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権利保護の利益についての一省察--行政処分の取消訴訟を中心として 利用統計を見る

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権利保護の利益についての一省察--行政処分の取消

訴訟を中心として

著者

渡部 吉隆

雑誌名

東洋法学

27

1

ページ

1-13

発行年

1984-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003601/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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権利保護の利益についての一省察

   i行政処分の取消訴訟を中心としてf

渡 部

吉 隆

一 二 三

序説

権利保護の利益に関する従来の見解とその吟味 権利保護の利益の本質と取消訴訟の本来的目的・機能 序  説 8 およそ、民事の訴訟においては、﹁利益なければ訴訟なし。﹂といわれているごとく、国民が国家の制度として の民事訴訟を利用するには、制度本来の目的からみて、また、その効率的な運用の点からみて、これを利用するに足     東洋法学       一

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    権利保護の利益についての一省察       二 るだけの正当な利益ないし必要性がなければならない。これが﹁権利保護の利益﹂︵男・。讐。 ・。 ・9葺恩簿窪。馨︶といわれ るものである。  このように、訴訟制度を利用するには権利保護の利益がなければならないというこどは、訴訟法の大原則であって、       ︵1︶ 行政庁の違法な処分の取消しを求める行政訴訟についても、別異に取扱うべき理由はない。  口 ところで、古典的な訴訟、殊に民事の給付訴訟においては、紛争そのものの中に権利保護の利益ないし必要性 が内在しているとみられることが多く、また、行政庁の違法な処分の取消しを求める訴訟においても、旧行政裁判所 時代のように出訴事項が限定されていた場合には、請求が出訴事項に該当することが、即、権利保護の利益ないし必 要性の存在を意味し、この問題が尖鋭に意識されることはなかった。しかるに、古典的な法構造がゆるみ、訴訟が具 体的なものから抽象的なものへと拡大するにつれて、確認訴訟における即時確定の利益︵いわゆる﹁確認の利益﹂︶ のごとく、権利保護の利益が訴訟制度の利用の許否を決する訴訟要件としての大きな役割を果たすこととなる。殊に、 行政訴訟においては、戦後、新憲法によって出訴事項の制限が撤廃され、請求が法律上の争訟に該当する限り、民 事・刑事の訴訟と同様、司法裁判所の裁判を受け得ることとなったが、この種の訴訟は、一般民事の訴訟とは異なり、 単に当事者の個人的利益を保護するだけではなく、行政の法適合性の保障という一般公益にも奉仕する制度であり、 しかも、その判決は、民事の給付判決のごとぎ紛争解決の実効性の裏付けがなく、ただ観念的な判断のみによって紛 争の解決を図るものである等の事情から、この制度を利用し得る範囲が極めて広く、それだけに、出訴の許否を決す る権利保護の利益がー或いは当事者適格ないし対象適格の問題として、或いは訴えの利益の問題としてーー実務上

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その威力を発揮するに至るのである。そして、そこには各種のファクターが含まれていて、その解決ぽ極めて困難で あり、解決の仕方いかんは、直ちに、憲法の保障する裁判を受ける権利の命運をも決することとなるのである。  日 しかして、従来の訴訟理論の下においては、権利保護の利益は、原告適格ないし対象適格にしても、訴えの利 益にしても、権利又は法律上の利益の侵害を受けた場合でなければ認められず、単なる事実上の利益や反射的利益の 侵害では足りない、と考えられてぎた。そして、こうした考え方は、これまで、行政処分の取消訴訟についてもその まま妥当するものとされてきたし、また、いわゆる侵害行政が行政庁の行政活動の大部分を占めていた当時にあって は、この考え方に従って取消訴訟の原告適格や訴えの利益を把握しても、国民の権利救済にさしたる支障を来たすこ とはなかったのである。  しかるに、近時、経済の高度成長と市民生活の変革、都市人臼の急激な膨張等に伴い、行政は、単に消極的に侵害 行政という秩序維持行政に終始するだけでは足らず、積極的に生産・分配・流通・消費等の過程に干渉して、経済秩 序に一定の方向を与えたり、日常生活に欠くことのできない生活物資や生活役務を給付、提供したり、公害の発生源 に対する規制や過密都市における建築規制を強化したりすることによって、市民の生存権の確保と公共の福祉の増進 を図ることが必要となり、ここに処分の相手方のみならず第三者や地域住民の利害に直接係わり合いをもち、これら の者の事実上の利害関係に対して重大な影響を与える行政行為や、公的扶助の決定とか公物使用の許可・各種サービ スの提供等の﹁給付行政﹂︵い駐3轟。 ・誇窒鉱婁お︶と呼ぽれる非権力的な行政作用が生起し、それらが公行政のうちに 占める比重も次第に増大し、同時に、権力的行政にあっても、その作用領域の拡大と規制の強化を招来し、今や、市

