「チーム学校」研究における研究動向の検討
著者 洪 承載
雑誌名 評論・社会科学
号 131
ページ 75‑93
発行年 2019‑12‑30
権利 同志社大学社会学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000515
要約:本稿は,日本の「チーム学校」という学校対応に焦点を当て,文献レビューを通し,
チーム学校の研究動向や指摘された課題について明らかにし今後の必要な研究について提 案するものである。結果,次のような研究が求められた。第一に,地域のメンバを加えた チーム学校の体制という視点からの研究が求められる。第二に,地域を加わえたチーム学 校で,地域をどのように理解するかという実践研究が必要である。第三に,地域と学校を つなげる担い手の明確化が求められる。本稿では,その担い手はスクールソーシャルワー カーが適しており,学校と地域を繋げるコーディネーターの役割を担うべきであると主張 した。
キーワード:チーム学校,地域,連携,スクールソーシャルワーカー,コーディネーター
目次
1.なにを問題とするのか 1-1.背景
1-2.研究目的 1-3.研究方法 2.分析結果
2-1.チーム学校に対する研究動向 3.考察
3-1.チーム学校について指摘された課題 3-2.これから求められるチーム学校の研究
1.なにを問題とするのか
近年,児童生徒を取り巻く社会背景の多様化や複雑化について,多く論じられてい る。文部科学省(2016)によると,日本の人口は減少傾向にあって,2030年には,65 歳以上の割合は総人口の
3
分の1
に達し,生産年齢人口は総人口の約58% にまで減少
し,少子高齢化がさらに進むと指摘した。グローバル化によって価値観やライフスタイ────────────
†同志社大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程
*2019年9月24日受付,査読審査を経て2019年10月11日掲載決定
論文
「チーム学校」研究における研究動向の検討
洪 承載
†75
ルの変化を背景に地域社会等のつながりや支え合いが薄くなり,地域のセーフティネッ ト機能が次第に失われてきた。また,現代社会の高度な経済発展によって,物質的に豊 かな社会になった反面,貧困の格差は広がっている。厚生労働省(2017)によると,日 本の子どもの相対的貧困率は
13.9% であり,約 7
人に1
人が相対的貧困状態にあると 示している。さらに,貧しい家庭環境を背景に,児童生徒の学力の違いが生じているこ とが明らかになった(耳塚2014 : 83-118)。
社会背景の変化は児童生徒の反社会的行動や問題行動の増加傾向にも影響を与えてい
る(塩澤
2011 : 41)。文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課
題に関する調査」(1997-2018)によると,学校内における暴力行為の発生件数は,調査 を始めた
1997
年には28,526
件であったが,2018年の調査では63,325
件でおよそ3
倍 近く増加している。児童生徒の課題として挙げられる不登校,いじめ問題の件数は増加 と減少を繰り返しているが,調査を始めた1997
からみると,増加傾向であることがわ かった。また,児童生徒による,残酷で異常性を感じさせる事件は毎年,メディアによ って頻繁に報道されている。以上のように,社会背景の急速な変化によって,児童生徒を巡る問題行動や課題が増 加するなか,学校における適切な対応は重要であるが,学校の対応は不充分であったと 考えられる。その根拠として,以下の三点が挙げられる。
第一点目に,教員の役割 の 肥 大 化 で あ る。OECD国 際 教 員 指 導 環 境 調 査(2018)
「TALIS 2018報告書」では,日本の教員の
1
週間当たりの勤務時間は参加国中で最長と なっていた。従来の教育文化として,児童生徒の生活指導は教師の裁量の範囲で実行さ れることが多かった。このような教育文化は教師の役割を肥大化してしまい,教員の勤 務時間や仕事の量が増えたと考えられる。第二点目に,学校の閉鎖的環境がある。日本の教育文化として,生徒の問題は校内で すべて解決するという「抱え込み」意識があり(門田
2010 : 99-106),学級担任制を背
景にした「担任が全て対応する」という校内のプレッシャーが存在する(西野2014 : 21)。このような教育文化は,教員,個人が問題を抱え込みやすく,問題が深刻化する
可能性が高いと考えられる。第三点目に,先述通り,児童生徒の問題行動や課題の背景には複雑な社会背景が存在 していること。このような状況で,児童生徒のニーズを把握し,適切な支援を行うこと が求められているが,従来の対応では,教員一人で児童生徒のニーズや背景を把握し,
適切な支援に繋ぐことは難しいと考えられる(宮本
2017 : 101)。
こうした,学校対応の課題を踏まえて,文部科学省は
2015
年「チーム学校」という 学校対応の導入に至った。中央教員審議会(2015 : 12)はチーム学校の定義として「校 長のリーダーシップの下,カリキュラム,日々の教育活動,学校の資源が一体的にマネ「チーム学校」研究における研究動向の検討 76
ジメントされ,教職員や学校内の多様な人材が,それぞれの専門性を生かして能力を発 揮し,子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校」として 位置づけている。中央教員審議会は,チーム学校の導入によって,新しい時代に求めら れる資質・能力を育む教育課程の実現,複雑・多様化した課程を解決するための体制整 備,児童生徒と向き合う時間の確保を期待している(中央教員審議会
