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問題 分子密度 n は第一義には濃度であるが, 裏返せば希薄さの 指標でもある. 研究用の真空装置で要求される圧力 1-8 Pa 程度の 気体は, 真空科学が対象とする中で最も希薄と考えられる状態であるが, その分子密度を求めてみなさい. その大きさは個々にニュートンの運動方程式を解ける程度に収まる

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3 199 1 東京電機大学工学部物理系列(〒1208551 東京都足立区千住 旭町5 番) 3 199 ―( )― Vol. 56, No. 6, 2013

気体分子運動論の基礎

七美男

1

Basic Concepts to Kinetic Theory of Gases

Namio MATUDA1

1Department of Physics, Tokyo Denki University, 5 Senju-Asahi-cho, Adachi-ku, Tokyo 1208551, Japan (Received March 11, 2013, Accepted April 8, 2013)

To understand the property of gases, it is essential to consider them using kinetic theory of gases. This theory assumes that gas atoms/molecules are freely travelling and frequently changing their speed and direction by collisions each other. The purpose of the present article is to try to introduce the basic concepts of kinetic theory of gases to readers. We also show how it explains the fun-damentals of vacuum science such as idealgas laws, origin of pressure, surface impinging rate and mean free path.

. は じ め に 電磁気学などで真空と言えば『何もない』空間を指すもの である.しかしそのような概念としての理想的な真空はもち ろん実在しない.一般にどのような空間においても気体分子 が僅かに存在し,真空科学では,そのように気体が僅かに存 在する空間を真空と呼んでいるのである.真空中では,個々 の分子は自由に空間を運動し,分子同士あるいは分子と壁面 の衝突が無数に繰り返されている.真空科学とはいわば希薄 気体の物理学・化学であると言うこともできる.この節で は,直接観測することが困難な気体分子の個々の運動状態 と,気体の圧力や粘性といった観測可能な物理量とを結びつ ける『気体分子運動論』を概説し,真空科学の基本概念ある いは基本用語を紹介する. . 希薄気体と分子運動 気体分子運動論の考え方は,すでに高校の物理の教科書に も記されており,分子の運動についての簡単な考察により, 気体の圧力を見積もる考え方が示されている.すなわち,分 子運動論的な考え方自体は素直なものなのである.本稿で も,高校の物理の教科書にならって,理想気体に関する実験 事実を整理して得られた状態方程式を振り返ることから始め よう. . 気体の状態方程式 気体の圧力 p,体積 V,絶対温度 T の間には,理想気体 であれば分子種によらず次の状態方程式が成り立つことが知 られている. pV=nRT (1) ここに,n は気体のモル数,R は気体定数である.分子種に よらず普遍的であるという気体定数 R の値は記憶に値する. R=8.314 JK-1mol-1 (2) .. 標準状態とアボガドロ数 0°C, 1 気圧の状態を標準状態(STP: Standard Tempera-ture and Pressure)と呼んでいる.標準状態の圧力と温度 は, p=1.01325×105Pa T=0°C=273.15 K (3) である.標準状態において,1 モルの気体分子は0.022414 m3=22.414 l の体積を占める.また,1 モルの気体中の分子 数は分子の種類によらず一定であり,この数がアボガドロ数 である.これを NAとすれば, NA=6.022×1023個 mol-1 (4) である. .. 気体分子密度と希薄さの度合い 真空科学においては,個々の分子に着目する場合が多いた め,理想気体の状態方程式として,式(1)ではなく,気体分 子密度(単位体積に存在する分子数)n を用いた次の式がし ばしば用いられる. p=nkT (5) ここに,k はボルツマン(Boltzmann)定数であり,気体定 数 R と同様に記憶に値する基本定数である. k=R NA =1.381×10-23JK-1 (6) Rと k は,物理量としては同じであるが,R が分子 1 モルあ たりのエネルギーを考える際に用いられる単位であるのに対 して,k は分子 1 個あたりのエネルギーを考える際に用いら れることに注意されたい. 気体の分子密度 n は,理想気体の状態方程式とアボガド ロ数から以下のように与えられる. n=1 k p T=7.243×1022 p T [個 m3] (7)

