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1. 自己目的化した国民皆保険制度 わが国の社会保障は所得保障の年金保険と医療保障の医療保険 (+ 介護保険 ) に立脚して いる. しかし その社会保障理念は 第 1 に国民皆保険におかれ 安易に戦前体制を再加 工して被用者保険と地域保険に分立した制度が再構築された. 第 2 に 給付水準のヨーロ

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∼見失われた社会保障理念の再構築∼

社会的公正へ向けた選別的普遍主義

1)2) はじめに 筆者は、1980年に、共訳書「福祉国家と福祉社会」(Robson, 1976) で、書籍のタイトル3) にわが国ではじめて「福祉社会」という訳語を用いた.それは直訳なのだが、出版編集者 からわが国にはなじんでいないという懸念が表明され、筆者が日本の社会事情に詳しい原 著者をロンドンの自宅に訪ね、意見を求める機会があった.原著者は、福祉国家と福祉社 会の対照に意味があるのでストレートな訳が望ましいとのべ、対照の趣旨として、福祉国 家は歴史的に成立した政治制度を通してわれわれが操作可能(operational)なものだが、福 祉社会は自主的、自立的な存在で、国家にも市民にも操作不可能であり、望ましくもない、 ただ自主性の範囲で個人・集団が働きかけ、影響を及ぼしあうにとどまる、と説明された. 福祉国家のあり方を研究するSocial Policyという学問分野を大学教育レベルに定着させ たのは、Richard M. Titmuss教授 であった.4) 2003年にその没後30周年記念会議がロンド ン大学で開催され、筆者は元ゼミ生として出席の機会を得た.実質的な Titmuss の後継者 でパネリストの1人Howard Glennerster は、Titmussの学問的遺産(Intellectual Legacy)を次 のように要約した.「TitmussがSocial Policyはpartを切り取って教育研究できるものでは ないと説き、所得保障、教育、住宅、保健医療およびケアといった領域に横断的に当ては まる共通の原理、概念、分析手法の追求に専念したことが、Titmuss を学者として傑出させ、

という学問分野を今日の姿に導いたといえる. は社会学、歴史学、社 Social Policy Titmuss

会人類学、疫学そして経済学から多くを取り入れたが、大学教育を受けた経験がなかった 彼には、これらの学問領域の境界はまったく無縁に見えたのである.この独自性こそが彼 ) が21世紀に通用するものとしてわれわれに残した偉大な学問的遺産というべきである」5

はまた、税制による社会給付、自身の疾病体験に基づく や医 Glennerster Gift Relationship6) 療情報の非対称性について、彼は経済学に先駆的貢献をしたと紹介した. 筆者が福祉社会学会に参加したのは、以上の2点を前提に、第1に「福祉社会」への親 近感からであり、第2には、わが国では、既存の社会福祉学会が上記の引用でいえばもっ ぱらケア 、それもカテゴリカルなケアに関心を集中していること、社会政策学会はむしろ 社会保障に向けた国家体制への関心集中から、ようやく年金保険、医療保険およびケアに 関心を移したものの、年金保険は年金保険、医療保険は医療保険、ケアはカテゴリカルな ケアへとそれぞれ分化して議論していることへの失望感から、福祉社会学会が上記の に近い幅広い学問分野に貢献することを期待したからである. Social Policy 本論は、筆者が自らの期待に寄せて、あまりに分化した社会保障制度抜本改革論議に対 抗し、年金保険、医療保険、介護保険、生活保護の主として財政問題を一体化した政策論 を展開し、これまで必要性は論じられても敢えて取り上げられることのなかった総合的改 革論議を試みるものである.以下、わが国が社会保障制度理念を確立しないまま、いつし か社会保障理念そのものを見失ってきた過程を辿り、最近の EU 諸国から主としてイギリ ス、スエーデンの例を参照しつつ、選別的普遍主義を主軸とした制度改善策を提言する.

