<特
集>
環境騒音の影響とその評価に関する研究結果
*
(騒音小委員会)
菊 地 英 男
*・門 屋 真希子
*鴨志田
均
*・古 田 修 一
* キーワード ①環境騒音 ②等価騒音レベル(LAeq) ③建屋内外のレベル差 ④推計式 ⑤周波数 要 旨 騒音小委員会では,2009年度に一般住民が暴露させる機会が多い騒音発生源をわかりや すい形で表した「騒音の目安」を公表し活用されている。しかし,個人が暴露される騒音 を把握するためには,多くの時間を過ごす室内の騒音を把握する必要があることから,騒 音小委員会では2009年度から2012年度までのカ年計画で,全国で統一した測定手法によ る等価騒音レベルの測定と共通フォーマットによる建物構造等の調査を行った。その結 果,建屋内外における騒音のレベル差は,昼間と夜間の時間区分によらず約22dB であっ たが,屋外から室内に伝搬する騒音に影響を与える家屋構造等の違いによる騒音レベルの 差は統計的に有意な差は見られなかった。また,建物内外のレベル差について,建物構造 等を説明変数とした推計式(重相関係数 R=0.842)を作成した。屋外と室内の周波数分析 結果から,周波数が上昇するほどレベル差が大きくなり400Hz からkHz ではその差が 20dB 以上であった。今回の調査により,屋外の騒音が室内に与える影響の程度を把握で きたことは,騒音苦情対応のみならず快適な居住環境の構築に活用されることが期待でき る。 1. は じ め に これまで,全国環境研協議会では「騒音の目安」 づくりとして全国的な騒音調査を実施し,等価騒 音レベルのデータベースを構築してきた。この データベースは今後も継続してデータを蓄積して いく必要があるが,一方でこれらの騒音の影響を 明らかにする課題も残されている。そこで,屋外 の環境騒音が室内の居住者に対してどの程度影響 を及ぼしているか,建物構造や地域制を考慮した 調査を行い,問題となる騒音源について有効な対 策を立案することが,個人暴露量を低減させる もっとも効果的な方法であると考えられる。この ような建物構造や地域制を考慮した調査は,全国 一斉に実施することが必要であるため全国環境研 協議会に騒音小委員会を設置し,2009年度から 2012年度までのカ年(東日本大震災により実質 カ年)にわたり全国17機関で調査し,屋外と室 内の騒音レベル同時測定は84件,また周波数分析*Study on the Evaluation and Impact of Environmental Noise *Hideo K
IKUCHI(宮城県保健環境センター) Miyagi Prefectural Institute of Public Health and Environment
*Makiko K
ADOYA(東京都環境科学研究所) Tokyo Metropolitan Research Institute for Environmental Protection
*Hitoshi KAMOSHIDA(川崎市環境総合研究所) Kawasaki Research Institute for Environment Protection *Syuichi F
は述べ20件のデータが得られたので,それらを取 りまとめた結果を報告する。 2. 調 査 方 法 調査に当たり,統一した手法で騒音測定や対象 家屋の構造調査等を行う必要があることから,調 査測定全体に係わる基礎的事項と測定・評価方法 等について詳細なマニュアル1)を作成し,表 1 に 示す調査協力機関に配布した。測定は,住民が日 常生活で使用する室内とその室内に直接影響を及 ぼす屋外において,積分型騒音計により騒音レベ ルを分間隔で原則として24時間連続測定した。 室内に設置するマイクロホンは部屋の中央に高さ 1.2m〜1.5m,屋外に設置するマイクロホンはで きるだけ室内のマイクロホンと同じ高さで,建物 の反射を避けるため外壁等の反射物から3.5m 程 度 離 れ た 場 所 と し,測 定 項 目 は,LAeq,LA95,
LA90,LA50,LA10,LA05,LAmax,LAminと し た。
