行政代執行の実務
森 直太郎
1・飯塚 竜太
2 1前)金沢河川国道事務所 用地第二課 (〒920-8648 石川県金沢市西念4丁目23番5号 ) 2金沢河川国道事務所 用地第二課 (〒920-8648 石川県金沢市西念4丁目23番5号 ) これは,起業者として都道府県知事に行政代執行請求を行った事例に関する報告書である.代執行の準 備で行った実務内容とその過程で生じた問題点を報告し,代執行事務に関する知識の蓄積と検討課題の洗 出しを目的とする.本稿は,第1章では代執行の概要,第2章では代執行の流れ,第3章では代執行実施ま での実務,第4章では実務上で生じた問題,第5章で問題に関する考察を述べる. なお,実際は代執行に至ることなく,任意で明渡しが行われたことから,この報告は,代執行実務の途 中段階のものであることをあらかじめ断っておく. キーワード 行政代執行法,土地収用法1. 土地収用法における代執行に関する規定
はじめに,収用による行政代執行(以下「代執行」と いう.)の基本的概要を述べる. また,代執行を行う上での実体的な要件について,土 地収用法(昭和26年法律第219号)の規定に基づく代執 行が行政代執行法(昭和23年法律第43号)に規定する要 件の一部の適用を受けない理由を述べる. (1) 代執行の性質 代執行は,代替的作為義務を課せられている者がその 義務を履行しない場合において,行政庁が自らその作為 をなし,又は第三者にこれを行わしめて,それに要した 費用を義務者から徴収するという方式を用いるところの 行政上の強制執行の手段1)であり,行政代執行法により 定められた行政上の強制措置の一つである. 代替的作為義務とは,義務者に代わって他人が行うこと ができる義務のことで,例えば建築物の解体や移転等が 該当する. (2) 代執行の要件 一般の代執行は次の4つの要件を満たすときに,義務 者に代替的作為義務を命じた行政機関において行うこと ができると定められている. (ⅰ)義務者が法律又は行政機関に命ぜられた代替的作 為義務を負っていること. (ⅱ)義務者が義務を履行しないこと.義務を履行しな いこととは,義務者が故意で義務を全く履行しない 場合(義務不履行)のほか,履行しても充分でない 場合(不完全履行)又は履行に着手したが定められ た履行期限までに完了しない場合(履行遅滞)が含 まれる. (ⅲ)「代執行以外の手段」で履行を確保することが困 難であること.「代執行以外の手段」とは,説得, 便宜の供与等の手段をいうとされている. (ⅳ)その不履行を放置することが著しく公益に反する ときであること.これは,「義務の不履行は全て公 益に反するが,その公益違反が特に著しい場合に初 めて代執行を許すという趣旨」を表したものと解さ れている2). それに対して,土地収用法第102条の2第2項では次の 2つの要件を満たす場合において、起業者の請求により, 都道府県知事(以下「代執行庁」という.)が代執行を することができるとされている. (ⅰ)土地又は当該土地にある物件を占有している者が, 明渡裁決(土地収用法第49条)で決定した明渡しの 期限までに土地若しくは物件を引き渡し,又は物件 を移転すべき義務を負っていること. (ⅱ)その義務を明渡しの期限までに履行しないとき, 履行しても充分でないとき,又は履行しても明渡し 期限までに完了する見込みがないときであること3). 以上のとおり,土地収用法による代執行では,一般の 代執行の要件(ⅲ)と(ⅳ)の適用を受けない.これは,事 業認定において当該事業のため土地を収用することの公 益上の必要が認定され,収用委員会により十分な審理を 尽くして裁決が行われた以上,占有者が明渡しの期限ま でに土地・物件の引渡し又は物件の移転をしないことの反公益性は十分に認められることから,土地収用法第 102条の2第2項前段に規定する要件が存するときは,た だちに,起業者による代執行の請求及びそれに基づく都 道府県知事による代執行の手続の開始が可能であると解 する4)ことができるからである. (3)代執行の相手方 代執行の相手方は,土地収用法第102条で「明渡裁決 があったときは,当該土地又は当該土地にある物件を占 有している者」とされ,同法第102条の2第2項で「明渡 裁決があったときにおいて,土地若しくは物件を引き渡 し,又は移転すべき者」とされている. (4)代執行の対象物 土地の収用の場合は,収用対象地に存する物件であり, 土地の使用の場合は使用の妨げになる物件が対象となる. 物件は動産たると不動産たると問わない.明渡裁決で移 転対象となった物件は全て対象となるが,移転補償の対 象とならない物件でも,起業者の占有開始を妨害し、明 渡しを拒むことに影響する物件は代執行の対象となる5). (5)代執行権の及ぶ範囲 代執行権が及ぶ範囲は土地の収用権が及ぶ範囲に限ら れる.土地の収用権は事業認定によって範囲が決まり, 権利取得裁決(土地収用法第48条)によって確定するこ とになる.なお,例外的に収用地内外にまたがる物件に ついて,収用地外に存する部分にも代執行を認めた判例 がある.