    東洋法学       三

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    権利保護の利益についての一省察       四 民の日常生活は、好むと好まざるとにかかわらず、多様な面で行政作用に依拠せざるを得ないこととなってきた。し かも、各自の利害関係が複雑微妙に絡み合う現在の社会組織の下では、これら反射的ないし一般的な利害関係や非権 力的な授益関係についても、生命身体に対し看過し難い影響を受けるとか、平等原則や比例原則の要請等から、深刻 な争いが生じ得ること、権力的な侵害行政の場合と異なるところがない、といっても過言ではないのである。  そして、これらのことが、大衆民主祉会の出現による市民の権利意識の向上と価値観の多様化等と相まって、今ま では考えられなかったような新規の紛争を数多く産み出し、それが極めてシビヤーな問題として争われるに至った。 ところが、従来の訴訟理論をもってしては、右のごとき事実上の利害関係に影響を与えるにすぎない環境行政や個人 的利益の侵害とはおよそ無縁な給付行政をして司法の統制に服せしめることがでぎないのは、いうまでもない。しか し、これらの行政も、行政活動として、すなわち、行政庁が本来的行政目的を達成するために行なうものであって、 市民の日常生活を一方的に規制して、相手方に対し権力的行政に劣らぬ影響を与える場合もあるのであるから、かか る行為を単なる事実上の行為として、法的統制の外に放置することは相当でない。また、行政がことさら公権力の行 使という法形式によることなく、行政指導等の私法形式へ逃避することによって法的統制から免かれようとするのを 看過すべきでないことは、いうまでもない。そこで、新憲法の趣旨に則り、国民の権利救済に遺憾なきを期し、﹁私 法形式への逃避﹂によって失われる法治行政の原理を確立するためには、これらの行政行為についても、その実体に       ︵2︶ 着目して、取消訴訟を提起し得る途を眉意しておくことが肝要である。  もとより、この問題は、適時・適切な立法とそれに則応する敏速・妥当な行政によって解決されるべぎ筋合いのも

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のではあるが、立法、行政の冷淡や消極的態度の故に、実際的な救済は、﹁最後の砦﹂といわれている裁判所の判断 にまつよりほかないのが実情である。こうした実情を踏まえたうえで、行政訴訟制度を真に社会の要請に適合せしめ て、効果的な機能を発揮させることこそが、行政訴訟に課せられた現代的課題である、といわなければならない。  以上のような観点から、取消訴訟を中心として、権利保護の利益について再検討を試みんとするのが、本稿の目的 である。 ︵王︶ 最高裁判所昭和三四年八月一八臼第三小法廷判決︵民集コニ巻一〇号二一八六頁︶参照Q ︵2︶ 取消訴訟の目的・機能を、このように、必ずしも個人的利益の保護のみに尽きることなく、広く違法な行政処分によっ   て作出された不法状態の排除にあると解すべきものとすれぽ、取消訴訟の訴訟物も、従来のごとく、行政処分の違法性な   いしは具体的権限の存否と解する合理的必要はなく、むしろ、違法な行政処分によって作出された不法状態そのものであ   ると解すべぎであり︵拙稿﹁行政訴訟の現代的課題﹂法曹時報二三巻七号一四頁以下、田中二郎﹁抗告訴訟の本質﹂司法   権の限界所収七三頁以下参照︶、また、かく解することが、取消訴訟をしてその現代的課題に即応して司法救済の機能を   果たさせる所以でもある、といえるであろうQ 二 権利保護の利益に関する従来の見解とその吟味 8 権利保護の利益を欠くとき訴えはその目的を達することができないところから、権利保護の利益は、訴権論の        ︵1︶ 一環として論じられてきた。そして、訴権を私権!殊に請求権ーの一作用とみる私法的請求権説や、訴権を自己 に有利な特定内容の判決を請求する権利とみる権利保護請求権説のごとく、権利保護の利益の本質を、訴訟物たる私     東洋 法 学       五

