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Microsoft Word - (HP)Industrie 4 0について.doc

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1 ドイツの「Industrie 4.0」戦略について 平成26年10月1日 国際社会経済研究所 草桶 左信 0.用語1 (1)本レポートが扱う事象2を「Industrie 4.0」(第4次産業革命)と表現するドイ ツの用語法は、18世紀終盤の水力や蒸気を動力とした機械的な製造技術の登場による 第1次、動力源としての電気と分業に基づく大量生産の開始による第2次、電子・IT 技術を用いた製造の一層の自動化を実現した第3次に続く産業革命という考えに基づ くものである。 (2)この事象に関しては、各国を通じて必ずしも同一の用語が用いられているわけで はない。特に英語圏や国際機関としてのEUでは、同じ事象を Internet of Things や 「第3次産業革命」という用語で表すことが普通である。「第3次」革命と表現される 理由は、上記(1)のドイツ式の区分でいう第2次革命が第1次革命の一部とみなされ ていること、あるいは、同じくドイツ式区分の第3次革命が第1次、第2次とは次元の 異なる独自の革命として続き番号を用いず別に扱われることである。 (3)また、欧州、中国、米国においては、スマート・マニュファクチュアリング・シ ステムをもたらすための生産のデジタル・ネットワーク化が「Smart Production」、 「Smart manufacturing」、「Smart Factory」とよばれている。そして、製造環境におけ る広範な進化の傾向をより包括的に表現する用語としては、「Advanced Manufacturing」 が用いられることが多いようである。 1.経緯 (1)ドイツ政府は、2006年、連邦各省・機関の実施する活動や支援措置をプール し、統合的な技術・イノベーション政策を実施するべく、「ハイテク戦略」を決定した3 この戦略は随時改訂されてきたが、最新時点では、2014年9月3日の閣議において、 「新ハイテク戦略」(Die neue Hightech-Strategie Innovationen fuer Deutschland) 1 用語に関する記述(0.(1)(2)(3))は、ドイツの Industrie 4.0 作業グループの最 終報告書「戦略的イニシアティブIndustrie 4.0 を実現するための勧告」の中の該当部分(同 勧告p67)に基づくものである。 2 この事象の内容については、本レポートの「1.経緯」や「2.コンセプトの内容」を参 照のこと。 3 ドイツ経済省のホームページ参照。 http://bmwi.de/EN/Topics/Technology/hightech-strategy,did=197896.hmtl

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2 が決定されている4 (2)現在、ドイツ政府や産業界が推進している Industrie 4.0 は、2010年に閣議 決定が行われた「ハイテク戦略2020」を契機としている5。この「ハイテク戦略2 020」を具体化するため、2012年に決定された10の「未来プロジェクト」の一 つとして Industrie 4.0 は進められているのである6。なお、10のプロジェクトは、「気 候・エネルギー」「保健」「運輸」「安全」「情報通信」の5分野から選ばれており、Industrie 4.0 は情報通信分野のプロジェクトに分類されている7。なお、「新ハイテク戦略」にお いても、Industire 4.0 は「デジタル経済及び社会」の中心的将来課題として推進して いく旨が記されている8 (3)「(新)ハイテク戦略」及び「未来プロジェクト」は、上記のとおり、ドイツ連邦 政府全体の推進する政策であるが、主担当省として、教育研究省と経済・エネルギー省 が指名されている。Industrie 4.0 に対するドイツ政府の支援としては、教育研究省に よる資金的支援が重要な役割を担う。上記10の「未来プロジェクト」に対し、201 2年から2015年の間に合計で84億ユーロの助成が予定されている9。また、20 14年9月3日の「新ハイテク戦略」の閣議決定に際して、ドイツ政府は2014年だ けで110億ユーロを投資することとしたいとしている10 (4)経済省も Industrie 4.0 を産業政策の重要課題の一つに掲げている。すなわち、 Industrie 4.0 は、原材料・天然資源の制約、環境・エコロジー、デジタル化・知的社 会の構築、人口動態変化とともに、現代産業政策の直面する課題・トレンドと位置づけ られているのである11。また、経済省は、Industrie 4.0 の主要な要素である Internet of 4 ドイツ教育科学省のホームページ参照(www.bmbf.de/press/3650.php)。また、新ハイテ ク戦略も同ホームページ(www.bmbf.de/pub/HTS_Broschure.pdf)よりダウンロードでき る。

