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神奈川大学総合理学研究所産学共同研究報告

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Academic year: 2021

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G.魚 類 を分 析 機 器 とみ な した 水 質 の 査 定

神奈川大学総合理学研究所産学共同研究報告

研 究 テーマG「 魚類 を分 析機器 とみな した水質 の査定 」

神奈川大学理学部教授 小笠原 強 東京大学名誉教授 ・ハ ワイ大学客員教授 神奈川大学総合理学研究所客員所員 平野 哲也

背景

水 界 は大気 お よび土 壌 との関連 も含 め、極 めて重 要な 環境 と して意 識 され つつ ある。

水 は と りわ け生 物 の細 胞 内外 の環 壌 で もあるので 、わ れわ れの生命 の維持 に直接 関わ る分 子 と して も捉 える ことが 出来 る。 地球 生態系 つ ま り物 理的環境 と生物 は、数十 億 年 の進化 のなか で巧妙 な バ ラ ンス を保 って きた。 しか し、人間 の生産 活動 が加速度 的 に高 ま って 以来 、環境 と生物 の 関わ りは歴史 的 に例 のな い多大 な変 動 を受 けて い る こ と は周 知 の とお りであ る。水 分子 を中核 とす る水 界環 境 は、 あ らゆ る地球環 境 の中 で も と りわ け大 きな意 味 を もつ 。水 界 の変動す なわ ち汚 濁 につ いては 、 これ まで には 専 ら分析 機器 によ る物 理 ・化 学 的側 面 か らの解 析が 行 われ てきた 。環 境 指標 生物種 を も とに した評価 もな されて きては いるが、解 析に時間 を要 し精度 も良好 とはえない。

本 研究 テー マは水 界 の代 表 的 な動物 で ある魚類 を、 ある種 の分 析機 器、 言 い換 えれ ばバイ オ メー ター と して水質 の 監視 ・査定 が可能 か ど うか を試す もので あ る。環境 変 動 に対 す る鱈 の生理 的 な形態 変化 を指標 とす る。 鯉 は広 大な表 面積 をもち、外 部環 境 と接す る。鯉 表皮細 胞 は環墳 変 動 に鋭 敏で あ り、形態 ・機 能 を柔軟 に変化 させ る繊細 な上 皮細胞 層 で あ る。 この器 官 の 形態変化 が指標 となれ ば、 生物 を中心 にお いた環 境 査 定 が可 能 とな る。 この査定 法 は魚 類 の適 応能 をも加味 す るので、従 来 の機器 分析 法 と併 用す れば実質的な環境評 価 と保 全への手がか りが得 られ るはずで ある。 とりわ け、

あ る程 度 の汚濁 が不可 避な市 街 河 川 にお け る評価 の実質 的な査 定 の指針 とな りうる こ とが期待 され る。

研 究方法

メダカ(養 成 種 ヒメダカ)を 材 料 と した。河 川 ・湖 沼 の汚 染有機物 質 と してア ンモニ ア につ いて調 べ た。 さ まざ まな ア ンモニ ア溶液 に メダカ を移 し、生存 状態 を調 べ 、鯉 を組 織 的 に解 析 した。 組織 観察 は通常 の光学 顕微鏡 を用 い、広 い視 野 にわ た って お こ な った。

結果 ・考 察

魚 類 の窒 素代謝 に関わ る実 験 には硫酸 アンモニ ウムが 用 い られ る こ とが多 い。 は じめ に硫酸 ア ンモニ ア、お よびそ れ に類す る炭 酸 ア ンモ ニ ウム を淡 水 に添 加 して メダカ を 移行 した。 他 の魚種 で実験 報告 の あ るア ンモニ ウム濃 度 で試 した。 どち らの環境 で も メダカ は死 亡 した。特 に、炭 酸 ア ンモニ ウム溶液 中で は短 時 間で死 亡 した。 これ らの 溶液 に はそ れぞ れ硫 酸イ オ ンお よ び炭酸イ オ ンが含 まれ る。 これ らア ンモニ ウム以外

