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企業グループと企業間関係

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Academic year: 2021

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企業グループと企業間関係

著者 竹廣 良司

雑誌名 同志社大学ワールドワイドビジネスレビュー

巻 10

ページ 244‑247

発行年 2009‑03‑31

権利 同志社大学ワールドワイドビジネス研究センター

URL http://doi.org/10.14988/re.2017.0000015970

(2)

れた。

最後にコーポレート・ガバナンスの観点から,そもそも企業価値に投資家行動(投資家比 率)が影響を及ぼしているのか否か,推定・検定を行ったところ(ここで企業価値は株式の時 価総額ではなく実体経済から算出した企業価値),電力・ガス業のみ外国人投資家行動が企業 価値に有意な影響を及ぼしていることがわかった。

今後,すべての業種において,つまり東証

1

部上場全企業を対象に同様の分析を行い,投資 家行動と株価変動の不確実性,アノマリーの関係について検証を行っていく。

文献

Christie, A. A.(1982), The Stochastic Behavior of Common Stock Variances, Journal of Financial Econom- ics, Vol. 10, pp. 407−432.

Duffee, G. R.(1995), Stock Returns and Volatility : A Firm-level Analysis, Journal of Financial Econom- ics, Vol. 37, pp. 399−420.

Niizeki, K. M.(1998), The Japanese Stock Rate of Return and Volatility : A Comparison of Methods to Esti- mate Volatilities, The Doshisha University Economic Review, Vol. 49, pp. 67−93.

新関三希代(2003),「価格変動の不確実性と取引量の関係−日本の株価指数オプション市場における実 証−」『経済学論叢』,第55巻第1号,pp. 33−50.

新関三希代(2006),「リスクとリターンの実証分析−行動ファイナンスによるアプローチ−」『経済学 論叢』,第58巻第3号,pp. 51−79.

新関三希代・牧大樹(2005),「日経225株価指数と先物・オプション価格の関係−非線形共和分検定に よる実証分析−」,『ワールドワイドビジネスレビュー』,第6巻第2号,pp. 1−15.

企業グループと企業間関係

竹廣 良司

(同志社大学経済学部教授)

研究テーマと問題意識

一連の研究において,企業間関係の面から見た企業グループの組織や行動に焦点を当て実証 的分析を行ってきた。とりわけ,漓企業間の長期継続的関係はどのように変化したか,滷関係 の変化は企業に何をもたらすのか,といった点について,財務データから見た企業間関係に着 目しながら,企業グループを企業間関係の束としてとらえることにより分析を行ってきた。

『有価証券報告書』には財務諸表に加え多くの企業情報が含まれており,企業間の取引項目 についても明らかにされている。分析には日本経済新聞社の

NEEDS

財務データを使用するこ とにより,こうした情報の利用が可能であり,一連の分析では特に,関係会社に対する売上や 仕入,企業間信用,金銭貸借,出資等の情報,企業グループの状況に関するデータが有用なも のとして用いられた。

(3)

経済変化と企業への影響

日本では,不況が長引いたことにより,多くの企業が資産処分や従業員の解雇をはじめとす る組織の再構築を余儀なくされてきており,系列や企業グループに代表される企業間関係にも 影響が生じていると考えられる。

これまで,長期継続的な企業間関係が企業相互の信頼を高め,円滑な取引を支えてきたと考 えられるが,とりわけ雇用や金融のバッファとして,企業グループが果たしてきた役割は重要 であったと考えられる。雇用の受け皿としてのグループ内雇用調整により,長期的な労働力確 保が可能になってきたし,関係会社への貸付や企業間信用が機能することで外部の金融環境の 変化にも対応することができたと考えられる。これまでの一連の研究の中でこうした重要性が 明らかになった。

製造業における企業間関係

製造業は日本経済を牽引する重要な役割を果たしてきた。製造業(特に垂直的統合などの手 段により,多くの企業の連携を必要とする組立・加工型の業種)においては,企業特殊性が高 く,一貫生産を行うために,請負企業の側に関係特殊的な資産への投資が不可欠となる場合が 多いが,こうした関係特殊的な資産への投資に関しては投資後に請負企業が不利な条件で取引 を強いられる,いわゆるホールドアップ問題が生じる可能性が高い。良好な企業間関係の形成 はこうしたホールドアップ問題を回避するのに有効に機能してきたものと考えられる。一連の 研究では財務データを用い,製造業における関係会社間取引やグループ企業の変化について分 析を行ってきた。プロジェクトの後半では企業間関係の強度に注目し,強度の違いにより企業 のパフォーマンスにどのような影響があるのかを分析している。

