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最近の争論に見る国際経済関係変化の兆し(2009年4月)

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最近の争論に見る

国際経済関係変化の兆し

(2009年4月) ・・1・m・3

北陸大学東アジア総合研究所所長

叶 秋男

 世界経済の収縮が懸念される中、世界第3位のGDP規模に達した中国経済は、景況転換の牽引車と なることが期待されている。ただ中国がその役割を担うとき、経済ヘゲモニーの絡む国際経済関係の 変化も生じることを忘れてはならない。中国経済を巡る最近の世界的争論を見ると、その兆しが感じ られる。そこで小論では2つの争論を取り上げてみたい。  一つめは、米国で声高に唱えられた「中国の高貯蓄率=国際信用バブル原因」説である。そもそも ポールソン米財務長官らはかねてから、中国では家計収入が少なく調和を欠いた成長が進行している と指摘してきた。確かに、中国の2008年の一般家計貯蓄率は28.8%と日米欧と比べきわめて高い。ち なみに、日本は同時期に3%である。そうした中国が輸出頼みの成長路線を突っ走ってきた結果、同 国には巨額の貿易黒字が積み上げる事態が生じた。果たして2008年には外貨準備高が2兆ドルにも 上ったが、インフレ発生を恐れる中国当局により、その多くが不胎化され、世界的余剰マネー肥大化 の元となった。このため米国に言わせれば、この度の国際金融危機は辿ってみれば中国の高貯蓄率に 起因するというわけである。  これに対して中国は、余剰マネーに無規制でバブル現象を生んだ先進国に責任があると反論する。 争論の是非はともかく、国際金融危機は、虚需の膨張とともに国際分業の歪みも露呈させた。そのた め中国は、欧米の消費主導を頼りに資本蓄積を加速化する戦略の危うさに気づき、内需拡大にも力を 入れだした。そうは言っても内実、当面強蓄積路線の転換は難しく、対欧米関係を多少修正するとと もに、開発途上地域での中国経済力のプレゼンスを強めることになるだろう。  二つめの争論は、中国が「国際通貨の多元化」と国際準備通貨発行国の政策規制を提唱したことであ る。1971年のニクソン・ショック=金本位制崩壊後、国際基軸通貨たるドルは米国経済の相対的凋落 とともに不安定化する道程を辿っている。そこでこの度中国は、現状ではIMFの計算上の準備資産で あるSDRを通貨化する案を打ち出したのだが、かつて米国の経済ヘゲモニーを押さえたいと考え、架 空通貨「バンコール」を用いた国際決済銀行案を提唱したケインズの思惑と重なるものがある。  中国はまた、アジアでの共通通貨体制の実現にも乗り出す姿勢を示すと同時に、自国通貨の人民元 を貿易決済通貨化する取り組みも始めている。すでに2008年8月にはロシアとの間で双方の通貨を決 済通貨とすることに合意した。人民元が国際的決済通貨として利用されるかは、今後の各国の対中貿 易比率の高まり次第だが、多くの国が世界GDP寄与度の1/3を担う中国経済をあてにするようになっ た現在、そう遠い将来のこととはいえまい。  日本の将来選択は、こうした中国発の変化を読み取った戦略に立脚する必要がますます高まってい るといえよう。  ※本稿は北陸中日新聞「考論」(2009年4月27日)掲載文を加筆修正したものである。

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