なお,住宅の屋外と室内の騒音を周波数ごとに把 握するために,マイクロホンの高さ等は騒音レベ ルの測定と同一条件で騒音計の周波数特性は平坦 特性を原則として1/3オクターブ分析を行った。 また,測定日は年末年始等の特異日を除き,天候 についても雨天や強風等を除き周囲環境が平均的 な日を選択した。 3. 調 査 結 果 騒音の測定データは84件得られたが,そのうち 室内から発生する音の影響等により屋外と室内の レベル差を把握できないデータや測定時間が短い 地点等を除いた70件のデータを用いて検討した。 屋外および室内において分ごとに得られた LAeqを表 2 に示す除外処理を行ったのち,それぞ れのデータをエネルギー平均して LAeq,1hを算出 し た。ま た 時 間 区 分 ご と の 評 価 値 は 昼 間 (6: 00〜22:00)および夜間(22:00〜6:00)の時間区分 ごとに得られたすべての LAeq,1hをエネルギー平 均して算出(以下「LAeq」という。)した。 3.1 屋外および室内における LAeqの分布 屋外と室内の LAeqおよび屋外と室内の LAeqの 差(以下「内外レベル差」という。)について,時 間区分ごとに算出した算術平均値および標準偏差 (σ)などの統計値を表 3 に示す。屋外においては ◎長野県環境保全研究所 山梨県衛生環境研究所 神奈川県環境科学センター ◎宮城県保健環境センター 秋田県健康環境センター ○東京都環境科学研究所 福島県環境センター 新潟県保健環境科学研究所 茨城県霞ケ浦環境科学センター 表中◎は委員長(H21年度は長野県,H22年度から宮城県),○ は幹事を示す。 千葉県環境研究センター 表 1 調査協力機関 ○名古屋市環境科学調査センター 浜松市保健環境研究所 北海道環境科学研究センター ○川崎市環境総合研究所 青森県環境保健センター さいたま市健康科学研究センター 静岡県環境衛生科学研究所 ③ LAeq,1minごとに屋外と室内のレベル差を算出する。 ④レベル差の算術平均値と標準偏差(σ)を算出する。 ⑥レベル差がdB 未満のデータを屋外・室内とも除外する。 ⑤レベル差の算術平均値±1.96σ以外のデータを屋外・室内 とも除外する。 表 2 評価値算出における除外処理方法 ① LAeq,1minが L05を越えるデータを除外する。 ② LAeq,1minの屋外又は室内で除外されたデータは屋外 ・室内とも除外する。 44.8 35.1 最小値 屋 外 室 内 内 外 レベル差 注) t 値の欄で**は危険率%で有意であることを示す。 時 間 区 分 時間区分ごとの LAeq(dB) 表 3 時間区分ごとの LAeq平均値および標準偏差 平均値 最大値 12.7 12.3 データ数 t 値 区分 22.5 16.2 6.77.2 7069 4.14** 昼 間 夜 間 33.828.9 49.247.4 6.6 8.5 7069 4.81** 昼 間 夜 間 56.350.1 68.969.2 標準偏差 4.5 5.0 7069 1.67 昼 間 夜 間 22.521.2 35.936.5
昼間56.3dB,夜間50.1dB と6.2dB の差,室内 では昼間33.8dB,夜間28.9dB と4.9dB の差が あった。これらの差について有意差検定(t 検定) を行ったところ危険率%で有意な差が得られた ことから,昼間と夜間では明らかな差があるとい える。なお,内外レベル差については昼間22.5 dB,夜間21.2dB と1.3dB の差であったが,有意 差検定の結果では有意な差は認められなかった。 また,建物の防音性能については,通常の建物に おいておおむね期待できる平均的な防音性能は, 窓を閉めた状態で25dB 程度であるといわれる2) が,今回は内外レベル差が約22dB であり若干防 音性能が小さい結果であった。 次に,時間区分ごとの LAeqについて,横軸に dB ステップの代表値として中央値を,縦軸を 発生頻度として屋外,室内および内外レベル差の 頻度分布を図 1〜図 3 に示す。これらの図から, もっとも発生頻度が多いのは,屋外では昼間57.5 dB,夜間47.5dB と昼間の方が10dB 大きく,室 内では昼間32.5dB,夜間27.5dB と昼間の方が dB 大きくなっていた。しかし,内外レベル差を 見ると昼間,夜間とも22.5dB と時間区分による 差は見られなかった。 3.2 対象家屋,部屋および周辺状況等による 内外レベル差 家屋の内外レベル差に影響を与えると思われる 項目については,表 4 に示す分類とした。 