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1.自己目的化した国民皆保険制度 わが国の社会保障は所得保障の年金保険と医療保障の医療保険(+介護保険)に立脚して いる.しかし、その社会保障理念は、第1に国民皆保険におかれ、安易に戦前体制を再加 工して被用者保険と地域保険に分立した制度が再構築された.第2に、給付水準のヨーロ ッパ水準へのレベル・アップを目標に、分立した制度間の明らかな保険料負担格差を無視 して一方的に給付レベルの公平化が図られ、さらにある時点では老人医療費無料化によっ て、被保険者本人並みの医療費定額負担化が医療保障の究極目標であるような錯覚を国民 に与えた.第3に、経済成長がスローダウンしてからは一転して社会保障制度の財政破綻 救済が重要課題となり、なりふり構わぬ国庫負担金導入と社会的連帯や世代間の公正とい ったスローガンの使い分けで、十分な国民的コンセンサスを得ないまま、社会保障制度の 一体性、整合性を無視して、積み木細工のように年齢別の老人保健制度や介護保険制度が 積み重ねられた.第4に、その場しのぎで先延ばしにつぐ先延ばしの小改革を積み重ね、 その過程で政府が社会保障制度の危機をアピールしたことが、かえって国民に社会保障制 度への不信感を広め、年金制度空洞化という危機的状況をもたらした.以下その全体像の 経緯を簡略化して説明する(共済組合、国保健康保険組合、国民年金基金関連は省略). (1)安易な戦前の再現 わが国の国民皆保険制度化は、既に終戦前にほぼ成立していた体系を安易に再構築して その全国的普及の形で行われた.第 1は、1922 年に初め労働者を対象に作られた健康保険 制度であり、第2に、既に戦時体制が強まったなかで1938年に兵員の供給源であった農山 漁村向けに制度化された国民健康保険制度、第 3には、1941 年にブルーカラー対象の労働 者保険として成立し、1944年にはホワイトカラーも加えた厚生年金保険制度であった. もはや戦後ではないといわれた1950年代後半、西欧型の福祉国家モデル、とくにその国 民皆保障制度体系の導入が目標とされながら、1961 年に成立した国民皆保険制度は、固有 の理念を欠いたまま、半ば「見せかけ」として成立した.年金保険も医療保険も、それぞ れ被用者(職域)保険の体系と地域保険の体系に2分割されていたからである. 被用者保険の場合は所得の把握が容易で、保険料の徴収は、原則、雇用者の所得税源泉 徴収メカニズムに依存できたのに対して、自営業者や退職者中心の地域保険は所得が原則 自己申告制でその正確な把握は難しく、徴収も自主的納税、納付に依存したから、安易に 一律低所得として扱われることになった.そのため、被用者保険は年金も医療も保険料負 担が所得比例の中負担と保険給付も年金が保険料水準と被保険者期間を反映し、医療は定 額ないし低率自己負担といずれも中福祉として成立した.それに対し、地域保険は、国が 保険者の国民年金で保険料、保険給付の「定額制」がとられて低負担・低福祉として定着 し、市町村が保険者の国民健康保険でも、保険料は市町村別に「①所得割額、②資産割額、 ③被保険者均等割額、④世帯別均等割額」となって市町村別格差は大きいものの、保険料 は低負担と保険給付もそれに対応した低福祉として成立した. 被用者保険の中負担・中福祉、地域保険の低負担・低福祉を一括して国民皆保険と呼べ るのか否か大いに疑問だが、中負担、中福祉、低負担、低福祉がいわば保険料負担に対応 していたという意味では、それなりの公平性を維持していたといえよう.しかし、医療保 険の場合、被用者保険の被保険者は、退職して年金生活に移行すると自動的に被用者保険 を離れて地域保険に移ることになる点が、老人医療費の増大とともに、国民健康保険を分

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立する他の社会保険に先駆けて構造的な財政問題に直面させることになった. 国民皆保険の法制度は 1959 年には整備されながら、実際の国民皆保険成立は 1961 年に ずれ込んだ.それは、東京都医師会が、当時顕著であった高度に産業(第三次産業)化し た千代田、中央、港などの都心区と、足立、葛飾、江戸川などの多分に農業的なものを残 した周辺区との間に存在した大きな税収格差が、そのまま各特別区の国民健康保険特別会 計に反映する点に強い懸念を示したからである.その問題は、東京都が、23 区の国民健康 保険特別会計について財政調整を行い、どの区にも決して赤字を生じさせないことを東京 都医師会に誓約し制度化したことでようやく決着し、1961 年から多くの矛盾を孕んだ国民 皆保険制度がスタートした.この遅延事件それ自体が区市町村の財政力ないし被保険者の 保険料支払い能力の格差問題の深刻さを顕示し、最初からわが国の国民皆保険制度が抱え る大きな問題点を国民に警告する重大な出来事であった. (2)保険者機能の機能不全 被用者のための社会保険制度では、中小企業の被用者の場合は年金も医療も国が保険者、 大企業の被用者は、年金では主として企業単位に作られた厚生年金基金が国の厚生年金を 代行しつつプラスαについてのみ独自性を持ち、医療では健康保険組合が個々独立の保険 者となり、最盛時、いずれも約 1,800 前後の保険者が成立した.農業その他の自営業者を 中心とした地域保険の場合、年金保険は国が単一の保険者、医療保険は全国の区市町村が それぞれ独立に保険者となっている.したがって、医療保険では、市町村合併が次第に進 んできた今日でも被用者保険、地域保険併せて約5,000の保険者が分立している. 健全な社会保険制度の運営には、保険者がそれなりの保険者機能を発揮し、積立金の効 1,800 率的運用や、医療供給者への監視機能や交渉力を発揮する必要がある.しかし、約 あった厚生年金基金は、国の規制に制約された厚生年金代行部分に巨額の赤字を生じて、 近年その代行部分返上が加速化し、現金返還のための株売りが進行して株価引き下げ要因 とまで指摘された.医療保険の場合も、約 5,000 の保険者がありながら、政府管掌健康保 険者を除くすべての保険者が医療機関側との重要な交渉手段となりうる医療費支払いを中 央、地方の支払基金に集約され、保険者としての独立性は、被保険者の約 1/3 をカバーし、 かつ診療報酬を決定できる政府管掌健康保険者すなわち国にほぼ独占されている.供給者 側も、保険指定医の返上を切り札に国相手に診療報酬等を交渉すれば事足りるのである. 要するに見せかけの国民皆保険制度は、年金、医療ともいったい誰が、何を、どこまで いかに保障するのかという社会保障理念を欠いたものでしかなかったというべきである. 2.被用者保険と地域保険の「どんぶり勘定」化 国民皆保険目標達成後の社会保障目標は、一方で給付水準をヨーロッパ先進諸国水準に 近づけること、他方で分立した制度間の保険料負担格差は棚上げして、制度間給付格差を 縮小することにおかれた.そこでは分立する各制度の長期的な財源問題を真剣に検討する ことなく、次々と個々バラバラにその場しのぎの給付改善が図られた.1980 年代までに地 域保険は、低負担のまま、給付水準の被用者保険との公平目標から給付は準中福祉に近づ いた.1973 年は「福祉元年」といわれるが、国民年金給付額は 2.5 倍に増額されて夫婦5 万円年金となり、国民健康保険の給付率は70%に引き上げられ、老人医療費は、医療保険 の自己負担分おおむね30%を老人福祉法の老人福祉費が全額負担することで一挙に無料化