2015 : 4-11)。
チーム学校の狙いとして,教員だけではなく,学校内の専門スタッフや地域社会との 連携や相互補完を通して,児童生徒の問題行動や課題および社会背景にも働きかけであ ったと考えられる(矢田
2017 : 170)。つまりこれまでの学校の対応の課題を踏まえて,
学校だけの対応ではなく,家庭や地域社会との連携や協働の基盤がしっかり構築されな いといけない(手嶋
2016 : 240)。また,谷川ら(2017 : 75)はこれまでの学校の閉鎖的
な環境での「抱え込み」意識から児童相談所や家庭支援センター等の外部の機関との連 携を行うことが重要であると示している。以上のようにチーム学校体制において地域社 会は重要であると考えられる。それでは,これまでの学校体制の中で地域はどのような 位置付けであったのか探る必要がある。1-1.背景
日本における,学校と地域社会,専門スタッフとの連携・協働を行う考え方は,チー ム学校を導入する
2015
年以前にもあった考え方である。中央教員審議会(1996)「21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について」では,「子どもたちの教育は,単に学 校だけではなく,学校・家庭・地域社会が,それぞれ適切な役割分担をはたしつつ,相 互に連携して行われることが重要である」と述べていて,学校の行うべき活動を地域社 会や家庭の本来の役割の見直し,家庭や地域社会の教育機能を回復,すなわち「学校ス リム化」を目指した(手嶋ら2016 : 238)。このような学校スリム化は,当時,児童生
徒のことなら学校が全て任せるのではなく,家庭や地域社会に問題意識を持つことで,家庭や地域社会の積極的役割を求めた。しかし,学校が多くの教育機能を背負った,根 本的な原因は地域社会のセーフティーネット機能の低下,地域社会での繋がりの希薄 化・家族の環境の変化に伴う教育力の低下である(藤田
1997)。すなわち,学校スリム
化を目指したものの,機能しない地域社会にその役割・責任を戻しただけであって,学 校スリム化がうまく機能するためには,学校,地域社会,家庭で,役割の明確化や環境 作りが重要であった。このような課題を抱えながら,2000年代に入ってから文部科学省は,地域社会が学 校に協力して児童生徒を育てる「コミュニティ・スクール」を導入し,保護者や地域社 会の人々を巻き込み教育活動を充実させていた。さらに,中央教員審議会(2015 : 9)
では「開かれた学校」から,地域社会でどのように児童生徒を育てるかという目標を地
「チーム学校」研究における研究動向の検討 77
域住民で共有し,「地域社会とともにある学校」へ転換していくことが必要であると示 された。また,心理や福祉の専門性を持ちながら,児童生徒の問題行動や課題に取り組 む専門スタッフや,教員を支援する専門スタッフの導入も行った。心理や福祉の専門性 等を持つ専門能力スタッフとしては,スクールカウンセラー(以下
SC)とスクールソ
ーシャルワーカー(以下SSWer)が挙げられる。教員を支援する専門スタッフとして
は,ICT支援員,学校司書,外国語指導助手が挙げられる。専門スタッフの導入によっ て,教員と連携を行い,児童生徒の教育を行うことや,児童生徒の心理や児童生徒を取 り巻く人間関係,家庭,地域社会などの環境を視野にいれた対応が可能になった。言い 換えれば,学校内の教員が全て解決するという「抱え込み」意識から,専門スタッフと 教員が連携を行う体制が構築されたと考えられる。こうした,学校体制の変化のなかで,2015年中央教員審議会は「チームとしての学 校の在り方と今後の改善方策について」を出し,社会の変化を受けて,多様化・複雑化 する児童生徒の問題行動や課題への対応を図るとともに,学校教育を質的に充実するた めの「チーム学校」という新しい学校組織の提言を行った。この報告書では,チーム学 校の実現に向けて,三つの視点を示している。それは,①専門性に基づくチーム体制の 構築,②学校のマネジメント機能の強化,③教員一人一人が力を発揮できる環境の整備 である(中央教員審議会
2015 : 12)。さらに詳しく述べると①では教員や専門スタッフ
の役割,責任を明確化し,業務に関しては教員と専門スタッフのコラボレーションを通 して効果的に取り組むことが求められている。②では,学校のマネジメントについて検 討を行い,校長がリーダーシップを発揮できるような体制の整備について述べられてい る。③では,教員や専門スタッフなど,他職種で構成された学校で,教員一人一人が力 を発揮するための学校の環境,組織文化の検討の取組が求められていた。要するに,チ ームとしての学校の実現において,この三つの視点に従って検討を行い,学校の組織を 改革することが求められていたと考えられる。「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」が発表され,学校 においてチーム学校体制を導入するなか,早くもいくつかの研究が出ている。例えば,
木岡一明(2016)「『多職種によって構成される学校』のマネジメント:その設定の合意 と可能性」,樋口修資(2017)「学校組織運営論からみる『チーム学校』の批判的考察と 教員のワーク・ライフ・バランスの実現」など,①,②に焦点を当ている。「教員一人 一人が力を発揮できる環境の整備」に関しては,山野則子(2016)「スクールソーシャ ルワークからみた「チーム学校」(特集「チーム学校」の可能性)」,西野緑(2014)「子 ども虐待に関するスクールソーシャルワーカーと教職員とのチーム・アプローチ:スク ールソーシャルワーカーへの聞き取り調査から」,増田健太郎(2017)「チーム学校とス クールカウンセラー:SCが学校現場で機能するための視点」など,③に焦点を当てた
