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<シンポジウム03―5>神経難病の克服―単一遺伝子病からのアプローチ―SOD1変異による家族性ALS

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Academic year: 2021

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50:861

<シンポジウム 03―5>神経難病の克服―単一遺伝子病からのアプローチ―

SOD1 変異による家族性 ALS

青木 正志

(臨床神経 2010;50:861) Key words:筋萎縮性側索硬化症,スーパーオキサイドジスムターゼ,遺伝子変異,肝細胞増殖因子

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は 上位および下位運動ニューロンを選択的かつ系統的に障害 し,呼吸筋をふくむ全身の筋萎縮をきたす進行性疾患である. さらには有効な治療薬や治療法がほとんどないため,ALS は神経疾患のなかでもっとも過酷な疾患とされ,早期に病因 の解明と有効な治療法の確立が求められている.1993 年に家 族性 ALS においてその一部の原因遺伝子が SOD1 であるこ とが明らかになり,さらにはこの SOD1 遺伝子の突然変異を マウスに導入することにより,ヒト ALS の病態を非常に良く 再現することに成功した.変異 SOD1 による運動ニューロン 傷害のメカニズムはまだ十分には解明されていないが,変異 SOD1 が新たに獲得した“gain of toxic function”によるもの と考えられている.この病態は変異 SOD1 による運動ニュー ロンへの直接作用のみならず,マイクログリアやアストロサ イトが関与することが明らかとなっている. 変異 SOD1 を導入したマウスモデルはすでに世界中でも ちいられているが,大きさによる研究上のさまざまな制約が ある.東北大学ではこの点を克服し病態解明と治療法開発を 有利に進めるため,新たにラットによる ALS モデル(ALS ラット)を開発した.このラットモデルは ALS 病態の主座で ある脊髄運動ニューロンに対して全身的副作用を回避しなが ら効率よく薬剤やベクターを投与できる「髄腔内投与」や直接 接種といったアプローチが容易という利点をもつ. 私たちはこの ALS ラットをもちいた治療法開発研究とし て(1)肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor,HGF)の 髄腔内投与と,(2)脊髄内在性神経前駆細胞の解析と活性化に よる新規治療法の開発をおこなっている.HGF は本邦でク ローニングされ運動ニューロンに対する強力な保護活性が知 られている.すでに ALS ラットに対してリコンビナント HGF 蛋白の髄腔内持続投与で有効性を示したので,霊長類を もちいて HGF の髄腔内長期投与による安全性を検証すると 共に臨床用量の設定をおこない,現在治験に向けた GLP 基準 での安全性(毒性)試験および薬物動態試験をおこなってい る.その後に東北大学病院で治験(フェーズ I)を開始する予 定である.また,ALS ラット脊髄では病態の進行につれて内 在性の神経前駆細胞が増殖していることが明らかとなった. これらの知見から,残存する運動ニューロンの細胞死を抑制 し,あるいは内在性神経前駆細胞を起源としてグリア細胞も ふくめた細胞補充をねらい機能修復をめざすことで,温存的 神経再生を将来実現するのが目標である.こうしたアプロー チは将来的な ALS 治療研究の一翼を担っていくと考えられ, ALS における臨床応用をめざした戦略として期待できる. Abstract

Amyotrophic lateral sclerosis associated with mutations in the SOD1 gene

Masashi Aoki, M.D.

Department of Neurology, Tohoku University School of Medicine

(Clin Neurol 2010;50:861) Key words: amyotrophic lateral sclerosis, SOD1, mutation, hepatocyte growth factor

東北大学病院神経内科〔〒980―8574 仙台市青葉区星陵町 1―1〕 (受付日:2010 年 5 月 21 日)

参照

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