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    権利保護の利益についての一省察       六 法上の権利関係の属性ないしその反映と理解するにしても、また、本案判決請求権説のごとく、訴訟の公的性格に対 する認識を徹底して、権利保護の利益の本質を、私法上の権利とは無関係な純然たる公法上の権利であると理解する   ︵2︶ にしても、それが一種の法律上の利益であるとみることには変わりはない。  行政事件についても、旧行政裁判所当時、憲法上﹁行政官庁ノ違法処分二由リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴 訟﹂が行政裁判所の管轄に属する行政訴訟である、と規定されていた。また、現行の行政事件訴訟法が、取消訴訟の 原告適格について﹁当該処分⋮の取消しを求めるにつぎ法律上の利益を有する者﹂︵九条参照︶と規定するとともに、 自己の法律上の利益に係わりのない資格で行政行為の法適合佳を争う訴訟を、取消訴訟とは別異の﹁民衆訴訟﹂とし ︵五条参照︶、かかる訴訟は法律に特別の規定がある場合にのみ提起することがでぎる︵四二条参照︶と規定している。 そこで、現行法の解釈としても、取消訴訟の権利保護の利益、たとえば、その原告適格は、行政庁の処分によって権 利・利益を侵害された者に限られ、また、その対象適格は、相手方の権利・利益を侵害する法的効果の生ずる行政処       ︵3︶ 分でなければならない、と解されている。  しかも、従来の学説・判例の大勢は、ここにいう権利又は利益を本案の利益、つまり、当該行為又は処分の効力が 否定されることによって回復し得べき実体法上の利益と観念し、それが一般的利益にとどまることなく、当該個人の 利益であることを必要とすることから、権利保護の利益であるかどうかを実体法における法的利益と反射的利益との 区分基準によって決定せんとする態度をとってきた。これが﹁保護目的論﹂︵o 。9簿N讐・魯讐8籔︶といわれるもので あって、訴権論における権利保護請求権説の強い影響を受けていることを看取することがでぎるのである。

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 口 しかし、保護目的論は、法規の保護目的のいかんによって法的利益と反射的利益とを区別せんとするものであ るが、実際問題として法の狙いがしかく単純に割り切れるかどうかは疑間であり、公益の保護を目的としながら、個 人の利益保護を目的としている場合や、主として公益の保護を目的とするが、なおかつ、何程か個人の利益保護を眼 中においているという場合もあり、法の目的のいずれにあるかは、結局、法の文言自体によってよりも、むしろ、裁       ︵4﹀ 判官の裁量によって決するよりほかないことが、少なくないように思われる。  しかも、そもそも、公益と私益とをしかく戴然と区別することこそが疑問であって、建築規制に伴う相隣者の利益 についてみるごとく、公益は、結局、私益の総和に帰一し、行政活動の究極の目的も、市民各自の快適な生活の維 持・増進を図ることにあるのであって、公益と質的に対立した超私益的価値を有する公益なるものは、存在しないと いうべぎであろう。  日 また、保護目的論は、当該利益が法的利益であるかどうかは結局各実定法規の解釈によって決定するよりほか ないと考えている結果、出訴を認める旨の明文の規定がない場合には、取消訴訟の提起を許さないとするものであり、 それが下級審裁判例の伝統的な考え方となっているように思われる。  しかし、この考え方は、出訴の許否を、専ら、立法府の意思にかからしめるものであるから、出訴事項の﹁変形さ        ︵5︶ れた制限的列挙主義﹂ないし﹁隠れた列記主義﹂に通ずるものである。また、実際問題としても、現在行政法規で出 訴に関する規定を設けている例は極めて少なく、将来もこの傾向が容易に改まるものとは期待し難い。また、住民の 手続参加条項や環境配慮条項にしても、もともと、それは、一般公益保護の見地から行政庁の許可の基準ないし要件