「チーム学校」研究における研究動向の検討 78
論文もある。さらに,チーム学校に関する事例もいくつか発表されている。そのなかで も横浜市立飯田北いちょう小学校の事例を挙げたい1)。横浜市立飯田北いちょう小学校 の外国籍児童の数は,1989年から増え始め,2019年には外国籍児童の割合は約
4
割を 示していて,日本語が苦手な児童生徒に対して少人数指導担当者,日本語支援教員,国 際教室担当教員を加えた体制を構築している。この学校では「児童一人ひとりが安心し て通える学校・安心して生活できる学校」を目指し,全職員による協力指導体制や地域 社会との連携を行っている。協力指導体制として「打ち合わせ」や「職員会議」「特別 支援教育会議」「校内重点研究会」「学年ブロック研究会」等を行い,情報の共有や指導 方法に対する方向性を決める。地域社会との連携としては,上飯田連合自治会,いちょ う団地連合自治会,「子ども会」,「学童クラブ」,「青少年育成協議会」,「放課後キッズ クラブ」や児童生徒を対象とした学習支援や日本語指導などを行っている地域のボラン ティア団体との連携や協働を推進していて,多方面から児童生徒を支えるネットワーク を構築している。その一方で,チーム学校に対していくつかの課題も指摘されている。まず,チーム学 校での教員と専門スタッフの関係性についてである。チーム学の実現にむけた三つの視 点のなかで「①専門性に基づくチーム体制の構築」で述べたように,これからのチーム 学校では,教員と専門スタッフが連携を行い,業務を効果的に取り組むことが求められ ている。しかし,宮野ら(2018 : 95)はチーム学校の
SSWer
は教員や事務職員と比べ て低位に位置づけされており,対等な関係ではないと述べ,日本の学校組織では専門職 が教員と連携できる環境が整えられていないことを指摘していた。その次に,学校のマ ネジメント機能についてである。これからの学校組織では,校長がリーダーシップを発 揮し,学校の目標設定を行い,学校全体がその目標を達成するための協働が求められ た。しかし,今村・下田(2017 : 100)は,学校組織はトップダウン形式が多く,チー ムとしてのイメージは持ちづらいと指摘している。最後に,地域社会との連携について である。鈴木(2018 : 66-69)はA
県A
市の公立小学校を対象に地域社会連携の実態把 握を目的に量的調査を行った。この調査の結果から鈴木らは,地域連携教員の必要性を 指摘し,地域社会の人材と資源の活用または社会教育との連携が必要であり,コーディ ネーターの窓口となる教職員の設置が重要であると述べている。以上のように,「チーム学校」という新しい学校組織の提言が行われて以来,いくつ かのチーム学校に対する研究が行われている一方で,課題も指摘されている。前述のよ うに,これからの社会および学校で児童生徒の課題や問題行動及び教員をサポートする 体制は非常に重要である。要するに,チーム学校という体制で地域社会と学校の教員や 専門スタッフがどのように連携を行うのか,また児童生徒にどのような影響を与えるか について吟味しなければならない。そこで,チーム学校に対してどのような研究が行わ
「チーム学校」研究における研究動向の検討 79
れているのか,丁寧に探っていくことはこれからのチーム学校の研究に求められると考 えられる。したがって,本研究では,チーム学校に焦点を当てて,チーム学校の研究動 向やどのような課題が指摘されているかを具体的に導き出し,今後の課題について提案 する。
1-2.研究目的
本研究では,チーム学校に対する文献レビューを行う。文献のレビューを通して,
チーム学校に対する研究動向や指摘された課題を検討することを本稿の目的とする。文 献レビューを行うことで,チーム学校に対する研究動向や指摘されている課題を整理 し,これからのチーム学校研究に必要な研究を提示できると考えられる。本研究の意義 は,専門スタッフや教員を含めたチーム学校のメンバーが効果的に児童生徒が抱えてい る課題への対応に向けた一つの材料を提供するものである。
1-3.研究方法
本研究で用いる文献は以下の手順で選定した。文献の選定に用いたデータベースは
CiNii Articles
であり,検索結果の最終確認は2019
年4
月10
日に行った。キーワードを「チーム学校」にして検索したところ
334
件がヒットした。これらの対象文献検討す る際に,多数の文献から引用された文献や参考文献に載せている文献も研究対象とし た。また,このうち重複したもの,資料,総説・解説,チーム学校と直接関連のないも のなどを除いた結果,最終的に検討の対象として28
件の論文を得た。2.分析結果
分析結果として,まず,チーム学校に対する全体的な研究動向の把握を行う。全体的 な研究動向の把握として,チーム学校に対する研究分野,研究目的,研究方法,研究内 容を分析する。
2-1.チーム学校に対する研究動向
表
1
は,チーム学校に対する文献レビューの結果をまとめたものである。「チーム学校」研究における研究動向の検討 80
表1 文献レビューの結果
筆者 研究目的 内容(主な研究結果)
研究分野 研究方法
1 西野
(2014)
・子どもの虐待における 教職員 とSSWerの 協 働 による支援のプロセスの 明確化
・虐待対応におけるコアメンバーを中心としたチーム体制
・コアマンバーによる継続的な支援
・SSWerはミクロ・メゾ・マクロを行き来するマネジメントの 役割
福祉 SSWerへ の イ ン タ ビ ュ
ー調査
2 山野
(2016)
・SSWerの 視 点 か ら チ ーム学校の課題と協働へ の認識を検討
・専門家が学校に入るだけでは,チームとして機能しない
・お互いの価値や役割の明確化,新しい学校の仕組みがこれから 必要
福祉 理論・文献
3 片山ら
(2017)