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4 200 図 立方体中の気体分子. 表 圧力に関する単位系. Pa Torr atm(気圧) Pa 1 7.500×10-3 9.869×10-6 Torr 133.3 1 1.316×10-3 atm 1.013×105 760.0 1 表 JIS による真空の領域. 圧力領域名 範囲[Pa] 低真空 大気圧~102 中真空 102~10-1 高真空 10-1~10-5 超高真空 10-5以下 4 200 ―( )― J. Vac. Soc. Jpn. 問題 分子密度n は第一義には濃度であるが,裏返せば希薄さの 指標でもある.研究用の真空装置で要求される圧力10-8Pa 程度の 気体は,真空科学が対象とする中で最も希薄と考えられる状態であ るが,その分子密度を求めてみなさい.その大きさは個々にニュー トンの運動方程式を解ける程度に収まるものであるか検討しなさい. . 気体の圧力 気体分子の個々の状態変化を追うことは不可能であるが, どのような運動を行っているかは想像することができ,マク ロな気体の性質を説明できる場合がある.気体の圧力はその 具体例である. すなわち,図に示すように,立方体の中に気体分子がつ まっているとし,気体分子の質量と密度を各々 m, n,分子 速度を [とおく.すると,壁面に入射して跳ね返る気体分子 が単位時間に壁面に与える力積が気体の圧力を生んでいるの ではないかと容易に想像できる.実際には,分子はこの箱の 中で全くランダムに運動しているが,簡単のために,全分子 の 1/6 ずつが各々の壁面に垂直に衝突すると仮定すれば, 圧力 p は,個々の分子が壁に与える力積の和として次式のよ うに計算されるであろう. p=[壁面の単位面積に毎秒入射する分子数] ×[分子 1 個が壁に与える力積] =

(

1 6 n[

)

×(2m[)= 1 3 nm[2 (8) この式を,式(5)を比較すると 1 3 m[2=kT または [= 3kT m (9) なる関係が予想される.経験式としての(5)から示唆され る,この [の関数形は,気体分子運動論を用いて独自に示す ことが可能であり,本節の主要目的でもあるから後に詳述す る.このように,状態方程式を理論的に導出できることが気 体分子運動論の最初の大きな成果であり,気体分子運動論が 正しいと信ずる所以でもある. .. 圧力の単位 気体分子運動論からはそれるが,最も基本的な物理量であ る圧力 p について真空工学で必要な事項をここでまとめてお く. 圧力の単位は,SI 単位系ではパスカル(Pa [N/m2])で ある.気圧(atm)もよく耳にする単位であり,1 atm= 1.0133×105Paで定義される.水銀柱の液柱差に起源をも

つ Torr (101325 Pa=760 Torr)も,真空計の表示や古い文 献等で目にすることがあり,今もなお覚えておくべき単位で ある.圧力単位の換算表を表に示す. .. 圧力による真空の区分 JIS によれば,大気圧以下の圧力領域を真空と定義してお り,真空の圧力領域を表のように大別している. なお,10-9Pa 以下を極高真空と呼ぶこともある. 問題 1 気圧 0°Cの空気 1 m3の質量はいくらか.空気のmol 質量 を29 g mol-1として計算してみなさい. . 気体分子の速度分布 熱平衡にある気体分子は真空中を自由に運動し,個々には 衝突により状態を変化させている(繰り返すが,この個々の 状態変化を個別に追うことはできない)が,全体としてある 一定の速度分布を形成している.気体分子の速度の x 成分が [xと [x+d[xにある割合を fx([x)d[xとおく.y, z 成分も同様 に fy, fzとおいて,分子がこの状態にある確率を F( …[)d …[=fx([x)fy([y)fz([z)d[xd[yd[z (10) と直積の形で表現できるとする.すると,この気体集団の示 すある物理量 A の平均値 ˜A は ˜A=

f

Q AF( …[)d …[ (11) で計算される.この手法を用いると,気体全体のある性質 (例えば圧力)を気体分子の物理量の平均値と対応づけるこ とができるようになる. .. 速度分布関数の形 空間の中で気体の運動が等方的であれば,fx, fy, fzに差異 はないはずであり, fx=fy=fz=f (12) と考えてよい.また,空間の中で気体の運動が位置によらず 等方一様であれば,式(10)の確率は,速さ [= [2 x+[2y+[2z のみで定まるから,それを h([2)=f([ x)f([y)f([z) (13)