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された.医療保険全般には高額療養費制度が導入されて一部の無料化との均衡が図られた. 年金保険では、地域保険は低負担、準中福祉となり、負担格差を反映した被用者保険の 中負担、中福祉との給付格差が維持されたが、医療保険においては、一方で地域保険に次 第に高率の国庫負担金が注入されて給付率が被用者保険家族に近づけられるとともに、他 方で高齢者は、画期的な老人福祉費負担導入によって給付率が被用者保険本人を超えたか ら、高齢者の大多数が地域保険と前提すれば、地域保険の低負担、低福祉は低負担のまま 準中福祉と高福祉に達し、被用者保険の中負担、中福祉との給付格差は失われた. 地域保険の低負担のままの給付格差是正、準中福祉・高福祉化は、当然に、国民年金と 国民健康保険を絶えず財政危機状況に陥れることになった.それにもかかわらず次の大幅 改革に10数年を要したのは、いわば高度経済成長の趨勢がある程度復活し継続すれば、保 険料収入の自然増で問題は解消するという楽観論がどこかに残っていたからであろう.だ が、新たな経済環境がもたらす産業構造の変化、農業人口の減少、製造業に代わるサービ ス産業の拡大が地域保険の担い手を急減させることになったから、1980 年代初頭には地域 保険は年金も医療もいずれも破綻の危機に瀕し、抜本改革の喫緊の必要に迫られていた. しかし、地域保険の破綻救済のために行われた改革は、医療保険も年金保険もあいつい で「社会的連帯」による「相互扶助」の美名を掲げて被用者保険と地域保険を部分的に一 元化し、いわば「どんぶり勘定」化するものでしかなく、確固とした社会保障理念や長期 的視野に立った抜本改革はまったく視野に入れられなかったといえる. (1)医療保険制度+介護保険制度 老人福祉法による老人医療費無料化は、高齢者の医療アクセスを大幅に改善したから、 第 1に、とりわけ老人比率の高い地域保険に重い医療費負担をもたらし、第 2に、老人福 祉費の年度伸び率の大部分を老人医療費の30%の伸びが吸収することで、漸増主義予算の なかで老人福祉サービスの拡充に著しい停滞を生じた.1982 年老人保健法は、老人福祉法 を老人医療費 30 %負担から解放するとともに、原則70 歳以上の高齢者について地域保険 と被用者保険を段階的に一元化、どんぶり勘定化し、地域保険の直面する財政危機を救済 どんぶり するものであった.2年足らずで退職者医療制度が70歳未満の退職者についても を進めた.それと共に地域保険には社会保険としてとどまるには限界といえる % 勘定化 50 超の国庫負担金が、保険料の低負担はそのままに被用者保険との対比できわめて不公正に 注入された.被用者保険の場合、国庫負担金は組合管掌健康保険にはゼロ、政府管掌健康 保険に医療給付費の 13 %、老人保健拠出分の 16.4 %がやはり不公正に注入されている. どんぶり勘 社会的不公正を棚上げした原則70歳以上の高齢者についての老人保健制度の は、本来保険料納付世代内相互扶助の医療保険に「社会的連帯」の美辞麗句に乗せて 定化 「制度・世代間の相互扶助」を導入したもので、分立する各社会保険制度の社会保険原則 を著しく損なうものであった.当然予測されたこととして、世紀末には、高齢者医療費の 増大に対してどんぶり勘定そのものがもはや維持しがたくなった.そこで新たな救世主と して、高齢化社会の不安要因を解消し消費の増大や出生率のアップをもたらし、かつ医療 保険制度改革の先駆けになると喧伝して、40 歳以上を被保険者として新たな保険料負担を 求めながら、保険料収入の 1/2 をはじめから公費に依存した、社会保険制度としては異例 ずくめの「介護保険制度」が新たに導入された.それは老人介護の概念のもとに、老人福 祉、老人保健の大部分を吸収し、老人病院など老人医療の相当部分をカバーして医療保険