    東洋法学      七

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    権利保護の利益についての一省察      八 として設けられたものであって、地域住民に出訴の権利を附与するためのものではない。それ故、実定法の規定なる ものは、多くの場合、出訴の能否に関する客観的な判断基準となり得るものではなく、裁判所が出訴を許したり許さ なかったりするための隠れ蓑となっているにすぎない、といっても過言ではない。  ところが、もともと、或る行為又は処分に対して出訴を許すかどうかの問題は、人権保障の上からいっても、また、 裁判を受ける権利を保障した憲法三二条の精神からみても、重大な事柄であり、その判断は、特に慎重でなければな らない。訴えが不適法であるといい得るためには、単に出訴を認める旨の明文の規定がないというだけでは足らず、 むしろ、逆に、出訴を許さない旨の﹁明文の規定があるか、または、立法の趣旨に照らし、そのように解し得るもの であると同時に、それが憲法三二条の裁判請求権を不当に制約するものでない合理的根拠のある場合でなければなら        ︵6︶ ない。﹂といわなけれぱならないのである。  四 そればかりでなく、保護目的論は、その根底において、取消訴訟の目的・機能は専ら違法な行政権の行使から 個人の権利・利益を保護することであって、行政が法に従って行なわれることによる一般公益の保護は、法が特に認 めている場合は格別、原則として、公益の維持・増進を任務とする立法ないし行政に委ねるべきであるとする思想に 基づいているのである。  ところが、かかる思想に従えぱ、たとえ法律上の利益でないとしても、違法な行政処分によって重大な経済的損害 を蒙った者も、法的救済を受けることができず、また、違法な行政処分そのものも、結局、是正されず、法の目的が 害されたままになってしまう。かかる結果が、果たして、行政庁の違法な行為に対して広く出訴の途を開いた新憲法

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の下において、是認されて然るべきであろうかσなるほど、取消訴訟の主たる目的が私人の権利・利益の保護にある ことは、争い得ないところであり、現行の行政事件訴訟法も、単なる事実上の利益の侵害を受けた者に対してまで法 的救済を与えることを意図して制定されたものでないことは、明らかである。しかし、だからといって、取消訴訟が 一面において行政の適法に行なわれることによる一般公益の保障に奉仕していることは、否定し得ない事実である。       ︵7︶ いな、右の﹁行政救済﹂と﹁行政統制﹂とは、車の両輪のごとく、取消訴訟制度の不可分の目的である。したがって、 取消訴訟について、訴訟の目的・機能を私人の個人的な権利・利益の保護に尽ぎるとみることは、私人間の紛争の解 決を任務とする一般民事訴訟の場合とは異なり、訴訟の実態にそぐわないこととなるのは、明らかである。  もっとも、民衆訴訟は、法の許さないところであり、また、取消訴訟も、訴訟制度の一環として、その対象範囲が ﹁法律上の争訟﹂に限られることは、いうまでもない。しかし、民衆訴訟の禁止にしても、﹁法律上の争訟﹂性の要請 にしても、その究極の理由は、司法の行政に対する不当な干渉を避け、訴訟における﹁事件性﹂︵8葺絃8纂8ぎ邑霧︶ の要求を充足せしめんとすることにあるのである。ところで、当該行政処分によって侵害されたとする利益が民衆訴 訟におけるごとぎ一般・抽象的なものではなくて、具体的・個人的で、しかも、実質的︵駕募欝旨芭︶なものであれ ば、かかる処分の取消訴訟を認めても、行政に対する不当な干渉となることなく、また、現実の訴訟においても、争 点についての相反する具体的な主張・立証の尽されることが担保され、裁判所の判断が抽象的ないし勧告意見的なも       ︵8︶ のに堕する危険から免かれて、その訴訟は、優に﹁法律上の争訟﹂に当たるといい得るのである。   ︵1︶ 三ケ月章﹁権利保護の資格と利益﹂民事訴訟法講座第一巻二一七頁参照。

