教師のジェンダ一意識
一 生 育 環 境 , 家 庭 環 境 , 学 校 環 境 と の 関 連 に 着 目 し て 一 教科・領域教育専攻 生活・健康系コース(家庭) 中 林 啓 1. はじめに 学校教育とジェンダーに関する研究から,学 校教育がジェンダーを再生産し,児童・生徒の ジェンダー意識に関与することが示唆されてい る。男女平等な学校教育の実現には,教師がジ ェンダーに敏感になるとともに 自身のジェン ダー意識を理解する必要がある。 先行研究より,教師のジェンダー意識に関連 する要因を生育環境,家庭環境,学校環境とし た。生育環境とは,生まれ育った家庭の環境で あり,家庭環境とは現在の家庭の環境,学校環 境とは教師として勤務する学校に関する環境で ある。教師のジェンダー意識とジェンダーへの 興味との関連は調査されていなかった。本研究 は,生育環境,家庭環境,学校環境,ジェンダ ーへの興味との関連から,教師のジェンダー意 識を多面的に分析し,学校教育や教育現場に対 して提言を行うことを目的とする。 基本属性 生育環境 家庭環境 ジェンダーへの興味 図 分 析 枠 組 み 指 導 教 員 黒 )I[衣 代2
.
方 法 調査は,教師を対象とし2
0
0
9
年9
'
"
'
-
-
1
0
月に 質問紙法による自記式アンケートを実施したc 質問紙は2
0
0
部配布し1
4
7
部が回収され,回収 率は7
3
.
5
%
で、あった口調査対象者は,女性が7
7
人(
5
4
.
6
%
)
であり,男性が6
4
人(
4
5
.4%)で あった。女性の平均年齢は3
5
.
7
歳,標準偏差は1
1.8
であり,男性は平均年齢が3
5
.
3
歳,標準 偏差は 11.6で、あった。 < 基 本 属 性 > (以下, <>は概念を示す。)に 関する調査内容は「性別J(以下, rJは変数を 示す。)と「年齢」であり,<生育環境>に関す る調査内容は,r
きょうだいの有無J,r
性役割の 期 待J,r父親の家事参加J,r母親の就労形態J, 「小学生のころの家事参加J,r
中高生のころの 家事参加」である。<家庭環境>に関する調査 内容は, r配偶者の有無J,r子どもの有無J,r配 偶者の就労形態J,r
夫婦の家事分担J,r
夫婦の 子育て分担」であり<学校環境>に関する調 査内容は, r勤務校の校種J,r勤務地J,r勤続年 数人「ジェンダー問題への取り組みに意欲的な 学校への勤務の有無J,r
ジェンダーに関心のあ る同僚の有無と人数および交流回数J,r
学校内 研修経験J,r学校外研修経験J,r授業実践経験J, 「児童・生徒の性別による自然な分離の経験J, 「児童・生徒からの男女の違いに関する主張の 経験」であるロ「ジェンダー意識」は, Dreyer らの作成したr
A Scale to Measure Sex. Role-389-Orientation(性役割志向性尺度)J を用いて測 定した。「ジェンダーへの興味」は,その有無と 興味をもったきっかけ・経験を聞いた。 分析は分析枠組み(図)に基づいて統計的に 千子ったc 3.結果および考察 <基本属性>と<生育環境>,<家庭環境>, 「ジェンダー意識」の関連を分析したところ, <生育環境>の「性役割の期待J, i中高生のこ ろの家事参加J,<家庭環境>の「配偶者の就労 形態」や「ジェンダー意識jには男女差が認め られたため, iジェンダ一意識」の関連要因は男 女で異なると考え, iジェンダ一意識」と<生育 環境>, <家庭環境>, <学校環境>, iジェン ダーへの興味」の関連分析は男女別に行った。 女性の「ジェンダ一意識」が関連していた要 因は<生育環境>の「きょうだいの有無」と, <家庭環境>の「子どもの有無」で、あった。そ の他の要因は,女性の「ジェンダ一意識J と関 連が認められなかった。 同性のきょうだいがし、る女性のほうが,ジェ ンダーにとらわれていなかった。同性のきょう だいがいた環境の場合,異性のきょうだいと比 較されずに育てられることが多いため,性役割 にとらわれない考え方が育まれたと推察できる。 また,同性のきょうだいと日頃感じた性差別に ついて話し合い,気持ちを共有することで男女 平等への関心を高めたとも推察される。 子どもを有する女性のほうが,ジェンダーに とらわれていなかった。「夫婦の子育て分担Jで は,約 7割の女性が主に子育てをしたのは自分 と答えたことから,女性に負担の大きい子育て を経験することで男女平等意識が高まったと考 えられる。また,子どもに性役割の束縛なく育 つことを望んで、いるとも推察できる。 男性のジェンダ一意識が関連していた要因は, <生育環境>の i.父親の家事参加J と「小学生 のころの家事参加J,i中高生のころの家事参加J, <学校環境>の「勤務校の校種」で、あった。そ の他の要因は,男性の「ジェンダー意識」と関 連が認められなかった。 父親が家事に参加した環境で、育った男性のほ うがジェンダーにとらわれない考え方を有する ことから,男子は向性である父親の行動を見て ジェンダー意識を形成すると考えられるD 小学生,中高生のころに家事に参加した男性 のほうが,ジェンダーにとらわれた考え方を有 していたD 一般的に母親の仕事と認識される家 事に参加したことによって,性別役割分業意識 が育まれたと考えられるが,先行研究の結果と 異なるため,さらなる検討が必要である。 「勤務校の校種」では,小学校勤務者のほう が中学校勤務者よりもジェンダーにとらわれて いなかった。小学校は女性の勤務者が多いため, 男性の多い職場よりも男女平等意識が浸透した 場であるといえよう。そのような環境で働く男 性はジェンダーにとらわれない考え方に影響さ れる推察できる。 ジェンダーに興味をもったきっかけ・経験で は,男女ともに大学(院)の授業をあげる人が 多かったことから,ジェンダーについて教える ことの有効性が示唆されたといえる。