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の老人医療費負担を大幅に転嫁し、医療保険制度本体を救済するはずのものであった. 歳以上は要介護者として、 歳から 歳はちょうど介護に当たる年代としてそれぞ 65 40 64 れ被保険者とされた.しかし、欧米では要介護者は65歳以上の1/4 にとどまるといわれる 高齢者を敢えて強制保険対象とする介護保険制度の年齢区分は、介護と区分し難い高齢者 医療のなかで同じ社会的連帯をベースにより広い世代間のシェアを維持する老人保健制度 と明らかに矛盾しており、わが国の社会保障制度が理念も理論も欠落させたまま、場当た り的に組み立てられてきたことを立証している.もともと走りながら考えて5年後に見直 しをすればよいという介護保険の発想に確たる社会保障理念があったとは考えがたい. 介護保険制度は老人病院や老人保健施設の老人保健制度負担を介護保険負担に移管する ことで、介護保険料を上乗せ徴収する医療保険料負担は増えないと宣伝されたが、それで は納まらなかったばかりか、医療保険の負担減は大幅に期待を下回り、それもほとんど1、 2年で趨勢に復帰し、ほとんど医療保険制度の抜本改革問題に貢献しなかった.その間、 被用者保険の自己負担率が本人について初診料の定額負担のみから、まず医療費の10%、 やがて 20 %、そして間をおかずに30 %へ引き上げられた.また、老人保健制度も高齢者 の医療費無料化から転換して、しばらくは定額負担であったが、最近は上限付きながら所 得階層別に 10%ないし 20 %の自己負担に引き上げられている.こうした保険給付率の引 き下げに総報酬制を含めた保険料引き上げを加えれば、低負担、準中福祉・高福祉対中負 担、中福祉であった地域保険と被用者保険が、低負担、準中福祉・中福祉対準高負担、準 中福祉に転換してきたというべきであろう.それは当然、各世代の医療ケアへのアクセス 低下をもたらすに違いない.かつて長らく被用者保険被保険者本人は定額負担のみで医療 が提供され、それに老人医療費無料化が加わり、全体的に医療へのアクセスを重視してき た制度目標はまったく見失われている.不公平な地域保険への公費注入を背景に、保険料 負担格差との対応を忘れた保険給付率70%への不公正な低標準化をみる限り、社会保障理 念や社会的公正の観点はないがしろにされ、この四半世紀は「どんぶり勘定化」をはじめ、 問題の先送りにつぐ先送りに終始してきたというべきであろう. (2)年金保険制度 年金保険における被用者保険と地域保険のどんぶり勘定化は、1986 年にいっそう明瞭な 形で行われた.地域保険加入者の大宗を占めた農山漁村人口と都市自営業者の急速な相対 的減少によって、国民年金保険の成熟度が急激に高まり、財政破綻に瀕したことに対応し て、「社会的連帯と相互扶助」の美辞麗句のもと、国庫負担金 1/3 の国民年金集中を前提 に、国民年金の被保険者を確実に保険料を源泉徴収できる被用者とその家族にまで拡大し、 国民年金の財政基盤を一挙に全成人に拡大することに成功したからである. 医療保険の市町村別国民健康保険料徴収率が多くの場合に90%を割り込んでいることが 知られているが、厚生年金保険料に込みで源泉徴収されるのではない国民年金プロパーの 被保険者の場合、実に40%近い人々が何らかの形で納付していないといわれ、いわゆる年 金空洞化問題として近年きわめて深刻化している.原則積立方式だが限りなく賦課方式に 近づいた現行年金制度の「どんぶり勘定」では、その空洞化部分が厚生年金加入者の負担 にならないという保証はない.なぜそれほど国民年金の徴収率が低下し空洞化したかとい えば、第1に、低負担、低福祉に 1/3 の国庫負担金を投入して、低負担を維持しつつ準中 福祉へ底上げを図ったものの、2階建ての厚生年金との対比で、まだまだ国民年金給付だ