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のイオ ンの影 響 が懸念 され た。そ こで 、他 のイ オ ンの含 まれ な いア ンモ ニ ア水 で試 し た 。 ア ンモ ニ ア水 はア ンモ ニ アガス を水 に通 気 して得 られ る試 薬で あ る。 ア ンモニ ア 水 を淡水 に添 加 して メダカ を移 行 したが 、死 亡す る ことはなか った。 経時 的 に メダカ を とりだ し鯉組織 を観察 した。

魚類 特 にメダカ の鯉組織 につ いて は、小笠 原 の研 究室 で デー タが蓄積 されて い る。

この種 は淡水 に生 息す るが 、海水 に も適応 して 繁殖 もお こな う ことをみて い る。鯉 に は塩 分代 謝 に重要 な役割 を果 たす 塩類 細胞 が あ る。 この細胞 が機 能す る ことによ り、

広 塩 性魚 類 の体 液 浸透圧 は淡水 中で も海水 中 で も一定 に保 たれ 、安定 した 生命活 動が 補償 され る。塩 類 細胞 は環境塩 濃 度 に鋭敏 に反 応 して 形態 を変 え る。 すな わち 、海水 に適 応す る と塩 類 細胞 の数が増 え、大 型 にな る ことを確認 して い る。 さ らに、蒸 留水 ある いは強酸性 淡 水 にお いて も同様 の形態 変化 をみせ る。 しか し、 これ らの低張 環境 で の塩 類 細胞 の形 状 は海水 タイ プ とは異な る。 このよ うな低張 な環 境 では塩 の摂 取 を お こな って い るもの と推測 してい る。

ア ンモ ニア環 境 にメ ダカ を移 行 して一週 間す る と、鯉 に変化 が観 察 され た。大 小 さ まざま の塩 類細 胞 が認 め られ 、大 型の塩 類細 胞 に は ピ ッ トとよ ばれ る陥 入部 がみ られ た。つね には塩類細胞 が分布 して いない呼吸上 皮 にも塩類細胞 が観察 され た。 これ は、

塩 分代 謝 の活性化 を反 映 した結 果 とお もわれ る。 ア ンモニ ア環 境下 で の このよ うな報 告 は これ まで にな い。 低張環 境 で は塩類細 胞 は塩 の摂 取 に関わ る ら しい。一方 、水 生 動 物 の窒 素代謝産 物 で あるア ンモ ニア は体 表 か ら排泄 され る。魚 類 で は鯉 が ア ンモニ アの排 泄 にあた る。 アンモニ アの排泄 はNa+1NH4+交 換 系 によ る とされ、排泄 と同時 に Na+が 体 内 に入 る。つ ま り、外界 にNH4+が 増え る とNa+の 体液側へ の流入量が減 少す る可能性 が あ る。 低調 な高 ア ンモニ ウム環 境 下 で塩 類 細胞 が活性 化す るの は、 このよ うな交 換 系 によ るNa+摂 取 の減衰 を補 うため と推 測 され る。外界 ア ンモニ ウム濃度 と 組織 変化 の度 合 い の間 に相 関が あ るか ど うか は調 べて いな いが 、 メダカ は アンモニ ウ ム の上 昇 に応 答 して鯉 上皮 の形態 を変 化 させ る。 いず れ に して も本結果 は、特 異的 な 細胞 あるい は器官 を指標 と した環境変動 の査定 の可能性 を示す 。

機器 によ る環境査定 は単0要 因で の環境 変動 について は高精度 のデー タを与 えるが、

複合 要 因の 関わ る変動 につ いて は解 析 に困難 を と もな う。 自然界 の環 境変動 はつ ね に 複合 要 因 によ って 生 じる。本試 験 の よ うな発 想 を発 展 させれ ば 、機 器 で は解 析 の不可 能な環境要 因 の変動 を生物側 か ら捉 える ことが可能 で あろう。

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参照

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