建物状況の分類は,住宅の種類や建物構造な ど,対象部屋状況の分類は,部屋の種別や広さ, 室内の床の種類など,建物の窓や外壁の状況の分 類は,騒音の侵入する側の窓の状況や雨戸の有 無,外壁の種類など,建物の周辺状況の分類は, 用途地域や影響を及ぼす騒音発生源などとした。 また,内外レベル差については,3.1の検討結果 から時間区分による内外レベル差は認められない ことが判明したため,地点ごとに屋外および室内 それぞれの LAeq,1h を24時間についてエネル ギー平均値した LAeq,24h を算出し,その差を 内外レベル差とした。 3.2.1 建物の状況による内外レベル差 建物状況のアイテムを住宅の種類,建物構造お よび新・改築からの経過年数の項目として,各 アイテムを細分化(カテゴリ化)し,カテゴリごと の内外レベル差の平均値等を表 5 に示す。戸建住 宅やマンションなどの住宅の種類による差につい ては,戸建住宅が22.4dB,アパート(職員住宅, 図 2 室内における LAeqの頻度分布 図 3 内外レベル差の LAeq頻度分布 図 1 屋外における LAeqの頻度分布 0 5 10 15 20 32.5 42.5 52.5 62.5 72.5 LAeq (dB) 㢖䚷ᗘ 㛫 ኪ㛫 0 5 10 15 20 25 12.5 22.5 32.5 42.5 52.5 LAeq (dB) 㢖㻌㻌ᗘ 㛫 ኪ㛫 0 10 20 30 7.5 17.5 27.5 37.5 LAeq (dB) 㢖䚷ᗘ 㛫 ኪ㛫 対象部屋の状況 建物の窓,外壁の状況 建物の周辺状況 用途地域,主な騒音発生源等 窓の種類,窓ガラスの種類,雨戸 の有無,外壁の種類 部屋の種類,広さ,使用目的,床 の種類 住宅の種類,建物構造,新改築の 経過年数 主 な 内 容 表 4 調査結果の分類 分 類 建物の状況
民宿含む)21.9dB,マンション21.7dB であり, 住宅の種類によらずほぼ22dB であった。建物構 造別に見ると,木造モルタルが23.3dB ともっと も大きく,次いで軽量鉄骨,木造と続き,鉄筋コ ンクリートが最小の21.0dB でその差が2.3dB あった。また,新築・改築からの経過年数につい て は, 年 以 下 が 24.1dB,6〜10 年 で 23.8dB, 11〜20年で22.2dB,20年を超えた場合20.6dB と 経過年数が長くなればなるほど差が小さくなる結 果となり,住宅の高気密化や建物の経年劣化が影 響していると考えられる。なお,各アイテム内の カテゴリ間における平均値の差の検定を行った結 果,住宅の種類と建物構造については有意な差は 得られなかったが,新・改築年数については10年 以下と20年超では有意な差が認められた。 3.2.2 部屋の状況による内外レベル差 測定対象とした部屋の状況のアイテムを部屋の 種類,部屋の大きさ,何に使用しているか(使用 目的),部屋の床の種類の項目として,そのカ テゴリごとの内外レベル差の平均値等を表 6 に示 す。部屋の種類として洋室と和室に分類した結果 では,洋室22.4dB,和室22.2dB と差がなかった。 部屋の大きさについては,10m2以下の部屋では 23.1dB,11m2~15m2では22.9dB,15m2を超え る場合は20.5dB と部屋が広くなるほど差が小さ くなる傾向が見られた。部屋の使用目的別では, 3 4 No 住宅の 種 類 建 物 構 造 新・改築 年 数 カテゴリ 統 計 値 カテゴリ間の t 値 注) 統計値の欄中平均及びσ の単位は dB である。 注) カテゴリ間の t 値欄中**は危険率%,*は危険率%で有意であることを示す。 表 5 建物状況による内外レベル差 22.4 21.9 21.7 4.5 4.1 5.5 47 14 9 0.350.43 0.35 0.13 0.43 0.13 平均 σ アイテム n 1 2 14 13 18 23 0.16 1.18 2.77** 0.16 0.87 2.15* 1.18 0.87 1.20 2.77** 2.15* 1.20 1 2 3 4 木 造 木造モルタル 軽 量 鉄 骨 鉄筋コンクリ 22.2 23.3 22.5 21.0 4.6 4.8 3.6 4.8 19 18 15 18 0.69 0.19 0.80 0.69 0.53 1.45 0.19 0.53 1.01 1.45 1.01 1 2 3 戸 建 住 宅 ア パ ー ト マンション 1 2 3 4 年 以 下 〜10 年 11〜20 年 20 年 超 24.1 23.8 22.2 20.6 4.0 5.4 4.9 3.6 統計値 部屋の 種 類 使 用 目 的 カテゴリ間の t 値 床 の 種 類 部屋の 大きさ 注) 統計値の欄中平均及びσの単位は dB である。 