5 2006年に決定された最初の「ハイテク戦略」には、Internet der Dinge(Internet of

Things)が紹介されているが、現在の Industrie 4.0 やCPS、スマートファクトリーとい った概念にまでは発展されていない。この最初の「ハイテク戦略」については、ドイツ教 育研究省のウェブサイト(www.bmbf.de)で入手できる。 6 日本貿易振興機構(ジェトロ)、『ドイツ Industrie 4.0:製造業に革新を』(ジェトロセ ンサー2013年9月号)、同『ドイツ「Industrie 4.0」とEUにおける先端製造技術の取 り組みに関する動向』(2014年6月)。ジェトロのウェブサイト(www.jetro.go.jp)参 照。

7 「ハイテク戦略」の経過報告である、Die Bundesregierung,”Wohlstand durch Forschung”

を参照。ドイツ教育研究省のウェブサイトで入手できる。

8 “Die neue Hightech-Strategie”, p16。

9 前掲(注7)ジェトロ、『ドイツ Industrie 4.0:製造業に革新を』参照。

10 2014年9月3日付教育科学省プレスリリース(”Bundeskabinett beschliesst neue

Hightech-Strategie”)。なお、この110億ユーロは新ハイテク戦略に盛り込まれた多くの プロジェクトに対する投資額の総額であって、Industrie 4.0 に対するものだけでないこと に注意。

11 経済省, “Herausforderungen fuer eine modern Industriepolitik”

(3)

3

Things や Internet of Services を、ドイツ政府のICT戦略である「Digital Germany 2015」の一環として支援しており12、最近の具体的な政策として、2014年6月、技 術支援プログラム「AUTONOMIK」を発足させている13。さらに、経済省、内務省、交通・ デ ジ タ ル イ ン フ ラ ス ト ラ ク チ ャ ー 省 が 合 同 で 検 討 し て き た 「 Digitale Agenda 2014-2017」が2014年8月20日に閣議決定され、その中で、デジタル化の有する イノベーションのポテンシャルを活用する試みの一つとして Industrie 4.0 を進めるべ きことが記されている14 (5)ただし、Industrie 4.0 は、連邦政府の政策文書に盛り込まれているとはいえ、 あくまで民間企業の主導により進められるものである。実際にも、関心を有する民間企 業が連携し政府や学界の協力を得ながら研究等を行っている。2012年1月に結成さ れた Industrie 4.0 作業グループは、Robert Bosch、Wittenstein、Siemens、SAP 等の 企業、ドイツ工学アカデミー、複数の大学や工科大学など学界、電子工業や機械工業の 業界団体の関係者で構成されている。この作業グループは、2012年10月に行った Industrie 4.0 実現のための勧告をさらに発展させるべく作業を続け、2013年4月、 「戦略的イニシアティブ Indutrie 4.0 実施のための勧告(以下、「勧告」と記す。)」と 題した最終報告書15を発表している。そして、同月、連邦情報技術・通信・ニューメデ ィア連盟(BITKOM)、ドイツ機械工業連盟(VDMA)、ドイツ電気電子工業連盟(ZVEI)に より、関心企業やこれらの業界団体等を構成員とし、執行委員会や常設事務局を備えた Industrie 4.0 プラットフォームが立ち上げられ、Industrie 4.0 の推進と業種横断的 アプローチの確保を目的とした活動を行っている16。会員企業にはドイツの錚々たる企 業が名前を連ねており、ドイツ産業界の力を結集した戦略との観を呈している17。ドイ ツ企業が強い競争力を誇る産業機械、自動車といった分野において、ソフトウェアやI T技術を足がかりに米国企業によりドイツ企業の牙城が奪われるのではないかとの危 機感が Industrie 4.0 推進の強い動機になっているのではないだろうか18

