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大学研究室紹介―キャンパスだより―(36)名城大学 昆虫学研究室

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Academic year: 2021

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(1)

名と若干の大学院生で構成されています。筆者の担当

科目は,基礎昆虫学,応用昆虫学,昆虫学実験,ゼミ

ナール,卒業研究の他に,生物学実験,動物分類・形

態学,生命の多様性,さらには学芸員課程の実習もあ

り,教授とは名ばかりで,非常に大変です。

研究室の専攻決定は 2 年生の終わりで,3 年生から

昆虫学実験とゼミナールを履修し,いろいろな昆虫を

扱います。学生は 3 年生から研究を始めてもかまわな

いのですが,最近の学生は自分から進んで採集に行っ

たりしません。正式には卒業研究は 4 年生になってか

ら取り組むことになりますが,延々と続いた就職活動

が終わる頃には,肝心の昆虫の発生が終わってしま

い,昆虫の生活史や行動を研究テーマとした学生は,

は じ め に

名城大学農学部は 1950 年に愛知県春日井市鷹来に,

東海地方の私立大学では初の農学部として設立されま

した。昆虫学研究室(応用昆虫学研究室)は 1956 年

に,岡留恒丸助手(現 名誉教授)の就任によって開

設されましたが,専任教授もおらず,ろくな実験器

具・備品も無い中で,苦労が絶えなかったようです。

1969 年に農学部は現在の名古屋市天白区のキャン

パスに移転しました。これを機に実験器具・備品類が

一気に充実されると共に,有田豊助手(現 環境動物

学研究室教授)も着任され,ようやく研究室の体制が

整いました。

1972 年から中條道夫教授も大学院設置のために着

任され,一時的に 3 人のスタッフとなり,その後,農

学部内の人事異動があり,1981 年には高木信一教授

が就任し,1 人体制となりましたが,84 年に筆者が助

手として就任し,2 人体制に戻りました。1985 年に高

木教授が定年を迎え,岡留恒丸教授が昆虫学研究室に

戻り,2004 年 3 月までの 19 年間,安定した 2 人体制

が続きました。岡留恒丸教授の退職以降は諸般の事情

により,筆者が 1 人で研究室を維持しています。

I

研究室の概要と教育

現在の昆虫学研究室は生物資源学科(旧 農学科)

に所属し,筆者 1 名と,学部学生(3,4 年生)約 20

リレー随筆:大学研究室紹介 533

―― 65 ――

リ レ ー 随 筆

大学研究室紹介

名城大学農学部

昆虫学研究室

名城大学農学部研究棟(手前の建物). ここに農学部の 1/3 の研究室が入り, 昆虫学研究室は 2 階にある.

やま

ぎし

けん

ぞう

Message from Laboratory of Entomology, Faculty of Agriculture, Meijo University. By Kenzou YAMAGISHI

(キーワード:寄生蜂,種多様性,昆虫分類,ハチ目) 所在地:名古屋市天白区塩釜口 1 ― 501

キャンパスだより

(36)

図 −1 名城大学農学部研究実験棟 I(手前) ここに農学部の 2/3 の研究室が入っている.奥の 建物は共通講義棟で学会開催に便利である.

(2)

