計画するが、取りやめた。

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のの、決算発表の遅れや格付け機関による格下げがあっ たことで、Petrobrasが探鉱・開発等に必要な投資資金 を確保できるかが懸念されている。  これに対して、2014 年 12 月、Petrobras関係者が、 同社は、精製や掘削への支出抑制を進めており、2015 年に市場から資金を調達しなくても済むように措置を講 じたと説明した。さらに同月、Foster CEOが、2015年 に必要とされる資金は、市場で調達できなくとも、コス ト削減、国内の燃料価格引き上げ、生産増で対処できる と発言した。Moody’sも、Petrobrasは、2015年は預金、 利益等で資本支出、利子や税金の支払い、債務償還等を カ バ ー で き る と 試 算 し て い る。 一 方 で、Fitchは、 Petrobrasは、年内に期限を迎える社債 110 億ドルの償 還や積極的な投資計画を踏まえると、今年150億~ 200 億ドルの調達が必要になりそうだとしている。  資金についてPetrobrasは、2015年4月に中国の国家 開発銀行より35億ドルの融資を確保、5月にブラジル銀 行から45億レアル(15億ドル)、連邦貯蓄金庫から20億 レアル(7億ドル)、ブラデスコ銀行から30億レアル(10 億ドル)、STANDARD CHARTERED銀行から30億ド ルの資金を調達している*10  資金は確保できるとする一方で、Petrobrasは同じく 2014 年 12 月に、2015 年の投資額を 30 %削減し 310 億 ~ 330 億ドルとする方針を表明、2015 年のブラジル国 内石油生産量は 2014 年比 4.5 %増を目標とするとした。 Petrobrasは 2014 年 2 月発表の 5 カ年計画で、2014 ~ 2018 年の 5 年間に 2,206 億ドルを投じ、ブラジル国内 の石油生産量を2018年に320万b/d、2020年に420万 b/dとする計画としていた。  また、Petrobrasは、2015 年 3 月 2 日、2015 ~ 2016 年の2年間に137億ドル相当の資産を売却すると発表し た。同社は、2014 年 2 月時点では、2018 年までに 50 億~ 100 億ドルの資産売却をもくろんでいたので、資 産売却の規模が拡大されたことになる。売却される資産 の内訳は、国内外の探鉱・生産部門 30 %、流通部門 30 %、ガス・エネルギー部門 40 %であるという。低価 格で資産を投げ売りする必要はなく、油価が回復するの を待って、2015 年に 30 億ドル、2016 年に 100 億ドル 相当の資産を売却する計画であるとしていた。  当初、Petrobrasは、ポストソルトの鉱区権益、発電所、 ブラジル国外の下流資産等ノン・コア資産を売却するの ではないかとの見方がなされていた。  しかし、4月末になると、同社は、資本支出を削減し、 早期に生産を開始するため、既存のプレソルトのプロ ジェクトのジョイントベンチャー化を検討していると報 道された。さらに、5 月には、Petrobrasが Santosおよ び Campos Basinのプレソルト 5 鉱区(Pão de Açucar、 Jupiter、Carcará、Sagitário他)を含む沖合6鉱区の権益 を売却する計画との報道があった。プレソルト5鉱区の 権益売却額は40億ドル以上に上るとの見方もある。 Petrobras の経営陣 表8 旧 新

CEO Maria das Graças Silva Foster Aldemir Bendine

Chief Financial Officer and Chief Investor

Relations Officer Almir Guilherme Barbassa Ivan de Souza Monteiro Exploration and Production Officer José Miranda Formigli Filho Solange da Silva Guedes

Downstream Officer José Carlos Cosenza Jorge Celestino Ramos

Gas and Power Officer José Alcides Santoro Martins Hugo Repsold Júnior

Engineering, Technology and Procurement Officer José Antônio de Figueiredo Roberto Moro 出所:Petrobras ホームページより作成 国内外の探鉱・生産部門 30% ガス・エネルギー部門 40% 流通部門 30% 資産売却の内訳 図17 出所:Petrobras 発表資料を基に作成