12 “ICT Strategy of the German Federal Government: Digital Germany

2015”(p.20~p.21)。独経済省ウェブサイト(www.bmwi.de)参照

13 経済省, “AUTONOMIK Innovation Days – Wegbereiter fuer Industrie 4.0”

(www/bmwi.de/DE/Service/veranstaltungen,did=634348.html)

14 この「Digitale Agenda 2014-2017」は経済省のホープページでダウンロードできる

(www.bmwi.de/BMWi/Redaktion/PDF/Publikationen/digitale-agenda-2014-2017)。

15 “Securing the future of German manufacturing industry Recommendations for

implementing the strategic initiative INDUSTRIE 4.0 Final report of the Industrie 4.0 Working Group” April 2014

(www.platform-i40.de/sites/default/files/Report_Industrie%204.0_engl_1.pdf)

16 本プラットフォームのウェブサイト(www.platform-i40.de)参照。

17 外国企業の関係企業としては、ヒューレット・パッカード、IBM、ABBの3社のド

イツ法人がプラットフォームのかじ取りをする中核的なサークルのメンバーになっている。 注11のウェブサイト参照。

18 2014年9月5日付 Financial Times 記事(Chris Bryant, "Germany plays IT

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4 2.コンセプトの内容

(1)上記「0.用語」にも記したとおり、Industrie 4.0(第4次産業革命)は、電 子技術とITにより生産の一層の自動化を実現させた第3次産業革命に続く革命であ る。ちなみに、類似のコンセプトを推進している米国の産学官のグループは Smart Manufacturing Leadership Coalition と称している19。 上記「1.経緯」で紹介した 作業グループが2013年4月に発表した「勧告」も随所に smart factory やCFS (Cyber-Physical Systems)という用語を用いており、米国のコンセプトと重なってい る部分が多いと思われる。

(2)以下では、主として「勧告」の Executive Summary20を概訳することによって、 コンセプトの概要を示すこととする。

①原理:Internet of Things と Internet of Services を製造事業に採り入れることで 第4次産業革命がもたらされる。Industire 4.0 において、企業は、機械、(原材料、 部品、最終製品の)貯蔵・在庫システム、生産施設を Cyber-Physical System(CPS) の形に統合したグローバル・ネットワークを構築する。CPS は、相互に情報をやりとり し、動作させ、そして、制御し合うスマート・マシーン、貯蔵システム、生産施設から 構成される。これにより、製造、エンジニアリング、原材料の利用、サプライチェーン 管理、ライフサイクル管理といった各プロセスの抜本的なグレードアップがもたらされ る。 ②システム:こうした技術、施設を通じて、(ⅰ)工場内や企業内で、各ビジネス・プ ロセスが垂直的にネットワーク化されるとともに、(ⅱ)それらが広範なバリューネッ トワークと水平的に連結している。これらはリアル・タイムでコ制御される。そして、 (ⅲ)バリューチェーン全体にわたって包括的なエンジニアリング活動が行われる。 ③製品面、ビジネスモデル面でのポテンシャル:ここから巨大なポテンシャルが期待さ れる。上記②の仕組みを用いたプロセスや物の組み合わせは無数にあることから、たと えば、顧客の極めて個別的な要請に応じた製品を1回限りで、しかも、低コストで効率 的に製造することができる。また、最終段階での仕様の変更にも対応できるし、部品供 給の乱れや不具合にも柔軟に対応することができる。 ④社会的な意義:資源投入の面からの生産性や効率性が向上する。また、日常的な作業 はシステムにまかせ、人は創造的な仕事に集中できることから、生産年齢人口の減少な どの人口動態の変化に適切に対応できることになる。さらに、柔軟な勤務条件の実現を 通じて、ワークライフバランスの増進にも寄与する。 しては、もの(たとえば、自動車や機械)やものの製造に経験を有する者の方がITやソ フトウェア企業よりも優位に立っているとのドイツ企業の声が紹介されている。 19 https://smart-process-manufacturing.ucla.edu/ 参照。 20 「勧告」p.4~p.7