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けで高齢者生活を維持するには明らかに不足すること、第2に、何度も小出しの先送り改 正を積み重ねながら一向に安定した年金制度を確立できず、現在の確定給付方式のまま原 則積立方式が限りなく賦課方式に近づき、かつ少子高齢化がいっそう進むと想定すると、 比較的若い現役世代の場合、厚生年金を含めても、その生涯に払い込む保険料総額とその 平均余命に受け取るであろう年金給付総額の差がマイナスになるかもしれないという世代 間の不公正問題拡大が広く懸念されることから、とくに若年層が制度に強い不信感を抱く ようになったからだといえよう.興味深いのは、この世代間の公正問題を最初に強くアピ ールしたのはむしろ政府の側だった事実である.それは1986年の年金改革当時から、年金 給付額据え置きや引き下げを正当化する議論として盛んに活用された.平均して10%未満 の保険料負担しかしなかった退職者層が、現役世代の15%以上の保険料負担で平均給与の %近い給付を受けるのはいかにも世代間の公正に反するといった議論である. 60 3.どんぶり勘定の限界 以後の社会保障制度改革は、産業構造の急速な変貌で窮迫する地域保険 どんぶり勘定化 の財政危機、したがって国民皆保険体制の修復維持に力点がおかれ、なりふり構わなかっ たから、年金保険と医療保険双方の社会保険原則すなわち保険料負担と保険給付、世代間 扶助と世代内扶助、そして保険料負担と租税負担の関係をきわめて曖昧化・複雑化させた. 年金保険では、前述の通り、破綻に瀕した国民年金の老齢年金給付を、保険料に対する の国庫負担金を導入してまで新たに国民年金にも加入させた厚生年金加入者がシェアす 1/3 ることになっており、既に、国民年金の国庫負担分を、適当な財源の調達を条件に、画一 に 1/2 に引き上げることが前世紀末に決定されている.この国庫負担分引き上げの効果は、 第1に、厚生年金の保険料引き上げ幅を恒常的に圧縮することで世代間の不公正問題を緩 和でき、第2に、現行の1/3国庫負担よりも1/2国庫負担の方が国民年金加入の有利さをよ り強く若者にアピールでき、空洞化問題にある程度の緩和が見込まれるなどが期待されて いる.しかし、その財源は消費税率の引き上げ以外にあり得ないといわれながら、それと 関わって年金制度における世代内の分配とか公正の問題はまったく問われていない. 長期的には、国際的にもこれまでの確定給付型年金に代わって確定拠出型年金への移行 が模索されている.それは世代間の公正問題を解消する最善策だからである.だが、その 方向に制度転換するには、一部の現役世代に既退職者への確定給付と自らのための確定拠 出の二重の負担を負わせることになりかねない点が、重要なネックとして知られている. 年度「年次経済財政報告−改革なくして成長なしⅢ」(内閣府、 )は、世代会 2003 2003 計の手法を用いて生年世代ごとの受益と負担の関係を推定し、「現在、60 歳以上世代では. 約 6,500 万円の受益超となっているが、...将来世代(20 歳未満およびこれから生まれ てくる世代)においては約 5,200 万円の負担超となっている.このような結果を解釈する にあたっては、社会保障給付は自分自身が受け取る以外に、老親に対する私的扶養がそれ によって代替されるなどの間接的な受益もあり、逆に社会保障給付がなければその分私的 負担に置き換わっていくこと等に留意する必要がある.しかし、高齢化・人口減少が進行 するなかで現行制度を維持した場合には、生年世代によって受益と負担の程度が異なると いう世代間格差の問題を大きくし、社会保障制度を中心とする公的部門の持続可能性に問 題を生じさせることになる」(同書, pp.210-211)と警告している.これまで厚生労働省は、

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世代間の年金給付額と保険料負担について前回1999年の年金財政再計算では、本来そうい う計算はすべきでないがそれを敢えてすれば、1929年生まれの10.8 10.8( )倍に対し1999年 生まれは1.5 1.6( )倍(括弧内は国民年金の国庫負担率を1/2に引き上げた場合)で決して払 い過ぎの損にはならないと社会的連帯に安住していたが、2004 年改革で保険料率を 20 % へ上限固定し、新たにマクロ経済スライドや有限均衡方式 7)を導入した保険給付の調整を 通して、この不公正格差が1935年生まれの8.2倍に対して2005年生まれの2.3倍にまで改 善する試算数値を公表している 7).計算上の問題点はさておき、これらは不公正格差の大 きさを改めて白日の下にさらしたもので、不信感を解消するにはほど遠い.だが、ようや く打ち出された保険料率の上限設定、新たなスライド方式導入等による保険給付の段階的 引き下げは、先送りされた確定拠出方式への第一歩と見ることができよう. 賦課方式でも年金と違って保険料納付世代内相互扶助の医療保険では、被用者保険の若 者が、50 %以上の国庫負担金を受けた地域保険から 30 %租税負担の老人保健に分離され た高齢者の医療費に同一高齢化率を想定した拠出金をシェアすることで、医療保険固有の 保険原則を逸脱している.国民健康保険はもともと保険料支払い見込みのない被生活保護 者は保険から排除し、厳しく保険原則を強調していることを忘れてはならない. の限界は、年金保険制度以上に医療保険制度でいっそう喫緊の必要事とな どんぶり勘定 っている.大多数の医療保険者が赤字に苦しむなかで、本来の医療保険業務では黒字だが、 老人保健拠出金を加えると大幅赤字になる保険者が増大しているからである.この限界を 脱却する方策として、現行制度の重い負担となっている老人保健制度を廃止し、①保険者 の再編・統合、都道府県単位を軸とした保険運営を前提に、被用者保険と地域保険を年齢 構成や所得に着目して財政調整し全年齢をカバーしようとする考え方、②被用者保険と地 域保険から後期高齢者(75 歳以上)医療保険制度を独立させて高齢者にも応分の保険料負 担を求め、若年世代支援は規模を縮小して維持しようとする考え方が、たたき台として提 案されている 8).しかし、いずれも抜本改革としては不足するといわなければならない. 社会的連帯を唱ったどんぶり勘定化の最大の問題点は、第1に、地域保険加入者の所得 把握を正確に行おうとする努力を怠った行政の怠慢と、第2に、国庫負担金を、一方では 被保険者が全成人に広がった国民年金に所得の多寡を問わず画一主義で注入しながら、他 方では医療保険の地域保険に、その被保険者は全般に低所得者と前提して、1/2超の国庫負 担金を被用者保険との対比で不公平に注入している重大な社会的不公正にある. 4.選別的普遍主義による社会的公正の回復 EU Social わが国ほど社会保障政策から「貧困」とか「所得格差」問題、 の表現では 、といった論点が忘れ去られた国は先進諸国のなかでも珍しい.その現れが、一 Exclusion9) 方ではこれまで論じたように、社会保険で保険料と租税とを「どんぶり勘定」化し、被保 険者の所得の多寡に関わらず画一主義で、もしくは低負担の地域保険に特定して不公正に 100 租税を注入し、租税と保険料をまったく無原則かつ融通無碍に扱いながら、他方では、 %租税負担による生活保護制度をこれ以上減らしようがないところまで厳しく矮小化し、 社会保障制度の一環ではなくむしろ社会福祉の範疇に押し止めてきた事実である. ( のタイトルの前後に資料頁を作って、この順序でまとめて入れて下さい)4