卵寄生蜂などの記載分類を行いました。

古典的な分類学は時代の流れに逆行していますが,

本研究室では平成に入ってから日本の昆虫相の解明に

本格的に取り組み始めました。ハチやハエでは未記載

の種が大量に残されているため,まずは大量の昆虫標

本が必要になります。ちょうどその頃から世界的に生

この時点で挫折を味わうことになります。

II

研 究 紹 介

昆虫学研究室は設立当初から昆虫分類学を柱にして

きましたが,この流れは現在も変わりません。他大学

の昆虫関連研究室の多くが時代の流れに乗って研究テ

ーマを更新した中にあって,私立大学としては結果的

にユニークな研究室となりました。

先代の岡留教授はトゲハネバエ科とシマバエ科の分

類,ならびにミバエ科幼虫の形態を専ら研究され,こ

れまで命名したハエ類は国内外産で 1 新属 35 新種と

なりました。また,衛生害虫としてアブ科やヌカカ科

などの吸血昆虫に関する生態調査,ショウジョウバエ

類などの発生消長の調査も行いました。

筆者はハラビロクロバチ科やタマゴクロバチ科の寄

生蜂の分類を主体にしており,10 属 20 種のハチを記

載ないしは記録しました。これまでの筆者の研究は,

虫こぶ形成昆虫(タマバエ科)に寄生するハラビロク

ロバチ,アオマツムシの卵寄生蜂,ハスモンヨトウの

植 物 防 疫  第 63 巻 第 8 号 (2009 年) 534

―― 66 ――

Oxyscelio Leptacis

Trichopria Paridris Inostemma Coptera 図 −2 筆者が扱っているクロバチ類 表 −1 名城大学農学部昆虫学研究室で作られた標本( 1 ) ハチ目 年 学生名 県 市町村 環境 Trap 1998 2005 1999 2003 2001 2002 2002 2003 2003 2004 2007 1997 1996 2001 1999 2002 2000 1997 1997 2000 2003 1984 1994 1994 1995 2000 2006 室井 伏屋 花井 宮下 野島 石丸 小出 綿谷 前田 大塚 堀田 川出 花岡 渡辺 内藤 遠藤 山田 岩田 劒持 水野 伊藤 渡辺 鈴木 三田 林 水野 植島 沖縄 鹿児 鹿児 鹿児 鹿児 徳島 徳島 徳島 徳島 徳島 三重 三重 三重 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 西表島 奄美 屋久島 屋久島 屋久島 徳島市 善入寺 善入寺 善入寺 大紀町 鈴鹿市 四日市 名古屋 名古屋 名古屋 瀬戸市 瀬戸市 瀬戸市 瀬戸市 春日井 春日井 春日井 春日井 春日井 一宮市 常緑林 常緑林 常緑林 常緑林 常緑林 二次林 二次林 農耕地 堤防 堤防 二次林 水田 水田 二次林 二次林 二次林 水田 常緑林 常緑林 二次林 二次林 農耕地 農耕地 農耕地 農耕地 農場 水田 MT MT MT MT MT MT MT MT MT MT MT YPT YPT MT YPT SW YPT FICT MT MT MT YPT YPT EmT YPT MT MT 科数 個体数 31 32 35 24 38 38 46 39 35 38 32 20 30 41 32 32 21 27 31 30 35 23 23 31 31 9,731 3,326 9,860 1,825 4,734 7,933 14,284 5,711 2,790 4,042 1,165 816 3,252 7,073 2,382 3,890 1,798 503 4,590 1,525 3,262 4,825 7,288 3,293 4,060 4,305 5,789 ハチ目 年 学生名 県 市町村 環境 1996 2004 2008 2000 1997 1992 1992 1993 2002 2002 2003 1998 2005 2006 1994 1995 1996 1996 2004 2007 2001 2001 2004 1996 1999 間渕 加藤 福島 鈴木 溝上 島 神戸 加藤 清田 倉橋 小木曽 小澤 西村 加藤 神戸 菅原 嶋 武藤 伊藤 藤井 浦 杉山 小楠 寺社下 森下 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 岐阜 岐阜 静岡 静岡 静岡 長野 福島 犬山市 長久手 長久手 豊田市 豊田市 豊田市 豊田市 豊田市 豊田市 旭町 足助町 足助町 設楽町 設楽町 設楽町 設楽町 可児市 可児市 浜松市 梅ヶ島 梅ヶ島 大桑村 博士山 二次林 竹林 農耕地 二次林 湿原 猿投山 猿投山 猿投山 二次林 二次林 二次林 二次林 桧林 桧林 ブナ林 ブナ林 ブナ林 ブナ林 二次林 二次林 草原 二次林 二次林 ブナ林 Trap 科数 個体数 EmT MT MT YPT YPT EmT MT EmT MT MT MT MT MT MT YPT FYPT MT EmT MT MT YPT YPT MT YPT MT 28 22 33 28 29 28 27 40 44 31 44 34 41 22 31 33 28 41 36 29 31 34 27 35 2,020 466 4,783 4,369 5,429 6,645 6,175 8,271 6,637 6,563 2,020 7,762 2,486 5,278 10,002 4,140 6,861 8,277 11,048 3,724 4,692 5,952 6,739 2,021 6,266 ハチ目合計 262,678

(3)

F

URSOV

博士との共同研究で白亜紀のムカシホソハナ

コバチ化石の記載も行いました。

なお筆者は寄生蜂以外に,名城大学農学部内での共

同研究として,冬虫夏草の採集にも借り出されまし

た。調査フィールドの愛知県は花崗岩地帯であるた

め,冬虫夏草の多様性が低く,大きな成果はあげられ

ませんでしたが,共同研究者の横山英之博士は DNA

解析によりバッカクキン科における冬虫夏草菌の分類

学的位置について解明しています。

お わ り に

名城大学農学部は 3 学科体制で,生物資源学科の他

に,応用生物化学科と生物環境科学科があります。

生物環境科学科には環境動物学研究室があり,現

在,有田豊教授がおられます。有田教授はハマキモド

キガ科やスカシバガ科などの分類がご専門ですが,蝶

を含めてチョウ目全般に精通され,現在,日本鱗翅学

会会長の職にあります。

時代が大きく変化する時代,私立大学の中で昆虫分

類学を維持するのはなかなか大変ですが,2 つの研究

室で何とか昆虫分類学を死守して行きたいと思ってお

ります。

物多様性という言葉が流行し始めましたが,種多様性

の解明は正に分類学の仕事であると考えています。

この 20 年間は寄生蜂類を筆頭に様々な昆虫の種多

様性の調査に力を入れており,ひたすら昆虫標本の蓄

積を行っています。これまで延べ 90 名ほどの専攻生

が約 40 万個体の昆虫標本を作製し,科レベルまで分

類しております(表― 1,2)