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5 ⑤二重戦略21:伝統的に高品質の産業機械を製造する国であると同時に、高度なICT 技術を有する国として、(ⅰ)産業機械に関する優位を維持するべく、ドイツ企業が製 造する産業機械にICT技術を取り入れることにより、個々のスマート製造技術・機器 のリーディング・サプライヤーになる、(ⅱ)ドイツ国内の様々な製造業にCPSが導 入されることにより、ドイツが Industrie 4.0 のリーディング・マーケットになる、と いう「二重戦略」を追究する。つまり、Industrie 4.0、CPS、スマート工場に関し、 ドイツはそのサプライヤーとしてもマーケットとしても世界の最先端に立つことを目 指す。 ⑥3つの統合:CPSを用いて、Industrie 4.0 を構成する3つの統合を実施すること が目標である。すなわち、(ⅰ)バリューネットワークを通じた水平的統合、(ⅱ)すべ てのバリューチェーンを通じたエンジニアリングの統合、(ⅲ)製造システムの垂直的 統合を行うことを目指す。 ⑦研究開発とインフラ:Industrie 4.0 を進めるには、上記⑥の3つの統合に関する研 究開発と産業上及び産業政策上の決定の双方が必要である。具体的には、次の8つの重 要分野でのアクションが必要である。 (ⅰ)標準化と基本参照システムの設計 Industrie 4.0 がもたらすバリューネットワークの統合は複数の企業をまたぐもの であることから、これが欠かせない。 (ⅱ)複雑なシステムのマネージメント 複雑なシステムのマネージメントをどう計画しどう説明するかに関するモデルの 開発である。 (ⅲ)包括的なブロードバンド通信インフラ ドイツ国内及びドイツとパートナー諸国の間でのブロードバンドのインターネッ ト通信インフラの整備が必要である。 (ⅳ)安全とセキュリティ 人や周囲に対して危険を生じさせないこと、濫用や不法アクセスから防御されてい ることが重要である22。このため、システムの設計、工夫されたID、人員の訓練な どの面での安全とセキュリティ確保のための措置が必要である。 (ⅴ)職場の組織とデザイン スマート工場では仕事の内容、プロセス、環境が大きく変化する。Industrie 4.0

21 この部分は、Executive summary の該当部分(p.6)のほか、「勧告」第3省(”The dual

strategy” p.28~p.32)も用いた。

22 たとえば、2014年7月12日付 The Economist 誌はその社説(”The internet of

things (to be hacked)”)の中で、internet of things の時代にはハッキングの悪影響はデータ の喪失だけにとどまらず事故の誘発による人命の被害にまで及ぶ可能性があるため、関連 の機器を提供する企業はセキュリティに関し、これまでより高い基準にしたがうことが必 要だろうと論評している。

(6)

6 がもたらすチャンスが活かされ、従業員がより大きな責任を担い、さらに、従業員の 能力発展が実現されるよう、参加型の職場の設計と継続的な教育訓練の仕組みが整え られること、その範例となるモデル・プロジェクトが開始されることが必要である。 (ⅵ)訓練と継続的能力向上 仕事やそのための能力について Industrie 4.0 が求める内容はこれまでと大きく異 なる。これに応えるため、適切な訓練戦略を実施するとともに、継続的な学習や職場 におけるCPD(継続職能研修)を容易にするよう勤務体制を組織することが必要で ある。 (ⅶ)規制の枠組み 法規制を Industrie 4.0 に適応させることも必要になる。考えられる分野は、企業 データの保護、責任(liability issues)、個人データの扱い、取引に関する規制(trade restrictions)などである。法令だけではなく、ガイドライン、モデル契約、企業間 の合意、自主規制、監査など様々な形式での対応が有効であろう。 (ⅷ)資源消費の面での効率性 Industrie 4.0 は、資源の使用という面で、生産性と効率性の向上をもたらし得る。 スマート工場に対して追加的に投入すべき資源量とそれにより得られる節約の量の 比較を行うことになる。 3.他国との比較 (1)ドイツの Industrie 4.0 戦略は、主として、エンジニアリング大国、機械製造大 国としての優位を将来にわたっていかに維持・発展させていくかという問題意識に根ざ すものである23。そこには、ICT化の中で、3Dプリンターの開発やグーグルの製造 業等への進出の動きに代表される米国、産業機械製造の分野でも野心的な育成戦略を掲 げ発展著しい中国との競争が強く意識されている24。ドイツは、ICT戦略に関する政 府の文書で、ドイツのICT産業の競争力強化を目指すに際し、ドイツのICT産業が 世界的に見てトップにはおらず、特に米国との関係で劣位にあるとの現状認識から出発 している25。Industrie 4.0 は、米国に比べてのICT分野での相対的な劣位が「お家 芸」のエンジニアリングや産業機械製造の優位を損なわないよう26、同時に、エンジニ