2. 土地収用法における代執行の流れ
この章では,代執行を実施するための手続について, 実施手順に沿って概要を述べる. (1) 代執行請求 収用の代執行は,起業者から代執行庁に対して代執行 を行うよう請求があって初めて開始される.(土地収用 法第102条の2第2項) 一般の行政代執行の場合は,義務を賦課した行政庁が 自らの判断で代執行を開始することができるのに対し, 本法の代執行の場合には,代執行庁たる知事は,起業者 の請求を待って初めて代執行を開始することができる6) という違いがある. (2) 戒告 代執行請求を受けた代執行庁は義務者に対し相当の履 行期間を定め,その期間までに義務が履行されなければ 代執行を行う旨をあらかじめ文書で戒告しなければなら ない.(行政代執行法第3条) (3) 代執行令書による通知 義務者が戒告を受けて,指定の期限までにその義務を 履行しないときは,代執行庁は代執行令書で,代執行を 行う時期,代執行の執行責任者の氏名,代執行に要する 概算費用を義務者に通知しなければならない.(行政代 執行法第3条) なお,戒告及び代執行令書による通知は,代執行法に 基づく行政処分であり,行政不服審査法の不服申立て, 更に行政事件訴訟法の取消訴訟の対象となる. また、代執行請求,戒告,代執行令書の交付は一連の 手続であり,先行の手続の瑕疵は,後行の手続の有効性 に影響を与える7).例えば,戒告がなく,又は戒告が効 力を生じていないにも関わらず代執行令書を発行しても, それは無効であり,代執行そのものも無効となる8〉. (4) 代執行の実行 a) 第三者委託 代執行庁は,第三者に執行作業を委託することができ る.(行政代執行法第2条、土地収用法第102条の2第2項) b) 代執行手続きの中止 義務者が代執行の実施までに自主的に退去し,支障物 件を除去したため、代執行手続を続行する必要がなくな ったときは,代執行手続は中止される.代執行庁は,そ の事実を確認した上で,代執行請求を行った起業者に代 執行手続中止の通知を行う8). (5) 代執行費用の徴収 代執行庁は,代執行に要した費用の範囲内で,明渡裁 決に係る補償金を義務者に代わって受け取ることができ る.(土地収用法第102条の2第3項)3. 代執行実施までの実務
代執行請求を行ってから,実施に向けた準備が始まっ た.この章では代執行の実施までに必要な実務を述べる. 今回は,代執行庁との初回協議で,執行行為の一部を 起業者が行うことを確認した上で準備に入った. (1) 実施協定の締結 土地収用法第102条の2第2項に基づき,執行行為の一 部を起業者が行うに当たり,執行行為のうち,起業者に 委託される行為の範囲を取り決める.過去,北陸地方整 備局管内で行われた実例を参考に起業者で素案を作成し, 代執行庁と協議し,了解を得た.その結果,本件では, 建物等の解体工事及び動産の移転作業(以下「執行作業」 という.)が委託されることとなった.実施協定の締結時期については,代執行庁が行政代執 行法に基づく最初の行為である戒告と同時又は戒告後と した. (2)代執行方法の検討 執行作業に関し,どのような方法によるかの検討を行 った. 収用の代執行の場合,明渡裁決で物件を移転する工法 が認定されているが,代執行においてはこの工法の考え 方に拘束されず,移転すべき物件を解体し,これを収用 地外に搬出することをもって足りる9)とされることから, 基本的には,建物及び工作物にあっては除却,立木にあ っては伐採,動産にあっては移転とした. (3)解体資材・動産等の保管場所の確保 解体資材や動産が残った場合,義務者が有する土地に 搬入できないときは,行政回答昭30・8・22(建設省計 画局総務課長回答)によれば,「一般的に保管義務があ るとはいえないが実際の取扱いとしてはできる限り所有 者に物件を引取らせるよう努力するとともに,保管物件 と保管期間を指定しその期間を徒過するときは以後保管 の責に任せざる旨を物件の所有者に通告しその期間中は 通常程度の保管を行うよう措置するのが妥当であると思 われる」とあり,所有者自らこれを占有管理することが できない事情にある限りにおいては,代執行庁側に保管 責任があり,事務管理者として要求される程度の注意義 務をもって保管しなければならない10)ことから、保管場 所を確保しなければならない. このため,代執行対象物件が存する市町村に解体資材 等を搬入できる適当な土地がないか検討した. (4)執行体制・役割分担の決定 執行責任者,執行本部,各種作業班等が代執行の実施 に当たり必要となる作業の内容、作業に必要な人員につ いて,検討しておく必要がある.これも過去の北陸地方 整備局の実例を参考にして素案を作成した. (5)第三者委託のための受委託契約の締結 代執行庁と起業者で執行作業を受委託する契約を締結 する.