    東洋法学      九

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︵2︶ ︵3︶ ︵感︶ ︵5︶ ︵6︶

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))

 この考え方は、ブライ︵ζ 権利保護の利益についての一省察      一〇 o圃塁︶によって提唱され、わが国では、兼子一教授の唱導する︵条解民事訴訟法H一九九頁参 照︶ところとなって、一時は支配的な見解となるに至った。  しかし、これに対しては、本案判決による紛争の解決という客観的な制度鼠的をもって、本来私人の主観的利益である べぎ訴権の内容とする点において、訴権の権利性を空虚たらしめるものである、という批判がなされている︵三ヶ月章・ 民事訴訟法一二頁、旧版一〇頁参照︶。  最高裁判所昭和三〇年二月二四日第一小法廷判決︵民集九巻工号二一七頁︶、高柳信一﹁行政決定の司法審査における 原告適格﹂法律時報四六巻二号二八頁以下参照。  白石健三﹁反射的利益と訴の利益﹂行政法演習∬六三頁参照。  原田尚彦﹁行政事体訴訟における訴えの利益﹂公法研究三七号九六頁参照。  最高裁判所昭和四一年二月二三日大法廷判決︵民集二〇巻二号工七一頁︶における入江俊郎裁判官の反対意見、原田尚 彦﹁行政法における公権論の再検討﹂訴えの利益所収四七頁参照。  美濃部達吉・行政裁判法二頁、宮沢俊義・行政争訟法一六頁、雄照一郎・行政争訟法一四頁参照。  最高裁判所も、﹁法律上の争訟﹂として、﹁権利義務に関する紛争﹂のほかに、﹁具体的な法律関係の存否に関する紛争﹂ を挙げている︵昭和二七年一〇月八日大法廷判決、民集六巻九号七八三頁、昭和二八年二月一七臼第三小法廷判決、裁 判集一〇号四五五頁︶。 三 権利保護の利益の本質と取消訴訟の本来的目的・機能  8 従来の訴権論は.私法的請求権説にしても、権利︵私権︶が訴訟以前に存在していて、訴訟はそれが侵害ざれ た場合にそれを保護する手段にすぎないと考えることから、前叙のごとく、権利保護の利益の本質を私権の属性なヤ

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しその反映と解してきた。しかし、かように権利︵私権︶が訴訟以前に存在しているとみることについては、それが 一種のドグマであって、むしろ、権利︵私権︶は訴訟によって形成されるものであり、訴訟以前に存在するものは、        ︵1︶ 単なる﹁法規範該当事実﹂︵悶。9鍍蓼縁簿ぎ霞・瀞9簿︶にすぎないと解すべきである、との反省がなされている。  それぼかりでなく、そもそも、権利保護の利益なるものは、本案判決の要件にすぎないものであり、しかも、他の 訴訟要件と異なり、講求の内容に関するものであるから、実体法上の利益の概念とは別異に、かつ、各具体的事件毎 に個別的に判断されるべぎものである。さらに、本案判決請求権説のごとく権利保護の利益を純然たる公法上の権利 と解するとしても、もともと、国民が国家の営む裁判制度を利用するのは、国民が国家の裁判権に服していることの       ︵2︶ 反映であって、これを従来のごとく国民の国家に対する独立の権利として構成することにも問題がある。しかし、こ の点は、しばらく度外視するとしても、前叙のごとく、権利保護の利益は、憲法三二条の保障する﹁裁判を受ける権 利﹂と深く係わっているものであるから、少なくとも、当該訴訟の目的・機能に鑑み、その時代における社会全体の 要請を見極め、法の普遍的理念や損害の性質及び直接・重大性の有無等を考慮して、当該訴訟がその本来的目的.機        ︵3︶ 能を果たし得るようそれを合目的的に把握しなけれぼならない、というべきである。  口 ところで、冒頭叙説のごとく、行政が多様な形で多方面にわたって市民の日常生活に係わり合いをもち、市民 もまた各種の問題について司法の介入を要請している今日、たとえそれが多数の市民と共通のものであるとしても、 市民のひとしく享受し得る一般抽象的な利益とは区別される意味において具体的・個人的で、しかも、実質的な利益 である限り、取消訴訟をしてその本来的な目的・機能を果たさせるために、これをもって権利保護の利益を基礎づけ