23 「勧告」のサブタイトル("Securing the future of German manufacturing industry”)

にもそれが現れている。注18のFinancial Times の記事も参照。

24 前掲ジェトロ、『ドイツ Industrie 4.0:製造業に革新を』(「ジェトロセンサー2013

年9月号」p.67)も参照。

25”Monitoring-Report Digitale Wirtschaft 2013” 独経済省のウェブサイト

(www.bmwi.de)参照。

26 「勧告」には、「製造業エンジニアリングにおける競争はますます熾烈になっており、(中

略)。さらに、ドイツ産業に脅威を与えているのは、アジアの競争者だけではない。米国 も”advanced manufacturing”促進プログラムを通じて脱産業化に対抗している。」(p.5)や

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7 アリングや機械製造の分野での経験や活動を梃子にドイツならではのICT産業の発 展27がもたらされるよう、Internet of Things によるICTとエンジニアリングの融合 に国をあげて取り組むとの攻守両面の努力ととることもできる。「我が国はITでは劣 るが、伝統的な製造業では世界のトップにある」式の、ITとそれ以外の製造業の区分 を前提にしてそれぞれの競争力を語ることができなくなりつつある現実を踏まえたも のともいえるであろう。 (2)そして、「勧告」では、Industrie 4.0 における競争相手として、特に米国と中 国が強く意識されている。また、「勧告」では、米国、中国、EU、インドにおけるス マート・マニュファクチュアリング振興政策の動向が詳しく紹介されている。そこでの 各国等についての記述は概ね以下のようなものである28 (ⅰ)米国 2011年にオバマ大統領が開始させた民間主体の AMP(Advanced Manufacturing Partnership )は、米国の有力工科大学の学長、主要製造業の経営トップの指導の下、 産業、学界、政府を交えて活動を行い、2012年勧告を提出した。この勧告には、 National Network of Manufacturing Innovation Institutes(NNMII)の創設 が含まれている。NNMIIは、米国企業の国際競争力の強化や米国製造業への投資 増加のための地域ハブとしての機能が期待されている。

また、オバマ政権は、製造業分野での研究のための資金支援も増加させようとして い る 。 同 政 権 は 国 立 標 準 技 術 研 究 所 ( National Institute of Standards and Technology)に1億ドルを拠出し、研究施設や研究ノウハウの提供を通じて製造企業 に技術支援を行うことにしている。 (ⅱ)中国 第12次五か年計画(2011-2015)は7つの戦略産業を掲げており、それ にはハイエンド製造施設製造と新世代情報技術が含まれている。中国指導部は、戦略 産業の振興全体に総額1.2兆ユーロ相当の支援(補助金、税制インセンティブなど) を行う計画である。工作機械の分野の優先事項には Intelligent manufacturing equipment 、 intelligent control systems 、 high-class numerically controlled machines の開発が含まれており、また、IT分野では Internet of Things と製造過 程の制御と自動化などその応用が優先事項に含まれている。 2010年以降、中国の Internet of Things に対する姿勢は一層積極化している。 たとえば、2010年以降、中国は Internet of Things に関するコンファレンスを 「製造業におけるInternet of Things 利用に向かう傾向とそれが製造プロセスに与える disruptive な影響が製造業にとっての戦略的な挑戦であることを認識している国はドイツ だけではない。」(p.67)という記述がある。 27 注18の Financial Times 記事の引用するドイツ企業の関係者の発言を参照。 28 以下の部分は、勧告の第6章(”How does Germany compare with the rest of the