契約金額は,通常の受託工事契約と同様,直接工 事費に人件費等の経費を加えたものとなる. 本件では,概算費用を把握するため,起業者で設計案 を作成し費用を算出した. (6)工事請負契約の設計・発注 対象物件の調査は,明渡裁決の申立て前に起業者が実 施していたことから,その調査成果に基づき設計・積算 を行った.合わせて対象物の数量や解体方法に基づき代 執行用の仕様書を作成した. 北陸地方整備局管内では建物を取り壊す代執行を行っ た実績がなかったことから,これらの作業に当たっては, 宿舎の取壊し工事の事例を参考に,代執行用の仕様書を 作成し,積算を行った.この積算に当たっては,建物等 解体工事の設計基準がないため,専門業者からの見積書 によることとした. (7)ライフライン関係事業者との調整 代執行と同時にライフラインを止めなければならない が,どのタイミングで止めることになるか,手順はどう するか等を事前に関係事業者と調整する必要がある. (8)警察との調整 代執行では,義務者等の妨害行為等が予想されること から,事前に所管警察署に突発的な事態への対応を協議 しておく必要がある.
4. 代執行実務で生じた問題
代執行は膨大な事務量と専門知識が必要となるが,代 執行自体が非常に稀なケースであることから,代執行の 実務に関するノウハウがない.この章では,実務の過程 で生じた問題点を挙げたい. (1)事業スケジュール 第一に,代執行スケジュールと事業スケジュールの調 整に関する問題である. 代執行は最終手段となることから,一般的には事業の 終盤で実施されることになる.しかしその時期は,工事 も待ったなしの状況であることが多い.そのような時期 に代執行手続により工事着工が遅れることになれば,完 成年次も遅れることになりかねない.完成年次を遅らせ ないためには,代執行までの期間を短縮させるか,工事 期間を短縮させるかの選択を調整しなければならない. しかし,代執行は強権発動のイメージがつきまとうの で,代執行庁としては実施までに十分な準備期間を確保 したいと考える.一方,工事担当者は早期に事業効果を 発現させるため,少しでも早く着手したいと考える.両 者の立場は対立することになり,この擦合せが問題とな った. (2)執行作業に付随して生じる費用 第二に,執行作業に付随して生じる費用の負担を代執 行庁の負担とするか,起業者の負担とするかの問題であ る. ここで執行作業に付随して生じる費用とは,例えば、 現地に本部を設置する場合の設営費用,執行期間が数日 間に及ぶ場合等で夜間警備が必要な場合の費用,執行物 件調書の作成に補助作業員を必要とする場合の費用等で ある.この費用負担に関して代執行庁と協議を行ったところ, 代執行庁からの回答は,「代執行費用として義務者に請 求できる範囲までが委託費と考える」というものであっ た. ここでいう「代執行費用として義務者に請求できる範 囲」とは,文献によれば,除去作業の請負代金(請負に よらず執行するときは,人夫費,資材購入費等),代執 行責任者の派遣費用等,執行行為に直接要する費用に限 定され,事前の調査・確認に要する費用,代執行手続に 従事した知事部局職員の人件費,警備に要する費用は含 まれない11)とされている. では,これらの費用を起業者が負担しなければならな いのか,意見が分かれるところであった. (3)予算確保 第三に,予算確保に関する問題である.第三者委託を 受けるには,予め受託工事費として年度当初に予算を確 保しておかなければならない.しかし,予算要求の時期 において,代執行に至るまでの見通しが立たず,受託工 事費の予算要求を怠ってしまう場合や,代執行の実務経 験者が少なく,そもそも受託工事費の予算確保が必要で あるとの認識がない場合において,この予算措置がなさ れていない.このような場合,年度途中に急遽,予算確 保を行わなければならないことになる.万が一,確保が できない場合は,代執行庁自らが代執行を実施するか, 若しくは,次年度において受託工事費の予算を確保した 上で,実施するかのどちらかの手段によらざるを得ず, 事業スケジュールの遅延につながりかねない. (4)解体資材・動産等の保管に要する費用 第四に,解体資材・動産等の保管に要する費用の問題 である.行政代執行法には,解体資材・動産等の保管方 法等の取扱規定がないため,どのような取扱いが妥当な のかの検討が必要となる.代執行手続としての執行行為 は,移転すべき物件の除去をもって終了し,代執行庁は, 解体資材、動産等除去物件の保管義務まで負うものでは ない.