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第1図 EU諸国の医療保障における租税と保険料(1998年ないし最新年) 第1表 年金における公私の比率(65-69歳退職男性対象、2000年当時) 第2表 スエーデンの年金制度改革の内容 第2図 イギリスの20世紀末の年金状況のイメージ 第3図 イギリスの2003年改革の2038年の状況のイメージ 第4図 スエーデンの年金改革のイメージ図 (1)EUとくにイギリス、スエーデンの動向

ヨーロッパ諸国では、この半世紀にPoverty―Relative Deprivation―Social Exclusionと いった貧困概念の変化があり、今日ではSocial Policy分野全域にわたるSocial Exclusionの 反対概念Social Inclusion が、EUに共通の社会保障政策理念となっている .9) 第1図に見るように、ヨーロッパ諸国でも、医療保障には大なり小なり保険料と租税を ミックスさせている.しかし、中間グループの場合の租税は所得再分配的に、医療関連の 介護などソーシャル・サービスに使われており、決してわが国のように誤訳された普遍主 義で所得階層のいかんを問わずばらまかれたりはしていない.同様に、年金保険に租税が 注入される場合も、戦後の画一主義に代わって選別的普遍主義の考え方で低所得者層に顕 著に傾斜配分されている(第2図以下参照、なおイメージ図なので原文のままとした). 第2図はイギリスの20世紀末の年金体系であるが、第3図のように2003年10月までに SP2 extra Savings 租税負担が低所得層に選別的普遍主義の考え方で(具体的には図の と )配分される方式に転換するほぼ 世紀後の姿が示されている.とくに年金給付へ credit 1/3

の所得補助、Income Supportに代わって、年金保険制度内のMinimum Income Guranteeとい う租税による最低保障年金が導入されている点に注目したい.第2表と第4図は、スエー デンでも1990年代をかけた超党派による論議の成果といわれる改革が、イギリスとほぼ同 様の方向で行われたことを示しており、とくに一律の国庫負担金が全面撤廃されて租税が 低所得層に選別的に配分される画期的改革が認められる.そこでは確定拠出年金で個人勘 定制が維持され、被保険者に毎年通知されることとされている.それはSocial Inclusion と いう社会保障理念からすれば、年金制度はもはや租税と保険料のミックスで、被保険者を パートナーとしてしか成り立たないことを示している.第1表では、イギリスでもスエー デンでもドイツやわが国と比べて年金所得に占める自助の比重が桁外れに高いことが注目 され、反面で改革への合意が得られやすかったことを示すものといえよう.