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8 毎年開催しているし、その初年には中国最初の IoT センターを開設している。このセ ンターには1.2億ドルが拠出されている。大連工科大学の活動や IoT イノベーショ ン地域の設置なども重要である。中国指導部は2015年までの間に IoT 産業に8億 ドルを投資する計画である。 (ⅲ)EU Internet of Things の研究に対しては第7次研究プログラム(2007~201 3)による支援がもっとも重要である。ICT研究全体には9億ユーロを超える額が 割り当てられており、「製造業における Internet of Things」の適用に向けた業種、 企業、国境を超えた様々なイニシアティブが実施されている。その中には、シーメン ス社が主導し Plug&Work の開発を目指す「IoT@Work」プロジェクト、「製造と生産の 自動化」やCPSを含む研究開発プロジェクトを支援する「ARTEMIS 技術プラットフ ォーム」、PPPによる「未来の工場」イニシアティブが含まれている。 なお、上記「未来の工場」イニシアティブにおいては、SAP社主導のプロジェク ト「ActionPlanT」により、「Vision for Manufacturing 2.0」という文書が提出され ている。この文書はEUの第8次研究プログラム(「Horizon 2020」)(2014~2 020)による支援の対象となるプロジェクトの議論の材料となるものである。なお、 「Horizon 2020」には800億ユーロの予算が提案されており、これが実現すれば世 界最大の研究開発支援プログラムとなる。 (ⅳ)インド イノベーションに対する投資は現行5か年計画(2012~2017)の優先 事項の一つであり、これにより、政府及び民間のR&D投資をGDPの2%に増加さ せることが目指されている。 2011年には、通信情報技術省により「Cyber-Physical Systems イノベーショ ン・ハブ」プロジェクトが開始された。ボッシュ社は、バンガロールにCPS研究セ ンターを創設しており29、これにはフラウンホーファー研究所や複数のインドの研究 所がアドバイザーとして参加している。 ある調査30によれば、現在既に、インド企業は Internet of Things 技術の活用に関 して世界の先頭を走っているとされる。 (3)「勧告」ではこの分野におけるドイツの主要な競争相手として我が国は明示され ておらず、実際にも我が国に関する記述はほとんど見られない。ちなみに、2014年 6月24日に決定された「アベノミクス」の「第三の矢」を構成する『日本再興戦略 改 訂2014』31においては、Internet of Things の製造業等への適用、CPS、スマー 29 ボッシュ社はドイツ本国の Industrie 4.0 プラットフォームの中核メンバーでもある。 30 勧告 p.71 参照 31 首相官邸のウェブサイト参照(www.kantei.go.jp)。再興戦略にはロボットの活用により 生産性の向上、企業の収益力向上、賃金の上昇を図るとの政策がもりこまれている(『「日 本再興戦略」改訂2014』(p.59~p.60)。

(9)

9 トファクトリー開発といった Industrie 4.0 に該当する政策への明示的な言及はなされ ていない。また、同日に改訂された『世界最先端IT国家創造宣言』32は、ビッグデー タの活用やITの農業、インフラ、公共部門への適用が主たる内容であり、我が国産業 ないし製造業の伝統的な中核である機械、自動車といった分野での Internet of Things に関する政策は盛り込まれていない。これには、Industrie 4.0 の具体的な内容が現時 点では明確でなく(工程表つきの)政策文書に盛り込むほどの熟度がないとの判断があ るのかも知れない。しかし、工作機械や産業機械などの機械製造業における優位を持つ 一方、ICT産業が米国との関係で相対的に劣位にあるとの点で我が国とドイツには共 通する部分があることから、日本政府も Industrie 4.0 の今後の進展や日本の政策への 応用の可能性には問題意識を有しているものと推測される。 32 首相官邸ウェブサイト(www.kantei.go.jp)参照。

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