・生徒指導の観点から,
学校におけるチーム化に どのような課題があるか 検討
・教員と保護者の間には生徒指導に関してズレがある
・若手教員(5年以下)とベテランの間には生徒指導に関してズ レがある
教育 教員,保護者へのアンケ ート調査
4 木岡
(2016)
・いろいろな職種によっ て構成される学校をどう マネジメントするかにつ いて明確化
・固定したメンバーによるチーム編成ではなく,問題に応じたチ ーム編成が重要である
教育 理論・文献
5 津田
(2017)
・子どもの人権を守るた めに,「チーム 学 校」は どう働くべきなのか,ど のような役割が求められ るかについて模索
・どのような子どもを育てるのかという目標を地域住民と共有し て「地域とともにある学校」への転換
・教員や専門職が果たすべき役割の標準化
・校長として,リサーチ,教育方針の具体化,人材の専門生を生 かした組織づくり
教育 理論・文献
6 山崎ら
(2017)
・愛着の課題がある子ど もへの学校における効果 的な支援の在り方を検討
・学校内のキーパーソンを決定し,キーパーソンにつなぐ体制を チーム学校として構築
・SCは子どもの行動観察,情報収集,SSWerは不適切な養育環 境への介入
・アセスメントやプラニングの一致がチーム学校としての課題 教育心理 理論・文献
7 樋口
(2017)
・教員の勤務環境を改善 するためには,どのよう な学校組織論が求められ るのかについて提言
・「チーム学校」は校長の権力強化だけを生み出し,トップダウ ンの管理体制を促進することが懸念される
・教員のワークライフバランスを実現する,マネジメント力が求 められる
・専門スタッフを導入するだけで,教員の多忙化が解消しない
・教員と専門職の協働的な取組みを実現できるようなマネジメン トが求められる
教育 理論・文献
8 前田ら
(2016)
・小学校の教員組織に焦 点を当て,教員集団がど のようにチーム学校を構 築していくかを明確化
・教員による会議で「振り返る」「つながる」という視点を取り 込むこと
・システムをうまく適用していくことができるキーパーソンにな る教員の出現が求められる
教育 実践・文献
「チーム学校」研究における研究動向の検討 81
9 今村ら
(2017)
・これからSSWerが
「チーム学校」内で期待 される役割について考察
・SSWerは学内チームから学内外チームへと柔軟に移行できる ようチーム作り
・SSWerは生活モデルの視点を持った専門職として学内で活動 福祉 理論・文献
10 後藤
(2016)
・教 員 の 関 係 性 に 着 目 し,教員の同志の「同僚 性」の実態を解明
・同僚性における「教師の職務を高め合う関係性」「教師集団と して協働する関係性」「教師間の友好な関係性」が抽出された
・これからのチーム学校の体制において教員のリーダーシップの 向上が求められる
教育 大学生へアンケート調査
11 細谷ら
(2018)
・チーム学校が有効に機 能する視点について考察
・教員の専門性に変化が生じることはなく,多くの教員がチーム 学校の効果を実感
・多様化する子どもの問題においてこれからチーム学校として対 応していくなかで,教員自らが専門性をみだしていくことが重要 教育 事例分析
12 家近
(2017)
・学校心理学に関する研 究動向を概観
・学校心理士は①援助サービスの担い手の連携②教員の成長への サポート③一次的援助サービス(教室作り,心理教育)の提供を 行うことで「チーム学校」へ貢献することができる
心理 理論・文献
13 手嶋ら
(2016)
・チーム学校の構造を明 らかにしチーム学校の課 題やその改善策について 考察
・チーム学校がうまく適用されるためには,その学校が位置する 地域社会の環境作りが前提となる
・学校と家庭や地域社会との連携・協働の構築が重要である
教育 理論・文献
14 矢田
(2017)
・チーム学校の連携,協 働に対する検討
・教員はどこまで児童生徒の教育に関わればいいか再検討が必要
・新たなチームメンバーの身分保証
・学内における位置付けに対して再検討が必要 教育 理論・文献
15 宮野ら
(2018)
・チ ー ム 学 校 に お い て SSWerの 今 後 の 可 能 性 や課題を明確化
・教員と専門スタッフがバトンタッチするのではなく,両者がコ ラボレーションしよりいい成果を生み出すこと
・SSWerを教員より低位に位置付けするのではなく,お互い平 等な関係で,協働するべきである
福祉 理論・文献
16 菊池
(2018)
・チーム学校において教 職員の主体的参加を促す ための方法について検討
・チーム学校を担う人材の育成が重要
・今後の授業等の教材開発
教育 理論・文献
17 鈴木ら
(2018)
・チーム学校の現状,課 題を整理
・「地域連携教員」が実現し,地域の人材と資源の活用,社会教 育との連携,コーディネートの窓口となる教職員の配置は重要
・多様化する学校の機能をどうマネジメントするのか 教育 理論・文献
18 金子
(2017)
・チーム学校を整理し,
政 策 的 意 図 と 要 点 を 整 理,課題を考察
・教員の専門性と自律性の確保
保育 理論・文献
19 宮本
(2017)
・学内委員会の事例を分 析
・チーム学校においてコーディネーターには援助ニーズの把握,
チーム状況の把握と援助方針の決定,担任の心理的負担の軽減と いう役割が求められる
教育 事例検討
20 加藤
(2017)
・チーム学校の特徴と課 題を検討
・様々な教育課題に対する組織的解決策を趣旨としながら,一方 では教職員の働き方や業務の改善,教員配置制度の改革という政 策転換への対応策にもなりうる。
教育 理論・文献
21 谷川
(2017)
・これまでのチーム学校 の議論を整理
・チーム学校からチーム地域社会に展開が必要
