錯視における視覚認知の一考察
逆遠近錯視の製作と評価からのアプローチ
出u
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は、物理的に凹面である立体物から得ら 段階の変化をつけた。
れる立体知覚(奥行き知覚)が、物理的な構造と
は逆に、凸面の立体として知覚される現象である。
また、観察者が左右や上下に頭を動かしたときに
動きを知覚する。従って、 3次元的な知覚に加え
て、「動き」の次元が加わり、 人の目を惹きやすい
特徴がある。このような錯視を生じる現象は、脳
教 科 ・領域教育専攻
生活 ・健康系コース(技術 ・工業 ・情報)
平 井 沙 織
1.はじめに
本研究では逆遠近錯視の研究をするにあたり、
3つの要素からなる工学的アプローチを提案する。
1. ビジョンの生成
2.逆遠近錯視を知覚する立体物の製作
3.製作した立体物の評価 (3つの評価実験)
これらを通して、視覚認知に関する日常生活に
逆遠近錯視が活用できる状況を生み出すことによ
り、従来の知覚心理的アプローチとは異なる方向
性について論じる。
2.
逆遠近錯視とは
逆遠近錯視
(
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が混乱し、錯覚を引き起こす状態に起因している。
その現象の解明や原理の追求が、知覚心理や計算
論の観点から進められているが、視覚と脳の情報
が複合的に関連しており複雑なため十分ではないc
そのため、従来とは異なる新たな方向性による研
究アプローチが必要とされつつある2
3
.
ピジョンの生成
逆遠近錯視を生じる立体物を日常生活に活用す
る状況を生み出すことを 「ビジョンの生成Jと呼
び、本研究ではビジョンを生成し、考察する。そ
指 導 教 員 林 秀 彦
のための立体物を製作 ・評価することが本研究の
目的である。逆遠近錯視を日常生活に活用できる
状況は、人や周囲の環境によって多様であるため、
本研究では、 「広告と しての活用」及び 「教材とし
ての活用」の
2
つを例として挙げた。
4.
逆遠近錯視の製作
逆遠近錯視を生じる立体物を製作した。 Jerry
Andrusの作品である龍の紙模型を参考に展開図
を製作した(図1)。そして、立体時の自然な陰影
を考慮し、①から⑤の各部位に色の変化をつけた
(図 2)。立体物は茶と白 2色から構成され、それ
ぞれの基準の色に加え、茶色は2段階、白色は3
多\~会
←←- 0
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〆
図 1 展開図
5.
評 価 実 験
図 2 色分け図
実験条件として、被験者は10人とし、評価物と
被験者の距離を90cmと固定し、自然な陰影がつく
ように照明を上に固定した。実験の際には、被験
者の効き目である単眼で評価した。
[実験 1
1
比較評価実験
6体の立体物を基準物の横に1体ずつ並べ、基
準物と評価物の比較評価を行った。比較評価は、
実在感、首の動き、図 3の① ④それぞれの自然
さ、全体の自然さ、① ④それぞれの立体感、全
体の立体感の 12項目について7段階で評価した。
Q
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q
d
q
d
ヘ
r ①
.,..-♂@
③
図3 評価部位
{実験2]並べ替え評価実験
被験者は立体物6体を自然な立体として観察
できる順に並べ替える。その順位を数値化し、
正規化順位法による統計処理により分析した。
[実験3]一対比較評価実験
立体物3体のうち 2体を被験者の前に提示し、
左側jの立体物を基準物と し、 右側の評価物の肯
の動きについて 7段階で評価した。
6
.
結 果
実験1から以下の3点が明らかになった。
-逆遠近錯視の立体物は基準物と比較して自然
な立体物として観察される傾向にあった。
-立体物の陰影を考慮した塗り方の違いは、評
価に影響を与えた。
-評価項目「自然さ」は「立体感Jよりも厳し
く評価される傾向にあった。
実験2から以下の2点が明らかになった。
-最も自然な印象を与える立体物は多くの被験
者で一致していた。
-最も自然な立体物は、立体時の陰影を考慮、し
た塗り方た、った。
1き
図4 並べ替え評価実験結果
実験 3から以下の2点が明らかになったc
・首の動きの円滑さには立体物間に差があった。
。立体物の首の動きは、立体時の陰影を考慮した
塗り方の違いによって、変化が表れた。
7
.
考察
逆遠近錯視の製作と評価を通して、以下のよう
にどジョンについて考察する。
7. 1.製作
照明の固定位置によって陰影は変わるため、陰
影を考慮した色塗りは、観察環境と同じ照明の下
で行うようにし、 また、色を混合する配分が異な
らないように設定の範囲内での色を固定する必要
があることが、製作を通して明らかになった。
7. 2. 3つの評価実験
実験lでは、立体感より自然さは低下しやすい
傾向が得られた。実験 2、実験 3では、自然さと
首の動きは、陰影を考慮した塗り方に影響を受け
ることが明らかになった。これらの 3つの実験結
果から、立体時の陰影を考慮した塗り方は、立体
感、自然さ、首の動きなどに総合的に影響を及ぼ
したことが示唆される。
7. 3.ビジョン
逆遠近錯視は、平面上の表現に比べ、人の目を
惹きやすい。逆遠近錯視の知覚は、色の塗り方に
よって立体物の知覚を総合的に変化させ、人の目
を惹きやすくさせる可能性がある。この性質は広
告や教材としての活用が想定できる。広告として
活用する場合、照明の当たる位置と立体時の陰影
の2つの観点から、塗り方を工夫することによっ
て、更なる注目を高められると考察する。また、
逆遠近錯視は、容易に立体を知覚できることから、
教材として活用した場合、立体としての知覚の興
味ー関心を共有できる教材になると考察する。
8. ま
と
め
本研究は、ビジョンの生成、製作、評価の3つ
の要素からなる逆遠近錯視の工学的アフ。ローチを
提案した。従来の研究アプローチとは異なる方向
性として、日常生活に逆遠近錯視を活用できる状
況を考察し、 その方向性を見出すことができた。
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