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(3)油価下落の影響  2014 年中頃からの原油価格下落によりブラジル沖合 の油田開発が影響を受けているのではないかと懸念する 向きがある。  Petrobrasが 2015 年 1 月に発表したところによると、 原油価格が$40 ~ $45/bblで推移していればプレソルト の油田は経済性が見込めるという。同社によると、プレ ソルトでは 42 坑で生産が行われており、生産量は平均 で 2 万 b/dである。生産量が 1 万 5,000 ~ 2 万 5,000b/d の坑井の損益分岐点は $45/bblであるが、3 万 b/d以上 を生産する坑井もあり、これらの坑井の損益分岐点は $10/bblになるという。5 月初めに Petrobrasは、プレソ ルトの生産コストは下落を続けており、現在 $9/bblで、 さらに削減できる見通しであるとした。   こ の よ う な 発 表 か ら、 油 価 下 落 の 観 点 か ら は、 Petrobrasのプレソルトの開発計画が変更されることは ないのではとの見方をする向きもあった。  しかし、6月末に発表されたPetrobrasの新5カ年計画 では、油価下落、汚職問題に加え、レアル安の影響もあっ て、大きく変更されることになり、2015 ~ 2019年の5 年間の投資額は前年発表の5カ年計画比40.9%減の1,303 億ドル、2020 年のブラジル国内の生産目標は前計画比 33 %減の 280 万 b/dとされた。同社は、投資額を削減 するものの、ブラジル上流、特にプレソルトの油田開発 は優先するとし、総投資額の 83 %にあたる 1,086 億ド ルを探鉱・生産部門に充て、うち644億ドルをプレソル トの油田開発を含む新規プロジェクトに向けるとしてい る。2020 年には、プレソルトの油田からの生産が同社 Petrobras の資産売却の内容 表9 時期 資産売却の内容 2 0 1 5 年 3 月 南西石油の沖縄県の製油所閉鎖を決定。石油製品の受入基地を建設し、これを売却する計画。 2 0 1 5 年 4 月 アルゼンチン資産(探鉱・開発権益、輸送インフラストラクチャー)を同国企業 CGC に 1 億 1 0 0 万ド ルで売却すると発表。探鉱・開発権益は Austral Basin の Santa Cruz I、Santa Cruz I Oeste、 Glencross、Estancia Chiripá、Santa Cruz II 鉱区(総面積 1 万 1,5 0 0 ㎢)で、1 万 5,0 0 0boe/d を生産 中。CGC は Santa Cruz I(2 9 %)と Santa Cruz I Oeste(5 0 %)鉱区の権益を保有。

石油化学企業 Braskem の株式 3 6.1 %を約 9 億ドルで売却する計画とブラジル紙が報道。売却先等詳細は不明。 Potiguar Basin の BM-POT-1 6 鉱区の権益の 3 0 %を BP に、Pelotas Basin の BM-P-2 鉱区の権益の5 0 %を Total に売却することを ANP が承認。

出所:各種資料を基に作成 Petrobras のブラジル国内の石油生産計画 図18 出所:Petrobras「Business Plan2015-2019」 POST-SALT PRE-SALT (CONSESSION) TRANSFER OF RIGHTS PRODUCTION SHARING To be contracted