・これからは学校が中心ではなく,学校は地域コミュニティの一 員として地域社会のメンバーと協力し地域の子どもと家庭を総合 的に支援
教育 文献整理
「チーム学校」研究における研究動向の検討 82
22 大家
(2018)
・チーム学校において教 員に期待される役割と課 題について分析
・「チーム学校」体制で,教員は忙しくなり,同僚と協力し専門 性を育む機会が少なくなる恐れがある
・チーム学校においての教務内容を具体化し明確化 教育 理論・文献
23 阿久津
(2017)
・学校に対する家庭や地 域社会の意識及び期待の 分析
・チーム学校を実現するためには,学校と家庭,地域社会との関 係を整理,連携・協働する必要がある
教育 学校自己評価システムシ ート
24 増田
(2017)
・チ ー ム 学 校 の な か で SCが協働するためには 何が課題であるのか明確 化
・学校組織への支援・他職種とのケース会議の定例化
・アウトリーチ活動・関係機関との連携,協働
心理 理論・文献・事例
25 藤岡
(2015)
・学校における「援助専 門 家 で 構 成 さ れ た チ ー ム」を取り上げ,意義と 可能性を検討
・教員と援助専門家の間における「責任の対等性」
・チームとして介入することで,チーム全体の力量向上が期待さ れる
医学 理論・文献
26 二井ら
(2017)
・特別支援教育において
「チーム学校」の有効性 や課題を検証
・チームとして対応するため,多方面から生徒の実態把握が可能
・生徒指導・進路指導・保健指導などあらゆる分野でチームの考 え方が波及できる
・連携できる期間やスタップを教育機関に積極的に配置するこが 重要
福祉 事例分析
27 小林
(2017)
・チーム学校の実現にむ けた課題や問題を明確化
・ベテラン教員の経験や知識が若手教員に継承されない状況であ るため,教育現場の大混乱が予想される
・チーム学校で教員の多忙を加速されるのではないかという懸念 教育 理論・文献
28 都島
(2017)
・日本のチーム学校の課 題を明らかにした上で,
台湾における学校と専門 職の連携の在り方を比較 検討
・台湾の学校ではケースに応じて担当者が分業するシステムが構 築されている
・台湾では具体的な問題解決において明確な分業体制が整えてい る
教育 台湾と日本の比較 出典:筆者作成
表
1
では,チーム学校に対する,研究分野,研究目的,研究方法,研究内容につい て,全体的な傾向を示したものである。本研究での研究分野の分類基準としては,論文 の内容と論文の執筆者の所属学科をもとに分類した。研究分野の分類の結果としては,チーム学校に対する研究のなかでは,最も多いのは教育分野
23
件で,その次に多い研 究分野は福祉7
件である。その他には心理3
件,保育1
件,医療1
件であった。チーム学校の研究動向としては,概ね三つのテーマに分類することができた。
第一に,チーム学校の中での教員の働き方や位置付けに関する研究である。第二に,
児童生徒に焦点をあて,チーム学校がどのように児童生徒の問題行動や課題に対応する べきかという研究である。第三に,チーム学校の現状について論述している研究であ る。
「チーム学校」研究における研究動向の検討 83
まず,チーム学校の中での教員の働きや位置付けに関する研究では,チーム学校が導 入され,児童生徒の問題行動や課題に対して,効果的に対応が可能となり,さらに,教 員の働き方や業務の改善といった教員配置制度の改革という政策転換への対応策である と評価している(加藤
2017 : 100)。
次に児童生徒に焦点をあてた研究では,複雑・多様化する児童生徒の課題の対応とし て,専門スタッフの働きについて研究を行なっている(西野
2014,家近 2017,増田 2017)。西野(2014 : 30-32)は,児童生徒の虐待問題に焦点を当て,児童生徒,保護
者,学級担任,学年主任をコアメンバーとして位置付けており,SSWer はコアメンバ ーのサポートやミクロ・メゾ・マクロを行き来するマネジメントの役割が求められる。家近(2017 : 131-133)は学校心理士に焦点を当て,援助サービスの連携,教員のサポ ート,援助サービスの提供を行うことで,チーム学校に貢献できると述べている。増田
(2017 : 7)は
SC
を取り上げたケース会議の定例化,関係機関との連携を行う必要があ ると指摘している。最後に,チーム学校の現状に対して論述している研究について述べる。これまでの学 校は,地域社会との交流が閉鎖的であり,学校のなかで全てを解決しようとしたが,こ れからの学校は,地域コミュニティのひとつとして位置付けられ,地域住民や関係機関 との連携・協働が求められると指摘されている(阿久津
2017 : 251,谷川ら 2017 : 75,
鈴木ら
2018,手嶋ら 2016 : 239-240)。チーム学校が効果的に作用するためには,学校
に限るのではなく,地域住民,関係機関,家庭との関係の調整や連携と言ったマネジメ ント力が重要であることが示唆された。特に今村ら(2017 : 100)はチーム学校が地域 社会との連携や協働を行う際に,SSWerが学校と地域社会を柔軟に移行できるように 働きかけすることが
SSWer
に期待される役割であると指摘している。3.考 察
本研究の目的は,これまでのチーム学校に対する研究動向を明らかにし,そのなか で,チーム学校の課題がどのように論じられているかを明らかにすることである。以 下,考察では,第一に文献レビューを通して指摘された課題やその課題に対する提言を まとめる。その次に,文献研究で明らかになった内容や指摘された課題と照らし合わせ て,チーム学校研究における今後の研究課題を提示する。これらを踏まえて,これから 求められるチーム学校の研究について提言を行うことにする。