ハチ目 26 万個体のうち寄生蜂類は約 24 万個体とな

り,小型寄生蜂に関しては国内最大の標本数になって

います。問題はこの膨大な昆虫標本を分類する研究者

が育たないことです。一部の科は属まで分類されてい

ますが,種レベルまで分けるのは遅々として進んでい

ません。他の研究機関でも寄生蜂の若手研究者が出て

くれば,標本の貸し出しに応じていますが,研究者の

絶対数が少なく,就職先も非常に少ないため,研究が

続かないのが現状です。

筆者はカナダ農務省の元研究員の M

ASNER

博士との

共同研究として,世界のイシハラクロバチ科のレビュ

ーと日本のアメンボタマゴクロバチ属の新種記載を進

めていますが,思うように進んでいません。後者は,

全国的にアメンボの研究者が多いため,早い段階での

完 成 が 求 め ら れ て い ま す 。 ま た , ウ ク ラ イ ナ の

リレー随筆:大学研究室紹介 535

―― 67 ――

表 −2 名城大学農学部昆虫学研究室で作られた標本( 2 ) ハエ目 年 学生名 県 市町村 環境 Trap 1999 2003 2001 2002 2002 2003 2004 1997 2001 1997 1997 2000 2003 2000 2003 2003 2008 1998 2001 1999 山崎 宮下 後藤 廣澤 走辺 縄田 伊藤 市川 阪東 小川 北住 早川 西村 鈴木 野村 小木曽 福島 川瀬 原 中村 鹿児 鹿児 鹿児 徳島 徳島 徳島 徳島 三重 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 静岡 福島 屋久島 屋久島 屋久島 徳島市 善入寺 善入寺 鈴鹿市 名古屋 瀬戸市 瀬戸市 瀬戸市 瀬戸市 春日井 豊田市 豊田市 長久手 旭町 湖西市 博士山 常緑林 常緑林 常緑林 二次林 二次林 農耕地 堤防 水田 二次林 常緑林 二次林 二次林 二次林 農場 二次林 二次林 農耕地 二次林 松林 ブナ林 MT MT MT MT MT MT MT YPT MT FICT MT YPT MT MT MT MT MT MT YPT MT 科数 個体数 37 32 39 47 54 45 38 21 37 23 25 28 39 30 41 32 23 19 21 47 7,410 2,961 3,685 8,639 10,511 5,531 2,368 914 2,063 2,643 2,185 3,644 3,849 2,608 5,417 2,325 1,945 7,126 700 6,023 ハエ目合計 82,547 年 学生名 2005 1999 2000 2003 2002 2003 2003 2007 1997 2001 2003 1997 2004 2008 2002 2003 1998 2005 2005 2004 2001 1999 コウチュウ目およびカメムシ目合計 県 市町村 環境 Trap 甲虫 亀虫 寺田 千田 安長 宮下 細川 玉水 永井 堀田 市川 向 羽田野 岩田 加藤 田路 小柳津 小木曽 笹原 西村 山際 水野 角野 栗山 鹿児 鹿児 鹿児 鹿児 徳島 徳島 徳島 三重 三重 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 愛知 岐阜 静岡 福島 奄美 屋久島 屋久島 屋久島 徳島市 善入寺 大紀町 鈴鹿市 名古屋 瀬戸市 瀬戸市 長久手 長久手 豊田市 豊田市 旭町 足助町 足助町 可児市 梅ヶ島 博士山 常緑林 常緑林 常緑林 常緑林 二次林 二次林 農耕地 二次林 水田 二次林 二次林 常緑林 竹林 農耕地 二次林 二次林 二次林 桧林 桧林 二次林 二次林 ブナ林 MT MT MT MT MT MT MT MT YPT MT MT FICT MT MT MT MT MT MT MT MT MT MT 1,063 3,206 2,723 16 3,328 3,440 3,048 1,291 216 1,708 1,189 1,834 783 428 3,867 130 2,732 768 1,234 2,350 2,059 1,783 680 1,946 845 231 1,826 1,785 1,765 527 275 1,822 658 103 101 2,006 3,007 227 328 1,368 1,835 1,986 1,336 24,657 39,196 コウチュウ目およびカメムシ目

参照

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