    東洋法学       二

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    権利保護の利益にっいての一省察       二一 る法的利益と認めるのが相当であろう。  なお、この場合、純然たる事実上の利益の侵害に対して出訴を認めることは、必らずしも、不可能ではないと思わ れる。フランスやアメリカにおいては、最近、﹁原告適格の自由化﹂︵浮窪鐵嘗呂89馨き島謎︶ということが強調さ れ、特にアメリカでは、法的利益の基準に代えて、事実上の損害があれば原告適格を認めるというのが、ほぼ確立さ         ︵4︶ れた判例理論である。しかし、仮りに、フランスやアメリカにおける﹁事実上の損害論﹂︵且弩望鐵蜜9爵8蔚︶が、        ︵5︶ ﹁歴史的・制度的基盤﹂を異にするものとして、そのままわが国に導入することが許されないとしても、かかる考え 方そのものは、前叙のごとく権利保護の利益を基礎づける法的利益を再構成するに当って、大いに参考になり得るも のというべきであろう。  国 なお、以上のように解することは、現行法上の取消訴訟の法構造と矛盾するものではない。けだし、法が﹁取 消訴訟﹂という特殊の訴訟類型を設けて、行政処分の効力を争うにはこの訴訟によらしめることとしているのは、行 政庁の行為のうち公権力の行使として行なわれる行政処分にはその法適合性に関する行政庁の認定・判断に一応の妥 当力︵公定力︶が認められているため、行政処分に対して救済を与えるには、この公定力を排除する必要があるとい うことによるのである。ところで、行政庁が公権力の行使として行なう行為は、非権力的な給付行政にしても、また、 単なる反射的利益ないし事実上の利益に影響を与えるにすぎない行為にしても、単純な事実行為とは異なり、そこに        ︵6V は行政庁の権威的認定・判断が先行しているので、これらの行為に対して救済を与えるにはまず公定力を排除する必 要があるという取消訴訟の法構造と一致するからである。そればかりでなく、前叙のごとく取消訴訟の本質を当該処

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分によって作出された違法状態の排除にあるとする見解の下においては、むしろ、そのように解することの方が、 消訴訟の本来的目的・機能の実効性を期せしめる所以でもあるといえるからである。 取 ︵玉︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶

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))

 ドイッにおけるコ一段階説﹂︵箋駐葺諭葺ぎ○膏︶及びフラソスにおける﹁分離し得べき行為の理論﹂︵爵9瀞牙駕諾  雄川一郎・前掲﹁訴の利益と民衆訴訟の問題﹂一、三四七頁、﹁行政訴訟の客観化の傾向と原告適格法﹂六四一頁参照。 邦行政訴訟における若千の訴訟要件の問題﹂訴訟と裁判所収五七頁以下参照。 論文集第一巻所収六四九頁以下、橋本公亙﹁行政訴訟の原告適格﹂公法の法理︵中︶所収一、〇九五以下、中村治朗﹁米連 民衆訴訟の問題﹂公法の理論︵中︶所収一、二五九頁以下、﹁行政訴訟の客観化の傾向と原告適格法し法学協会百周年記念  藤田泰弘﹁アメリカ合衆国における行政訴訟原告適格の法理﹂訴務月報一九巻五号九六頁以下、雄川一郎﹁訴の利益と  斎藤秀夫・民事訴訟法概論四六頁以下、新堂幸司・民事訴訟法一七二頁参照・  三ケ月章・民事訴訟法一九頁以下参照。  三ケ月章﹁権利保護の資格と利益﹂民事訴訟法講座第一巻コ三頁参照。 象g。誇覧呂参照。

東洋法学

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