3-1.チーム学校について指摘された課題
文献で指摘された研究課題には,チーム学校における教員の役割の検討から,専門ス
「チーム学校」研究における研究動向の検討 84
タッフと教員との関係性や地域社会との連携体制まで様々な指摘がなされている。
まず,教員関連の研究課題では,チーム学校のなかで,教員の働きや専門性につい て,検討が必要であると述べ(矢田
2017 : 173,細谷ら 2018 : 396-398,大家 2018 : 9- 11),チーム学校のなかで,教員の業務や専門性を明確にしなければ,むしろ教員の負
担が増加する恐れがあると指摘された(小林2017 : 75,大家 2018 : 4-5)。すなわり教員
の専門性の明確化がこれから求められている。一方では,チーム学校における管理職の 役割の見直しが求められていた(樋口2017,津田 2017)。樋口(2017 : 8-9)は「多職
種協働」という名目の下で,管理職のトップダウンによる多職種連携になるおそれがあ り,このような運営では管理職の権力が肥大化が生じやすいと指摘している。これらの 指摘に対して津田(2017 : 170)はこれからの管理職は,学校のミッションの具体化,専門スタッフが働きやすい組織作り,協働的な雰囲気作りに取り組むことが求められる と述べている。
次に,専門スタッフ関連で,宮野ら(2018 : 85)は学校における教員と専門スタッフ の関係は縦割り業務に近く,対等な関係ではないと主張していて,木岡(2016 : 16)は チームメンバーを固定するのではなく,問題構造に応じて,柔軟にメンバーを変えるこ が重要で,各メンバーの権利や役割を明確にしたチーム構成が求められると指摘してい た。しかし,今村・下田(2017 : 100)は,チーム学校における教員と専門スタッフの 役割分担はトップダウンの形が多く,チームとしてのイメージは薄いと述べていた。つ まり,ただ専門スタッフを学校に導入することだけでは教員の多忙化が軽減されないま ま,チームとして機能しないと考えられる。(樋口
2017 : 9-11,山野 2016 : 42-43)
最後に,地域社会関連では,鈴木ら(2018 : 66)の指摘によると「社会に開かれた教 育課程」の実現のためには,地域社会の資源,サービスを学校と繋げるコーディネータ ーが求められる。谷川ら(2017 : 75)はチーム学校が学校内体制だけではなく,地域社 会の機関との連携することが求められ「チーム学校」から「チーム地域」への発想の転 換が必要であると主張している。谷川ら(201 : 75)が述べた「チーム地域」というの は,児童生徒の問題行動や課題に対応する際,校内の組織だけで対応するのではなく,
児童相談所や家庭支援センター等の外部の機関との連携を行うことを示している。ま た,阿久津(2017 : 251)は学校がより地域社会に開かれて子どもの教育に対する責任 を学校,家庭,地域社会と分担していくことが必要であると述べた。
先述した研究課題を踏まえて,今後のチーム学校研究において,どこに焦点を当てた 研究を行う必要があるのかを確かめるために,先述した研究課題を照らし合わせた提言 を図
1
のように提示してみた。「チーム学校」研究における研究動向の検討 85
文献レビューで指摘された課題及び提言は,概ね校内に関する課題,また,地域社会 に関する課題として分類することができた。そのため,図
1
では,校内に関する課題と 地域に関する課題を分類した。校内に関する課題では,教員に対して「業務の明確化」,「専門性の検討」が求められ ていて,チーム学校をただ導入するだけではなく,チーム学校のなかで教員がいかに働 くかに対して再検討が必要であることが分かった。研究動向で指摘したように,チーム 学校の中では,管理職の役割が重要であり,リーダーシップが問われる。そのため,こ れからの研究では,管理職がどのようにチーム学校でリーダーシップを取るか,教員と 専門スタッフの協働をどのように導くのかに対する研究が求められると考えられる。
すなわち図
1
では「業務の明確化」,「専門性の検討」,「水平的リーダシップ」,「学校全 体で問題共有」,「協力的な雰囲気作り」,「児童生徒が抱えている困難に着目」,「教員の 負担の軽減」と言った要素がチーム学校に影響を与えていることを示している。次に,地域社会に関する課題では,主にこれまで学校は閉ざされた空間であったこと に注目し,「地域社会に開かれた学校」,「地域の資源の開発及び提供」,「学校は地域コ ミュニティの一員として地域のメンバーと協力」がチーム学校の発展に必要とされた。
最後に校内と地域社会,相互に影響を与える研究課題について注目したい。図
1
で出典:筆者作成
図1 チーム学校研究における今後の研究課題
「チーム学校」研究における研究動向の検討 86
は,「校内から地域を往来するマネジメント力に注目」として示している。これまでの チーム学校に対する研究では,チーム学校は校内に限らず,地域社会に開かれた学校と なり,地域社会と連携しながら,児童生徒を育てることが重要であると続けて指摘され ている。このように指摘されてきた課題ではあるが,学校と地域社会の関わり方に関す る研究は他に比べて少ない。しかし,これからのチーム学校において地域社会は極めて 重要な位置づけになると考える。中央教員審議会(2015 : 2)「チームとしての学校の在 り方と今後の改善方策について」では児童生徒が成長していくなかで,多様な価値観及 び経験を持った大人と関わることで,本当の意味での「生きる力」につながると示して いる。さらに,「1-1.背景」で事例として挙げた「横浜市立飯田北いちょう小学校」で は,地域のボランティア団体との連携や地域行事の参加を行うことで多方面から児童生 徒を取り巻く地域ネットワーク構築を行っている。このような取り組みは児童生徒がよ り安定した生活できるために極めて重要な取り組みとして位置づけられている。生活し づらさを抱えている児童生徒やその家庭が学校の対応だけに限定するのではなく,既存 の学校での対応及び,多様な価値観及び経験をもった地域社会の人や資源,専門スタッ フと関わることでより児童生徒や家庭の「生きる力」に繋がり,「児童一人ひとりが安 心して通える学校・安心して生活できる学校」になるだろう。従って,これからチーム 学校研究において地域社会に関する研究は極めて重要な研究課題であると考えられる。