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5 201 図 25°Cの種々の気体分子の速さ分布. 5 201 ―( )― Vol. 56, No. 6, 2013 とおく.さて,この式の両辺を [xで偏微分すると, h′([2)2[ x=f ′([x)f([y)f([z) (14) 式(13), (14)を辺々割ると, h′([2) h([2)= 1 2[x f′([x) f([x) (15) [x,[yについても同様であるから, h′([2) h([2)= f′([x) 2[xf([x) = f′([y) 2[yf([y) = f′([z) 2[zf([z) (16) これが全ての [x, [y, [zで成立するためには,(16)の各辺が 定数でなければならない.これを a とおいて f′ f= d d[x (log f )=2[xa

⇒ log f=a

f

2[xd[x=a[2x+C

∴f([x)=Aea[ 2 x (17) 全空間で積分して値が 1 となるように定数 A を定めよう. すると,a<0 でなければならず, 1=

f

∞ -∞ Aea[2du=A p |a| (18) 改めてb=|a| とおいて,確率(10)は F( …[)d …[=

(

b p

)

3 2 e-b([2 x+[2y+[2z)d[xd[yd[z (19) なる関数形である.定数b は,この先に例えば圧力を計算 して経験式 p=nkT と合致するよう定めればよい. .. 圧力の計算と b の決定 式(19)を用いて,圧力を計算してみよう.x 軸に垂直な微 小面 dS に衝突する気体分子が壁に与える力積は 2m[xであ る.ある時間dt 内に衝突する総数 N は,長さ [xdt 底面 dS の立体に含まれる分子数であるから,密度を n とおけば,N =n[xdSdt したがって,壁の単位面積,単位時間に与える力 積は

f

∞ 0 N2m[xf([x)d[x dSdt (20) =2nm

f

∞ 0 [xf([x)d[x=2nm b p

f

∞ 0 [2 xe-b[ 2 xd[ x =nm 2b (21) と計算され,これが圧力 p=nkT と等しいと考えて, b= m 2kT (22) を得る. 問題 統計平均を計算する際に速さは無限大までをとる.しか し,実際のところ真空容器は有限の大きさであるから,どんなに短 い時間で考えるとしても,必ず考えている立体の端が真空容器の外 にはみ出してしまう速さの下限がある.すなわち無限大までを積分 に含めることはできないようにみえるが,これはどう考えたらよい だろうか. .. マックスウェル・ボルツマンの速度分布関数 さて,上述の結果を整理して,気体分子の速度分布は F( …[)d …[=

(

m 2pkT

)

3 2 exp

(

-m[2 2kT

)

d …[ (23) で与えられ,マックスウェル・ボルツマンの速度分布関数と 呼ばれる.速度成分 [xについてのみ取り出せば,分布関数 は次の式で表される. f([x)d[x=

(

m 2pkT

)

3 2 exp

(

-m[ 2 x 2kT

)

d[x (24) また,極座標系で …[を表すと,体積が d …[=d[xd[yd[z⇒d …[=

[2sinud[dudq と変換されることから,u, q について積分す

ることにより,速さ [=| …[|= [2 x+[2y+[2zについての分布関 数 ([)が以下のように与えられる. ([)d[= 4 p

(

m 2kT

)

