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背景 カテーテル関連尿路感染症 (Catheter-associated urinary tract infection: CAUTI) は, 急性期病院における院内感染の 30% 以上を占め, 患者死亡率の増加につながるのみならず, 入院コストの増大や, 入院期間の延長の原因ともなる また, 採尿

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公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団

2010 年度前期(一般公募)研究

完了報告書

在宅ケアにおける膀胱留置カテーテルの

取り扱いと尿路感染症について

申請者・主任研究者 盛次浩司 岡山大学大学院保健学研究科 博士前期課程 〒700-0914 岡山県岡山市北区鹿田町 2-5-1 共同研究者 齋藤信也 岡山大学大学院保健学研究科 教授 2011/08/31

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【背景】

カテーテル関連尿路感染症(Catheter-associated urinary tract infection: CAUTI)は, 急性期病院における院内感染の30%以上を占め,患者死亡率の増加につながるのみならず, 入院コストの増大や,入院期間の延長の原因ともなる。また,採尿バッグを含めた導尿シ ステムが多剤耐性菌の温床となるなど,急性期病院において尿路感染は院内感染制上重要 な問題である。それに対し,カテーテル取り扱いのガイドラインの整備,カテーテル材質 の改善や抗菌化など,対応が進んできている。しかし一方で昨今の在院日数短縮化の流れ の中で急性期病院の後方に位置する非急性期のケア,特に在宅ケアにおけるCAUTI への対 応は遅れているといってよい。 在宅ケアにおける膀胱留置カテーテルの扱いにおいて,急性期の基準を遵守されている かどうかはこれまでほとんど報告がみられない。一方で急性期ケアと同じレベルの感染防 止対策が,果たして在宅ケアで妥当かどうかにも議論の余地がある。尿路感染症は生命に も関わる問題である一方,排尿という日常生活の基本と密接に関連していることから,こ の分野の研究知見の蓄積は在宅医療・在宅ケアにとって重要と考えられる。そこで今回, 在宅ケアにおける膀胱留置カテーテルの取り扱いの現状と,尿路感染症発生状況との関連 について知る目的で本研究を計画した。 【目的】 在宅ケアにおける膀胱留置カテーテルの取り扱いの現状を把握し,在宅ケアにおける望 ましい尿路カテーテル関連尿路感染症予防のあり方を探る。 【内容と方法】 対象:A 県下の訪問看護ステーション 106 か所に自記式アンケート用紙を送付し,郵送 にて回答を回収した。訪問看護ステーションの対照として,同じ県下の特別養護老人ホー ム146 施設,介護老人保健施設 77 施設,療養型病床 130 施設にも同様の調査を行った。 アンケート内容は,在宅における膀胱留置カテーテルの取り扱いの現状,特に,留置カ テーテル挿入の際の無菌操作の遵守率といった米国疾病対策センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)が発刊する「カテーテル関連尿路感染の予防のためのガ イドライン 2009(Guideline for Prevention of Catheter Associated Urinary Tract Infections, 2009)」にみられる各インディケーターの遵守状況について質問を行った。

回答結果は,記述統計的に分析するとともに,群間の比較は ANOVA(analysis of variance 分散分析法)にて行った。統計解析にはSPSS Ver13.0 を使用した。

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【調査項目】 (1) 施設背景 看護師の数,入所利用者の人数,膀胱留置カテーテル,おむつ,間欠導尿数 (2) カテーテル使用理由と材料 使用理由,カテーテルの材質,導尿システムの種類 (3) カテーテルの挿入/交換手技 手技者,ガイドラインのインディケーターの遵守率 (4) カテーテルの日常ケア 手技者,ガイドラインのインディケーターの遵守率,カテーテルの交換頻度, 採尿バッグの交換頻度,バッグの切り離し,カテーテル固定 (5) カテーテル関連尿路感染の予防策 ガイドラインの各インディケーターの必要性について, 教育の実施状況と必要性について 【倫理的配慮】 岡山大学大学院保健学研究科看護学分野倫理審査委員会の承認(審査整理番号:M10-08 (平成23 年 5 月 25 日承認))を得て実施した。 【結果】 施設類型が無記入の3 施設を除いた 175 施設からの回答を有効回答数とした。 有効回答数と有効回答率は,訪問看護ステーション48 施設(45.3%),特別養護老人ホーム 59 施設(40.4%),介護老人保健施設 24 施設(31.2%),療養型病床 44 施設(33.8%)で あった。