注) カテゴリ間の t 値欄中**は危険率%,*は危険率%で有意であることを示す。 表 6 部屋の状況による内外レベル差 平均 σ n 1 2 3 アイテム 4 5 No カテゴリ 10m2 以 下 11 〜 15m2 15m2 超 23.1 22.9 20.5 4.9 3.4 3.9 33 18 16 0.151.80 0.15 1.86 1.80 1.86 1 2 洋和 室室 22.422.2 4.05.0 3828 0.16 0.16 0.90 1.12 1.33 1.32 0.90 0.01 2.22* 0.38 1.12 0.01 1.96 0.70 1.33 2.22* 1.96 2.34 1.32 0.38 0.70 2.34 1 2 3 4 居 間 客 間 寝 室 そ の 他 20.6 24.5 21.8 21.7 4.5 4.5 3.7 4.7 16 19 18 12 2.53* 0.89 0.61 2.53* 1.93 1.65 0.89 1.93 0.12 0.61 1.65 0.12 1 2 3 1 2 3 4 5 畳 カーペット フローリング 絨 毯 そ の 他 23.0 21.5 21.5 26.2 20.7 4.7 3.7 4.6 3.5 4.7 24 11 27 4 4
客間がもっとも大きく24.5dB,次いで寝室21.8 dB,居間20.6dB であった。床の種類について は,絨毯が26.2dB ともっとも差が大きく,次い で畳の23.0dB,カーペット,フローリングの床 は21.5dB と同じであった。各アイテム内のカテ ゴリ間における平均値の差の検定を行った結果, 部屋の使用目的では客間と居間は危険率%で有 意な差が認められた。また,床の種類では絨毯の データ数が件と少なかったが,カーペットとは 危険率%で有意な差が認められた。 3.2.3 建物の窓,外壁による内外レベル差 対象とした窓・外壁等の状況のアイテムとして 建物の窓の種類,二重窓の有無,ガラスやサッシ の種類,雨戸の有無,外壁の種類などの 項目と して,そのカテゴリごとの差の平均値等を表 7 に 示す。窓の種類については,その他(出窓,滑り 出し窓,スライド式窓など)が24.0dB ともっと も差が大きく,次いで,掃き出し窓22.3dB,腰 高窓21.5dB の順になっていた。二重窓の有無に ついては,有りが23.4dB,無しが22.6dB と約 dB の差があった。窓ガラスの種類については, 複層ガラスが23.5dB,単層ガラスが21.8dB と 1.7dB の差であった。窓のサッシの種類では, アルミサッシが22.7dB,次いで木・樹脂サッシ 21.0dB,鉄などの金属サッシ20.0dB の順となっ ており,アルミと金属では2.7dB の差があった。 雨戸の有無については,有りが23.3dB と無しの 21.7dB 場合よりも1.6dB 大きかった。雨戸のあ る建物21件について,その種類別に集計した結 果,その他(通風ガラリ,シャッター等)が26.0 dB,中空単板が25.1dB,単板21.1dB となって おり,シャッター等と単板では4.9dB の差であっ た。外壁の種類ごとに見ると,レンガ・ブロック が25.9dB,次いでサイディングの23.1dB,セラ ミック22.7dB,モルタル22.5dB の順となってい た。各アイテム内のカテゴリ間における平均値の 差の検定結果では,いずれのカテゴリ内でも有意 な差は認められなかった。 統計値 1 2 3 サッシの 種 類 窓の種類 ガラスの 種 類 カテゴリ間の t 値 6 雨 戸 二 重 窓 注) 統計値の欄中平均及びσ の単位は dB である。 注) カテゴリ間の t 値欄中**は危険率%,*は危険率%で有意であることを示す。 