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の生産の半分以上を占めることになる計画であるとい う。一方、下流やその他の部門はメインテナンス、操業 維持のみを行うという。資産売却については、2015 ~ 2016 年に 137 億ドルを売却するとしていたが、これを 引き上げ 151 億ドルとするとした。さらに、2017 ~ 2018年にも追加で426億ドルの資産売却、事業の解体、 再編を計画しているという。同社はこの5カ年計画の実 施により、負債を減らし、利益の上がるプロジェクトに 集中することで、株主に対し価値を創出するとしている。  2015年3月に、ブラジルで30以上の石油・ガスプロジェ クトに携わっているGalp EnergiaのManuel Ferreira de Oliveira CEOが、汚職捜査の拡大によりPetrobrasはプ レ ソ ル ト の 主 要 4 油 田(Lula Sul、Lula Norte、Lula Extremo Sul、Lula Oeste)の開発を少なくとも1年遅ら せるであろうとのコメントを発表していた。今回の5カ 年計画では、その言葉どおり、多くのプロジェクトの実 施時期が1 ~ 3年先送りされている。中には、Carcará、 Jupiterのように、資産売却の対象となり、2020 年まで の生産計画から姿を消したプロジェクトもある。大幅な 投資額、生産目標の削減ではあるが、今回の5カ年計画 に対しては、現実的な投資額、生産目標になったと、好 意的な見方をする向きが多い。 (4)探鉱・開発促進策  Petrobrasが生産目標を達成できなくなり、経営状況 が悪化し、ブラジルの石油生産量が伸び悩んだ背景には、 汚職問題や油価下落以外にも多くの問題が ある。  2010 年に成立したプレソルト開発に関 する法律には、プレソルトの新規鉱区につ いてはPetrobrasが権益の少なくとも30% 以上を保有し、オペレーターになることが 規定されている。これにより、同社は、資 金面、人材面で過大な負担を背負うことと なった。しかし、逆に、メジャー等IOCの なかには、オペレーターを務められないこ とから、プレソルトでの探鉱 ・開発に関心 を失った企業もあるのではないか。  また、政府がブラジル国内の産業を発展 させるためローカルコンテンツ規制を設け ていることで、ブラジルで活動する石油会 社はコストの高いブラジル産の資機材を用 いなくてはならなくなっていると考えられ る。そして、Petrobrasの汚職問題でブラ ジルのエンジニアリング企業の多くが同社 と新たな契約を締結するための入札に参加することを禁 じられている。   さ ら に、 政 府 は イ ン フ レ 上 昇 を 避 け る た め、 Petrobrasに対して燃料価格の値上げを認めず、同社は 国際市場価格で輸入したガソリンやディーゼル、LNG を国内で割安な価格で販売し、その逆ザヤを負担してき た。そのため、同社は過去 5 年間で 600 億レアル~ 800 億レアルの損害を被ってきたという。  ブラジルでの探鉱・開発をさらに進めるためには、汚 職問題を早期に解決するとともに、こうした問題も解決 することが必要だろう。実際、ブラジル国内にも、これ らの課題に対処しようとする動きが見られるようになっ てきた。   石 油 製 品 の 価 格 に つ い て は、2014 年 11 月 に Petrobrasが卸売価格を引き上げ、また、油価下落によ り国際市場価格が下落しているために、問題は解決に向 かっているようだ。   石 油 業 界 団 体 IBPは、Amazonas、Parnaíba、 Potiguar、Recôncavo、Sergipe-Alagoás、Jacuípe、 Camamu-Almada、Campos、Espírito Santo、Pelotasの 10堆積盆地の269鉱区(沖合、陸上を含む)を対象に10 月 7 日に実施が予定されている第 13 次ライセンスラウ ンドから、入札に関する規則を変更するよう政府に要求 している。IBPは、入札条件にローカルコンテンツを含 めないこと、ライセンスラウンドのスケジュールを作成 すること、プレソルト新規鉱区で Petrobrasがオペレー 出所:ANP ホームページ 第 13 次ライセンスラウンドの対象となる堆積盆地 図19