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(1)施設背景 ①看護師の数 対象とした訪問看護ステーションは看護師数は平均5.4人であり,単純比較ではあるが,療 養型病床の3分の1,特別養護老人ホームとほぼ同じであった。 施設累計別看護師数の分布 5.4 4.6 9.0 13.9 0 5 10 15 訪問ST 特養 老健 療養病床

1施設あたりの看護師数

訪 問S T 老 健 特 養 療 養 病 床 施 設 の 類 型 50 40 30 20 10 0 看護師の数 30 25 20 15 10 5 0 度 数 30 25 20 15 10 5 0 30 25 20 15 10 5 0 30 25 20 15 10 5 0

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②カテーテル使用利用者比率 訪問看護ステーション利用者では,10.5%の患者が膀胱留置カテーテルを使用していた。 これは,特別養護老人ホームや介護老人保健施設の 3 倍程度であり,一方,療養病床の半 分位であった。 1施設あたりの カテーテル使用利用者比率 訪問ST 10.5% 特養 3.5% 老健 3.8% 療養病床 24.6% 10.5% 3.5% 3.8% 24.6% 0% 10% 20% 30% 訪問ST 特養 老健 療養病床

カテーテル使用利用者比率

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③おむつ(パッド)使用利用者比率 訪問看護ステーション利用者のうち,おむつ使用者の比率は 53.3%であり,他の施設ケア のそれと比べて低かった。 1施設あたりの おむつ使用利用者比率 訪問ST 53.3% 特養 66.5% 老健 82.8% 療養病床 85.2% 53.3% 66.5% 82.8% 85.2% 0% 30% 60% 90% 訪問ST 特養 老健 療養病床

おむつ使用利用者比率

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④間欠導尿使用利用者比率 各施設の入所者全体に占める間欠導尿使用利用者の比率をみたところ,訪問看護ステー ションでもっとも高く3.2%であり,施設ケアではほとんど見られなかった。 1施設あたりの 間欠導尿使用利用者比率 訪問ST 3.2% 特養 0.3% 老健 0.2% 療養病床 0.5% 3.2% 0.3% 0.2% 0.5% 0% 1% 2% 3% 4% 訪問ST 特養 老健 療養病床

間欠導尿使用利用者比率

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⑤施設別のカテーテル使用利用者比率,おむつ使用利用者比率,間欠導尿使用利用者比率 を表にまとめた。 1施設あたりの カテーテル使用利用者比率 1施設あたりの おむつ使用利用者比率 1施設あたりの 間欠導尿使用利用者比率 訪問ST 10.5% 53.3% 3.2% 特養 3.5% 66.5% 0.3% 老健 3.8% 82.8% 0.2% 療養病床 24.6% 85.2% 0.5% 24.6% 3.8% 3.5% 10.5% 85.2% 82.8% 66.5% 53.3% 0.5% 0.2% 0.3% 3.2% 0% 50% 100% 療養病床 老健 特養 訪問ST 間欠導尿使用 利用者比率 おむつ使用 利用者比率 カテーテル使 用利用者比率

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(2)カテーテル使用理由と材料 ①カテーテル使用理由 訪問看護ステーションでは,「尿閉,神経因性膀胱」(23.4%)がもっとも高く,次いで「介 護者の負担軽減」(19.5%),「尿失禁ケア」(15.6%),「褥創治療」(11.7%),「終末期ケア」 (10.4%)であった。 「介護者の負担軽減」は他の施設ケアに比較して高く,「褥創治療」では他の施設ケアを 比較して低かった。 ②カテーテルの材料 訪問看護ステーションでは,シリコン素材のカテーテルの比率が 70.6%であった。ラテ ックス素材の比率は,療養型病床や介護老人保健施設とほぼ同じであった。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 訪問看護ステーション 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 療養型病床 20.0% 6.5% 16.0% 19.6% 77.8% 87.0% 76.0% 70.6% 2.2% 6.5% 8.0% 9.8% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST ラテックス シリコン 不明