3 2 [2exp

(

m[2 2kT

)

d[ (25) 図に,代表的な気体について式(25)の速さ分布を示す. 温度は25°Cである. 速さの分布関数 ([)と d[の積 ([)d[は,温度 T で熱平 衡にある気体分子の内で([,[+d[)の範囲に速度をもつ分 子の割合を与える.この関数を用いると,エネルギーや平均 速度などのような,分子の熱運動に関連する速さのみに依存 する物理量 A([) の平均値 ˜A(統計平均)を以下の積分によ り求めることができる. ˜A=

f

∞ 0 A([)([)d[ (26) .. 気体分子の平均速度 式(26)を気体分子の速度に適用すれば,平均速度 š[は次

(4)

6 202 図 25°C,空気の単分子層形成時間 tmと平均自由行程l の 圧力依存性. 6 202 ―( )― J. Vac. Soc. Jpn. 式で与えられる. š [=

f

∞ 0 [f([)d[= 8kT pm (27) ところで得られた平均速度は,(9)とは若干係数が異なる. もちろん統計平均という意味では,(27)が正しい.実は, (9)は速度の 2 乗 [2の統計平均の平方根に等しい.すなわち, š [2

f

∞ 0 [2f([)d[ 3kT m (28) である.(8)は,気体分子の入射の角度と速度分布を考慮し ない計算であったため係数が異なってしまったのである. 問題 空気の主成分である窒素の300 K における平均速度を求め なさい.また,そのその大きさを音速と比較してみなさい. . 入射頻度 圧力を運動量入射の平均として算出できることが判り,統 計平均を取るという手法の確かさが理解できた.すると他の 物理量の入射平均値を計算したくなるのは道理であろう.真 空科学で重要なものとして,壁面の単位面積に単位時間に入 射する分子数がある.この物理量は入射頻度と呼ばれ,記号 G で表すこととする.まずは計算を実行してみる. .. 入射頻度の算出 気体分子の入射頻度は,式(20)で 2 m[xを 1 に置き換え て積分することで,以下のように求められる. G=

f

∞ 0 N f([x)d[x dSdt =n

f

∞ 0 f([x)d[x =n m 2pkT

f

∞ 0 [xe-b[ 2 xd[ x=n kT 2pm =n 4 8kT pm= 1 4 n š[ (29) さらに,(1)式を用いて書き直すと, G= p 2pmkT (30) 真空科学においては入射する気体分子数を体積に変換して 表すことが多い.空間で分子 1 個が占有する体積が分子数 密度 n の逆数 1/n であることに留意すれば,(29)から,毎 秒単位面積に入射する気体の体積は次のように換算される. GV= 1 n G= 1 4 [=š kT 2pm (31) ここで,GVを体積入射頻度と呼ぶ.25°Cの空気については, GV=117 m3s-1m-2=11.7 ls-1cm-2 (32) となる.この数値は,真空ポンプの排気速度や配管のコンダ クタンスを推算する際に不可欠であるので,ぜひ記憶に留め てほしい.体積入射頻度は,分子の平均速度 š[により定まる ため,(31)式で表される通り気体分子の分子量の平方根に 反比例し,温度の平方根に比例する. .. 単分子層形成時間 入射頻度は,分子の壁面での散乱過程が現象に大きく関与 してくる場合にも重要な指標となる.例えば,清浄な固体表 面が入射分子で覆いつくされる時間(清浄とみなせる許容時 間)の目安として単分子層形成時間があり,入射頻度により 求めることができる. すなわち,単分子層形成時間を tmとすれば,清浄表面に 入射した分子がすべて付着すると仮定すれば tm= Nm G = Nm 2pmkT p (33) と計算される.ここに,Nmは表面の単位面積に付着しうる 最大分子数であり,1019個 m-2程の量である.図に単分 子形成時間の圧力依存性を示す.tmが 1 時間となる圧力は 10-7Pa 程度であることが判る.清浄表面を取り扱う応用分 野において超高真空が必要な理由がここにある. 問題 25°Cの水素について体積入射頻度を計算してみなさい. . 平均自由行程 希薄気体の中で分子が他の分子と衝突してから次に衝突す るまでに移動する距離を自由行程と言い,その平均を平均自 由行程(mean free path)と呼びl で表す.平均自由行程が 真空容器の寸法よりも大きくなる圧力領域(分子流領域と呼 ぶ)においては,気体の流れや粘性,熱伝導というような輸 送過程が,平均自由行程が真空容器の寸法よりも十分小さい 圧力領域(粘性流領域と呼ぶ)で示すのとは著しく異なった 様相を示す.真空科学を理解する上で,平均自由行程は極め て重要な概念である. .. 剛体球モデルによる平均自由行程 図は,分子密度 n の気体の中を速度 [で運動する分子 を模式的に示したものである.平均自由行程 l は l=単位時間に分子が移動する平均距離 単位時間に分子が衝突する回数 (34) ように定義できるが,分子を剛体球と考えた場合,表式は以 下のように求まる.