例えば,学校で起きるいじめ問題を例に挙げたい。日本の学校におけるいじめ問題は 主に学級内で起きる。児童生徒にとって学級とは,学校で主に滞在するところであり,
家庭を除いて,ほぼ唯一社会生活をする場とも言える。そのため,いじめ問題が学級で 起きても,それから簡単に逃げることは難しいと考えられる。なぜなら,自分の唯一の 社会生活する場から排除されるかもしれないと恐れているからである。そのため,いじ め問題に働きかけるためには,学級の担任以外にも相談できる教員や専門スタッフがい て,児童生徒にとって相談しやすい校内体制が整えていることが求められる。また,学 級を離れてもボランティア団体や学習支援団体,サークルと言った,多様な社会と関わ ることで,児童生徒は支えられていると感じるとき,いじめ問題が起きても助けを求め ることができるだろう。要するに,生活しづらさを抱えている児童生徒やその家庭にお いて地域社会の位置付けも同様である。地域社会はより広い生活をする場となり,多様 な価値観及び経験をもった地域社会の人や資源,専門スタッフの体制が整えいていれ ば,児童生徒は安心して学校に通い,その家庭は安心した生活ができるだろう。
3-2.これから求められるチーム学校の研究
これらの研究では,チーム学校のなかでの教員の役割や専門性の明確化や教員の働き 方の再検討を行い,チーム学校における教員,管理職の働き方に示唆を与えたと考えら
「チーム学校」研究における研究動向の検討 87
れる。また,専門スタッフに対しては,児童生徒の困難に着目し,専門スタッフがどの ように働きかけるのか提言を行うことや,教員の「多忙化」に対して,教員の負担をい かに減らすかに着目した研究が見られた。チーム学校と地域社会関連の研究では,これ からチーム学校で地域社会をどう捉えるかは重要であると指摘され続けているが,地域 社会とどのように関わるかに対して十分な吟味がなされていない。さらに,どの専門ス タッフが学校と地域社会の連携をコーディネートするかと言う点について十分な検討は 行われていない。これらの十分な吟味がなされていない点から,これから行われるべき 三点の研究について述べることにする。
第一に,校内に限定されたメンバーによるチーム学校から地域社会を加わえたチーム 学校への移行という視点からの研究が求められる。チーム学校の導入には,家庭や地域 社会で積極的に本来の子育ての役割を担い,地域社会が学校と協力しながら児童生徒を 育てていくという狙いがあって,地域社会はより広い生活をする場として位置付け,学 校と地域社会がどのように関わるかは重要な研究視点となる。チーム学校と地域社会に 関連した研究が進むことによって,学校が校内に留まらず,地域コミュニティの一員と なり,児童生徒の問題行動や課題を共有し,連携を行うと言った,本来のチーム学校の 目標の達成の一助できると考えられる。
第二に,地域社会を加わえたチーム学校になる際に,地域社会をどのように理解する かという実践研究が必要である。「3-1.チーム学校について指摘された課題」で示した ように,地域社会に関連する研究課題としては,「地域社会に開かれた学校」,「学校は 地域コミュニティの一員として地域のメンバーと協力」が必要とされており,地域社会 での資源の開発やアウトリーチが求められている。しかし,以上の研究では,地域社会 に関する実態は分かりにくいと考えられる。なぜなら,これまでの研究では,地域社会 の範囲設定や地域社会の資源を明確に示していないからである。言い換えれば,これま での研究では地域社会の概念や定義に対して具体的な議論は十分ではなかったと考えら れる。チーム学校における地域社会の関わり方は,チーム学校においてとても重要な概 念であり,チーム学校がさらに効果的に児童生徒に関わるためには,地域社会と学校の 関わり方は明確にしないといけない。つまり,チーム学校と地域社会の関わり方を明確 にするためには,学校ではどのように地域社会と関わってきたのか,どの機関と関わっ てきたのかといった実践的研究を行うことで,チーム学校において地域社会の位置付け や関わり方が明確になっていくと考えられる。
第三に,地域社会を加わえたチーム学校の実践モデルの構築が必要である。これから のチーム学校体制において地域社会との関わりはとても重要であり(谷川ら
2017 : 75,
阿久津
2017 : 251),地域社会のサービスや資源と学校を繋げるコーディネーターが求
められると指摘されている(鈴木ら
2018 : 66)。しかし,これまでの研究では,地域社
「チーム学校」研究における研究動向の検討 88
会を加わえたチーム学校の実践モデルの構築はされておらず,どの教員,もしくは専門 スタッフがコーディネートの役割を担うべきなのかについて,具体的な議論はなかっ た。
地域社会を加わえたチーム学校の実践モデルの構築にあたって,筆者は
SSWer
が学 校と地域社会を繋げるコーディネーターの役割を担うべきであると主張したい。SSWer はソーシャルワークを基盤とした専門職である。ソーシャルワークとは問題を抱えてい る人がいた場合,個人だけの問題として捉えるのではなく,その個人が抱えている環境 との関係が不適合関係であるという見方をする(山下2014 : 3)。つまり,ソーシャル