表 7 窓・外壁等の種類による内外レベル差 0.87 1.81 22.7 21.0 20.0 ア ル ミ 木 ・ 樹 脂 金 属 平均 σ n 1 2 3 アイテム 4 5 No カテゴリ 有 り 無 し 不 明 23.4 22.6 21.0 3.6 4.3 5.1 13 34 23 0.581.47 0.58 1.25 1.47 1.25 1 2 3 掃 き 出 し 腰 高 そ の 他 22.3 21.5 24.0 5.2 3.1 3.8 40 22 8 0.720.87 0.72 1.81 1.38 1.38 1 2 単層ガラス複層ガラス 21.823.5 4.54.2 5317 1.35 1.35 1 2 3 サイディング セラミック モ ル タ ル レ ン ガ 等 そ の 他 不 明 1 2 3 4 5 6 外 壁 の 種 類 1.65 0.45 0.91 0.45 0.91 1.65 55 6 9 4.6 3.4 4.3 1 2 有無 りし 23.321.7 5.14.2 2148 1.58 1.31 0.49 10 7 3 1 6.2 3.1 2.0 ― 21.1 25.1 26.0 25.9 単 板 中 空 そ の 他 不 明 1 2 3 4 雨 戸 の 種 類 1.76 1.02 1.47 2.08 0.10 1.65 0.88 1.35 1.83 0.10 1.00 0.74 1.24 1.83 2.08 0.43 0.08 1.24 1.35 1.47 0.14 0.08 0.74 0.88 1.02 0.14 0.43 1.00 1.65 1.76 22 4 22 3 10 9 4.5 5.6 4.3 5.9 4.4 3.7 23.1 22.7 22.5 25.9 20.3 21.1 0.49 1.99 1.70 1.31 0.45 1.70 1.58 0.45 1.99
3.2.4 用途地域による内外レベル差 都市計画用途地域については,第種・第種 低層住居専用地域,第種・第種中高層住居専 用地域,第種住居地域などを住居系,商業地域, 近隣商業地域,準工業地域を商・工業系,市街化 調整区域,無指定区域などをその他にカテゴリ化 して集計した結果を表 8 に示す。カテゴリごとの 平均値は,商・工業系が24.0dB と大きく,次い で住居系22.2dB,その他21.9dB の順であり, 商・工業系と住居系で1.8dB,商・工業系とその 他の地域で2.1dB の差であったが,これらの差 について有意差検定の結果からは差が認められな かった。 3.2.5 騒音の影響による内外レベル差 測定対象とした家屋周辺における騒音の発生源 のアイテムを工場事業場騒音,自動車交通騒音, 航空機騒音,鉄道騒音,自然音および生活音(そ の他の騒音)の項目とし,その騒音の有無につ いて差の平均値等を表 9 に示す。事業場騒音の影 響がある家屋は件と少なかったが,その平均値 は21.1dB と影響が無い場合の22.3dB より1.2 dB 小さかった。自動車騒音の影響が有る家屋は もっとも多く56件であり,その平均は22.1dB と 影響が無い場合の22.9dB よりも0.8dB 小さかっ た。航空機騒音の影響については,影響有りが 22.7dB と影響無しの22.0dB より0.7dB 大きく, 鉄道騒音の影響については,影響有りが21.8dB と影響無しの22.4dB よりも0.6dB 小さかった。 鳥などの自然音の影響については,影響有りの 21.0dB は影響無しの23.0dB よりも2.0dB 小さ く,犬の鳴き声や通行人の話し声などの生活音の 影響については,影響有りの20.9dB は影響無し の23.2dB より2.3dB 小さかった。各アイテム内 のカテゴリ間における差の有意差検定を行った結 果,生活音の有無については,危険率%で有意 な差が認められたが,他のアイテムについては有 意な差が認められなかった。 3.3 内外レベル差の推計式の検討 内外レベル差の推計式は,全70件のデータのう ち測定時間の短いデータを除く61件のデータを用 いて検討した。各家屋の内外レベル差を外的基準 とし,建物構造,外壁の種類や部屋の種類など 3.2.1〜3.2.5のアイテムのうちデータの少ない雨 戸の種類を除く20アイテム59カテゴリを用いて, 数量化分析Ⅰ類を用いて解析した結果,重相関係 数が R=0.909であった。しかし,データ数(61 個)に対するカテゴリ数は半分以下が望ましいこ とから以下の方法でアイテムおよびカテゴリを整 理した。 ① 内外レベル差に対して偏相関係数が小さい アイテムを除外 ② アイテム同士の相関係数が大きいアイテム は偏相関係数の小さいほうを除外 ③ アイテム内のカテゴリ値が接近しているカ テゴリを統合 このことにより10アイテム29カテゴリに整理 し,重相関係数 R=0.842が得られ,対象とした すべてのアイテムおよびカテゴリを用いた場合よ り重相関係数が若干低下したが,説明変数が半分 でも十分に推計可能であることが判明した。