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③導尿システム 訪問看護ステーションでは,カテーテルと採尿バッグが一体化された閉鎖式導尿システ ムの使用割合がもっとも高く,39.3%であり,療養型病床とほぼ同じであった。 (3)カテーテルの挿入/交換 ①手技者 訪問看護ステーションでは,医師が 30%,看護師が 63.3%,利用者本人またはその家族 が6.7%であった。医師が挿入する比率は,他の施設ケアより高く,これは,療養型病床に おいて医師がまったく交換を行っていないことと好対照をなしていた。また,利用者本人 またはその家族が挿入する比率は,その他の施設ではみられなかった。 34.8% 28.3% 20.8% 39.3% 65.2% 71.7% 79.2% 60.7% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST カテーテルと バッグが一体化 カテーテルと バッグは別々 2.3% 19.3% 16.7% 30.0% 97.7% 80.7% 83.3% 63.3% 6.7% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST 医師 看護師 利用者本人 または家族

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②カテーテル挿入/交換でのガイドラインのインディケーター実施状況 5 段階評価にて実施状況について回答を得た(5=実施,3=どちらともいえない,1=実 施していない)。 訪問看護ステーションでは「手指消毒」「無菌操作」「挿入時に尿道口洗浄に消毒薬」が 同率でもっとも高く,次いで「教育を受けた人が挿入」であった。「滅菌手袋の着用」が低 くなっているが,その他の施設ケアとの差はほとんどみられなかった。 訪問ST 特養 老健 療養病床 手指消毒 4.5 4.7 4.5 4.6 無菌操作 4.5 4.4 4.8 4.8 滅菌手袋の着用 3.0 2.3 2.5 2.4 未滅菌手袋の着用 3.8 4.3 4.2 3.9 挿入時に尿道口洗浄 に消毒薬 4.5 4.7 5.0 4.7 最小径のカテーテル 3.8 4.0 4.2 4.4 閉鎖式セット 3.3 3.1 3.1 3.2 教育を受けた人が挿 入 4.3 4.9 4.9 4.8 0 1 2 3 4 5 訪問看護ステーション 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 療養型病床

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(4)カテーテルの日常ケア ①手技者 訪問看護ステーションでは,「利用者本人またはその家族」が53.1%ともっとも高かった。 その他の施設ケアでは,特別養護老人ホームでわずかにみられたが,介護老人保健施設, 療養型病床ではみられなかった。また,医師がおこなっている比率は,訪問看護ステーシ ョンではみられなかったが,特別養護老人ホームと介護老人保健施設でわずかにみられた。 2.0% 4.2% 97.7% 89.8% 95.8% 45.3% 6.1% 53.1% 2.3% 2.0% 1.6% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST 医師 看護師 利用者本人ま たは家族 その他

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②日常のケアでのガイドラインのインディケーター実施状況 5 段階評価にて実施状況について回答を得た(5=実施,3=どちらともいえない,1=実 施していない)。 訪問看護ステーションでは,「バッグを膀胱より常に低い位置にする」がもっとも高い実施 状況であった。一方で「滅菌手袋の着用」が低い値となった。これらは,その他の施設ケ アとほぼ同じ傾向であった。 訪問ST 特養 老健 療養病床 手指消毒 3.88 4.78 4.80 4.37 滅菌手袋の着用 1.85 1.65 1.70 1.58 未滅菌手袋の着用 3.79 4.65 4.40 4.50 バッグは膀胱より低く 4.82 4.88 4.80 4.84 カテーテルの固定 4.24 4.15 4.10 4.18 回路の閉鎖を保つ 4.41 4.63 4.25 4.58 尿採取はポートを使う 2.94 2.95 2.30 3.53 集尿カップは患者毎に 取り換える 4.26 3.48 3.65 3.37 外尿道口の日常的衛 生 4.56 4.75 4.75 4.66 バッグを床につけない 4.44 4.55 4.80 4.79 0 1 2 3 4 5 訪問看護ステーション 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 療養型病床

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③カテーテルの交換頻度 訪問看護ステーションでは,41.5%が 2 週間,54.7%が 1 か月での交換であった。その他 の施設ケアでは,療養型病床が1 か月での交換がわずかに多かった。 ②採尿バッグの交換頻度 訪問看護ステーションでは,「カテーテルと一緒に交換」する比率が78.9%であった。そ の他の施設ケアとほぼ同じであった。 35.7% 41.4% 45.5% 41.5% 59.5% 50.0% 45.5% 54.7% 4.8% 6.9% 9.1% 3.8% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST 2週間 1か月 1か月以上 機能的な問題のある場 合 73.1% 76.9% 70.0% 78.9% 25.0% 21.5% 30.0% 19.3% 1.9% 1.5% 1.8% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST カテーテルと一緒 に交換 汚れたときに交換 破れたないかぎり 使用を続ける 1か月以上