ワークは,人と環境の相互関係を重要視する。学校で働くスクールソーシャルワーカーは児童生徒だけに焦点を当てるのではなく,
学級や家族及び地域社会といった児童生徒が関わっている環境を不適合関係から適応関 係に戻す働きかけが求められる。さらに,山野(2016 : 29)は,SSWerの役割として,
チームアプローチの観点から,教員と協働する視点が重要であると述べている。つま り,SSWerは,児童生徒・家族・教員への直接的な働きかけ,及び,児童生徒が関わ っている環境の不適合関係を明らかにし,適応関係に戻すための地域社会との連携まで 幅広い働きかけができる専門スタッフである。このような働きかけはまさに地域社会の サービスや資源と学校を繋げるコーディネーターとして,求められる働きかけであると 考えられる。このような働きかけをするためには,チーム学校のメンバーは校内の教員 や専門スタッフに限定するのではなく,地域住民,保護者,地域社会にある外部の機関 もチームのメンバーとして捉えるべきである。その際に,校内のメンバーと地域社会の メンバーと,児童生徒の状況や目標,支援方法などの共有が必須であり,これらを共有 をするためには,お互い緊密な連携が求められる。SSWerを学校と地域社会を繋ぐコ ーディネーターとして位置付け,地域社会を加わえたチーム学校の実践モデルを構築す ることで,チーム学校がもっと効果的に児童生徒の問題行動や課題に対応できると考え られる。
本研究では,チーム学校に焦点を当てて,これまでどのような研究が行われてきたの か,研究分野,研究目的,内容および方法について分析を行なった。分析を通して,こ れまでのチーム学校の研究傾向や残された研究課題を明らかにすることができた。ま た,考察では,これから行われるべき研究として,①チーム学校からチーム地域社会へ の移行という視点から研究,②チーム学校において地域社会をどのように理解するかと いう実践研究,③SSWer を学校と地域社会を繋ぐコーディネーターとして位置付け,
地域社会を加わったチーム学校の実践モデルの構築を提示することができた。これらの 結果から,チーム学校における地域社会の存在は非常に重要であるが,従来の研究で は,チーム学校と地域社会の関係性に対して,焦点を当てる研究は少なかったことが分
「チーム学校」研究における研究動向の検討 89
かった。これからの研究では,チーム学校と地域社会の関係性に焦点を当てた研究がも っと行われる必要があると考えられる。さらに,地域社会の資源とサービスを学校にど う繋げるか,すなわちコーディネーターの役割を明確にすることは重要な研究課題であ ると考えられる。これらの研究結果を踏まえて,SSWerが学校と地域社会を往来する コーディネーターとして,地域社会を加わったチーム学校の実践モデルの構築を,筆者 の次の研究課題としていきたい。
注
⑴ 横浜市立飯田北いちょう小学校(2014)「学校の紹介」(https : //www.edu.city.yokohama.jp/sch/es/iidaki- taicho/information.html)2019年9月13日閲覧
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「チーム学校」研究における研究動向の検討 92
In this paper of this research was to focus on “School as a Team”. Through literature re- view we will found out trend of “School as a Team”. And propose the necessary research in the future. As a result, we found out following things.
First, research is needed from the perspective of school as a team that includes community members. Second, in the school as a team which added community members. We need practical research of defining community members. Third it is necessary to clarify the messenger who connect the community to the school and the school to the community. In this paper, of this re- search argue that school social worker is suitable to connect the community to the school and the school to the community. As well this paper discuss that the school social worker should on the role of a coordinator that connects schools and community.
Key words:School as a Team, Community, Coordination, School social worker, Coordinator
Trends in Research on “School as a Team”
Hong Seung Jae
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