したがって,除去物件を義務者の支配下にある土 地等(例えば、残地や義務者の居宅)に搬入しておけば 足りる12)という見解があることから,近隣に義務者の土 地があり,義務者に了解を得て,解体資材・動産等を搬 入することができれば,一応の解決にはなる. しかし,適当な土地がない場合は,3(3)の通り,代執 行庁が自ら保管することになる. ここで問題となるのは,保管により生じる費用である. 保管方法については,前述のとおり,事務管理者として 要求されれる程度の注意義務をもって保管しなければな らないとされているため,基本的に屋内にあるものの保 管は風雨にさらされることのない場所を保管場所として 選定すべきであろうと考える.その場合,現実的な選択 肢としては,代執行庁の庁舎敷地内の倉庫や貸倉庫等と なろう.しかし貸倉庫の場合の賃料や,保管場所が近隣 にない場合の運搬費等,保管するための費用がかかるこ とになる. これら保管費用については,代執行の費用としてでは なく,民法第702 条による事務管理費用として義務者か ら弁済を受けることになるのだが,保管にかかる対応に ついては,後に争点になりかねないので,代執行庁とし ては慎重な判断が求められる. この検討に当たっては,一般的には,まず過去の事例 を基に行うことになろうが,必ずしも過去の事例がその まま適用できるとは限らないし,その方法がとられた理 由や背景が明確であるとも限らない. よって,人によって解釈や意見が異なる場合,それら を整理する基準がない. (5) 事務作業人員の確保 最後に,人員の問題である.代執行の実務は,第三者 委託契約等の手続事務,執行作業にかかる設計・工事発 注事務,代執行計画書等の文書作成事務,その他代執行 実施に当たり必要な事務等多種多様である. また,スケジュール調整,法律問題の整理,代執行方 法の検討,工事契約方法の整理,マスコミ対策等,関係 部署や関係機関との協議にも膨大な時間を要する. 特に今回は,相手方が義務を履行しないことが確定後、 手続を開始することとなったことから,短時間にこれら の事務を進める必要があった.しかし,代執行実務経験 者もいないことから,一時的に特定の担当者の負担が大 きくなった.
5.問題に関する考察
(1)事業スケジュールとの調整 計画当初より計画担当部署や工事担当部署の担当者の 協力を得て代執行を想定した事業期間を定め,定期的に これらの部署と進捗状況を検証し,必要であれば全関係 部署了解の下でスケジュールの見直しを行うことが必要 であると考える. 代執行の期間を明渡裁決で定められた期日から代執行 が完了するまでの期間とすると,本件で調査した実例の 代執行期間は,最長で約630日,最短で約120日程度を要 している.この期間は執行対象により左右されるので, 一概に判断はできないが,最低6ヶ月から1年は考慮すべ きと考える. (2)執行作業に付随して生じる費用 代執行に要した費用の範囲については,前述のとおり, 執行作業に直接要する費用に限定されているので,その 他の付随する費用については,代執行庁か起業者のどちらかが負担せざるを得ないものと考えられる. しかし,起業者がこれらの費用を負担すべき合理性は ないと考える.なぜなら,第三者への委託がなければ代 執行庁が自ら負担すべき費用だからである. (3)予算確保 次年度の予算要求の時期において,現在収用審理が継 続中又は今後裁決申請を予定している場合は,確実に予 算を確保しておくことを徹底する.このとき,執行作業 に直接要する費用のほか,代執行に付随して生じる間接 的な費用にも配慮する必要がある.これらの費用は必ず しも生じるとは限らないが,事前に予算を確保しておく ことが望ましい. (4) 解体資材・動産等の保管に要する費用 判例又は法律の解釈や解説等が書かれた文献を調査し たり,過去に代執行を行った行政庁に詳細な聞取調査を 行った上で方針を出すことになろう. また,この案件にはこの考え方による方法が適用でき る等,判例や事例を体系的に取りまとめて適用させる仕 組みを作ることができれば,作業の効率化につながると 考える. 今回行った検討では,義務者にかかる負担を考慮し, 義務者の了承を得て処分する案,県の土木事務所倉庫に 搬入する案,起業者が管理する敷地内に搬入する案等が 挙げられたが,今回は最終的な決定までには至らなかっ た. 保管場所の確保や保管方法は代執行の重要なポイント であることから,案件毎に最良の選択を行う必要がある. (5)事務作業人員の確保 多種多様で膨大な作業に当たっていくためには,用地 担当者のほかに,総務・経理,調査,工務の担当者で構 成された代執行実施チームを作る等,事務所全体での体 制づくりが必要と考える. また,用地担当者以外も含めて,代執行実務の知識を 習得する機会を設けるとともに,収用手続の一環として, 代執行が行われる可能性があることも広く理解してもら うことが必要と考える.