他方、イギリスの国営保健サービス(National Health Service=NHS)は、官僚組織化して サービスの向上に遅れをとってきたが、Tony Blair のリーダーシップのもとで、NHS を 302のPrimarey Care Trusts(= PCT) に分権化(devolution & delegation)し、NHS予算の75 %をこれらに委ねて、PCT が NHS 病院の専門医サービスを購入する分権的システムに改 PCT 革されている.それによって住民ははじめて病院を選択できるようになったが、逆に Accountability PCT Tony の地域 を維持するため、住民が を選ぶ権利は当面失われている. は、また、国営病院に (法人化方式)を導入し、金融市場から一定限 Blair foundation hospital

度内の融資を認めることとして、病院の近代化、医療設備刷新を促しているほか、わが国 とは逆に、大学の医学部定員の増員を図り、医療スタッフの充実を指向している11). (2)わが国における選別的普遍主義の選択

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先に引用した「年次経済財政報告−改革なくして成長なしⅢ」は、「第3章 高齢化・人 口減少の意味」「第3節 高齢化・人口減少に対応した公的部門の構築」の最後の第5項で 「社会保障制度の一体性と相互関連性を踏まえた改革」を論じており、「●社会保障制度 の総合的な改革の必要性」で次のようにのべている.「制度改革は、ともするとそれぞれ の分野ごとに別個に行われ、全体としての統一的なビジョンが失われがちである.しかし、 とくに社会保障制度は、年金、医療、介護、生活保護等の全体を通じて国民にセーフティ ネットを提供するものであり、諸制度ごとの縦割的な発想で考えられるべきものではない. 諸制度間の整合性を取りつつ、総合的に検討していく必要がある」(同書p.253) かつて社会福祉サービスは選別的であるという批判がわが国では一世を風靡したが、そ のアンチテーゼであった介護保険が、社会資源の有限性を前提する限り、結局は選別主義 を脱却できないことは明らかであり、選別主義のマネジメントと裁量を賢明に運用するこ とこそが求められている.念のために確認しておけば、社会福祉サービスの選別主義が権 利性を尊重し、サービス利用者の選択を最大限に保障しうるものであることは、ドイツを 除く先進諸国の大多数が21世紀にも医療と福祉の両者ないし後者の公的責任方式(経営の 民営化を含む)を堅持していることからも十分に推察できよう. わが国も、逆進的な消費税の税率アップを視野に入れる以上、国民健康保険への50%超 の、介護保険への 50%の、それらに追随しようとする国民年金への 50 %の国庫負担金は いかにも「貧困」や「所得格差」を忘れたばらまきというべきであり、スエーデンが租税 による基本年金を廃止した例にならって、むしろそれらを集中して高齢者の保健医療と介 護を一元的公営保健福祉サービス化することを提唱したい.社会保険は、一歩踏み出そう としている確定拠出方式では本質的には自己責任であり、租税による制度こそ幅広い「社 会的連帯の相互扶助」であり続けるというべきである.そこでは老人保健と介護保険を含 む老人病院と、老人保健施設、特別養護老人ホームの介護3施設の区分は一本化でき、一 方で、介護保険の定率負担化が特別養護老人ホーム希望者の著増を招いた反省にたって、 累進的自己負担金を復活させ、他方で、サービス全体の質的向上を目標に、上乗せ横出し を幅広く是認してよい.これまで診療報酬や措置費、介護料の限度額が、受給者の生活の 質をわが国の経済水準に見合わない低水準サービスに据え置いてきたからである. また、第1には要介護状態だけをサービス給付基準とすべきである点から、第2には要 介護者本人の自由なサービス選択を確保する上から、第3には、サービス供給者と利用者 の対等な関係を確保する上からも、サービスの現金給付化が望ましい.その場合、当然に、 自由なサービス選択の対象に家族介護も含められて然るべきである.また、育児、介護期 間の社会保険料は、前者は末子の義務教育修了まで、後者は要介護者の要介護認定の始期 から終わりまで、それぞれ保険料納付期間と見なすものとすれば、パート就労の認定緩和 と併せて、選別的普遍主義にとってわが国固有の問題点となり得る女性の見せかけの就労 率の北欧などとの差異は、かなり縮小するであろう。 医療保険と年金保険は共に被用者保険と地域保険を一元化し、保険者は医療保険は、 の分権化にならって都道府県、政令指定都市、年金保険は国とする.租税負担の高齢 NHS 者保健福祉サービスへの一極集中と年金保険2階部分の確定拠出方式への段階的転換と民 営化移行を前提に、保険料収納は被用者と自営業者ともに医療と年金を一本化し、所得比 例の保険料の上限は引き上げて単一基準でできるだけ正確に所得比例的に、租税、社会保

(10)