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③採尿バッグの切り離し 訪問看護ステーションでは,「採尿バッグとカテーテルを切離さすことがない」の比率が 55.1%であった。これは,療養型病床とほぼ同じで,特別養護老人ホーム,介護老人保健施 設より2 倍程であった。 ④カテーテルの固定 訪問看護ステーションでは,33.3%が「テープで固定」であった。その他の施設ケアとほ ぼ同じであった。 49.0% 30.2% 29.6% 55.1% 27.5% 42.9% 37.0% 16.3% 21.6% 25.4% 33.3% 28.6% 2.0% 1.6% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST 切り離すことなし 入浴やリハビリ時 バッグの交換の際 その他 32.7% 29.1% 23.1% 33.3% 51.0% 50.9% 46.2% 30.0% 16.3% 18.2% 30.8% 33.3% 1.8% 3.3% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST テープで固定 固定はしない 下着などのゴムを利用 専用の固定器具

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(5)カテーテル関連尿路感染の予防策 ①ガイドラインの各インディケーターの必要性について, 挿入/交換の手技,日常ケアでの各ガイドラインのインディケーターの必要性について尋 ねた。18 項目のインディケーターについて必要と思われる項目について 1 位∼5 位までの 順位をつけてもらった。1 位∼5 位までに選択された項目を順位に関係なく 1 ポイントとし てカウントし合計ポイントの多い順に並べ,実施を順守している項目と比較した。 訪問看護ステーションでは,必要性の順位が高いが,遵守率が低いのは,「閉鎖式セット の使用」であった。 必要性が高い と答えた順位 遵守率が高い 順からの順位 バッグを膀胱より低い位置 1 1 外尿道口の日常的衛生 2 2 挿入時の無菌操作 3 3 閉鎖式セット 4 15 カテーテルとバッグの閉鎖を保つ 5 4 尿道口洗浄に消毒薬 6 7 挿入時の手指消毒 7 5 教育を受けた人が挿入 8 8 バッグを床につけない 9 6 日常ケアの手指消毒 10 11 カテーテル固定 11 9 最小径のカテーテル 12 12 挿入時の未滅菌手袋の着用 13 13 挿入時の滅菌手袋の着用 14 17 日常ケアで未滅菌手袋の着用 15 14 尿採取はポートを使う 16 16 日常ケアで滅菌手袋の着用 17 18 集尿カップは取り換える 18 10

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②スタッフへの膀胱留置カテーテルについての勉強会の実施状況 訪問看護ステーションでは,実施しているのは 24.4%であった。これは特別養護老人ホ ームの約半分であった。 ③勉強会の内容 勉強会の内容についての比率では「尿路感染や合併症について」がもっとも多かった。 カテーテルの抜去にむけた評価,カテーテル以外の代替方法については,低い比率であっ た。 32.6% 43.4% 33.3% 24.4% 67.4% 56.6% 66.7% 75.6% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST はい いいえ 0% 10% 20% 30% 40% 訪問看護ステーション 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 療養型病床

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④カテーテルを抜去することの判断 訪問看護ステーションでは,2割程度は判断がなされていないとの答えであった。 この比率は,特別養護老人ホームとほぼ同じあった。 ⑤カテーテル抜去の判断基準 訪問看護ステーションでは,看護師のアセスメント,医師のアセスメントに次いで,利 用者本人の希望,利用者家族の希望であった。その他の施設では,利用者本人や家族の希 望はほとんどみられなかった。(複数回答のため,合計が100%とならない) ⑥教育の実施状況と必要性について 100.0% 77.6% 95.2% 80.4% 0.0% 22.4% 4.8% 19.6% 0% 50% 100% 療養病床 特養 老健 訪問ST はい いいえ 0% 30% 60% 90% 訪問看護ステーション 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 療養型病床