した 1 2 3 1 2 3 カテゴリ 統計値 カテゴリ間の t 値 注) 統計値の欄中平均及びσ の単位は dB である。 注) カテゴリ間の t 値欄中**は危険率%,*は危険率% で有意であることを示す。 表 8 用途地域ごとの内外レベル差 No 平均 σ n 4.0 4.3 5.0 29 8 33 1.130.24 1.13 1.09 0.24 1.09 住居系 商・工業系 その他 22.2 24.0 21.9 1 2 1 2 1 2 自動車騒音 事業場騒音 航空機騒音 No 統計値 鉄道騒音 自然音 カテゴリ間 の t 値 生活音 注) 統計値の欄中平均及びσ の単位は dB である。 注) カテゴリ間の t 値欄中**は危険率%,*は危険率% で有意であることを示す。 表 9 騒音の影響による内外レベル差 22.7 22.0 21.8 22.4 21.0 23.0 20.9 23.2 有り 無し 有り 無し 有り 無し 有り 無し 有り 無し 1 2 1 2 アイテム 平均 1 2 σ n 3.3 4.6 646 0.60 0.60 2.21* 56 14 21 49 17 53 26 44 29 41 4.5 4.8 4.9 4.3 4.3 4.6 4.1 4.6 3.7 4.8 22.1 22.9 有り 無し カテ ゴリ 0.63 0.52 0.44 1.79 2.21* 0.63 0.52 0.44 1.79 1 2 21.122.3
がって,内外レベルは下式により各アイテムのカ テゴリに与えられたカテゴリスコア(表 10)を用 いて,推計することが可能である。解析対象とし た61地点について下式により求めた推計値と実測 値の関係を図 4 に示す。回帰係数がより小さい ことから,この回帰式から内外レベル差を推計す る場合は,平均値を中心として差が小さいところ で若干高めに,大きいところでは低めに推計され ることを考慮する必要がある。 また,建物の内外レベル差に影響を及ぼす主な アイテムの偏相関係数(表 11)を見ると外壁の種 類>用途地域・生活音>二重窓の有無>部屋の使 用目的の順であった。 内外レベル差=
∑
10 i=1 AiC + 22.5 AiC:アイテムのカテゴリスコア(表 10) 3.4 屋外および室内における周波数分析結果 周波数分析については,屋外11点,室内 地点 で行った。測定機器の種類によって測定できる周 波数範囲が異なるため,ここでは1/3オクターブ バンドの中心周波数20Hz〜kHz を対象として 整理した。なお,一部 A 特性で測定したデータ については,周波数補正により平坦特性に変換し た。屋外および室内について,横軸を1/3オク ターブバンド中心周波数,縦軸を音圧レベルと し,各地点の結果とバンド毎の算術平均値(太線) を図 5,図 6 に示す。屋外,室内とも,地点によ るバラツキは大きいが,周波数が高くなるほど音 圧レベルが小さくなる傾向がある。この周波数ご との音圧レベルの変化を平均値で見ると,オク ターブ当たり屋外で約2.5dB,室内で約dB の 減衰であった。次に,内外レベル差を周波数ごと に見るために,屋外と室内で同時に測定できた 地点について,横軸を1/3オクターブバンド中心 周波数,縦軸を屋外と室内の音圧レベル差とし て,各地点の結果とバンド毎の算術平均値(太線) を図 7 に示す。地点によるバラつきはあるもの の,全体的には周波数が高くなるにつれ音圧レベ ル差が大きくなるが,高周波数域では小さくなる 航 空 機 騒 音 .有り .無し −2.131.69 新 改 築 経過年数 部 屋 の 大 き さ 生 活 音 .15m2以下 .15m2超 −1.830.65 .〜10年 .年以下&11〜20年 .20年超 2.20 0.35 −1.46 .アパート .マンション .戸建 2.39 0.64 −0.91 カテゴリ カテゴリスコア 表 10 アイテムのカテゴリスコア(dB) 3.23 2.93 −0.86 −1.51 −4.14 4.46 0.41 −1.71 1.85 −0.90 .客間 .その他 .絨毯 .畳 .カーペット,フローリング .その他 .有り .無し .不明 .セラミック .モルタル .