険料負担でいわれる国民負担率の上限50%の半額、25%超を上限目標に徴収する. 医療保険の給付率は、医療費の抑制を織り込んで入院、通院共80%とし、入院の場合の 日常生活費部分を別として、かつ高額医療費への一定の上限設定を前提に、20 %程度を自 己負担とする.ここでも生活の質の向上を前提に上乗せ横出しを認容する.保険者を都道 府県に集約して保険者機能が有効に機能する環境が整えられ、医師供給数を含む医療供給 規制が大幅に緩和され、出来高払いに対して包括払いの比率を増大し、カルテの開示が進 めば、医療の供給者‐利用者関係もより対等な利用者の方向へ大幅改善を期待できよう. 年金保険は、全体の保険料収入配分との兼ね合いで、厚生労働省が「持続可能な年金制 度の構築に向けて」(2003)で保険給付引き下げや積立金活用方式として、マクロ経済スラ イドや有限均衡方式への転換を示唆していることに歩調を合わせ、既存の積立金を含めて 長期的に給付を調整するが、給付計算の常数は所得に反比例して逓減させて世代内所得再 分配の意味合いを強め、なるべく多くの受給者の最低生活保障を目標とする. その上で、保険料支払いに事欠くか、保険給付ではなお生活費や医療費に不足する場合、 生活保護制度内に独立した年金保険加算給付、医療保険加算給付の2制度を新設し、それ ぞれごく寛容に幅広く受け止めるようにすることを提案したい. 世代内の公正を重視する選別的普遍主義は、多様化する生活形態への許容度を高め、こ れまで平均水準やモデル世帯にのみ関心を集中してきた社会保障制度に世代内公正の理念 強化を盛り込むことで、一面で、全体的給付水準ひいては総経費の抑制にも寄与し、他面 で、世代間の公正問題の緩和にも大きく貢献することになろう. : ― 注 本稿は筆者が夏休み中の7週間、放射線治療のため病院近くのホテルに宿泊を余儀なく 1. された機会にほぼ全体が執筆された.筆者独自の発想も多くの点を先行研究に負っている が、ここでは個別の社会保険制度ではなくそれらを一体化して捉えようとしたため、国内 では魅力的な先行研究に恵まれなかったことがあり、先行研究を個々に引用したり批判す ることはしなかった.見過ごしや失礼があれば筆者の非力としてお詫びしたい. 本論で公正、公平という用語を繰り返し用いているが、第1に、国民皆保険制度発足時、 2. 分立する制度に国、市町村が保険者となる制度が加わったが、すべての国民、住民を対象 とする租税を特定の国民、住民を対象とする制度に注入するのは公正、公平に反するとし て、租税収入による一般会計と保険料収入による特別会計を明確に区分した発想に立ち戻 って用いている.分立する制度をそのままに一部をどんぶり勘定化した場合もその区分は 崩れる.第2に、選別的普遍主義の発想からは、貧困や所得格差を無視した一律の国庫負 担注入は社会的公正に反する.まだ政府内の改革論議の段階で終わったが、高所得者の年 金から国庫負担分を削減しようといった議論に、その考えの端緒を認めることができる. ロンドン大学教授は、東京問題についてアドバイスするため2度にわ 3. William A. Robson たって日本に長期滞在し、2冊の報告書をまとめて日本への理解を深めた. については、講演者の講演メモを基にまとめられた会議要約サイト 4. Richard M. Titmuss を参照されたい.( 現在). http://www.lse.u-net.com/RMTConf.htm 2003/12/20 筆者の 録音から翻訳、アドリブ、言い直しを除いて とほとんど相違しない. 5. Digital 4.

1970, London, Allen & Unwin Titmuss Altruism

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(利他主義)による献血と市場経済で売買される売血を対照させて Altruism の優位を論じ た著作.しかし、会議では、Richard Titmuss ProfessorのJulian Le Grand が、今日の輸血は 相当部分アメリカからの輸入に依存しているとAltruismの限界を論じた. 専門用語は厚生労働省、 「持続可能な安心できる年金制度の構築に向けて」本文コ 7. 2003, ラムを参照されたい.倍率数値は、同書の試算結果に保険料上限20%固定、マクロ経済ス ライドや有限均衡方式による給付引き下げを加味して報道発表された数値.なお、参考文 献の西沢和彦(2003)も独自の推計数値を示している. 厚生労働省高齢者医療制度等改革推進本部事務局、 、「医療制度改革の課題と視 8. 2001 点」III.医療制度の現状と課題、・老人保健制度の現状と課題、ここでは4案が提示されて いるが、報道発表は、現実性から本稿の①突き抜け方式と②独立保険方式に集約されてい る.別の2案は、③年齢リスク構造調整方式と④一本化方式(医療保険制度一元化案). 「星野信也他 ( )」 を参照されたい. 9. 2003 pp.83-91

The NHS Plan Delivering the NHS Plan Building

10.Department of Health, 2000, , 以下 (2002 ,)

( )にいたる一連の文書を参照されたい.

on the Best: Choice, Responsiveness and Equity 2003

:― 参考文献

Gilbert, Neil, ed. ,( ) 2001,Targeting Social Benefits: International Perspectives & Trends, London: Transaction Publishers.

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Bristol: The Policy Press. pay for it,

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( ) .

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広井良典, 1997, 『医療保険改革の構想』日本経済新聞社 星野信也, 2000, 『選別的普遍主義の可能性』海声社

星野信也他、2003,「Social Exclusion, Social Inclusion and Primary Health Care(本文は和 文)」法政大学現代福祉学部編『現代福祉研究第3号』

A Revolution in Social Policy: Quasi-market reforms in the Le Grand, Julian, et.al.,(eds. , 1998,)

Bristol: The Policy Press. 1990s,

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西沢和彦, 2003, 『年金大改革―「先送り」はもう許されない』日本経済新聞社

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(ちなみに は の長女) policy. Bristol: The Policy Press. Ann Oakley Titmuss

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