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4 段階評価(4=とても必要,3=やや必要,2=どちらかというと必要でない,1=必要でな い)にて質問した。訪問看護ステーションでは,利用者本人またはその家族への教育の必 要性が高かった。 訪問ST 特養 老健 療養病床 スタッフ教育の必要性 3.4 3.5 3.3 3.4 利用者本人または家 族の教育の必要性 3.5 2.8 2.8 3.1 カテーテル関連尿路 感染対策の必要性 3.8 3.7 3.7 3.8 【考察】 急性期病院でおこなわれている尿路感染予防のための対策が,その後方に位置する非急 性期ケアにそのまま適応できるとは限らない。特に,非急性期ケアの中でも,在宅ケアは, 患者さんの生活領域の中で行うケアであり,他の施設ケア(療養型病床,老人保健施設, 特別養護老人ホーム)とも相当な違いがある。 今回の調査では,膀胱カテーテル使用患者の比率は,在宅ケアで 10.5%であり,療養病 床の約半分ではあるものの,老健や特養の 3 倍の多さであった。これは老健や特養よりも むしろ在宅ケアで医療ニーズの高い患者をケアしている可能性がある。一方でおむつの使 用患者比率は施設ケアに比べて低く,カテーテル使用理由で「介護者の負担軽減」が最も 高いことを考えると,一部患者では,純粋な医学目的よりも,介護力のことを考慮して膀 胱カテーテルが留置されている可能性も示唆された1,2,3。 在宅ケアでは観察の頻度が週に1,2 回に限られること,また医師とは別のペースで訪問 することが多いことから,カテーテル交換を医師が行っている率が他の施設ケアに比べて 高くなっていた。またカテーテル抜去の判断のうち 20%程度は行っていない訪問看護ステ ーションがあることから,これは医師が独自に判断しているものと思われた。利用者本人 や家族による交換があることも在宅ケアの特色であるが,このように医療ニーズによる留 置と介護負担軽減のための留置の両者が混在している可能性が示唆された。

CAUTI(Catheter-associated urinary tract infection:膀胱カテーテル関連尿路感染症) 防止のためのガイドライン4遵守については,在宅ケアと他の施設ケアで大きな違いはなく, 在宅のセッティングだからといって,レベルを下げた感染防御対策が行われているわけで はないことが明らかとなった。カテーテル交換の頻度も施設ケアと比べて違いはみられな かった5,6,7。また,必要性と遵守率の乖離が激しかった(必要性が高いものの,遵守率が低 い)項目として閉鎖式セットの使用が挙げられた 8,9。これはともに在宅ケアにあたる診療 所医師の姿勢や,医療器具の選定における訪問看護師の関わりが施設ケアに比べて低いこ

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とが関係していると思われた。閉鎖式セットの使用など,コストはともかく,器具の工夫 でCAUTI 発生率を低減できるなら,検討すべきことと考えられた。 一方,日常ケアについては,他の施設ケアでは全く見られない家族によるケアが半数を 超えるなど,在宅ケアの特徴が見られた。またカテーテル抜去の判断にも本人や家族の希 望が相当反映されるところも在宅の特色であった。このように医療者側の判断の比率の非 常に高い施設ケアと異なり,患者や家族の判断も考慮しながら行われる排尿のケアという のが在宅ケアに特異的なものであり,それを踏まえたCAUTI 防止対策が必要と思われた。 施設ケアの看護師と異なり,その人的余裕の程度に依存し,感染防止教育の機会が少ない ことが在宅ケアに従事する看護師の悩みと思われるが,一方で患者や家族への教育のニー ズが高いのも在宅ケアの特徴であり,教育に当たる側はそのニーズに応えるとともに,訪 問看護師の勤務形態に合わせた教育機会の提供方法を工夫する必要があると思われた10,-14 今回の調査を行う前は,在宅ケアではそのリソースに応じて,他の施設ケアよりはやや レベルの低いCAUTI 防止対策が取られているのではないかとの予測もあったが,そうでは ないことが明らかとなった。一方で介護者や利用者の視点を重視する在宅ケアならではの 排尿ケアの実態も分かったことから,今後は,その実情に応じた,排尿ケアの在り方と尿 路感染防止の指標が作成されることが期待される。さらには在宅ケアにフィットしたカテ ーテルの材質や構造の改善,また家族や患者本人に対する感染防止教育などを含んだ総合 的な対策が必要と考えられた。 この研究は,「公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団」の助成によっておこなわれた。 参考文献

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