6.おわりに
行政代執行法はわずか6条で構成され,手続的には, 戒告書,代執行令書,費用徴収の3つが規定されている に過ぎない. また,土地収用法においても第102条の2で規定されて いるが,手続に関しては行政代執行法に定めるところに よるとされ,別途手続に関する規定が設けられているわ けではない. 代執行は,このように法律には具体的な執行方法や保 管方法,義務者等の抵抗の排除等の運用方針が示されて いない中で準備を進めなければならない.今回は,何を 行い,何を検討しなければならないのか,その都度,代 執行庁や本局の指導を仰ぎ,過去の事例を調査しながら, 作業を進めたため,作業効率は上がらなかった. この実務経験で感じたことは,代執行に関しては,代 執行庁と起業者だけではなく,全国の自治体間で情報共 有化を図り,ノウハウを蓄積する必要があること,代執 行に携わる人員を相当数確保し,それぞれに役割を分担 して様々な準備や検討を同時並行で進める必要があると いうことである.これらの整備が代執行を円滑に実行す るための要件だと考える. 参考までに,作成途中であるが,代執行手続を進める にあたっての「確認事項一覧表」を章末に添付する. 最後に,今回の義務者に対する対応を簡単に述べてお く. 代執行の準備段階で,起業者,代執行庁それぞれが義 務者に土地を明け渡す意思があるかを確認したところ, 義務者から任意で明け渡す考えがあるとの回答があった ので,早急な代執行の実行を差し控え,まずは文書によ る督促,勧告を行い,明渡しを行わない場合は,代執行 手続に移行することも周知した. その後,戒告書の発出準備の段階で,解体工事が行わ れているとの一報が入ったので,しばらく様子を見守る こととした.ほどなく解体工事が完了し,任意で明け渡 してもらうことができた. この結果,代執行庁は起業者に代執行手続の中止を通 知し,この通知を受け,起業者は代執行で予定していた 明渡時期よりも早く工事に着手することができることと なった. 参考文献 1) 広岡隆:行政代執行法〔新版〕(有斐閣双書,2000)p.7. 2) 収用代執行研究会:土地収用の代執行-行政代執行の法律 と実施手続(プログレス,2008)p.54. 3) 収用代執行研究会:土地収用の代執行-行政代執行の法律 と実施手続(プログレス,2008)p.54.55 4) 広岡隆:行政代執行法〔新版〕(有斐閣双書,2000)p.34. 5) 収用代執行研究会:土地収用の代執行-行政代執行の法律 と実施手続(プログレス,2008)p.57. 6) 小澤道一:逐条解説土地収用法〈三次改訂版〉下(,2012) p.535. 7) 収用代執行研究会:土地収用法の代執行-行政代執行の法 律と実施手続(プログレス,2008)p.78. 8) 収用代執行研究会:土地収用法の代執行-行政代執行の法 律と実施手続(プログレス,2008)p.62 9) 収用代執行研究会:土地収用法の代執行-行政代執行の法 律と実施手続(プログレス,2008)p.91. 10) 小澤道一:逐条解説土地収用法〈三次改訂版〉下(ぎょ うせい,2012)p.538. 11) 広岡隆:行政代執行法〔新版〕(有斐閣双書,2000)p.184.
12) 小澤道一:逐条解説土地収用法〈三次改訂版〉下(ぎょ うせい,2012)p.541
13) 小澤道一:逐条解説土地収用法〈三次改訂版〉下(ぎょ うせい,2012)p.539.