関係強度を考慮に入れた企業間関係の分析

「製造業における企業間関係の変化」(ワールドワードビジネスレビュー(同志社大学)第

8

巻第

2

号,2007年)では,製造業における関係強度の強い業種と弱い業種の間での企業間関 係が利益率に与える影響の差異について分析をおこなったものである。一貫生産や販売系列関 係を考えるとき,グループ組織的な経営行動がこれらの関係に依存するほど,企業間の連携は 長期安定的な継続関係を深化させ,より強い関係強度が保たれていると考えられる。

そこで,関係強度による分類をおこなっている。1985年決算時点で関係会社取引の比率の 高い(関係強度の強い)業種とそうでない(関係強度の弱い)業種の

2

つのグループに分け

(4)

て,10年後,20年後にあたる

1995

年,2005年と比較している。ここで用いている,「関係強 度の強い業種」とは,1985年決算時の業種ごとの標本平均について「漓売上全体に占める関 係会社分の比率,および,売上債権全体に占める関係会社分の比率」または「滷売上原価に占 める関係会社からの仕入の比率,および,買入債務全体に占める関係会社分の比率」のうちの 少なくともいずれか一方が全平均を上回っている業種として定義しており,それ以外の業種を

「関係強度の弱い業種」と定義している。漓を上回る業種としてゴム,機械,電気機器,自動 車,精密機器があり,滷を上回る業種として化学,医薬品,石油,窯業がある。これら漓滷に 属する業種が「関係強度の強い業種」,これらのいずれにも属さない業種が「関係強度の弱い 業種」である。

関係強度による特徴

上記の研究の結果をまとめると関係強度の強い業種のうち,ゴム,電気機器,自動車,精密 機器の

4

業種についてはすべての年で全平均を上回っており,さらに,電気機器と自動車では

1995

年と

2005

年に,精密機器では

2005

年に当初の漓に加え,滷においても平均を上回って おり,関係強度の強い業種では関係会社との連携を深めていることが明らかになった。これは 全平均(および強度の弱い業種)が経年的に強度を弱めていくのと対照的である。

また,関係強度の強弱によるグルーピングを行った上で

3

つの期間(1985年〜1991年,1992 年〜1999年,2000年〜2006年)について,関係強度の強弱による差が企業の利益率に与える 効果をパネル推定(固定効果モデル)について分析した。売上に対する営業利益率を被説明変 数とした場合,関係会社に関連する変数に着目すると,バブルが崩壊した

1992

年以後,関係 会社売上比率は関係強度の強い業種では負で,弱い業種では正で有意,関係会社長期貸付比率 は関係強度の強い業種では正で,弱い業種では負で有意な関係が認められた。また,ほとんど の関係会社取引は利益率を高めることに貢献しているとはいえないことも明らかになった。分 析結果としては,関係強度の強い業種では子会社化が利益率を高めること,関係強度の強い業 種にとって取引量の低下にともない関係をいかに維持するのかが重要となってきていることが 示唆されるものとなった。

関係強度と輸出売上高率

本年度の分析では関係強度の違いにより企業間関係が輸出売上高率(輸出売上高率)に与え る影響を分析している。関係強度の強弱によるグルーピングを行った上で

3

つの期間(1985 年〜1991年,1992年〜1999年,2000年〜2006年)で売上に対する輸出売上高を被説明変数 としたパネル推定(固定効果モデル)により分析をおこなっている。

(5)

分析経過を紹介すると,関係強度の強い業種では

1985

年〜1991年は関係会社売上が高いほ ど国内売上の割合が高く,関係会社売上債権(企業間与信)が高いほど輸出売上率が高い特徴 が見られ,2001年以後は関係会社貸付比率と連結子会社比率が高いほど輸出売上率が高いこ とが明らかになった。

また,関係強度の弱い業種では

1985

年〜1991年は関係会社貸付比率が高いほど,連結子会 社比率が低いほど輸出売上率が高くなっており,関係会社売上債権(企業間与信)輸出率が高 い。2001年以後は連結子会社比率が低いほど輸出売上が高いという結果になった。輸出売上 高比率は輸出に対する相対的な指標でしかなく,国内需要の変化により影響を受けることにな るので分析結果の評価には十分な注意が必要となると考えられる。

今後の課題

本プロジェクトでは製造業にウェイトを置いた分析を行い,企業間関係とその束である企業 グループの組織と行動について分析し明らかにしてきたが,卸売・小売などの業種についての 分析も重要であり,マーケットシェアなどの競争優位性を入れたり,ガバナンスとの関わりの 分析も含めるなど,より精緻な分析が行われなければならない。グローバルな事業展開を考え た場合,海外セグメント情報に関するデータを利用し,海外拠点化とその成果(利益測定)を 行うことも必要となるであろう。

参照

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