サイディング+その他 .レンガ .不明 .商工業系 .その他 .住居系 .有り .無し 部 屋 の 使用目的 床の種類 アイテム 二 重 窓 住 宅 の 種 類 外 壁 の 種 類 用途地域 2.35 −1.06 3.78 1.47 −1.08 −2.95 3.51 −0.13 −1.81 単相関係数 住宅の種類 新・改築経過年数 部屋の大きさ 部屋の使用目的 床の種類 二重窓の有無 外壁の種類 用途地域 航空機騒音 生活音 偏相関係数 レンジ(dB) 表 11 外的基準とアイテムの編相関係数等 −0.069 0.372 0.265 0.307 0.260 0.179 0.097 0.121 0.062 0.350 アイテム 0.401 0.417 0.330 0.508 0.477 0.538 0.602 0.561 0.380 0.560 3.30 3.66 2.49 3.42 6.73 5.32 7.37 6.17 2.76 3.82 図 4 内外レベル差の実測値と推計値の関係 10 20 30 40 10 20 30 40 ᐇ ್䚷㻔㼐㻮㻕 ᥎ィ್䚷㻔㼐㻮㻕 r = 0 . 8 4 2 n = 6 1傾向が見られる。周波数ごとに算術平均した音圧 レベル差を見ると,20Hz 付近では約10dB であ るが,周波数の上昇に伴い差が大きくなり400Hz からkHz までは20dB 以上の差であった。な お,地点№C については,屋外の測定結果がセミ の鳴き声の影響を受けているため,KHz 以上 のデータを除外した。 4. お わ り に 全国環境研協議会企画部会の騒音小委員会に参 加している試験研究機関の協力により,多くの データを収集できたことは非常に意義深いものが ある。屋外と室内の騒音レベルの関係から建物の 内外レベル差を算出した結果,昼間および夜間の 時間区分に関係なく平均で約22dB と環境基準の 根拠となっている防音効果約25dB よりも小さい 結果となった。これは,限られたデータの中での 内外レベル差であることから,今後のデータ蓄積 により確認する必要があると思われる。建物の種 類や構造など建物の状況,対象とした部屋の状 況,外壁の状況や建物の周辺状況など21アイテム について,アイテム内を細分化したカテゴリ間の 内外レベル差について検討した結果,アイテム内 のカテゴリ平均値では差が見られたものの,ほと んどのアイテムでは統計的検定による有意な差が 得られなかった。次に,外的基準を建物の内外レ ベル差として,建物の種類・構造など20アイテム 59カテゴリを用いて数量化分析Ⅰ類を用いて解析 した結果,10アイテム29カテゴリとほぼ半分の情 報量で重相関係数が R=0.842となり推計可能で あることが判明した。又,内外レベル差に影響を 与える主な要因は外壁の種類>用途地域・生活音 の有無>二重窓の有無>部屋の使用目的の順で あった。 また,屋外と室内の内外レベル差を周波数分析 により確認したところ,20Hz 付近では10dB 程 度であったが,400Hz からkHz までは20dB 以 上のレベル差であった。 最後に,今回の共同研究により屋外の騒音が室 内に与える影響の程度を把握できたことは,今後 の騒音苦情対応や騒音対策に活用できることか ら,快適な居住環境の創造に資することを期待す るものです。 ―引 用 文 献― 1) 全国環境研協議会騒音小委員会,「環境騒音の影響とそ の評価に関する研究」に係る騒音測定マニュアル(最終 版),2011.3 2) 中央環境審議会,騒音の評価指標等の在り方について(答 申),1998.5.22 図 5 屋外における周波数分析結果 図 6 室内における周波数分析結果 図 7 周波数毎の内外レベル差 0 20 40 60 80 100 20 40 80 160 315 630 1.25k 2.5k 5k ࢜ࢡࢱ࣮ࣈࣂࣥࢻ࿘Ἴᩘ+] 㡢ᅽࣞ࣋ࣝG% $ % & ' ( + , -. / 0 ᖹᆒ Y = 0 . 7 1 X + 6 . 6 0 20 40 60 80 20 40 80 160 315 630 1.25k 2.5k 5k ࢜ࢡࢱ࣮ࣈࣂࣥࢻ+] 㡢ᅽࣞ࣋ࣝG% $ % & ( ) * + / 0 ᖹᆒ 0 10 20 30 40 20 40 80 160 315 630 1.25k 2.5k 5k ࢜ࢡࢱ࣮ࣈࣂࣥࢻ࿘Ἴᩘࠉ㸦+] 㡢ᅽࣞ࣋ࣝࡢᕪG% $ % & ( + / 0 ᖹᆒ