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7 203 図 平均自由行程の考え方(剛体球モデル). 図 異なる温度の真空容器の間の気体の平衡. 7 203 ―( )― Vol. 56, No. 6, 2013 今,分子直径はすべて d とし,各々の分子は静止してい るとすると,速度 [で飛行する分子の中心から半径 d の円 柱状領域内に存在する分子は全て衝突する.衝突回数は, Dt 時間に散乱される分子数 =[半径 d,長さ [Dt の円柱の体積]×[分子密度 n] =pd2n[Dt となる.一方,Dt 時間内の分子の移動距離は,[Dt である から,これらを(34)式に代入することにより, l= 1 pd2n (35) を得る. この式は空間に存在する他の分子は全て静止していると仮 定して導出したが,他の分子が運動しているとした場合に は,やや煩雑な計算を経て,平均自由行程は次のように表わ されることになる. l= 1 2pd2n=3.108×10 -24 T d2p[m] (36) 25°Cの空気については,l と圧力 p [Pa]の関係は次のよう な記憶しやすい形となる. l=6.6 p [mm]~ 1 p [cm] (37) 図 3 に,25°C空気の平均自由行程の圧力依存性を示す.図 には,10-2Pa という比較的高い圧力で平均自由行程が 1 m に達してしまうことを示した. 問題 25°Cの空気の平均自由行程が次の寸法よりも小さくなる圧 力をそれぞれ求めなさい. 1. 研究用の真空容器の代表的な直径30 cm 2. ガス導入に用いるステンレススチール配管の内径 3 mm 3. 真空フランジのシール部に発生する漏れ傷の幅の想定値3 mm 4. ハードディスクのヘッドとディスク距離の典型値30 nm .. 熱遷移現象 平均自由行程の重要性を示す例として,図に示すよう に,圧力と温度が各々(p1, T1)と(p2, T2)である 2 つの 真空容器が直径 d の開孔で結合されている場合の平衡状態 を考えてみよう. l≪d の場合 粘性流領域では分子の空間での衝突によ り,局所的な圧力の釣り合いが成立ち, p1=p2 l≫d の場合 空間での分子衝突が無視できる分子流領 域では,開孔に左右から飛び込む分子数の平衡が成り 立つ.すなわち, G1→2=G2→1 これより, p1 p2 = T1 T2 (38) となる. このように平均自由行程が長くなる低圧領域において温度 差により圧力差が生ずる現象を熱遷移(thermal transpira-tion)という.真空容器と真空計に温度差がある場合には, 熱遷移現象を考慮した補正が必要となる場合がある. 〔文 献〕 1) 堀越源一真空技術〔第3 版〕(東京大学出版会,東京,1994). 2) 林 主悦編集真空技術(共立出版,東京,1985). 3) 熊谷寛夫,富永五郎,辻 泰,堀越源一真空の物理と応用 (裳華房,東京,1970). 4) 富永五郎,辻 泰真空工学の基礎(日刊工業新聞社,東京, 1964).

5) T. A. Delchar: Vacuum Physics and Techniques (Chapman & Hall, London, 1993).

6) L. B. Loeb: Kinetic Theory of Gases, Dover Edition (Dover Publi-cations, Mineola, 1961).

7) S. Dushman: Scientiˆc Fundations of Vacuum Technique, 2nd edition (John Wiley & Sons, 1961).

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