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ターになることを義務付けている点を変更すること、環 境ライセンスの発給を透明化すること等を求め、諸条件 を政府と協議したいとしている。  野党PSDBのJosé Serra氏は、連邦議会上院の委員会 にプレソルトの新規鉱区で民間企業が自由にオペレー ターを務めることができるようにする法案を提出した。 同氏は、Petrobrasを再度成長の軌道に乗せ、効率的な 操業を取り戻すには過大な義務を取り除くことが必要だ としている。  5 月には、Eduardo Bragaエネルギー相が、政府は外 国企業がプレソルトでの探鉱・開発に興味を示すように 規則の変更を検討していると発言した。また、外国企業 に対するローカルコンテンツの規制を見直す可能性にも 言及した。  2014年10月にルセフ大統領が再選された際には、プ レソルト開発法やローカルコンテンツの規制は変更され ないとの見方が強かったが、汚職問題の拡大により Petrobrasの経営状況が悪化したことを機に、これらの 変更について真剣に検討がなされるようになってきたこ とは注目に値する。 (1)概況  コロンビアでは、主要油田の生産減退とゲリラ活動の 激化により 1990 年代に探鉱・開発が停滞した。また、 BP がオペレーターを務めるコロンビア最大の Cusiana-Cupiagua油田の生産量が 1999 年の 43 万 1,000b/dから 2007 年には 10 万 4,000b/dに、Cusiana-Cupiaguaに次 ぐ 規 模 で Occidentalが オ ペ レ ー タ ー を 務 め る Caño Limón油田の生産量も2004年の9万5,000b/dから2006 年には3万5,000b/dに減少した。このように主要油田の 生産量が減少したこともあって、同国の石油生産量は、 1999年の83万8,000b/dから2004 ~ 2007年には52万 ~ 53万b/dに減少した。  事態を憂慮したウリベ前政権が 2002 年以降、ブラジ ルに倣い積極的な外資導入政策を採り、生産期間の制限 (28年)廃止やロイヤルティの変更など契約条件を変更 した。鉱区付与や契約手続きを担当するANH(National Hydrocarbons Agency:国家炭化水素庁)が設置され、 頻繁にライセンスラウンドが実施され、国営石油会社 Ecopetrolは探鉱・開発に専念できるようになった。治 安面でも、ゲリラ対策が採られ、誘拐、石油生産施設や パイプラインへの攻撃が減少し、コカ栽培面積やコカイ ン生産量も減少し、改善が見られるようになった。  その結果、2005 年を底に石油生産量は急増した。政 府は、2011 年末までに 1 日あたりの石油生産量 100 万 b/d突破を目指し、さらに、年間の石油生産量を 2011 年には 92 万 b/d、2012 年には 100 万 b/dにすることを 計画した。  しかし、2011年以降、ゲリラによる誘拐や石油インフ ラストラクチャーへの攻撃が増加、また、労働者が労働 条件の改善を求めて、地元住民が道路や環境破壊を問題 として、抗議行動を起こすようになり、同国の石油生産 量は伸び悩んだ。石油生産量が100万b/dを超えたのは 2012年12月末で、年間の生産量も2011年が91万5,000b/ d、2012年が94万4,000b/dと目標に届かなかった。  2013 年はようやく、年間を通して100 万 7,000b/dと 生産量は100万b/dを超えたものの、2014年に入り、ゲ リラの活動がさらに激化、爆破されたパイプラインの修 復作業を地元住民が妨害するという事件も起き、Caño Limónパ イ プ ラ イ ン(Caño Limón-Coveñas間 全 長 770km、 送 油 能 力 22 万 b/d) や OBC(Oleoducto Bicentenario)パイプライン(Llanos Basin-Coveñas間全長 960km、送油能力45 万 b/d)の操業が頻繁に、そして、 長期間にわたり停止することとなった。6月に行われた大 統領選挙で、Santos大統領が再選されたことで、ゲリラ との和平交渉が継続され、パイプライン等インフラスト ラクチャーへの攻撃が減少するのではとの期待が高まっ たが、それ以降もゲリラの活動は収束していない。  加えて、環境許可取得に時間がかかることも、コロン ビアでの石油会社の活動を阻害している。例えば、 Colombian Petroleum Association(同国で活動中の石油 会社37社が参加)によると、石油会社の70 %が、環境 許可の取得が 1 年以上遅れるために、予定していた 2014 年の資本投資を使い切ることができなかったとし ている。直接投資は 2012 年の 54 億ドルから 2013 年は 49億ドルに減少したが、2014年はさらに減少している ようである。  パイプラインの操業停止や投資額の減少から、生産量 の減退が見込まれたため、政府も 2014 年の生産目標を

3.

コロンビア

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